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特許7529287ダイヤフラムバルブ、流量制御装置、流体制御装置、及び半導体製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ダイヤフラムバルブ、流量制御装置、流体制御装置、及び半導体製造装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 7/12 20060101AFI20240730BHJP
   F16K 31/02 20060101ALI20240730BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
F16K7/12 Z
F16K31/02 A
C23C16/455
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021567162
(86)(22)【出願日】2020-12-07
(86)【国際出願番号】 JP2020045391
(87)【国際公開番号】W WO2021131631
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-11-06
(31)【優先権主張番号】P 2019238214
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】110002893
【氏名又は名称】弁理士法人KEN知財総合事務所
(72)【発明者】
【氏名】執行 耕平
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 隆
【審査官】西山 智宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-44321(JP,A)
【文献】特開平11-173440(JP,A)
【文献】特開2003-120461(JP,A)
【文献】特開2017-57911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 7/12
F16K 31/02
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流路を有し、上面に弁室が凹設されたバルブボディと、前記弁室に配置され、弾性変形により前記流路の開閉及び開度の調節が可能なダイヤフラムと、前記ダイヤフラムを押圧して弾性変形させるステムと、該ステムを駆動するアクチュエータと、前記バルブボディに固定されて前記ステムと前記アクチュエータとを支持する支持機構と、を有するダイヤフラムバルブであって、
前記ステムと前記アクチュエータは、前記バルブボディの上面からこの順に、該上面に対して垂直方向に縦列に配置され、
前記アクチュエータは、下端部が前記支持機構の部材に当接して位置決めされて、上端部の垂直方向位置が変位するように構成され、
前記アクチュエータの上端部と前記ステムとは、前記アクチュエータを迂回して伸びる変位伝達部材によって接続されたダイヤフラムバルブにおいて、
前記ステムは、前記変位伝達部材に接続された第1のステム部材と、
前記支持機構によりスリーブを介して軸方向に変位可能に保持され、上端部が前記第1のステム部材の下端部に当接し、該第1のステム部材に駆動されて前記ダイヤフラムを押圧する第2のステム部材と、
からなることを特徴とする、ダイヤフラムバルブ。
【請求項2】
前記スリーブは、金属製で内周側に樹脂層が形成されているものである、請求項1に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項3】
前記樹脂層は、ポリアセタール、超高分子量ポリエチレン、フッ素樹脂、フェノール樹脂のいずれかで形成されたものである、請求項2に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項4】
前記第2のステム部材の上端部は、前記第1のステム部材の下端部に点接触している、請求項1に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項5】
前記アクチュエータは、電圧印加により長さが伸長する圧電アクチュエータである、請求項1に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のダイヤフラムバルブを用いた、流量制御装置。
【請求項7】
複数の流体機器が配列された流体制御装置であって、
前記複数の流体機器は、請求項1~5のいずれかに記載のダイヤフラムバルブ又は請求項6に記載の流量制御装置を含む、流体制御装置。
【請求項8】
密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの制御に請求項1~5のいずれかに記載のダイヤフラムバルブ又は請求項6に記載の流量制御装置を用いる、半導体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラムバルブ、流量制御装置、流体制御装置、及び半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセス等に用いられるプロセスガスの流量制御には、質量流量制御装置(マスフローコントローラ)が広く用いられている。この質量流量制御装置は、例えば圧力式の質量流量制御装置の場合、流路に設けられたオリフィスの前後の圧力に基づいて質量流量を測定し、この質量流量が目標値になるように制御バルブで調節している。このような制御バルブとして、ダイヤフラムバルブが広く用いられている。
【0003】
ダイヤフラムバルブは、金属の薄板等からなるダイヤフラムを、駆動部により押圧して弾性変形させ、流路の開閉及び開度の調節を行う構造になっている。この駆動部は、例えば、図6(特許文献1の図4)に示すように、ダイヤフラム(図1の符号17)を押圧するステム8と、これを駆動する圧電アクチュエータ(ピエゾアクチュエータ)2を含む。電圧印加時には、圧電アクチュエータ2は伸長するように構成されているので、ステム8は、変位伝達機構(4,7,6,5,5b)を介して、圧電アクチュエータ2によりバルブを開く方向に駆動される。一方、圧電アクチュエータ2の電圧非印加時には、ステム8は皿ばね9aによりダイヤフラムバルブを閉じる方向に付勢されており、これにより、ノーマルクローズ動作を実現する。ステム8は、Oリング14を介してボンネット10の貫通孔10bによりガイドされている(特許文献1)。
【0004】
このOリング14は、ニトリルゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、クロロプレンゴム等のゴムで形成され、柔軟性を有する。圧電アクチュエータ2に駆動されたステム8の動作ストロークは数10μmと小さいので、摺動よりもOリング14の弾性変形によりステム8の軸方向変位を許容していると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開番号WO2017/033423A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記機構では、Oリングのガイドとしての接触面積が小さいため、保持力が十分とは言えず、ステムの軸ブレが起こる場合があった。その結果、ダイヤフラムにおけるステムの当接箇所が偏心すると、応力が高くなって、ダイヤフラムの寿命を縮める恐れがあった。特に、流量制御装置の小型化に伴って、ダイヤフラムが小型化されると、ステムの僅かな軸ブレでもダイヤフラムにとって相対的に大きな偏心になるので、より厳しい軸ブレの抑制が求められるようになった。
そこで、このOリングをガイドとしての保持力の高い金属製のスリーブに置き替えて、軸ブレを低減することも考えられる。しかし、このスリーブはボンネット10の範囲内に配置されるため軸方向長さが短く、ステムに結合された長い上記変位伝達機構(4,7,6,5,5b)に外力が掛かると、スリーブに過大な反力が掛かって損傷しやすく(カジリやすく)、その結果、バルブの開度調整に支障をきたすという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、上記課題を解決し、ステムの軸ブレを低減したダイヤフラムバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のダイヤフラムバルブは、内部に流路を有し、上面に弁室が凹設されたバルブボディと、前記弁室に配置され、弾性変形により前記流路の開閉及び開度の調節が可能なダイヤフラムと、前記ダイヤフラムを押圧して弾性変形させるステムと、該ステムを駆動するアクチュエータと、前記バルブボディに固定されて前記ステムと前記アクチュエータとを支持する支持機構と、を有するダイヤフラムバルブであって、
前記ステムと前記アクチュエータは、前記バルブボディの上面からこの順に、該上面に対して垂直方向に縦列に配置され、
前記アクチュエータは、下端部が前記支持機構の部材に当接して位置決めされて、上端部の垂直方向位置が変位するように構成され、
前記アクチュエータの上端部と前記ステムとは、前記アクチュエータを迂回して伸びる変位伝達部材によって接続された、ダイヤフラムバルブにおいて、
前記ステムは、前記変位伝達部材に接続された第1のステム部材と、
前記支持機構によりスリーブを介して軸方向に変位可能に保持され、上端部が前記第1のステム部材の下端部に当接し、該第1のステム部材に駆動されて前記ダイヤフラムを押圧する第2のステム部材と、からなることを特徴とする。
この構成により、変位伝達部材に接続された第1のステム部材に外力によるモーメントが加わっても第2のステム部材には伝わらないため、第2のステム部材のガイドとしてガイド剛性の高いスリーブを用いることができ、ステムの軸ブレを低減したダイヤフラムバルブが実現できる。
【0009】
好ましくは、前記スリーブは、金属製で内周側に樹脂層が形成されているものである、構成を採用できる。
この構成により、高いガイド剛性と樹脂層の自己潤滑性による低い摩擦抵抗が得られるため、第2のステム部材のスムーズな移動が可能になる。
【0010】
好適には、前記樹脂層は、ポリアセタール、超高分子量ポリエチレン、フッ素樹脂、フェノール樹脂のいずれかで形成されたものである、構成を採用できる。
【0011】
好ましくは、前記第2のステム部材の上端部は、前記第1のステム部材の下端部に点接触している、構成を採用できる。
この構成により、変位伝達部材に外力が加わって第1のステム部材が振れても、第2のステム部材の軸方向位置の変動を抑えることができる。
【0012】
好ましくは、前記アクチュエータは、電圧印加により長さが伸長する圧電アクチュエータである、構成を採用できる。
【0013】
本発明の流量制御装置は、上記構成のダイヤフラムバルブを用いたものである。
【0014】
本発明の流体制御装置は、上流から下流に向かって複数の流体機器が配列された流体制御装置であって、
前記複数の流体機器は、上記構成のダイヤフラムバルブ又は流量制御装置を含むものである。
【0015】
本発明の半導体製造装置は、密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体装置の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの制御に上記構成のダイヤフラムバルブ又は流量制御装置を用いたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ステムを、変位伝達部材に接続された第1のステム部材と、ダイヤフラムを押圧する第2のステム部材とに分割して、第2のステム部材のみスリーブで軸方向の動きをガイドさせる構造にしたので、第1のステム部材に外力によるモーメントが加わっても第2のステム部材には伝わらない。このため、第2のステム部材のガイドとしてガイド剛性の高いスリーブを用いることができ、ステムの軸ブレを低減したダイヤフラムバルブが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るダイヤフラムバルブの概略断面図。
図2図1のダイヤフラムバルブのステムとスリーブを示す拡大図。
図3】本発明の一実施形態に係る流量制御装置の部分断面図。
図4】本発明の一実施形態に係る流体制御装置の概略斜視図。
図5】本発明の一実施形態に係る半導体製造装置のブロック図。
図6】従来のダイヤフラムバルブのリニアアクチュエータ部分を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1に本発明の一実施形態に係るダイヤフラムバルブ1の概略図を示す。
【0019】
図1に示すように、本実施形態のダイヤフラムバルブ1は、バルブボディ16と、ダイヤフラム17と、支持機構(3,10)と、ステム8と、アクチュエータ2と、を含んで構成される。
【0020】
バルブボディ16は、略ブロック形状を成し、内部に上流側流路16aと下流側流路16bとを有する。上流側流路16aは、バルブボディ16の上面に形成された浅い座ぐり穴状の窪みである弁室16dの底面の中央部に開口し、この開口の周囲は環状に盛り上がってバルブシート16eを形成している。一方、下流側流路16bは、弁室16dの底面の周辺部16fに開口している。
【0021】
ダイヤフラム17は、本実施形態では、特殊ステンレス鋼等の金属製薄板やニッケル・コバルト合金薄板の中央部を上方へ膨出させた球殻状の部材で、バルブボディ16上面における弁室16dに配置されている。ダイヤフラム17の外周縁部の上に円環状の押えアダプタ18が配置され、その上からボンネット10の下端部が当接し、ボンネット10が支持プレート3とともに、ボルトによりバルブボディ16へ共締めされることで、ダイヤフラム17は固定され、弁室16dが気密に密封されている。
【0022】
ダイヤフラムバルブ1が開のときは、ダイヤフラム17とバルブシート16eとの間には、所定量の隙間があり、上流側流路16aからこの隙間を通ってダイヤフラム17で封止された弁室16dに連通し、さらに下流側流路16bへ連通する流路が形成されている。ダイヤフラム17が駆動部12により押圧されてバルブシート16eに当接すると、上流側流路16aと下流側流路16bとの連通が遮断され、ダイヤフラム17がバルブシート16eから離隔することにより、上流側流路16aと下流側流路16bとが連通する。これにより、流路の開閉及び開度の調節が可能になっている。
【0023】
支持機構(3,10)は、バルブボディ16に固定されてステム8とアクチュエータ2とを支持するもので、ボンネット10と、支持プレート3と、を有する。
ボンネット10は、フランジ付きの略円筒状の部材から、図1の紙面垂直方向両側を切り落として幅を狭めた形状を有し、その内周側にステム8が配置できるようになっている。支持プレート3は、ボンネット10の上端部の上に架設された部材で、アクチュエータ2の下端部を受けて位置決めする役割を有する。
これにより、ステム8とアクチュエータ2は、バルブボディ16の上面からこの順に、該上面に対して垂直方向に縦列に配置されている。
ボンネット10のフランジ部と支持プレート3の両端部は、2本のボルトで、バルブボディ16に共締めされている。ボンネット10は、上記のようにダイヤフラム17をバルブボディ16に固定する役割も果たしている。
【0024】
アクチュエータ2は、ステム8を駆動するもので、本実施形態では圧電アクチュエータを用いている。以下、「圧電アクチュエータ2」ともいう。
圧電アクチュエータ2は、円筒状のケース2cに図示しない積層された圧電素子を内蔵している。ケース2cは、ステンレス合金等の金属製で、半球状の先端部2a側の端面および基端部2b側の端面が閉塞している。ケース2cは、積層された圧電素子に電圧を印加して伸長させることで、ケース2cの先端部2a側の端面が弾性変形し、半球状の先端部2aが長手方向において変位する。すなわち、ケース2cは、積層された圧電素子に電圧を印可することで、先端部2aから基端部2bまでの全長が伸びる。
【0025】
圧電アクチュエータ2は、下端部である先端部2aが支持プレート3に当接するように垂直方向に配置されている。先端部2aの先端は半球状を成し、本実施形態では支持プレートの上面に形成された円錐状の窪みに落ち込むようになっている。
【0026】
一方、圧電アクチュエータ2の上端部である基端部2bは、押圧部材4を介して上部連結部材6に保持されている。押圧部材4の上面は、上部連結部材6のねじ穴に螺合された調整ねじ7の先端に当接している。上部連結部材6は、有底円筒を伏せて両側をカットした略コの字型を有し、その内側に一対の変位伝達部材5が、ねじで連結されている。
【0027】
一対の変位伝達部材5は、熱膨張係数の小さいインバー材等の金属材料で形成され、圧電アクチュエータ2の外周面に沿う円筒状部材を長手方向に沿って二つに分割した形態を呈している。これらの一対の変位伝達部材5は、それぞれの開口部5aに支持プレート3を挿通させてその下側に伸び、下端部に係止部5bが形成されている。
【0028】
ステム8は、ダイヤフラム押え19を介してダイヤフラム17を押圧して弾性変形させるもので、支持プレート3の下側に、ボンネット10のガイド孔10aを貫いて前記圧電アクチュエータ2と同軸に配置されている。
【0029】
ここで、本発明では、ステム8は、変位伝達部材5に接続された第1のステム部材8aと、第1のステム部材8aに駆動されてダイヤフラム17を押圧する第2のステム部材8bと、からなる。
【0030】
第1のステム部材8aは、一対の変位伝達部材5の下端部に形成された各係止部5bがそれぞれ係合するアーム部8a-1を備えている。また、第1のステム部材8aは、コイルばね9により下方向に付勢されている。圧電アクチュエータ2が伸長すると、第1のステム部材8aもコイルばね9の付勢力に抗して一対の変位伝達部材5により上方向に引き上げられる。このように、圧電アクチュエータ2の長さの変位が、変位伝達部材5を含む一連の変位伝達機構(4,7,6,5、5b)を通して第1のステム部材8aに伝達され、第1のステム部材8aが軸方向に変位するようになっている。
なお、第1のステム部材8aの上端部が、支持プレート3の下面の止り穴に緩く嵌入することで、第1のステム部材8aと変位伝達部材5を含む一連の変位伝達機構(4,7,6,5、5b)の軸方向の動きは、緩くガイドされている。
【0031】
第2のステム部材8bは、上端部が第1のステム部材8aの下端部に当接するようにこれと同軸に配置されている。第1のステム部材8aの下端部は略平面を成す一方、第2のステム部材8bの上端部は略球面を成しており、両者は点接触している(図2参照)。この構成により、変位伝達部材5に外力が加わって第1のステム部材8aが振れても、第2のステム部材8bの軸方向位置の変動を極小化できる。第2のステム部材8bの下端部には、ダイヤフラム押え19が取り付けられ、ダイヤフラム17に当接している。第2のステム部材8bは、第1のステム部材8aに駆動されてダイヤフラム17を押圧して弾性変形させるようになっている。
【0032】
また第2のステム部材8bは、ボンネット10によりスリーブ15を介して軸方向に変位可能に保持されている。本実施形態では、第2のステム部材8bとボンネット10のガイド孔10aとの摺動部分に、従来のOリング14(図6参照)の代わりに、スリーブ15を用いている。すなわち、ボンネット10のガイド孔10aに外周が嵌合固定されたスリーブ15の内周により、第2のステム部材8bがガイドされている。このスリーブ15は、図2に示すように、金属製のスリーブ本体15aの内周側にポリアセタール、超高分子量ポリエチレン、フッ素樹脂、テフロン(登録商標)樹脂、フェーノール樹脂などの自己潤滑性の樹脂層15bが形成されているので、ガイドされるステンレス鋼製の第2のステム部材8bとの摩擦係数が小さい。また、第2のステム部材8bの外周とスリーブ15の内周との組み合わせは、円筒状の接触面を有するので、接触面積が広く、高いガイド剛性が得られる。
【0033】
次に、このように構成された本実施形態のダイヤフラムバルブ1の動作について、図1を参照して説明する。
【0034】
まず、圧電アクチュエータ2への印加電圧がゼロである初期状態では、圧電アクチュエータ2の長さLは初期長さL0と最小であり、変位伝達機構(4,7,6,5,5b)とこれに係合させた第1のステム部材8aは、コイルばね9に押し下げられて最下位置にあり、これに当接する第2のステム部材8bも最下位置にある。したがって、ダイヤフラム17は第2のステム部材8bに押圧されて、バルブシート16eに密着し、バルブは全閉状態になる。
【0035】
次に、圧電アクチュエータ2に電圧を印加すると、圧電アクチュエータ2の長さLは大きくなるため、コイルばね9の付勢力に打ち勝って、変位伝達機構(4,7,6,5,5b)と第1のステム部材8aは引き上げられる。その結果、第2のステム部材8bもダイヤフラム17の形状復元力により押し上げられて、ダイヤフラム17とバルブシート16eの間に隙間ができて、バルブは開き、流体がダイヤフラムバルブ1を通過できるようになる。圧電アクチュエータ2への印加電圧を調節することにより、ダイヤフラム17とバルブシート16eとの隙間を調節でき、流体の流量を調節できる。
【0036】
この際、まず、ステム8が変位伝達部材に接続された第1のステム部材と、ダイヤフラムを押圧する第2のステム部材とに分割したので、第1のステム部材に外力によるモーメントが加わっても第2のステム部材には伝わらない。
このため、第2のステム部材8bのガイドとしてガイド剛性の高いスリーブ15を用いることができる。したがって、上下方向移動の際に軸ブレを起こすことなく、軸ブレによるダイヤフラム17の応力上昇を低減できるため、ダイヤフラム17の寿命の向上を図ることができる。また、第2のステム部材8bの外周が接触するスリーブ15の内周側には、低摩擦係数の樹脂層15bが形成されているので、第2のステム部材8bはスムーズに上下方向移動できる。
【0037】
尚、本実施形態では、第2のステム部材8bのガイドとして、金属製のスリーブ本体15aの内周側に樹脂層15bが形成されたスリーブ15を用いているが、これに限られない。例えば、転動ボールを有するボールブッシュを用いても良く、そのような構成でも、高ガイド剛性と低いガイド抵抗が実現できる。
【0038】
また、第1のステム部材8aの下端部と第2のステム部材8bの上端部との当接箇所は、前者を平面とし、後者を球面とすることにより、点接触を実現しているが、これに限られず、前者を球面とし、後者を平面としてもよく、両者とも球面としても良い。また、第2のステム部材8bの上端部は、両端は平面で中心部は略球面を成しているが、上端部全体球面でも良い。
【0039】
次に、本発明の流量制御装置について説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る流量制御装置20の部分断面図であり、上記したダイヤフラムバルブ1が組み込まれた圧力式の流量制御装置20を示す。
図3において、流量制御装置20の全体を覆うカバーやフィードバック制御用の基板が実際には存在するが、説明の便宜上図示していない。
流量制御装置20は、上記したダイヤフラムバルブ1の構成要素に加えて、下流側ブロック25、圧力検出器22、オリフィス(図示省略)、圧力検出器26、下流側流路(図示省略)を有する。
【0040】
バルブボディ16の内部において、ダイヤフラム17の下流側の流路16b内にオリフィス(図示省略;本実施形態では、ガスケット型オリフィス)が設けられている。その上流側の流路16bの途中には、圧力を検出する上流側の圧力検出器22が設けられている。
下流側ブロック25は、バルブボディ16にボルトにより連結され、バルブボディ16の下流側の流路16bに連通する下流側流路(図示省略)を有し、この流路内の圧力を検出する下流側の圧力検出器26が設けられている。
図示しない制御装置により、各圧力検出器22、26の検出値に基づいてダイヤフラムバルブ1がPID制御により開閉制御される。
【0041】
本流量制御装置では、本発明のダイヤフラムバルブを用いたので、ダイヤフラムバルブの長寿命化に伴う、流体制御装置の長寿命化が期待できる。
【0042】
次に、本発明の流体制御装置について説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る流体制御装置の概略斜視図である。
図4に示す流体制御装置には、幅方向W1、W2に沿って配列され長手方向G1、G2に延びる金属製のベースプレートBSが設けられている。なお、W1は正面側、W2は背面側、G1は上流側、G2は下流側の方向を示している。ベースプレートBSには、複数の流路ブロック992を介して各種流体機器991A~991Eが設置され、複数の流路ブロック992には、上流側G1から下流側G2に向かって流体が流通する図示しない流路がそれぞれ形成されている。
【0043】
ここで、「流体機器」とは、流体の流れを制御する流体制御装置に使用される機器であって、流体流路を画定するボディを備え、このボディの表面で開口する少なくとも2つの流路口を有する機器である。具体的には、開閉弁(2方弁)991A、レギュレータ991B、プレッシャーゲージ991C、開閉弁(3方弁)991D、マスフローコントローラ991E等が含まれるが、これらに限定されるわけではない。なお、導入管993は、上記した図示しない流路の上流側の流路口に接続されている。
【0044】
本発明は、上記した開閉弁991A、991D、レギュレータ991B、マスフローコントローラ991E等の種々のダイヤフラムバルブに適用可能である。
【0045】
次に、本発明の半導体製造装置について説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係る半導体製造装置のブロック図である。
図5に示す半導体製造装置980は、原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition 法)による半導体製造プロセスを実行するための装置であり、981はプロセスガス供給源、982はガスボックス(流体制御装置)、983はタンク、984は開閉バルブ、985は制御部、986は処理チャンバ、987は排気ポンプを示している。
【0046】
本発明は、上記したガスボックス982を構成する流体機器、開閉バルブ984に適用可能である。
【0047】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。例えば、上記適用例では、ALD法による半導体製造プロセスに用いる場合について例示したが、これに限定されるわけではなく、本発明は、例えば原子層エッチング法(ALE :Atomic Layer Etching 法)等、精密な流量調整が必要なあらゆる対象に適用可能である。
【0048】
上記実施形態では、開閉バルブ984を流体制御装置としてのガスボックス982の外部に配置する構成としたが、開閉バルブ、レギュレータ、マスフローコントローラ等の各種の流体機器を集積化してボックスに収容した流体制御装置に上記実施形態のダイヤフラムバルブを含ませることも可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 :ダイヤフラムバルブ
2 :圧電アクチュエータ、アクチュエータ
2a :先端部
2b :基端部
2c :ケース
3 :支持プレート(支持機構)
4 :押圧部材
5 :変位伝達部材
5a :開口部
5b :係止部
6 :上部連結部材
7 :調整ねじ
8 :ステム
8a :第1のステム部材
8a-1 :アーム部
8b :第2のステム部材
9 :コイルばね
10 :ボンネット(支持機構)
10a :ガイド孔
10b :貫通孔
12 :駆動部
14 :Oリング
15 :スリーブ
15a :スリーブ本体
15b :樹脂層
16 :バルブボディ
16a :上流側流路、流路
16b :下流側流路、流路
16d :弁室
16e :バルブシート
17 :ダイヤフラム
18 :押えアダプタ
19 :ダイヤフラム押え
20 :流量制御装置
22 :圧力検出器
25 :下流側ブロック
26 :圧力検出器
980 :半導体製造装置
981 :プロセスガス供給源
982 :ガスボックス(流体制御装置)
983 :タンク
984 :開閉バルブ
985 :制御部
986 :処理チャンバ
987 :排気ポンプ
991A~991E:流体機器
992 :流路ブロック
993 :導入管
BS :ベースプレート
G1、G2:長手方向
W1、W2:幅方向

図1
図2
図3
図4
図5
図6