(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】肝特異的核酸調節エレメント並びにその方法及び使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20240730BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240730BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20240730BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240730BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240730BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240730BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20240730BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240730BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C12N15/113 Z
C12N15/12 ZNA
C12N15/864 100Z
A61K48/00
A61K39/00 H
A61K35/76
A61P7/04
A61P37/02
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61P1/16
(21)【出願番号】P 2021522959
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2019079358
(87)【国際公開番号】W WO2020084162
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-10-26
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501180768
【氏名又は名称】フリーイェ・ユニヴェルシテイト・ブリュッセル
【氏名又は名称原語表記】VRIJE UNIVERSIEIT BRUSSEL
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュア,レイ キム
(72)【発明者】
【氏名】フアンデンドリス,ティエリー
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-517955(JP,A)
【文献】特表2018-513678(JP,A)
【文献】特表2016-500519(JP,A)
【文献】特表2004-500880(JP,A)
【文献】国際公開第2011/005968(WO,A1)
【文献】Molecular Therapy,2014年,Vol.22, No.9,pp.1605-1613
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS (STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントであって、配列番号6により定義される配列、
又は配列番号6に対して少なくとも95%の同一性を有する配
列を含み、前記核酸調節エレメントは、少なくとも、SP1及びEP300の転写因子結合部位(TFBS)を含む、核酸調節エレメント。
【請求項2】
配列番号6により定義される配列、
又は配列番号6に対して少なくとも95%の同一性を有する配
列を含み、前記核酸調節エレメントは、HNF 4Gに対するTFBS、CEBPBに対するTFBS、P300に対するTFBS、HDAC2に対するTFBS、JUNDに対するTFBS、FOSL2に対するTFBS、ZBTB7Aに対するTFBS、CEBPDに対するTFBS、及びRXRAに対するTFBSをさらに含む、請求項1に記載の核酸調節エレメント。
【請求項3】
600ヌクレオチドの最大長を有する、請求項1
又は2に記載の核酸調節エレメント。
【請求項4】
プロモーター及びトランスジーンに機能的に連結された請求項1~
3のいずれか一項に記載の少なくとも1つの核酸調節エレメントを含む核酸発現カセット。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の核酸調節エレメントとは異なる少なくとも1つの肝特異的調節エレメントをさらに含む、請求項
4に記載の核酸発現カセット。
【請求項6】
前記核酸調節エレメントとは異なる少なくとも1つの肝特異的調節エレメントは、配列番号22又は
配列番号22に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を含む、請求項
5に記載の核酸発現カセット。
【請求項7】
配列番号6、又は
配列番号6に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を含む核酸調節エレメント、及び配列番号22又は
配列番号22に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を含む少なくとも1つの核酸調節エレメントを含む、請求項
5または
6に記載の核酸発現カセット。
【請求項8】
前記トランスジーンは、治療用タンパク質又は免疫原性タンパク質をコードする、請求
項
4~
7のいずれか一項に記載の核酸発現カセット。
【請求項9】
前記トランスジーンは、
-凝固因子IX(FIX)をコードする、又は
-凝固因子VIII(FVIII)をコードする、請求項
4~
8のいずれか一項に記載の核酸発現カセット。
【請求項10】
前記トランスジーンは、コドン最適化凝固因子FIXで
あるか、又は活性亢進変異を含む凝固因子FIXをコードする
、請求項
4~8のいずれか一項に記載の核酸発現カセット。
【請求項11】
前記トランスジーンは、コドン最適化凝固因子FVIIIであるか、又はBドメインの欠失を有する凝固因子FVIIIをコードする、請求項4~8のいずれか一項に記載の核酸発現カセット。
【請求項12】
凝固因子FIXの前記活性亢進変異
がR338Lアミノ酸置換に相当する
、請求項
10に記載の核酸発現カセット。
【請求項13】
前記凝固因子FIXをコードするトランスジーンは、配列番号25で定義される核酸配列を有する
、請求項10
又は12に記載の核酸発現カセット。
【請求項14】
前記プロモーターが肝特異的プロモーターである、請求項
4~13のいずれか一項に記載の核酸発現カセット。
【請求項15】
前記プロモーターがトランスチレチン(TTR)プロモーターに由来するプロモーターである、請求項
4~14のいずれか一項に記載の核酸発現カセット。
【請求項16】
前記プロモーターが配列番号27によって定義されるトランスチレチン遺伝子の最小プロモーター(TTRmin)である、請求項
4~15のいずれか一項に記載の核酸発現カセット。
【請求項17】
配列番号24
で定義される核酸配列を含む肝特異的調節エレメントをさらに含むことにより、配列番号28で定義されるTTRe核酸及びTTRm核酸の組み合わせを含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の核酸発現カセット。
【請求項18】
マウス微小ウイルス(MVM)イントロンをさらに含む、請求項
4~17のいずれか一項に記載の核酸発現カセット。
【請求項19】
前記MVMイントロンが配列番号29によって定義される、請求項18に記載の核酸発現カセット。
【請求項20】
ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル(BGHpA)に由来する転写終結シグナルをさらに含む、請求項
4~19のいずれか一項に記載の核酸発現カセット。
【請求項21】
前記BGHpAが配列番号30によって定義される、請求項20に記載の核酸発現カセット。
【請求項22】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の核酸調節エレメント、又は請求項4~21のいずれか一項に記載の核酸発現カセットを含むベクター。
【請求項23】
配列番号38
で定義される核酸配列を有する、請求項22に記載のベクター。
【請求項24】
請求項
4~21のいずれか一項に記載の核酸発現カセット、若しくは請求項22若しくは23に記載のベクター、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項25】
遺伝子治療で使用するための、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記遺伝子治療が、肝指向性遺伝子治療である、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記遺伝子治療が、血友病A又は血友病Bの治療のためである、請求項25又は26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
ワクチン接種療法で使用するための、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記ワクチン接種療法が、予防的ワクチン接種である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
肝臓細胞でトランスジーン産物を発現させるためのインビトロ又はエクスビボ法であって、
-請求項
4~21のいずれか一項に記載の核酸発現カセット、又は請求項22又は23に記載のベクターを前記肝臓細胞に導入すること、及び
-前記トランスジーン産物を前記肝臓細胞で発現させること、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子の肝特異的発現を増強しうる核酸調節エレメント、これらの調節エレメントを使用する方法、及びこれらの調節エレメントの使用に関する。本発明はさらに、これらの調節エレメントを含む発現カセット、ベクター、及び医薬組成物を包含する。本発明は、遺伝子治療を用いる用途に特に有用であり、より具体的には肝指向性(liver-directed)遺伝子治療、及びワクチン接種の目的に有用である。
【背景技術】
【0002】
遺伝子治療が広範囲の疾患に罹患している患者に治療効果をもたらしているという説得力のあるエビデンスが臨床試験から継続的に明らかになっている。特に、肝指向性遺伝子治療は、循環系へ分泌される因子の持続的な肝細胞特異的発現を得るための有望なモダリティ(様式)である。実際、多数の後天的、複合的、及び遺伝的疾患(狭義には肝疾患、及び肝疾患を直接は招かないが主に体内の他の部位で発現する幾つかの遺伝性障害、例えば、血友病A若しくはB、家族性高コレステロール血症、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、又はα-アンチトリプシン欠損症)が肝臓における遺伝子発現の改変に関連づけられている。また、肝臓は、しばしば、病原体(例えば、肝炎ウイルス)の感染を受ける。最後に、肝臓は悪性トランスフォーメーションを受け、肝癌(肝細胞癌)を引き起こし、あるいは医薬治療及び化学療法、薬物又はアルコール乱用の結果として機能低下しうる。したがって、必要なタンパク質を補充ための、もしくは例えばRNA干渉あるいはドミナントネガティブ抑制タンパク質により改変遺伝子産物あるいは望ましくない遺伝子産物の発現を遮断するための、肝臓における機能性遺伝子の発現のために、又は変性肝臓の肝細胞機能を回復させるために、遺伝子治療を用いることに相当な且つ増え続けている関心が寄せられている。肝指向性遺伝子治療は、B型肝炎ウイルスの複製を阻害し得るB型肝炎ウイルスコアタンパク質(すなわち、VP22融合タンパク質ベースのドミナントネガティブ変異体)、C型肝炎ウイルスの複製を阻害し得るISG56及びIFITM1、並びにB型肝炎ウイルスの複製を阻害し得るインターフェロン誘導性MyD88タンパク質のC末端に融合したVP22タンパク質などの抗ウイルス化合物を発現させるためにも使用され得る。免疫調節性サイトカインによる肝臓細胞の形質導入は、例えば、ウイルス性肝炎若しくは肝新生物に対する免疫応答を誘導する、又は遺伝子送達ベクター若しくはトランスジーンに対する免疫応答を抑制するのに有用である場合がある。肝臓へのトランスジーン送達の別の用途は、DNAワクチン接種である。抗原発現の最適化は、DNAワクチンベクターの設計において重要な考慮事項である。最適化されたプロモーター及びポリアデニル化(ポリA)配列を使用することで、トランスジーンの発現が増加し得ることは明らかである。ただし、状況によっては、例えば、過剰発現時に細胞死を誘発する抗原を発現させる場合、トランスジーンの発現を低下させるためにDNAワクチンを最適化することが必要となるであろう。組織特異性も重要であると考えられている。また、ベクターデザインの他の側面がワクチンの有効性に影響を与える場合もある。DNAワクチン接種の有効性を改善するための合理的なアプローチは、以下を最適化すると考えられる:(i)ベクターバックボーンDNA配列;(ii)トランスジーン配列;(iii)刺激性配列の共発現;(iv)ベクターに使用される送達システム;及び(v)適切な免疫刺激のためのベクターの標的化(非特許文献1にレビューされている)。DNAワクチンベクターのバックボーンをさらに改変して、特定の配列を含むようにDNAを操作することにより免疫原性を増強し、DNA自体がアジュバント作用を有するようにすることができる。DNAワクチンベクターには多くのCpGモチーフ(2つの5’プリンと2つの3’ピリミジンと隣接する非メチル化CpGジヌクレオチドからなる)が含まれており、全体として、サイトカイン産生のTh1様パターンを誘導し、DNAワクチン接種後に頻繁に見られる強力なCTL応答を説明すると考えられている。プラスミドのDNAバックボー
ンにCpGモチーフを組み込むことにより、DNAワクチンベクターへの応答を増強することが可能である。あるいは、免疫応答は、刺激性分子若しくはサイトカインの共発現によって、又は局在化若しくは分泌シグナル、又は免疫調節に適切な部位に抗原を向けるためのリガンドの使用を通じて、調節又は増強され得る。最後に、筋肉内、皮内、皮下、静脈内、腹腔内、経口、膣、鼻腔内、そして最近では皮膚への非侵襲的送達を含む、DNAワクチンの様々な投与経路が研究されてきた。
【0003】
トランスジーンを肝臓に送達するための試みは、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、及びアデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するベクター、及びプラスミドに焦点が当てられてきた。アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、肝指向性遺伝子治療のための最も有望な遺伝子送達ビヒクルである。AAVベクターは好ましい安全性プロファイルを有し、持続的なトランスジーン発現を達成することができる。さらに、いくつかの免疫学的に異なるAAV血清型がヒト及び非ヒト霊長類から単離されており、それらは最小限の免疫応答を誘導するため、AAVベクターは肝指向性遺伝子治療に非常に適している。AAVベクターの主な制限は、ベクター粒子のパッケージング容量(すなわち、約4.7kb)が限られていることであり、機能的なベクターを取得するためのトランスジーン発現カセットのサイズを制限している。
【0004】
しかしながら、いくつかの遺伝子送達アプローチの有効性及び安全性に関する懸念が残っている。主な制限要因は、不充分な及び/又は一過性のトランスジーン発現レベル、及び不要な細胞型におけるトランスジーンの不適切な発現である。より高いベクター用量は、通常、治療効果を改善するために遺伝子治療の臨床試験で使用される。しかしながら、これにより、MHCクラスIの観点から、形質導入細胞、特に肝細胞によって示されるベクターカプシド抗原に対するT細胞性免疫応答が引き起こされることがよくある。これは、遺伝子改変細胞の排除及び肝臓毒性の一因となり、短期間の遺伝子発現をもたらす。さらに、抗原提示細胞(APC)での偶発的なトランスジーンの発現は、遺伝子改変肝細胞及び/又は治療用トランスジーン産物に対して有害な免疫応答のリスクを高める。結果として、治療遺伝子の持続的な肝細胞特異的発現を可能にする、より少なくより安全なベクター用量の使用を可能にする改良された遺伝子治療ベクターを生成する必要がある。より強力なベクターが利用できるようになると、製造のニーズも緩和される。
【0005】
ベクターデザインの従来の方法は、転写エンハンサーをプロモーターと組み合わせて発現レベルを高めるという、場当たり的な試行錯誤のアプローチに依存していた。これは効果的なこともあり得るが、しばしば非生産的な組み合わせをもたらし、目的の遺伝子の発現レベルのわずかな増加又は増加なし、及び/又は組織特異性の喪失をもたらした。さらに、これらの従来のアプローチは、特に臨床敵翻訳に関連する、進化的に保存された調節モチーフを発現モジュールに含めることの重要性を考慮していなかった。
【0006】
修正された距離差行列(distance difference matrix、DDM)に依存する計算アプローチ-多次元尺度構成法(multidimensional scaling、MDS)の戦略は、肝臓(特許文献1)及び心臓(特許文献2)での強力な組織特異的発現に関連する進化的に保存された転写因子結合部位(TFBS)モチーフのクラスターのインシリコ同定に有用であることが証明されている。これらの肝特異的調節エレメントの1つ、特にセルピン(Serpin)エンハンサーと合成コドン最適化機能亢進FIXトランスジーン(すなわち、Padua R338L)との組み合わせは、FIXの発現及び活性を有意に増加させることが示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2009/130208号
【文献】国際公開第2011/051450号
【文献】国際公開第2014/064277号
【非特許文献】
【0008】
【文献】GARMORY et al., DNA vaccines: improving expression of antigens. Genet Vaccines Ther. 1(1):2Wu C, (2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、肝指向性遺伝子治療の効率及び安全性をさらに高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、本明細書で核酸調節エレメントとして定義される高度に発現された肝特異的遺伝子に関連する進化的に保存された転写因子結合部位(TFBS)モチーフを同定するための計算アプローチを頼りにした。これには、下記のいくつかの連続した計算工程を要した:(1)正常なヒト組織で得られたRNAseq(RNAシーケンシング)発現データに基づいて高度に発現する肝特異的遺伝子を同定した;(2)公的に利用可能なデータベースを使用して、対応するプロモーター配列を抽出した;(3)転写因子結合部位(TFBS)モチーフのクラスターを特定するために計算アプローチを採用した;(4)高度に発現された遺伝子のゲノムコンテクスト(genomic context)は、TFBSの進化的に保存されたクラスター(すなわち、CRE)についてスクリーニングした。これらの調節エレメントは、その後、効率的な遺伝子発現をもたらすインビボで検証した。本明細書で同定される核酸調節エレメントは、治療効果を最大化しながら、遺伝子治療においてより少ない、したがってより安全なベクター用量の使用を可能にする。
【0011】
したがって、本発明は以下の態様を提供する。
態様1. 肝特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントであって、配列番号6、配列番号4、配列番号12、配列番号1、配列番号5、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号14、配列番号16、及び配列番号20からなる群から選択される配列、前記配列のいずれかに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、又はその機能性断片を含み、前記核酸調節エレメントは、少なくとも、SP1及びEP300の転写因子結合部位(TFBS)を含む、核酸調節エレメント。
【0012】
態様2. 配列番号6、配列番号4、及び配列番号12からなる群から選択される配列、前記配列のいずれかに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、又はその機能性断片を含み、前記核酸調節エレメントは、HNF 4Gに対するTFBS、CEBPBに対するTFBS、P300に対するTFBS、HDAC2に対するTFBS、JUNDに対するTFBS、FOSL2に対するTFBS、ZBTB7Aに対するTFBS、CEBPDに対するTFBS、及びRXRAに対するTFBSをさらに含む、態様1に記載の核酸調節エレメント。
【0013】
態様3. 配列番号1、配列番号5、及び配列番号13からなる群から選択される配列、前記配列のいずれかに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、又はその機能性断片を含み、前記核酸調節エレメントは、POLR2Aに対するTFBS、MYBL2に対するTFBS、FOXA1に対するTFBS、FOXA2に対するTFBS、ARID3Aに対するTFBS、POLR2Aに対するTFBS、及びHEY1に対するTFBSをさらに含む、態様1に記載の核酸調節エレメント。
【0014】
態様4. 配列番号9、配列番号11、配列番号14、配列番号16、及び配列番号20からなる群から選択される配列、前記配列のいずれかに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、又はその機能性断片を含み、前記核酸調節エレメントは、HNF 4Gに対するTFBS、CEBPBに対するTFBS、P300に対するTFBS、及びHNF 4Aに対するTFBSをさらに含む、態様1に記載の核酸調節エレメント。
【0015】
態様5. 前記機能性断片は、それが由来する配列からの、少なくとも20個、好ましくは少なくとも25個の連続的ヌクレオチドを含み、及び前記機能性断片は、それが由来する配列に存在する、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも5つの転写因子結合部位(TFBS)を含む、態様1~4のいずれか1つに記載の核酸調節エレメント。
【0016】
態様6. 態様1~5のいずれか1つに記載の核酸調節エレメント又はその相補配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする肝特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメント。
【0017】
態様7. 600ヌクレオチド、好ましくは500ヌクレオチド、より好ましくは400ヌクレオチド、さらにより好ましくは300ヌクレオチドの最大長を有する、態様1~6のいずれか1つに記載の核酸調節エレメント。
【0018】
態様8. プロモーター及びトランスジーンに機能的に連結された態様1~7のいずれか1つに記載の少なくとも1つの核酸調節エレメントを含む核酸発現カセット。
【0019】
態様9. 態様1~4のいずれか1つに記載の核酸調節エレメントとは異なる少なくとも1つ、好ましくは3つの肝特異的調節エレメントをさらに含み、好ましくは前記少なくとも1つ、好ましくは3つの肝特異的調節エレメントは、配列番号22又は前記配列に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を含む、態様8に記載の核酸発現カセット。
【0020】
態様10. 配列番号6、配列番号4、及び配列番号12を含む核酸調節エレメント、又は前記配列のいずれか1つに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、及び配列番号22を含む少なくとも1つ、好ましくは3つの核酸調節エレメント、又は前記配列のいずれかに対して少なくとも95%の同一性を有する配列を含む、態様9に記載の核酸発現カセット。
【0021】
態様11. 該トランスジーンが治療用タンパク質又は免疫原性タンパク質をコードしている、態様8~10のいずれか1つに記載の核酸発現カセット。
【0022】
態様12. 前記トランスジーンは、凝固因子IX(FIX)をコードし、好ましくは、前記トランスジーンは、コドン最適化凝固因子FIXであり、又は前記凝固因子FIXは、活性亢進変異を含み、好ましくは、前記活性亢進変異は、R338Lアミノ酸置換に相当し、より好ましくは、前記凝固因子FIXをコードするトランスジーンは、配列番号25で定義される核酸配列を有する、態様11に記載の核酸発現カセット。
【0023】
態様13. 前記トランスジーンは、凝固因子VIII(FVIII)をコードし、好ましくは、前記トランスジーンは、コドン最適化凝固因子FVIIIであり、又は前記凝固因子VIIIは、Bドメインの欠失を有し、好ましくは前記FVIIIのBドメインは、配列番号54で定義されるリンカーで置換され、より好ましくは、前記凝固因子VIIIをコードするトランスジーンは、配列番号26で定義される核酸配列を有する、態様11に記載の核酸発現カセット。
【0024】
態様14. 前記プロモーターが肝特異的プロモーター、好ましくは、トランスチレチン(TTR)プロモーターに由来するプロモーター、より好ましくは、配列番号27によって定義されるトランスチレチン遺伝子の最小プロモーター(TTRmin)である、態様8~13のいずれか1つに記載の核酸発現カセット。
【0025】
態様15. 配列番号24を含む肝特異的調節エレメントをさらに含むことにより、配列番号28で定義されるTTRe核酸及びTTRm核酸の組み合わせを含む、態様14に記載の核酸発現カセット。
【0026】
態様16. マウス微小ウイルス(MVM)イントロン、好ましくは配列番号29によって定義されるMVMイントロンをさらに含む、態様8~15のいずれか1つに記載の核酸発現カセット。
【0027】
態様17. ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル(BGHpA)、好ましくは配列番号30によって定義されるBGHpAに由来する転写終結シグナルをさらに含む、態様8~16のいずれか1つに記載の核酸発現カセット。
【0028】
態様18. 態様1~7のいずれか1つに記載の核酸調節エレメント、又は態様8~17のいずれか1つに記載の核酸発現カセットを含むベクター、好ましくはウイルスベクター、より好ましくはアデノ随伴ウイルス(AAV)由来のベクター、さらにより好ましくは自己相補的AAVベクター。
【0029】
態様19. 配列番号38、配列番号36、又は配列番号44、好ましくは配列番号38を有する、態様18に記載のベクター。
【0030】
態様20. 態様8~17のいずれか1つに記載の核酸発現カセット、又は態様18又は19に記載のベクター、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【0031】
態様21. 遺伝子治療、好ましくは肝指向性遺伝子治療、又はワクチン接種療法、好ましくは予防的ワクチン接種で使用するための、態様1~7のいずれか1つに記載の核酸調節エレメント、態様8~17のいずれか1つに記載の核酸発現カセット、態様18又は19に記載のベクター、又は態様20に記載の医薬組成物。
【0032】
態様22. 前記遺伝子治療が、血友病A又は血友病Bの治療のためである、態様21に記載の使用のための核酸調節エレメント、核酸発現カセット、ベクター、又は医薬組成物。
【0033】
態様23. 肝臓細胞でトランスジーン産物を発現させるためのインビトロ又はエクスビボ法であって、
-態様8~17のいずれか1つに記載の核酸発現カセット、又は態様18又は19に記載のベクターを前記肝臓細胞に導入すること、及び
-前記トランスジーン産物を前記肝臓細胞で発現させること、を含む方法。
【0034】
態様24. トランスジーンの肝特異的遺伝子発現を増強する際に使用するための、好ましくは、前記使用はインビトロ使用である、態様1~7のいずれか1つに記載の核酸調節エレメント、態様8~17のいずれか1つに記載の核酸発現カセット、又は態様18又は19に記載のベクター。
【0035】
態様25. 態様1~7のいずれか1つに記載の核酸調節エレメント、態様8~17のいずれか1つに記載の核酸発現カセット、又は態様18又は19に記載のベクターを用いることを含む、トランスジーンの肝特異的遺伝子発現を増強するための方法。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、AAVscコンストラクトの概略図を示す図である。AAVsc-HS-CRE-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号33~53)(A)、AAVsc-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号31)(B)、及びAAVsc-3xSERP-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号32)(C)のデザイン。SERP:セルピン;TTRm:最小トランスチレチン;TTRenh;TTRエンハンサー;MVM:マウス微小ウイルス(minute virus of mouse)イントロン;hFIXcoPadua:コドン最適化ヒトFIX Padua R338L;bghpolyA:ウシ成長ホルモン由来ポリアデニル化シグナル。使用される全てのコンストラクトは、AAV逆方向末端反復配列に隣接する。
【
図2】
図2は、HS-CRE含有コンストラクト対HS-CRE非含有対照で得られたトランスジーン発現レベルの包括的なインビボ比較を示す図である。成体C57BL/6雄マウスに、AAVsc-HS-CRE1-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号33)、AAVsc-HS-CRE2-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号34)、AAVsc-HS-CRE3-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号35)、AAVsc-HS-CRE4-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号36)、AAVsc-HS-CRE5-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号37)、AAVsc-HS-CRE6-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号38)、AAVsc-HS-CRE7-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号39)、AAVsc-HS-CRE8-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号40)、AAVsc-HS-CRE9-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号41)、AAVsc-HS-CRE10-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号42)、AAVsc-HS-CRE11-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号43)、AAVsc-HS-CRE12-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号44)、AAVsc-HS-CRE13-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号45)、AAVsc-HS-CRE14-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号46)、AAVsc-HS-CRE15-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号47)、AAVsc-HS-CRE16-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号48)、AAVsc-HS-CRE17-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号49)、AAVsc-HS-CRE18-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号50)、AAVsc-HS-CRE19-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号51)、AAVsc-HS-CRE20-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号52)、AAVsc-HS-CRE21-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号53)(それぞれ、HS-CRE1、HS-CRE2、HS-CRE3、HS-CRE4、HS-CRE5、HS-CRE6、HS-CRE7、HS-CRE8、HS-CRE9、HS-CRE10、HS-CRE11、HS-CRE12、HS-CRE13、HS-CRE14、HS-CRE15、HS-CRE16、HS-CRE17、HS-CRE18、HS-CRE19、HS-CRE20、及びHS-CRE21として省略形で示す)を流体力学的にトランスフェクトした。対照として、AAVsc-3XSERP-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号32)及びAAVsc-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号31)(それぞれ、3XSERP-TTRenh-TTRmin及びTTRenh-TTRminとして示す)を用いた。血漿中のトランスジーン産物(すなわち、ヒトFIX-Padua)の産生は、トランスフェクションの1日後(パネルA)及び2日後(パネルB)にヒトFIX特異的ELISAを使用して定量化した。
【
図3】
図3は、1×10
9ベクターゲノム(vg)(A)又は5×10
9vg(B)のAAV9sc-HS-CRE4-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyAベクター、AAV9sc-HS-CRE6-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyAベクター、AAV9sc-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyAベクター、又はAAV9sc-SERP3X-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyAベクター(それぞれ、HS-CRE4、HS-CRE6、no HS-CRE、及び3XSERPとして省略形で示す)を尾静脈から注射した成体C57BL/6マウスにおけるFIXレベル(ng/mL(マウス血漿)として測定)の比較を示す図である。緩衝クエン酸塩への注射後の連続した日に血液を採取し、クエン酸血漿中のhFIX抗原の濃度をELISAによって測定した。
【発明を実施するための形態】
【0037】
一般的な定義
本明細書で使用される場合、単数形(「a」、「an」及び「the」)は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、単数及び複数の指示対象の両方を含む。
【0038】
本明細書で使用される場合、「含む/からなる」(「comprising」、「comprises」、及び「comprised of」)という用語は、「含む/含有する」(「including」、「includes」、又は「containing」、「contains」)と同義であり、包括的又は自由形式であり、追加の、引用されていない成員(member)、要素(element)、又は方法の工程(method step)を除外するものではない。これらの用語はまた、「からなる」(「consisting of」)及び「本質的にからなる」(「consisting essentially of」)を含み、これらは、特許用語において確立された意味を享受する。
【0039】
端点による数値範囲の列挙には、それぞれの範囲内に含まれる全ての数値及び分数、並びに列挙された端点が含まれる。
【0040】
パラメータ、量、経時的持続時間などの測定可能な値を指す場合に本明細書で使用される「約」又は「およそ」(「about」又は「approximately」)という用語は、指定値からの/指定値の変化を包含することを意味し、そのような変化が開示された発明において実施するのに適切である限りにおいて、指定値からの/指定値の±10%以下、好ましくは±5%以下、より好ましくは±1%以下、さらにより好ましくは±0.1%以下の変化などである。修飾語「約」が参照する値は、それ自体も具体的に、好ましくは開示されることを理解されたい。
【0041】
1又は複数の成員又は成員の群の少なくとも1つの成員など、「1又は複数」又は「少なくとも1つ」という用語は、さらに例示することにより、それ自体が明確であるが、この用語は、とりわけ、前記成員のいずれか1つ、又は前記成員の任意の2つ以上、例えば、前記メンバーの任意の≧3、≧4、≧5、≧6、又は≧7など、及び最大で前記全ての成員への言及を包含する。別の例では、「1又は複数」又は「少なくとも1つ」は、1、2、3、4、5、6、7、又はそれ以上を指す場合がある。
【0042】
本明細書における本発明の背景技術の議論は、本発明の背景を説明するために含まれる。これは、言及された資料のいずれかが、請求の優先日時点で公開されている、公知である、又は任意の国の技術常識の一部であることを認めるものと見なされるべきではない。
【0043】
本開示を通して、様々な刊行物、特許、及び公開特許明細書は、識別引用によって参照される。本明細書で引用される全ての文書は、参照によりその全体が本明細書に援用される。特に、本明細書で具体的に言及されるそのような文書の教示又はセクションは、参照により援用される。
【0044】
別段の定義がない限り、技術用語及び科学用語を含む、本発明を開示する際に使用される全ての用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解される意味を有する。さらなるガイダンスとして、本発明の教示をよりよく理解するために、用語の定義が含まれる。本発明の特定の態様又は本発明の特定の実施形態に関連して特定の用語が定義される場合、そのような含意は、他に定義されない限り、本明細書全体に、すなわち、本発明の他の態様又は実施形態の文脈においても適用されることを意味する。
【0045】
以下の節では、本発明の異なる態様又は実施形態がより詳細に定義されている。そのように定義された各態様又は実施形態は、反対に明確に示されない限り、他の任意の態様又は実施形態と組み合わされてもよい。特に、好ましい又は利点として示される任意の特徴は、好ましい又は利点として示される任意の他の特徴又は複数の特徴と組み合わされてもよい。
【0046】
本明細書全体を通して「一実施形態」、「実施形態(単数形)」への言及は、当該実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な場所での「一実施形態において」又は「実施形態(単数形)において」という句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すとは限らないが、そうであり得る。さらに、特定の特徴、構造、又は特性は、1又は複数の実施形態において、本開示から当業者に明らかであるように、任意の適切な方法で組み合わされてもよい。さらに、本明細書に記載のいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれる他の特徴ではなくいくつかの特徴を含むが、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、本発明の範囲内にあり、当業者によって理解されるように、異なる実施形態を形成することを意味する。例えば、添付の特許請求の範囲において、請求項に記載の実施形態のいずれかを任意の組み合わせで使用してもよい。
【0047】
本明細書で提供される用語又は定義は、本発明の理解を助けるために提供される。本明細書で具体的に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語は、本発明の当業者にとっての意味と同じ意味を有する。当業者に対して、当技術分野の定義及び用語について、特にSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Press, Plainsview, New York (1989);and Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (Supplement 47), John Wiley & Sons, New York (1999)に言及されている。
【0048】
一態様では、本発明は、肝特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントであって、以下の配列を含む、本質的に当該配列からなる(すなわち、前記調節エレメントは、例えば、クローニングの目的で使用される配列をさらに含み得るが、示される配列は、調節エレメントの本質的な部分を構成する、例えば、プロモーターなどのより大きな調節領域を形成しない)、又は当該配列からなる核酸調節エレメントに関する:配列番号6、配列番号4、配列番号12、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、及び配列番号21からなる群から選択される配列、又は前記配列のいずれかに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%(95%、96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列又はその機能性断片(すなわち、配列番号6、配列番号4、配列番号12、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、及び配列番号21からなる群から選択される配列又は前記配列のいずれかに対して高い比率(%)の配列同一性を有し、依然として前記調節エレメントの機能を実行する、すなわち発現を増加させる配列の機能性断片)。
【0049】
本明細書で使用される場合、「CRE」(シス調節エレメント)、「CRM」(シス調節モジュール)、又は「HS-CRE」(肝細胞特異的シス調節エレメント)とも称される、「核酸調節エレメント」又は「調節エレメント」は、遺伝子の転写、特に遺伝子の組織特異的転写を調節及び/又は制御することが可能な転写制御要素、特に非コードかシス作用性転写制御要素を意味する。調節エレメントは、少なくとも1つの転写因子結合部位(TFBS)、より具体的には、組織特異的転写因子のための少なくとも1つの結合部位、最も具体的には、肝特異的転写因子のための少なくとも1つの結合部位を含む。典型的には、本明細書で使用される調節エレメントは、調節エレメントなしのプロモーターのみからの遺伝子の転写と比較した場合、プロモーター駆動性遺伝子発現を増加又は増強する。したがって、調節エレメントは特にエンハンサー配列を含むが、転写を増強する調節エレメントは、典型的なはるか上流のエンハンサー配列に限定されず、それらが調節する遺伝子の任意の距離で起こり得ることが理解されるべきである。実際、転写を調節する配列は、それらがインビボで調節する遺伝子の上流(例えば、プロモーター領域)又は下流(例えば、3’UTR)のいずれかに位置し得、そして前記遺伝子の直近又ははるか遠くに位置し得ることが当技術分野で公知である。注目すべきことに、本明細書に開示される調節エレメントは、典型的には天然に存在する配列を含むが、そのような調節エレメント(の一部)又は調節エレメントのいくつかのコピーの組み合わせ、すなわち、非天然に存在する配列を含む調節エレメントは、それ自体も調節エレメントとして想定される。本明細書で使用される調節エレメントは、転写制御に関与するより大きな配列の一部、例えば、プロモーター配列の一部を含み得る。しかしながら、調節エレメントだけでは通常、転写を開始するのに充分ではなく、この目的のためにプロモーターが必要である。本明細書に開示される調節エレメントは、核酸分子、すなわち、単離された核酸、又は単離された核酸分子として提供される。したがって、前記核酸調節エレメントは、天然に存在するゲノム配列のごく一部であり、したがって、それ自体は天然に存在しないが、そこから単離される配列を有する。
【0050】
本明細書で使用される「核酸」という用語は、典型的には、本質的にヌクレオチドから構成される任意の長さのオリゴマー又はポリマー(好ましくは線状ポリマー)を指す。ヌクレオチド単位は、一般に、複素環式塩基、糖基、及び少なくとも1つ、例えば、修飾又は置換されたリン酸基を含む、1つ、2つ、又は3つのリン酸基を含む。複素環式塩基には、とりわけ、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)、及びウラシル(U)などのプリン塩基及びピリミジン塩基が含まれ、これらは、天然に存在する核酸、他の天然に存在する塩基(例えば、キサンチン、イノシン、ヒポキサンチン)、並びに化学的又は生化学的に修飾された(例えば、メチル化された)非天然又は誘導体化
塩基に広く分布している。糖基は、とりわけ、天然に存在する核酸に共通するリボース及び/又は2-デオキシリボース、又はアラビノース、2-デオキシアラビノース、スレオース、若しくはヘキソース糖基などのペントース(ペントフラノース)基、並びに修飾又は置換糖基を含み得る。本明細書で意図される核酸は、天然に存在するヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、又はそれらの混合物を含み得る。修飾ヌクレオチドは、修飾複素環式塩基、修飾糖部分、修飾リン酸基、又はそれらの組み合わせを含み得る。リン酸基又は糖の修飾を導入して、安定性、酵素分解に対する耐性、又は他のいくつかの有用な特性を改善してもよい。「核酸」という用語は、さらに好ましくは、DNA、RNA、及びDNA/RNAハイブリッド分子を包含し、具体的には、hnRNA、pre-mRNA、mRNA、cDNA、ゲノムDNA、増幅産物、オリゴヌクレオチド、及び合成(例えば、化学的に合成された)DNA、RNA、又はDNA/RNAハイブリッドを含む。核酸は、天然に存在し得る、例えば、自然界に存在するか、又は自然界から単離され得る。あるいは、天然に存在しない、例えば、組換え、すなわち、組換えDNA技術によって生成され、及び/又は部分的又は全体的に、化学的又は生化学的に合成され得る。「核酸」は、二本鎖、部分的に二本鎖、又は一本鎖であり得る。一本鎖の場合、核酸はセンス鎖又はアンチセンス鎖であり得る。さらに、核酸は環状又は線状であり得る。
【0051】
本明細書で使用される場合、「転写因子結合部位」、「転写因子結合配列」、又は「TFBS」は、転写因子が結合する核酸領域の配列を指す。TFBSの非限定的として、Eボックス結合タンパク質E47及びE12;CEB/P、C/EPB、又はCEPBとしても知られるCCAAT/エンハンサー結合タンパク質;HNF-1A、HNF1、IDDM20、LFB1、MODY3、TCF-1、又はTCFとしても知られる肝細胞核因子1ホメオボックスA;IRF1、IRF-1、又はMARとしても知られるインターフェロン調節因子1;LEF1、LEF-1、TCF10、TCF1ALPHA、又はTCF7L3としても知られるリンパ系エンハンサー結合因子1;FOXO4、AFX、AFX1、又はMLLT7としても知られるフォークヘッドボックス(forkhead box)タンパク質O4;横紋筋肉腫のフォークヘッド、FOXO1、FKH1、FKHR、又はFOXO1Aとしても知られるフォークヘッドボックスタンパク質O1に対する結合部位が挙げられる。転写因子結合部位は、Transfac(登録商標)などのデータベースにある。
【0052】
本明細書に開示される配列は、インビボで肝特異的遺伝子の転写を制御することが可能な、特に以下の遺伝子を制御可能な調節エレメントの配列の一部であり得る:ALBとしても知られるアルブミン、ApoA2としても知られるアポリポタンパク質A2、ApoC2としても知られるアポリポタンパク質C2、ApoC1としても知られるアポリポタンパク質C1、ApoA1としても知られるアポリポタンパク質A1、APOC3としても知られるアポリポタンパク質C3、APOCIII、TTRとしても知られるトランスチレチン、RBP4としても知られるレチノール結合タンパク質4、CYP2E1としても知られるチトクロームP4502E1、及びオロソムコイド1又はORM1としても知られるα-1-酸性糖タンパク質1。
【0053】
したがって、実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、ALB調節エレメント、すなわち、インビボでのALB遺伝子の発現を制御する調節エレメント、例えば、本明細書の他の場所に記載されている、配列番号1及び配列番号2を含む調節エレメント又はそれらの機能性断片からの配列を含む。実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、APOA2調節エレメント、すなわち、インビボでのAPOA2遺伝子の発現を制御する調節エレメント、例えば、本明細書の他の場所に記載されている、配列番号3及び配列番号4を含む調節エレメント又はそれらの機能性断片からの配列を含む。実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、TTR調節エレメント、すなわち、インビボでのTTR遺伝子の発現を制御する調節エレメント、例えば、本明細書の他の場所に記載されている、配列番号5を含む調節エレメント又はそれらの機能性断片からの配列を含む。実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、APOC1調節エレメント、すなわち、インビボでのAPOC1遺伝子の発現を制御する調節エレメント、例えば、本明細書の他の場所に記載されている、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11を含む調節エレメント又はそれらの機能性断片からの配列を含む。実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、RBP4調節エレメント、すなわち、インビボでのRBP4遺伝子の発現を制御する調節エレメント、例えば、本明細書の他の場所に記載されている、配列番号12及び配列番号13を含む調節エレメント又はそれらの機能性断片からの配列を含む。実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、APOC3調節エレメント、すなわち、インビボでのAPOC3遺伝子の発現を制御する調節エレメント、例えば、本明細書の他の場所に記載されている、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、及び配列番号18を含む調節エレメント又はそれらの機能性断片からの配列を含む。実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、CYP2E1調節エレメント、すなわち、インビボでのCYP2E1遺伝子の発現を制御する調節エレメント、例えば、本明細書の他の場所に記載されている、配列番号19を含む調節エレメント又はそれらの機能性断片からの配列を含む。実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、ORM1調節エレメント、すなわち、インビボでのORM1遺伝子の発現を制御する調節エレメント、例えば、本明細書の他の場所に記載されている、配列番号20及び配列番号21を含む調節エレメント又はそれらの機能性断片からの配列を含む。
【0054】
配列番号6、配列番号4、配列番号12、配列番号1、配列番号5、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号14、配列番号16、又は配列番号20を含む核酸調節エレメントは、SP1に対するTFBS及びEP300に対するTFBSを含む。
【0055】
配列番号6、配列番号4、又は配列番号12を含む核酸調節エレメントは、SP1に対するTFBS、EP300に対するTFBS、HNF 4Gに対するTFBS、CEBPBに対するTFBS、P300に対するTFBS、HDAC2に対するTFBS、JUNDに対するTFBS、FOSL2に対するTFBS、ZBTB7Aに対するTFBS、CEBPDに対するTFBS、及びRXRAに対するTFBSを含む。
【0056】
配列番号1、配列番号5、及び配列番号13を含む核酸調節エレメントは、SP1に対するTFBS、EP300に対するTFBS、POLR2Aに対するTFBS、MYBL2に対するTFBS、FOXA1に対するTFBS、FOXA2に対するTFBS、ARID3Aに対するTFBS、POLR2Aに対するTFBS、及びHEY1に対するTFBSを含む。
【0057】
配列番号9、配列番号11、配列番号14、配列番号16、及び配列番号20を含む核酸調節エレメントは、SP1に対するTFBS、EP300に対するTFBS、HNF 4Gに対するTFBS、CEBPBに対するTFBS、P300に対するTFBS、及びHNF 4Aに対するTFBSを含む。
【0058】
本明細書で使用される場合、「配列同一性」及び「同一配列」などの用語は、2つのポリマー分子間、例えば、2つの核酸分子間、例えば、2つのDNA分子間の配列同一性又は類似性の程度を指す。配列アラインメント及び配列同一性の決定は、例えば、Altschul et al. 1990(J Mol Biol 215: 403-10)によって最初に記述されたBasic Local Alignment Search
Tool (BLAST)、例えば、Tatusova and Madden 1999(FEMS Microbiol Lett 174: 247-250)に記載の「Blast 2配列」アルゴリズムなど、を用いて行うことができる。通常、配列同一性の比率(%)は、配列の全長にわたって計算される。本明細書で使用される場合、「実質的に同一」という用語は、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を意味する。
【0059】
本出願で使用される「機能性断片」という用語は、肝特異的発現を調節する能力を保有する、本明細書に開示されている配列の断片を意味する。すなわち、それらは尚も組織特異性をもたらし、それらは、それらが由来する配列と同様に(しかし、おそらくは同じ度合ではないが)、(トランス)遺伝子の発現を調節しうる。機能性断片は、好ましくはそれらが由来する配列からの少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、少なくとも100個、少なくとも120個、少なくとも150個、少なくとも200個、少なくとも250個、少なくとも300個、少なくとも350個、又は少なくとも400個の連続的ヌクレオチドを含み得る。また好ましくは、機能性断片は、それらが由来する配列に存在する少なくとも1つ、より好ましくは少なくとも2つ、少なくとも3つ、又は少なくとも4つ、さらにより好ましくは少なくとも5つ又は全ての転写因子結合部位(TFBS)を含み得る。
【0060】
本出願で使用される「肝特異的発現」という用語は、他の(すなわち非肝臓)組織又は細胞と比較した、肝臓、肝組織、又は肝臓細胞における遺伝子(トランスジーン)の(RNA及び/又はポリペプチドとしての)優先的又は優勢な発現を指す。特定の実施形態によれば、遺伝子(トランスジーン)発現の少なくとも50%、より具体的には、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%が肝組織又は肝臓細胞内で生じる。特定の実施形態によれば、肝特異的発現は、肝臓以外の器官又は組織、例えば、肺、筋肉、脳、腎臓、及び/又は脾臓への発現された遺伝子産物の「漏出」がないことを必然的に伴う。
【0061】
同じことが、肝特異的発現の特定の形態と見なされ得る、肝細胞特異的発現及び肝芽細胞特異的発現に準用される。本出願全体を通して、肝特異的発現が発現の観点から言及されている場合、肝細胞特異的発現及び肝芽細胞特異的発現もまた明確に想定される。
【0062】
本明細書で使用される場合、「肝臓細胞」という用語は、主に肝臓に存在する細胞を包含し、主に肝細胞、卵形細胞、肝類洞内皮細胞(LSEC)、及び胆管細胞(胆管を形成する上皮細胞)を包含する。
【0063】
本明細書で使用される「肝細胞」という用語は、適切な条件下で肝特異的表現型を発現することができるように、前駆肝芽細胞から分化した細胞を指す。「肝細胞」という用語はまた、脱分化された肝細胞を指す。この用語は、そのような細胞が初代であるか継代されているかに関係なく、インビボでの細胞及びエクスビボで培養された細胞を含む。
【0064】
本明細書で使用される「肝芽細胞」という用語は、分化して肝細胞、卵形細胞、又は胆管細胞を生じさせる中胚葉の胚性細胞を指す。この用語は、そのような細胞が初代であるか継代されているかに関係なく、インビボでの細胞及びエクスビボで培養された細胞を含む。
【0065】
実施形態では、本発明は、肝特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントであって、以下の配列の機能性断片を含む、本質的に当該機能性断片からなる、又は当該機能性断片からなる核酸調節エレメントに関する:配列番号6、配列番号4、配列番号12、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、及び配列番号21からなる群から選択される配列、又は前記配列のいずれかに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%(95%、96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列。本明細書において同定される前記調節エレメントの「機能性断片は、それが由来する配列からの、少なくとも20個、好ましくは少なくとも25個、より好ましくは少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも200個、又は少なくとも250個の連続的ヌクレオチドを含む、及び/又はそれが由来する配列に存在する、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも5つ、より好ましくは全ての転写因子結合部位(TFBS)を含むと定義される。
【0066】
さらなる実施形態では、本発明は、肝特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントであって、以下の配列を含む、本質的に当該配列からなる、又は当該配列からなる核酸調節エレメントに関する:配列番号6、配列番号4、配列番号12、配列番号1、配列番号5、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号14、配列番号16、及び配列番号20からなる群から選択される配列、又は前記配列のいずれかに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%(95%、96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列又はその機能性断片。本明細書において同定される前記調節エレメントの「機能性断片」は、SP1用の及びEP300に対するTFBS、及び/又はそれが由来する配列からの、少なくとも20個、好ましくは少なくとも25個、より好ましくは少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも200個、又は少なくとも250個の連続的ヌクレオチドを含む、及び/又はそれが由来する配列に存在する、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも5つ、より好ましくは全てのTFBSを含むと定義される。
【0067】
さらなる実施形態では、本発明は、肝特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントであって、以下の配列を含む、本質的に当該配列からなる、又は当該配列からなる核酸調節エレメントを提供する:配列番号6、配列番号4、配列番号12、配列番号1、配列番号5、及び配列番号13からなる群から選択される配列、又は前記配列のいずれかに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%(95%、96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列又はその機能性断片。本明細書において同定される前記調節エレメントの「機能性断片」は、少なくともSP1用の及びEP300に対するTFBS、及び/又はそれが由来する配列からの、少なくとも20個、好ましくは少なくとも25個、より好ましくは少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも200個、又は少なくとも250個の連続的ヌクレオチドを含む、及び/又はそれが由来する配列に存在する、少なくとも1つ、好ましくは全てのTFBSを含むと定義される。
【0068】
さらなる実施形態では、本発明は、肝特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントであって、以下の配列を含む、本質的に当該配列からなる、又は当該配列からなる核酸調節エレメントを提供する:配列番号6、配列番号4、及び配列番号12からなる群から選択される配列、又は前記配列のいずれかに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%(95%、96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列又はその機能性断片;前記核酸調節エレメントは、SP1に対するTFBS、EP300に対するTFBS、HNF 4Gに対するTFBS、CEBPBに対するTFBS、P300に対するTFBS、HDAC2に対するTFBS、JUNDに対するTFBS、FOSL2に対するTFBS、ZBTB7Aに対するTFBS、CEBPDに対するTFBS、及びRXRAに対するTFBSを含み、前記機能性断片は、それが由来する配列からの、少なくとも20個、好ましくは少なくとも25個、より好ましくは少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも200個、又は少なくとも250個の連続的ヌクレオチドを含み、及び前記機能性断片は、それが由来する配列に存在する、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも5つ、より好ましくは少なくとも10又は少なくとも15の転写因子結合部位(TFBS)を含む。
【0069】
さらなる実施形態では、本発明は、肝特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントであって、以下の配列を含む、本質的に当該配列からなる、又は当該配列からなる核酸調節エレメントを提供する:配列番号1、配列番号5、及び配列番号13からなる群から選択される配列、又は前記配列のいずれかに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%(95%、96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列又はその機能性断片;前記核酸調節エレメントは、SP1に対するTFBS、EP300に対するTFBS、POLR2Aに対するTFBS、MYBL2に対するTFBS、FOXA1に対するTFBS、FOXA2に対するTFBS、ARID3Aに対するTFBS、POLR2Aに対するTFBS、及びHEY1に対するTFBSを含み、前記機能性断片は、それが由来する配列からの、少なくとも20個、好ましくは少なくとも25個、より好ましくは少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも200個、又は少なくとも250個の連続的ヌクレオチドを含み、及び前記機能性断片は、それが由来する配列に存在する、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも5つ、より好ましくは少なくとも10又は少なくとも15の転写因子結合部位(TFBS)を含む。
【0070】
さらなる実施形態では、本発明は、肝特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントであって、以下の配列を含む、本質的に当該配列からなる、又は当該配列からなる核酸調節エレメントを提供する:配列番号9、配列番号11、配列番号14、配列番号16、及び配列番号20からなる群から選択される配列、又は前記配列のいずれかに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%(95%、96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列又はその機能性断片;前記核酸調節エレメントは、SP1に対するTFBS、EP300に対するTFBS、HNF 4Gに対するTFBS、CEBPBに対するTFBS、P300に対するTFBS、及びHNF 4Aに対するTFBSを含み、前記機能性断片は、それが由来する配列からの、少なくとも20個、好ましくは少なくとも25個、より好ましくは少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも200個、又は少なくとも250個の連続的ヌクレオチドを含み、及び前記機能性断片は、それが由来する配列に存在する、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも5つ、より好ましくは少なくとも10又は少なくとも15の転写因子結合部位(TFBS)を含む。
【0071】
さらなる実施形態では、本発明は、肝特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントであって、以下の配列を含む、本質的に当該配列からなる、又は当該配列からなる核酸調節エレメントを提供する:配列番号6からなる群から選択される配列;又は配列番号6に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%(95%、96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列又は本明細書に記載されるその機能性断片。
【0072】
さらなる実施形態では、本発明は、肝特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントであって、以下の配列を含む、本質的に当該配列からなる、又は当該配列からなる核酸調節エレメントを提供する:配列番号4からなる群から選択される配列;又は本明細書に記載されている、配列番号4に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%(95%、96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列又はその機能性断片。
【0073】
さらなる実施形態では、本発明は、肝特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントであって、以下の配列を含む、本質的に当該配列からなる、又は当該配列からなる核酸調節エレメントを提供する:配列番号12からなる群から選択される配列、又は本明細書に記載されている、配列番号12に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%(95%、96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列又はその機能性断片。
【0074】
本明細書に開示される2つ以上(例えば、2、3、4、5以上)の同一又は異なる配列、又は本明細書に記載されるその機能的断片を組み合わせることによって、人工配列を含む核酸調節エレメントを作製することも可能である。
【0075】
したがって、特定の実施形態では、以下の配列を含む肝特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントが提供される:配列番号6、配列番号4、配列番号12、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、及び配列番号21からなる群から選択される少なくとも2つの配列;これらの配列のいずれかに対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%(95%、96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列、又はその機能性断片、好ましくは配列番号6、配列番号4、配列番号12、配列番号1、配列番号5、及び配列番号13からなる群から選択される配列;これらの配列のいずれかに対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%(95%、96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列、又は本明細書に記載されるその機能性断片、より好ましくは配列番号6、配列番号4、及び配列番号12からなる群から選択される配列;又はこれらの配列のいずれかに対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%(95%、96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列、又は本明細書の他の場所に記載されるその機能性断片。
【0076】
例えば、本明細書に開示されるのは、配列番号6、配列番号4、及び配列番号12を含む、本質的にそれらからなる、又はそれらからなる核酸調節エレメント、配列番号6の2、3、4、又は5反復配列、例えば直列反復配列、を含む、本質的にそれらからなる、又はそれらからなる核酸調節エレメント、配列番号4の2、3、4、又は5反復配列、例えば直列反復配列、を含む、本質的にそれらからなる、又はそれらからなる核酸調節エレメント、配列番号12の又は2、3、4、又は5反復配列、例えば直列反復配列、を含む、本質的にそれらからなる、又はそれらからなる核酸調節エレメントである。本明細書に開示される1又は複数(例えば、1、2、3、4、5以上)の配列又は本明細書に記載されるその機能的断片を1又は複数の当技術分野で公知の肝特異的調節エレメントと組み合わせることによって、人工配列を含む核酸調節エレメントを作製することも可能である。公知の肝特異的調節エレメントの非限定的な例は、参照によりその全体が本明細書に援用される国際公開第2009/130208号、国際公開第2016/146757号、又は国際公開第01/98482号に開示されている。
【0077】
本明細書に開示される核酸調節エレメントと組み合わせるための肝特異的調節エレメントの特に好ましい例は、SERPINA1遺伝子プロモーターに由来する核酸調節エレメント、より具体的には、配列番号22で定義される配列、前記配列に対して少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%(96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列、又は本明細書に記載されるその機能性断片を含む調節エレメントである。配列番号22で定義される配列からなる肝特異的調節エレメントは、本明細書では、「セルピンエンハンサー」、「SerpEnh」、又は「Serp」と称される。
【0078】
したがって、特定の実施形態では、以下の配列を含む肝特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントが提供される:配列番号22の配列、前記配列に対して少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%(96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列、又は本明細書に記載されるその機能性断片、及び配列番号6、配列番号4、配列番号12、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、及び配列番号21からなる群から選択される少なくとも1つ又は2つ以上(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ以上)の同一又は異なる配列、又はこれらの配列のいずれかに対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%(95%、96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列、又は本明細書に記載されるその機能性断片;好ましくは配列番号6、配列番号4、配列番号12、配列番号1、配列番号5、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号14、配列番号16、及び配列番号20からなる群から選択される配列、又はこれらの配列のいずれかに対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%(95%、96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列、又は本明細書に記載されるその機能性断片;より好ましくは配列番号6、配列番号4、配列番号12、配列番号1、配列番号5、配列番号13からなる群から選択される配列、又はこれらの配列のいずれかに対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%(95%、96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列、又は本明細書に記載されるその機能性断片;より好ましくは配列番号6又はこれらの配列のいずれかに対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%(95%、96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列、又は本明細書に記載されるその機能性断片;さらにより好ましくは配列番号6、配列番号4、及び配列番号12からなる群から選択される配列、又はこれらの配列のいずれかに対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%(95%、96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列、又は本明細書に記載されるその機能性断片;より好ましくは配列番号6又はこれらの配列のいずれかに対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%(95%、96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列、又は本明細書に記載されるその機能性断片。
【0079】
特定の実施形態では、配列番号22、より具体的には、配列番号22(Serp)及び配列番号6の3反復配列、例えば、直列反復配列を含む、本質的にそれらからなる、又はそれらからなる、肝特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントが提供される。さらに特定の実施形態では、配列番号23(3×Serp)及び配列番号6を含む、本質的にそれらからなる、又はそれらからなる、肝特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントが提供される。
【0080】
特定の実施形態では、配列番号22、より具体的には、配列番号22(Serp)及び配列番号4の3反復配列、例えば、直列反復配列を含む、本質的にそれらからなる、又はそれらからなる、肝特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントが提供される。さらに特定の実施形態では、配列番号23(3×Serp)及び配列番号4を含む、本質的にそれらからなる、又はそれらからなる、肝特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントが提供される。
【0081】
特定の実施形態では、配列番号22、より具体的には、配列番号22(Serp)及び配列番号12の3反復配列、例えば、直列反復配列を含む、本質的にそれらからなる、又はそれらからなる、肝特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントが提供され
る。さらに特定の実施形態では、配列番号23(3×Serp)及び配列番号12を含む、本質的にそれらからなる、又はそれらからなる、肝特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントが提供される。
【0082】
本明細書に開示される核酸調節エレメントと組み合わせるための肝特異的調節エレメントのさらに特に好ましい例は、「TTRエンハンサー」、「TTRe」、又は「TTREnh」、より具体的には、配列番号24で定義される配列を含む調節エレメント、前記配列に対して少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%(96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列又は本明細書に記載されるその機能性断片である。したがって、特定の実施形態では、以下の配列を含む肝特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントが提供される:配列番号24の配列、前記配列に対して少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%(96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列、又は本明細書に記載されるその機能性断片、及び配列番号6、配列番号4、配列番号12、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、及び配列番号21からなる群から選択される少なくとも1つ又は2つ以上(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ以上)の同一又は異なる配列、又はこれらの配列のいずれかに対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%(95%、96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列、又は本明細書に記載されるその機能性断片、好ましくは配列番号6、配列番号4、配列番号12、配列番号1、配列番号5、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号14、配列番号16、及び配列番号20からなる群から選択される配列、又はこれらの配列のいずれかに対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%(95%、96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列、又は本明細書に記載されるその機能性断片;より好ましくは配列番号6、配列番号4、配列番号12、配列番号1、配列番号5、配列番号13からなる群から選択される配列、又はこれらの配列のいずれかに対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%(95%、96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列、又は本明細書に記載されるその機能性断片;より好ましくは配列番号6又はこれらの配列のいずれかに対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%(95%、96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列、又は本明細書に記載されるその機能性断片;さらにより好ましくは配列番号6、配列番号4、及び配列番号12からなる群から選択される配列、又はこれらの配列のいずれかに対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%(95%、96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列、又は本明細書に記載されるその機能性断片;より好ましくは配列番号6又はこれらの配列のいずれかに対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%(95%、96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列、又は本明細書に記載されるその機能性断片。
【0083】
本明細書に開示される核酸調節エレメントと組み合わせるための肝特異的調節エレメントのさらに特に好ましい例は、国際公開第01/98482号(参照により本明細書に援用される)に記載されるような「肝遺伝子座制御要素」を構成する調節エレメントであり、より具体的には、配列番号57又は配列番号58で定義される調節エレメント、前記配列に対して少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%(96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列、又は本明細書に記載されるその機能性断片である。
【0084】
本明細書に開示される核酸調節エレメントと組み合わせるための肝特異的調節エレメントのさらに特に好ましい例は、少なくとも1つ、好ましくは3つのセルピンエンハンサー
(例えば、配列番号22)の直列反復配列を含む調節エレメント、配列番号23(3×Serp)及び配列番号24で定義されるトランスチレチンエンハンサー(TTRe)を含む調節エレメントなどである。少なくとも1つ、好ましくは3つのセルピンエンハンサーの直列反復配列及びTTReを含む肝特異的調節エレメントの例は、参照によりその全体が本明細書に援用される国際公開第2016/146757号に記載されている。
【0085】
当技術分野で公知の1又は複数の肝特異的調節エレメントは、本明細書に開示される1又は複数(例えば、1、2、3、4、5又はそれ以上)の核酸調節エレメントの上流又は下流に位置し得る。好ましくは、本明細書に開示される1又は複数(例えば、1、2、3、4、5又はそれ以上)の核酸調節エレメント又は本明細書に記載のその機能性断片は、当技術分野で公知の1又は複数肝特異的調節エレメントの上流に位置する。
【0086】
人工配列を含む核酸調節エレメントの特定の例には、本明細書に開示される配列に存在する転写因子結合部位(TFBS)を再配列することによって得られる調節エレメントが含まれる。前記再配置は、TFBSの順序を変更すること、及び/又は他のTFBSに対する1又は複数のTFBSの位置を変更すること、及び/又は1又は複数のTFBSのコピー数を変更することを含み得る。例えば、ATF3、AR1D3A、2BTB7A、BHLHE40、CEBPB、CEBPD、CHD2、CTCF、EP300、ELF1、EZH2、ESRRA、FOXA1、FOXA2、FOSL2、HEY1、GATA2、GABPA、HEY1、HDAC2、HNF 4A、HNF 4G、HSF1、JUN、JUND、MAFF、MAFK、MAX、MYBL2、MBD4、MAZ、MXI1、MYC、NF1C、NR2C2、NR2F2、POLR2A、PO12、p300、PPARGC1A、RAD21、RXR5、RXRA、RCOR1、REST、SMC3、SUZ12、SHC3、SP1、SRF、SREBP1、SIN3AK20、TAF1、TCF7L2、TBP、TEAD4、TBP、TCF12、TCF4、USF1、USF2、YY1、ZBTB7A、及び/又はZBTB33に対する結合部位を含む肝特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントも本明細書に開示される。さらなる例において、これらの核酸調節エレメントは、列挙されるTFBSのうちの1又は複数の2、3、4、又はそれ以上のコピーなどの少なくとも2つを含む。
【0087】
調節エレメントが一本鎖核酸として提供される場合、例えば、一本鎖AAVベクターを使用する場合、相補鎖は開示された配列と同等であると見なされる。よって、本明細書に開示される配列の相補配列を含む、本質的に前記相補配列からなる、又は前記相補配列からなる肝特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントもまた、本明細書に開示され、前記相補配列は特に、配列番号6、配列番号4、配列番号12、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、及び配列番号21からなる群から選択される配列の相補配列、前記配列のいずれかに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%(95%、96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列の相補配列、又は本明細書に記載のそれらの機能性断片の相補配列である。
【0088】
また、本明細書に記載の核酸調節エレメント、特に、配列番号6、配列番号4、配列番号12、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、及び配列番号21からなる群から選択される配列、これらの配列のいずれかに対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%(95%、96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列、本明細書に記載されるそれらの機能性断片、又はそれらの相補配列を含む、本質的にそれらからなる、又はそれらからなる核酸調節エレメントに、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする肝特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントも開示される。前記核酸調節エレメントは、それらがハイブリダイズする配列と同じ長さである必要はない。好ましい実施形態では、前記ハイブリダイズする核酸調節エレメントのサイズは、それがハイブリダイズする配列から、長さが25%を超えて、特に長さが20%、より具体的には15%、最も具体的には10%を超えて異ならない。
【0089】
「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」という表現は、定義された温度及び塩濃度の条件下で、核酸分子が標的核酸分子にハイブリダイズする能力を指す。通常、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、天然二重鎖の融解温度(Tm)より25℃~30℃(例えば、20℃、15℃、10℃、又は5℃)以下である。Tmを計算する方法は当技術分野で周知である。非限定的な例として、ストリンジェントなハイブリダイゼーションを達成するための代表的な塩及び温度条件は以下の通りである:1×SSC、0.5%SDS、65℃。略語SSCは、核酸ハイブリダイゼーション溶液で使用されるバッファーを指す。20倍(濃縮液の20倍)のストックSSC緩衝液(pH7.0)1リットルには、175.3gの塩化ナトリウム及び88.2gのクエン酸ナトリウムが含まれる。ハイブリダイゼーションを達成するための代表的な期間は12時間である。
【0090】
好ましくは、本明細書に記載の調節エレメントは、限られた長さであるが、完全に機能的である。これにより、負荷容量を過度に制限することなく、ベクター又は核酸発現カセットでの使用が可能になる。したがって、実施形態では、本明細書に開示される調節エレメントは、600ヌクレオチド以下、500ヌクレオチド以下、400ヌクレオチド以下、300ヌクレオチド以下、250ヌクレオチド以下、200ヌクレオチド以下、190ヌクレオチド以下、又は180ヌクレオチド以下、好ましくは500ヌクレオチド以下、より好ましくは300ヌクレオチド以下の核酸である。
【0091】
しかしながら、開示された核酸調節エレメントは、調節活性(すなわち、転写の特異性及び/又は活性に関して)を保持し、したがって、それらは、特に、配列番号1~21で定義される調節エレメントのそれぞれの配列の、20ヌクレオチド、25ヌクレオチド、30ヌクレオチド、35ヌクレオチド、40ヌクレオチド、45ヌクレオチド、50ヌクレオチド、100ヌクレオチド、150ヌクレオチド、160ヌクレオチド、170ヌクレオチド、又は全てのヌクレオチドの最小長を有することが理解されるべきである。
【0092】
特定の実施形態では、本発明は、600ヌクレオチド以下、500ヌクレオチド以下、400ヌクレオチド以下、300ヌクレオチド以下、250ヌクレオチド以下、200ヌクレオチド以下、190ヌクレオチド以下、又は180ヌクレオチド以下、好ましくは500ヌクレオチド以下、より好ましくは300ヌクレオチド以下の肝特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントであって、配列番号6、配列番号4、配列番号12、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、及び配列番号21からなる群から選択される配列、前記配列のいずれかに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%(95%、96%、97%、98%、又は99%など)の同一性を有する配列、又は本明細書に記載の機能性断片を含む、核酸調節エレメントを提供する。本明細書に開示される核酸調節エレメントは、核酸発現カセットにおいて使用され得る。したがって、一態様では、本発明は、核酸発現カセットに本明細書に記載されるような核酸調節エレメントの使用を提供する。
【0093】
一態様では、本発明は、プロモーターに機能的に連結された、本明細書に記載の核酸調
節エレメントを含む核酸発現カセットを提供する。実施形態では、核酸発現カセットにはトランスジーンは含まれない。そのような核酸発現カセットは、内因性遺伝子の発現を駆動するために使用され得る。好ましい実施形態では、核酸発現カセットは、プロモーター及びトランスジーンに機能的に連結された、本明細書に記載の核酸調節エレメントを含む。
【0094】
本明細書中で用いる「核酸発現カセット」なる語は、1又は複数の所望の細胞型、組織又は器官において(トランス)遺伝子発現を導く1又は複数の転写制御要素(限定的なものではないが例えば、プロモーター、エンハンサー及び/又は調節エレメント、ポリアデニル化配列及びイントロン)を含む核酸分子を意味する。核酸発現カセットは、前記核酸カセットが挿入されている細胞における内因性遺伝子の発現を導くことも想定されるが、典型的には、それらはトランスジーンをも含有するであろう。
【0095】
本明細書中で用いる「機能的に連結」なる語は、種々の核酸分子要素が機能的に連結されており互いに相互作用しうるような、それぞれに対する前記核酸分子要素の配置を意味する。そのような要素には、プロモーター、エンハンサー及び/又は調節エレメント、ポリアデニル化配列、1又は複数のイントロン及び/又はエキソン、並びに発現されるべき目的の遺伝子のコード配列(すなわち、トランスジーン)が含まれうるが、これらに限定されるものではない。それらの核酸配列要素は、適切に配向している又は機能的に連結されている場合には、互いの活性をモジュレーションするように一緒に作用し、最終的には前記トランスジーンの発現のレベルに影響を及ぼしうる。モジュレーションは、特定の要素の活性のレベルの増加、減少又は維持を意味する。他の要素に対する各要素の位置は各要素の5’末端及び3’末端として表されることが可能であり、いずれかの特定の要素の間の距離は、それらの要素間の介在ヌクレオチド又は塩基対の数により示されうる。当業者に理解されているとおり、機能的に連結(されている)は、機能的活性を有することを意味し、天然の位置的連結には必ずしも関連していない。実際、核酸発現カセットにおいて使用される場合、前記調節エレメントは、典型的には、プロモーターの直上流に位置するが(これが一般的な場合であるが、前記核酸発現カセット内の位置の限定又は除外として決定的に解釈されるべきではない)、これが必ずしもインビボで当てはまるわけではない。例えば、遺伝子の下流に天然で存在し、その転写に影響を及ぼす或る調節エレメント配列は、プロモーターの上流に位置する場合と同様に機能しうる。したがって、特定の実施形態においては、前記調節エレメントの調節又は増強効果は位置に非依存的である。
【0096】
特定の実施形態では、核酸発現カセットは、本明細書に記載の1つの核酸調節エレメント又は本明細書に記載のその機能性断片を含む。代替の実施形態において、核酸発現カセットは、2つ以上、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の本明細書に記載の核酸調節エレメント、又は本明細書に記載のその機能性断片を含む、すなわち、それらは、それらの調節(及び/又は増強)効果を増強するためにモジュール式に組み合わされる。さらに別の実施形態では、核酸発現カセットは、本明細書に記載の少なくとも1つの核酸調節エレメント、又は本明細書に記載のその機能性断片、及び当技術分野で公知の少なくとも1つの肝特異的核酸調節エレメント、又は本明細書に記載のその機能性断片を含む。さらなる実施形態では、2つ以上の核酸調節エレメントのうちの少なくとも2つ、又は本明細書に記載のその機能性断片は、同一又は実質的に同一である。さらなる実施形態では、2つ以上の調節エレメントのうち全て、又は本明細書に記載のその機能性断片は、同一又は実質的に同一である。同一又は実質的に同一の核酸調節エレメントのコピー、又は本明細書に記載のその機能性断片は、核酸発現カセットにおいて直列反復配列として提供され得る。代替のさらなる実施形態では、2つ以上の核酸調節エレメントのうちの少なくとも2つ、又は本明細書に記載のその機能性断片は、互いに異なる。核酸発現カセットはまた、本明細書に記載の同一及び実質的に同一の核酸調節エレメント又はその機能性断片、並びに本明細書に記載の非同一の核酸調節エレメント又はその機能性断片の組み合わせを含み得る。
【0097】
例えば、前記核酸発現カセットは、配列番号6を含む核酸調節エレメント、及び配列番号22(SERP)を含む核酸調節エレメントを含みうる。前記核酸発現カセットは、配列番号6を含む核酸調節エレメント、及び2、3、又は4個の配列番号22(SERP)を含む核酸調節エレメントを含みうる。前記核酸発現カセットは、2、3、又は4個の配列番号6を含む核酸調節エレメント、及び配列番号22(SERP)を含む核酸調節エレメントを含みうる。前記核酸発現カセットは、2、3、又は4個の配列番号6を含む核酸調節エレメント、及び2、3、又は4個の配列番号22(SERP)を含む核酸調節エレメントを含みうる。同様に、前記核酸発現カセットは、2、3、又は4個の配列番号6を含む核酸調節エレメント、及び配列番号23(3×SERP)を含む核酸調節エレメントを含みうる。
【0098】
本出願において用いる「プロモーター」なる語は、それが機能的に連結されている対応核酸コード配列(例えば、トランスジーン又は内因性遺伝子)の転写を直接的又は間接的に調節する核酸配列を意味する。プロモーターは、転写を調節するよう単独で機能しうる。あるいはプロモーターは1以上の他の調節配列(例えば、エンハンサー若しくはサイレンサー、又は調節エレメント)と共に作用しうる。本出願の文脈においては、プロモーターは、典型的には、遺伝子(トランスジーン)の転写を調節するよう本明細書に開示される調節エレメントに機能的に連結される。本明細書に記載されている調節エレメントがプロモーター及びトランスジーンの両方に機能的に連結されている場合、前記調節エレメントは、(1)前記トランスジーンの有意な度合の肝特異的発現をインビボ(及び/又は肝芽細胞、肝細胞、卵形細胞、胆管細胞、肝幹細胞、又は肝由来細胞株でインビトロ)でもたらすことが可能であり、及び/又は(2)肝臓及び/又は肝芽細胞、肝細胞、卵形細胞、肝幹細胞、及び胆管細胞(インビトロ)における前記トランスジーンの発現のレベルを増加させることが可能である。
【0099】
プロモーターは、同種であってもよく(すなわち、動物、特に哺乳動物と同じ種から、核酸発現カセットでトランスフェクトされる)、異種であってもよい(すなわち、動物、特に哺乳動物の種以外の供給源から、発現カセットでトランスフェクトされる)。したがって、プロモーターの供給源は、任意のウイルス、任意の単細胞原核生物若しくは真核生物、任意の脊椎動物若しくは無脊椎動物、又は任意の植物であるか、合成プロモーター(すなわち、天然に存在しない配列を有する)でさえあり得る。ただし、プロモーターは、本明細書に記載の調節エレメントと組み合わせて機能する。好ましい実施形態において、プロモーターは、哺乳動物プロモーター、特にマウス又はヒトプロモーターである。
【0100】
プロモーターは、誘導性又は構成的プロモーターであり得る。
【0101】
本明細書に開示される核酸調節エレメントにおける肝特異的TFBSの濃縮は、原則として、調節エレメントが、それ自体が肝特異的ではないプロモーターからでさえ、肝特異的発現を指示することを可能にする。したがって、本明細書に開示される調節エレメントは、それらの天然のプロモーター、並びに別のプロモーターと組み合わせて、核酸発現カセットで使用することができる。好ましくは、本明細書に開示される核酸発現カセットは、肝特異的プロモーターを含む。これは、肝臓の特異性を高め、及び/又は他の組織での発現の漏出を回避するためである。肝特異的プロモーターの非限定的な例は、Liver Specific Gene Promoter Database(LSPD、http://rulai.cshl.edu/LSPD/)において提供され、例えば、アルブミン(ALB)プロモーター、アポリポタンパク質A2(APOA2)プロモーター、トランスチレチン(TTR)プロモーター、アポリポタンパク質C1(APOC1)プロモーター、レチノール結合タンパク質4(RBP4)プロモーター、アポリポタンパク質C3(APOC3)プロモーター、シトクロムP450 2E1(CYP2E1)プロモーター、α1-酸性糖タンパク質1(ORM1)プロモーター、セルピンA1(SERPINA1)プロモーター、アポリポタンパク質A1(APOA1)プロモーター、補体因子B(CFB)プロモーター、ケトヘキソキナーゼ(KHK)プロモーター、ヘモペキシン(HPX)プロモーター、ニコチンアミド-N-メチルトランスフェラーゼ(NNMT)プロモーター、(肝)カルボキシルエステラーゼ1(CES1)プロモーター、タンパク質C(PROC)プロモーター、アポリポタンパク質C3 (APOC3)プロモーター、マンナン結合レクチンセリンプロテアーゼ2(MASP2)プロモーター、ヘプシジン抗菌ペプチド(HAMP)プロモーター、セルピンペプチダーゼ阻害剤、clade C(アンチトロンビン)、member 1(SERPINC1)プロモーター、及びα1-アンチトリプシン(AAT)プロモーターが挙げられる。
【0102】
特に好ましい実施形態では、前記プロモーターは、哺乳動物の肝特異的プロモーター、特にマウス又はヒトの肝特異的プロモーターである。
【0103】
好ましい実施形態では、前記プロモーターは、トランスチレチン遺伝子、特に、配列番号27で定義される最小トランスチレチンプロモーター(TTRm)などのマウス又はヒトトランスチレチン遺伝子に由来する。
【0104】
特定の実施形態では、本明細書で教示される肝特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントが、TTReエンハンサー(例えば、配列番号24で定義される)と組み合わされる場合、前記プロモーターは、好ましくはTTRm(例えば、配列番号27で定義される)、並びにTTRe及びTTRm核酸モジュールの組み合わせは、好ましくは、配列番号28に記載される通りである。したがって、特定の実施形態では、前記プロモーターはトランスチレチン(TTR)プロモーターであり、それにより、配列番号28によって定義されるTTRe及びTTRm核酸の組み合わせを含む。
【0105】
特定の実施形態では、本明細書で教示される肝特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントが、参照として本明細書に援用される国際公開第01/98482号に記載の「肝遺伝子座制御要素」、より具体的には、配列番号57又は配列番号58に定義される配列を含む調節エレメントと組み合わされる場合、前記プロモーターは、好ましくはAATプロモーターである。前記プロモーターは好ましくはAATプロモーターである。
【0106】
さらに、トランスジーンがそれ自体のプロモーターから転写される可能性はあるが、プロモーターは、核酸発現カセット中のトランスジーンのプロモーターである必要はない。
【0107】
核酸発現カセットの長さを最小化するために、調節エレメントは、最小のプロモーター、又は本明細書に記載のプロモーターの短縮バージョンに連結され得る。本明細書で使用される「最小プロモーター」(基底プロモーター又はコアプロモーターとも称される)は、発現を尚も導きうるが(例えば組織特異的)発現の調節に寄与する配列の少なくとも一部を欠く、完全サイズのプロモーターの一部である。この定義は、遺伝子の発現を導きうるが組織特異的にその遺伝子を発現する能力を喪失している、(組織特異的)調節エレメントが欠失しているプロモーターと、遺伝子の(おそらくは低下した)発現を駆動しうるが組織特異的にその遺伝子を発現する能力を必ずしも喪失していない、(組織特異的)調節エレメントが欠失しているプロモーターとの両方を含む。好ましくは、本明細書にかい核酸発現カセットに含まれるプロモーターは、長さが1000ヌクレオチド以下、900ヌクレオチド以下、800ヌクレオチド以下、700ヌクレオチド以下、600ヌクレオチド以下、500ヌクレオチド以下、400ヌクレオチド以下、300ヌクレオチド以下、又は250ヌクレオチド以下である。
【0108】
本明細書で使用される「トランスジーン」という用語は、核酸配列が導入される細胞において発現されるポリペプチド又はポリペプチドの一部をコードする特定の核酸配列を指す。しかしながら、トランスジーンが、典型的には核酸配列が挿入される細胞内の特定のポリペプチドの量を制御する(例えば、より低くする)ために、RNAとして発現されることも可能である。これらのRNA分子として、gRNA、shRNA、circRNA、siRNA、アンチセンスRNAなどが挙げられるが、これらに限定されない。核酸配列がどのように細胞に導入されるかは、本発明に必須ではなく、例えば、ゲノムへの組み込みを介して、又はエピソームプラスミドとしてであり得る。注目すべきことに、トランスジーンの発現は、核酸配列が導入される細胞のサブセットに制限され得る。「トランスジーン」なる語は、(1)細胞において天然では見いだされない核酸配列(すなわち、異種核酸配列)、(2)それが導入された細胞において天然で見出される核酸配列の突然変異形態である核酸配列、(3)それが導入された細胞において天然で見出される同じ(すなわち、相同)又は類似した核酸配列の追加的コピーを付加するよう働く核酸配列、あるいは(4)それが導入された細胞において発現が誘導される、天然に存在する又は相同なサイレント核酸配列を含むと意図される。
【0109】
前記トランスジーンは、前記プロモーター(及び/又は、例えば、前記核酸発現カセットが遺伝子治療に使用される場合には、それが導入される動物、特に哺乳動物)と同種又は異種でありうる。
【0110】
前記トランスジーンはコドン最適化されていてもよい。
【0111】
前記トランスジーンは、完全長のcDNA又はゲノムDNA配列、あるいは少なくともいくらかの生物学的活性を有するそれらの任意の断片、サブユニット、又は突然変異体であり得る。特に、前記トランスジーンは、ミニ遺伝子、すなわち、そのイントロン配列の一部、ほとんど又は全てを欠く遺伝子配列であり得る。したがって、前記トランスジーンは、場合によりイントロン配列を含み得る。場合により、前記トランスジーンは、ハイブリッド核酸配列、すなわち、相同及び/又は異種のcDNA及び/又はゲノムDNAフラグメントから構築されたものであり得る。「突然変異形態」は、野生型又は天然に存在する配列とは異なる1又は複数のヌクレオチドを含有する核酸配列を意味する。すなわち、突然変異核酸配列は1又は複数のヌクレオチドの置換、欠失、及び/又は挿入を含有する。ヌクレオチドの置換、欠失、及び/又は挿入は、アミノ酸/核酸配列において野生型アミノ酸/核酸配列とは異なる遺伝子産物(すなわち、タンパク質又は核酸)を与えうる。そのような突然変異体の製造は当技術分野で周知である。場合によっては、前記トランスジーンはまた、トランスジーン産物が細胞から分泌されるように、リーダーペプチド又はシグナル配列をコードする配列を含み得る。
【0112】
本明細書に記載の核酸発現カセットに含まれ得るトランスジーンは、典型的には、RNA又はポリペプチド(タンパク質)などの遺伝子産物をコードする。
【0113】
実施形態において、トランスジーンは、治療用タンパク質又は免疫原性タンパク質をコードする。
【0114】
実施形態において、トランスジーンは、治療用タンパク質をコードする。治療用タンパク質の非限定的な例として、第VIII因子,第IX因子、第VII因子、第X因子、フォン・ヴィルブランド因子、エリスロポエチン(EPO)、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン3(IL-3)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン5(IL-5)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン7(IL-7)、インターロイキン8(IL-8)、インターロイキン9(IL-9)、インターロイキン10(IL-10)、インターロイキン11(IL-11)、インターロイキン12(IL-12)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド5(CXCL5)、顆粒球-コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、幹細胞因子(SCF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、単球誘引物質タンパク質1(MCP-1)、腫瘍壊死因子(TNF)、アファミン(AFM)、α1-アンチトリプシン、α-ガラクトシダーゼA、α-L-イズロニダーゼ、ATP7b、オルニチントランスカルバモイラーゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、リポタンパク質リパーゼ、アポリポタンパク質、低密度リポタンパク質受容体(LDL-R)、アルブミン、グルコース-6-ホスファターゼ、抗体をコードするトランスジーン、ナノボディ(nanobody)、抗ウイルスドミナントネガティブタンパク質、及びそれらの断片、サブユニット、又は突然変異体が挙げられる。
【0115】
実施形態において、前記トランスジーンは、免疫原性タンパク質をコードする。免疫原性タンパク質の非限定的な例には、A型、B型、又はC型肝炎表面抗原タンパク質などの病原体に由来するエピトープ及び抗原が含まれる。
【0116】
本明細書で使用される場合、「免疫原性」という用語は、免疫応答を誘発することが可能な物質又は組成物を指す。
【0117】
特定の実施形態では、前記トランスジーンはFIXをコードする。「凝固因子IX」という用語は、当技術分野で公知の意味を有する。凝固因子IXの同義語は「FIX」又は「クリスマス因子」又は「F9」であり、互換的に使用され得る。特に、「凝固因子IX」という用語は、Genbankアクセッション番号NM_000133で定義されているmRNA配列によってコードされるヒトタンパク質を包含する。好ましくは、前記FIXは、野生型FIXと比較して高活性又は高機能である変異FIXである。ヒト凝固因子の機能的活性の変更は、バイオエンジニアリングによって行うことが可能であり、例えば、点突然変異の導入による。このアプローチにより、活性が亢進したR338Aバリアントが報告された。インビトロ活性化部分トロンボプラスチン時間アッセイ(APPT)で野生型ヒトFIXと比較して3倍増加した凝固活性が示され(Chang et al., 1998)、変異型FIX遺伝子で形質導入された血友病Bマウスでは2~6倍高い比活性(Schuettrumpf et al., 2005)が示された。さらに高い凝固活性を有するさらなる例示的なFIX点突然変異体又はドメイン交換突然変異体が記載されている:EGF-1ドメインをFVIIからのEGF-1ドメインに置換したFIX単独又はR338A点突然変異と組み合わせ(Brunetti-Pierri et al., 2009);V86A/E277A/R338A三重変異体(Lin et al., 2010);Y259F、K265T、及び/又はY345Tの一重、二重、又は三重変異体(Milanov, et al., 2012);及びG190V点変異体(Kao et al., 2010)(全て参照により本明細書に援用される)。さらなる例示的なFIX変異体には、第IX因子ダルシノナコグアルファ(dalcinonacog alfa)が含まれる(「CB 2679d/ISU304」)(Catalyst Biosciences社)。
【0118】
特に好ましい実施形態では、FIX変異体は、2009年にSimioni et al.によって記載され、「第IX因子Padua」変異体と呼ばれ、X連鎖血栓性素因を引き起こすものである。前記突然変異因子IXは、活性亢進であり、R338Lアミノ酸置換を有する。本発明の一実施形態では、FIXトランスジーンは、ヒトFIXタンパク質をコードし、好ましくは、FIXトランスジーンは、ヒトFIXタンパク質のPadua変異体をコードする。一実施形態では、FIXトランスジーンは、配列番号25(co-FIX-R338L)に記載の配列を有するヒトFIXタンパク質のPadua変異体
をコードする。
【0119】
特定の実施形態では、前記トランスジーンはFVIIIをコードする。「凝固因子VIII」という用語は、当技術分野で公知の意味を有する。凝固因子VIIIの同義語は「FVIII」又は「抗血友病因子」又は「AHF」であり、互換的に使用され得る。「凝固因子VIII」という用語は、Uniprotアクセッション番号P00451で定義されているアミノ酸配列によってコードされるヒトタンパク質を包含する。好ましくは、前記FVIIIは、Bドメインが欠失しているFVIII(すなわち、Bドメイン欠失FVIII、本明細書ではBDD FVIII又はFVIIIΔBとも称する)である。「Bドメイン欠失FVIII」という用語は、例えば、限定されないが、Bドメインの全部又は一部が欠失しているFVIII変異体、及びBドメインがリンカーによって置換されているFVIII変異体を包含する。Bドメイン欠失FVIIIの非限定的な例は、参照により本明細書に具体的に援用されるWard et al. (2011)、国際公開第2011/005968号、及びMcIntosh et al. (2013)に記載されている。特定の実施形態において、前記FVIIIは、Bドメインが以下の配列を有するリンカーによって置換されている、Bドメイン欠失FVIIIである:SFSQNPPVLTRHQR(配列番号54)(すなわち、Ward et al. (2011)に定義されるSQ FVIII)。特定の実施形態では、参照により本明細書に具体的に援用される国際公開第2011/0059号に開示されるように、前記FVIIは配列番号26(すなわち、コドン最適化Bドメイン欠失ヒトFVIII又はhFVIIIcopt)を有する。
【0120】
他の配列(例えば、イントロン及び/又はポリアデニル化配列)も、典型的にはトランスジーン産物の発現を更に増強又は安定化させるために、前記核酸発現カセット内に組込まれうる。
【0121】
本明細書に記載されている発現カセットにおいては任意のイントロンが使用されうる。「イントロン」なる語は、核スプライシング装置により認識されスプライシングされるのに十分な程度に大きな、イントロン全体の任意の部分を含む。典型的には、前記発現カセットの構築及び操作を促進する前記発現カセットのサイズを可能な限り小さく維持するためには、短い機能性イントロン配列が好ましい。幾つかの実施形態においては、前記イントロンは、前記発現カセット内のコード配列によりコードされるタンパク質をコードする遺伝子から得られる。前記イントロンは前記コード配列の5’側、前記コード配列の3’側、又は前記コード配列内に位置しうる。前記コード配列の5’側に前記イントロンが位置する利点は、ポリアデニル化シグナルの機能を前記イントロンが妨げる可能性を最小にすることである。実施形態において、本明細書に開示される核酸発現カセットは、イントロンをさらに含む。適切なイントロンの非限定的な例は、マウス微小ウイルス(MVM)イントロン、β-グロビンイントロン(βIVS-II)、第IX因子(FIX)イントロンA、シミアンウイルス40(SV40)small-tイントロン、及びβ-アクチンイントロンである。好ましくは、前記イントロンは、マウス微小ウイルス(MVM)イントロンであり、より好ましくは、配列番号29で定義されるMVMイントロンである。
【0122】
ポリA尾部の合成を導く任意のポリアデニル化シグナルが、本明細書に記載の発現カセットにおいて有用であり、それらの具体例は当業者に周知である。例示的なポリアデニル化シグナルとして、シミアンウイルス40(SV40)後期遺伝子に由来するpolyA配列、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル、最小ウサギβ-グロビン(mRBG)遺伝子、及びLevitt et al.(1989, Genes Dev 3:1019-1025)に記載の合成ポリA s(SPA)部位が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、前記ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル(配列番号30)。
【0123】
特定の実施形態では、核酸発現カセットが開示され、以下を含む:
- 配列番号6、配列番号4、配列番号12、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、及び配列番号21からなる群から選択される配列、前記配列のいずれかに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、又はその機能性断片を含む肝特異的核酸調節エレメント;
- 配列番号24で定義されるトランスチレチンエンハンサー(TTRe);
- 肝特異的TTRmプロモーター(例えば、配列番号27で定義される);及び
- トランスジーン、
好ましくは、TTRe核酸及びTTRm核酸の組み合わせは、配列番号28で定義される。
【0124】
特定の実施形態では、核酸発現カセットが開示され、以下を含む:
-配列番号6、配列番号4、配列番号12、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、及び配列番号21からなる群から選択される配列、前記配列のいずれかに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、又はその機能性断片を含む肝特異的核酸調節エレメント;
-配列番号24で定義されるトランスチレチンエンハンサー(TTRe);
-肝特異的TTRmプロモーター(例えば、配列番号27で定義される);及び
-イントロン、好ましくはMVMイントロン(例えば、配列番号29で定義される);及び
-トランスジーン、好ましくは、前記トランスジーンは凝固因子IX(FIX)をコードし、前記トランスジーンはコドン最適化凝固因子FIXであり、又は前記凝固因子FIXは、活性亢進変異を含み、好ましくは、前記過剰活性化変異は、R338Lアミノ酸置換に相当し、より好ましくは、前記凝固因子FIXをコードするトランスジーンは、配列番号25で定義される核酸配列を有し、又は前記トランスジーンは、凝固因子VIII(FVIII)をコードし、好ましくは、前記トランスジーンは、コドン最適化凝固因子FVIIIであり、又は前記凝固因子VIIIは、Bドメインの欠失を有し、好ましくは前記FVIIIのBドメインは、配列番号54で定義されるリンカーで置換され、より好ましくは、前記凝固因子VIIIをコードするトランスジーンは、配列番号26で定義される核酸配列を有し、好ましくは、TTRe核酸及びTTRm核酸の組み合わせは、配列番号28で定義される。
【0125】
本明細書に開示される核酸調節エレメント及び核酸発現カセットは、それ自体で使用され得るか、又は典型的には、それらは、核酸ベクターの一部であり得る。したがって、さらなる態様は、本明細書に記載の核酸調節エレメント又はベクター、特に核酸ベクターにおける本明細書に記載の核酸発現カセットの使用に関する。
【0126】
一態様では、本明細書に開示される核酸調節エレメントを含むベクターを提供する。さらなる実施形態では、前記ベクターは、本明細書に開示される核酸発現カセットを含む。
【0127】
本出願で用いる「ベクター」なる語は、別の核酸分子(挿入核酸分子)、例えばcDNA分子(これに限定されるものではない)が挿入されていることが可能である、核酸分子、例えば、二本鎖DNAを意味する。ベクターは、前記挿入核酸分子を適切な宿主細胞内に運搬するために使用される。ベクターは、前記挿入核酸分子を転写するのを可能にする、場合によっては転写産物をポリペプチドに翻訳するのを可能にする必要な要素を含有しうる。前記挿入核酸分子は宿主細胞に由来することが可能であり、あるいは異なる細胞又は生物に由来することが可能である。ベクターは、宿主細胞内に入ると、宿主染色体DNAからは独立して又はそれと同時に複製されることが可能であり、前記ベクター及びその挿入核酸分子の幾つかのコピーが産生されうる。前記ベクターはエピソーム性ベクター(すなわち、宿主細胞のゲノム内に組込まれないベクター)であり得、あるいは宿主細胞ゲノム内に組込まれるベクターであり得る。したがって、「ベクター」なる語は、標的細胞内への遺伝子導入を促進する遺伝子運搬ビヒクルとしても定義されうる。この定義は非ウイルスベクター及びウイルスベクターの両方を含む。非ウイルスベクターはカチオン脂質、リポソーム、ナノ粒子、PEG、PEI、プラスミドベクター(例えば、pUCベクター、ブルースクリプトベクター(pBS)、及びpBR322又は細菌配列を欠くそれらの誘導体(ミニサークル))、トランスポゾンベースのベクター(例えば、PiggyBac(PB)ベクター又はSleeping Beauty(SB)ベクター)などを包含するが、これらに限定されるものではない。ウイルスベクターはウイルスに由来し、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、肝炎ウイルスベクターなどを包含するが、これらに限定されるものではない。必ずしもそうであるわけではないが典型的には、ウイルスベクターは複製欠損型であり、この場合、複製に必須のウイルス遺伝子が前記ウイルスベクターから除去されているため、前記ベクターは、与えられた細胞における複製能を喪失している。しかし、幾つかのウイルスベクターは、与えられた細胞(例えば、癌細胞)において特異的に複製するよう適合化されることが可能であり、典型的には、(癌)細胞特異的(癌)細胞溶解を誘発するために使用される。ビロソームは、ウイルス要素と非ウイルス要素の両方を含むベクターの非限定的な例であり、特に、リポソームを不活化されたHIV又はインフルエンザウイルスと組み合わせる(Yamada et al., 2003)。別の例は、カチオン性脂質と混合されたウイルスベクターを含む。
【0128】
好ましい実施形態では、前記ベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであり、より好ましくはAAVベクターなどのウイルスベクターである。
【0129】
AAV形質導入における制限的な工程の1つ(すなわち、一本鎖から二本鎖へのAAVの変換)(McCarty, 2001, 2003;Nathwani et al,
2002, 2006, 2011;Wu et al., 2008)を克服するために、AAVベクターは、自己相補的二本鎖AAVベクター(scAAV)として好ましく使用されるが、一本鎖AAVベクター(ssAAV)の使用も本明細書に包含される。
【0130】
例えば、AAV血清型2、AAV血清型5、AAV血清型8、及びAAV血清型9などの、AAVの異なる血清型が単離され、特徴付けられており、全てのAAV血清型が本明細書で企図されている。AAV血清型9(AAV9)は、肝臓での効率的な形質導入を達成するのに理想的である。したがって、特定の実施形態では、ベクターは、AAV9ベクター、より具体的には、自己相補的AAV9ベクター(scAAV9)である。あるいは、Grimm et al. (2008)又はLisowski et al (2014)に記載されるように、分子進化及び選択によって得られるものを含む、肝臓形質導入の有効性に影響を与える改変されたAAVキャプシドを使用することができる。
【0131】
他の実施形態では、前記ベクターは、非ウイルスベクター、好ましくはプラスミド、ミニサークル、又はトランスポゾンベースのベクターである。好ましくは、前記トランスポゾンベースのベクターは、Sleeping Beauty(SB)又はPiggyBac(PB)に由来する。好ましいSBトランスポゾンは、Ivics et al. (1997)に記載され、SB100Xを含むその活性亢進バージョンは、Mates et al. (2009)に記載される。PiggyBacベースのトランスポゾンは、腫瘍形成リスクを高めないという点で安全なベクターである。さらに、これらのベクターを用いた肝指向性遺伝子治療は、トランスジーン、特にベクターに含まれるhFIX又はhFVIIIに対する免疫寛容を誘導することが示された。
【0132】
トランスポゾンベースのベクターは、好ましくは、遺伝子治療のためのトランスポザーゼをコードするベクターと組み合わせて投与される。例えば、PiggyBac由来のトランスポゾンベースのベクターは、野生型PiggyBacトランスポザーゼ(Pbase)又はマウスコドン最適化PiggyBacトランスポザーゼ(mPBase)と共に投与され得る。好ましくは、前記トランスポザーゼは、参照により本明細書に具体的に援用されるYusa et al. (2011)に記載されるように、例えば、7つのアミノ酸置換(I30V、S103P、G165S、M282V、S509G、N538K、N570S)を含む活性亢進PB(hyPB)トランスポザーゼなどの活性亢進トランスポザーゼである。
【0133】
トランスポゾン/トランスポザーゼコンストラクトは、流体力学的注射によって、又は非ウイルス性ナノ粒子を使用して肝細胞をトランスフェクトすることによって送達され得る。
【0134】
さらに他の実施形態では、ベクターはウイルス及び非ウイルス要素を含む。
【0135】
特定の実施形態では、以下のベクターが提供される:AAVsc-HS-CRE1-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号33)、AAVsc-HS-CRE2-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号34)、AAVsc-HS-CRE3-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号35)、AAVsc-HS-CRE4-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号36)、AAVsc-HS-CRE5-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号37)、AAVsc-HS-CRE6-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号38)、AAVsc-HS-CRE7-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号39)、AAVsc-HS-CRE8-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号40)、AAVsc-HS-CRE9-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号41)、AAVsc-HS-CRE10-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号42)、AAVsc-HS-CRE11-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号43)、AAVsc-HS-CRE12-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号44)、AAVsc-HS-CRE13-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号45)、AAVsc-HS-CRE14-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号46)、AAVsc-HS-CRE15-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号47)、AAVsc-HS-CRE16-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号48)、AAVsc-HS-CRE17-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号49)、AAVsc-HS-CRE18-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号50)、AAVsc-HS-CRE19-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号51)、AAVsc-HS-CRE20-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号52)、AAVsc-HS-CRE21-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号53)。
【0136】
したがって、特定の実施形態では、前記ベクターは、配列番号38、36、44、33、37、41、43、45、46、48、又は52に記載の配列、好ましくは配列番号38、36、44、33、37、又は45に記載の配列、より好ましくは配列番号38、36、又は44に記載の配列、さらにより好ましくは配列番号38に記載の配列を有する。
【0137】
さらなる局面において、本発明は、医薬において使用するための、本明細書に記載の核酸調節エレメント、核酸発現カセット、ベクター、又は医薬組成物に関する。
【0138】
より具体的には、本明細書に開示される核酸発現カセット及びベクターは、例えば、肝臓で通常発現及び利用されるタンパク質(すなわち、構造タンパク質)を発現するため、又は肝臓で発現され、次いで体の他の部分に輸送するための血流(すなわち、分泌可能なタンパク質)に排出されるタンパク質を発現するために使用され得る。例えば、本明細書に開示される発現カセット及びベクターは、治療目的、特に遺伝子治療のために、治療量の遺伝子産物(例えば、ポリペプチド、特に治療用タンパク質、又はRNA)を発現するために使用され得る。通常、遺伝子産物は、発現カセット又はベクター内のトランスジーンによってコードされるが、原則として、治療目的で内因性遺伝子の発現を増加させることも可能である。
【0139】
したがって、特定の実施形態では、本明細書に記載の核酸調節エレメント、核酸発現カセット、ベクター、又は医薬組成物は、遺伝子治療、特に肝指向性遺伝子治療で使用するためのものであり得る。
【0140】
遺伝子治療、特に肝指向性遺伝子治療のための薬剤の製造のための、本明細書に記載の核酸調節エレメント、核酸発現カセット、ベクター、又は医薬組成物の使用も本明細書に開示される。
【0141】
標的細胞においてインビトロで、また、特にインビボで、治療用遺伝子産物の発現を達成するよう意図された遺伝子治療プロトコルは、当技術分野において詳細に記載されている。これらには、プラスミドDNA(ネイキッド又はリポソーム内)の筋肉内注射、間質注射、気道内点滴、内皮への適用、肝実質内への投与、及び静脈内又は動脈内投与(例えば、肝動脈内、肝静脈内)が含まれるが、これらに限定されるものではない。標的細胞に対するDNAの利用可能性を向上させるための種々の装置が開発されている。単純なアプローチは、DNAを含有するカテーテル又は移植可能な物質と標的細胞とを物理的に接触させることである。もう1つのアプローチは、高圧下で標的組織内に液体のカラムを噴射する無針ジェット注射装置を使用することである。これらの運搬法は、ウイルスベクターを運搬するためにも用いられうる。標的化遺伝子運搬に対するもう1つのアプローチは、細胞への核酸の特異的標的化のための核酸-又はDNA-結合性物質が結合しているタンパク質又は合成リガンドからなる分子コンジュゲートの使用である(Cristiano
et al., 1993a&b)。
【0142】
特定の実施形態によれば、本明細書に記載の核酸発現カセット及びベクターの使用は、肝臓細胞の遺伝子治療(すなわち、肝指向性遺伝子治療)のために想定されている。さらなる特定の実施形態によれば、調節エレメント、発現カセット、又はベクターの使用は、インビボでの遺伝子治療、特に肝指向性遺伝子治療のためのものである。さらに別の特定の実施形態によれば、前記使用は、血友病を治療するための、特に血友病B又は血友病Aを治療するための遺伝子治療、特に肝指向性遺伝子治療の方法のためのものである。
【0143】
哺乳類肝細胞内への遺伝子導入は、エクスビボ法及びインビボ法の両方を用いて行われている。エクスビボアプローチは、肝臓細胞の回収、長期発現ベクターでのインビトロ形質導入、及び門脈循環内への前記形質導入肝細胞の再導入を要する(Kay et al., 1992;Chowdhury et al., 1991)。インビボ標的化は、肝実質、肝動脈、又は門脈内へのDNA又はウイルスベクターの注入により、及び転写標的化により行われている(Kuriyama et al., 1991;Kistner et al., 1996)。最近の方法は、ネイキッドDNAの門脈内運搬(Budker et al., 1996)及び流体力学的尾静脈トランスフェクション(Liu et al., 1999;Zhang et al., 1999)をも含む。
【0144】
肝臓細胞においてタンパク質を発現するインビボ又はインビトロでの本明細書に開示される核酸調節エレメント、核酸発現カセット、又はベクターの、より具体的には、本明細書に記載の核酸発現カセット又はベクターで肝臓細胞をトランスフェクト又は形質導入することによるインビトロ又はインビボでの使用も本明細書に開示される。もう1つの態様においては、肝臓細胞内でタンパク質を発現させるための方法を提供する。前記方法は、例えば、トランスフェクション又は形質導入によって、本明細書に記載の核酸調節エレメント、核酸発現カセット、又はベクターを肝臓細胞に導入し、肝臓細胞においてトランスジーンタンパク質産物を発現させる工程を含む。これらの方法はインビトロ及びインビボの両方で行われうる。
【0145】
さらなる態様は、トランスジーンの肝特異的遺伝子発現を増強する際に使用するために、本明細書で教示される核酸調節エレメント、核酸発現カセット、又はベクターを提供し、好ましくは、前記使用はインビトロ使用である。さらなる態様は、トランスジーンによってコードされるタンパク質又はポリペプチドの肝特異的発現を増強する際に使用するために、本明細書で教示される核酸調節エレメント、核酸発現カセット、又はベクターを提供し、好ましくは、前記使用はインビトロ使用である。
【0146】
さらなる態様は、本明細書で教示される核酸調節エレメント、核酸発現カセット、又はベクターを使用して、トランスジーンの肝特異的遺伝子発現を増強するための方法を提供する。
【0147】
さらなる態様は、本明細書で教示される核酸調節エレメント、核酸発現カセット、又はベクターを使用して、トランスジーンによってコードされるタンパク質又はポリペプチドの肝特異的発現を増強するための方法を提供する。
【0148】
必要とする対象のための遺伝子治療のインビボ方法も提供される。前記方法は、対象の肝臓に、治療用タンパク質をコードするトランスジーンを含む核酸発現カセットを導入し、肝臓で治療量の治療用タンパク質を発現させる工程を含む。さらなる実施形態によれば、前記方法は、対象の肝臓に、治療用タンパク質をコードするトランスジーンを含む核酸発現カセットを含むベクターを導入し、肝臓で治療量の治療用タンパク質を発現させる工程を含む。
【0149】
肝臓細胞の非ウイルストランスフェクション又はウイルスベクター媒介形質導入はまた、インビトロ又はエクスビボ手順によって実施され得る。インビトロアプローチは、肝臓細胞、例えば、対象から以前に採取された肝臓細胞、誘導された多能性幹細胞又は胚性細胞などから分化した肝臓細胞株又は肝臓細胞のインビトロトランスフェクション又は形質導入を必要とする。エクスビボアプローチは、対象からの肝臓細胞の採取、インビトロトランスフェクション又は形質導入、及び場合により、トランスフェクトされた肝臓細胞の対象への再導入を必要とする。
【0150】
治療用タンパク質を産生するためのインビトロ又はエクスビボの方法も本明細書に開示されており、前記方法は以下を含む:
-本明細書に開示される核酸発現カセット又はベクターを用いた肝臓細胞、好ましくは肝細胞株のトランスフェクション又は形質導入を行うことであって、前記核酸発現カセット又はベクターは、プロモーター、及びトランスジーンに機能的に連結された、本明細書に開示される核酸調節エレメントを含むこと、前記トランスジーンは治療用タンパク質をコードし、
-肝臓細胞でトランスジーンを発現するのに適した条件下で肝臓細胞を培養すること、及び
-肝臓細胞又は培地から治療用タンパク質を採取すること。
【0151】
本明細書に開示される、肝臓細胞、より具体的には肝細胞株においてトランスジーン産物を発現させるためのインビトロでの使用及び方法は、タンパク質補充療法で使用される治療薬(例えば、第VIII因子、第IX因子、第VIIa因子)などの治療用タンパク質の組換え生産に特に適している場合がある。本明細書に開示される核酸調節エレメントの使用は、トランスジーンの肝特異的発現を増強することを可能にし、有利な点として、トランスジーン産物、より具体的には治療用タンパク質の産生の増加をもたらす。
【0152】
本明細書に開示される核酸調節エレメント、核酸発現カセット、及びベクターの使用は、例えば、幹細胞の肝細胞への誘導分化、肝臓でのタンパク質の過剰発現のトランスジェニックモデルなど、遺伝子治療を超えた意味を有することが当業者によって理解される。
【0153】
トランスジーン産物は、ポリペプチド、特に、例えば、第VIII因子、第IX因子、第VII因子又は第VIIa因子、第X因子、α-グルコシダーゼ(分泌性GAA)、フォン・ウィルブランド因子、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)、C1エステラーゼ阻害剤(C1-INH)、リソソーム酵素、リソソーム酵素イズロン酸-2-スルファターゼ(I2S)、エリスロポエチン(EPO)、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン3(IL-3)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン5(IL-5)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン7(IL-7)、インターロイキン8(IL-8)、インターロイキン9(IL-9)、インターロイキン10(IL-10)、インターロイキン11(IL-11)、インターロイキン12(IL-12)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド5(CXCL5)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、幹細胞因子(SCF)、表皮細胞増殖因子(KGF)、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)、腫瘍壊死因子(TNF)、アファミン(AFM)、α1-アンチトリプシン、α-ガラクトシダーゼA、α-L-イズロニダーゼ、ATP7b、オルニチントランスカルバミラーゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、リポタンパク質リパーゼ、アポリポタンパク質、低密度リポタンパク質受容体(LDL-R)、アルブミン、グルコース-6-ホスファターゼ、抗体をコードするトランスジーン、ナノボディ、抗ウイルスドミナントネガティブタンパク質、及びその断片、サブユニット、又は変異体などの特に治療用タンパク質でありうる。あるいは、トランスジーン産物は、siRNAなどのRNAであり得る。
【0154】
本明細書に記載の核酸調節エレメント、核酸発現カセット、ベクター、又は医薬組成物を使用する遺伝子治療から恩恵を受ける可能性のある例示的な疾患及び障害は、肝炎感染、血友病A及びBを含む血友病、ポンペ病などの糖原病(GSD)(例えば、GSD II、GSD III、GSD IVall)、(非アルコール性)脂肪性肝疾患(NAFLD)、リソソーム蓄積症、ハンター症候群、フェニルケトン尿症(PKU)、遺伝性血管性浮腫(HAE)、肝硬変、肝蛭症、アルコール性肝疾患、原発性肝癌(例えば、肝細胞癌及び/又は胆管癌、血管肉腫又は血管肉腫)及び肝転移を含む肝癌、胆汁性肝硬変、硬化性胆管炎、肝臓の小葉中心性壊死、バッド・キアリ症候群、ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、トランスチレチン関連の遺伝性アミロイドーシス、ジルベール症候群、並びに胆道閉鎖症、α1アンチトリプシン欠乏症、アラジール症候群、進行性家族性肝内胆汁うっ滞などの小児肝疾患及び障害などの肝疾患及び肝障害である。
【0155】
「肝蛭症」とは、肝蛭属の肝蛭、主に肝蛭(Fasciola hepatica)によって引き起こされる肝臓の寄生虫感染症を指す。「肝炎」は肝臓の炎症を指し、様々なウイルス(ウイルス性肝炎)によって引き起こされ得るが、一部の肝臓毒素(例えば、アルコール性肝炎)、自己免疫性(自己免疫性肝炎)、又は遺伝性疾患によっても引き起こされる場合がある。「アルコール性肝疾患」とは、本明細書では、脂肪肝疾患、アルコール性肝炎、及び肝硬変を含む、アルコール過剰消費のあらゆる肝臓症状を意味する。「薬物誘発性」又は「毒性」肝疾患などの類似の用語も、本明細書では、様々な薬物及び環境化学物質によって引き起こされる一連の障害を指すために使用される。「脂肪肝疾患」(又は脂肪肝)は、本明細書では、トリグリセリド脂肪の大きな液胞が肝臓細胞に蓄積する可逆的状態を指す。「非アルコール性脂肪性肝疾患」は、他の原因の中でもとりわけ、肥満及びメタボリックシンドロームに関連する一連の疾患を意味する。脂肪肝は炎症性疾患(脂肪性肝炎)を引き起こし、最終的には肝硬変を引き起こし得る。「肝硬変」とは、ウイルス性肝炎、アルコールの過剰摂取、その他の形態の肝毒性など、様々な原因で死亡した肝臓細胞の代わりに線維組織(線維症)が形成されることを意味する。肝硬変は慢性肝不全を引き起こす場合がある。「原発性肝癌」は、最も一般的には「肝細胞癌」及び/又は「胆管癌」として現れ、まれな形態には、肝臓の血管肉腫及び「血管肉腫」が含まれる。多くの肝悪性腫瘍は、消化管又は腎臓、肺、乳房、前立腺などの他の臓器の原発性癌から転移した二次病変である。「原発性胆汁性肝硬変」とは、胆汁毛細血管の重篤な自己免疫疾患を指す。「原発性硬化性胆管炎」とは、自己免疫性であると考えられる胆管の重篤な慢性炎症性疾患を指す。「肝臓の小葉中心性壊死」は、腸管毒素の循環への漏出によって引き起こされる場合がある。例えば、回腸のサルモネラ毒素は、肝細胞に深刻な損傷を与えることが示されている。「バッド・キアリ症候群」は、肝硬変に至る可能性のある肝静脈の閉塞によって引き起こされる臨床像を示す。肝臓に損傷を与える遺伝性疾患には、体内に鉄が蓄積する「ヘモクロマトーシス」や、体内に銅が保持される「ウィルソン病」などがある。肝硬変は、「α1-アンチトリプシン欠乏症」及び「糖原病II型」の臨床的特徴でもある。「トランスチレチン関連の遺伝性アミロイドーシス」では、肝臓は、重度の神経変性及び/又は心臓病の影響を有する変異トランスチレチンタンパク質を産生する。「ジルベール症候群」とは、軽度の黄疸を引き起こす可能性のあるビリルビン代謝の遺伝的障害を指す。
【0156】
非常に特定の実施形態においては、前記核酸発現カセット又はベクター内のトランスジーンによりコードされる治療用タンパク質は第IX因子であり、前記方法は、血友病Bの治療方法である。遺伝子治療により肝臓内で第IX因子を発現させることにより、血友病Bが治療されうる(Snyder et al., 1999)。非常に特定の実施形態においては、前記核酸発現カセット又はベクター中のトランスジーンによってコードされる治療用タンパク質は第VIII因子であり、この方法は血友病Aを治療するための方法である。
【0157】
別段の記載がない限り、「対象」又は「患者」という用語は互換的に使用され、動物、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳動物を指し、具体的には、ヒト患者及び、例えばマウスなど、非ヒト哺乳動物を含む。好ましい患者又は対象は、ヒト対象である。
【0158】
本明細書で使用される場合、「治療する」又は「治療」という用語は、治療的処置及び予防のための又は予防的措置の両方を指し、その目的は、例えば癌などの増殖性疾患の発生又は拡大などの望ましくない生理学的変化又は障害を予防又は低減(軽減)することである。有益な又は望ましい臨床結果には、検出可能又は検出不可能を問わず、症状の緩和、疾患の程度の減少、疾患の安定した(すなわち、悪化しない)状態、疾患の進行の遅延又は低減、病状の改善又は緩和、及び寛解(部分的又は全体的)が含まれるが、これらに限定されない。「治療」はまた、治療を受けていない場合に予想される生存率と比較して生存率を延長することを意味し得る。
【0159】
本明細書で使用される場合、「治療を必要とする対象」などの句は、血友病B又は血友病Aなどの所与の状態の治療から恩恵を受けるであろう哺乳動物対象などの対象を含む。そのような対象は、典型的には、これらに限定されないが、その状態と診断された対象、前記状態を有する又は発症する傾向がある対象、及び/又はその状態が予防されるべき対象を含む。
【0160】
「治療有効量」という用語は、対象の所与の状態を治療するのに、すなわち、所望の局所的又は全身的効果及び成績を得るのに有効な化合物又は医薬組成物の量を指す。したがって、この用語は、研究者、獣医、医師、又は他の臨床医によって求められている組織、系、動物、又はヒトにおいて生物学的又は医学的応答を誘発する化合物又は医薬組成物の量を指し、これには、治療中の疾患又は障害の症状の緩和を含む。特に、これらの用語は、血友病などの所与の状態に関連する臨床的障害、症状、又は合併症を予防、治癒、改善、又は少なくとも最小化するために必要な本発明による化合物又は医薬組成物の量を指す。トランスジーンによってコードされる治療用タンパク質が第IX因子又は第VIII因子である場合、単回又は複数回投与である。
【0161】
特定の実施形態では、トランスジーンによってコードされる治療用タンパク質が第IX因子である場合、この用語は、血漿中の第IX因子のレベルが、生理学的活性の少なくとも約1%の治療濃度以上であることを意味する。すなわち、対象において、10mU/mL(血漿1ミリリットルあたりのミリ単位)、生理学的活性の少なくとも5%又は50mU/mL(血漿)、生理学的活性の少なくとも10%又は100mU/mL(血漿)、生理学的活性の少なくとも15%又は150mU/mL、生理学的活性の少なくとも20%又は200mU/mL(血漿)、生理学的活性の少なくとも25%又は250mU/mL、生理学的活性の少なくとも30%又は300mU/mL、生理学的活性の少なくとも35%又は350mU/mL、生理学的活性の少なくとも40%又は400mU/mL、生理学的活性の少なくとも45%又は400mU/mL、生理学的活性の少なくとも45%又は450mU/mL、生理学的活性の少なくとも50%又は500mU/mL、生理学的活性の少なくとも65%又は650mU/mL、生理学的活性の少なくとも70%又は700mU/mL、生理学的活性の少なくとも75%又は750mU/mL、生理学的活性の少なくとも80%又は800mU/mL、生理学的活性の少なくとも85%又は850mU/mL、生理学的活性の少なくとも95%又は950mU/mL、又は生理学的活性の少なくとも100%又は1000mU/mLが、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つによるベクターの対象への形質導入又はトランスフェクションによって得られる。本発明の核酸発現カセット及びベクターの非常に高い効率のために、対象におけるこの高い治療レベルの第IX因子は、比較的低用量のベクターを投与することによってさえも得ることができる。
【0162】
別の特定の実施形態では、トランスジーンによってコードされる治療用タンパク質が第VIII因子である場合、この用語は、本明細書に開示されるベクターのいずれかの対象への形質導入又はトランスフェクションによって、血漿中の第VIII因子のレベルが治療濃度の10mU/mL(血漿1ミリリットルあたりのミリ単位)以上、50mU/mL
(血漿)以上、100mU/mL(血漿)以上、150mU/mL(血漿)以上、200mU/mL(血漿)以上、250mU/mL(血漿)以上、300 mU/mL(血漿)以上、350mU/mL(血漿)以上、400mU/mL(血漿)以上、450mU/mL(血漿)以上、500mU/mL(血漿)以上、550mU/mL(血漿)以上、600mU/mL(血漿)以上、650mU/mL(血漿)以上、750mU/mL(血漿)以上、800mU/mL(血漿)以上、850mU/mL(血漿)以上、900mU/mL(血漿)以上、950mU/mL(血漿)以上となり得ることを意味する。本明細書に開示されるベクター及び核酸発現カセットの非常に高い効率のために、対象におけるこれらの高い治療レベルの第VIII因子は、比較的低用量のベクターを投与することによってさえも得ることができる。
【0163】
特定の実施形態では、トランスジーンが第IX因子又は第VIII因子をコードする場合、本明細書で定義される実施形態のいずれか1つによるベクターの対象への形質導入を、6×1013vg/kg(キログラムあたりのウイルスゲノム)未満の用量で行って、対象における100mU/mL(血漿)以上の治療第IX因子レベルが得られる。例えば、対象において300mU/mL(血漿)以上の第IX因子のレベルは、5×1011vg/kgより低い用量で達成され得る。血友病治療の場合、治療の有効性は、例えば、対象の血友病に起因する出血を評価することによって測定され得る。インビトロ活性化部分トロンボプラスチン時間アッセイ(APPT)、試験第IX因子発色活性アッセイ、血液凝固時間、第IX因子又はヒト第VIII因子特異的ELISAなどのインビトロ試験も利用可能であるが、これらに限定されない。もちろん、当技術分野で公知の治療の有効性を評価するための他の任意の試験を使用することができる。
【0164】
本発明の核酸発現カセット、ベクター、又は医薬組成物は、単独で、又は組換え若しくは精製された凝固因子の投与などの公知の血友病治療のいずれかと組み合わせて使用してもよい。したがって、本発明の核酸発現カセット、ベクター、又は医薬組成物は、単独で、あるいは1又は複数の活性化合物と組み合わせて投与してもよい。後者は、前記薬剤の投与の前、後、又は同時に投与可能である。
【0165】
本発明のさらなる目的は、治療有効量の本明細書で定義される核酸発現カセット又は発現ベクター、及び薬学的に許容される担体、すなわち1又は複数の薬学的に許容される担体物質及び/又は添加剤、例えば、緩衝液、担体、賦形剤、安定剤などを含む医薬調製物である。前記医薬組成物は、キットの形態で提供され得る。本明細書で使用される「薬学的に許容される」という用語は、当技術分野と一致し、医薬組成物の他の成分と適合性があり、そのレシピエントに有害ではないことを意味する。本明細書で使用される「薬学的に許容される塩」という用語は、塩酸塩、硫酸塩、及びリン酸塩などの無機酸付加塩、又は酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、及びクエン酸塩などの有機酸付加塩を意味する。薬学的に許容される金属塩の例は、ナトリウム塩及びカリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩及びカルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、及び亜鉛塩である。薬学的に許容されるアンモニウム塩の例は、アンモニウム塩及びテトラメチルアンモニウム塩である。薬学的に許容される有機アミン付加塩の例は、モルホリン及びピペリジンとの塩である。薬学的に許容されるアミノ酸付加塩の例は、リジン、グリシン、及びフェニルアラニンとの塩である。本発明による医薬組成物は、例えば、丸薬、錠剤、ラッカー錠、糖衣錠剤、顆粒、硬質及び軟質ゼラチンカプセル、水溶液、アルコール又は油性溶液、シロップ、乳濁液又は懸濁液の形態で経口投与してもよく、又は例えば坐剤の形態で直腸投与してもよい。投与はまた、非経口的に、例えば、皮下、筋肉内、又は静脈内に、注射又は注入用の溶液の形で実施してもよい。他の適切な投与形態は、例えば、例えば、軟膏、チンキ剤、スプレー又は経皮治療システムの形態での経皮的又は局所的投与であり、点鼻薬又はエアロゾル混合物の形態での吸入投与であり、又は例えばマイクロカプセル、インプラント、若しくはロッドである。前記医薬組成物は、当業者にそれ自体公知の方法で調製され得る。この目的のために、本明細書で定義される核酸発現カセット又は発現ベクター、1又は複数の固体若しくは液体の薬学的に許容される賦形剤、及び所望により、他の医薬活性化合物と組み合わせて、ヒト医学又は獣医学における医薬品として使用することができる適切な投与形態又は剤形とする。
【0166】
別の態様によれば、治療用タンパク質をコードするトランスジーンを含む核酸発現カセット、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。別の実施形態によれば、前記医薬組成物は、治療用タンパク質をコードするトランスジーンを含む核酸発現カセットを含むベクター、及び薬学的に許容される担体を含む。さらに特定の実施形態によれば、前記トランスジーンは第IX因子をコードし、前記医薬組成物は血友病Bを治療するためのものであり、又は前記トランスジーンは第VIII因子をコードし、前記医薬組成物は血友病Aを治療するためのものである。
【0167】
血友病、好ましくは血友病B又は血友病Aの治療に使用するためのこれらの医薬組成物の製造のための、本明細書に開示される核酸発現カセット、その調節エレメント、及びベクター成分の使用も想定される。
【0168】
別の例では、本明細書に開示される発現カセット及びベクターを使用して、ワクチン接種の目的で免疫学的量の遺伝子産物(ポリペプチド、特に免疫原性タンパク質、又はRNAなど)を発現させてもよい。
【0169】
実施形態では、前記医薬組成物はワクチンであり得る。前記ワクチンは、免疫応答を増強するための1又は複数のアジュバントをさらに含み得る。適切なアジュバントとしては、例えば、サポニン、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、リゾレシチンなどの界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油性又は炭化水素乳濁液、カルメット・ゲラン桿菌(bacilli Calmette-Guerin、BCG)、コリネバクテリウム ・バルバム(Corynebacterium parvum)、及び合成アジュバントQS-21が挙げられるが、これらに限定されない。場合により、ワクチンは、1又は複数の免疫刺激分子をさらに含み得る。免疫刺激分子の非限定的な例には、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-12、IL-13)、成長因子(例えば、顆粒球-マクロファージ(GM)-コロニー刺激因子(CSF))などの免疫刺激、免疫増強、及び炎症誘発性活性を有する様々なサイトカイン、リンホカイン、及びケモカイン、並びにマクロファージ炎症性因子、Flt3リガンド、B7.1、B7.2などの他の免疫刺激分子が含まれる。
【0170】
実施形態において、本明細書に記載の核酸調節エレメント、核酸発現カセット、ベクター、又は医薬組成物は、ワクチンとして使用するためのものであり得、より具体的には予防ワクチンとして使用するためのものであり得る。
【0171】
ワクチンの製造、特に予防ワクチンの製造のための、本明細書に記載の核酸調節エレメント、核酸発現カセット、ベクター、又は医薬組成物の使用も本明細書に開示される。
【0172】
また、本明細書に開示されるのは、前記ワクチン接種を必要とする対象のワクチン接種、特に予防的ワクチン接種の方法であり、前記方法は、
-前記対象において、特に前記対象の肝臓において、本明細書に記載の核酸発現カセット、ベクター、又は医薬組成物を導入することであって、前記核酸発現カセット、ベクター、又は医薬組成物は、プロモーター及びトランスジーンに機能的に連結された、本明細書に記載の核酸調節エレメントを含むこと、及び
-前記対象、特に前記対象の肝臓において、免疫学的に有効な量のトランスジーン産物を発現させること、を含む。
【0173】
本明細書で使用される「免疫学的に有効な量」は、遺伝子(トランスジーン)によってコードされる免疫原へのその後の曝露に対する対象の免疫応答を増強するのに有効な遺伝子(トランスジーン)産物の量を指す。誘発された免疫のレベルは、例えば、中和分泌抗体及び/又は血清抗体の量を測定することにより、例えば、プラーク中和、補体結合、酵素結合免疫吸着剤、又は微小中和アッセイによって決定され得る。
【0174】
典型的には、本明細書で教示される発現カセット又はベクターを使用する場合に発現される遺伝子(トランスジーン)産物の量(すなわち、配列番号6、配列番号4、配列番号12、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、及び配列番号21からなる群から選択される配列、本明細書の他の場所に記載される前記配列のいずれかに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、又はその機能性断片を含む、少なくとも1つの肝特異的核酸調節エレメントを含める)は、同一の発現カセット又はベクターが使用されるが、本明細書で教示される少なくとも1つの肝特異的核酸調節エレメント(例えば、TTRe及び/又はSerpを含む)を含まない場合よりも高い。より具体的には、前記発現は、本明細書で教示される少なくとも1つの肝特異的核酸調節エレメントを含まないが3×Serpを含む同じ核酸発現カセット又はベクターによって得られる発現の約1.1倍~約1.5倍であるか、本明細書で教示される少なくとも1つの肝特異的核酸調節エレメント(例えば、TTRe及び/又はSerpを含む)を含まない同じ核酸発現カセット又はベクターによって得られる発現の約2倍~約6倍である。さらに、より高い発現は肝臓に特異的なままである。さらに、本明細書に記載の発現カセット及びベクターは、治療量の遺伝子産物の発現を長期間指示する。典型的には、治療的発現は、少なくとも20日、少なくとも50日、少なくとも100日、少なくとも200日、場合によっては300日以上続くことが想定されている。遺伝子産物(例えば、ポリペプチド)の発現は、例えば、遺伝子産物の治療的発現が達成されるかどうかを評価するために、任意の当技術分野で認められた手段、例えば、ウエスタンブロット又はELISAアッセイなどの抗体ベースのアッセイによって測定され得る。遺伝子産物の発現はまた、遺伝子産物の酵素的又は生物学的活性を検出するバイオアッセイで測定され得る。
【0175】
本明細書においては本発明の方法及び用途に関する特定の実施形態、特定の構成及び配置並びに材料が記載されているが、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく形態及び詳細における種々の変更又は修飾が施されうると理解されるべきである。
【0176】
以下の実施例は、特定の実施形態を更に例示するために記載されており、それらは本出願を限定するものとみなされるべきではない。本出願は特許請求の範囲のみにより限定される。
【実施例】
【0177】
実施例1:肝特異的調節エレメントの特定
材料及び方法
本明細書で核酸調節エレメントとして定義される、高度に発現された肝特異的遺伝子に関連する進化的に保存された転写因子結合部位(TFBS)モチーフを同定するための計算アプローチ。これには、下記のいくつかの連続した計算工程を要した:(1)正常なヒト組織で得られたRNAseq(RNAシーケンシング)発現データに基づいて高度に発現する肝特異的遺伝子を同定した;肝臓で発現される上位の遺伝子のRNAseqに基づくmRNA発現レベルは以下のとおりである(任意単位):ALB(46017,49)、APOA2(21859,94)、TTR(9551,38)、APOC1(9505,84)、APOA1(9277,21)、RBP4(8322,91)、APOC3(8105,76)、CYP2E1(5932,55)、ORM1(5860,23);(2)公的に利用可能なデータベースを使用して、対応するプロモーター配列を抽出した;(3)転写因子結合部位(TFBS)モチーフのクラスターを特定するために計算アプローチを採用した;(4)高度に発現された遺伝子のゲノムコンテクスト(genomic context)は、TFBSの進化的に保存されたクラスター(すなわち、CRE)についてスクリーニングした。
【0178】
結果
RNA配列(RNAseq)解析により、高度に発現された肝細胞特異的遺伝子の包括的なリストが得られた。これらの発現データに基づいて、これらの高度に発現された遺伝子のプロモーターを、21の肝特異的シス調節配列(配列番号1~21)及び表1の同定につながる前述の計算アプローチに供した。
【0179】
【0180】
実施例2:流体力学的プラスミドトランスフェクションによる同定した肝細胞特異的シス調節エレメント(CRE)のインビボ検証
材料及び方法
AAVプラスミドコンストラクトの生成(pAAV-HS-CRE-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA)
実施例1で同定した肝細胞特異的(HS)シス調節エレメント(CRE)HS-CRE1、HS-CRE2、HS-CRE3、HS-CRE4、HS-CRE5、HS-CRE6、HS-CRE7、HS-CRE8、HS-CRE9、HS-CRE10、HS-CRE11、HS-CRE12、HS-CRE13、HS-CRE14、HS-CRE15、HS-CRE16、HS-CRE17、HS-CRE18、HS-CRE19、HS-CRE20、及びHS-CRE21を、従来のオリゴヌクレオチド合成によって合成し、AAVsc-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyAコンストラクトにクローニングした(それぞれ、配列番号33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、及び53)。このコンストラクトは、自己相補的アデノ随伴ウイルスベクター(scAAV)デザインに基づいており、コドン最適化された高活性ヒト第IX因子Padua(R338L)(配列番号25)cDNAの発現を駆動するTTRエンハンサー(TTRe又はTTRenh)(配列番号24)に結合した最小のトランスチレチンプロモーター(TTRm)(配列番号27)を含んでいた。異なるHS-CREは、TTRm/TTReプロモーター/エンハンサーの上流にクローン化された。前記コンストラクトはまた、マウス微小ウイルス(MVM)(配列番号29)からのイントロン及びウシ成長ホルモンポリアデニル化部位(bghpolyA)(配列番号30)を含んでいた。
【0181】
pAAVsc-3xSERP-TTRe-TTRm-MVM-FIXcoPadua-bghpA(配列番号32)と表される、以前に同定されたセルピン(SERP)シス調節エレメントを含む追加のプラスミドコンストラクト(3連)(配列番号22) (Nair et al., Blood, 2014;Chuah et al.;Mol Ther, 2014に記載のHS-CRM8に相当する)を、比較のために含めた(参照により本明細書に具体的に援用される国際公開第2009/130208号及び国際公開第2016/146757号)。様々なコンストラクトを
図1に概略的に示す。
【0182】
流体力学的遺伝子運搬
AAVプラスミドコンストラクトAAVsc-HS-CRE-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(実施例1で同定した以下のHS-CREを含む: HS-CRE1、HS-CRE2、HS-CRE3、HS-CRE4、HS-CRE5、HS-CRE6、HS-CRE7、HS-CRE8、HS-CRE9、HS-CRE10、HS-CRE11、HS-CRE12、HS-CRE13、HS-CRE14、HS-CRE15、HS-CRE16、HS-CRE17、HS-CRE18、HS-CRE19、HS-CRE20、又はHS-CRE21)を、成体C57BL/6マウス(18~19g)に、マウス1匹あたり750ngの用量で、総量2mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)によって尾静脈を介して流体力学的に注射した。TTRenh-TTRm上流のいかなるHS-CRE要素も有さないAAVsc-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyAプラスミド(配列番号31)を参照コンストラクトとして用いて、FIX発現レベルにおける異なるシス調節エレメントの影響を評価した。流体力学的注射の2日後、眼窩後神経叢の瀉血により、全てのマウスの血液を緩衝クエン酸塩中に採取した。クエン酸血漿中のhFIX抗原の濃度は、製造元のプロトコル(Diagnostica Stago社、フランス)に基づく酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)によって測定した。各コホートには、ベクターあたり3匹のマウスが含まれた。
【0183】
結果
実施例1で同定したシス調節エレメントのインビボ発現における効果を、TTRenh/TTRminの上流に異なるCREをクローニングしたトランスチレチンエンハンサー(TTRenh/TTRmin)を組み合わせた強力な肝特異的最小トランスチレチンプロモーターで構成されるキメラプロモーターからヒト凝固因子IX(hFIX)を発現するプラスミドコンストラクトを注射したマウスにおけるFIXタンパク質レベルを測定することにより評価した。FIX発現をトランスフェクションの1日後又は2日後に評価したところ、いくつかの新しいHS-CREによるFIXの有意な増加を示していた。とりわけ、特定したシス調節エレメントの約52%(21のHS-CREのうち11)は、シス調節エレメント(すなわち、AAVsc-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA(配列番号31))を含まない対照プラスミドコンストラクトと比較して、トランスフェクション後2日目に(
図2)hFIX発現の有意な増加を誘導した。新たに同定した調節エレメントを、ベクターに三重反復配列として存在するセルピンエンハンサー(国際公開第2009/130208号)(すなわち、pAAVsc-3xSERP-TTRe-TTRm-MVM-FIXcoPadua-bghpA(配列番号32))として表される、以前に同定された肝特異的調節エレメントとさらに比較した。本発明者らは、SERP要素を三重反復すると目的の遺伝子(例えば、FIX)の発現が増加することを以前に示した。予想外なことに、新しいCREのうち3つ、つまりHS-CRE4、HS-CRE6、及びHS-CRE12が、他の全てのCRE(SERP3Xを含む)よりも優れていることを見出した。特に、HS-CRE4、HS-CRE6、及びHS-CRE12は、AAVベクターに三重反復SERPを組み込むことによって達成できるものと同等又はそれ以上のFIXレベルを発現した。トランスジーンの発現レベルに対するSERP要素の増殖の公知の効果を考慮すると、予想外にも、HS-CRE4(ApoA2、配列番号4)、HS-CRE6(ApoC1、配列番号6)、及びHS-CRE12(RBP4、配列番号12)は、トランスジーンの発現レベルを高める点で単一のSERP要素よりも有意に優れていたことを示している。SERPを含む全てのCREと比較して、HS-CRE6が最も強力なHS-CREであった。
【0184】
実施例3:AAVウイルスベクター形質導入による同定した肝細胞特異的シス調節エレメント(CRE)のインビボ検証
流体力学的(すなわち、非ウイルス性)プラスミドトランスフェクションによって得られたインビボの結果を確認し、ウイルスベクターも含めて本発明の範囲を広げるために、非ウイルス性のセミハイスループットインビボスクリーニング及び検証に基づいて、実施例2で同定された最も強力なCRE(すなわち、HS-CRE4及びHS-CRE6)を含むAAV血清型9(AAV9と表す)ベクター粒子を生成した。対応するAAV9ベクターは、自己相補的(sc)構成に基づき、AAV9sc-HS-CRE4-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA及びAAV9sc-HS-CRE6-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyAと表す。対照として、いずれのCREも含まないAAV9ベクター(AAV9sc-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyAと表す)又は参照としてSERP要素の三重反復を含むAAV9ベクター(AAV9sc-3XSERP-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyAと表す)を産生した。
【0185】
ベクターの産生、精製、及び滴定
前述のAAV血清型9ベクター、すなわち、AAV9sc-HS-CRE4-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA及びAAV9sc-HS-CRE6-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA、AAV9sc-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua
-bghpolyA、AAV9sc-3XSERP-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA、前述のようにリン酸カルシウム(Thermo Fisher Scientific社、米国マサチューセッツ州ウォルサム)を使用してAAV-293細胞を、AAVプラスミド、キメラパッケージングコンストラクト、及びアデノウイルスヘルパープラスミドとコトランスフェクトすることにより産生した。(VandenDriessche T, Thorrez L, Acosta-Sanchez A, et al. Efficacy and safety of
adeno-associated viral vectors based on
serotype 8 and 9 vs. lentiviral vectors
for hemophilia B gene therapy. J Thromb
Haemost. 2007;5(1):16-24)。トランスフェクション後2日目に、細胞を回収し、連続的な凍結/解凍サイクルと超音波処理によって溶解した後、ベンゾナーゼ(Novagen社、米国ウィスコンシン州マディソン)及びデオキシコール酸(Sigma Aldrich社(MERCK社)、米国ミズーリ州セントルイス)による処理並びに3ラウンドの塩化セシウム(Thermo Fisher Scientific社、米国マサチューセッツ州ウォルサム)密度勾配超遠心分離を行った。AAV粒子を含む画分を収集し、1mMのMgCl2を含むダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D-PBS)(Gibco、IRL)で透析した。
【0186】
ベクター力価を決定するために、SYBR(登録商標)Green(Thermo Fisher Scientific社、米国マサチューセッツ州ウォルサム)及びFIX遺伝子のプライマーを使用した定量的リアルタイムPCR(ABI Prism 7900HT、Applied Biosystems社、米国カリフォルニア州フォスターシティ)を用いた。フォワードプライマー配列は、5’-CACGAGAACGCCAACAAGAT-3’(配列番号55)、リバースプライマー配列は、5’-CACTTCTCCTCCATGCACTC-3’(配列番号56)であった。対応するベクタープラスミドの公知のコピー数を使用して標準曲線を作成した。
【0187】
AAV9ベクターの注射
AAV9sc-HS-CRE4-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyAベクター、AAV9sc-HS-CRE6-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyAベクター、AAV9sc-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyAベクター、及びAAV9sc-3XSERP-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyベクターを、1×10
9vg/マウス(
図3A)及び5×10
9vg/マウス(
図3B)の用量でC57BL/6マウス(4~5週齢)の尾静脈に注射した。各コホートはマウス3匹からなる。注射後のいくつかの時点で血液を収集し、血漿をELISAによってFIXタンパク質レベルについて分析した。
【0188】
5×109vgのAAV9sc-HS-CRE4-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyA又はAAV9sc-HS-CRE6-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyAを注射したマウスでは、いずれのHS-CREも有さないAAV9sc-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyAベクターを注射した対照マウスよりも有意に高いFIXレベルとなった。これは、HS-CRE4要素及びHS-CRE6要素では、少なくとも3カ月間比較的に安定したFIXレベルの有意な5~6倍の増加となることを示している。同様に、低い用量(すなわち、109vg)のAAV9sc-HS-CRE4-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyAベクター又はAAV9sc-HS-CRE6-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyAベクターを注射したマウスでは、いずれのHS-C
REも有さないAAV9sc-TTRenh-TTRm-MVM-hFIXcoPadua-bghpolyAを注射した対照マウスよりも有意に高いFIXレベルとなった。試験した全てのベクターの109vgと比較して、5×109vgの注射後のより高い安定したFIXレベルと一致して、用量反応は明らかであった。
【0189】
新たに同定した調節エレメントを、ベクターに三重反復として存在するセルピンエンハンサー(国際公開第2009/130208号)(すなわち、AAV9sc-3xSERP-TTRe-TTRm-MVM-FIXcoPadua-bghpA(配列番号)として表す以前に同定された肝特異的調節エレメントとさらに比較した。本発明者らは、SERP要素を三重反復すると目的の遺伝子(例えば、FIX)の発現が増加することを以前に示した。実施例2に示す流体力学的トランスフェクションデータと一致して、HS-CRE4、HS-CRE4、及びHS-CRE6は、AAVベクターに三重反復SERPを組み込むことによって達成できるものと同等又はそれ以上のFIXレベルを発現したことを見出した。トランスジーンの発現レベルに対するSERP要素の増殖の公知の効果を考慮すると、HS-CRE4(ApoA2、配列番号4)及びHS-CRE6(ApoC1、配列番号6)は、トランスジーンの発現レベルを高める点で単一のSERP要素よりも優れていたことを改めて示している。AAV9ベースの肝臓形質導入の観点において、SERPを含む全てのCREと比較して、HS-CRE6が最も強力なHS-CREであった。
【0190】
本発明者らは、実験的研究を通じて、どの転写因子がHS-CRE1~21に結合するかを試験した。
【0191】
実験的研究により、以下であることがわかった:(1)HS-CRE6、HS-CRE4、及びHS-CRE12(HS-CREであり、タンパク質レベルの肝特異的増加が最も高くなる)は全て、SP1、EP300、HNF 4G、CEBPB、P300、HDAC2、JUND、FOSL2、ZBTB7A、CEBPD、及びRXRAの転写因子結合部位を有する;(2)HS-CRE1、HS-CRE5、及びHS-CRE13(HS-CREであり、タンパク質レベルの中度~高度の肝特異的増加を示す)は全て、SP1、EP300、POLR2A、MYBL2、FOXA1、FOXA2、ARID3A、POLR2A、及びHEY1の転写因子結合部位を有する;及び(3)HS-CRE9、HS-CRE11、HS-CRE14、HS-CRE16、及びHS-CRE20(HS-CREであり、タンパク質レベルの最も低い肝特異的増加を示す)は全て、SP1、EP300、HNF 4G、CEBPB、P300、及びHNF 4Aの転写因子結合部位を有する。したがって、HS-CRE6、HS-CRE4、HS-CRE12、HS-CRE1、HS-CRE5、HS-CRE13、HS-CRE9、HS-CRE11、HS-CRE14、HS-CRE16、及びHS-CRE20は全て、SP1及びEP300の転写因子結合部位を有する。
【0192】
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