(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/28 20060101AFI20240730BHJP
A01M 1/20 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B65D81/28 Z
A01M1/20 B
(21)【出願番号】P 2020208518
(22)【出願日】2020-12-16
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000112853
【氏名又は名称】フマキラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若槻 健
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特表平10-512146(JP,A)
【文献】特開2017-158517(JP,A)
【文献】特開平11-318305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/28
A01M 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方へ開口する開口部を有する容器本体と、前記開口部を閉塞するシール部材とを備え、前記シール部材が前記容器本体における前記開口部の周縁部に剥離可能に溶着された容器において、
前記開口部は、平面視で前記容器本体の周壁部よりも内側に位置付けられており、
前記容器本体は、平面視で前記容器本体の周壁部よりも内側に、上下方向に延びる筒部を有しており、当該筒部の上端部に前記開口部が開口しており、
前記容器本体の周壁部よりも内側には、前記開口部を形成する部分を下方から支持するサポート部が
前記容器本体の底壁部から上方へ向けて延びるように設けられ、
前記サポート部の上端部は前記筒部の下端部に当接し、
前記サポート部の上方への延長線上に前記筒部が位置付けられていることを特徴とする容器。
【請求項2】
請求項
1に記載の容器において、
前記容器本体には液体が収容され、
前記開口部には、前記液体を吸い上げるための棒状の吸液芯が挿入され、または挿入可能になっており、
前記サポート部は前記吸液芯を囲むように設けられていることを特徴とする容器。
【請求項3】
請求項
2に記載の容器において、
複数の前記サポート部が前記吸液芯の周方向に間隔をあけて設けられていることを特徴とする容器。
【請求項4】
請求項
3に記載の容器において、
前記吸液芯は、前記容器の底壁部に達するように配置され、
前記容器の底壁部には、前記サポート部よりも外側の液体を前記サポート部よりも内側に向けて流す傾斜部が設けられていることを特徴とする容器。
【請求項5】
請求項
3または
4に記載の容器において、
前記サポート部は、平面視で円弧状に延びていることを特徴とする容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材によってシールされる開口部を有する容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、液体ベイト剤が収容されたボトルの天面部に開口部を形成し、その開口部に柱状の吸液芯を挿入するようにした害虫駆除装置が知られている。この害虫駆除装置では、使用開始前に開口部を閉塞しておくためのシール部材が設けられており、使用開始時にはシール部材を開口部の周縁部から剥離することで吸液芯の上端面を外部に露出させる。この吸液芯がボトル内の液体ベイト剤を吸い上げて当該吸液芯の上端面まで運ぶことで、害虫が液体ベイト剤を喫食し易くなっている。
【0003】
また、特許文献2には、容器の開口部を閉塞するシール部材を加熱して開口部の周縁部に貼り付けるためのヒートシール装置が開示されている。ヒートシール装置は、樹脂の溶融温度以上に加熱されるヒートヘッドを備えている。ヒートヘッドをシール部材に押し当てることによってシール部材を容器の開口部の周縁部に押圧し、この状態でシール部材を加熱して容器の開口部の周縁部に溶着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-158517号公報
【文献】特開平2-242706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のように開口部を閉塞するシール部材を設けることで、開口部をシール部材で密封しておくことができるので、害虫駆除装置の搬送時などにボトル内の液体ベイト剤が漏れる心配が無い。そして、ユーザーがシール部材を剥がすことで吸液芯を外部に露出させ、容易に使用開始できるので、利便性が高い。
【0006】
特許文献1のようなシール部材を容器に溶着する際には、特許文献2に開示されているヒートシール装置を用いることが考えられる。ところが、特許文献1のボトルは、その開口部の真下が空洞となっているので、当該開口部の周縁部に上から下向きの力がかかった場合に、その下向きの力を開口部の真下で受け止める部材が存在しない。このため、仮に特許文献1のボトルの開口部をヒートシールするためにヒートヘッドを上から押し当てると、その力によってボトルが変形してヒートシールが適切に行えないばかりか、ボトルが破損するおそれもある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、平面視で容器本体の周壁部よりも内側に形成された開口部をシール部材でシールする場合に、適切にかつ容器本体の破損を招くことなくシールできるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の開示は、上方へ開口する開口部を有する容器本体と、前記開口部を閉塞するシール部材とを備え、前記シール部材が前記容器本体における前記開口部の周縁部に剥離可能に溶着された容器を前提とする。前記開口部は、平面視で前記容器本体の周壁部よりも内側に位置付けられており、前記容器本体の周壁部よりも内側には、前記開口部を形成する部分を下方から支持するサポート部が設けられている構成とすることができる。
【0009】
すなわち、シール部材を容器本体の開口部の周縁部に溶着する際には、例えば特許文献2のようにヒートヘッドを上方から押し付けてシール部材を開口部の周縁部に密着させながら溶着する場合がある。このような溶着方法を採用すると、開口部の周縁部には下向きの力が加わることになるが、その開口部は平面視で容器本体の周壁部よりも内側に位置付けられていることから、開口部を形成する部分が周壁部によって支持されない。そのため、溶着不良や容器本体の破損が懸念されるが、本構成では、容器本体の周壁部よりも内側に、開口部を形成する部分を下方から支持するサポート部が設けられているので、シール部材の溶着時には、サポート部材により、開口部を形成する部分の下方への変位が抑制される。これにより、シール部材を狙い通りに確実に溶着して高いシール性を確保できるとともに、容器本体の破損が回避される。
【0010】
また、シール部材は、開口部の周縁部に剥離可能に溶着されているので、開口部の周縁部から剥離することで開口部を開放することができる。開口部を開放することで、容器本体の内部の収容物を出したり、容器本体の内部へ物品を入れたりすることが可能になる。
【0011】
第2の開示は、前記サポート部が前記容器本体の底壁部から上方へ向けて延びるように設けられているものである。この構成によれば、開口部を形成する部分への下向きの力を、サポート部を介して容器本体の底壁部で受けることができるので、開口部を形成する部分を安定させることができる。
【0012】
第3の開示では、前記容器本体は、平面視で前記容器本体の周壁部よりも内側に、上下方向に延びる筒部を有しており、当該筒部の上端部に前記開口部が開口しており、前記サポート部の上端部は前記筒部の下端部に当接するものである。
【0013】
この構成によれば、開口部を形成する部分が上下方向に延びる筒部で構成されることになるので、シール部材は筒部の上端部に溶着される。シール部材の溶着時には、筒部に対して下向きの力が作用することになるが、この筒部の下端部がサポート部の上端部に当接しているので、下向きの力を確実に受けることができる。
【0014】
第4の開示では、前記サポート部の上方への延長線上に前記筒部が位置付けられているので、下向きの力が作用した筒部をその真下でサポート部によって支持できる。これにより、筒部がサポート部からずれにくくなり、溶着不良及び容器本体の破損を未然に回避できる。
【0015】
第5の開示では、前記容器本体には液体が収容され、前記開口部には、前記液体を吸い上げるための棒状の吸液芯が挿入され、または挿入可能になっている。そして、前記サポート部は前記吸液芯を囲むように設けられている。
【0016】
この構成によれば、容器本体に収容されている液体を吸液芯が吸い上げることによって利用できる。この場合、吸液芯がサポート部材で囲まれているので、吸液芯の位置ずれが抑制される。
【0017】
第6の開示では、複数の前記サポート部が前記吸液芯の周方向に間隔をあけて設けられているので、液体の残量に関わらず、液体を吸液芯に供給できる。
【0018】
第7の開示では、前記吸液芯は、前記容器の底壁部に達するように配置され、前記容器の底壁部には、前記サポート部よりも外側の液体を前記サポート部よりも内側に向けて流す傾斜部が設けられているものである。この構成によれば、容器本体内の液体が残り少なくなった場合に、その液体を傾斜部によってサポート部よりも内側に向けて流すことができる。これにより、液残りを無くすことができる。
【0019】
第8の開示では、前記サポート部は、平面視で円弧状に延びているので、上下方向に押圧力に対して屈曲し難くなり、溶着時の力を確実に受け止めることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、容器本体の周壁部よりも内側に、開口部を形成する部分を下方から支持するサポート部を設けたので、開口部をシール部材でシールする場合に、適切にかつ容器本体の破損を招くことなくシールできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る容器を備えた害虫駆除器具を上方から見た斜視図である。
【
図3】カバー部材を取り外した害虫駆除器具を上方から見た斜視図である。
【
図7】
図6におけるVII-VII線断面図である。
【
図9】シール部材の溶着工程を説明する斜視図である。
【
図10】シール部材が溶着された容器を上方から見た斜視図である。
【
図11】シール部材が溶着された容器の縦断面図である。
【
図12】シール部材を剥離して吸液芯を挿入する要領を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る害虫駆除器具1を上方から見た斜視図である。この実施形態の害虫駆除器具1は、カバー部材2と、液体のベイト(毒餌)剤を収容する容器3とを備えており、例えば飛翔害虫であるスズメバチを駆除する際に使用される器具である。
図1~
図3では、害虫駆除器具1の使用状態を示しており、吸液芯4を容器3内に挿入している。一方、
図10及び
図11は、害虫駆除器具1の使用開始前の状態を示しており、この状態でシール部材6が設けられているとともに、吸液芯4は容器3内に挿入されていない。
【0024】
カバー部材2は、容器3の少なくとも上部を覆うように構成されており、雨水などが容器3に当たらないようにするためのものである。カバー部材2は本発明に必須な部材ではないので省略してもよい。カバー部材2を使用する場合、カバー部材2の側方は大部分が開放されているので、この開放部分から害虫の出入りが可能になっている。また、カバー部材2に形成された保持孔2cに容器3を上方から入れることにより、容器3をカバー部材2で保持することができる。容器3の保持構造は、これに限られるものではなく、容器3を固定具(図示せず)等でカバー部材2に固定してもよい。
【0025】
また、害虫駆除器具1は、カバー部材2の上部に設けられている片部2aに形成された孔2bに紐等を通すことにより、竿や木の枝に吊り下げて使用することができる。また、害虫駆除器具1は、机や台、地面等の上に置いて使用することもできる。
【0026】
図10及び
図11に示すように、使用開始前の容器3は、容器本体30と、シール部材6とを備えている。容器本体30は、カップ部材31と、蓋部材40とで構成されている。カップ部材31には、液状の害虫用ベイト(毒餌)剤が収容され、または収容可能になっている。害虫用ベイト剤は、殺虫成分と、喫食成分とを含有しており、これに加えて誘引成分を含有していると更に好ましい。尚、害虫用ベイト剤は、後述する使用開始前にはカップ部材31に収容せずに、シール部材6を剥離した後にカップ部材31に収容してもよい。
【0027】
殺虫成分としては、害虫による喫食性に悪影響が無い(害虫に対する忌避性が無い)殺虫剤を用いることができる。更に、遅効性の殺虫剤であれば好ましい。遅効性の殺虫剤とは、害虫に接触したり、害虫が喫食した際に、直ちにノックダウンに至ったり、死に至ることなく、接触または喫食後、所定時間は行動が可能であるが、所定時間を経過した頃から死に至る殺虫剤である。
【0028】
上記所定時間とは、害虫が殺虫剤に接触または殺虫剤を喫食した後、当該害虫が巣に帰ることが可能な時間であり、好ましくは、巣に帰った後、幼虫の世話をしたり、他の成虫に接触するまでの時間を含む。例えば、スズメバチを対象害虫とした場合、上記所定時間は数十分~数時間程度である。また、駆除対象害虫をゴキブリとすることもでき、ゴキブリの場合も同様に、上記所定時間は数十分~数時間程度である。なお、この所定時間は、害虫用ベイト剤に配合する殺虫成分の濃度によって、ある程度調整することが可能である。すなわち、巣に帰った害虫を比較的早く死に至らしめたい場合は殺虫成分の濃度を濃く設定し、巣に帰った害虫を比較的長く活動させたい場合は殺虫成分の濃度を薄く設定すればよい。この他、殺虫成分の濃度は、対象とする害虫の種類や、使用シーン等に応じて適宜設定することができる。
【0029】
喫食性に悪影響が無く、かつ遅効性の殺虫剤としては、例えばフィプロニルのようなフェニルピラゾール系殺虫剤、カルバリル、プロポキスル等のカーバメート系殺虫剤、ジノテフラン、クロチアニジン、イミダクロプリド等のネオニコチノイド系殺虫剤、ホウ酸などを挙げることができるが、これらに限定されない。これらの中ではフィプロニルが好ましい。
【0030】
害虫用駆除器具1による駆除の対象害虫は、例えばスズメバチやゴキブリ等の社会性害虫であるが、これら害虫以外にも社会性を持ち、かつ、人間に害を及ぼす害虫を対象害虫とすることができる。よって、これら対象害虫に対して遅効性の殺虫効果を持った殺虫剤を殺虫成分として含んでいればよい。殺虫成分には、1種または2種以上の遅効性の殺虫剤を含有させることができる。2種以上の遅効性の殺虫剤を含有させる場合、それらを混合して用いることができる。尚、社会性害虫とは、集団を形成し、その集団の中に階層を作って生活する害虫である。このような害虫の中には、成虫が幼虫の世話をしたり、成虫同士が触れあったりするものもいる。
【0031】
喫食成分は、害虫が喫食する成分で構成されており、少なくとも糖類を含む喫食成分を使用することができる。糖類は、例えば単糖類、二糖類及び多糖類のうち、任意の1つのみを喫食成分として使用することができるし、任意の2つ以上を混合して喫食成分として使用することもできる。喫食成分として使用可能な単糖類としては、例えばブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)、ガラクトース等を挙げることができる。喫食成分として使用可能な二糖類としては、例えばショ糖(スクロース)、麦芽糖(マルトース)、乳糖(ラクトース)等を挙げることができる。喫食成分として使用可能な多糖類としては、グリコシド結合によって単糖分子が多数重合した物質を挙げることができ、例えばデンプン等である。
【0032】
害虫用ベイト剤は、所定量の殺虫成分と、喫食成分とを混合することによって得ることができる。害虫用ベイト剤には、例えば水(イオン交換水)等が含有されていてもよい。また、害虫用ベイト剤には、例えば、ポリエチレングリコール、界面活性剤、酢酸、乳酸、プロピン酸ナトリウム等のうち、任意の1つまたは任意の2つ以上が含有されていてもよい。
【0033】
害虫用ベイト剤の実施例としては、害虫用ベイト剤を100gとしたとき、殺虫成分であるフィプロニルが0.003g以上0.010g以下、ポリエチレングリコールが0.05g以上0.10g以下、界面活性剤(tween20)が0.1g以上0.5g以下、果糖ブドウ糖液糖が10g以上25g以下、酢酸が0.03g以上0.10g以下、乳酸が0.03g以上0.10g以下、プロピン酸ナトリウムが0.50g以上0.15g以下、残部をイオン交換水とすることができる。ポリエチレングリコールや界面活性剤は、省略してもよい。酢酸および乳酸は、スズメバチへの誘引性を向上させるために配合されているが、省略してもよい。
【0034】
害虫用ベイト剤は、益虫が忌避する成分を含有していることが好ましい。ここで益虫とは、例えばミツバチである。ミツバチが忌避する成分としてはエタノールが好適である。エタノールは、本実施形態の害虫用駆除器具1が駆除対象とするスズメバチ等は忌避しない(誘引性に悪影響を及ぼさない)ので、この点でも好ましい。なお、エタノールは、害虫用ベイト剤に含まれる糖類を発酵させることによって害虫用ベイト剤内に生成されるので、害虫用ベイト剤に予め配合していなくても良い。例えば、上記実施例に係る害虫用ベイト剤にドライイーストを混入させることで、害虫用ベイト剤内でアルコール発酵が進み、糖が分解されてエタノールと二酸化炭素が生成される。これにより、エタノールを含む害虫用ベイト剤ができる。このときに生成されたエタノールにより、益虫用の忌避成分が構成される。
【0035】
図4及び
図5等に示すように、カップ部材31は、平面視で略円形の底壁部32と、底壁部32の周縁部から上方へ延びるとともに周方向に連続した周壁部33とを有しており、上端部の全体が開放されている。底壁部32及び周壁部33は樹脂材によって一体成形されている。カップ部材31を構成する樹脂材は、例えば硬質樹脂材を使用することができる。カップ部材31は、射出成形法によって成形されていてもよいし、真空成形法等によって成形されていてもよい。周壁部33の上端部には、径方向外方へ突出して周方向に連続して延びるフランジ33aが形成されている。カップ部材31の容量は、特に限定されるものではないが、例えば100ml以上に設定することができる。
【0036】
蓋部材40は、カップ部材31の上端部を閉塞するための部材であり、カップ部材31と同様な樹脂材で構成されている。蓋部材40は、中央部が開口した略円形の本体板部41と、本体板部41の外周部から上方へ突出し、周方向に連続した周板部42と、周板部42の上端部から径方向外方へ向けて延びる外周板部43と、本体板部41の内周部から上下両方向に突出する筒部44とを備えている。本体板部41は、略水平に延びている。
図2に示すように、本体板部41の下面の外周部は、カップ部材31のフランジ33aの上面に対して全周に亘って接着されており、これにより、蓋部材40とカップ部材31との間の液密性が確保されている。本体板部41の下面には、下方へ突出するとともに、フランジ33aの内周面に沿って延びる環状壁41aが形成されている。
【0037】
図4に示すように、周板部42は、本体板部41の外周部に沿って環状に延びている。外周板部43は、遠方から飛来したスズメバチ等が着地しやすいように構成されている。具体的には、外周板部43は、径方向外端部が最も下に位置するように、下降傾斜しながら延びている。外周板部43の径方向外端部は、本体板部41の下面よりも下に位置付けられている。外周板部43の上面には、複数の凸部43aが形成されている。複数の凸部43aは、外周板部43の周方向に互いに間隔をあけて配置されるとともに、外周板部43の径方向にも互いに間隔をあけて配置されており、外周板部43の上面の全体に分布している。
【0038】
筒部44は、上下両方向に開放した円筒状であり、蓋部材40の径方向中央部に位置している。従って、筒部44は、平面視で周壁部33よりも内側に配置されることになる。筒部44の上側部分は、本体板部41の上面から上方へ突出している。
図2に示すように、筒部44の上側部分と、本体板部41と、周板部42とにより、含浸体5を収容可能な凹状部分が形成される。含浸体5は、例えば繊維や発泡材のように液体を含浸可能な部材で構成されている。含浸体5には、昆虫成長抑制剤が含浸されている。昆虫成長抑制剤(IGR: Insect Growth Regulator)は、昆虫の変態や脱皮に関連しているホルモンのバランスを狂わせることによって、昆虫の脱皮や羽化を阻害し、その結果、昆虫を死に至らせる殺虫剤である。本実施形態で使用可能な昆虫成長抑制剤の例としては、例えばエトキサゾール、ピリプロキシフェン、メトプレン、ハイドロプレン、ジフルベンズロン等を挙げることができる。これらの中でも、ハチを駆除対象とする場合はエトキサゾールが好ましい。
【0039】
尚、含浸体5は本発明に必須なものではないので省略してもよい。この場合、含浸体5を収容可能な凹状部分も省略できる。また、含浸体5には、害虫用ベイト剤を含浸させてもよい。
【0040】
図2に示すように、筒部44の下側部分は、カップ部材31内へ突出している。筒部44の下端部はカップ部材31の上下方向(深さ方向)中間部に達しており、下方に向けて開口している。筒部44の本体板部41から下方への突出量と、筒部44の本体板部41から上方への突出量とを比較した時、下方への突出量の方が大きく設定されている。尚、上方への突出量を下方への突出量より大きくしてもよいし、上方への突出量と下方への突出量とを同じにしてもよい。尚、筒部44は、円筒状以外の形状、例えば角筒状であってもよい。
【0041】
筒部44の上端部には、上方へ向けて開口する開口部44aが形成されている。これにより、容器本体30は、平面視で容器本体30の周壁部33よりも径方向内側に位置付けられる開口部44aを有することになる。開口部44aは略円形である。筒部44は、開口部44aを形成する部分であり、本体板部41と一体成形されている。筒部44と本体板部41とは別々に成形した後、一体化するようにしてもよい。
【0042】
開口部44aには、害虫用ベイト剤を吸い上げるための吸液芯4が挿入可能になっている。吸液芯4は、上下方向に延びる棒状をなしており、水平方向の断面は略円形とされている。吸液芯4を構成する部材は、例えば繊維体を挙げることができ、毛細管現象によって液体を吸引、吸収可能に構成されている。この実施形態では、吸液芯4が円柱状をなしているが、これに限らず、板状であってもよいし、水平方向の断面が多角形の柱状であってもよい。
【0043】
吸液芯4の径は、筒部44の内径(開口部44aの径)と略同じか、筒部44の内径よりも僅かに小さく設定されている。吸液芯4は、予め開口部44aに挿入されたものであってもよいし、後述するように使用開始時に開口部44aに挿入するものであってもよい。
【0044】
吸液芯4は、容器本体30の底壁部32に達するように配置されている。すなわち、吸液芯4の下端部は、容器本体30の底壁部32における径方向中央部に当接しており、この状態で吸液芯4が底壁部32によって保持される。底壁部32における吸液芯4が当接する部分は当該底壁部32の中でも最も低くなっている。また、吸液芯4の上端部は、開口部44aから上方へ僅かに突出している。これにより、害虫が吸液芯4から害虫用ベイト剤を容易に喫食できる。尚、吸液芯4の上端部は、開口部44aと同一高さに配置されていてもよいし、開口部44aよりも僅かに低くてもよい。
【0045】
すなわち、吸液芯4は、害虫用ベイト剤を吸引して毛細管現象によってその上端面まで運ぶことで、スズメバチの誘引効果を有する。このことから吸液芯4は、害虫を誘引する誘引部であると言える。また、吸液芯4が害虫用ベイト剤を吸引するものであることから、吸液芯4は、遅効性の殺虫成分も含む部分である。また、吸液芯4は、害虫用ベイト剤中の誘引成分や忌避成分を空気中に蒸散させる部分であることから、蒸散部でもあると言える。
【0046】
図8に示すように、容器本体30の周壁部33よりも内側には、筒部44を下方から支持する3つのサポート部34が設けられている。具体的には、カップ部材31の底壁部32には、当該底壁部32から上方へ向けて延びる3つのサポート部34が一体成形されている。
図2等に示すように、3つのサポート部34は、筒部44の真下に配置されており、従って、各サポート部34の上方への延長線上に筒部44が位置付けられていることになる。各サポート部34の上端部は筒部44の下端部に当接している。詳しくは後述するが、この構成により、筒部44に対して下方への力が作用した時、その力を、サポート部34を介して底壁部32で受けることができ、筒部44の変形を抑制できる。
【0047】
3つのサポート部34は、吸液芯4の下側部分を囲むように設けられている。例えば吸液芯4の下側が径方向へ変位しようとすると、いずれかのサポート部34に吸液芯4が当たることによって当該吸液芯4が側方から支持されて吸液芯4の径方向への変位が抑制される。
【0048】
尚、仮に、サポート部34が吸液芯4の下側部分の周囲を完全に囲っていると、液量が少なくなってきたときに吸液芯4に対して害虫用ベイト剤が供給されなくなってしまう。そこで3つのサポート部34は、吸液芯4の周方向に互いに間隔をあけて設けられている。これにより、隣合うサポート部34、34の間には液体が流通可能な隙間が形成されることになるので、害虫用ベイト剤の残量が少なくなっても、害虫用ベイト剤を吸液芯4に供給できる。3つのサポート部34は周方向に等間隔に設けてもよいし、不等間隔に設けてもよい。尚、サポート部34の数は3つに限られるものではなく、2つ以下であってもよいし、4つ以上であってもよい。サポート部34を1つだけ設けることもできる。
【0049】
図6に示すように、各サポート部34は、平面視で円弧状に延びている。サポート部34の曲率は、筒部44の曲率と同じに設定されている。従って、サポート部34の上端部の周方向全体を筒部44の下端部に当接させることができる。
【0050】
カップ部材31の底壁部32には、複数のリブ35が上方へ突出するように設けられている。リブ35は、サポート部34を補強するためのものである。サポート部34の周方向両側にそれぞれリブ35が連なっており、これによりサポート部34の倒れ変形や屈曲変形が抑制される。リブ35は必要に応じて設ければよく、省略してもよい。
【0051】
ところで、吸液芯を備えた容器においては、容器内の液が残り少なくなってきたときに、最後の一滴まで吸液芯に供給できるようにするため、吸液芯の下端部に向けて容器底面をすり鉢状に傾斜させる構成が考えられる。しかしながら本実施形態のカップ部材31の底壁部32には、複数のサポート部34およびリブ35が上方に突出するように形成されている。このため、仮に、カップ部材31の底壁部32を吸液芯4の下端部に向けてすり鉢状に傾斜させた場合、害虫用ベイト剤の残量が少なくなってきたときに、サポート部34およびそれに連なっている一対のリブ35、35で囲まれた領域に液が溜まってしまい、液残りが発生する。
【0052】
そこで本実施形態では、
図6、7に示すように、カップ部材31の底壁部32には、第1傾斜部32aと、第2傾斜部32bとが形成されている。第1傾斜部32aは、底壁部32におけるサポート部34と、当該サポート部34に連なっている一対のリブ35、35とで囲まれた領域に形成されており、
図7に示すように底壁部32の径方向外方へ向けて下降傾斜している。この例では、サポート部34が3つあり、かつ、これらサポート部34が周方向に互いに離れているので、第1傾斜部32aも3つ設けられ、これらが周方向に互いに離れて配置される。また、
図6に示すように、1つのサポート部34に連なっている一対のリブ35、35の間隔は、底壁部32の径方向外方へ行くほど広がっているので、第1傾斜部32aの幅も底壁部32の径方向外方へ行くほど広くなる。
【0053】
第2傾斜部32bは、周方向に隣合う第1傾斜部32a、32aの間に形成されており、この第2傾斜部32bも底壁部32に3つある。第1傾斜部32aと第2傾斜部32bとは周方向に交互に並んでいる。第2傾斜部32bは、第1傾斜部32aと反対方向、即ち、底壁部32の径方向外方へ向けて下降傾斜している。第2傾斜部32bの径方向外側は、第1傾斜部32aの径方向外側と略同一高さにあるので、第1傾斜部32aによって径方向外側へ流れた害虫用ベイト剤(
図6及び
図7に矢印100で示す流れ)は、第2傾斜部32bの径方向外側に達する。第2傾斜部32bの径方向外側に達した害虫用ベイト剤は、第2傾斜部32bによって径方向内側へ流れて底壁部32の中央部に達する(
図6及び
図7に矢印200で示す流れ)。この底壁部32の中央部には吸液芯4の下端部が当接しているので、中央部に流れてきた害虫用ベイト剤は吸液芯4によって吸収される。つまり、底壁部32には、サポート部34よりも外側の液体をサポート部34よりも内側に向けて流す傾斜部32a、32bが設けられているので、液残りを無くすことができる。
【0054】
図10及び
図11に示すように、使用開始前の容器本体30には、柔軟性や可撓性を有するシール部材6が設けられている。シール部材6は、害虫駆除器具1の使用開始前に開口部44aを閉塞するとともに、含浸体5が収容された空間を閉塞しておくための部材である。シール部材6を構成する部材は、従来から周知であり、熱溶着可能かつ液体を通過させない性質を持ち、柔軟性や可撓性を有する部材である。このような部材は、例えば複数の樹脂層を積層した積層シートやフィルム等で構成することができる。シール部材6の周縁部の一部には、摘み部6aが突出するように形成されている。摘み部6aは、シール部材6を剥離する際に手で持つ部分である。
【0055】
シール部材6は、蓋部材40における開口部44aの周縁部である筒部44の上端部と、周板部42の上端部とに剥離可能に溶着されている。剥離可能とは、摘み部6aを手で持って
図12に示すように上方へ引っ張ると、シール部材6が破れたり、ちぎれることなく、周板部42の上端部及び筒部44の上端部から剥がれることである。これはホットメルト接着剤の選定等によって可能になる。
【0056】
次に、シール部材6の溶着工程について説明する。シール部材6を、周板部42の上端部及び筒部44の上端部に溶着する際には、
図9に示すように予め所定の形状に裁断されたシール部材6を用意し、シール部材6の下面を周板部42の上端部及び筒部44の上端部に当てる。そして、図示しないヒートシール装置のヒートヘッドをシール部材6の上面に押し当ててシール部材6をその下面の樹脂が溶融するまで加熱する。ヒートシール装置は、従来から周知のものを用いることができる。なお
図9に示すように、シール部材6の溶着時には、吸液芯4が筒部44に挿入されていない状態にしておく。これは、本実施形態では、吸液芯4の上端部が筒部44の上端からわずかに突出しているためである。しかし、吸液芯4の上端部は、筒部44の上端と同一高さか、筒部44の上端より低くすることもでき、この場合は当該吸液芯4が筒部44に挿入された状態でシール部材6を溶着しても良い。
【0057】
溶着時には、ヒートヘッドを、シール部材6に対して所定の力で下向きに押し付けておく必要がある。このとき、周壁部33および筒部44には、下向きに押し付ける力が加わるが、周板部42は周壁部33によって下方から支持されているので、周板部42の下方への変位は抑制される。また、筒部44の真下には周壁部33が存在しないが、筒部44はサポート部34によって下方から支持されているので、筒部44の下方への変位も抑制される。このように、ヒートヘッドを下向きに押し付けたときの周壁部33および筒部44の変位が抑制されるので、溶着時にシール部材6の下面を周板部42の上端部及び筒部44の上端部に確実に接触させておくことができ、溶着不良が起こりにくくなる。また、周壁部33および筒部44の変位が抑えられる結果、容器本体30の破損も起こりにくくなる。尚、筒部44の変位を抑えるという点では、底壁部32のサポート部34を省略し、筒部44を下向きに延長してその下端部が底壁部32に当接するようにしても良い。この場合、筒部44自体がサポート部としての機能を果たす。
【0058】
そして、上記のようにシール部材6を周板部42の上端部及び筒部44の上端部に溶着することにより、当該シール部材6によって開口部44a及び含浸体5が収容された空間を閉塞することができるので、保管時や運搬時に害虫用ベイト剤が外部に漏れることはなく、また含浸体5の薬剤が揮散することもない。尚、使用開始前に害虫用ベイト剤をカップ部材31に収容していない場合には、害虫用ベイト剤の漏れの心配はないが、シール部材6を設けておくことで異物がカップ部材31に入らないようにすることができる。
【0059】
次に、害虫駆除器具1を使用する場合について説明する。害虫駆除器具1の使用を開始する前にシール部材6を剥離する。すなわち、摘み部6aを手で持って
図12に示すように上方へ引っ張ることで、シール部材6が周板部42の上端部及び筒部44の上端部から剥離する。
【0060】
シール部材6を除去した後、吸液芯4を筒部44に挿入する。尚、使用開始前に害虫用ベイト剤をカップ部材31に収容していない場合には、吸液芯4を筒部44に挿入する前に害虫用ベイト剤をカップ部材31に入れる。吸液芯4は、害虫用ベイト剤を吸い上げて害虫用ベイト剤が吸液芯4の上端部に達する。
【0061】
そして、必要に応じて容器3にカバー部材2をとりつけたうえで、害虫用駆除器具1を屋外に設置する。設置場所は特に限定されるものではなく、山林であってもよいし、住宅地であってもよい。また、害虫用駆除器具1を吊り下げて設置してもよいし、台や机の上、地面等に置いて設置してもよい。害虫用駆除器具1を設置すると、害虫用ベイト剤によって害虫が誘引される。
【0062】
ここで、害虫用ベイト剤に含まれる糖類はスズメバチ成虫の喫食成分であるから、例えばスズメバチ成虫が誘引された場合の喫食性は良好である。誘引されたスズメバチ成虫が害虫用ベイト剤を喫食することにより、当該成虫の体内に殺虫成分が取り込まれる。ここで、殺虫成分を遅効性の殺虫剤とすることにより、スズメバチ成虫は即座には死なず、巣まで帰ることができる。
【0063】
一方、先ほどのスズメバチ成虫が喫食動作によって吸液芯4の上部に口を接触させたとき、脚や腹が含浸体5の上面に接触するので、昆虫成長抑制剤が体に付着する。従ってこのスズメバチ成虫は、昆虫成長抑制剤を体に付着させたまま、巣まで帰ることになる。
【0064】
巣に帰ったスズメバチ成虫は、喫食した害虫用ベイト剤を、巣の他の成虫に分け与えると考えらえる。害虫用ベイト剤には遅効性の殺虫成分が含まれているから、巣の他の成虫も、遅効性の殺虫成分を体内に取り込むことになる。
【0065】
また、巣に帰ったスズメバチ成虫が幼虫の世話をするとき、当該成虫の体に付着している昆虫成長抑制剤が、幼虫に付着する。これにより、当該幼虫は、正常に羽化することができなくなる。以上のようにして、スズメバチの巣の全体を駆除することができる。
【0066】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、シール部材6を容器本体30の開口部44aの周縁部に溶着する際にヒートヘッドを上方から押し付けてシール部材6を開口部44aの周縁部に密着させながら溶着する。このとき、開口部44aの周縁部には下向きの力が加わることになるが、この開口部44aを形成している筒部44を下方から支持するサポート部34が設けられているので、シール部材6の溶着時には、サポート部材34により、筒部44の下方への変位を抑制できる。これにより、シール部材6を狙い通りに確実に溶着して高いシール性を確保できるとともに、容器本体30の破損を回避できる。
【0067】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。上記実施形態では、害虫駆除器具1の容器3に本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、各種液体や粉体、粒状物等を収容する容器に本発明を適用することができ、、例えば芳香剤容器や抗菌・殺菌剤容器に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上説明したように、本発明に係る容器は、例えば害虫駆除器具として利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 害虫駆除器具
3 容器
4 吸液芯
6 シール部材
30 容器本体
32 底壁部
32a 第1傾斜部
32b 第2傾斜部
33 周壁部
34 サポート部
44 筒部
44a 開口部