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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】止水壁の設置方法
(51)【国際特許分類】
   E03F 5/04 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
E03F5/04 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020177419
(22)【出願日】2020-10-22
(65)【公開番号】P2022068633
(43)【公開日】2022-05-10
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000133294
【氏名又は名称】株式会社ダイクレ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓之
(72)【発明者】
【氏名】家久 侑大
(72)【発明者】
【氏名】杉保 生尚
(72)【発明者】
【氏名】波多野 改都
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-184168(JP,A)
【文献】特開2018-199907(JP,A)
【文献】実開昭61-025405(JP,U)
【文献】特開2015-086514(JP,A)
【文献】特開2020-190134(JP,A)
【文献】特開2002-348945(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0104469(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00-11/00
E02B 3/04-3/14
E01B 1/00-26/00
E04H 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方が開放された排水溝の延伸方向に沿って、前記排水溝が設置された地面において前記排水溝の長手方向に沿って外部に止水壁を設置する、止水壁の設置方法であって、
前記止水壁は、以下に示す、〔構成1〕と、〔構成2〕と、〔構成3〕と、〔構成4〕とを備えるものであり、
以下に示す、〔第1取付工程〕と、〔第1接続工程〕と、〔第2接続工程〕と、〔第1接着工程〕と、〔第2接着工程〕と、〔第2取付工程〕とを含む、止水壁の設置方法。
〔構成1〕
FRP製の複数の長尺のプレートと、高耐食性めっき鋼板製の複数の接続部材とを備える;
〔構成2〕
前記複数のプレートのそれぞれは、
長手方向における両方の第1側端部の端面において短手方向に矩形状の開口部が形成されているとともに、
前記両方の第1側端部における一方の第1側端部と、他方の第1側端部とを連通する空間が内部に形成され、
短手方向における両方の第2側端部が、前記プレートが前記地面に設置された状態において、前記プレートに対して前記排水溝が位置する方向とは反対の方向に張り出すように形成されている;
〔構成3〕
前記複数の接続部材のそれぞれは、
前記複数のプレートのうち、前記長手方向において直列的に並んで隣接する2つのプレートを第1プレートおよび第2プレートとし、前記第1プレートと上下方向において隣接するプレートを第3プレートとし、前記第2プレートと上下方向において隣接するプレートを第4プレートとすると、
前記第1プレートの前記開口部および前記第2プレートの前記開口部に挿入され、前記第1プレートと前記第2プレートとの接続に供されるよう、前記第1プレートの前記開口部および前記第2プレートの前記開口部に係る短手方向の矩形よりも小さな矩形を、前記短手方向と同一方向の断面形状として有する、板状の第1接続部と、
前記第3プレートの前記開口部および前記第4プレートの前記開口部に挿入され、前記第3プレートと前記第4プレートとの接続に供されるよう、前記第3プレートの前記開口部および前記第4プレートの前記開口部に係る短手方向の矩形よりも小さな矩形を、前記短手方向と同一方向の断面形状として有する、板状の第2接続部と、
前記第1接続部と前記第2接続部とを連結する板状の連結部と、を有している;
〔構成4〕
前記複数のプレートは、前記第1プレート、前記第2プレート、前記第3プレートおよび前記第4プレートが前記接続部材によって接続された状態において、
前記第1プレートと前記第2プレートとの間に形成された隙間にシール材が充填されており、
前記第3プレートと前記第4プレートとの間に形成された隙間にシール材が充填されており、
前記第1プレートおよび前記第2プレートのそれぞれにおける下側の前記第2側端部は、前記排水溝の横側の地面に取り付けられるものであり、
前記第1プレートの上側の前記第2側端部は、前記第3プレートの下側の前記第2側端部と接着されており、
前記第2プレートの上側の前記第2側端部が、前記第4プレートの下側の前記第2側端部と接着されている;
〔第1取付工程〕
前記第1プレートの下側の前記第2側端部を前記地面に取り付ける;
〔第1接続工程〕
前記接続部材の前記第1接続部を、前記第1プレートの前記開口部から挿入して当該第1プレートの前記空間に配置し、かつ、前記第2プレートの前記開口部から挿入して当該第2プレートの前記空間に配置し、さらに、前記第1プレートと前記第2プレートとの間に形成された隙間にシール材を充填することにより、前記第1プレートと前記第2プレートとを接続する;
〔第2接続工程〕
前記接続部材の前記第2接続部を、前記第3プレートの前記開口部から挿入して当該第3プレートの前記空間に配置し、かつ、前記第4プレートの前記開口部から挿入して当該第4プレートの前記空間に配置し、さらに、前記第3プレートと前記第4プレートとの間に形成された隙間にシール材を充填することにより、前記第3プレートと前記第4プレートとを接続する;
〔第1接着工程〕
前記第1プレートの上側の前記第2側端部を、前記第3プレートの下側の前記第2側端部と接着する;
〔第2接着工程〕
前記第2プレートの上側の前記第2側端部を、前記第4プレートの下側の前記第2側端部と接着する;
〔第2取付工程〕
前記第1取付工程、前記第1接続工程、前記第2接続工程、前記第1接着工程および前記第2接着工程の終了後の前記第2プレートの下側の前記第2側端部を前記地面に取り付ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水壁の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路脇、線路脇および法面の小段等に形成された、雨水などの排水を流す排水溝に関し、集中豪雨等による雨量の増加に対応すべく、排水溝の容量を拡大する方法が従来から研究されている。例えば特許文献1には、主面の下端に係止片が設けられた複数の板状体について、係止片を排水溝の横側の地面に固定し、かつ、主面を排水溝の内側の壁面に固定することで、複数の板状体を排水溝の延伸方向に沿って設置する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-199907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1に開示された方法では、複数の板状体を設置する前に予め、シール材を、排水溝の内側の壁面、または主面の下端における前記壁面との接触面に敷設しておく必要がある。また、複数の板状体を排水溝の延伸方向に沿ってアンカーで固定した後、互いに隣接し合う2つの板状体におけるそれぞれの頂部を、板状体連結鋼材で繋ぐ必要もある。これらのことから、特許文献1に開示された方法では、複数の板状体の設置に手間が掛かるため、工期が長期化するという問題点がある。
【0005】
本発明の一態様は、前記の各問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の板状体を簡単に設置できるようにして工期を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る止水壁の設置方法は、上方が開放された排水溝の延伸方向に沿って、前記排水溝が設置された地面において前記排水溝の長手方向に沿って外部に止水壁を設置する方法であって、
前記止水壁は、以下に示す、〔構成1〕と、〔構成2〕と、〔構成3〕と、〔構成4〕とを備えるものであり、
以下に示す、〔第1取付工程〕と、〔第1接続工程〕と、〔第2接続工程〕と、〔第1接着工程〕と、〔第2接着工程〕と、〔第2取付工程〕とを含む。
【0007】
〔構成1〕
FRP製の複数の長尺のプレートと、高耐食性めっき鋼板製の複数の接続部材とを備える;
〔構成2〕
前記複数のプレートのそれぞれは、
長手方向における両方の第1側端部の端面において短手方向に矩形状の開口部が形成されているとともに、
前記両方の第1側端部における一方の第1側端部と、他方の第1側端部とを連通する空間が内部に形成され、
短手方向における両方の第2側端部が、前記プレートが前記地面に設置された状態において、前記プレートに対して前記排水溝が位置する方向とは反対の方向に張り出すように形成されている;
〔構成3〕
前記複数の接続部材のそれぞれは、
前記複数のプレートのうち、前記長手方向において直列的に並んで隣接する2つのプレートを第1プレートおよび第2プレートとし、前記第1プレートと上下方向において隣接するプレートを第3プレートとし、前記第2プレートと上下方向において隣接するプレートを第4プレートとすると、
前記第1プレートの前記開口部および前記第2プレートの前記開口部に挿入され、前記第1プレートと前記第2プレートとの接続に供されるよう、前記第1プレートの前記開口部および前記第2プレートの前記開口部に係る短手方向の矩形よりも小さな矩形を、前記短手方向と同一方向の断面形状として有する、板状の第1接続部と、
前記第3プレートの前記開口部および前記第4プレートの前記開口部に挿入され、前記第3プレートと前記第4プレートとの接続に供されるよう、前記第3プレートの前記開口部および前記第4プレートの前記開口部に係る短手方向の矩形よりも小さな矩形を、前記短手方向と同一方向の断面形状として有する、板状の第2接続部と、
前記第1接続部と前記第2接続部とを連結する板状の連結部と、を有している;
〔構成4〕
前記複数のプレートは、前記第1プレート、前記第2プレート、前記第3プレートおよび前記第4プレートが前記接続部材によって接続された状態において、
前記第1プレートと前記第2プレートとの間に形成された隙間にシール材が充填されており、
前記第3プレートと前記第4プレートとの間に形成された隙間にシール材が充填されており、
前記第1プレートおよび前記第2プレートのそれぞれにおける下側の前記第2側端部は、前記排水溝の横側の地面に取り付けられるものであり、
前記第1プレートの上側の前記第2側端部は、前記第3プレートの下側の前記第2側端部と接着されており、
前記第2プレートの上側の前記第2側端部が、前記第4プレートの下側の前記第2側端部と接着されている;
〔第1取付工程〕
前記第1プレートの下側の前記第2側端部を前記地面に取り付ける;
〔第1接続工程〕
前記接続部材の前記第1接続部を、前記第1プレートの前記開口部から挿入して当該第1プレートの前記空間に配置し、かつ、前記第2プレートの前記開口部から挿入して当該第2プレートの前記空間に配置し、さらに、前記第1プレートと前記第2プレートとの間に形成された隙間にシール材を充填することにより、前記第1プレートと前記第2プレートとを接続する;
〔第2接続工程〕
前記接続部材の前記第2接続部を、前記第3プレートの前記開口部から挿入して当該第3プレートの前記空間に配置し、かつ、前記第4プレートの前記開口部から挿入して当該第4プレートの前記空間に配置し、さらに、前記第3プレートと前記第4プレートとの間に形成された隙間にシール材を充填することにより、前記第3プレートと前記第4プレートとを接続する;
〔第1接着工程〕
前記第1プレートの上側の前記第2側端部を、前記第3プレートの下側の前記第2側端部と接着する;
〔第2接着工程〕
前記第2プレートの上側の前記第2側端部を、前記第4プレートの下側の前記第2側端部と接着する;
〔第2取付工程〕
前記第1取付工程、前記第1接続工程、前記第2接続工程、前記第1接着工程および前記第2接着工程の終了後の前記第2プレートの下側の前記第2側端部を前記地面に取り付ける。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、複数のプレートを簡単に設置することができ、止水壁を設置する工期を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】雨水が排水されている状態における、排水溝および本発明の実施形態1に係る止水壁の外観図である。
図2】本発明の実施形態1に係る止水壁の正面図である。
図3】符号301で示す図は、本発明の実施形態1に係るプレートの正面図である。符号302で示す図は、前記プレートの側面図である。符号303で示す図は、図2に示すプレート、シールコンクリート、土壌および排水溝のA-A線矢視断面図である。
図4】本発明の実施形態1に係る接続部材の斜視図である。
図5】符号501~503で示す図は、本発明の実施形態1に係る止水壁の設置方法を示す図である。
図6】符号601で示す図は、本発明の実施形態2に係る止水壁における、第1プレートと第2プレートとの接続箇所付近の要部構造を示す図である。符号602で示す図は、本発明の実施形態2に係る接続部材の斜視図である。符号603で示す図は、本発明の実施形態2の変形例に係る接続部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
<止水壁1>
まず、図1および図2を用いて、本発明の実施形態1に係る止水壁1について説明する。止水壁1は、図1に示す排水溝Dを流れる排水の量が当該排水溝Dの排水能力を超えてしまい、排水溝Dから排水が溢れ出した場合において、溢れ出した排水を堰き止めて本来の排水方向に誘導する役割を果たす構造物である。排水溝Dを流れる排水としては、雨水の他、例えば湧水が想定される。本実施形態および後掲の実施形態2では、排水溝Dを流れる排水が雨水Wであるものとする。
【0011】
排水溝Dは、道路脇、線路脇および法面の小段等に形成される。本実施形態および後掲の実施形態2では、排水溝Dは、図1に示すように法面の小段に形成されている。具体的には、法面の小段にコンクリート製の公知のU字ブロックUBが埋設されることにより、排水溝DとしてU形側溝が形成されている。なお、本発明の適用対象となる排水溝DはU形側溝に限定されず、例えばグレーチング側溝および円底側溝であってもよい。
【0012】
U字ブロックUBにおける地表側の端部は、法面の小段を形成する土壌Sの表面SUF_Sから外部に露出している。また、法面の小段を形成する土壌Sの表面SUF_Sには、シールコンクリートCが敷設されている。そして、シールコンクリートCとU字ブロックUBにおける地表側の端部とが排水溝Dの延伸方向に沿って連続的に連なることにより、シールコンクリートCの表面とU字ブロックUBにおける地表側の端部の表面SUF_UBとで、法面の小段の表面を成す。シールコンクリートCの表面は、本発明に係る地面(排水溝の横側に形成)の一例である。
【0013】
なお、法面の小段を形成する土壌Sの表面SUF_Sに、シールコンクリートCが敷設されていなくてもよい。この場合、法面の小段を形成する土壌Sの表面SUF_Sが、法面の小段の表面を成すとともに本発明に係る地面の一例となる。
【0014】
止水壁1は、図1に示すように、排水溝Dの延伸方向に沿って、シールコンクリートCの表面における排水溝Dを基準として法尻側の表面SUF_C1(以下、「法尻側の表面SUF_C1」と略記)に設置される。つまり、本実施形態および後掲の実施形態2では、図1に示すように、止水壁1と法肩側の法面SUF_Nとで、排水溝Dから溢れ出した雨水Wを本来の排水方向に排水する排水路が形成されている。
【0015】
なお、止水壁1の設置態様は、本実施形態および後掲の実施形態2のように、法尻側の表面SUF_C1にのみ設置される場合に限定されない。例えば排水溝Dが道路脇または線路脇に形成されている場合であれば、道路脇または線路脇の両横の地面(コンクリートの表面および土壌の表面のいずれでもよい)にそれぞれ1体、合計2体の止水壁1を設置してもよい。
【0016】
止水壁1は、図2に示すように複数のプレートセット8で構成されており、プレートセット8は、1つのプレート2と1つの接続部材3(ともに詳細は後述)とで構成されている。止水壁1を構成する複数のプレート2は、すべて同一構成である。止水壁1は、互いに隣接し合う2つのプレート2を第1プレート2aおよび第2プレート2bとすると、第1プレート2aと第2プレート2bとが接続部材3で接続されている。なお、本明細書では、互いに隣接し合う2つのプレート2について、どちらを第1プレート2aとしてもよいし、あるいはどちらを第2プレート2bとしてもよい。
【0017】
また、止水壁1は、第1プレート2aと第2プレート2bとの間に形成された隙間にシール材5が充填されている。前記隙間にシール材5が充填されることにより、少なくとも、第1プレート2aと第2プレート2bとの接続部分における排水溝Dの形成方向を向く面が、第1プレート2aおよび第2プレート2bにおける排水溝Dの形成方向を向く面と略面一となる。ここで、「第1プレート2aと第2プレート2bとの接続部分(以下、「接続部分」と略記)」は、シール材5によって形成されている止水壁1の一部分である。そのため、雨水W中に含まれる瓦礫、ゴミなどが接続部分に引っ掛かり難くなり、瓦礫、ゴミなどが止水壁1と法肩側の法面SUF_Nとで形成される排水路に溜まり難くなる。よって、排水溝Dから溢れ出た雨水Wを円滑に排水することができる。
【0018】
なお、第1プレート2aと第2プレート2bとの間に形成された隙間にシール材5を充填することは必須ではない。例えば、第1プレート2aにおける長手方向の第1側端部22aの端面23aと、第2プレート2bにおける第1側端部22aと対向する側の第1側端部22bの端面23bとが略全面に亘って接触するように、接続部材3の大きさ等を設計変更してもよい。
【0019】
止水壁1を構成する複数のプレート2にはすべて、2つの短手方向の第2側端部26における一方に貫通孔27(図3の符号301で示す図参照;詳細は後述)が2箇所形成されている。そして、第1プレート2aと第2プレート2bとが接続部材3によって接続された状態において、貫通孔27が形成されている側の第2側端部26が法尻側の表面SUF_C1上に配置される。さらに、アンカー4が2つの貫通孔27に挿入されてシールコンクリートCおよび土壌Sに打ち込まれた後、貫通孔27が形成されている側の第2側端部26が、留めナット4aで締め付けられる。これにより、貫通孔27が形成されている側の第2側端部26が法尻側の表面SUF_C1に取り付けられる。
【0020】
なお、プレート2の法尻側の表面SUF_C1への取付態様は本実施形態の場合に限定されない。例えば、貫通孔27およびアンカー4等の数を任意に変更してもよい。さらには、プレート2の法尻側の表面SUF_C1からの高さを、調整ナット(不図示)で調整できるようにしてもよい。
【0021】
<プレート2>
次に、図2および図3を用いて、本発明の実施形態1に係るプレート2について説明する。プレート2は、図2および図3の符号301で示す図のように略矩形の板状部材であり、2つの第1側端部22の端面23にそれぞれ開口部24が形成されている。また、プレート2の内部には、2つの開口部24と連通しており、プレート2を貫通(具体的にはプレート本体21を貫通)する空間25が形成されている。
【0022】
プレート2の2つの第2側端部26は、図3の符号302および303で示す図のように、一方の第2側端部26が法尻側の表面SUF_C1に取り付けられた状態において、プレート本体21から法尻側に張り出している。ここで言う「法尻側」とは、言い換えれば排水溝Dの形成方向と反対の方向である。一方、2つの第2側端部26のそれぞれにおける排水溝Dの形成方向を向く面は、プレート本体21における排水溝Dの形成方向を向く面と面一になっている。つまり、プレート2は、一方の第2側端部26が法尻側の表面SUF_C1に取り付けられた状態において、側面視で法尻側に凹となる形状である。
【0023】
2つの第2側端部26のうち、法尻側の表面SUF_C1に取り付けられる側の第2側端部26について、プレート本体21から張り出している部分には、図3の符号301および302で示す図のように貫通孔27が2箇所形成されている。以下、前記のプレート本体21から張り出している部分を「張出部分」と称する。具体的には、2つの貫通孔27は、ともに張出部分の厚さ方向に貫通している。2つの貫通孔27の張出部分における形成箇所に特段の限定はないものの、プレート2がアンカー4によってバランスよく固定されるような箇所に形成されるのが好ましい。
【0024】
なお、2つの第2側端部26の両方に、貫通孔が2箇所形成されていてもよい。また、プレート2の形状は側面視で前記の凹形状でなくてもよく、例えば、法尻側の表面SUF_C1に取り付けられる側の第2側端部26のみ前記のように張り出していてもよい。また例えば、2つの第2側端部26が、貫通孔27が形成されている方の第2側端部26が法尻側の表面SUF_C1に取り付けられた状態において、プレート本体21から法尻側および法肩側の両方に張り出していてもよい。ここで言う「法肩側」とは、言い換えれば排水溝Dの形成方向である。つまり、プレート2が、貫通孔27が形成されている方の第2側端部26が法尻側の表面SUF_C1に取り付けられた状態において、側面視でI字形状になっていてもよい。
【0025】
プレート2の開口部24および空間25は、ともにプレート本体21に形成されている。また、開口部24の形状、および空間25を端面23と平行な平面で切断した場合の断面積の形状は矩形形状であり、ともに、接続部材3を側端部32の端面33と平行な平面で切断した場合の断面形状(図4参照)に対応している。また、図2に示すように、互いに隣接し合う2つのプレート2を第1プレート2aおよび第2プレート2bとすると、第1プレート2aの開口部24aおよび第2プレートの開口部24bは、接続部材3の一部分が出し入れ可能な大きさとなっている。さらに、第1プレート2aの空間25aおよび第2プレートの空間25bは、接続部材3の一部分が出し入れ可能に配置できる程度の大きさとなっている。
【0026】
なお、プレート2の長手方向および短手方向の長さ、第2側端部26の張出部分の張出幅、プレート本体21の厚さ等は、排水溝Dの溝幅、溝の深さおよび長さ、ならびに法面の小段の広さ等に応じて任意に設計変更してもよい。また、プレート2の開口部24および空間25の各形状および各大きさは、接続部材3の形状および大きさに応じて任意に設計変更してもよい。
【0027】
さらに、プレート2の空間25は、本実施形態および後掲の実施形態2のようなプレート本体21を貫通している場合に限定されない。例えば、2つの開口部24の一方にのみ連通する空間25と、他方にのみ連通する空間25との2つの空間25が、プレート本体21の内部に形成されていてもよい。また、止水壁1の両先端部を構成する2つのプレート2については、図2に示すように、他のプレート2と対向する側の第1側端部22の端面23にのみ開口部24が形成され、当該開口部24が空間25と連通していてもよい。この場合、空間25は、図2に示すように、プレート本体21を貫通せずに接続部材3の一部分を収納できる程度の大きさに形成されていてもよい。
【0028】
プレート2の形成材料としては、例えば繊維強化プラスチック(FRP)および強化プラスチック等が挙げられる。また、熱可塑性のポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリカーボネートおよびポリエチレン等をプレート2の形成材料としてもよい。このような材料であれば、高強度であり、かつプレート2を所望の形状に容易に加工できる。また、このような材料により形成されたプレート2は軽量かつ耐食性に優れるため、搬入時の作業者の負担が軽減されるとともに長期間の使用に適している。ただし、プレート2の形成材料はこれに限定されず、例えばアルミニウムおよびチタン等の、軽量かつ耐食性に優れた金属であってもよい。
【0029】
<接続部材3>
次に、図4を用いて、本発明の実施形態1に係る接続部材3について説明する。接続部材3は、図4に示すように矩形の板状部材である。また、接続部材3は、止水壁1を構成する複数のプレート2のうち、互いに隣接し合う2つのプレート2を第1プレート2aおよび第2プレート2bとした場合に(図2参照)、第1プレート2aと第2プレート2bとの接続に供される部材である。
【0030】
具体的には、接続部材3は、第1プレート2aの開口部24aおよび第2プレート2bの開口部24bのそれぞれから当該接続部材3の一部分が挿入される。前記の接続部材3の一部分には、長手方向の側端部32のすべてが含まれる。そして、第1プレート2aの空間25aおよび第2プレート2bの空間25bのそれぞれに接続部材3の一部分が配置されることにより、第1プレート2aと第2プレート2bとが接続部材3によって接続される(図2参照)。
【0031】
接続部材3の形状は、本実施形態のような矩形の板状に限定されず、プレート2の開口部24および空間25の各形状に応じて任意に設計変更してもよい。また、接続部材3の大きさについても、開口部24および空間25の各大きさに応じて任意に設計変更してもよい。ただし、開口部24および空間25の各大きさは、接続部材3の一部分を開口部24から円滑に挿入できる範囲内で、空間25に配置された接続部材3の一部分と当該空間25との間に形成される隙間がなるべく少なくなるような大きさであるのが好ましい。これにより、上述の第1プレート2aと第2プレート2bとが安定的に接続される。
【0032】
本実施形態および後掲の実施形態2では、接続部材3は、高耐食性めっき鋼板(JIS G 3323に規定される溶融亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金めっき鋼板)を成形加工して製造されている。ただし、接続部材3は高耐食性めっき鋼板製でなくてもよく、例えば炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ステンレス鋼材(SUS)およびチタンなど、耐食性および剛性に優れる材料で形成されていればよい。
【0033】
<止水壁1の設置方法>
次に、図5を用いて、本発明の実施形態1に係る止水壁1の設置方法について説明する。止水壁1は、以下に説明する各工程を踏むことにより、法面の小段における法尻側の表面SUF_C1に設置される。
【0034】
まず、止水壁1を構成する複数のプレート2のうち、止水壁1の両先端部を構成する2つのプレート2(図2参照)のいずれか一方を、法尻側の表面SUF_C1に取り付ける(STEP1;初期第1取付工程、不図示)。初期第1取付工程STEP1は、本発明に係る第1取付工程の一例である。具体的には、先端部を構成するプレート2における、貫通孔27が形成されている側の第2側端部26を、法尻側の表面SUF_C1上に配置する。そして、2つの貫通孔27のそれぞれにアンカー4を挿入してシールコンクリートCおよび土壌Sに打ち込んだ後、前記の第2側端部26を留めナット4aで締め付けることにより、先端部を構成するプレート2の一方が法尻側の表面SUF_C1に取り付けられる。
【0035】
次に、初期第1取付工程STEP1にて法尻側の表面SUF_C1に取り付けられたプレート2を第1プレート2aとし、第1プレート2aと隣接させるプレート2を第2プレート2bとすると、接続部材3の一部分を第2プレート2bの開口部24bから挿入する。そして、図5の符号501で示す図のように、接続部材3の一部分を第2プレート2bの空間25bに出し入れ可能に配置する。そして、図5の符号502で示す図のように、接続部材3の他の一部分を第1プレート2aの開口部24aから挿入する。そして、接続部材3の他の一部分を第1プレート2aの空間25aに出し入れ可能に配置することにより、第1プレート2aと第2プレート2bとを接続する。これらの一連の工程が、初期接続工程STEP2となる。初期接続工程STEP2は、本発明に係る接続工程の一例である。
【0036】
なお、開口部24aおよび24bへの接続部材3の一部分の挿入順番について、特段の限定はない。例えば、接続部材3の一部分を第1プレート2aの開口部24aから挿入した後、接続部材3の他の一部分を第2プレート2bの開口部24bから挿入してもよい。このことは、後述の接続工程STEP4についても同様である。
【0037】
次に、初期接続工程STEP2にて止水壁1の両先端部の一方を構成するプレート2(第1プレート2aに相当)と接続した他のプレート2(第2プレート2bに相当)を、法尻側の表面SUF_C1に取り付ける。取付方法は、上述した初期第1取付工程STEP1の取付方法と同様である。そして、図5の符号503で示す図のように、止水壁1の両先端部の一方を構成するプレート2と他のプレート2との間に形成された隙間に、シール材5を充填する。これらの一連の工程が、初期第2取付工程STEP3となる。初期第2取付工程STEP3は、本発明に係る第2取付工程の一例であるとともに、本発明に係る第1取付工程の一例にも含まれる。
【0038】
次に、初期第2取付工程STEP3にて法尻側の表面SUF_C1に取り付けられたプレート2を第1プレート2aとし、第1プレート2aと隣接させるプレート2を第2プレート2bとすると、接続部材3で第1プレート2aと第2プレート2bとを接続する(STEP4;接続工程)。接続方法は、上述した初期接続工程STEP2の接続方法と同様である。
【0039】
次に、接続工程STEP4にて第1プレート2aと接続した第2プレート2bを、法尻側の表面SUF_C1に取り付けた後、第1プレート2aと第2プレート2bとの間に形成された隙間にシール材5を充填する(STEP5;第2取付工程)。取付方法は、上述した初期第1取付工程STEP1の取付方法と同様である。第2取付工程STEP5は、本発明に係る第1取付工程の一例である。以下、接続工程STEP4および第2取付工程STEP5を順次繰り返す。
【0040】
次に、第2取付工程STEP5にて法尻側の表面SUF_C1に取り付けられたプレート2を第1プレート2aとし、第1プレート2aと隣接させるプレート2を第2プレート2bとすると、接続部材3で第1プレート2aと第2プレート2bとを接続する(STEP6;最終接続工程)。ここで、最終接続工程STEP6における第2プレート2bは、止水壁1の両先端部を構成する2つのプレート2のうち、初期第1取付工程STEP1において法尻側の表面SUF_C1に取り付けられなかった方のプレート2になる。接続方法は、上述した初期接続工程STEP2の接続方法と同様である。最終接続工程STEP6は、本発明に係る接続工程の一例である。
【0041】
最後に、最終接続工程STEP6にて第1プレート2aと接続した第2プレート2b(止水壁1の両先端部の他方を構成するプレート2に相当)を、法尻側の表面SUF_C1に取り付ける。その後、第1プレート2aと第2プレート2bとの間に形成された隙間にシール材5を充填する(STEP7;最終第2取付工程)。取付方法は、上述した初期第1取付工程STEP1の取付方法と同様である。最終第2取付工程STEP7は、本発明に係る第2取付工程の一例である。最終第2取付工程STEP7が終了することにより、止水壁1の法尻側の表面SUF_C1への設置が終了する。
【0042】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、図6を用いて以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0043】
<止水壁100および接続部材6>
まず、図6を用いて、本発明の実施形態2に係る止水壁100および接続部材6について説明する。以下の説明では、止水壁100を構成する複数のプレート2のうち、互いに隣接し合う2つのプレート2であって法尻側の表面SUF_C1に取り付けられるものを第1プレート2aおよび第2プレート2bとして説明する。
【0044】
(止水壁100)
止水壁100は、図6の符号601で示す図のように複数のプレートセット80で構成されており、プレートセット80は、2つのプレート2と1つの接続部材6(詳細は後述)とで構成されている。図6の符号601で示す図には、第1プレート2aおよび後述の第3プレート2cが、1つのプレートセット80を構成する2つのプレート2として図示されている。止水壁100を構成する複数のプレート2も、実施形態1と同様にすべて同一構成である。また、止水壁100は、法尻側の表面SUF_C1に設置された状態において、2つのプレート2が鉛直方向に積み重なっている。
【0045】
具体的には、第1プレート2aおよび第2プレート2bのそれぞれにおける貫通孔27(図3参照)が形成されていない方の第2側端部26の頂面に、両面テープ7が接着されている。ここで、貫通孔27が形成されていない方の第2側端部26とは、言い換えれば、プレート2が法尻側の表面SUF_C1に取り付けられた状態において鉛直上側に配置される方の第2側端部26である。以下、第1プレート2aおよび第2プレート2bのそれぞれにおける貫通孔27が形成されていない方の第2側端部26を、「鉛直上側の第2側端部26」と称する。
【0046】
そして、第1プレート2aの鉛直上側の第2側端部26と、他のプレート2における2つの第2側端部26のいずれか一方とが両面テープ7で接着されることにより、2つのプレート2が鉛直方向に積み重なる。以下、第1プレート2aと接着された他のプレート2を第3プレート2cとする。同様に、第2プレート2bの鉛直上側の第2側端部26と、他のプレート2における2つの第2側端部26のいずれか一方とが両面テープ7で接着されることにより、2つのプレート2が鉛直方向に積み重なる。以下、第2プレート2bと接着された他のプレート2を第4プレート2dとする。これらのことから、1つのプレートセット80を構成する2つのプレート2は、鉛直方向に積み重なる2つのプレート2となる。
【0047】
本実施形態では、第3プレート2cおよび第4プレート2dともに、2つの第2側端部26のいずれにも貫通孔27が形成されていない。しかしながら、第3プレート2cおよび第4プレート2dの少なくともいずれか一方について、2つの第2側端部26の少なくともいずれか一方に貫通孔27が形成されていてもよい。
【0048】
なお、両面テープ7は、第1プレート2aおよび第2プレート2bのそれぞれにおける、鉛直上側の第2側端部26の頂面に接着されていなくてもよい。例えば、第3プレート2cにおける2つの第2側端部26のいずれか一方に両面テープ7が接着されていてもよく、あるいは第4プレート2dにおける2つの第2側端部26のいずれか一方に両面テープ7が接着されていてもよい。
【0049】
また、第1プレート2aと第3プレート2cとが、両面テープ7で接着される必要は必ずしもない。同様に、第2プレート2bと第4プレート2dとが、両面テープ7で接着される必要も必ずしもない。第1~第4プレート2a~2dは、例えば接着剤で接着されてもよい。換言すれば、第1~第4プレート2a~2dは、2つの第2側端部26が何らかの方法で接着可能な状態になっていればよい。さらには、第1プレート2aと第3プレート2cとが、例えばリベット(不図示)で固定されてもよい。同様に、第2プレート2bと第4プレート2dとについても、リベットで固定されてもよい。
【0050】
止水壁100は、法尻側の表面SUF_C1に設置された状態において、第1プレート2aと第2プレート2bとが接続部材6によって接続されている。同様に、第3プレート2cと第4プレート2dとが接続部材6によって接続されている。また、止水壁100は、第1プレート2aと第2プレート2bとの間に形成された隙間、および第3プレート2cと第4プレート2dとの間に形成された隙間のそれぞれに、実施形態1と同様、シール材5が充填されている。第1プレート2aおよび第2プレート2bの法尻側の表面SUF_C1への取り付け態様についても、実施形態1と同様である。
【0051】
なお、止水壁100は、法尻側の表面SUF_C1に設置された状態において、鉛直方向に積み重ねられるプレート2の数が本実施形態のような2つに限定されない。例えば鉛直方向に3つのプレート2が積み重ねられてもよい。この場合、接続部材6は、最も鉛直上側に配置されたプレート2の開口部24から挿入される第3接続部(不図示)を有することになる。
【0052】
(接続部材6)
接続部材6は、図6の符号601および符号602で示す図のように、第1接続部61、第2接続部62および連結部63を有している。第1接続部61、第2接続部62および連結部63はすべて、図6の符号602で示す図のように、接続部材6における矩形の板状部分である。なお、第1接続部61、第2接続部62および連結部63の各形状および各大きさを任意に設計変更できる点については、本発明の実施形態1に係る接続部材3と同様である。また、第1接続部61、第2接続部62および連結部63の各形成材料についても、接続部材3と同様である。
【0053】
第1接続部61は、図6の符号601で示す図のように、第1プレート2aの開口部24aおよび第2プレート2bの開口部24bにその一部分が出し入れ可能とされ、第1プレート2aと第2プレート2bとの接続に供される。開口部24aおよび24bのそれぞれに出し入れ可能な、第1接続部61の一部分には、図6に示す長手方向の接続側側端部612のすべてが含まれる。
【0054】
第2接続部62は、図6の符号601で示す図のように、第3プレート2cの開口部24cおよび第4プレート2dの開口部24dにその一部分が出し入れ可能とされ、第3プレート2cと第4プレート2dとの接続に供される。開口部24aおよび24bのそれぞれに出し入れ可能な、第2接続部62の一部分には、図6に示す長手方向の接続側側端部622のすべてが含まれる。
【0055】
連結部63は、第1接続部61と第2接続部62とを連結する。具体的には、第1接続部61および第2接続部62が、連結部63における2つの短手方向の連結側側端部636の一方から延出している。より詳細には、第1接続部61および第2接続部62は、連結部63における長手方向の辺と短手方向の辺とで規定される面(以下、「対向面」)と略直交する方向に突出している。また、第1接続部61および第2接続部62は、連結部63において、接着後の第1~第4プレート2a~2dにおける開口部24a~24dのそれぞれに円滑に挿入できる位置から突出している。さらに、第1接続部61および第2接続部62のそれぞれについて、連結部63における2つの対向面の一方から延出している部分と、他方から延出している部分とは、略同一の形状および大きさになっている。
【0056】
連結部63は、図6の符号601で示す図のように、2つの対向面の一方が、第1プレートの第1側端部22aの端面23aおよび第3プレート2cの第1側端部22cの端面23cに当接している。また、2つの対向面の他方が、第2プレートの第1側端部22bの端面23bおよび第4プレート2dの第1側端部22dの端面23dに当接している。これにより、第1~第4プレート2a~2dを接続部材6によって接続する際、第1~第4プレート2a~2dの位置決めを確実かつ容易に行うことができる。ただし、連結部63の対向面は、第1~第4プレート2a~2dの端面23a~23dから離間していてもよい。
【0057】
なお、接続部材6の形状は上述の場合に限定されない。例えば、図6の符号603で示す図のような接続部材6aの形状であってもよい。接続部材6aは、接続部材6の変形例であり、第1接続部61、第2接続部62および連結部63aを有している。連結部63aは、図6の符号603で示す図のように、長手方向の辺と短手方向の辺とで規定される面が、第1接続部61および第2接続部62のそれぞれにおける長手方向の辺と短手方向の辺とで規定される面と、面一になっている。
【0058】
<止水壁100の設置方法>
次に、図示しないものの、本発明の実施形態2に係る止水壁100の設置方法について説明する。止水壁100は、以下に説明する各工程を踏むことにより、法面の小段における法尻側の表面SUF_C1に設置される。
【0059】
まず最初に初期第1取付工程STEP1を踏む点については、本発明の実施形態1に係る止水壁1の設置方法と同様である。次に、初期第1取付工程STEP1にて法尻側の表面SUF_C1に取り付けられたプレート2を第1プレート2aとすると、第1プレート2aにおける鉛直上側の第2側端部26と、他のプレート2の第2側端部26とを接着させる。前記他のプレート2が第3プレート2cとなる。また、第1プレート2aおよび第3プレート2cと異なる他の2つのプレート2について、両者の第2側端部26を接着させる(STEP2-1;初期接着工程)。前記他の2つのプレート2が、第2プレート2bおよび第4プレート2dとなる。
【0060】
初期接着工程STEP2-1は、本発明に係る接着工程の一例である。また、初期接着工程STEP2-1で第1プレート2aと接着させる第3プレート2cは、止水壁100の両先端部を構成する2つのプレート2(図2参照)のいずれか一方となる。
【0061】
次に、接続部材6における第1接続部61の一部分を第2プレート2bの開口部24bから挿入するとともに、接続部材6における第2接続部62の一部分を第4プレート2dの開口部24dから挿入する。そして、第1接続部61の一部分を第2プレート2bの空間25bに出し入れ可能に配置するとともに、第2接続部62の一部分を第4プレート2dの空間25dに出し入れ可能に配置する(図6の符号601で示す図参照)。
【0062】
そして、第1接続部61の他の一部分を第1プレート2aの開口部24aから挿入するとともに、第2接続部62の他の一部分を第3プレート2cの開口部24cから挿入する。そして、第1接続部61の他の一部分を第1プレート2aの空間25aに出し入れ可能に配置するとともに、第2接続部62の他の一部分を第3プレート2cの空間25cに出し入れ可能に配置する(図6の符号601で示す図参照)。これらの一連の工程によって、第1プレート2aと第2プレート2bとを接続するとともに、第3プレート2cと第4プレート2dとを接続する(STEP2-2;初期接続工程)。初期接続工程STEP2-2は、本発明に係る接続工程の一例である。
【0063】
なお、開口部24a~24dへの第1接続部61および第2接続部62の各一部分の挿入順番について、特段の限定がない点については、止水壁1の設置方法における初期接続工程STEP2と同様である。
【0064】
次に、初期接続工程STEP2-2以降は、順に、初期第2取付工程STEP3、接着工程STEP3-1、接続工程STEP4-1および第2取付工程STEP5の各工程を踏む。初期第2取付工程STEP3および第2取付工程STEP5については、止水壁1の設置方法における初期第2取付工程STEP3および第2取付工程STEP5と同様である。
【0065】
また、接着工程STEP3-1については、第1プレート2aと接着させる第3プレート2cの空間25cが当該第3プレート2cを貫通している点以外は、初期接続工程STEP2-2と同様である。さらに、接続工程STEP4-1については、第4プレート2dと接続させる第3プレート2cの空間25cが当該第3プレート2cを貫通している点以外は、止水壁1の設置方法における接続工程STEP4と同様である。
【0066】
次に、接着工程STEP3-1、接続工程STEP4-1および第2取付工程STEP5の各工程を順次繰り返した後、最終接着工程STEP6-1、最終接続工程STEP6-2および最終第2取付工程STEP7の各工程を踏む。最終接着工程STEP6-1については、第2プレート2bと接着させる第4プレート2dが、止水壁100の両先端部を構成する2つのプレート2(図2参照)の他方となる点以外は、接着工程STEP3-1と同様である。
【0067】
また、最終接続工程STEP6-2については、第3プレート2cと接続させる第4プレート2dが、止水壁100の両先端部を構成する2つのプレート2(図2参照)の他方となる点以外は、接続工程STEP4-1と同様である。さらに、最終第2取付工程STEP7については、止水壁1の設置方法における最終第2取付工程STEP7と同様である。最終第2取付工程STEP7が終了することにより、止水壁100の法尻側の表面SUF_C1への設置が終了する。
【0068】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態1および2に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、上述した実施形態1および2のそれぞれに開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0069】
なお、本発明の一態様に係るプレートは、排水溝の延伸方向に沿って複数設置されることで止水壁を構成するためのプレートであって、短手方向の第1側端部の端面に開口部が形成されているとともに、当該開口部と連通する空間が内部に形成されている一方で、長手方向の第2側端部が前記排水溝の横側の地面に取り付けられるものであり、前記止水壁を構成する複数の前記プレートのうち、互いに隣接し合う同一構成の2つの前記プレートを第1プレートおよび第2プレートとすると、前記第1プレートの前記開口部および前記第2プレートの前記開口部は、前記第1プレートと前記第2プレートとの接続に供される接続部材の一部分が出し入れ可能となるように形成されていてもよい。
【0070】
前記構成によれば、第1プレートおよび第2プレートの各開口部から接続部材の一部分を挿入して、第1プレートおよび第2プレートの各空間に接続部材の一部分を配置させるだけで、第1プレートと第2プレートとを接続することができる。そのため、互いに隣接し合う同一構成の2つのプレートを接続部材で順次接続していくだけで、止水壁を容易に構成することができる。よって、2つの板状体を互いに隣接し合うように順次設置していき、設置後、互いに隣接し合う2つの板状体を板状体連結鋼材で繋いでいくような従来の方法に比べて、止水壁を設置する工期を短縮することができる。
【0071】
本発明の一態様に係るプレートは、前記第2側端部は、前記地面に取り付けられた状態において、プレート本体から前記排水溝の形成方向と反対の方向に張り出しており、他の前記プレートの前記第2側端部と接着可能であってもよい。
【0072】
前記構成によれば、一方の第2側端部が地面に取り付けられた所定のプレートにおける他方の第2側端部に対して、他のプレートの第2側端部を接着させることにより、止水壁の高さを高くすることができる。また、例えばプレート本体の厚さと第2側端部の厚さとが同一の場合に比べて、所定のプレートの第2側端部と他のプレートの第2側端部との接着が強固になり、2つの第2側端部における接着箇所付近の強度が向上する。これらのことから、雨量に応じて止水壁の高さを調整できるとともに、ゲリラ豪雨など排水路の排水能力を大きく超える量の雨が降った場合でも、2つの第2側端部における接着箇所付近の損壊を低減しつつ排水することができる。
【0073】
また、本発明の一態様に係るプレートセットは、排水溝の延伸方向に沿って複数設置されることで止水壁を構成するためのプレートセットであって、短手方向の第1側端部の端面に開口部が形成されているとともに、当該開口部と連通する空間が内部に形成されている一方で、長手方向の第2側端部が前記排水溝の横側の地面に取り付けられる、プレートと、前記止水壁を構成する複数の前記プレートセットのうち、互いに隣接し合う同一構成の2つの前記プレートを第1プレートおよび第2プレートとすると、前記第1プレートの前記開口部および前記第2プレートの前記開口部にその一部分が出し入れ可能とされ、前記第1プレートと前記第2プレートとの接続に供される接続部材と、を含んでいてもよい。
【0074】
前記構成によれば、複数のプレートセットを用いて、互いに隣接し合う同一構成の2つのプレートを接続部材で順次接続していくだけで、止水壁を容易に構成することができる。そのため、止水壁を設置する工期を従来に比べて短縮することができる。
【0075】
本発明の一態様に係る止水壁は、排水溝の延伸方向に沿って設置される止水壁であって、短手方向の第1側端部の端面に形成された開口部と、内部に形成された空間とが連通している複数のプレートと、複数の前記プレートのうち、互いに隣接し合う同一構成の2つの前記プレートを第1プレートおよび第2プレートとすると、前記第1プレートの前記開口部および前記第2プレートの前記開口部にその一部分が出し入れ可能とされ、前記第1プレートと前記第2プレートとの接続に供される接続部材と、を備え、複数の前記プレートは、前記第1プレートと前記第2プレートとが前記接続部材によって接続された状態において、各々の長手方向の第2側端部が前記排水溝の横側の地面に取り付けられていてもよい。
【0076】
前記構成によれば、複数のプレートおよび複数の接続部材を用いて、互いに隣接し合う同一構成の2つのプレートを接続部材で順次接続していくだけで、止水壁を容易に構成することができる。そのため、止水壁を設置する工期を従来に比べて短縮することができる。
【0077】
本発明の一態様に係る止水壁の設置方法は、前記第1プレートの前記第2側端部を前記地面に取り付ける第1取付工程と、前記接続部材の一部分を、前記第1プレートの前記開口部から挿入して当該第1プレートの前記空間に出し入れ可能に配置し、かつ、前記接続部材の他の一部分を、前記第2プレートの前記開口部から挿入して当該第2プレートの前記空間に出し入れ可能に配置することにより、前記第1プレートと前記第2プレートとを接続する接続工程と、前記接続工程終了後の前記第2プレートの前記第2側端部を前記地面に取り付ける第2取付工程と、を含んでいてもよい。前記構成によれば、止水壁を設置する工期を従来に比べて短縮できる止水壁の設置方法を実現することができる。
【0078】
本発明の一態様に係る止水壁の設置方法は、前記第2側端部は、前記地面に取り付けられた状態において、プレート本体から前記排水溝の形成方向と反対の方向に張り出しており、他の前記プレートの前記第2側端部と接着可能であり、前記接続部材は、複数の前記プレートにおける、互いに隣接し合う同一構成の2つの前記プレートのうち、その前記第2側端部が前記第1プレートの前記第2側端部と接着される前記プレートを第3プレートとし、かつ、その前記第2側端部が前記第2プレートの前記第2側端部と接着される前記プレートを第4プレートとすると、前記第1プレートの前記開口部および前記第2プレートの前記開口部にその一部分が出し入れ可能とされ、前記第1プレートと前記第2プレートとの接続に供される第1接続部と、前記第3プレートの前記開口部および前記第4プレートの前記開口部にその一部分が出し入れ可能とされ、前記第3プレートと前記第4プレートとの接続に供される第2接続部と、前記第1接続部と前記第2接続部とを連結する連結部と、を有しており、前記第1プレートの前記第2側端部と前記第3プレートの前記第2側端部とを接着するとともに、前記第2プレートの前記第2側端部と前記第4プレートの前記第2側端部とを接着する接着工程をさらに含み、前記接続工程では、前記接着工程終了後、前記第1接続部の一部分を、前記第1プレートの前記開口部から挿入して当該第1プレートの前記空間に出し入れ可能に配置するとともに、前記第2接続部の一部分を、前記第3プレートの前記開口部から挿入して当該第3プレートの前記空間に出し入れ可能に配置し、かつ、前記第1接続部の他の一部分を、前記第2プレートの前記開口部から挿入して当該第2プレートの前記空間に出し入れ可能に配置するとともに、前記第2接続部の他の一部分を、前記第4プレートの前記開口部から挿入して当該第4プレートの前記空間に出し入れ可能に配置することにより、前記第1プレートと前記第2プレートとを接続するとともに、前記第3プレートと前記第4プレートとを接続してもよい。
【0079】
前記構成によれば、第1プレートに第3プレートを接着させるとともに第2プレートに第4プレートを接着させた後、接続部材によって、第1プレートと第2プレートとの接続および第3プレートと第4プレートとの接続を一度に行うことができる。そのため、第1プレートと第3プレートとの接着および第2プレートと第4プレートとの接着によって止水壁の高さを高くする場合であっても、止水壁を容易に構成することができる。よって、止水壁の高さを高くする場合であっても、止水壁を設置する工期を従来より短縮することができる。
【符号の説明】
【0080】
1、100 止水壁
2 プレート
2a 第1プレート
2b 第2プレート
2c 第3プレート
2d 第4プレート
3、6、6a 接続部材
5 シール材
8、80 プレートセット
22、22a、22b、22c、22d 第1側端部
23、23a、23b、23c、23d 端面
24、24a、24b、24c、24d 開口部
25、25a、25b、25c、25d 空間
26 第2側端部
61 第1接続部
62 第2接続部
63、63a 連結部
D 排水溝
SUF_C シールコンクリートの表面(地面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6