(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】CD8abおよびクラス1制限T細胞受容体の強制発現による細胞傷害性CD8細胞へのCD4 T細胞の再プログラミング
(51)【国際特許分類】
A61K 35/17 20150101AFI20240730BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
A61K35/17 ZNA
A61P35/00
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2020558036
(86)(22)【出願日】2019-04-18
(86)【国際出願番号】 US2019028202
(87)【国際公開番号】W WO2019204662
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-04-15
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391058060
【氏名又は名称】ベイラー カレッジ オブ メディスン
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR COLLEGE OF MEDICINE
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アーバー バース、キャロライン、エヴァ
(72)【発明者】
【氏名】バーワ、ガガン
(72)【発明者】
【氏名】ブレナー、マルコム、ケイ.
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/058002(WO,A1)
【文献】特表2020-509767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
A61K 36/06-36/068
C12N 1/00-7/08
A61K 38/00-38/58
A61K 41/00-45/08
A61K 48/00
A61K 50/00-51/12
A61P 1/00-43/00
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体
をT細胞療法で治療する方法に使用するための、細胞を含有する組成物であって、ここで、該方法は、個体に有効量の細胞を提供することを含み、該細胞は、
(i)CD8αをコードする第1の核酸(N1)、CD8βをコードする第2の核酸(N2)、T細胞受容体(TCR)αをコードする第3の核酸(N3)、およびTCRβをコードする第4の核酸(N4)を含むベクターを
安定に発現するCD8+細胞であって、ここで、TCRαおよびTCRβは、抗原に結合する抗原結合部分を含む、CD8+細胞であり、
該CD8+細胞は、その個体に対して自家である細胞、および
(ii)CD8αをコードする第1の核酸(N1)、CD8βをコードする第2の核酸(N2)、T細胞受容体(TCR)αをコードする第3の核酸(N3)、およびTCRβをコードする第4の核酸(N4)を含むベクターを
安定に発現するCD4+細胞であって、ここで、TCRαおよびTCRβは、抗原に結合する抗原結合部分を含む、CD4+細胞
であり、該CD4+細胞は、その個体に関して自家である細胞、
を含み、
ここで、ベクター上の核酸の配向は、5’末端から3’末端に向かって、N4-N3-N1-N2である、組成物。
【請求項2】
前記抗原が腫瘍抗原であり、サバイビン、PRAME、CD19、CD20、CD22、カッパ鎖または軽鎖、CD30、CD33、CD123、CD38、ROR1、ErbB2、ErbB3/4、EGFR vIII、ガン胎児性抗原、EGP2、EGP40、メソテリン、TAG72、PSMA、NKG2Dリガンド、B7-H6、IL-13受容体cc2、IL-11受容体Ra、MUC1、MUC16、CA9、GD2、GD3、HMW-MAA、CD171、ルイスY、G250/CAIX、HLA-AI MAGE Al、HLA-A2 NY-ESO-1、PSC1、葉酸受容体-a、CD44v7/8、8H9、NCAM、VEGF受容体、5T4、胎児AchR、NKG2Dリガンド、HER2、BCMA、CD44v6およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
T細胞療法で個体を治療する方法に使用する為の細胞傷害性CD8+T細胞を製造する方法であって、CD8+T細胞
及び/又はCD4+T細胞に、CD8αをコードする第1の核酸(N1)、CD8βをコードする第2の核酸(N2)、T細胞受容体(TCR)αをコードする第3の核酸(N3)、およびTCRβをコードする第4の核酸(N4)を含むベクターを
安定にトランスフェクションすることを含み、ここで、TCRαおよびTCRβは、抗原に結合する抗原結合部分を含み、
ベクター上の核酸の配向は、5’末端から3’末端に向かって、N4-N3-N1-N2であり、
該CD8+細胞及び/又はCD4+細胞は、その個体に対して自家である、方法。
【請求項4】
請求項
3に記載の方法であって、ここで、
前記抗原が腫瘍抗原であり
、サバイビン、PRAME、CD19、CD20、CD22、カッパ鎖または軽鎖、CD30、CD33、CD123、CD38、ROR1、ErbB2、ErbB3/4、EGFR vIII、ガン胎児性抗原、EGP2、EGP40、メソテリン、TAG72、PSMA、NKG2Dリガンド、B7-H6、IL-13受容体cc2、IL-11受容体Ra、MUC1、MUC16、CA9、GD2、GD3、HMW-MAA、CD171、ルイスY、G250/CAIX、HLA-AI MAGE Al、HLA-A2 NY-ESO-1、PSC1、葉酸受容体-a、CD44v7/8、8H9、NCAM、VEGF受容体、5T4、胎児AchR、NKG2Dリガンド、HER2、BCMA、CD44v6およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、抗原である、方法。
【請求項5】
前記個体が
ガンを有する個体である、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記CD8αが、
配列表の配列番号11に示すアミノ酸配列を含み、CD8βが、
配列表の配列番号13に示すアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の
組成物。
【請求項7】
前記CD8αが、
配列表の配列番号11に示すアミノ酸配列を含み、CD8βが、配列表の配列番号13に示すアミノ酸配列を含む、請求項3~5のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国仮特許出願第62/659,971号(2019年4月19日出願;これはその全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)の優先権を主張する。
本開示の様々な実施形態が少なくとも、免疫学、細胞生物学、生物学、分子生物学、細胞療法、およびガン医学を少なくとも含む医学の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
血液学的悪性腫瘍(例えば、多発性骨髄腫など)のためのT細胞受容体(TCR)操作養子T細胞療法が有望な結果をもたらしている1。しかしながら、腫瘍関連の自己抗原を標的とするほとんどのTCRが、自家レパートリーから単離されたものであり、低い機能的アビディティーを有する;これは、高親和性TCRを有するT細胞の大部分が胸腺選択の期間中に排除され、生き残ったクローンが、自己免疫疾患を回避するために末梢での微調整を受けるからである2、3。この適度な結合親和性により、TCR遺伝子組換えT細胞が悪性細胞表面での低レベルの腫瘍関連抗原(TAA)を認識する能力が制限されることがある。この制限を克服するための戦略には、同種レパートリーからの高親和性TCRの単離4、または高親和性の合成TCRの作製および選択5、6が含まれる。そのような戦略は好成績をもたらし得る1、5、6が、潜在的には致死的であるオフターゲット影響を伴う深刻な望ましくない交差反応性を生じさせ得る7~9。したがって、本発明者らは現在、代替アプローチについて研究を行っている。TAAに由来するエピトープを標的とするほとんどのTCRがHLAクラスI制限であり、生理学的条件のもとでは、CD8αβ共受容体が、HLAクラスI制限TCRを発現するT細胞の機能的アビディティーを増大させている10、11。CD8 T細胞においては、内因性共受容体の利用可能性が制限されることで、その完全かつ持続した活性化が、導入されたTCRと内因性CD8との間でのコピー数の不均衡のために妨げられることがある。ウイルスベクターにより操作されたT細胞は超生理学的なコピー数の導入された導入遺伝子を発現し12、一方で、CD8共受容体が生理学的レベルで発現される。遺伝子組換えTCRと一緒でのCD8αβ共受容体の強制発現により、全体的なTCR+T細胞:標的細胞の相互作用が増大させられ、その結果、増大した抗腫瘍機能がもたらされることが、本明細書中において示される。
【0003】
CD8+T細胞とCD4+T細胞との間での相互作用が、効果的な免疫応答を調整するために極めて重要である13。したがって、遺伝子組換えのHLAクラスI制限TCRを発現するCD4+T細胞におけるCD8αβ共受容体の発現を強制することの結果が明らかにされた。CD4+T細胞はウイルス感染症に対する抗原特異的免疫に多面的に寄与しており、長期腫瘍抑制の開始および維持において不可欠である14。例えば、骨髄移植後の感染を処置するためのサイトメガロウイルス特異的なCD8+T細胞クローンの注入はウイルス血症を抑制しており、しかし、追加のCD4+ヘルパーT細胞が存在する場合にのみ、これらの移入されたCD8+T細胞が持続する15。腫瘍が標的となるT細胞療法が使用されるとき、類似する重要性が、CD4+T細胞に起因している。例えば、転移性胆管ガン患者からのネオ抗原反応性の腫瘍浸潤リンパ球はほとんどがCD4+TH1区画に含まれ、これらの細胞の養子移入は腫瘍の退縮をもたらした16。CD19が標的となるキメラ抗原受容体(CAR)T細胞の抗腫瘍活性の相乗的増強が、定義されたCD4:CD8比を有するCAR T細胞を使用してバーキットリンパ腫異種移植マウスモデルにおいて報告されており17、一方で、最終製造物における1:1のCD4:CD8 CD19-CAR T細胞比によるリンパ腫患者のための臨床試験では、CD4+サブセットおよびCD8+サブセットの両方のT細胞の拡大および持続が伴って、高い腫瘍応答率がもたらされ18、このことは、CD4+およびCD8+の両方の腫瘍特異的T細胞が悪性腫瘍抑制のために最適であることを示していた。
【0004】
これらの結果は、(1)TCR+CD8+T細胞の機能がCD8共受容体の増大した利用可能性により増強され得ること、および(2)CD8αβと、遺伝子組換えのMHCクラスI制限TAA特異的TCRとの両方が強制発現させられるCD4+T細胞は、CD4+TH細胞のヘルパー機能を維持しながら、多機能なハイブリッド型の細胞傷害性エフェクター細胞に再プログラミングされることを示している。これらのハイブリッド細胞は、TCR-ペプチド-MHC複合体の増大した安定性と、TCRシグナル伝達とに伴って、インビトロおよびインビボにおける増強された抗腫瘍機能を、軽減された機能的消耗および改善された発現とともに有する。
【0005】
したがって、本開示は、共受容体に依存しているTCR遺伝子組換えのCD8+T細胞の機能を増強し、かつ、養子移入のための細胞傷害機能およびヘルパー機能の両方を有するハイブリッドCD4+T細胞の使用を可能にするためのアプローチを提供することによって、養子移入の分野における必要性に対処している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Rapoport AP,Stadtmauer EA,Binder-Scholl GK,et al.NY-ESO-1-specific TCR-engineered T cells mediate sustained antigen-specific antitumor effects in myeloma.Nat Med.2015;21(8):914-921
【文献】Arber C,Feng X,Abhyankar H,et al.Survivin-specific T cell receptor targets tumor but not T cells.J Clin Invest.2015;125(1):157-168
【文献】Cho JH,Sprent J.TCR tuning of T cell subsets.Immunol Rev.2018;283(1):129-137
【文献】Leisegang M,Wilde S,Spranger S,et al.MHC-restricted fratricide of human lymphocytes expressing survivin-specific transgenic T cell receptors.J Clin Invest.2010;120(11):3869-3877
【文献】Li Y,Moysey R,Molloy PE,et al.Directed evolution of human T-cell receptors with picomolar affinities by phage display.Nat Biotechnol.2005;23(3):349-354
【文献】Robbins PF,Li YF,El-Gamil M,et al.Single and dual amino acid substitutions in TCR CDRs can enhance antigen-specific T cell functions.J Immunol.2008;180(9):6116-6131
【文献】Linette GP,Stadtmauer EA,Maus MV,et al.Cardiovascular toxicity and titin cross-reactivity of affinity-enhanced T cells in myeloma and melanoma.Blood.2013;122(6):863-871
【文献】Cameron BJ,Gerry AB,Dukes J,et al.Identification of a Titin-derived HLA-A1-presented peptide as a cross-reactive target for engineered MAGE A3-directed T cells.Sci Transl Med.2013;5(197):197ra103
【文献】Morgan RA,Chinnasamy N,Abate-Daga D,et al.Cancer regression and neurological toxicity following anti-MAGE-A3 TCR gene therapy.J Immunother.2013;36(2):133-151
【文献】Cole DK,Laugel B,Clement M,Price DA,Wooldridge L,Sewell AK.The molecular determinants of CD8 co-receptor function.Immunology.2012;137(2):139-148
【文献】Hebeisen M,Schmidt J,Guillaume P,et al.Identification of Rare High-Avidity,Tumor-Reactive CD8+T Cells by Monomeric TCR-Ligand Off-Rates Measurements on Living Cells.Cancer Res.2015;75(10):1983-1991
【文献】Nishimura CD,Brenner DA,Mukherjee M,et al.c-MPL provides tumor-targeted T-cell receptor-transgenic T cells with costimulation and cytokine signals.Blood.2017;130(25):2739-2749
【文献】Ostroumov D,Fekete-Drimusz N,Saborowski M,Kuhnel F,Woller N.CD4 and CD8 T lymphocyte interplay in controlling tumor growth.Cell Mol Life Sci.2018;75(4):689-713
【文献】Kennedy R,Celis E.Multiple roles for CD4+T cells in anti-tumor immune responses.Immunol Rev.2008;222:129-144
【文献】Walter EA,Greenberg PD,Gilbert MJ,et al.Reconstitution of cellular immunity against cytomegalovirus in recipients of allogeneic bone marrow by transfer of T-cell clones from the donor.N Engl J Med.1995;333(16):1038-1044
【文献】Tran E,Turcotte S,Gros A,et al.Cancer immunotherapy based on mutation-specific CD4+T cells in a patient with epithelial cancer.Science.2014;344(6184):641-645
【文献】Sommermeyer D,Hudecek M,Kosasih PL,et al.Chimeric antigen receptor-modified T cells derived from defined CD8+and CD4+subsets confer superior antitumor reactivity in vivo.Leukemia.2016;30(2):492-500
【文献】Turtle CJ,Hanafi LA,Berger C,et al.Immunotherapy of non-Hodgkin’s lymphoma with a defined ratio of CD8+and CD4+CD19-specific chimeric antigen receptor-modified T cells.Sci Transl Med.2016;8(355):355ra116
【発明の概要】
【0007】
本開示の実施形態には、細胞療法を必要としている哺乳動物個体のための細胞療法に関連する方法および組成物が含まれる。細胞療法では、医学的状態(例えば、ガンなど)のための治療法として効果的であるように人の手によって操作される細胞が含まれる。細胞療法では、免疫エフェクター細胞、例えば、抗原を標的とする受容体を有するT細胞またはNK細胞などが含まれ、受容体は、細胞に対して内因性で、生来である場合があり、または人の手によって操作される場合がある。ある特定の実施形態において、細胞療法の細胞は、細胞の効力を治療のために増強するタンパク質を発現するように改変され、また、特に細胞療法の細胞は、特定の抗原を標的とする受容体(これは細胞に対して生来である、または生来でない)もまた発現する。受容体の標的となる抗原が、具体的な実施形態においてはガン抗原である。受容体は少なくともいくつかの場合にはT細胞受容体(TCR)であるが、代替となる場合において、受容体はキメラ抗原受容体(CAR)であり、または細胞は両方を発現する場合がある。
【0008】
特定の実施形態において、細胞の効力を治療のために増強するタンパク質は、CD8-α鎖および/またはCD8-β鎖を含む分化抗原群8(CD8)である。T細胞は、CD4+T細胞またはCD8+T細胞であるか否かに関わらず、CD8αβを発現するように改変される。CD8+T細胞については、CD8αβ共受容体の発現レベルがCD8+T細胞において増大すると、細胞における生来のTCRが効果的であり得ることが高まり、遺伝子組換えのCD8+T細胞における操作されたTCRが効果的であり得ることもまた高まる。CD4+T細胞(これは生来的にはヘルパーT細胞である)が、CD8αβを発現するように改変される場合には、その遺伝子組換え発現により、CD4+T細胞もまた細胞傷害活性を有することが可能になる。
【0009】
本開示の実施形態には、個体のための免疫エフェクター細胞療法を増強する方法であって、下記細胞の一方または両方の効果的な量を当該個体に与える工程を含む方法が含まれる:外因性のCD8αβ共受容体を発現し、かつ任意に1つまたは複数の外因性の操作された抗原受容体を発現するCD8+細胞、および外因性のCD8αβ共受容体と1つまたは複数の外因性の操作された抗原受容体とを発現するCD4+細胞。具体的な場合において、操作された抗原受容体は、T細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはそれらの両方である。CD8+細胞、CD4+細胞、またはそれらの両方が、個体に関して自家または同種である場合がある。いくつかの場合において、外因性の操作された抗原受容体と、外因性のCD8αβ共受容体とが、同じベクターから細胞において発現し、ベクターは、外因性の操作された抗原受容体と、外因性のCD8αβ共受容体とを別々に発現する1つまたは複数の発現構築物を含む場合がある。具体的な実施形態において、外因性の操作された抗原受容体を発現する発現構築物と、外因性のCD8αβ共受容体を発現する発現構築物とは、2AエレメントまたはIRESエレメントによって隔てられる。いくつかの場合において、外因性の操作された抗原受容体と、外因性のCD8αβ共受容体とが、異なるベクターから細胞において発現する。いずれの場合においても、ベクターは、ウイルスベクター(アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクター)または非ウイルスベクターであり得る。
【0010】
上記方法の特定の実施形態において、抗原は腫瘍抗原または病原体抗原である。腫瘍抗原の例には、サバイビン、PRAME、CD19、CD20、CD22、カッパ鎖または軽鎖、CD30、CD33、CD123、CD38、ROR1、ErbB2、ErbB3/4、EGFR vIII、ガン胎児性抗原、EGP2、EGP40、メソテリン、TAG72、PSMA、NKG2Dリガンド、B7-H6、IL-13受容体cc2、IL-11受容体Ra、MUC1、MUC16、CA9、GD2、GD3、HMW-MAA、CD171、ルイスY、G250/CAIX、HLA-AI MAGE Al、HLA-A2 NY-ESO-1、PSC1、葉酸受容体-a、CD44v7/8、8H9、NCAM、VEGF受容体、5T4、胎児AchR、NKG2Dリガンド、HER2、BCMA、CD44v6およびそれらの組み合わせからなる群から選択される腫瘍抗原が含まれる。
【0011】
本開示の方法はさらに、効果的な量の上記CD4+T細胞、上記CD8+T細胞、またはそれらの混合物を個体に与える工程を含む場合がある。そのような場合において、方法はさらに、さらなるガン療法を個体に施す工程を含む場合がある。
【0012】
本開示の実施形態には、細胞傷害性エフェクター細胞機能と、ヘルパー機能とを有するCD4+T細胞を作製する方法であって、CD4+T細胞を外因性のCD8αβ共受容体および外因性の操作された抗原受容体によりトランスフェクションする工程を含む方法が含まれる。操作された抗原受容体は、T細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはそれらの両方である場合がある。外因性の操作された抗原受容体と、外因性のCD8αβ共受容体とが、同じベクターから細胞において発現する場合があり、または発現しない場合がある。特に、ベクターは、外因性の操作された抗原受容体と、外因性のCD8αβ共受容体とを別々に発現する1つまたは複数の発現構築物を含む。外因性の操作された抗原受容体を発現する発現構築物と、外因性のCD8αβ共受容体を発現する発現構築物とは、2AエレメントまたはIRESエレメントによって隔てられる場合がある。ベクターには、ウイルスベクター(アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクター)または非ウイルスベクターが含まれる。
【0013】
抗原は腫瘍抗原または病原体抗原である場合がある。いくつかの場合において、腫瘍抗原は、サバイビン、PRAME、CD19、CD20、CD22、カッパ鎖または軽鎖、CD30、CD33、CD123、CD38、ROR1、ErbB2、ErbB3/4、EGFR vIII、ガン胎児性抗原、EGP2、EGP40、メソテリン、TAG72、PSMA、NKG2Dリガンド、B7-H6、IL-13受容体cc2、IL-11受容体Ra、MUC1、MUC16、CA9、GD2、GD3、HMW-MAA、CD171、ルイスY、G250/CAIX、HLA-AI MAGE Al、HLA-A2 NY-ESO-1、PSC1、葉酸受容体-a、CD44v7/8、8H9、NCAM、VEGF受容体、5T4、胎児AchR、NKG2Dリガンド、HER2、BCMA、CD44v6およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0014】
本開示の方法はさらに、効果的な量の上記CD4+T細胞を個体に対して、その必要性のある個体(例えば、ガンを有する個体など)に対して与える工程を含む場合がある。外因性のCD8αβ共受容体、外因性の操作された抗原受容体、またはそれらの両方を発現する効果的な量のCD8+T細胞が個体に与えられる場合があり、個体はまた、さらなるガン療法を受けている場合がある。
【0015】
本開示の実施形態には、CD8+T細胞の細胞傷害性を増強する方法であって、CD8+T細胞を外因性のCD8αβ共受容体によりトランスフェクションする工程を含む方法が含まれる。CD8+T細胞はまた、外因性の操作された抗原受容体、例えば、T細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、またはそれらの両方などを発現する場合がある。外因性の操作された抗原受容体と、外因性のCD8αβ共受容体とは、同じベクターから細胞において発現する。ベクターは、外因性の操作された抗原受容体と、外因性のCD8αβ共受容体とを別々に発現する1つまたは複数の発現構築物を含む場合がある。いくつかの場合において、外因性の操作された抗原受容体を発現する発現構築物と、外因性のCD8αβ共受容体を発現する発現構築物とは、2AエレメントまたはIRESエレメントによって隔てられる。外因性の操作された抗原受容体と、外因性のCD8αβ共受容体とが、異なるベクターから細胞において発現する場合がある。ウイルスベクター(アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはレンチウイルスベクター)または非ウイルスベクターが利用される場合がある。
【0016】
抗原には、腫瘍抗原または病原体抗原が含まれる。腫瘍抗原には、CD19、CD20、CD22、カッパ鎖または軽鎖、CD30、CD33、CD123、CD38、ROR1、ErbB2、ErbB3/4、EGFR vIII、ガン胎児性抗原、EGP2、EGP40、メソテリン、TAG72、PSMA、NKG2Dリガンド、B7-H6、IL-13受容体cc2、IL-11受容体Ra、MUC1、MUC16、CA9、GD2、GD3、HMW-MAA、CD171、ルイスY、G250/CAIX、HLA-AI MAGE Al、HLA-A2 NY-ESO-1、PSC1、葉酸受容体-a、CD44v7/8、8H9、NCAM、VEGF受容体、5T4、胎児AchR、NKG2Dリガンド、HER2、BCMA、CD44v6およびそれらの組み合わせからなる群から選択される腫瘍抗原が含まれる。上記方法はさらに、効果的な量の上記CD8+T細胞を個体に対して、その必要性のある個体に対して与える工程を含む場合がある。上記方法はさらに、効果的な量のCD4+T細胞を個体に対して、その必要性のある個体に対して与える工程を含む場合がある。CD4+T細胞は、外因性のCD8αβ共受容体、外因性の操作された抗原受容体、またはそれらの両方を発現するように操作される場合がある。個体はガンを有する場合があり、上記方法はさらに、さらなるガン療法を個体に施す工程を含む場合がある。
【0017】
本開示の様々な実施形態が、CD8αβ共受容体を遺伝子組換えにより発現するCD4+T細胞を含む組成物に関する。CD4+T細胞はまた、1つまたは複数の外因性の操作された抗原受容体(例えば、TCR、CAR、またはそれらの両方など)を遺伝子組換えにより発現する場合がある。組成物はさらに、CD8αβ共受容体、1つまたは複数の外因性の操作された抗原受容体、あるいはそれらの両方を遺伝子組換えにより発現するCD8+T細胞を含めて、CD8+T細胞をどのような種類であれ含み得る。
【0018】
本開示の実施形態には、CD8αβ共受容体と、任意に1つまたは複数の外因性の操作された抗原受容体とを遺伝子組換えにより発現するCD8+T細胞を含む組成物が含まれる。操作された抗原受容体は、TCR、CAR、またはそれらの両方である場合がある。組成物はさらに、CD8αβ共受容体、1つまたは複数の外因性の操作された抗原受容体、あるいはそれらの両方を遺伝子組換えにより発現するCD4+T細胞を含めて、CD4+T細胞をどのような種類であれ含み得る。
【0019】
本発明の1つの実施形態に関して議論される限定はどれも、本発明のどのような他の実施形態に対しても当てはまる場合があることが特に意図される。さらに、本発明の組成物はどれも、本発明のどのような方法においても使用される場合があり、本発明の方法はどれも、どのような組成物であれ本発明の組成物を製造するために、または利用するために使用される場合がある。実施例において示される1つの実施形態の様々な局面はまた、異なる実施例においてどこか他のところで、または本出願においてどこか他のところで、例えば、発明の概要、実施形態の詳細な説明、請求項、および図の凡例の説明などで議論される実施形態との関連において実行されることがある実施形態でもある。
【0020】
上記では、本発明の特徴および技術的利点が、下記の詳細な説明がよりよく理解され得るためにかなり広く概説されている。本明細書中における請求項の主題を形成するさらなる特徴および利点が本明細書中下記において記載されるであろう。開示される概念および具体的な実施形態は、本件設計の同じ目的を実施するために他の構成を変更するための、または設計するための基礎として容易に利用され得ることが、当業者によって理解されなければならない。そのような同等な組立ては、添付された請求項において示されるような精神および範囲から逸脱しないこともまた、当業者によって認識されなければならない。さらなる目的および利点と一緒にではあるが、構成および操作方法の両方に関して、本明細書中に開示される設計に特徴的であると考えられる新規な特徴が、添付されている図面に関連して検討されたとき、下記の説明からよりよく理解されるであろう。しかしながら、図面のそれぞれが例示および説明のためだけに提供されており、本開示の限界の定義として意図されないことが、明確に理解されなければならない。本発明のさらなる目的、特徴、局面および利点について、一部が下記の説明において示されるであろうし、一部が下記の説明から明白であろうし、または本発明の実施によって認識される場合がある。本開示の様々な実施形態が、当業者が本発明を実施することを可能にするために十分に詳しく記載されるであろうし、そして、他の実施形態が利用され得ること、および、様々な変化が、本発明の範囲から逸脱することなくなされ得ることが理解されなければならない。したがって、下記の詳細な説明は、限定する意味では解釈されず、本発明の範囲は、添付された請求項によって最もよく定義される。
【0021】
本開示のより完全な理解のために、次に、添付されている図面と併せて理解される下記の説明が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】CD4+T細胞は、クラスI TCRおよびCD8αβが形質導入されたとき、ハイブリッド表現型に転換する。
【
図1B】CD4+T細胞は、クラスI TCRおよびCD8αβが形質導入されたとき、ハイブリッド表現型に転換する。
【
図1C】CD4+T細胞は、クラスI TCRおよびCD8αβが形質導入されたとき、ハイブリッド表現型に転換する。
【
図1D】CD4+T細胞は、クラスI TCRおよびCD8αβが形質導入されたとき、ハイブリッド表現型に転換する。
【
図1E】CD4+T細胞は、クラスI TCRおよびCD8αβが形質導入されたとき、ハイブリッド表現型に転換する。(
図1A)レトロウイルスベクターの概略。(
図1B)NTコントロールと比較されるTCRベクターまたはT8ベクターに関してのCD4+T細胞(赤四角)またはCD8+T細胞(黒丸)の形質導入効率、n=6。CD4+T細胞およびCD8+T細胞におけるCD8α発現(
図1C)、CD8β発現(
図1D)およびサバイビンLMLデキストラマー染色(
図1E)の代表的なヒストグラム(上段パネル)、ならびにMFI概要(下段パネル)、n=5~7のドナー。(
図1C、
図1D、
図1E)NT:灰色線、TCR+:青色線、T8+:緑色線。平均±SD、NS:有意でない、
*p≦0.05、
**p≦0.01、
***p≦0.001、
****p≦0.0001。
【0023】
【
図2】T8+CD4+T細胞は、TCR+またはT8+のCD8+T細胞と類似する機能的アビディティーを呈する。IFN-γ ELISpot数(SFU/10
5個の遺伝子組換え細胞)による、サバイビンのLMLペプチドまたはPRAMEのNLTペプチドに対する、遺伝子組換えのサバイビン特異的(s24、左上;s16、左下)またはPRAME特異的(p28、右上;p11、右下)なTCR+(白棒)またはT8+(黒棒)のCD4+T細胞(赤棒)またはCD8+T細胞(黒棒)のアビディティー。1つの代表的なドナーからのデータが示される(3つのドナーがそれぞれのTCRについて試験された)。検出限界:黒色点線。
【0024】
【
図3A】TCRと一緒でのCD8αβの共発現は逐次殺傷能をCD4+T細胞に与え、CD8+T細胞の機能を改善する。
【
図3B】TCRと一緒でのCD8αβの共発現は逐次殺傷能をCD4+T細胞に与え、CD8+T細胞の機能を改善する。
【
図3C】TCRと一緒でのCD8αβの共発現は逐次殺傷能をCD4+T細胞に与え、CD8+T細胞の機能を改善する。
【
図3D】TCRと一緒でのCD8αβの共発現は逐次殺傷能をCD4+T細胞に与え、CD8+T細胞の機能を改善する。
【
図3E】TCRと一緒でのCD8αβの共発現は逐次殺傷能をCD4+T細胞に与え、CD8+T細胞の機能を改善する。
【
図3F】TCRと一緒でのCD8αβの共発現は逐次殺傷能をCD4+T細胞に与え、CD8+T細胞の機能を改善する。(
図3A)NT T細胞、TCR+またはT8+のCD4+T細胞(赤棒)またはCD8+T細胞(黒棒)の、BV173白血病細胞(HLA-A2
*02:01+サバイビン+)との共培養;1:5のE:T比、残留BV173細胞を3日目に定量化した、n=7。(
図3B)NT T細胞、TCR+またはT8+のCD4+T細胞(左)またはCD8+T細胞(右)の、野生型(WT)BV173細胞(黒塗り棒)またはβ2-ミクログロブリンノックアウト(B2M-KO)BV173細胞(白抜き棒)との共培養;1:5のE:T比、残留BV173細胞を3日目に定量化した、n=3。(
図3C)逐次共培養の実験設定。(
図3D)CD4+T細胞(左)またはCD8+T細胞(右)の逐次共培養。腫瘍細胞の再攻撃(+)を伴う経時的な腫瘍細胞(上段パネル)およびT細胞(下段パネル)の定量化、n=7。T細胞拡大:TCR+対T8+CD4:p<0.0001;TCR+対T8+CD8:p=NS;T8+CD4対TCR+CD8:p=0.002;T8+CD4対CD8、p=0.015、log AUCでのt検定。(
図3E)1回目の腫瘍攻撃の24時間後(D1)および3回目の腫瘍攻撃の24時間後(D10)での共培養上清におけるサイトカイン定量化、n=6。(
図3F)HLA-A
*02+ドナー由来(上段パネル)またはHLA-A
*02-ドナー由来(下段パネル)の、NT T細胞、TCR+またはT8+のCD4+T細胞(赤)およびCD8+T細胞(黒)のT細胞拡大倍数、n=3~4。(
図3A、
図3B、
図3E、
図3F)平均±SD、NS:有意でない、
*p≦0.05、
**p≦0.01、
***p≦0.001、
****p≦0.0001。
【0025】
【
図4A】TCR-CD8αβの共発現は、CD8+T細胞だけの逐次殺傷能を改善し、CD4+T細胞だけを細胞傷害性CD8+T細胞に転換する。
【
図4B】TCR-CD8αβの共発現は、CD8+T細胞だけの逐次殺傷能を改善し、CD4+T細胞だけを細胞傷害性CD8+T細胞に転換する。(
図4A)TIMINGによるT細胞と標的細胞との間における相互作用の動力学の細胞個々での定量化。t
Seek:エフェクター細胞と標的細胞とが最初に遭遇するまでの時間、t
Contact:エフェクター細胞と標的細胞との間における接合時間、t
Death:最初の接触から標的細胞アポトーシスまでの時間。(
図4B)1つの標的細胞(左側、E:Tが1:1)もしくは2つの標的細胞(右側、E:Tが1:2)を見出すこと(t
Seek)(上段の列)、標的との安定な接合部を形成すること(t
Contact、中央の列)、または標的を殺傷すること(t
Death)における単一エフェクター細胞の累積発生率。TCR+CD4+T細胞(赤点線)、T8+CD4+T細胞(赤実線)、TCR+CD8+T細胞(黒点線)、およびT8+CD8+T細胞(黒実線)。NS:有意でない、
*p≦0.05、
**p≦0.01、
***p≦0.001、
****p≦0.0001、ログランク検定。
【0026】
【
図5B】初期のTCRシグナル伝達事象の分析。(
図5A)pLck Y394リン酸化の代表的なFACSヒストグラム:NT T細胞(灰色)、TCR+(青色)およびT8+(緑色)のCD4+T細胞またはCD8+T細胞。(
図5B)NTコントロール細胞におけるMFIに対して正規化されるpLCK MFIの概要。n=4つのドナー、平均±SD、CD4 TCR+対T8+:104±11対173±35%、CD8 TCR+対T8+:106±7対126±13%、T8+CD8対CD4:126±13対173±35%。NS:有意でない、
*p≦0.05、
**p≦0.01、
***p≦0.001、
****p≦0.0001。
【0027】
【
図6A】遺伝子組換えCD8αβはTCR遺伝子組換えのCD8+T細胞およびCD4+T細胞のインビボ抗腫瘍機能を増強する。
【
図6B】遺伝子組換えCD8αβはTCR遺伝子組換えのCD8+T細胞およびCD4+T細胞のインビボ抗腫瘍機能を増強する。
【
図6C】遺伝子組換えCD8αβはTCR遺伝子組換えのCD8+T細胞およびCD4+T細胞のインビボ抗腫瘍機能を増強する。
【
図6D】遺伝子組換えCD8αβはTCR遺伝子組換えのCD8+T細胞およびCD4+T細胞のインビボ抗腫瘍機能を増強する。
【
図6E】遺伝子組換えCD8αβはTCR遺伝子組換えのCD8+T細胞およびCD4+T細胞のインビボ抗腫瘍機能を増強する。(
図6A)実験設定。(
図6B、
図6D)CD8+T細胞(
図6B)またはCD4+T細胞(
図6D)により処置されるマウスからのBLIデータの概要。非形質導入(NT)のコントロールT細胞(n=5、灰色)、TCR+T細胞(n=5、青色)、T8+T細胞(n=5、緑色)。(
図6B)CD8:NT対TCR+:p=0.0002、NT対T8+:p<0.0001、TCR+対T8+:p=0.01、0日目と比較される28日目におけるlog AUCでのt検定。(
図6D)CD4:TCR+対T8+:p=0.001、0日目と比較される35日目におけるlog AUCでのt検定。(
図6C、
図6E)CD8+T細胞(
図6C)およびCD4+T細胞(
図6E)についてBLI(カラースケール:5×10
3~5×10
4p/秒/cm
2/sr)によって経時的に画像化される群あたり3匹の代表的マウス。
【発明の詳細な説明】
【0028】
I.定義の例
【0029】
長年にわたる特許法の慣例と一致して、“a”および“an”の単語は、請求項を含めて、comprising(含む)の単語と併せて本明細書において使用されるときには、“one or more”(1つまたは複数)を意味する。本開示のいくつかの実施形態は、本開示の1つまたは複数の要素、方法工程および/または方法からなる場合があり、あるいは、本開示の1つまたは複数の要素、方法工程および/または方法から本質的になる場合がある。本明細書中に記載される方法または組成物はどれも、開示される、そして、同じような結果または類似する結果を本開示の精神および範囲から逸脱することなく依然として得る実施形態において記載される他の方法または組成物に関して、それらがどのようなものであれ実施され得ることが意図される。請求項における用語“or”(または、もしくは、あるいは)の使用は、代替物のみに言及するために明示的に示される場合、または代替物が相互に排他的である場合を除き、“and/or”(および/または)を意味するために使用され、だが、開示では、単に代替物および“and/or”を示す定義が維持される。本明細書中で使用される場合、「別の」は、少なくとも第2またはそれ以上を意味することがある。
【0030】
長年にわたる特許法の慣例と一致して、“a”および“an”の単語は、請求項を含めて、comprising(含む)の単語と併せて本明細書において使用されるときには、“one or more”(1つまたは複数)を意味する。本開示のいくつかの実施形態は、本開示の1つまたは複数の要素、方法工程および/または方法からなる場合があり、あるいは、本開示の1つまたは複数の要素、方法工程および/または方法から本質的になる場合がある。本明細書中に記載される方法または組成物はどれも、本明細書中に記載される他の方法または組成物に関して、それらがどのようなものであれ実施され得ること、また、種々の実施形態が組み合わせられてもよいことが意図される。
【0031】
本出願全体を通して、用語「約」は、値を決定するために用いられているデバイスまたは方法についての誤差の標準偏差を当該値が含むことを示すために、細胞生物学および分子生物学の分野におけるその平易かつ通常の意味に従って使用される。
【0032】
本明細書全体を通して、文脈上別途要求される場合を除き、単語“comprise”(含む)、単語“comprises”(含む)および単語“comprising”(含む)は、明記された工程または要素または一群の工程もしくは要素を含み、しかし、他の工程または要素または一群の工程もしくは要素をどのようなものであれ除外しないことを意味するように理解されるものとする。“consisting of”(からなる)によって、句“consisting of”に続くものはどのようなものも含み、かつそれに限定されることが意味される。したがって、句“consisting of”(からなる)は、列挙された要素が要求され、または必須であること、そして他の要素は存在しなくてもよいことを示している。“consisting essentially of”(本質的にからなる)によって、この句の後に列挙されるあらゆる要素を含むこと、そして、列挙された要素について開示において指定される活性もしくは作用を妨げない、または列挙された要素について開示において指定される活性もしくは作用に寄与する他の要素に限定されることが意味される。したがって、句“consisting essentially of”(本質的にからなる)は、列挙された要素が要求され、または必須であること、しかし、列挙されていない他の要素は随意的であり、列挙された要素の活性または作用に影響するか否かに依存して存在する場合がある、または存在しない場合があることを示している。
【0033】
本明細書全体を通して、“one embodiment”(1つの実施形態)、“an embodiment”(1つの実施形態)、“a particular embodiment”(特定の実施形態)、“a related embodiment”(関連した実施形態)、“a certain embodiment”(ある特定の実施形態、“an additional embodiment”(さらなる実施形態、“a further embodiment”(さらなる実施形態)、またはそれらの組み合わせに対する言及は、当該実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる様々な場所での前述の語句の出現は必ずしもすべてが、同じ実施形態に言及しているとは限らない。さらに、そのような特定の特徴、構造または特性は、1つまたは複数の実施形態において、どのような様式であれ好適な様式で組み合わされる場合がある。
【0034】
用語「操作された抗原受容体」は、本明細書中で使用される場合、特定の抗原に結合する、人の手によって作り出されている合成された細胞表面タンパク質を示す。
【0035】
用語「外因性の」は、細胞に関して本明細書中で使用される場合には、例えば、人の手から組換え工学方法によって細胞に提供される分子を示す。この用語は、自然界に見出される細胞に対して生来である内因性の分子とは区別される。
【0036】
疾患もしくは状態を「処置する」、または疾患もしくは状態の処置は、1つまたは複数の薬物または治療法(細胞を含む)を患者に施すことを含むことがあるプロトコルを、疾患の少なくとも1つの徴候または症状を緩和しようとして実行することを示す。処置の望ましい効果には、疾患進行の速度を低下させること、疾患状態を改善または軽減すること、少なくとも1つの症状の発症を遅らせること、および寛解または改善された予後が含まれる。緩和は、疾患または状態の徴候または症状が現れる前に、同様にまた、それらが現れた後で、またはそれらの両方で起こり得る。したがって、「処置する」または「処置」は、疾患もしくは望ましくない状態を「防止する」、または疾患もしくは望ましくない状態の「防止」を含む場合がある。加えて、「処置する」または「処置」は1つまたは複数の徴候または症状の完全な緩和を必要とせず、また、治癒を必要とせず、また、患者に対するほんのわずかな効果しか有しないプロトコルを特に含む。
【0037】
用語「治療的利益」または用語「治療効果的な」は、本出願全体を通して使用される場合、状態の医学的処置に関して対象の安寧を促進するものまたは増強するものを何であれ示す。これには、疾患の1つまたは複数の徴候または症状の頻度または重篤度における低下が含まれ、しかし、それに限定されない。例えば、ガンの処置では、例えば、腫瘍のサイズにおける低下、腫瘍の浸潤性における低下、ガンの成長速度における低下、および/または転移の防止が伴う場合がある。ガンの処置はまた、ガンを有する対象の生存を延長させることを示す場合がある。
【0038】
「対象」および「患者」および「個体」は、ヒトまたは非ヒト(例えば、霊長類、哺乳動物および脊椎動物など)のどちらも示す。特定の実施形態において、対象は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマおよびウシなどである。
【0039】
表現「医薬的に許容され得るまたは薬理学的に許容され得る」は、動物(例えば、ヒトなど)に適切なように投与されたとき、有害反応、アレルギー反応または他の不都合な反応を生じさせない分子実体および組成物を示す。抗体またはさらなる有効成分を含む医薬組成物の調製は、本開示に照らして当業者には知られているであろう。そのうえ、動物(例えば、ヒト)への投与のためには、調製物は、FDA Office of Biological Standardsによって要求されるような無菌性基準、発熱性基準、一般的安全性基準および純度基準を満たさなければならないことが理解されるであろう。
【0040】
本明細書中で使用される場合、「医薬的に許容され得るキャリア」には、ありとあらゆる水性溶媒(例えば、水、アルコール性/水性の溶液、生理食塩水溶液、非経口用ビヒクル、例えば、塩化ナトリウム、リンゲルブドウ糖など)、非水性溶媒(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、および注射可能な有機エステル、例えば、エチルオレアートなど)、分散媒体、被覆剤、界面活性剤、抗酸化剤、防腐剤(例えば、抗菌剤または抗真菌剤、抗酸化剤、キレート化剤および不活性ガス)、等張剤、吸収遅延剤、塩、薬物、薬物安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑剤、甘味剤、香味矯臭剤、色素、体液補給剤および栄養補給剤、そのような材料、およびそれらの組み合わせが含まれ、これらは、当業者には知られているであろうようなものである。医薬組成物における様々な成分のpHおよび正確な濃度は周知のパラメーターに従って調節される。
【0041】
II.一般的な実施形態
【0042】
本開示の実施形態には、受容体が操作された養子T細胞療法に関する改善が含まれる。本開示の方法は、有害な影響がその使用によりもたらされ得る高親和性受容体を利用することを必要とすることなく、操作された受容体により、低いアビディティーの抗原を標的とすることができるように治療法の細胞を改変することによって、養子T細胞療法のための効果的な選択肢についての拡張をもたらす。
【0043】
A.CD4+T細胞
本開示の方法には、養子移入のためのヘルパー機能と細胞傷害性との両方をCD8αβ鎖の遺伝子組換え発現のときに有するCD4+T細胞を作製することが含まれる。具体的な場合において、標的化されたpMHCクラスI複合体を認識し、これと結合する能力を含むCD4+T細胞を作製するという目的のためにCD8αβ鎖の表面発現を有するCD4+T細胞を作製する方法がある。
【0044】
クラスIエピトープを認識する活性を有する本開示のCD4+T細胞が本明細書中において作製される。したがって、本明細書中において包含される方法は、CD8αβを遺伝子組換えにより発現することの結果として、CD4+細胞をクラスI制限エピトープに向け直す。クラスIエピトープを認識することができることに加えて、この細胞はまた、TH2を発現するその生来的活性に加えて、TH1サイトカイン(例えば、IFNγ、TNFα、パーフォリンおよび/またはグランザイムBなど)を発現する活性を有する。
【0045】
本開示の実施形態には、CD4+T細胞(およびCD8+T細胞)が、CD8αβの遺伝子組換え発現を伴うことなく拡大状態にあるT細胞と比較されるような場合を含めて、著しい同胞殺し(fratricide)活性を欠くように細胞を変えるCD8αβ遺伝子組換え発現を含む方法および組成物が含まれる。
【0046】
特定の実施形態において、十分なレベルのCD8αβを発現する遺伝子組換えCD4+T細胞は、CD8+T細胞機能およびCD4+T細胞機能の両方を細胞個々のレベルで効果的に有する、クラスIのpMHCが標的となる細胞傷害性かつヘルパー型のハイブリッドT細胞になる。そのようなものとして、CD8αβは、アビディティーが低いクラスI TCRを有するCD4+T細胞だけを、インビボ機能が増強された細胞傷害性かつヘルパー型のハイブリッドT細胞に再プログラミングする。
【0047】
本開示の実施形態には、CD4+T細胞およびCD8+T細胞の活性を有するようにCD4+T細胞を再プログラミングすることが含まれる。具体的な実施形態において、CD4+T細胞は、細胞傷害性活性に加えてヘルパーT細胞活性を含む。したがって、具体的な場合において、CD4+T細胞はハイブリッドおよび多機能性の両方である。具体的な場合において、CD4+T細胞は、遺伝子組換えの外部提供されたCD8共受容体を発現することによってこれらの特性を有するように操作され、そのような細胞はTH1サイトカインおよびTH2サイトカインの両方を産生することができる。細胞はまた、連続キラー活性を含み、抗腫瘍機能を含む。
【0048】
CD8共受容体を発現するCD4+細胞は細胞傷害性を含むことができることが、TCRおよびCARを含めて1つまたは複数の外因性の操作された抗原受容体に関して利用される場合がある。
【0049】
B.CD8+T細胞
具体的な実施形態において、様々な方法および組成物が、CD8+T細胞における外因性のCD8αβ共受容体を、当該細胞の有効性を増大させるために利用することに関する。具体的な場合において、CD8+T細胞は外因性の操作された抗原受容体(例えば、HLAクラスI制限TCRなど)を発現し、当該細胞におけるCD8αβ共受容体の共発現により、細胞の機能的アビディティーが改善される。他の場合において、CD8+T細胞は、内因性TCRの活性を増強する外因性のCD8αβ共受容体を発現するように改変される。
【0050】
これらの方法および組成物は、細胞において天然に存在するレベルを越えてCD8αβの細胞表面レベルを増大させることを含めて、少なくともCD8+T細胞におけるCD8αβ共受容体の利用可能性を増大させることによってCD8+T細胞療法における進歩を可能にする。したがって、CD8+T細胞をあらゆる種類の細胞療法のために利用することにおいて、具体的な実施形態においては、CD8+T細胞が外因性のCD8αβ共受容体を発現する。
【0051】
実施形態には、CD8+T細胞の集団の機能を、集団内の当該細胞の少なくとも一部におけるCD8共受容体の利用可能性を増大させることによって増強することが含まれる。本開示の方法は、例えば、CD8+T細胞における内因性のCD8共受容体が養子移入用途のためには少なすぎるという制限要因を克服する。したがって、本開示の特定の実施形態においては、CD8+T細胞におけるCD8共受容体の利用可能性を、CD8+T細胞の機能を増強するために増大する方法がある。
【0052】
CD8共受容体は、細胞が人工抗原受容体について遺伝子組換えであるか否かにかかわらず、CD8+T細胞において利用される場合がある。具体的な実施形態において、本開示の方法および組成物は受容体遺伝子組換え(例えば、TCRおよび/またはCAR)のCD8+T細胞の機能を増強する。
【0053】
C.CD4+およびCD8+T細胞
本開示の実施形態は、T細胞を個体のために使用する養子移入に関する改善を包含する。CD8+T細胞を養子移入のために細胞傷害性T細胞として利用する既知の方法は今や、非生来的な細胞傷害活性を有するCD4+T細胞の利用もまた可能にすることによって改善されてきている。本開示の実施形態は、CD4+またはCD8+である低アビディティーのTCR遺伝子組換えT細胞、またはその機能的ハイブリッドを含めて、TCR遺伝子組換えT細胞を用いる免疫療法のためにCD8共受容体機能を利用することを包含する。
【0054】
本開示の実施形態は、生来的な、および/または外部から提供されたTCRまたは他の抗原受容体についてのCD8 T細胞機能がCD8細胞において増強されることを提供する。増強には、外部から提供されたCD8αβの発現をそれぞれ欠くそのようなT細胞と比較して、その連続腫瘍殺傷能を増大させることなどの利点が含まれることがある。
【0055】
特定の実施形態において、十分なレベルのCD8αβ共受容体および外因性の操作された抗原受容体を発現するCD4+T細胞と、十分なレベルのCD8αβ共受容体および任意に外因性の操作された抗原受容体を発現するCD8+との混合物が、ある特定の方法において利用される。混合物では、CD4+T細胞対CD8+T細胞の特定の比率(例えば、10:1、5:1、2:1、1:1、1:2、1:5、1:10、1:25、1:50、1:100、1:500、1:1000、1:10,000など)が利用され得る。
【0056】
本明細書中においてどこか他のところで提供される例は、効果的かつ安全なTCR発現細胞についての必要性に対処している。過剰発現した腫瘍関連自己抗原(TAA)を標的とするほとんどの天然に存在するクラスI制限TCRは、宿主における選択および寛容性のためにアビディティーが低く、また、CD8共受容体に依存性している。TCRが操作されたT細胞による養子T細胞移入はこのように、CD8+T細胞の機能に完全に依拠しており、有益なCD4+T細胞機能を活用することができない。したがって、本開示は、TAA特異的な低アビディティーTCRの発現をCD8αβ共受容体と組み合わせる新規戦略に関するものであり、精製された遺伝子組換えCD8+およびCD4+T細胞の性質が別々に特徴づけられた。CD8αβ共移入は、TCR+CD8+T細胞機能を、その連続腫瘍殺傷能を増大させることによって増強することが明らかにされ、このことは、内因性CD8共受容体の制限された利用可能性がその機能的潜在能の完全な展開を妨げていることを示していた。操作されたCD4+T細胞は、細胞個々のレベルでの多機能的な細胞傷害性かつヘルパー型のハイブリッドT細胞に効率的に再プログラミングされた:この細胞は、同族のクラスI制限腫瘍抗原を発現する細胞を認識して殺し、連続キラーになり、主にTH1サイトカインを産生し、いくつかのTH2サイトカインを保持し、優れた抗腫瘍機能をインビボで示した。したがって、本開示の実施形態は少なくとも、(1)TCR遺伝子組換えCD8+T細胞の機能の増強、そして(2)CD8+T細胞機能およびCD4+T細胞機能の両方が細胞個々のレベルで容易に利用可能である、クラスIのpMHCが標的となる細胞傷害性かつヘルパー型のハイブリッドT細胞の製造に関する。
【0057】
III.組成物の例
【0058】
本開示は、養子移入において使用するためのCD4+T細胞およびCD8+T細胞に関する。本開示のCD4+T細胞およびCD8+T細胞は、少なくともそれらが、少なくとも1つの外部提供されたタンパク質、すなわち、CD8αβ共受容体を別個に発現するために自然界では見出されない。特定の場合において、CD8のα鎖およびβ鎖の両方が同じ細胞において発現する。CD8αβ共受容体は細胞において一過性に発現してもよく、または発現しなくてもよい。CD8αβ共受容体を遺伝子組換えにより発現するCD8+細胞は、少なくともCD8αβ共受容体分子のレベルが、CD8αβ共受容体分子を自然界において生来的に発現する細胞よりも大きいために、CD8αβ共受容体の生来的な発現を有する自然界におけるCD8+細胞ではなく、発現レベルにおけるこの違いが、生来のCD8+T細胞よりも大きい効力を有する遺伝子組換えCD8+T細胞の機能的違いを引き起こしている。
【0059】
特定の実施形態において、CD4+T細胞およびCD8+T細胞は、CD8αβ共受容体を発現することに加えて、1つまたは複数の操作された抗原受容体もまた発現する。1つまたは複数の操作された抗原受容体はどのような種類ものであってもよく、しかし、具体的な場合において、1つまたは複数の操作された抗原受容体はHLAクラスI制限のTCRまたはキメラ抗原受容体(CAR)である。
【0060】
A.T細胞受容体(TCR)
いくつかの実施形態において、操作された抗原受容体には、組換えTCR、および/または天然に存在するT細胞からクローニングされるTCRが含まれる。「T細胞受容体」または「TCR」は、可変a鎖および可変β鎖(これらはTCRαおよびTCRβとしてもまたそれぞれ知られている)、または可変γ鎖および可変δ鎖(これらはTCRγおよびTCRδとしてもまたそれぞれ知られている)を含有し、かつ、MHC受容体に結合している抗原ペプチドに特異的に結合することができる分子を示す。いくつかの実施形態において、TCRはαβ形態である。
【0061】
典型的には、αβ形態およびγδ形態で存在するTCRは一般に構造的に類似しており、しかし、それらを発現するT細胞は、異なった解剖学的位置または機能を有する場合がある。TCRを細胞の表面に、または可溶性形態で見出すことができる。一般には、TCRが、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合した抗原を認識することを一般に担うT細胞(またはTリンパ球)の表面に見出される。いくつかの実施形態において、TCRはまた、定常ドメイン、膜貫通ドメインおよび/または短い細胞質尾部を含有することができる。例えば、いくつかの局面において、TCRのそれぞれの鎖が、1つのN末端免疫グロブリン可変ドメイン、1つの免疫グロブリン定常ドメイン、膜貫通領域、およびC末端での短い細胞質尾部を有することができる。いくつかの実施形態において、TCRは、シグナル伝達を媒介することに関与するCD3複合体のインバリアントタンパク質と結合する。別途明記される場合を除き、用語「TCR」は、その機能的なTCRフラグメントを包含することが理解されなければならない。この用語はまた、αβ形態またはγδ形態でのTCRを含めて、無傷または全長のTCRを包含する。
【0062】
したがって、本明細書中における様々な目的のために、TCRに対する言及は、あらゆるTCRまたは機能的フラグメント、例えば、MHC分子において、すなわち、MHC-ペプチド複合体において結合した特異的な抗原性ペプチドに結合するTCRの抗原結合部分などを含む。交換可能に使用され得るが、TCRの「抗原結合部分」または抗原結合フラグメント」は、TCRの構造ドメインの一部分を含有し、しかし、完全なTCRが結合する抗原(例えば、MHC-ペプチド複合体)と結合する分子を示す。いくつかの場合において、抗原結合部分は、特異的なMHC-ペプチド複合体に結合するための結合部位を形成するために十分であるTCRの可変ドメイン(例えば、TCRの可変α鎖および可変β鎖など)を含有する(例えば、一般に、この場合、それぞれの鎖が3つの相補性決定領域を含有する)。
【0063】
いくつかの実施形態において、TCR鎖の可変ドメインは結合して、ループ、またはTCR分子の結合部位を形成することによって抗原認識を与え、ペプチド特異性を決定し、かつペプチド特異性を決定する、免疫グロブリンに類似する相補性決定領域(CDR)を形成する。典型的には、免疫グロブリンと同様に、CDRはフレームワーク領域(FR)によって隔てられる。いくつかの実施形態において、CDR3は、プロセシングされた抗原を認識することに関わる主たるCDRであり、だが、アルファ鎖のCDR1はまた、抗原性ペプチドのN末端部分と相互作用することが示されており、これに対して、ベータ鎖のCDR1は抗原性ペプチドのC末端部分と相互作用する。CDR2は、MHC分子を認識すると考えられている。いくつかの実施形態において、β鎖の可変領域は、さらなる超可変性(HV4)領域を含有することができる。
【0064】
いくつかの実施形態において、TCR鎖は定常ドメインを含む。例えば、免疫グロブリンと同様に、TCR鎖(例えば、a鎖、β鎖)の細胞外部分は、2つの免疫グロブリンドメイン、N末端における可変ドメイン(例えば、VaまたはVp;典型的にはKabat番号表記(Kabat他、“Sequences of Proteins of Immunological Interest、US Dept.Health and Human Services、Public Health Service National Institutes of Health、1991、第5版)に基づいてアミノ酸1~116)、および細胞膜に隣接する1つの定常ドメイン(例えば、a鎖定常ドメインまたはCa、典型的にはKabatに基づいてアミノ酸117~259、β鎖定常ドメインまたはCp、典型的にはKabatに基づいてアミノ酸117~295)を含有することができる。例えば、いくつかの場合において、2つの鎖によって形成されるTCRの細胞外部分は、2つの膜近位定常ドメインと、CDRを含有する2つの膜遠位可変ドメインとを含有する。TCRドメインの定常ドメインは、システイン残基がジスルフィド結合を形成し、これにより2つの鎖の間を連結する短い接続配列を含有する。いくつかの実施形態において、TCRは、当該TCRが2つのジスルフィド結合を定常ドメインにおいて含有するようにさらなるシステイン残基をα鎖およびβ鎖のそれぞれに有する場合がある。
【0065】
いくつかの実施形態において、TCR鎖は膜貫通ドメインを含む場合がある。いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインは正に帯電している。いくつかの場合において、TCR鎖は細胞質尾部を含有する。いくつかの場合において、この構造により、TCRは、CD3のような他の分子と結合することが可能となる。例えば、定常ドメインを膜貫通領域とともに含有するTCRはタンパク質を細胞膜内に固定し、CD3シグナル伝達装置またはCD3シグナル伝達複合体のインバリアントサブユニットと結合することができる。
【0066】
一般に、CD3は、哺乳動物では3つの異なった鎖(γ、δおよびε)と、ζ鎖とを有し得る多タンパク質複合体である。例えば、哺乳動物において、複合体は、CD3γ鎖と、CD3δ鎖と、2つのCD3ε鎖と、CD3ζ鎖のホモダイマーとを含有することができる。CD3γ鎖、CD3δ鎖およびCD3ε鎖は、ただ1つの免疫グロブリンドメインを含有する免疫グロブリンスーパーファミリーの非常に近縁の細胞表面タンパク質である。CD3γ鎖、CD3δ鎖およびCD3ε鎖の膜貫通領域は負に帯電しており、このことが、これらの鎖が正荷電のT細胞受容体鎖と結合することを可能にする特徴である。CD3γ鎖、CD3δ鎖およびCD3ε鎖の細胞内尾部はそれぞれが、免疫受容体活性化チロシンモチーフまたはITAMとして知られている1つだけの保存されたモチーフを含有しており、これに対して、それぞれのCD3ζ鎖は3つの保存されたモチーフを有する。一般に、ITAMはTCR複合体のシグナル伝達能力に関与している。これらのアクセサリー分子は、負に帯電した膜貫通領域を有しており、TCRからのシグナルを細胞内に伝播する際に役割を果たしている。CD3鎖およびζ鎖はTCRと一緒になって、T細胞受容体複合体として知られているものを形成する。
【0067】
いくつかの実施形態において、TCRは、αおよびβの2つの鎖(または場合によってはγおよびδ)のヘテロダイマーである場合があり、または単鎖のTCR構築物である場合がある。いくつかの実施形態において、TCRは、例えば、ジスルフィド結合(1つまたは複数)などによって連結される2つの別個の鎖(α鎖およびβ鎖、またはγ鎖およびδ鎖)を含有するヘテロダイマーである。いくつかの実施形態において、標的抗原(例えば、ガン抗原)についてのTCRが特定され、細胞に導入される。いくつかの実施形態において、TCRをコードする核酸を様々な供給源から、例えば、TCRの公的に入手可能なDNA配列のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅などによって得ることができる。いくつかの実施形態において、TCRが生物学的供給源から、例えば、細胞などから、例えば、T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、T細胞ハイブリドーマまたは他の公的に入手可能な供給源などから得られる。いくつかの実施形態において、T細胞を、インビボ単離された細胞から得ることができる。いくつかの実施形態において、高親和性のT細胞クローンを患者から単離することができ、TCRを単離することができる。いくつかの実施形態において、T細胞は、培養されたT細胞ハイブリドーマまたはT細胞クローンであることが可能である。いくつかの実施形態において、標的抗原についてのTCRクローンが、ヒト免疫系遺伝子(例えば、ヒト白血球抗原系、またはHLA)により操作された遺伝子組換えマウスにおいて作製されている。いくつかの実施形態において、ファージディスプレイが、標的抗原に対するTCRを単離するために使用される。いくつかの実施形態において、TCRまたはその抗原結合部分はTCRの配列の知識から合成的に作製することができる。
【0068】
B.キメラ抗原受容体
いくつかの実施形態において、操作された抗原受容体には、活性化CARもしくは刺激性CAR、共刺激性CAR(国際公開第2014/055668号を参照のこと)、および/または阻害性CARを含めて様々なCARが含まれる。CARは一般には、いくつかの局面ではリンカー(1つまたは複数)および/または膜貫通ドメイン(1つまたは複数)を介して1つまたは複数の細胞内シグナル伝達成分に連結される細胞外の抗原(またはリガンド)結合ドメインを含む。そのような分子は典型的には、生来的な抗原受容体を介するシグナル、共刺激性受容体との組合わせでそのような受容体を介するシグナル、および/または共刺激性受容体だけを介するシグナルを模倣するか、または近似する。CARは、第1世代、第2世代、または第3もしくはそれ以降の世代である場合がある。
【0069】
いくつかの実施形態において、CARはベクターによってコードされ、少なくとも下記のドメインを含む:a)細胞内シグナル伝達ドメイン、b)膜貫通ドメイン、およびc)少なくとも1つの抗原結合領域を含む細胞外ドメイン。
【0070】
本開示のある特定の実施形態は、細胞内シグナル伝達ドメイン、膜貫通ドメイン、および1つまたは複数のシグナル伝達モチーフを有する細胞外ドメインを含む、免疫原性を低下させるためにヒト化されているCAR(hCAR)を含めて、抗原特異的CARポリペプチドをコードする核酸を含めた核酸の使用に関する。ある特定の実施形態において、CARは、1つまたは複数の抗原の間での共有空間を含むエピトープを認識する場合がある。ある特定の実施形態において、結合領域は、モノクローナル抗体の相補性決定領域、モノクローナル抗体の可変領域、および/またはその抗原結合フラグメントを含むことができる。別の実施形態において、その特異性は、受容体に結合するペプチド(例えば、サイトカイン)に由来する。
【0071】
ヒトCAR核酸は、ヒト患者のための細胞免疫療法を増強するために使用されるヒト遺伝子に由来し得ることが意図される。具体的な実施形態において、本開示には、ベクターによってコードされる全長のCAR cDNAまたはCARコード領域が含まれる。抗原結合領域または抗原結合ドメインは、特定のヒトモノクローナル抗体、例えば、米国特許第7,109,304号(これは参照によって本明細書中に組み込まれる)に記載されるヒトモノクローナル抗体などに由来する一本鎖可変フラグメント(scFv)のVH鎖およびVL鎖のフラグメントを含む場合がある。フラグメントはまた、ヒト抗原特異的抗体の異なる抗原結合ドメインのどのような数も可能である。より具体的な実施形態において、フラグメントは、ヒト細胞における発現のためにヒトでのコドン使用頻度について最適化される配列によってコードされる抗原特異的scFvである。
【0072】
配置は、ジアボディ(diabody)またはマルチマーなどの多量体型であり得るであろう。マルチマーはおそらくは、軽鎖および重鎖の可変部分をジアボディにクロスペアリング(cross pairing)することによって形成される。構築物のヒンジ部分は、完全に削除されることから、最初のシステインが維持されることまで、セリン置換ではなくプロリン置換にすることまで、最初のシステインまで切り詰められることまでの多数の代替を有することができる。Fc部分は削除される場合があり、または削除されない場合がある。安定である、かつ/または二量体化するタンパク質はどれも、この目的のために役立ち得る。Fcドメインの1つだけ、例えば、ヒト免疫グロブリンからのCH2ドメインまたはCH3ドメインのどちらかが使用され得るであろう。二量体化を改善するために改変されているヒト免疫グロブリンのヒンジ領域、CH2領域およびCH3領域もまた使用され得るであろう。免疫グロブリンのヒンジ部分だけもまた使用され得るであろう。CD8アルファの一部分もまた使用され得るであろう。
【0073】
いくつかの実施形態において、CAR核酸は、他の共刺激性受容体(例えば、膜貫通ドメインなど)および1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、CD28の細胞内シグナル伝達ドメインなど)をコードする配列を含む。他の共刺激受容体には、CD28、CD27、OX-40(CD134)、DAP10、DAP12および4-1BB(CD137)の1つまたは複数が含まれるが、これらに限定されない。CD3□によって開始される一次シグナルに加えて、ヒトCARに挿入されるヒト共刺激受容体によってもたらされるさらなるシグナルが、NK細胞の完全な活性化のために利用される場合があり、また、養子免疫療法のインビボ持続性および治療的成功を改善することを助け得るであろう。
【0074】
いくつかの実施形態において、特異性を特定の抗原(またはマーカーもしくはリガンド)について有する、例えば、養子療法によって標的化されることになる特定の細胞タイプにおいて発現する抗原(例えば、ガンマーカー)、および/または抑制反応を誘発するために意図される抗原(例えば、正常または非病的な細胞タイプの表面において発現する抗原など)などについて有するCARが構築される。したがって、CARは典型的にはその細胞外部分において、1つもしくは複数の抗原結合分子、例えば、1つもしくは複数の抗原結合フラグメント、抗原結合ドメインもしくは抗原結合部分など、または1つもしくは複数の抗体可変ドメイン、および/または抗体分子を含む。いくつかの実施形態において、CARには、抗体分子の抗原結合部分(1つまたは複数)、例えば、モノクローナル抗体(mAb)の可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)に由来する単鎖抗体フラグメント(scFv)などが含まれる。
【0075】
CARのある特定の実施形態において、受容体の抗原特異的部分(これは、抗原結合領域を含む細胞外ドメインとして示されることがある)は、腫瘍関連抗原結合ドメインまたは病原体特異的抗原結合ドメインを含む。抗原には、パターン認識受容体によって認識される炭水化物抗原が含まれる。腫瘍関連抗原は、腫瘍細胞の細胞表面に発現する限り、どのような種類のものであってもよい。
【0076】
キメラ受容体をコードするオープンリーディングフレームの配列をゲノムDNA源もしくはcDNA源から得ることができ、または合成することができ(例えば、PCRを介して)、またはそれらの組み合わせにより得ることができる。ゲノムDNAのサイズおよびイントロンの数に依存して、イントロンがmRNAを安定化させることが見出されるようにcDNAまたはその組み合わせを使用することが望ましい場合がある。また、内因性または外因性の非コード領域を、mRNAを安定化させるために使用することがさらに好都合である場合がある。
【0077】
キメラ構築物はネイクドDNAとして、または好適なベクターにおいて免疫細胞に導入され得ることが意図される。ネイクドDNAを使用するエレクトロポレーションによって細胞を安定的にトランスフェクションする様々な方法がこの技術分野では知られている。例えば、米国特許第6,410,319号を参照のこと。ネイクドDNAは一般には、発現のための適切な配向で発現ベクターに含有されるキメラ受容体をコードするDNAを示す。本開示の多シストロン性モジュール型ベクターはウイルスベクターである場合があり、またはウイルスベクターでない場合があり、例えば、プラスミドなどである場合がある。例示的な実施形態のために、本明細書中で詳述されるベクターはレトロウイルスベクターであるが、他の場合には、ベクターはまたウイルスベクターであり、しかし、その代わりに、例えば、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターである。
【0078】
どのようなベクターも、キメラ構築物を免疫細胞に導入するために使用することができる。本開示の方法に従った使用のための好適なベクターは免疫細胞において非複製性である場合がある。ウイルスに基づくベクターであって、細胞において維持されるウイルスのコピー数が、細胞の生存能を維持するためには十分に少ないベクターが数多く知られている:例えば、HIV、SV40、EBV、HSVまたはBPVに基づくベクターなど。具体的な場合において、ベクターはモロニーマウス白血病ウイルスに基づく。
【0079】
いくつかの局面において、抗原特異的な結合成分または認識成分が1つまたは複数の膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインに連結される。いくつかの実施形態において、CARは、当該CARの細胞外ドメインに融合される膜貫通ドメインを含む。1つの実施形態において、CARにおけるドメインの1つと生来的に関連する膜貫通ドメインが使用される。場合により、膜貫通ドメインは、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインに対するそのようなドメインの結合を回避して、受容体複合体の他の構成成分との相互作用を最小限にするために選択され、またはアミノ酸置換によって改変される。
【0080】
膜貫通ドメインはいくつかの実施形態においては、天然供給源から、または合成供給源からのどちらからでも得られる。供給源が天然である場合、ドメインはいくつかの局面においては、どのような膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質からであれそれらに由来する。膜貫通領域には、T細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖またはゼータ鎖、CD28、CD3ゼータ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、ICOS/CD278、GITR/CD357、NKG2DおよびDAPの分子に由来する膜貫通領域が含まれる(すなわち、膜貫通領域は、細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖またはゼータ鎖、CD28、CD3ゼータ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、ICOS/CD278、GITR/CD357、NKG2DおよびDAPの分子の膜貫通領域(1つまたは複数)を少なくとも含む)。代替において、膜貫通ドメインはいくつかの実施形態においては合成である。いくつかの局面において、合成された膜貫通ドメインは、主に疎水性の残基(例えば、ロイシンおよびバリンなど)を含む。いくつかの局面において、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンの三つ組が、合成された膜貫通ドメインのそれぞれの末端に見出されるであろう。
【0081】
ある特定の実施形態において、免疫細胞、例えば、T細胞、NK細胞、iNKT細胞、B細胞またはMSC細胞などを遺伝子改変するために本明細書中に開示されるプラットフォーム技術は、(i)エレクトロポレーションデバイス(例えば、ヌクレオフェクター)を使用する、ウイルスによらない遺伝子移入、(ii)エンドドメイン(例えば、CD28/CD3-ζ、CD137/CD3-ζまたは他の組み合わせ)を介してシグナル伝達するCAR、(iii)抗原認識ドメインを細胞表面につなぐ様々な長さの細胞外ドメインを有するCAR、およびいくつかの場合においては(iv)CAR+免疫細胞を確実かつ数的に拡大することができるためのK562由来の人工的な抗原提示細胞(aAPC)を含む。
【0082】
1つのベクターが2つの別個のCAR分子をコードする場合があり、あるいは、1つのベクターが、少なくとも1つのCAR分子が2つの非同一の抗原についての特異性を有する1つまたは複数のCAR分子、例えば、二重特異性CAR、二重特異性TCRまたは二重特異性CAR/TCRなどをコードする場合がある。本開示のベクターによってコードされる抗原受容体、本開示のベクター自体、および本開示のベクターを含む細胞は、人の手によって作り出されたものであり、自然界には存在しない。
【0083】
いくつかの実施形態において、CARは、抗原に特異的に結合する細胞外の抗原認識ドメインを含む。CARは、特定の組織タイプまたは細胞タイプの抗原を標的とするように特に設計される場合がある。いくつかの実施形態において、抗原は、細胞の表面に発現するタンパク質である。いくつかの実施形態において、CARはTCR様CARであり、抗原は、TCRのように主要組織適合抗原複合体(MHC)分子との関連で細胞表面において認識されるプロセシングされたペプチド抗原、例えば、細胞内タンパク質のペプチド抗原などである。
【0084】
C.抗原
遺伝子操作された抗原受容体によって標的とされる抗原の中には、養子細胞療法によって標的とされることになる疾患、状態または細胞タイプとの関連で発現する抗原がある。このような疾患および状態の中には、固形腫瘍、血液学的ガン、免疫系のガン(例えば、リンパ腫、白血病および/または骨髄腫など、例えば、B、Tおよび骨髄性の白血病、リンパ腫、ならびに多発性骨髄腫など)を含めて様々なガンおよび腫瘍を含めた、増殖性、新生物性および悪性の疾患および障害、同様にまた、自己免疫状態または同種免疫状態がある。いくつかの実施形態において、抗原は、正常な、または標的とならない細胞または組織と比較した場合、疾患または状態の細胞において、例えば、腫瘍細胞または病原性細胞において選択的に発現し、または過剰発現する。他の実施形態において、抗原は正常な細胞において発現し、かつ/または操作された細胞において発現する。いくつかの場合において、抗原は免疫関連障害に関連する。疾患が病原性疾患である場合、抗原は、ウイルス、真菌、原生動物または細菌などの病原体の腫れ(tumor)であろう。
【0085】
好適な抗原はどれも、用途が本発明の方法において見出され得る。例示的な抗原には、感染性病原体、自己抗原/自身の抗原、腫瘍関連抗原/ガン関連抗原、および腫瘍のネオ抗原からの抗原性分子が含まれるが、これらに限定されない(Linnemann他、2015)。特定の局面において、抗原には、サバイビン、PRAME、NY-ESO、EGFRvIII、Muc-1、Her2、CA-125、WT-1、Mage-A3、Mage-A4、Mage-A10、TRAIL/DR4、およびCEAが含まれる。特定の局面において、2つ以上の抗原受容体についての抗原には、CD19、EBNA、WT1、CD123、NY-ESO、EGFRvIII、MUC1、HER2、CA-125、WT1、Mage-A3、Mage-A4、Mage-A10、TRAIL/DR4および/またはCEAが含まれるが、これらに限定されない。これらの抗原についての配列がこの技術分野では知られている:例えば、CD19(アクセッション番号NG_007275.1)、EBNA(アクセッション番号NG_002392.2)、WT1(アクセッション番号NG_009272.1)、CD123(アクセッション番号NC_000023.11)、NY-ESO(アクセッション番号NC_000023.11)、EGFRvIII(アクセッション番号NG_007726.3)、MUC1(アクセッション番号NG_029383.1)、HER2(アクセッション番号NG_007503.1)、CA-125(アクセッション番号NG_055257.1)、WT1(アクセッション番号NG_009272.1)、Mage-A3(アクセッション番号NG_013244.1)、Mage-A4(アクセッション番号NG_013245.1)、Mage-A10(アクセッション番号NC_000023.11)、TRAIL/DR4(アクセッション番号NC_000003.12)および/またはCEA(アクセッション番号NC_000019.10)。
【0086】
腫瘍関連抗原は、前立腺、乳房、結腸直腸、肺、膵臓、腎臓、中皮腫、卵巣もしくはメラノーマの様々なガン、または血液学的悪性腫瘍に由来する場合がある。例示的な腫瘍関連抗原または腫瘍細胞由来抗原には、MAGE1、MAGE3およびMAGE4(または他のMAGE抗原、例えば、国際特許出願公開第99/40188号に開示されるMAGE抗原など);PRAME;サバイビン、BAGE;RAGE、Lage(これはまた、NY ESO 1として知られている);SAGE;ならびにHAGEまたはGAGEが含まれる。腫瘍抗原のこれらの限定されない例が、広範囲の様々な腫瘍タイプにおいて、例えば、メラノーマ、肺ガン、肉腫および膀胱ガン、または血液学的悪性腫瘍において発現する。例えば、米国特許第6,544,518号を参照のこと。前立腺ガンの腫瘍関連抗原には、例えば、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺酸性ホスファターゼ、NKX3.1、および前立腺の6回膜貫通上皮抗原(STEAP)が含まれる。
【0087】
他の腫瘍関連抗原には、Plu-1、HASH-1、HasH-2、CriptoおよびCriptinが含まれる。加えて、腫瘍抗原は、多くのガンの処置において有用である自分自身のペプチドホルモン、例えば、完全長のゴナドトロピンホルモン放出ホルモン(GnRH)、すなわち、10アミノ酸長の短いペプチドなどである場合がある。
【0088】
腫瘍抗原には、腫瘍関連抗原の発現(例えば、HER-2/neu発現など)によって特徴づけられるガンに由来する腫瘍抗原が含まれる。対象となる腫瘍関連抗原には、系譜特異的な腫瘍抗原、例えば、メラノサイト-メラノーマ系譜抗原のMART-1/Melan-A、gp100、gp75、mda-7、チロシナーゼおよびチロシナーゼ関連タンパク質などが含まれる。例示的な腫瘍関連抗原には、下記のいずれか1つもしくは複数に由来する腫瘍抗原、または下記のいずれか1つもしくは複数を含む腫瘍抗原が含まれるが、これらに限定されない:p53、Ras、c-Myc、細胞質セリン/トレオニンキナーゼ(例えば、A-Raf、B-RafおよびC-Raf、サイクリン依存性キナーゼ)、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A10、MAGE-A12、MART-1、BAGE、DAM-6、DAM-10、GAGE-1、GAGE-2、GAGE-8、GAGE-3、GAGE-4、GAGE-5、GAGE-6、GAGE-7B、NA88-A、MART-1、MC1R、Gp100、PSA、PSM、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、ART-4、CAMEL、CEA、Cyp-B、hTERT、hTRT、iCE、MUC1、MUC2、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)、TRK受容体、PRAME、P15、RU1、RU2、SART-1、SART-3、ウィルムス腫瘍抗原(WT1)、AFP、-カテニン/m、カスパーゼ-8/m、CEA、CDK-4/m、ELF2M、GnT-V、G250、HSP70-2M、HST-2、KIAA0205、MUM-1、MUM-2、MUM-3、ミオシン/m、RAGE、SART-2、TRP-2/INT2、707-AP、アネキシンII、CDC27/m、TPI/mbcr-abl、BCR-ABL、インターフェロン調節因子4(IRF4)、ETV6/AML、LDLR/FUT、Pml/RAR、腫瘍関連カルシウムシグナル伝達因子1(TACSTD1)TACSTD2、受容体チロシンキナーゼ(例えば、上皮増殖因子受容体(EGFR)(特にEGFRvIII)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR))、細胞質チロシンキナーゼ(例えば、srcファミリー、syk-ZAP70ファミリー)、インテグリン結合キナーゼ(ILK)、シグナル伝達・転写活性化因子STAT3、STATS、およびSTATE、低酸素誘導因子(例えば、HIF-1およびHIF-2)、核因子-カッパB(NF-B)、Notch受容体(例えば、Notch1~4)、c-Met、ラパマイシンの哺乳動物標的(mTOR)、WNT、細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)およびその調節サブユニット、PMSA、PR-3、MDM2、メソテリン、腎細胞ガン-5T4、SM22-アルファ、炭酸脱水酵素I(CAI)およびIX(CAIX)(これはG250としてもまた知られている)、STEAD、TEL/AML1、GD2、プロテイナーゼ3、hTERT、肉腫転位ブレークポイント、EphA2、ML-IAP、EpCAM、ERG(TMPRSS2とETSとの融合遺伝子)、NA17、PAX3、ALK、アンドロゲン受容体、サイクリンB1、ポリシアル酸、MYCN、RhoC、GD3、フコシルGM1、メソテリアン、PSCA、sLe、PLAC1、GM3、BORIS、Tn、GLoboH、NY-BR-1、RGsS、SART3、STn、PAX5、OY-TES1、精子タンパク質17、LCK、HMWMAA、AKAP-4、SSX2、XAGE1、B7H3、レグマイン(legumain)、TIE2、Page4、MAD-CT-1、FAP、MAD-CT-2、fos関連抗原1、CBX2、CLDN6、SPANX、TPTE、ACTL8、ANKRD30A、CDKN2A、MAD2L1、CTAG1B、SUNC1、LRRN1およびイディオタイプ。
【0089】
本明細書中に記載される方法における使用のためにその抗原が意図される例示的な病原性生物には、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バールウイルス(EBV)、A型、B型およびC型インフルエンザ、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、ポリオーマウイルス(例えば、BKウイルスおよびJCウイルス)、アデノウイルス、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を含むブドウ球菌属菌種、および肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)を含むストレプトコッカス属菌種が含まれる。当業者によって理解されるであろうように、本明細書中に記載されるような抗原として使用されるためのこれらの病原性微生物および他の病原性微生物に由来するタンパク質、ならびに当該タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、刊行物において、また、公開されているデータベースにおいて、例えば、GENBANK(登録商標)、SWISS-PROT(登録商標)およびTREMBL(登録商標)などにおいて特定される場合がある。
【0090】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に由来する抗原には、HIVビリオン構造タンパク質(例えば、gp120、gp41、p17、p24)、プロテアーゼ、逆転写酵素、またはtat、rev、nef、vif、vprおよびvpuによってコードされるHIVタンパク質のどれもが含まれる。
【0091】
単純ヘルペスウイルス(例えば、HSV1およびHSV2)に由来する抗原には、HSV後期遺伝子から発現されるタンパク質が含まれるが、これらに限定されない。後期の遺伝子群は主に、ビリオン粒子を形成するタンパク質をコードする。そのようなタンパク質には、本明細書中に記載されるような抗原としてそれぞれが使用されるかもしれないが、ウイルスカプシドを形成する5つのタンパク質(UL)(UL6、UL18、UL35、UL38および主要キャプシドタンパク質UL19)、UL45、およびUL27が含まれる。本明細書中において抗原としての使用のために意図される他の例示的なHSVタンパク質には、ICP27(H1、H2)、糖タンパク質B(gB)および糖タンパク質D(gD)の各タンパク質が含まれる。HSVゲノムは、抗原として使用される可能性があり得るかもしれないタンパク質をそれぞれがコードする少なくとも74個の遺伝子を含む。
【0092】
サイトメガロウイルス(CMV)に由来する抗原には、CMV構造タンパク質、ウイルス複製の前初期段階および初期段階の期間中に発現するウイルス抗原、糖タンパク質Iおよび糖タンパク質III、カプシドタンパク質、コートタンパク質、下部(lower)マトリックスタンパク質pp65(ppUL83)、p52(ppUL44)、IE1および1E2(UL123およびUL122)、UL128~UL150の遺伝子クラスターからのタンパク質産物(Rykman他、2006)、エンベロープ糖タンパク質B(gB)、gH、gN、ならびにpp150が含まれる。当業者によって理解されるであろうように、本明細書中に記載されるような抗原として使用されるためのCMVタンパク質が刊行物において、また、公開されているデータベースにおいて、例えば、GENBANK(登録商標)、SWISS-PROT(登録商標)およびTREMBL(登録商標)などにおいて特定される場合がある(例えば、Bennekov他(2004)、Loewendorf他(2010)、Marschall他(2009)を参照のこと)。
【0093】
ある特定の実施形態において使用のために意図されるエプスタイン・バン(Epstein-Ban)ウイルス(EBV)由来の抗原には、EBV溶解性タンパク質のgp350およびgp110、エプスタイン・バン核抗原(EBNA)-1、EBNA-2、EBNA-3A、EBNA-3B、EBNA-3C、EBNAリーダータンパク質(EBNA-LP)を含む潜伏周期感染(latent cycle infection)の期間中に産生されるEBVタンパク質、ならびに潜在性膜タンパク質(LMP)-1、LMP-2AおよびLMP-2Bが含まれる(例えば、Lockey他(2008)を参照のこと)。
【0094】
本明細書中における使用のために意図される呼吸器合胞体ウイルス(RSV)由来の抗原には、RSVゲノムによってコードされる11個のタンパク質のいずれか、またはその抗原性フラグメントが含まれる:NS1、NS2、N(ヌクレオカプシドタンパク質)、M(マトリックスタンパク質)SH、GおよびF(ウイルスコートタンパク質)、M2(第2のマトリックスタンパク質)、M2-1(伸長因子)、M2-2(転写調節)、RNAポリメラーゼ、ならびにリンタンパク質P。
【0095】
使用のために意図される水疱性口内炎ウイルス(VSV)由来の抗原には、VSVゲノムによってコードされる5つの主要なタンパク質のいずれか、およびその抗原性フラグメントが含まれる:ラージタンパク質(L)、糖タンパク質(G)、核タンパク質(N)、リンタンパク質(P)およびマトリックスタンパク質(M)(例えば、Rieder他(1999)を参照のこと)。
【0096】
ある特定の実施形態において使用のために意図されるインフルエンザウイルス由来の抗原には、血球凝集素(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)、核タンパク質(NP)、マトリックスタンパク質のM1およびM2、NS1、NS2(NEP)、PA、PB1、PB1-F2、ならびにPB2が含まれる。
【0097】
例示的なウイルス抗原にはまた、アデノウイルスポリペプチド、アルファウイルスポリペプチド、カリシウイルスポリペプチド(例えば、カリシウイルスカプシド抗原)、コロナウイルスポリペプチド、ジステンパーウイルスポリペプチド、エボラウイルスポリペプチド、エンテロウイルスポリペプチド、フラビウイルスポリペプチド、肝炎ウイルス(AE)ポリペプチド(B型肝炎コア抗原もしくは表面抗原、C型肝炎ウイルスのE1糖タンパク質もしくはE2糖タンパク質、コアタンパク質または非構造タンパク質)、ヘルペスウイルスポリペプチド(単純ヘルペスウイルスまたは水痘帯状疱疹ウイルスの糖タンパク質を含む)、感染性腹膜炎ウイルスポリペプチド、白血病ウイルスポリペプチド、マールブルグウイルスポリペプチド、オルソミクソウイルスポリペプチド、パピローマウイルスポリペプチド、パラインフルエンザウイルスポリペプチド(例えば、血球凝集素ポリペプチドおよびノイラミニダーゼポリペプチド)、パラミクソウイルスポリペプチド、パルボウイルスポリペプチド、ペスチウイルスポリペプチド、ピコルナウイルスポリペプチド(例えば、ポリオウイルスカプシドポリペプチド)、ポックスウイルスポリペプチド(例えば、ワクシニアウイルスポリペプチド)、狂犬病ウイルスポリペプチド(例えば、狂犬病ウイルス糖タンパク質G)、レオウイルスポリペプチド、レトロウイルスポリペプチド、およびロタウイルスポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。
【0098】
ある特定の実施形態において、抗原は細菌抗原である場合がある。ある特定の実施形態において、対象となる細菌抗原は分泌型ポリペプチドである場合がある。他のある特定の実施形態において、細菌抗原には、ポリペプチドの一部分(1つまたは複数)が細菌の外側細胞表面に露出している抗原が含まれる。
【0099】
使用のために意図される、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を含むブドウ球菌属菌種に由来する抗原には、ビルレンス調節因子(例えば、Agr系など)、SarおよびSae、Arl系、Sarホモログ(Rot、MgrA、SarS、SarR、SarT、SarU、SarV、SarX、SarZおよびTcaR)、Srr系およびTRAPが含まれる。抗原として役立ち得る他のブドウ球菌タンパク質には、Clpタンパク質、HtrA、MsrR、アコニターゼ、CcpA、SvrA、Msa、CfvAおよびCfvBが含まれる(例えば、Staphylococcus:Molecular Genetics(2008、Caister Academic Press、Jodi Lindsay編)を参照のこと)。黄色ブドウ球菌の2つの種(N315およびMu50)についてのゲノムが配列決定されており、例えば、PATRICにおいて公開されている(PATRIC:The VBI PathoSystems Resource Integration Center、Snyder他、2007)。当業者によって理解されるであろうように、抗原として使用されるためのブドウ球菌タンパク質がまた、他の公開されているデータベースにおいて、例えば、GenBank(登録商標)、Swiss-Prot(登録商標)およびTrEMBL(登録商標)などにおいて特定される場合がある。
【0100】
本明細書中に記載されるある特定の実施形態において使用のために意図される肺炎連鎖球菌由来の抗原には、ニューモリシン、PspA、コリン結合タンパク質A(CbpA)、NanA、NanB、SpnHL、PavA、LytA、Pht、およびピリンタンパク質(RrgA;RrgB;RrgC)が含まれる。肺炎連鎖球菌の抗原性タンパク質もまた、この技術分野では知られており、いくつかの実施形態において抗原として使用される場合がる(例えば、Zysk他(2000)を参照のこと)。肺炎連鎖球菌の毒性株の完全なゲノム配列が配列決定されており、また、当業者によって理解されるであろうように、本明細書中における使用のためのS.pneumoniaeタンパク質もまた、他の公開されているデータベースにおいて、例えば、GENBANK(登録商標)、SWISS-PROT(登録商標)およびTREMBL(登録商標)などにおいて特定される場合がある。本開示による抗原のための特に興味深いタンパク質には、ビルレンス因子、および肺炎球菌の表面に曝露することが予測されるタンパク質が含まれる(例えば、Frolet他(2010)を参照のこと)。
【0101】
抗原として使用され得る細菌抗原の例には、アクチノミセス(Actinomyces)ポリペプチド、バチルス(Bacillus)ポリペプチド、バクテロイデス(Bacteroides)ポリペプチド、ボルデテラ(Bordetella)ポリペプチド、バルトネラ(Bartonella)ポリペプチド、ボレリア(Borrelia)ポリペプチド(例えば、B.burgdorferiのOspA)、ブルセラ(Brucella)ポリペプチド、カンピロバクター(Campylobacter)ポリペプチド、カプノシトファガ(Capnocytophaga)ポリペプチド、クラミジア(Chlamydia)ポリペプチド、コリネバクテリウム(Corynebacterium)ポリペプチド、コクシエラ(Coxiella)ポリペプチド、デルマトフィルス(Dermatophilus)ポリペプチド、腸球菌(Enterococcus)ポリペプチド、エーリキア(Ehrlichia)ポリペプチド、大腸菌(Escherichia)ポリペプチド、フランシセラ(Francisella)ポリペプチド、フソバクテリウム(Fusobacterium)ポリペプチド、ヘモバルトネラ(Haemobartonella)ポリペプチド、ヘモフィルス(Haemophilus)ポリペプチド(例えば、b型H.influenzaeの外膜タンパク質)、ヘリコバクター(Helicobacter)ポリペプチド、クレブシエラ(Klebsiella)ポリペプチド、L型細菌ポリペプチド、レプトスピラ(Leptospira)ポリペプチド、リステリア(Listeria)ポリペプチド、マイコバクテリア(Mycobacteria)ポリペプチド、マイコプラズマ(Mycoplasma)ポリペプチド、ナイセリア(Neisseria)ポリペプチド、ネオリケッチア(Neorickettsia)ポリペプチド、ノカルジア(Nocardia)ポリペプチド、パスツレラ(Pasteurella)ポリペプチド、ペプトコッカス(Peptococcus)ポリペプチド、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)ポリペプチド、肺炎球菌(Pneumococcus)ポリペプチド(すなわち、S.pneumoniaeのポリペプチド)(本明細書中の説明を参照のこと)、プロテウス(Proteus)ポリペプチド、シュードモナス(Pseudomonas)ポリペプチド、リケッチア(Rickettsia)ポリペプチド、ロシャリメア(Rochalimaea)ポリペプチド、サルモネラ(Salmonella)ポリペプチド、赤痢菌(Shigella)ポリペプチド、ブドウ球菌(Staphylococcus)ポリペプチド、A群連鎖球菌ポリペプチド(例えば、S.pyogenesのMタンパク質)、B群連鎖球菌(S.agalactiae)ポリペプチド、トレポネマ(Treponema)ポリペプチド、およびエルシニア(Yersinia)ポリペプチド(例えば、Y pestisのF1抗原およびV抗原)が含まれるが、これらに限定されない。
【0102】
真菌抗原の例には、アブシジア(Absidia)ポリペプチド、アクレモニウム(Acremonium)ポリペプチド、アルテルナリア(Alternaria)ポリペプチド、アスペルギルス(Aspergillus)ポリペプチド、バシジオボルス(Basidiobolus)ポリペプチド、ビポラリス(Bipolaris)ポリペプチド、ブラストミセス(Blastomyces)ポリペプチド、カンジダ(Candida)ポリペプチド、コクシジオイデス(Coccidioides)ポリペプチド、コニジオボルス(Conidiobolus)ポリペプチド、クリプトコッカス(Cryptococcus)ポリペプチド、クルバラリア(Curvalaria)ポリペプチド、エピデルモフィトン(Epidermophyton)ポリペプチド、エクソフィアラ(Exophiala)ポリペプチド、ゲオトリクム(Geotrichum)ポリペプチド、ヒストプラズマ(Histoplasma)ポリペプチド、マズレラ(Madurella)ポリペプチド、マラセジア(Malassezia)ポリペプチド、ミクロスポルム(Microsporum)ポリペプチド、モニリエラ(Moniliella)ポリペプチド、モルチエレラ(Mortierella)ポリペプチド、ケカビ(Mucor)ポリペプチド、ペシロミセス(Paecilomyces)ポリペプチド、ペニシリウム(Penicillium)ポリペプチド、フィアレモニウム(Phialemonium)ポリペプチド、フィアロフォラ(Phialophora)ポリペプチド、プロトテカ(Prototheca)ポリペプチド、シュードアレシェリア(Pseudallescheria)ポリペプチド、シュードミクロドキウム(Pseudomicrodochium)ポリペプチド、フィチウム(Pythium)ポリペプチド、リノスポリジウム(Rhinosporidium)ポリペプチド、リゾプス(Rhizopus)ポリペプチド、スコレコバシジウム(Scolecobasidium)ポリペプチド、スポロトリクス(Sporothrix)ポリペプチド、ステムフィリウム(Stemphylium)ポリペプチド、白癬菌(Trichophyton)ポリペプチド、トリコスポロン(Trichosporon)ポリペプチド、およびキシロヒファ(Xylohypha)ポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。
【0103】
原生動物寄生虫抗原の例には、バベシア(Babesia)ポリペプチド、バランチジウム(Balantidium)ポリペプチド、ベスノイチア(Besnoitia)ポリペプチド、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)ポリペプチド、エイメリア(Eimeria)ポリペプチド、エンセファリトゾーン(Encephalitozoon)ポリペプチド、エントアメーバ(Entamoeba)ポリペプチド、ジアルジア(Giardia)ポリペプチド、ハモンジア(Hammondia)ポリペプチド、ヘパトゾーン(Hepatozoon)ポリペプチド、イソスポラ(Isospora)ポリペプチド、リーシュマニア(Leishmania)ポリペプチド、微胞子虫(Microsporidia)ポリペプチド、ネオスポラ(Neospora)ポリペプチド、ノセマ(Nosema)ポリペプチド、ペンタトリコモナス(Pentatrichomonas)ポリペプチド、プラスモジウム(Plasmodium)ポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。蠕虫寄生虫抗原の例には、アカントケイロネマ(Acanthocheilonema)ポリペプチド、アエルロストロンギルス(Aelurostrongylus)ポリペプチド、アンシロストーマ(Ancylostoma)ポリペプチド、住血線虫(Angiostrongylus)ポリペプチド、回虫(Ascaris)ポリペプチド、ブルギア(Brugia)ポリペプチド、ブノストムム(Bunostomum)ポリペプチド、キャピラリア(Capillaria)ポリペプチド、シャベルチア(Chabertia)ポリペプチド、クーペリア(Cooperia)ポリペプチド、クレノソーマ(Crenosoma)ポリペプチド、ジクチオカウルス(Dictyocaulus)ポリペプチド、ジオクトフィメ(Dioctophyme)ポリペプチド、ジペタロネマ(Dipetalonema)ポリペプチド、ジフィロボトリウム(Diphyllobothrium)ポリペプチド、ジプリジウム(Diplydium)ポリペプチド、イヌ糸状虫(Dirofilaria)ポリペプチド、ドラクンクルス(Dracunculus)ポリペプチド、蟯虫(Enterobius)ポリペプチド、フィラロイデス(Filaroides)ポリペプチド、ヘモンクス(Haemonchus)ポリペプチド、ラゴキルアスカリス(Lagochilascaris)ポリペプチド、ロア糸状虫(Loa)ポリペプチド、マンソネラ(Mansonella)ポリペプチド、ミューレリウス(Muellerius)ポリペプチド、ナノフィエツス(Nanophyetus)ポリペプチド、アメリカ鉤虫(Necator)ポリペプチド、ネマトジルス(Nematodirus)ポリペプチド、エソファゴストムム(Oesophagostomum)ポリペプチド、オンコセルカ(Onchocerca)ポリペプチド、オピストルキス(Opisthorchis)ポリペプチド、オステルタギア(Ostertagia)ポリペプチド、パラフィラリア(Parafilaria)ポリペプチド、肺吸虫(Paragonimus)ポリペプチド、パラアスカリス(Parascaris)ポリペプチド、フィサロプテラ(Physaloptera)ポリペプチド、プロトストロンギルス(Protostrongylus)ポリペプチド、セタリア(Setaria)ポリペプチド、スピロセルカ(Spirocerca)ポリペプチド、スピロメトラ(Spirometra)ポリペプチド、ステファノフィラリア(Stephanofilaria)ポリペプチド、ストロンギロイデス(Strongyloides)ポリペプチド、円虫(Strongylus)ポリペプチド、テラジア(Thelazia)ポリペプチド、トキサスカリス(Toxascaris)ポリペプチド、トキソカラ(Toxocara)ポリペプチド、旋毛虫(Trichinella)ポリペプチド、毛様線虫(Trichostrongylus)ポリペプチド、鞭虫(Trichuris)ポリペプチド、ウンシナリア(Uncinaria)ポリペプチド、およびウケレリア(Wuchereria)ポリペプチド、(例えば、P.falciparumのスポロゾイト周囲(PfCSP))、スポロゾイト表面タンパク質2(PfSSP2)、肝臓状態抗原1のカルボキシル末端(PfLSA1 c-term)、および輸出タンパク質1(PfExp-1)、ニューモシスチス(Pneumocystis)ポリペプチド、サルコシスチス(Sarcocystis)ポリペプチド、住血吸虫(Schistosoma)ポリペプチド、タイレリア(Theileria)ポリペプチド、トキソプラズマ(Toxoplasma)ポリペプチド、およびトリパノソーマ(Trypanosoma)ポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。
【0104】
外部寄生虫抗原の例には、ノミ、マダニ(カタダニおよびヒメダニを含む)、ハエ(例えば、ユスリカなど)、蚊、スナバエ、ブユ、ウマバエ、ノサシバエ、メクラアブ、ツェツェバエ、サシバエ、ハエ幼虫症を引き起こすハエおよびヌカカ(biting gnats)、アリ、クモ、シラミ、コダニ、ならびに半翅目昆虫(例えば、トコジラミおよびサシガメなど)からのポリペプチド(抗原、同様にまたアレルゲンを含む)が含まれるが、これらに限定されない。
【0105】
D.CD8αβ共受容体
具体的な実施形態において、本開示のCD4+細胞およびCD8+細胞は外因性のCD8αβ共受容体を発現する。CD8αβ共受容体は具体的な実施形態においては哺乳動物供給源に由来しており、ヒト、ラットおよびマウスなどに由来する場合がある。
【0106】
CD8α核酸分子の一例がアクセッション番号BC025715でNCBI GenBank(登録商標)データベースにあり、その配列が下記において提供される:
【0107】
1 gcgtcatggc cttaccagtg accgccttgc tcctgccgct ggccttgctg ctccacgccg
【0108】
61 ccaggccgag ccagttccgg gtgtcgccgc tggatcggac ctggaacctg ggcgagacag
【0109】
121 tggagctgaa gtgccaggtg ctgctgtcca acccgacgtc gggctgctcg tggctcttcc
【0110】
181 agccgcgcgg cgccgccgcc agtcccacct tcctcctata cctctcccaa aacaagccca
【0111】
241 aggcggccga ggggctggac acccagcggt tctcgggcaa gaggttgggg gacaccttcg
【0112】
301 tcctcaccct gagcgacttc cgccgagaga acgagggctg ctatttctgc tcggccctga
【0113】
361 gcaactccat catgtacttc agccacttcg tgccggtctt cctgccagcg aagcccacca
【0114】
421 cgacgccagc gccgcgacca ccaacaccgg cgcccaccat cgcgtcgcag cccctgtccc
【0115】
481 tgcgcccaga ggcgtgccgg ccagcggcgg ggggcgcagt gcacacgagg gggctggact
【0116】
541 tcgcctgtga tatctacatc tgggcgccct tggccgggac ttgtggggtc cttctcctgt
【0117】
601 cactggttat caccctttac tgcaaccaca ggaaccgaag acgtgtttgc aaatgtcccc
【0118】
661 ggcctgtggt caaatcggga gacaagccca gcctttcggc gagatacgtc taaccctgtg
【0119】
721 caacagccac tacattactt caaactgaga tccttccttt tgagggagca agtccttccc
【0120】
781 tttcattttt tccagtcttc ctccctgtgt attcattctc atgattatta ttttagtggg
【0121】
841 ggcggggtgg gaaagattac tttttcttta tgtgtttgac gggaaacaaa actaggtaaa
【0122】
901 atctacagta caccacaagg gtcacaatac tgttgtgcgc acatcgcggt agggcgtgga
【0123】
961 aaggggcagg ccagagctac ccgcagagtt ctcagaatca tgctgagaga gctggaggca
【0124】
1021 cccatgccat ctcaacctct tccccgcccg ttttacaaag ggggaggcta aagcccagag
【0125】
1081 acagcttgat caaaggcaca cagcaagtca gggttggagc agtagctgga gggaccttgt
【0126】
1141 ctcccagctc agggctcttt cctccacacc attcaggtct ttctttccga ggcccctgtc
【0127】
1201 tcagggtgag gtgcttgagt ctccaacggc aagggaacaa gtacttcttg atacctggga
【0128】
1261 tactgtgccc agagcctcga ggaggtaatg aattaaagaa gagaactgcc tttggcagag
【0129】
1321 ttctataatg taaacaatat cagacttttt tttttataat caagcctaaa attgtataga
【0130】
1381 cctaaaataa aatgaagtgg tgagcttaac cctggaaaat gaatccctct atctctaaag
【0131】
1441 aaaatctctg tgaaacccct atgtggaggc ggaattgctc tcccagccct tgcattgcag
【0132】
1501 aggggcccat gaaagaggac aggctacccc tttacaaata gaatttgagc atcagtgagg
【0133】
1561 ttaaactaag gccctcttga atctctgaat ttgagataca aacatgttcc tgggatcact
【0134】
1621 gatgactttt tatactttgt aaagacaatt gttggagagc ccctcacaca gccctggcct
【0135】
1681 ctgctcaact agcagataca gggatgaggc agacctgact ctcttaagga ggctgagagc
【0136】
1741 ccaaactgct gtcccaaaca tgcacttcct tgcttaaggt atggtacaag caatgcctgc
【0137】
1801 ccattggaga gaaaaaactt aagtagataa ggaaataaga accactcata attcttcacc
【0138】
1861 ttaggaataa tctcctgtta atatggtgta cattcttcct gattattttc tacacataca
【0139】
1921 tgtaaaatat gtctttcttt tttaaatagg gttgtactat gctgttatga gtggctttaa
【0140】
1981 tgaataaaca tttgtagcat cctctttaat gggtaaacag catccgaaaa aaaaaaaaaa
【0141】
2041 aaaaaaaaaa aaaaaaaaaa aaaaaaaaaa aaaaaaaaaa aaaaaaaaaa aaaaaaaaaa
【0142】
2101 aaaaaaaaaa aaaaaaaaaa aaaaaaaaaa aaaaaaaaaa aaaaaaaaaa
【0143】
CD8αタンパク質分子の一例がアクセッション番号AAH25715でNCBI GenBank(登録商標)データベースにあり、その配列が下記において提供される:
【0144】
1 malpvtalll plalllhaar psqfrvspld rtwnlgetve lkcqvllsnp tsgcswlfqp
【0145】
61 rgaaasptfl lylsqnkpka aegldtqrfs gkrlgdtfvl tlsdfrrene gcyfcsalsn
【0146】
121 simyfshfvp vflpakpttt paprpptpap tiasqplslr peacrpaagg avhtrgldfa
【0147】
181 cdiyiwapla gtcgvlllsl vitlycnhrn rrrvckcprp vvksgdkpsl saryv
【0148】
CD8β核酸分子の一例がアクセッション番号BC100912でNCBI GenBank(登録商標)データベースにあり、その配列が下記において提供される:
【0149】
1 gcgactgtct ccgccgagcc cccggggcca ggtgtcccgg gcgcgccacg atgcggccgc
【0150】
61 ggctgtggct cctcttggcc gcgcagctga cagttctcca tggcaactca gtcctccagc
【0151】
121 agacccctgc atacataaag gtgcaaacca acaagatggt gatgctgtcc tgcgaggcta
【0152】
181 aaatctccct cagtaacatg cgcatctact ggctgagaca gcgccaggca ccgagcagtg
【0153】
241 acagtcacca cgagttcctg gccctctggg attccgcaaa agggactatc cacggtgaag
【0154】
301 aggtggaaca ggagaagata gctgtgtttc gggatgcaag ccggttcatt ctcaatctca
【0155】
361 caagcgtgaa gccggaagac agtggcatct acttctgcat gatcgtcggg agccccgagc
【0156】
421 tgaccttcgg gaagggaact cagctgagtg tggttgattt ccttcccacc actgcccagc
【0157】
481 ccaccaagaa gtccaccctc aagaagagag tgtgccggtt acccaggcca gagacccaga
【0158】
541 agggcctcaa ggggaaggtg tatcaggaac ctttgtcccc caatgcctgc atggatacta
【0159】
601 cagcaatact acaacctcac agaagctgct taacccatgg atcctgaaaa cataggcaag
【0160】
661 aagcacaggt cctgatgagt ggatctttac tacttttacc agatt
【0161】
CD8βタンパク質分子の一例がアクセッション番号AAI00913でNCBI GenBank(登録商標)データベースにあり、その配列が下記において提供される:
【0162】
1 mrprlwllla aqltvlhgns vlqqtpayik vqtnkmvmls ceakislsnm riywlrqrqa
【0163】
61 pssdshhefl alwdsakgti hgeeveqeki avfrdasrfi lnltsvkped sgiyfcmivg
【0164】
121 speltfgkgt qlsvvdflpt taqptkkstl kkrvcrlprp etqkglkgkv yqeplspnac
【0165】
181 mdttailqph rsclthgs
【0166】
E.作製のための細胞
CD4+細胞およびCD8+細胞は1つまたは複数の個体からのサンプルから選択され得る。サンプルは、処置を受けている個体から得られる場合があり、したがって、処置を受けている個体に関して自家である。他の場合において、サンプルは、細胞による処置を受けている個体とは異なる個体から得られ、したがって、処置を受けている個体に関して同種である。CD4+細胞およびCD8+細胞は、治療を必要としている個体を含めて、対象から、特にヒト対象から単離される免疫細胞から選択される場合がある。免疫細胞を、血液、臍帯血、脾臓、胸腺、リンパ節および骨髄(これらに限定されない)を含めて、対象において存在するどのような場所からであっても採取することができる。単離された免疫細胞はそのまま使用される場合があり、または、例えば、凍結することなどによって、一定の期間にわたって貯蔵することができる。
【0167】
免疫細胞は、血液(血液バンクまたは臍帯血液バンクによって集められる血液を含む)、脾臓、骨髄、外科的手技の期間中に取り出される組織および/または露出する組織、ならびに生検手技を介して得られる組織(これらに限定されない)を含めて、免疫細胞が存在するどのような組織からであっても富化/精製され得る。免疫細胞が富化される、単離される、および/または精製される組織/臓器が、生体および非生体の両方の対象から単離される場合があり、ただし、非生体の対象は臓器ドナーである。特定の実施形態において、免疫細胞は血液から単離され、例えば、末梢血または臍帯血などから単離される。いくつかの局面において、臍帯血から単離される免疫細胞は、免疫調節能が増強されている。具体的な局面において、免疫細胞は、増強された免疫調節能のために、プールされた血液から、特に、プールされた臍帯血から単離される。プールされた血液は2つ以上の供給源からのものである場合があり、例えば、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10またはそれ以上の供給源(例えば、ドナー対象)などからのものである場合がある。
【0168】
CD4+細胞およびCD8+細胞が由来する免疫細胞の集団を、治療を必要としている対象、または疾患に罹患している対象から得ることができる。したがって、これらの細胞は、治療を必要としている対象に対して自家であろう。代替において、免疫細胞の集団をドナーから得ることができ、好ましくは組織適合性一致のドナーから得ることができる。免疫細胞集団を、末梢血、臍帯血、骨髄、脾臓、あるいは、どのような他の臓器/組織であれ、免疫細胞が前記対象またはドナーにおいて存在する他の臓器/組織から採取することができる。免疫細胞は対象および/またはドナーの予備集団から単離することができ、例えば、プールされた臍帯血などから単離することができる。
【0169】
免疫細胞の集団が対象とは異なるドナーから得られるとき、得られた細胞が対象に導入され得るという点で、得られた細胞が対象適合性であるならば、ドナーは好ましくは同種である。同種ドナー細胞はヒト白血球抗原(HLA)適合性である場合があり、またはヒト白血球抗原(HLA)適合性でない場合がある。対象適合性にするために、同種細胞は、免疫原性を低下させるように処置することができる(Fast他、2004)。
【0170】
F.作製方法
当業者は、本開示の遺伝子組換え分子の発現のために、ベクターを標準的な組換え技術(例えば、Sambrook他(2001)およびAusubel他(1996)、これらは両方が参照によって本明細書中に組み込まれる)により構築する能力が十分に備わっているであろう。遺伝子組換え分子は、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターを含めて、ベクターにおいて、またはベクターに基づいてレシピエント細胞に提供され得る。ウイルスベクターの例には、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レンチウイルスまたはレトロウイルスが含まれる。非ウイルスベクターの例には、プラスミド、リポソームおよびナノ粒子などが含まれる。具体的な実施形態において、ベクターはレトロウイルス由来である。
【0171】
1.調節エレメント
【0172】
本開示において有用であるベクターに含められる発現カセットは特に、タンパク質コード配列に機能的に連結される真核生物転写プロモーター、介在配列を含むスプライスシグナル、および転写終結/ポリアデニル化配列を(5’から3’の方向で)含有する。タンパク質コード遺伝子の転写を真核生物細胞において制御するプロモーターおよびエンハンサーは、多数の遺伝子エレメントから構成される場合がある。細胞機構は、それぞれのエレメントによって伝えられる調節情報を集め、統合し、これにより、異なる遺伝子が転写調節の別個の、多くの場合には複雑なパターンを展開することを可能にすることができる。本開示との関連で使用されるプロモーターには、例えば、構成的プロモーター、誘導可能プロモーターおよび組織特異的プロモーターが含まれる。ベクターがガン治療の創出のために利用される場合には、プロモーターが低酸素の条件のもとで効果的であることがある。
【0173】
a.プロモーター/エンハンサー
【0174】
本明細書中において提供される発現構築物は、抗原受容体および他のシストロン遺伝子産物の発現を行わせるためのプロモーターを含む。プロモーターは一般には、RNA合成のための開始部位の位置を定めるために機能する配列を含む。これの最もよく知られている例がTATAボックスであり、しかし、TATAボックスを欠くいくつかのプロモーター、例えば、哺乳動物のターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ遺伝子のためのプロモーター、およびSV40の後期遺伝子のためのプロモーターなどにおいては、開始部位そのものに重なる離散したエレメントが、開始の場所を定めるために役立つ。さらなるプロモーターエレメントにより、転写開始頻度が調節される。典型的には、これらは開始部位の上流側の領域に位置しており、だが、多くのプロモーターは、機能的エレメントを開始部位の下流側に同様に含有することが示されている。コード配列をプロモーターの「制御下に」するために、転写リーディングフレームの転写開始部位の5’末端が、選定されたプロモーターの「下流側」(すなわち、3’側)に配置される。「上流側」のプロモーターはDNAの転写を刺激し、コードされたRNAの発現を促進させる。
【0175】
プロモーターエレメント間の間隔はしばしば柔軟性があり、そのため、エレメントが互いに逆になったとき、または互いに移動したとき、プロモーター機能は保持される。例えば、tkプロモーターにおいては、プロモーターエレメント間の間隔を、活性が低下し始める前に、50bp離れるまで増大させることができる。プロモーターに依存して、個々のエレメントが、転写を活性化するために協調的または独立的にそのどちらでも機能し得るようである。プロモーターは、核酸配列の転写活性化に関与するシス作用の調節配列を示す「エンハンサー」と併せて使用される場合があり、または使用されない場合がある。
【0176】
プロモーターは、コーディングセグメントおよび/またはエクソンの上流側に位置する5’側の非コード配列を単離することによって得られる場合があるように、核酸配列に生来的に関連するものである場合がある。そのようなプロモーターは、「内因性」であるとして示すことができる。同様に、エンハンサーは、核酸配列の下流側または上流側のどちらにでも位置する、核酸配列に生来的に関連するものである場合がある。代替において、ある種の利点が、コード核酸セグメントを組換えプロモーターまたは異種プロモーター(これは、核酸配列にその天然環境において通常の場合には関連しないプロモーターを示す)の制御下に配置することによって得られるであろう。組換えまたは異種のエンハンサーもまた、核酸配列にその天然環境において通常の場合には関連しないエンハンサーを示す。そのようなプロモーターまたはエンハンサーには、他の遺伝子のプロモーターまたはエンハンサー、ならびにどのような他のウイルスまたは原核生物細胞もしくは真核生物細胞からであっても単離されるプロモーターまたはエンハンサー、ならびに「天然に存在し」ないプロモーターまたはエンハンサー、すなわち、異なる転写調節領域の異なるエレメント、および/または発現を変化させる変異を含有するプロモーターまたはエンハンサーが含まれる場合がある。例えば、組換えDNA構築において最も一般に使用されるプロモーターには、β-ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトースのプロモーター系、およびトリプトファン(trp)のプロモーター系が含まれる。プロモーターおよびエンハンサーの核酸配列を合成により作製することに加えて、様々な配列が、本明細書中に開示される組成物に関連して、PCR(商標)を含めて組換えクローニング技術および/または核酸増幅技術を使用して作製される場合がある。さらに、核を持たないオルガネラ(例えば、ミトコンドリアおよび葉緑体など)の内部において配列の転写および/または発現を導く制御配列が同様に用いられ得ることが意図される。
【0177】
当然のことながら、発現のために選定されるオルガネラ、細胞タイプ、組織、器官または生物におけるDNAセグメントの発現を効果的に導くプロモーターおよび/またはエンハンサーを用いることが重要であろう。分子生物学の分野の当業者は一般に、プロモーター、エンハンサーおよび細胞タイプの様々な組合わせがタンパク質発現のために使用されることを理解している(例えば、Sambrook他(1989)を参照のこと、これは参照によって本明細書中に組み込まれる)。用いられるプロモーターは、例えば、組換えタンパク質および/または組換えペプチドの大規模産生において好都合であるように、導入されたDNAセグメントの高レベルの発現を導くための適切な条件のもとで構成的、組織特異的、誘導可能、および/または有用である場合がある。プロモーターは異種または内因性である場合がある。
【0178】
加えて、どのような組合わせであれプロモーター/エンハンサーの組み合わせ(例えば、epd.isb-sib.ch/でのワールドワイドウエブを介する真核生物プロモーターデータベースEPDBによるもの)もまた、発現を行わせるために使用され得るであろう。T3、T7またはSP6の細胞質発現系の使用が、別の可能な実施形態である。真核生物細胞は、適切な細菌ポリメラーゼが送達複合体の一部として、またはさらなる遺伝子発現構築物としてそのどちらかで提供されるならば、ある種の細菌プロモーターからの細胞質転写を支援することができる。
【0179】
プロモーターの限定されない例には、初期または後期のウイルスプロモーター、例えば、SV40の初期プロモーターまたは後期プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)の前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)の初期プロモーターなど;真核生物細胞のプロモーター、例えば、ベータアクチンプロモーター、GADPHプロモーター、メタロチオネインプロモーターなど;ならびに連鎖状応答エレメントプロモーター、例えば、環状AMP応答エレメントプロモーター(cre)、血清応答エレメントプロモーター(sre)、ホルボールエステルプロモーター(TPA)、および最小のTATAボックスの近くにある応答エレメントプロモーター(tre)などが含まれる。ヒト成長ホルモンのプロモーター配列(例えば、GenBank(登録商標)に記載されるヒト成長ホルモン最小プロモーター、アクセッション番号X05244、ヌクレオチド283~341)またはマウス乳腺腫瘍プロモーター(これはATCCから入手可能である;カタログ番号ATCC45007)を使用することもまた可能である。ある特定の実施形態において、プロモーターは、CMV IE、デクチン-1、デクチン-2、ヒトCD11c、F4/80、SM22、RSV、SV40、Ad MLP、ベータ-アクチン、MHCクラスIまたはMHCクラスIIのプロモーターであり、しかしながら、治療遺伝子の発現を行わせるために有用である他のプロモーターはどれも、本開示の実施に適用可能である。
【0180】
ある特定の局面において、本開示の方法はまた、エンハンサー配列、すなわち、プロモーターの活性を増大させ、かつ、シスで、しかも、その向きにかかわらず、(標的プロモーターから数キロベースにまで離れた)比較的長い距離にわたってさえ作用する可能性がある核酸配列に関する。しかしながら、エンハンサーは所与のプロモーターのごく近傍でもまた機能することがあるので、エンハンサー機能はそのような長い距離に必ずしも制限されない。
【0181】
b.開始シグナルおよび連鎖発現
【0182】
特異的な開始シグナルもまた、コード配列の効率的な翻訳のために、本開示において提供される発現構築物において使用される場合がある。これらのシグナルには、ATG開始コドンまたは隣接配列が含まれる。ATG開始コドンを含めて外因性の翻訳制御シグナルが提供される必要がある場合がある。当業者は、このことを決定し、必要なシグナルを提供することが容易にできるであろう。開始コドンは、インサート全体の翻訳を確実にするために所望のコード配列の読み枠と「インフレーム」でなければならないことが、広く知られている。外因性の翻訳制御シグナルおよび開始コドンは生来的または合成由来のどちらもが可能である。発現効率が、適切な転写エンハンサーエレメントを含むことによって増強される場合がある。
【0183】
ある特定の実施形態において、配列内リボソーム進入部位(IRES)エレメントの使用が、多重遺伝子または多シストロン性メッセージを作出するために使用される。IRESエレメントは、5’メチル化Capに依存する翻訳のリボソームスキャンモデルを迂回し、翻訳を内部部位において開始させることができる。ピコルナウイルス科の2つのメンバー(ポリオおよび脳心筋炎)から得られる様々なIRESエレメントが記載されており、同様に哺乳動物メッセージから得られるIRESも記載されている。IRESエレメントを異種のオープンリーディングフレームに連結することができる。多数のオープンリーディングフレームを、それぞれがIRESによって隔てられて一緒になるように転写させ、これにより多シストロン性メッセージをもたらすことができる。IRESエレメントによって、それぞれのオープンリーディングフレームが、リボソームにとって、効率的な翻訳のために利用可能である。多数の遺伝子を、1つだけのメッセージを転写するためにただ1つのプロモーター/エンハンサーを使用して効率的に発現させることができる。
【0184】
ある特定の2A配列エレメントが、本開示において提供される構築物における遺伝子の連鎖発現または共発現を生じさせるために使用される場合がある。例えば、切断配列が、オープンリーディングフレームを連結して1つのシストロンを形成することによって遺伝子の共発現を行うために使用され得るであろう。1つの例示的な切断配列が、ウマ鼻炎Aウイルス(E2A)もしくはF2A(口蹄疫ウイルス2A)または「2A様」配列(例えば、トセア・アシグナ(Thosea asigna)ウイルス2A;T2A)またはブタテッショウウイルス-1(P2A)である。具体的な実施形態において、1つのベクターでは、多数の2A配列が同一ではなく、だが、代替の実施形態において、同じベクターが2つ以上の同じ2A配列を利用する。2A配列の様々な例が米国特許出願公開第2011/0065779号(その全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)において提供される。
【0185】
自己切断性の2Aペプチドが利用される実施形態において、2Aペプチドは、ポリペプチドの「切断」を真核生物細胞における翻訳の期間中に媒介する18~22アミノ酸(aa)長のウイルスオリゴペプチドである場合がある。呼称「2A」はウイルスゲノムの特定の領域を示し、種々のウイルス2Aが一般には、それらが得られたウイルスにちなんで名付けられている。最初に発見された2AがF2A(口蹄疫ウイルス)であり、その後、E2A(ウマ鼻炎Aウイルス)、P2A(ブタテッショウウイルス-1 2A)、およびT2A(トセア・アシグナウイルス2A)もまた特定された。2A媒介「自己切断」の機構は、リボソームが2AのC末端でのグリシル-プロリルペプチド結合の形成をスキップすることであることが発見された。高度に保存された配列GDVEXNPGPが種々の2AによってC末端で共有されており、立体障害およびリボソームスキッピングをもたらすために有用である。翻訳のスキップおよび再開が成功すると、2つの「切断された」タンパク質が生じる。2A配列の様々な例が下記の通りである:
【0186】
T2A:(GSG)EGRGSLLTCGDVEENPGP(配列番号6)
【0187】
P2A:(GSG)ATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号7)
【0188】
E2A:(GSG)QCTNYALLKLAGDVESNPGP(配列番号8)
【0189】
F2A:(GSG)VKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号9)
【0190】
c.複製起点
【0191】
ベクターを宿主細胞において増やすために、ベクターは、1つまたは複数の複製起点部位(これは「ori」と呼ばれることが多い)、例えば、複製が開始される特異的な核酸配列である、上記で記載されるようなEBVのoriPに対応する核酸配列、またはプログラミングにおける類似する機能もしくは高まった機能を有する遺伝子操作されたoriPを含有する場合がある。代替において、上記で記載されるような他の染色体外複製ウイルスの複製起点、または自律的複製配列(ARS)を用いることができる。
【0192】
d.選択マーカーおよびスクリーニングマーカー
【0193】
いくつかの実施形態において、本開示の構築物を含有する細胞は、マーカーを発現ベクターに含むことによってインビトロまたはインビボにおいて特定される場合がある。そのようなマーカーは、特定可能な変化を細胞に与え、これにより、発現ベクターを含有する細胞の容易な特定を可能にするであろう。一般に、選択マーカーは、選択について可能にする性質を与えるものである。正の選択マーカーは、マーカーの存在がその選択について可能にするものであり、一方、負の選択マーカーは、その存在がその選択を妨げるものである。正の選択マーカーの一例が薬物耐性マーカーである。
【0194】
通常、薬物選択マーカーを含むことにより、形質転換体のクローニングおよび特定が助けられる。例えば、ネオマイシン、ピューロマイシン、ヒグロマイシン、DHFR、GPT、ゼオシンおよびヒスチジノールに対する耐性を付与する遺伝子が、有用な選択マーカーである。条件の実施に基づく形質転換体の識別について可能にする表現型を与えるマーカーに加えて、基礎が比色分析であるスクリーニングマーカー(例えば、GFPなど)を含めた他のタイプのマーカーもまた意図される。代替において、負の選択マーカーとしてのスクリーニングマーカー、例えば、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(tk)、またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)などが利用される場合がある。当業者はまた、免疫学的マーカーを場合によりFACS分析と併せてどのように用いるかを知っているであろう。使用されるマーカーは、遺伝子産物をコードする核酸と同時に発現されることが可能である限り、重要でないと思われる。選択マーカーおよびスクリーニングマーカーのさらなる例が当業者には広く知られている。
【0195】
e.自殺遺伝子
【0196】
本開示によって包含されるベクターを収容するために改変されている本開示の細胞は1つまたは複数の自殺遺伝子を含む場合がある。用語「自殺遺伝子」は、本明細書中で使用される場合、プロドラッグまたは他の薬剤が投与されたとき、その宿主細胞を殺す化合物への遺伝子産物の移行をもたらす遺伝子として定義される。使用され得る自殺遺伝子/プロドラッグの組み合わせの例として、単純ヘルペスウイルス-チミジンキナーゼ(HSV-tk)およびガンシクロビル、アシクロビルまたはFIAU;オキシドレダクターゼおよびシクロヘキシミド;シトシンデアミナーゼおよび5-フルオロシトシン;チミジンキナーゼチミジル酸キナーゼ(Tdk::Tmk)およびAZT;ならびにデオキシシチジンキナーゼおよびシトシンアラビノシドが挙げられる。
【0197】
大腸菌のプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(これは、プロドラッグの6-メチルプリンデオキシリボシドを毒性のプリン6-メチルプリンに変換するいわゆる自殺遺伝子である)が使用される場合がある。プロドラッグ療法とともに使用される自殺遺伝子の他の例として、大腸菌のシトシンデアミナーゼ遺伝子およびHSVのチミジンキナーゼ遺伝子が挙げられる。
【0198】
例示的な自殺遺伝子には、CD20、CD52、EGFRv3、または誘導可能なカスパーゼ9が含まれる。1つの実施形態において、EGFRバリアントIIIの短縮型(EGFRv3)が、セツキシマブによって除去することができる自殺抗原として使用される場合がある。本開示において使用され得るこの技術分野で知られているさらなる自殺遺伝子には、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)、シトクロームp450酵素(CYP)、カルボキシペプチダーゼ(CP)、カルボキシルエステラーゼ(CE)、ニトロレダクターゼ(NTR)、グアニンリボシルトランスフェラーゼ(XGRTP)、グリコシダーゼ酵素、メチオニン-α,γ-リアーゼ(MET)、およびチミジンホスホリラーゼ(TP)が含まれる。具体的な実施形態において、米国仮特許出願第62/769,405号(2018年11月19日出願)および米国仮特許出願第62/773,372号(2018年11月30日出願)および米国仮特許出願第62/791,464号(2019年1月11日出願)(これらのすべてがそれらの全体において参照によって本明細書中に組み込まれる)に記載されるように、細胞膜表面に発現する非分泌性のTNFアルファタンパク質をコードする変異型TNF-アルファ自殺遺伝子が利用され、これにより、非分泌性TNFアルファタンパク質が阻害剤によって、例えば、抗体などによって標的化されることが可能になる。
【0199】
IV.処置方法
【0200】
いくつかの実施形態において、本開示は、免疫療法を含めて治療のための方法であって、CD8αβ共受容体を発現するように操作される本開示によって包含される免疫細胞の効果的な量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、医学的な疾患または障害が、前記細胞をレシピエント個体に移入することによって処置される。本開示のある特定の実施形態において、ガンが、抗原を標的とする細胞集団を移入することによって処置される。本明細書中には、個体においてガンを処置するための、またはガンの進行を遅らせるための方法であって、(1つまたは複数の抗原に対して特異的である)抗原特異的細胞療法の効果的な量を個体に施すことを含む方法が提供される。
【0201】
治療を必要としている個体がガンを有する場合において、ガンは血液ガンであることがあり、または固形腫瘍を含むことがある。本処置方法が有用である腫瘍には、あらゆる悪性細胞タイプ、例えば、固形腫瘍または血液学的悪性腫瘍に見出される悪性細胞タイプなどが含まれる。例示的な固形腫瘍には、膵臓、結腸、盲腸、胃、脳、頭、首、卵巣、腎臓、喉頭、肉腫、肺、膀胱、メラノーマ、前立腺、皮膚、甲状腺、胆嚢、脾臓、肝臓、骨、子宮内膜、精巣、子宮頸部、食道、前立腺および乳房からなる群から選択される器官または組織の腫瘍が含まれ得るが、これらに限定されない。例示的な血液学的腫瘍には、骨髄の腫瘍、T細胞またはB細胞の悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、芽細胞腫および骨髄腫などの腫瘍が含まれる。本明細書中において提供される方法を使用して処置され得るガンのさらなる例には、肺ガン(小細胞肺ガン、非小細胞肺ガン、肺の腺ガン、および肺の扁平上皮ガンを含む)、腹膜のガン、胃部または胃のガン(胃腸ガンおよび消化管間質ガンを含む)、膵臓ガン、子宮頸ガン、卵巣ガン、肝臓ガン、膀胱ガン、乳ガン、結腸ガン、結腸直腸ガン、子宮内膜ガンまたは子宮ガン、唾液腺ガン、腎臓または腎臓部のガン、前立腺ガン、外陰部ガン、甲状腺ガン、様々なタイプの頭頸部ガン、およびメラノーマが含まれるが、これらに限定されない。
【0202】
ガンは具体的には下記の組織学的タイプのものである場合があり、だが、それらに限定されない:新生物、悪性;ガン腫;ガン腫、未分化型;巨細胞ガンおよび紡錘細胞ガン;小細胞ガン;乳頭ガン;扁平上皮ガン;リンパ上皮性ガン;基底細胞ガン;毛母ガン(pilomatrix carcinoma);移行上皮ガン;乳頭状移行上皮ガン;腺ガン;ガストリノーマ、悪性;胆管ガン;肝細胞ガン;肝細胞ガンと胆管ガンとの混合型;小柱状腺ガン;腺様嚢胞ガン;腺腫性ポリープにおける腺ガン;腺ガン、家族性大腸ポリポーシス;固形ガン;カルチノイド腫瘍、悪性;鰓肺胞(branchiolo-alveolar)腺ガン;乳頭状腺ガン;嫌色素性ガン;好酸性(acidophil)ガン;好酸性(oxyphilic)腺ガン;好塩基性ガン;明細胞腺ガン;顆粒細胞ガン;濾胞腺ガン;乳頭状濾胞腺ガン;非被包性硬化性ガン;副腎皮質ガン;類内膜ガン(endometroid carcinoma);皮膚付属器ガン;アポクリン腺ガン;皮脂腺ガン;耳垢腺ガン;粘表皮ガン;嚢胞腺ガン;乳頭状嚢胞腺ガン;乳頭状漿液性嚢胞腺ガン;粘液性嚢胞腺ガン;粘液性腺ガン;印環細胞ガン;浸潤性乳管ガン;髄様ガン;小葉ガン;炎症性乳ガン;パジェット病、乳房;腺房細胞ガン;腺扁平上皮ガン;扁平上皮化生を伴う腺ガン;胸腺腫、悪性;卵巣間質腫瘍、悪性;莢膜細胞腫、悪性;顆粒膜細胞腫、悪性;アンドロブラストーマ、悪性;セルトリ細胞ガン;ライディッヒ細胞腫、悪性;脂質細胞腫瘍、悪性;パラガングリオーマ、悪性;乳房外パラガングリオーマ、悪性;クロム親和性細胞腫;グロムス血管肉腫;悪性メラノーマ;無色素性メラノーマ;表在拡大型メラノーマ;悪性黒子型メラノーマ;末端黒子型メラノーマ;結節性メラノーマ;巨大色素性母斑における悪性メラノーマ;類上皮細胞メラノーマ;青色母斑、悪性;肉腫;線維肉腫;線維性組織球腫、悪性;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質肉腫;混合腫瘍、悪性;ミュラー管混合腫瘍;腎芽細胞腫;肝芽細胞腫;ガン肉腫;間葉腫、悪性;ブレンナー腫瘍、悪性;葉状腫瘍、悪性;滑膜肉腫;中皮腫、悪性;未分化胚細胞腫;胎児性ガン;奇形腫、悪性;卵巣甲状腺腫、悪性;絨毛ガン;中腎腫、悪性;血管肉腫;血管内皮腫、悪性;カポジ肉腫;血管周囲細胞腫、悪性;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;軟骨芽細胞腫、悪性;間葉性軟骨肉腫;骨の巨細胞腫;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍、悪性;エナメル上皮歯牙肉腫;エナメル上皮腫、悪性;エナメル上皮線維肉腫;松果体腫、悪性;脊索腫;神経膠腫、悪性;上衣細胞腫;星状膠細胞腫;原形質性星状膠細胞腫;原線維性星状膠細胞腫;星状膠芽細胞腫;神経膠芽細胞腫;乏突起膠腫;乏突起膠芽細胞腫;未分化神経外胚葉性;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽細胞腫;網膜芽細胞腫;嗅神経原性腫瘍;髄膜腫、悪性;神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性;顆粒細胞腫瘍、悪性;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキン;側肉芽腫;悪性リンパ腫、小リンパ球性;悪性リンパ腫、大細胞型、びまん性;悪性リンパ腫、濾胞性;菌状息肉腫;他の指定された非ホジキンリンパ腫;B細胞リンパ腫;低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小非切れ込み核細胞リンパ腫;巨大病変NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;ワルデンシュトレームマクログロブリン血症;悪性組織球腫;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞性白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞白血病;骨髄性白血病:好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫;ヘアリー細胞白血病;慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);急性骨髄性白血病(AML);および慢性骨髄芽球性白血病。
【0203】
特定の実施形態が白血病の処置方法に関する。白血病は血液または骨髄のガンであり、血液細胞、通常の場合には白色血液細胞(白血球)の異常な増殖(増倍による異常な生成)によって特徴づけられる。白血病は、血液学的新生物と呼ばれる幅広い一群の疾患の一部である。白血病は、広範な疾患を含む幅広い用語である。白血病は臨床的および病理学的にはその急性型および慢性型に分けられる。
【0204】
本開示のある特定の実施形態において、CD4+および/またはCD8+の遺伝子組換え細胞が、それを必要とする個体に、例えば、ガンを有する個体などに送達される。細胞はその後、個体の免疫システムを増強して、それぞれのガンを攻撃する。場合により、個体には、1回または複数回の細胞が与えられる。個体に2回以上の細胞が与えられる場合、投与間の期間は、個体における伝播のための時間を許すために十分でなければならず、具体的な実施形態において、服用間の期間が、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日またはそれ以上である。
【0205】
ある特定の実施形態において、細胞の成長および活性化を促進する増殖因子が、細胞と同時に、または細胞に続いてのどちらでも対象に投与される。免疫細胞増殖因子は、免疫細胞の成長および活性化を促進させる好適な増殖因子がどれも可能である。好適な免疫細胞増殖因子の例には、インターロイキン(IL)-2、IL-7、IL-15およびIL-12が含まれ、これらは単独で使用することができ、あるいは様々な組合わせで、例えば、IL-2およびIL-7、IL-2およびIL-15、IL-7およびIL-15、IL-2、IL-7およびIL-15、IL-12およびIL-7、IL-12およびIL-15、またはIL-12およびIL2などの組合わせで使用することができる。
【0206】
治療効果的な量の細胞を、非経口投与、例えば、静脈内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、胸骨内注射もしくは関節内注射、または注入を含めて多くの経路によって投与することができる。
【0207】
養子細胞療法において使用するための改変されたCD4+細胞および/またはCD8+細胞の治療効果的な量は、所望の効果を処置が行われている対象において達成するそのような量である。例えば、これは、ガンの発達を阻害するために、またはガンの退行を引き起こすために必要な免疫細胞の量であることが可能である。
【0208】
免疫細胞集団は、疾患と矛盾しない治療計画で、例えば、疾患状態を改善するために1日から数日にわたって1回または数回の服用で、あるいは疾患進行を抑制し、疾患再発を防止するために長期間にわたって定期的な服用で投与することができる。配合物において用いられるための正確な服用量は、投与経路、および疾患または障害の重篤度にもまた依存するであろうし、医師の判断およびそれぞれの患者の状況に応じて決定されなければならない。細胞の治療効果的な量は、処置を受けている対象、苦痛の重篤度およびタイプ、ならびに投与様式に依存するであろう。いくつかの実施形態において、ヒト対象の処置において使用され得るであろう服用量は、1m2あたりの免疫細胞が少なくとも3.8×104個、少なくとも3.8×105個、少なくとも3.8×106個、少なくとも3.8×107個、少なくとも3.8×108個、少なくとも3.8×109個、または少なくとも3.8×1010個からの範囲である。ある特定の実施形態において、ヒト対象の処置において使用される服用量は、1m2あたりの免疫細胞が約3.8×109 個から約3.8×1010個までの範囲である。さらなる実施形態において、免疫細胞の治療効果的な量は約5×106細胞/kg体重から約7.5×108細胞/kg体重まで変化させることができ、例えば、体重1kgあたり約2×107個の細胞から約5×108個の細胞まで、または体重1kgあたり約5×107個の細胞から約2×108個の細胞まで変化させることができる。免疫細胞の正確な量は、対象の年齢、体重、性別および生理学的状態に基づいて当業者によって容易に決定される。効果的な服用量を、インビトロ試験系または動物モデル試験系から導かれる用量応答曲線から外挿することができる。
【0209】
V.医薬組成物
【0210】
本明細書中にはまた、改変されたCD4+細胞および/またはCD8+細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)と、医薬的に許容され得るキャリアとを含む医薬組成物および配合物が提供される。
【0211】
本明細書中に記載されるような医薬組成物および配合物は、所望の純度を有する有効成分(例えば、細胞など)を1つまたは複数の随意的な医薬的に許容され得るキャリア(Remington’s Pharmaceutical Sciences、第22版、2012年)と混合することによって、凍結乾燥配合物または水溶液の形態で調製することができる。医薬的に許容され得るキャリアは一般に、用いられる投薬量および濃度においてレシピエントに対して無毒性であり、医薬的に許容され得るキャリアには、下記のものが含まれるが、それらに限定されない:緩衝剤、例えば、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸など;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム塩化物;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルパラベンまたはプロピルパラベンなど;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなど;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドンなど;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリジンなど;グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む単糖、二糖および他の炭水化物;キレート化剤、例えば、EDTAなど;糖,例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなど;塩形成対イオン、例えば、ナトリウムなど;金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体);および/または非イオン性界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)など。本明細書中における例示的な医薬的に許容され得るキャリアにはさらに、介在性(insterstitial)薬物分散剤、例えば、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)など、例えば、ヒトの可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)などが含まれる。rHuPH20を含めて、ある特定の例示的なsHASEGPおよび使用方法が、米国特許出願公開第2005/0260186号および同第2006/0104968号に記載される。1つの局面において、sHASEGPが1つまたは複数のさらなるグリコサミノグリカナーゼ(例えば、コンドロイチナーゼなど)と組み合わされる。
【0212】
VI.併用療法
【0213】
ある特定の実施形態において、本実施形態の組成物および方法は、少なくとも1つのさらなる治療法との組合わせでの改変されたCD4+および/またはCD8+のT細胞集団を必要とする。さらなる治療法は、放射線療法、手術(例えば、乳腺腫瘤摘出術および乳房切除術)、化学療法、遺伝子療法、DNA療法、ウイルス療法、RNA療法、免疫療法、骨髄移植、ナノ療法、モノクローナル抗体療法、または前述の組合わせである場合がある。さらなる治療法はアジュバント療法またはネオアジュバント療法の形態である場合がある。
【0214】
いくつかの実施形態において、さらなる治療法は小分子酵素阻害剤または転移抑制剤の投与である。いくつかの実施形態において、さらなる治療法は、副作用制限剤(例えば、処置の副作用の発生および/または重篤度を軽減するために意図される薬剤(例えば、制吐剤など)など)の投与である。いくつかの実施形態において、さらなる治療法は放射線療法である。いくつかの実施形態において、さらなる治療法は手術である。いくつかの実施形態において、さらなる治療法は放射線療法と手術との組合わせである。いくつかの実施形態において、さらなる治療法はガンマ線照射である。いくつかの実施形態において、さらなる治療法は、PBK/AKT/mTOR経路を標的とする治療、HSP90阻害剤、チューブリン阻害剤、アポトーシス阻害剤、および/または化学予防剤である。さらなる治療法は、この技術分野において知られている化学療法剤の1つまたは複数である場合がある。
【0215】
細胞療法が、さらなるガン治療法(例えば、免疫チェックポイント療法など)の前に、その期間中に、その後で、またはそれに対して様々な組合わせで施される場合がある。施すことが、同時から、数分にまで、数日にまで、数週間にまで及ぶ間隔で行われる場合がある。免疫細胞療法がさらなる治療剤とは別に患者に与えられる実施形態においては一般に、有効な期間がそれぞれの送達の時間との間で終了せず、その結果、2つの化合物が依然として、好都合な併用効果を患者に及ぼすことができるであろうになることが保証されるであろう。そのような場合、患者には抗体療法および抗ガン療法が互いに約12時間~24時間または72時間の範囲内で、より具体的には互いに約6時間~12時間の範囲内で与えられ得ることが意図される。いくつかの状況では、処置のための期間を著しく延長することが望ましい場合があり、この場合、数日(2、3、4、5、6または7)から数週間(1、2、3、4、5、6、7または8)までがそれぞれの投与の間において経過する。
【0216】
本実施形態の化合物または治療法をどのようなものであれ患者に施すことは、もし存在するならば薬剤の毒性を考慮して、そのような化合物の投与のための一般的プロトコルに従うであろう。したがって、いくつかの実施形態において、併用療法に起因し得る毒性をモニターする工程が存在する。次に、具体的な例が、個体がガンを有する実施形態に関して続く。
【0217】
A.化学療法
広範囲の様々な化学療法剤が本実施形態に従って使用される場合がある。用語「化学療法」は、ガンを処置するために薬物を使用することを示す。「化学療法剤」は、ガンの処置において投与される化合物または組成物を暗示するために使用される。これらの薬剤または薬物は、細胞内におけるそれらの活性様式によって、例えば、それらが細胞周期に影響を与えるかどうか、およびどの段階で影響を与えるかによって分類される。代替において、薬剤は、DNAを直接に架橋し得るか、DNA内に挿入し得るか、または核酸合成に影響を与えることによって染色体異常および有糸分裂異常を誘発し得るかに基づいて特徴づけられる場合がある。
【0218】
化学療法剤の例には、下記のものが含まれる:アルキル化剤、例えば、チオテパおよびシクロホスファミドなど;アルキルスルホナート、例えば、ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファンなど;アジリジン系化合物、例えば、ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)およびウレドパ(uredopa)など;エチレンイミン系化合物およびメチルアメラミン系化合物(methylamelamines)、例として、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチイレンチオホスホラミド(triethiylenethiophosphoramide)およびトリメチロロメラミン(trimethylolomelamine);アセトゲニン類(とりわけ、ブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン類(例として、合成類似体のトポテカン);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(例として、その合成類似体のアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン);クリプトフィシン類(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(例として、合成類似体のKW-2189およびCB1-TM1);エリュテロビン;パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコジクチン(sarcodictyin)類;スポンギスタチン(spongistatin);ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビシン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミドおよびウラシルマスタードなど;ニトロソウレア系化合物、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチンおよびラニムスチンなど;抗生物質、例えば、エンジイン系抗生物質(例えば、カリケアマイシン、とりわけ、カリケアマイシンガンマI1およびカリケアマイシンオメガI1)など;ジネミシン、例として、ジネミシンA;ビスホスホナート系化合物、例えば、クロドロナートなど;エスペラミシン類;同様にまた、ネオカルジノスタチンクロモフォアおよび関連した色素タンパク質エンジイン系抗生物質クロモフォア、アクラシノマイシン類、アクチノマイシン、オートラルニシン(authrarnycin)、アザセリン、ブレオマイシン類、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クモロミシニス(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(例として、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン類(例えば、マイトマイシンCなど)、ミコフェノール酸、ノガラルニシン(nogalarnycin)、オリボマイシン類、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチンおよびゾルビシン;代謝拮抗剤、例えば、メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)など;葉酸類似体、例えば、デノプテリン、プテロプテリンおよびトリメトレキサートなど;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリンおよびチオグアニンなど;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビンおよびフロクスウリジンなど;アンドロゲン類、例えば、カルステロン、ドロモスタノロンプロピオナート、エピチオスタノール、メピチオスタンおよびテストラクトンなど;抗副腎剤(anti-adrenal)、例えば、ミトタンおよびトリロスタンなど;葉酸補充剤、例えば、フロリン酸(frolinic acid)など;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン;エダトラキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジクオン;エルホルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium);エポチロン類;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);メイタンシノイド、例えば、メイタンシンおよびアンサミトシン類など;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSKポリサッカリド複合体;ラゾキサン;リゾキシン(rhizoxin);シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(とりわけ、T-2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジンAおよびアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;タキソイド、例えば、パクリタキセルおよびドセタキセルゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;白金配位錯体、例えば、シスプラチン、オキサリプラチンおよびカルボプラチンなど;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロナート;イリノテカン(例えば、CPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えば、レチノイン酸など;カペシタビン;カルボプラチン、プロカルバジン、プリコマイシン(plicomycin)、ゲムシタビエン(gemcitabien)、ナベルビン、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランス白金(transplatinum)、ならびに上記のいずれかの医薬的に許容され得る塩、酸または誘導体。
【0219】
B.放射線療法
DNA損傷を引き起こし、広範囲に使用されている他の要素には、γ線、X線として一般に知られているもの、および/または放射性同位体の腫瘍細胞への誘導送達が含まれる。他の形態のDNA損傷要素もまた意図される:例えば、マイクロ波、陽子線照射(米国特許第5,760,395号および同第4,870,287号)、およびUV照射など。これらの要素のすべてが、DNAに対する、DNAの前駆体に対する、DNAの複製および修復に対する、また、染色体の組み立ておよび維持に対する広範囲の様々な損傷に影響する可能性が最も高い。X線についての適用量範囲が、長期間(3週間~4週間)のための50レントゲン~200レントゲンの1日線量から、2000レントゲン~6000レントゲンの単回線量にまで及ぶ。放射性同位体についての適用量範囲は広範囲にわたって変化し、放射性同位体の半減期、放射される放射線の強度およびタイプ、ならびに新生物細胞による取り込みに依存する。
【0220】
C.免疫療法
当業者は、さらなる免疫療法が本実施形態の方法との組合わせまたは併用で使用され得ることを理解するであろう。ガン処置との関連において、免疫療法は一般には、ガン細胞を標的とし、破壊するための免疫エフェクター細胞および免疫エフェクター分子の使用に依拠する。リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))がそのような一例である。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面における何らかのマーカーについて特異的な抗体である場合がある。抗体は単独で、治療のエフェクターとして役立つ場合がある。あるいは、抗体は、実際に細胞殺傷に影響するために他の細胞を動員する場合がある。抗体はまた、薬物または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)にコンジュゲート化され、標的化剤として役立つ場合がある。代替において、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接的または間接的のどちらでも相互作用する表面分子を保持するリンパ球である場合がある。様々なエフェクター細胞には、細胞傷害性T細胞およびNK細胞が含まれる。
【0221】
抗体-薬物コンジュゲートが、ガン治療剤の開発に対する画期的な取り組みとして現れている。ガンは世界における主要な死因の1つである。抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、細胞殺傷薬物に共有結合により連結されるモノクローナル抗体(MAb)を含む。この取り組みでは、MAbの、その抗原標的に対する高い特異性が、非常に強力な細胞毒性薬物と組み合わされ、これにより、高まったレベルの抗原を有する腫瘍細胞にペイロード(薬物)を送達する「武装された」MAbをもたらしている。薬物の標的化された送達はまた、正常な組織におけるその曝露を最小限にし、これにより、毒性の低下および治療指数の改善をもたらしている。FDAによる2つのADC薬物の承認により、すなわち、2011年におけるADCETRIS(登録商標)(ブレンツキシマブベドチン)および2013年におけるKADCYLA(登録商標)(トラスツズマブエムタンシンまたはT-DM1)の承認により、この取り組みが有効であることが証明された。現在では30を超えるADC薬物候補が、ガン処置のための臨床試験の様々な段階にある。抗体工学およびリンカー-ペイロード最適化がますます成熟しつつあるので、新しいADCの発見および開発は、この取り組みに対して好適である新しい標的の特定および検証、ならびに標的化用MAbの作製にますます依存している。ADC標的のための2つの判断基準が、腫瘍細胞におけるアップレギュレーションされた/高い発現レベルと、影響を受けない内在化とである。
【0222】
免疫療法の1つの局面において、腫瘍細胞は、標的化されやすい何らかのマーカー、すなわち、他の細胞の大部分には存在しない何らかのマーカーを有しなければならない。多くの腫瘍マーカーが存在しており、これらのどれもが、本実施形態との関連において標的化のために好適であり得る。一般的な腫瘍マーカーには、CD20、ガン胎児性抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、ラミニン受容体、erb B、およびp155が含まれる。免疫療法の1つの代替局面が、抗ガン作用を免疫刺激作用と組み合わせることである。免疫刺激分子もまた存在しており、これらには、サイトカイン(例えば、IL-2、IL-4、IL-12、GM-CSF、ガンマ-IFNなど)、ケモカイン(例えば、MIP-1、MCP-1、IL-8など)、および増殖因子(例えば、FLT3リガンドなど)が含まれる。
【0223】
現時点で検討中または使用中である免疫療法の例として、免疫アジュバント、例えば、ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、ジニトロクロロベンゼンおよび芳香族化合物(米国特許第5,801,005号および同第5,739,169号);サイトカイン療法、例えば、インターフェロンα、βおよびγ、IL-1、GM-CSF、ならびにTNF;遺伝子療法、例えば、TNF、IL-1、IL-2およびp53(米国特許第5,830,880号および同第5,846,945号);およびモノクローナル抗体、例えば、抗CD20、抗ガングリオシドGM2および抗p185(米国特許第5,824,311号)がある。1つまたは複数の抗ガン療法が本明細書中に記載される抗体療法とともに用いられ得ることが意図される。
【0224】
いくつかの実施形態において、免疫療法は免疫チェックポイント阻害剤である場合がある。免疫チェックポイントはシグナル(例えば、共刺激分子)を強めるか、またはシグナルを弱めるかのどちらもある。免疫チェックポイント遮断によって標的とされ得る抑制性の免疫チェックポイントには、アデノシンA2A受容体(A2AR)、B7-H3(これはCD276としてもまた知られている)、B/Tリンパ球アテニュエーター(BTLA)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4、これはCD152としてもまた知られている)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、キラー細胞免疫グロブリン(KIR)、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG3)、プログラム死1(PD-1)、T細胞の免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン3(TIM-3)、ならびにT細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)が含まれる。特に、免疫チェックポイント阻害剤はPD-1軸および/またはCTLA-4を標的とする。
【0225】
D.手術
ガンを有する人のおよそ約60%が、予防的、診断的または病期分類、治療的および緩和的な手術を含めて、何らかのタイプの手術を受けることになっている。治療的手術は、ガン性組織のすべてまたは一部が物理的に除かれ、切除され、かつ/または破壊される摘出を含み、他の治療法との併用で、例えば、本実施形態の処置、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法および/または代替療法などとの併用で使用される場合がある。腫瘍摘出は、腫瘍の少なくとも一部を物理的に除くことを示す。腫瘍摘出に加えて、手術による処置には、レーザー手術、凍結手術、電気手術および顕微鏡下手術(モース術)が含まれる。
【0226】
ガン性細胞、組織または腫瘍の一部またはすべてを切除すると、空洞が体内に形成される場合がある。処置が、灌流、直接注入、またはさらなる抗ガン療法による当該区域への局所適用によって達成される場合がある。そのような処置が、例えば、1日毎、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎もしくは7日毎に、または1週間毎、2週間毎、3週間毎、4週間毎および5週間毎に、または1か月毎、2か月毎、3か月毎、4か月毎、5か月毎、6か月毎、7か月毎、8か月毎、9か月毎、10か月毎、11か月毎もしくは12か月毎に繰り返される場合がある。これらの処置は同様に、様々な投与量であり得る。
【0227】
E.他の薬剤
他の薬剤が、処置の治療効力を改善するために本実施形態のある特定の局面との組合わせで使用され得ることが意図される。これらのさらなる薬剤には、細胞表面受容体のアップレギュレーションおよびGAP結合に影響を与える薬剤、細胞増殖抑制剤および分化剤、細胞接着の阻害剤、アポトーシス誘導剤に対する過剰増殖性細胞の感受性を増大させる薬剤、または他の生物学的薬剤が含まれる。GAP結合の数を増加させることによる細胞間シグナル伝達における増大は、隣接する過剰増殖性細胞集団に対する抗過剰増殖効果を増大させるであろう。他の実施形態において、細胞増殖抑制剤または分化剤を、処置の抗過剰増殖効力を改善するために本実施形態のある特定の局面との組合わせで使用することができる。細胞接着の阻害剤が、本実施形態の効力を改善するために意図される。細胞接着阻害剤の例には、フォーカルアドヒージョンキナーゼ(FAK)阻害剤およびロバスタチンがある。アポトーシスに対する過剰増殖性細胞の感受性を増大させる他の薬剤(例えば、抗体c225など)が、処置効力を改善するために本実施形態のある特定の局面との組合わせで使用され得るであろうことがさらに意図される。
【0228】
VII.製造品またはキット
【0229】
本発明のCD4+細胞および/またはCD8+細胞、あるいは本発明のCD4+細胞および/またはCD8+細胞が作製され得る細胞を含む製造品またはキットもまた、本明細書中において提供される。製造品またはキットはさらに、個体においてガンを処置するために、またはその進行を遅らせるために、あるいはガンを有する個体の免疫機能を増強するために細胞を使用するための説明書を含む添付文書を含むことができる。本明細書中に記載される抗原特異的細胞のいずれか、またはそれらを作製するための試薬が、製造品またはキットに含められる場合がある。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、バッグおよびシリンジが含まれる。容器は様々な材料から、例えば、ガラス、プラスチック(例えば、ポリ塩化ビニルまたはポリオレフィンなど)または金属合金(例えば、ステンレス鋼またはハステロイなど)などから形成され得る。いくつかの実施形態において、容器は配合物を収容し、容器上の標識、または容器に付随する標識により、使用のための指示が示される場合がある。製造品またはキットはさらに、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、ニードル、シリンジ、および使用のための説明書を伴う添付文書を含めて、商業的およびユーザーの観点から望ましい他の材料を含む場合がある。いくつかの実施形態において、製造品はさらに、1つまたは複数の別の薬剤(例えば、化学療法剤および抗腫瘍剤)を含む。そのような1つまたは複数の薬剤のための好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、バッグおよびシリンジが含まれる。
【実施例】
【0230】
下記の実施例は、本開示の特定の実施形態を明らかにするために含まれる。下記の実施例において開示される技術は、本開示の方法の実施において十分に機能することが本発明者によって見出された技術を表しており、したがって、その実施のための特定の態様を構成するとみなされ得ることが、当業者によって理解されなければならない。しかしながら、当業者は本開示に照らして、多くの変化を、開示される具体的な実施形態において行うことができ、また、多くの変化が依然として、同じような結果または類似する結果を本開示の精神および範囲から逸脱することなくもたらし得ることを理解しなければならない。
【0231】
(実施例1)
低アビディティーTCR遺伝子組換えT細胞による免疫療法のためのCD8共受容体機能の利用
遺伝子組換えされたTCRおよびCD8αβの同時形質導入により、CD8+およびCD4+の両方のT細胞の表現型が改変される。自己TCRレパートリーから単離されたとき、過剰発現した腫瘍関連自己抗原を標的とするほとんどのTCRは、アビディティーが低いことによって特徴づけられ、CD8共受容体に依存する
2、11。様々なタイプの測定が、TCR-ペプチド-MHC相互作用を特徴づけるために行われ得る
30。遺伝子組換えされたCD8α鎖およびCD8β鎖が、腫瘍が標的となるTCRを組み込む多シストロン性ベクターから効率的に発現され得るかどうかを調べるために、サバイビン特異的TCR(s24)、CD8αβおよび選択マーカー(ΔCD271)をコードするレトロウイルスベクター(T8、
図1A)を構築し、同様にまた、TCR(サバイビンs24およびs16、PRAME p28およびp11)またはCD8αβを単独でコードするベクターを構築した。CD4+およびCD8+の選択されたT細胞に対して、s24-TCRまたはs24-T8を用いた形質導入を行い、形質導入効率についての分析を行った。CD4+細胞およびCD8+細胞の両方が同等によく形質導入を受けた(%TCR+CD4対CD8:82±9対84±4、p=NS;%T8+CD4対CD8:52±10対45±8%、p=NS;n=6、平均±SD、
図1B)。しかし、形質導入効率は、TCR単独と比較して多シストロン性T8ベクターに関しては有意に低かった(CD4 TCR+対T8+:p<0.001、CD8 TCR+対T8+:p<0.001、n=6、
図1B)。CD8+T細胞において、NT細胞、TCR+細胞およびT8+細胞を比較したとき、CD8αのレベルが変化していなかった(
図1C)。興味深いことに、CD8βのレベルが、TCR+CD8+T細胞と比較して、T8+T細胞では有意に高かった(CD8β MFI:6.3±2.7x10
3対1.9±0.6x10
3、n=7、平均±SD、p=0.008、
図1D)。CD4+T細胞においては、CD8αβとの同時形質導入により、ハイブリッド表現型が生じた。T8+CD4+T細胞におけるCD8αの細胞表面レベルが、TCR+CD8+T細胞に匹敵しており(CD8α MFI:4.6±1.7x10
3対4.3±1.3x10
3、n=6、平均±SD、p=NS)(
図1C)、しかし、T8+CD4+T細胞におけるCD8βの細胞表面レベルは、TCR+CD8+T細胞と比較して有意に低かった(CD8β MFI:1.0±0.6x10
3対1.9±0.6x10
3、n=7、平均±SD、p=0.002)。CD4+T細胞は、CD8αβがTCRと一緒に共発現したとき、標的となるサバイビンエピトープを認識しただけであった(デキストラマーMFI、CD4 TCR+対T8+:0.1±0.08x10
3対2.3±2.5x10
3、p=0.02;CD8 TCR+対T8+:3.4±0.6x10
3対4.2±2.6x10
3、p=NS;n=5、平均±SD)(
図1E)。デキストラマー結合が、TCR+T細胞およびT8+CD8+T細胞において同等であり、T8+CD4+T細胞と、TCR+CD8+T細胞との間でもまた同程度であった(デキストラマーMFI 2.3±2.5x10
3対3.4±0.6x10
3、p=NS)。したがって、CD8αβおよびクラスI制限TCRの強制発現は、(1)CD8βの増大した細胞表面レベルを有するCD8+T細胞と、(2)CD8αβ鎖の表面発現、そして、標的となるpMHCクラスI複合体を認識し、これと結合する新規な能力を有する、生来のCD8+T細胞に類似するハイブリッド型のCD4+T細胞とをもたらした。
【0232】
T8+CD4+T細胞は、標的となるクラスI制限エピトープについて、TCR+T細胞またはT8+CD8+T細胞と類似するアビディティーを有する。選択されたCD8+T細胞およびCD4+T細胞におけるCD8αβ共発現の影響を明らかにするために、遺伝子組換えT細胞のアビディティーを、4つの異なるTCRを使用して、すなわち、サバイビンELT/LMLエピトープを標的とする2つ(s24およびs16)と、PRAME NLTエピトープを標的とする2つ(p28およびp11)とを使用して測定した。すべてのTCR構築物が、マウスの定常領域を、内因性TCR鎖とのクロスペアリングを最小限に抑えるために使用し(
図1A)、形質導入効率が調節された
2。T細胞を同族ペプチドの連続希釈物にさらし、生じたIFNγ ELIspot数を計数した。CD8αβの同時形質導入は、CD8+T細胞のアビディティーに影響を与えず、しかしながら、CD8αβの同時形質導入により、CD4+T細胞が、標的となるクラスIエピトープをCD8+T細胞と類似するアビディティーで認識するように再プログラミングされた(
図2)。制限したペプチド濃度において、また、試験された4つすべてのTCRについて、IFN-γスポット形成単位(SFU)の数字が、TCRが単独で形質導入されたCD8+T細胞と比較して、T8が形質導入されたCD4+T細胞では類似していた。したがって、CD8共移入を、CD4+T細胞をクラスI制限エピトープに転向させるための一般的な戦略として使用することができる。
【0233】
CD8αβのTCRとの共発現は逐次殺傷能をCD8+T細胞およびCD4+T細胞に伝える。T細胞を、サバイビン+HLA-A
*02:01+BV173白血病細胞と低いE:T比(1:5)で共培養し、HLAクラスI制限の標的細胞殺傷を評価した。予想された通り、TCR+T細胞およびT8+CD8+T細胞は容易にその標的を殺した。CD4+T細胞は、T8が形質導入されたときに殺傷をもたらしただけであり、しかし、TCRが単独で形質導入されたときには殺傷をもたらさず、T8+CD4+T細胞による殺傷は、TCR+T細胞またはT8+CD8+T細胞と同等であった(CD4:T8+対TCR+、p=0.0004;T8+CD4対TCR+CD8またはT8+CD8、p=NS、n=7)(
図3A)。TCR+T細胞またはT8+CD8+T細胞は野生型を殺しただけであり、しかし、表面のHLA-A
*02:01が陰性であるB2M-KO BV173細胞を殺さなかったので(
図3B)、この細胞傷害性はHLAクラスI制限であった。同じ効果が、T8+CD4+T細胞により認められた。腫瘍負荷量が多いときには抗腫瘍機能が急速に消耗するであろうかを評価するために、本発明者らは、TCR、T8またはNTコントロールが形質導入されたCD8+T細胞およびCD4+T細胞を新鮮なサバイビン+HLA-A
*02:01+BV173白血病細胞により最大で4回、低いE:T比で攻撃した(
図3C)。注目すべきことに、有意に増大した連続腫瘍殺傷能が、TCR+と比較して、T8+CD8+のT細胞については認められた(殺傷数、T8+対TCR+:2±1.4対1.3±1.1、p=0.04、n=7、
図3D、右上パネル)。CD4+T細胞は、T8が形質導入されたときに殺傷をもたらしただけであり、しかし、TCRが単独で形質導入されたときには殺傷をもたらさず(殺傷数、T8+対TCR+:3.3±0.5対0±0、p<0.0001、n=7、
図3D、左上パネル)、T8+CD4+T細胞は、連続殺傷が、T8+CD8+T細胞と同じくらい効率的であった(殺傷数、T8+CD4対CD8:3.3±0.5対2±1.4、p=NS、n=7)。最後に、CD8αβの強制発現はまた、改変されたT細胞拡大を多数回の腫瘍攻撃にわたってもたらした(
図3D、下段パネル、点線)。CD8+T細胞の拡大がCD8αβ共移入の後では有意に変化しなかった(CD8 TCR+対T8+:p=NS、log AUCでのt検定)。しかしながら、T8+CD4+T細胞は、拡大が、TCR+CD4+T細胞よりも有意に良好であり(p<0.0001)、TCR+CD8+T細胞よりも有意に良好であり(p<0.002)、T8+CD8+T細胞よりも有意に良好であった(p<0.02)。
【0234】
CD8αβ共移入によって生じる細胞傷害性表現型をさらに特徴づけるために、サイトカイン産生を、最初に置床した後の24時間共培養上清(D1)において、また、3回目の腫瘍攻撃の後の24時間共培養上清(D10)において調べた。サイトカイン産生プロファイルが、T8+CD8+T細胞に対して、TCR+T細胞では有意に変化しなかった。しかしながら、CD4+T細胞へのCD8αβ共移入では、T
H1優勢の細胞傷害性サイトカインパターンが生じた。T8+CD4+T細胞は、IFNγ、TNFα、パーフォリンまたはグランザイムBを含めて多数の細胞傷害性サイトカインを、TCR+T細胞またはT8+CD8+T細胞に匹敵するレベルで分泌した(
図3E)。加えて、T8+CD4+T細胞のみが、IL10などのいくつかのT
H2サイトカインを産生した(
図3E)。したがって、細胞傷害性のCD8+T細胞機能が、TCRおよびCD8αβの共移入によって増強され、一方で、CD8αβの強制発現では、細胞傷害機能がTCR+CD4+T細胞に与えられ、その生来のヘルパー機能が保持されている。さらに、HLA-A
*02+およびHLA-A
*02-のドナーにおけるT細胞の拡大がすべての構築物に関して同程度であり(
図3F)、このことは、CD8共移入が、標的に対するTCR媒介毒性を低レベルの内因性サバイビン発現(これは同胞殺しとも呼ばれる)によって活性化T細胞において生じさせる可能性を増大させなかったことを示している
4。
【0235】
TCR-CD8αβの発現は、CD8+T細胞だけの逐次殺傷能を改善し、CD4+T細胞だけを細胞傷害性CD8+T細胞に転換する。TCR遺伝子組換えのCD8+T細胞およびCD4+T細胞の殺傷動力学に対する遺伝子組換えCD8αβ発現の影響を細胞個々のレベルで評価するために、ハイスループットのナノウエルグリッドでのコマ撮り画像化顕微鏡法を実施した(TIMING)
22。標的との安定な接合を確立するために必要とされる時間(t
Seek)、接合の総持続期間(t
Contact)、および最初の接触と腫瘍細胞アポトーシスとの間の時間(t
Death)を9時間にわたって測定した(
図4A)。CD8+T細胞は、その標的を見つけ、安定な接合を確立することにおいて効率的であった。TCR+CD8+T細胞は、標的を1:1のE:Tで見つけることにおいて、T8+CD8+T細胞よりも効率的であり(
図4B、上段パネル、t
Seek、CD8 TCR+対T8+、p=0.01)、しかし、同等に安定した接触を確立した(
図4B、中央パネル、t
Contact、p=NS)。それらの殺傷能が1:1のE:T(ウエルあたり1個のT細胞と1個の標的細胞)において同等であり(
図4B、左下、p=NS)、しかしながら、逐次殺傷能が、1:2のE:T(ウエルあたり1個のT細胞と2個の標的細胞)では、T8+CD8+T細胞において有意に増強された(
図4B、右下、p=0.0002)。予想された通り、TCR+CD4+T細胞は、標的を積極的に探し、接触を見つけたという事実にもかかわらず、安定な接合体を形成し、標的細胞を殺すことができなかった(
図4B、t
Seekおよびt
Contact、CD4:TCR+対T8+;p<0.0001)。しかしながら、T8+CD4+T細胞は効率的にその標的を殺した。E:Tが1:1において、T8+CD4+T細胞は、TCR+T細胞またはT8+CD8+T細胞と同じくらい効率的にその標的を見つけ、接合し、殺した(
図4B、p=NS)。E:Tが1:2においては、T8+CD4+T細胞は、殺傷が、T8+CD8+T細胞と同じくらい効率的であり(
図4B、右下、p=NS)、TCR+CD8+T細胞よりも良好であった(
図4B、右下、p<0.0001)。これらのTIMINGアッセイ結果から、(1)CD8+T細胞だけにおけるCD8αβ共移入は連続殺傷能を有意に増強すること、そして(2)T8+CD4+T細胞の細胞個々の標的探索、接合および殺傷動力学が、TCR+T細胞またはT8+CD8+T細胞に匹敵することが明らかにされる。
【0236】
遺伝子組換えCD8αβは初期のTCRシグナル伝達事象を増強する。遺伝子組換えCD8αβが初期のTCRシグナル伝達事象を増強するかどうかを評価するために、本発明者らは、BV173白血病細胞によるT細胞の短時間刺激を行った後での活性化Y394部位におけるLckリン酸化を分析した。CD8αβの共移入は、活性化pLCK Y394レベルを、T8+CD4+T細胞と同様に、T8+CD8+T細胞において有意に増大させた(
図5Aおよび
図5B)。このことは、CD8共受容体の遺伝子組換え発現により、TCR-pMHC複合体に対する安定性がもたらされるだけでなく、初期のTCRシグナル伝達事象がCD8+およびCD4+の両方のT細胞サブセットにおいて増強されることを示している。
【0237】
遺伝子組換えCD8αβはTCR遺伝子組換えのCD8+T細胞およびCD4+T細胞のインビボ抗腫瘍機能を増強する。最後に、遺伝子組換えT細胞のインビボ抗腫瘍機能を、BV173.ffLuc白血病細胞が移植されたNSGマウスを用いる以前に確立された白血病異種移植モデル
2において調べた。簡単に記載すると、亜致死的照射を受けたNSGマウスに、BV173.ffLuc細胞をi.v.注入し、その後、NT、TCRまたはT8の遺伝子組換えのCD8+またはCD4+のT細胞による3回のT細胞注入を行った(
図6A)。腫瘍成長をインビボBLIによって測定した。有意な白血病抑制が、NTコントロールと比較して、TCR+CD8+T細胞により処置されるマウスにおいて認められ、さらなる増強が、T8+CD8+T細胞により処置されるマウスにおいて認められた(
図6Bおよび
図6C、n=5/群、NT対TCR:p=0.0002、NT対T8:p<0.0001、TCR対T8:p=0.01、0日目と比較される28日目のlog AUCでのt検定)。予想された通り、NTコントロールT細胞またはTCR+CD4+T細胞のどちらもが、白血病増殖を抑制しなかった。対照的に、T8+CD4+T細胞は35日目まで白血病の進行を有意に遅らせた(
図6Dおよび
図6E、n=5/群、p=0.001、0日目と比較される35日目のlog AUCでのt検定)。したがって、腫瘍が標的となるクラスI TCRと一緒でのCD8αβの遺伝子組換え発現により、CD8+T細胞機能の増強と、CD4+T細胞への抗腫瘍機能の付与との両方がもたらされる。
【0238】
ある特定の実施形態の意義
【0239】
CD8共受容体機能を活用し、腫瘍が標的となるHLAクラスI制限TCRによる養子T細胞療法を増強することを目指して、本発明者らは、TAA特異的TCRを単独で、またはCD8αβ共受容体との組合わせで発現するように操作される精製されたCD8+T細胞集団およびCD4+T細胞集団の性質を調べた。特徴づけが行われた2つの主要な問題が、(1)CD8+T細胞機能が、TCRおよびCD8αβが形質導入されたとき、共受容体分子の利用可能性を高めることによって増強され得るであろうか、そして(2)TCRおよびCD8αβの遺伝子組換え共発現が、CD4+T細胞を、そのTヘルパー機能を維持しながら、標的となるクラスIエピトープに転向させ得るであろうかであった。CD8共移入は、その逐次殺傷能を含めて、CD8+T細胞の細胞傷害性をインビトロおよびインビボにおいて増強することが明らかにされた。遺伝子組換えCD4+T細胞は、CD4およびCD8の共発現、生来のCD8+T細胞と類似するアビディティーによる同族抗原の認識を伴うハイブリッド表現型を示し、標的をクラスI制限様式で殺した。ハイブリッドCD4+T細胞は白血病細胞を連続殺傷アッセイにおいて、また、細胞個々のレベルで容易に殺し、細胞傷害性サイトカインをTHサイトカインと同様に産生した。ハイブリッドCD4+T細胞はまた、白血病増殖をマウス異種移植において抑制することができた。
【0240】
クラスI制限TAA特異的TCRの強制発現、かつ養子T細胞移入は、ある種の固形腫瘍および血液学的悪性腫瘍のための成功した治療戦略である1、24、25。ほとんどの自己TAA特異的TCRはアビディティーが低く、CD8共受容体の存在に依存しており、一方で、ほんのまれに天然に存在するだけである、またはエクスビボ操作された高アビディティーのTAA特異的TCRはCD8非依存性である11、26、27。したがって、ほとんどの養子移入プロトコルは、所望のインビボ抗腫瘍機能を生じさせるためにCD8+T細胞に頼っている。生理学的には、ヘテロ二量体形態(αβ)でのCD8共受容体が、成熟した末梢T細胞におけるクラスI制限抗原認識およびT細胞活性化において主要な役割を果たしている。これら2つの主要な機能は、TCR-pMHC複合体を免疫学的接合部において安定化することであり、そして、初期のTCRシグナル伝達事象を脂質ラフトにおけるLck Y394リン酸化によって増強することである28、29。したがって、遺伝子組換えTCRは、細胞がCD8αβ共受容体分子をその機能のために内因的に利用できるかに依拠している。具体的な実施形態において、遺伝子組換えTCRのコピー数が超生理学的であるため12、CD8+T細胞における利用可能なCD8分子の数が、TCR遺伝子組換えCD8+T細胞の免疫学的接合部形成および抗腫瘍機能についての制限因子であり得ることが本明細書中では意図される。したがって、共受容体過剰発現の機能的結果を、低アビディティーのTAA特異的TCRを備えるCD8+T細胞において評価し、共受容体過剰発現の機能的結果から、TCR-CD8αβ分子の不均衡が是正されたとき、改善されたTCR特異的な細胞傷害性、連続殺傷能、およびインビボ抗腫瘍機能が見出された。
【0241】
CD4+T細胞は、腫瘍のネオ抗原を標的とするCD4+TH1 腫瘍浸潤リンパ球の養子移入によって、またはCD4 T細胞:CD8 T細胞の規定された比率を用いるCD19-CAR T細胞の注入によって最近明らかにされるように16、18、多岐にわたる機能を、感染症およびガンに対する効率的な免疫応答を調整することにおいて発揮しており、CD8+T細胞とのその相互作用が極めて重要である13、14。したがって、機能的なCD4+T細胞がおそらくは、養子移入のためのTCR遺伝子組換えT細胞産物に組み込まれなければならない。これは、CD4+T細胞は養子移入後における腫瘍抑制およびCD8+T細胞の持続に大きく寄与し得るからである。CD8に依存しないクラスI制限TCRをCD4+T細胞において効率的に過剰発現させることができ、これにより、細胞傷害機能およびヘルパー細胞機能の両方と、腫瘍成長を異種移植モデルにおいてインビボで抑制する能力とを有する多機能性のCD4+T細胞が生じることが以前に示された26、27。したがって、本発明者らは、遺伝子組換えCD8共発現により、低アビディティーのクラスI制限TCRを発現する非応答性のCD4+T細胞が、細胞傷害機能およびヘルパー機能の両方を有する多機能性のハイブリッドT細胞に再プログラミングされ得るであろうかを評価した。実際、CD4+T細胞におけるCD8αβ共発現は、細胞個々のレベルでのインビトロにおける連続殺傷能と、インビボにおける白血病抑制とを含めて、養子移入のための特性が増強された多機能な細胞傷害性かつヘルパー型のハイブリッド細胞をもたらした。
【0242】
最適なTAA特異的TCRを養子T細胞療法のために選択することは、腫瘍細胞を排除するための最適なアビディティーと、オフターゲット毒性を引き起こす可能性とが紙一重であるため1、2、4、6~9、困難な課題である。腫瘍関連の様々な自己抗原がガンにおいて過剰発現し、しかし、これらはまた、ある種の正常な健康な組織において低レベルで存在しているので、TCRアビディティーが高すぎて、TCRが、細胞表面に提示される非常に低いレベルのpMHCを認識するならば、標的に対する腫瘍外の毒性が生じる可能性がある。しかしながら、アビディティーが低いTAA特異的TCRのTCR-pMHC相互作用をCD8共受容体の共発現によって安定化するという本開示の戦略では、同胞殺しについての証拠がT細胞拡大培養において何ら見られなかったように、TCR+T細胞全体が、細胞相互作用を標的とするように安全に増強された。
【0243】
全体として、CD8αβ共受容体の遺伝子組換え共発現は、TCR遺伝子組換えのCD8+T細胞およびCD4+T細胞の機能に対する有益な効果をインビボおよびインビトロにおいて有する。CD4+T細胞は、同時の細胞傷害性エフェクター機能と、保存された生来のヘルパー機能とを伴って、クラスI TCRと、CD8とによって多機能なハイブリッドT細胞に再プログラミングすることができる。養子T細胞移入のためのそのようなハイブリッド細胞の使用は、CD8およびCD4の両方の機能が細胞個々のレベルで容易に利用可能である新規な戦略を表している。
【0244】
(実施例2)
材料および方法の例
細胞株。BV173細胞を、German Cell Culture Collection(DSMZ)から購入した。K562、CEM-T2(TAPトランスポーター欠損)および293Tを、American Type Culture Collection(ATCC)から得た。細胞を、10%または20%のウシ胎児血清(FBS、Hyclone)、1%のペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco)および1%のグルタマックス(Gibco)が補充される完全RPMI1640培地またはIMDM培地(Hyclone;Thermo Scientific)で維持した。ベータ-2ミクログロブリンノックアウト(B2M-KO)のBV173細胞を、以前に記載されるようなCRISPR/Cas9技術1を使用して作製した。簡単に記載すると、B2MシングルガイドRNA(sgRNA、5’-GGCCACGGAGCGAGACAUCU-3’(配列番号1)、Synthego)および組換えCas9タンパク質(CP01、PNA Bio)をそれぞれ1μg、室温で混合し、0.15x106個のBV173細胞のエレクトロポレーション(10msの1600Vの3回のパルス、Neon Transfection System、Invitrogen)のために使用した。エレクトロポレーションした細胞を抗生物質非含有培地において拡大し、HLA-A2陰性細胞について98%超の純度にまでFACS選別した。インビボ異種移植実験のために、ホタルルシフェラーゼを発現するように改変されるBV173細胞(BV173.ffLuc)細胞を以前に記載されるように使用した2。
【0245】
健常者ドナーからの血液サンプル。軟膜を、Gulf Coast Regional Blood Center(Houston、TX、米国)において匿名化健常者志願者から得た。
【0246】
レトロウイルスベクターおよび上清の作製。HLA-A
*02:01制限のサバイビンELTLGEFLKLエピトープ(配列番号2)(s24またはs16)に特異的なTCRを発現するレトロウイルスベクター、およびHLA-A
*02:01制限のPRAME NLTHVLYPVエピトープ(配列番号3)(p11またはp28)に特異的なTCRを発現するレトロウイルスベクターは以前に記載されている
2。2A配列によって隔てられるヒトCD8α鎖(Uniprot P01732)およびCD8βイソ型1鎖(βM1、Uniprot P10966-1)をコードする遺伝子がGeneart(Invitrogen)によって合成された。それらをSFGレトロウイルスベクター骨格にそのようなものとして、またはs24サバイビン特異的TCRとの組合わせでのどちらかでクローン化し、これにより、異なる2A配列によって隔てられる4つすべての遺伝子を発現する多シストロン性ベクターを得た(
図1)(In-Fusion HD Cloning Kit、Clontech)。一過性のレトロウイルス上清を、記載されるように293Tのトランスフェクションによって調製した
3。
【0247】
遺伝子組換えT細胞の作製。末梢血単核細胞(PBMC)を、Lymphoprep(Accurate Chemical and Scientific Corporation)によって密度勾配遠心分離を使用して軟膜から単離した。ポリクローナルなCD4 T細胞およびCD8 T細胞を、マイクロビーズ(Miltenyi BiotechまたはStemCellTechnologies)を用いてPBMCから陽性選択し、OKT3(ハイブリドーマCRL-8001(ATCC)から精製されたもの)および抗CD28抗体(BD Biosciences)により被覆される非組織培養処理された24ウエルプレート(Corning)、ならびにIL7およびIL15(それぞれ10ng/mL、R&D Systems)において3日間にわたって活性化し、記載されるように形質導入に供した3。細胞を、実験で使用される前にIL7およびIL15においてレトロウイルス形質導入後の7日間~10日間にわたって拡大した。T細胞を、10%のFBS、1%のペニシリン/ストレプトマイシンおよび1%のGlutamaxによる完全な、RPMI1640培地およびクリック培地(Hyclone)の1:1の混合物において培養した。
【0248】
免疫表現型決定。細胞を、CD4、CD8、CD271、CD19に対するFITCコンジュゲート化、フィコエリトリン(PE)コンジュゲート化、アロフィコシアニン(APC)コンジュゲート化、V450コンジュゲート化またはクロムオレンジ(Krome Orange)コンジュゲート化の抗体(すべて、BD Biosciences)、あるいはFITCコンジュゲート化またはAPCコンジュゲート化のマウスTCRβ定常領域(ebiosciences、クローン番号H57-597)、あるいはPEコンジュゲート化LMLサバイビン特異的デキストラマー(Immudex)により4℃で30分間にわたって表面染色した。7-AAD(BD Biosciences)を使用して、死細胞を除外した。LCKリン酸化を評価するために、T細胞をBV173細胞(1:1の比)または黄色ブドウ球菌エンテロトキシンB(0.1μg/ml、Millipore Sigma、陽性コントロールとして)により37℃で30分間にわたって刺激した。間接的な細胞内染色を、抗ヒトホスホ-LCK(Y394)Ab(クローン#755103)および抗マウスIgG-NL557 Ab(R&D Systems)を製造者の推奨法に従って使用して行った。サンプルを、BD FACSDivaソフトウェアを用いてFACSCantoで取得し、FlowJoソフトウェア(Tree Star Inc.)を用いて分析した。
【0249】
ペプチドおよびIFN-γELISpot。サバイビンのELTLGEFLKLペプチド(配列番号2)、そのヘテロクリティック変異体LMLGEFLKLペプチド(配列番号4)、およびPRAMEのNLTHVLYPVペプチド(配列番号5)をGenemed Synthesisから得た。T細胞(105個)を三連で置床し、同族ペプチドの連続希釈物(10-4 ~10-10M)を使用するペプチドパルス処理を受けたCEM-T2細胞により1:1で、BV173細胞または培地単独とともに刺激した。プレートを37℃/5%CO2で一晩インキュベーションし、以前に記載されるように発色させた2。スポット形成単位(SFU)をZellNetによって数えた。
【0250】
逐次共培養アッセイ。T細胞とBV173細胞とを、外因性サイトカインを伴うことなく、1:5のE:T比で4つの複製ウエルにおいて共培養した。共培養上清を最初の置床の24時間後に集め、サイトカイン分析のために-80oCで貯蔵した。3日~4日の共培養の度に、残存するT細胞およびBV173細胞をFACSおよびCountBrightビーズ(Life Technologies)によって計数した。残存するT細胞の逐次殺傷能を評価するために、1x105個未満の残留腫瘍細胞がウエルあたり残っているならば、新鮮なBV173細胞(1x106個)を手つかずの複製ウエルに戻した。
【0251】
サイトカイン多重アッセイ。共培養上清におけるサイトカイン濃度を、MILLIPLEXヒトCD8+T細胞磁気ビーズパネル(EMD Millipore)を使用して二連で定量し、Luminex200装置(Luminex)を用いて分析した。
【0252】
ナノウエルグリッドでのコマ撮り画像化顕微鏡法(TIMING)。ナノウエルアレイの製造および細胞個々の細胞傷害性アッセイを以前に記載されるように行った5、6。簡単に記載すると、ナノウエルアレイを50mmのガラス底ペトリ皿(Ted Pella)に固定した。T細胞(エフェクター)およびBV173細胞(標的)をPKH67緑色色素およびPKH26赤色色素(2μM、Sigma-Aldrich)によりそれぞれ標識した。その後、エフェクターおよび標的をナノウエルアレイに順次負荷し(106細胞/mL)、アレイを、アネキシンV-Alexa Fluor647(Invitrogen)を含有するフェノールレッド非含有培地において37℃/5%CO2でインキュベーションした。細胞を5分間隔で9時間にわたって、20倍の0.8NA対物レンズを使用するHamamatsuデジタル式科学用CMOSカメラを取り付けたAxio Observer(Carl Zeiss)を使用してモニターした。画像を、手動追跡と、細胞追跡および細胞区分けのための自社アルゴリズムの実行との組み合わせを使用して処理した7。
【0253】
マウス異種移植モデル。メスのNOD-SCID-γc-/-(NSG)マウス(6~8週齢)をJackson Laboratoryから購入し、ベイラー医科大学の動物施設に収容した。亜致死的照射(120cGy)を受けたマウスに、マウスあたり3x106個のBV173.ffluc細胞を4時間後~6時間後に静脈内(尾静脈)注入した。白血病負荷を、Xenogenインビボ画像化システム(IVIS)(Caliper Life Sciences)を使用して生物発光画像化(BLI)(光子/秒/cm2/sr)によってモニターした。腫瘍注入の24時間後から始まる3回のT細胞注入(マウスあたり5x106個の遺伝子組換え細胞またはコントロール、2日~3日の度に)をi.v.(尾静脈または眼窩後)に施した。白血病増殖をBLIによって毎週モニターした。
【0254】
統計学。データを、記述統計学を使用してまとめた。曲線下面積(AUC)を、経時的なT細胞頻度および生物発光強度について台形公式を使用して計算した。比較を、連続変数については、どちらであっても適切であるウィルコクソン順位和検定またはt検定を使用して群間において行った。正規性の仮定を調べ、対数変換を、正規性を達成するために必要ならば行った。生存率分析を、カプラン・マイヤー法を使用して行った。ウィルコクソン検定を、マウス群間における統計学的有意差を評価するために使用した。ログランク検定を、TIMINGアッセイ結果を分析するために使用した。GraphPad Prism 5ソフトウェア(GraphPad software,Inc.、La Jolla、CA)、SAS9.4、およびR3.3.2を統計学的分析のために使用した。0.05未満のP値を統計的に有意であると見なした。
【0255】
研究承認。すべての動物研究がベイラー医科大学のIACUCによって審査され、承認された。
【0256】
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(参考文献)
本明細書中の参考文献は、本明細書中に示される細部に対する補足となる例示的な手順細部または他の細部を提供するという程度にまで、それらのどれもが参照によって本明細書中に特に組み込まれる。
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本開示およびその利点が詳しく説明されているが、様々な変化、置換および変更が、添付された請求項によって規定されるような設計の精神および範囲から逸脱することなく行われ得ることを理解しなければならない。そのうえ、本出願の範囲は、本明細書に記載されるプロセス、装置、製造、組成物、手段、方法および工程の特定の実施形態に限定されることは意図されない。当業者は本開示から容易に理解するであろうように、本明細書中に記載される対応する実施形態と実質的に同じ機能を果たす、または本明細書中に記載される対応する実施形態と実質的に同じ結果を達成するプロセス、装置、製造、組成物、手段、方法または工程は、現在存在するものであろうと、または後に開発されるものであろうと、本開示に従って利用される場合がある。したがって、添付された請求項は、そのようなプロセス、装置、製造、組成物、手段、方法または工程をその範囲内に含むことが意図される。
【配列表】