(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】管端防食ゴムカバー及び管継手における管端防食構造
(51)【国際特許分類】
F16L 58/10 20060101AFI20240730BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20240730BHJP
F16L 21/08 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
F16L58/10
F16L57/00 C
F16L21/08 B
(21)【出願番号】P 2022104836
(22)【出願日】2022-06-29
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000148139
【氏名又は名称】株式会社川西水道機器
(74)【代理人】
【識別番号】100102048
【氏名又は名称】北村 光司
(74)【代理人】
【識別番号】100146503
【氏名又は名称】高尾 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】川西 秀人
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-204737(JP,A)
【文献】特開2007-239840(JP,A)
【文献】特開2005-256957(JP,A)
【文献】特開2005-248971(JP,A)
【文献】実開昭55-157192(JP,U)
【文献】実開昭55-115493(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0093379(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 58/10
F16L 57/00
F16L 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の管端部に装着される管端防食ゴムカバーであって、
前記管端部の外周面に密着する筒状部と、前記筒状部の一端から中心軸に向けて突出する環状の内フランジとを備え、
前記内フランジは、前記管端部の管端面に対向するフランジ内面と、前記フランジ内面に対向するフランジ外面とを有し、
前記フランジ内面は、前記筒状部の内側面に対し鋭角であり、
前記フランジ外面は、前記筒状部の外側面に対し直角であり、
前記内フランジの厚さは、前記筒状部の前記内側面から前記中心軸に向けて漸次厚く形成されてあり、
前記フランジ内面と前記フランジ外面との間には、ゴムより硬質の材料よりなる平板状の環状ワッシャが設けられている管端防食ゴムカバー。
【請求項2】
前記環状ワッシャの外周側端部及び内周側端部は、前記内フランジの内部に位置し外部に露出していない請求項1記載の管端防食ゴムカバー。
【請求項3】
前記環状ワッシャの幅は、前記管の肉厚と同程度であり、前記外周側端部は、前記内側面の延長線上に位置する請求項2記載の管端防食ゴムカバー。
【請求項4】
前記環状ワッシャは、前記フランジ内面の内側縁部と前記フランジ外面との中間部又はその中間部よりも前記フランジ外面側に位置する請求項3記載の管端防食ゴムカバー。
【請求項5】
前記フランジ外面には、周方向に沿って溝部が形成されてあり、前記環状ワッシャの外側面は、前記溝部の底部と接する請求項4記載の管端防食ゴムカバー。
【請求項6】
前記環状ワッシャは、周方向に沿って外方又は内方に向けて突出する突起部を有する請求項5記載の管端防食ゴムカバー。
【請求項7】
前記環状ワッシャの外側面は、前記内フランジの内部に位置し外部に露出していない請求項4記載の管端防食ゴムカバー。
【請求項8】
前記環状ワッシャの外側面は、前記フランジ外面と同一面を構成している請求項4記載の管端防食ゴムカバー。
【請求項9】
前記環状ワッシャは、金属製である請求項1~8のいずれかに記載の管端防食ゴムカバー。
【請求項10】
管が挿入される受口部を有する継手本体と、前記管と前記継手本体との間をシールする環状のパッキンと、前記継手本体に連結され前記パッキンを押圧する押輪と、前記管の管端部を覆う管端防食ゴムカバーとを備えた管継手における管端防食構造であって、
前記管端防食ゴムカバーは、前記管端部の外周面に密着する筒状部と、前記筒状部の一端から中心軸に向けて突出する環状の内フランジとを有し、
前記内フランジは、前記管端部の管端面に対向するフランジ内面と、前記フランジ内面に対向するフランジ外面と、
前記フランジ内面は、前記筒状部の内側面に対し鋭角であり、
前記フランジ外面は、前記筒状部の外側面に対し直角であり、
前記内フランジの厚さは、前記筒状部の一端から前記中心軸に向けて漸次厚く形成されてあり、
前記フランジ内面と前記フランジ外面との間には、ゴムより硬質の材料よりなる平板状の環状ワッシャが設けられている管継手における管端防食構造。
【請求項11】
前記筒状部の他端は、前記環状のパッキン及び前記押輪により前記管の外周面に押圧される請求項10記載の管継手における管端防食構造。
【請求項12】
前記管は、内面ライニング鋼管である請求項10又は11記載の管継手における管端防食構造。
【請求項13】
前記押輪の外周面に係止されるフックを備えた止輪をさらに有する請求項10又は11記載の管継手における管端防食構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管端防食ゴムカバー及び管継手における管端防食構造に関する。さらに詳しくは、管の管端部に装着される管端防食ゴムカバー及び管継手における管端防食構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述の如き管端防食ゴムカバーとして、例えば特許文献1に記載の如き防食キャップが知られている。この防食キャップでは、筒状外周部で管端部の外周面を覆うと共にテーパー状の筒状内周部の内側に金属製バネ材のストッパリングを設けることで防食キャップのフランジ部を継手本体の受口部に接着させ、押輪の螺合緊締によりフランジ部を受口部とパッキンで強く挟持させることで防食キャップの脱落を防止している。そのため、フランジ部の接着に時間を要し作業性が低下していた。また、フランジ部を受口部とパッキンで挟持するため、管継手を既設管に対しスライドさせることができず、既設管の修理(接続)に適用できなかった。
【0003】
また、特許文献1に記載の如き防食コアを併用する場合、温水配管では、防食コアの材質によってはコア本体が柔らかくなって管内面に密着できず外れる可能性があるため、給水用途に限定されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、作業性及び汎用性に優れ且つ防食コアを用いることなく管端部の防食が可能な管端防食ゴムカバー及び管継手における管端防食構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る管端防食ゴムカバーの特徴は、管の管端部に装着される構成において、前記管端部の外周面に密着する筒状部と、前記筒状部の一端から中心軸に向けて突出する環状の内フランジとを備え、前記内フランジは、前記管端部の管端面に対向するフランジ内面と、前記フランジ内面に対向するフランジ外面とを有し、前記フランジ内面は、前記筒状部の内側面に対し鋭角であり、前記フランジ外面は、前記筒状部の外側面に対し直角であり、前記内フランジの厚さは、前記筒状部の前記内側面から前記中心軸に向けて漸次厚く形成されてあり、前記フランジ内面と前記フランジ外面との間には、ゴムより硬質の材料よりなる平板状の環状ワッシャが設けられていることにある。
【0007】
上記構成によれば、筒状部の一端から中心軸に向けて突出する環状の内フランジは、管端部の管端面に対向するフランジ内面と、フランジ内面に対向するフランジ外面とを有し、フランジ内面は、筒状部の内側面に対し鋭角であり、フランジ外面は、筒状部の外側面に対し直角である。そして、内フランジの厚さは、筒状部の内側面から中心軸に向けて漸次厚く形成されている。よって、内フランジの根元側(筒状部の内側面側)よりも内フランジの先端側(フランジ端面側)が変形しにくく、装着後に内フランジの先端部分が管端面から離れることを抑制できる。しかも、管を流れる液体が温水であっても、液体の温度による影響を抑制して管端面への密着を長期にわたって維持できる。しかも、フランジ内面とフランジ外面との間には、ゴムより硬質の材料よりなる平板状の環状ワッシャが設けられている。筒状部を引っ張って内フランジを管端面に押圧(圧縮)させると、環状ワッシャを介して内フランジの先端部近傍が圧縮変形して管端面に密着する一方、内フランジの基端部は環状ワッシャによって弾性変形が制限(抑制)される。このように、ゴムより硬質の環状ワッシャによって、内フランジと管端面との密着状態が維持される。
【0008】
上記構成において、前記環状ワッシャの外周側端部及び内周側端部は、前記内フランジの内部に位置し外部に露出していないことが望ましい。環状ワッシャの外周側端部及び内周側端部が内フランジのフランジ端面及び外周面で露出しないので、当該部分の内フランジからの剥離を防止できるので、長期にわたって密着性を維持することできる。
【0009】
また、前記環状ワッシャの幅は、前記管の肉厚と同程度であり、前記外周側端部は、前記内側面の延長線上に位置するとよい。これにより、内フランジと管端面との密着状態をより長期にわたって維持できる。
【0010】
さらに、前記環状ワッシャは、前記フランジ内面の内側縁部と前記フランジ外面との中間部又はその中間部よりも前記フランジ外面側に位置するとよい。これにより、フランジ内面と環状ワッシャとの間に弾性変形するゴムの量を十分に確保でき、フランジ内面の先端部近傍の密着性が向上すると共に、装着後においても先端部の密着性(押圧力)を維持できる。
【0011】
前記フランジ外面には、周方向に沿って溝部が形成されてあり、前記環状ワッシャの外側面は、前記溝部の底部と接するとよい。係る場合、前記環状ワッシャは、周方向に沿って外方又は内方に向けて突出する突起部を有するとよい。これにより、ゴム成形金型内の所定位置に容易に環状ワッシャを配置でき、内フランジの所定位置に環状ワッシャを配置(内蔵)させることができる。
【0012】
前記環状ワッシャの外側面は、前記内フランジの内部に位置し外部に露出していない。また、前記環状ワッシャの外側面は、前記フランジ外面と同一面を構成しても構わない。上記いずれかの構成において、前記環状ワッシャは、金属製である。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る管継手における管端防食構造の特徴は、管が挿入される受口部を有する継手本体と、前記管と前記継手本体との間をシールする環状のパッキンと、前記継手本体に連結され前記パッキンを押圧する押輪と、前記管の管端部を覆う管端防食ゴムカバーとを備えた構成において、前記管端防食ゴムカバーは、前記管端部の外周面に密着する筒状部と、前記筒状部の一端から中心軸に向けて突出する環状の内フランジとを有し、前記内フランジは、前記管端部の管端面に対向するフランジ内面と、前記フランジ内面に対向するフランジ外面と、前記フランジ内面は、前記筒状部の内側面に対し鋭角であり、前記フランジ外面は、前記筒状部の外側面に対し直角であり、前記内フランジの厚さは、前記筒状部の一端から前記中心軸に向けて漸次厚く形成されてあり、前記フランジ内面と前記フランジ外面との間には、ゴムより硬質の材料よりなる平板状の環状ワッシャが設けられていることにある。
【0014】
上記構成において、前記筒状部の他端は、前記環状のパッキン及び前記押輪により前記管の外周面に押圧されるとよい。また、前記管は、内面ライニング鋼管であるとよい。そして、前記押輪の外周面に係止されるフックを備えた止輪をさらに有していても構わない。
【発明の効果】
【0015】
上記本発明に係る管端防食ゴムカバー及び管継手における管端防食構造の特徴によれば、作業性及び汎用性に優れ且つ防食コアを用いることなく管端部の防食が可能となった。
【0016】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る管継手における管端防食構造を示す斜視図である。
【
図2】管継手における管端防食構造の断面図である。
【
図3】本発明に係る管端防食ゴムカバーの斜視図である。
【
図6】環状ワッシャを示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図を示す。
【
図7】(a)は
図4のB-B線拡大断面図、(b)は
図4のC-C線拡大断面図、(c)は
図4のD-D線拡大断面図である。
【
図8】内フランジの変形状態を説明する図であり、(a)は装着途中、(b)は装着完了の状態を示す。
【
図11】管端防食ゴムカバーの比較例1を説明する図である。
【
図12】管端防食ゴムカバーの比較例2~5を説明する図であり、(a)は比較例2、(b)は比較例3、(c)は比較例4、(d)は比較例5を示す。
【
図13】管端防食ゴムカバーの他の実施形態を示す図である。
【
図14】管端防食ゴムカバーのさらに他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、
図1~10を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明に係る管継手における管端防食構造10は、
図1,2に示すように、大略、管100が挿入される受口部11aを有する継手本体11と、管100と継手本体2との間をシールする環状のパッキン12と、継手本体11に連結されパッキン12を押圧する押輪13と、管100の管端部110に装着される管端防食ゴムカバー1(以下、単に「ゴムカバー」と称することもある。)とを備える。なお、本実施形態において、管端防食構造10は、押輪13の外周面に係止されるフック14dを備えた止輪14をさらに有する。
【0019】
本実施形態において、管100は、
図2に示すように、管100の内周面102にライニング103が施された内面ライニング鋼管であり、外周面101はライニングで被覆されていない。ライニング103としては、例えば、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の材質のものが挙げられる。この管100を切断すると、その切断面(管端面112)において金属の管本体111が露出し、露出した金属部分となる外周面101及び管端面112における管本体111の露出部113から腐食が進行する。本発明に係る管端防食ゴムカバー1及びこれを用いた管端防食構造10は、継手本体11の内部において、外周面101及び管端面112における管本体111の露出部113を覆うことで管端部110の腐食を防止する。
【0020】
継手本体11は、
図1,2に示すように、テーパー状の受口部11aと、その外周面に刻設された雄ねじ11bとを有する。受口部11aの内径R1は、ゴムカバー1が装着された管端部110が挿通可能となるように、管100の外径R2とゴムカバー1の筒状部2の肉厚t1の2倍(t1×2)の和よりも若干大きく形成されている。
【0021】
本実施形態において、押輪13は、受口部11aにパッキン12を介在させて螺合緊締されるユニオンナットである。このユニオンナット13は、
図1,2に示すように、外周面に設けられ止輪14のフック14dが係止される溝部13aと、内周面に刻設された雌ねじ13bと、溝部13aより突出する環状フランジ13dを有する。ユニオンナット13を受口部11aに螺合緊締することで、パッキン12を圧縮変形させて管継手の止水性を確保する。ユニオンナット13の開口部13cの内径R3も、ゴムカバー1が装着された管端部110が挿通可能となるように、管100の外径R2と筒状部2の肉厚t1の2倍の和よりも若干大きく形成されている。なお、パッキン12の内径も、同様に若干大きく形成されている。
【0022】
本実施形態において、止輪14は、
図1に示すように、互いを対向させて緊締手段16により管100の外周面101に固定される対をなす第一、第二分割体14a,14bからなる。第一分割体14a,14bは、外周面101に沿う本体部14cと、先端にユニオンナット13に係止するフック14dが設けられ管100の軸方向に沿うアーム14eとを有する。
【0023】
また、
図2に示すように、本体部14cの裏面(管100側)には、管100側へ向けて突出する歯部14fが本体部14cの幅方向(管100の軸方向)の適宜間隔をおいて複数設けられている。また、止輪14は、緊締手段15が挿通し且つ対向する第一、第二分割体14a,14bに挟持されるゴム部材16を有する。
【0024】
ここで、本発明に係る管端防食ゴムカバー1は、
図2~5に示すように、大略、管端部110の外周面101に密着する筒状部2と、筒状部2の一端2aから中心軸AXに向けて内側へ突出する環状の内フランジ3とを備える。本実施形態において、この内フランジ3の内部には、ゴムより硬質の材料よりなる平板状の環状ワッシャ4が埋設(内蔵)されている。
【0025】
筒状部2は、他端2bが上述のパッキン12及び押輪13の開口部13cにより管端部110の外周面101に押圧されるように長さLが設定される。なお、筒状部2のゴムの肉厚t1は、内外面ライニング鋼管の外面被覆厚さと同程度であり、例えば、1.0~1.5mmである。ゴムの肉厚t1を薄くすると、装着時やユニオンナット13により管100に押圧された際に破れるおそれがある。他方、ゴムの肉厚t1を厚くすると、管端部110の外径が受口部11aの内径R1よりも大きくなり、止輪14の歯部14と接触して破損したり、管100を継手本体11に挿入できなくなる。なお、肉厚t1が1.0~1.5mmであれば、製作も容易である。
【0026】
内フランジ3は、
図3~5,7に示すように、管端部110の管端面112に対向するフランジ内面31と、フランジ内面31に対向するフランジ外面32とを有する。フランジ内面31と筒状部2の内側面21との交差角θ1は、鋭角であり、フランジ外面32と筒状部2の外側面22との交差角θ2は、直角である。よって、内フランジ3の厚さt2は、筒状部2の内側面21から中心軸AXに向けて漸次厚く形成されている。このように、内フランジ3の肉厚t2を中心軸AX側を肉厚にすることで、内フランジ3の根元側(内側面21側)よりも内フランジ3の先端側(フランジ端面33側)が変形しにくく、装着後に内フランジ3の先端部分が管端面112から離れることを防止できる。しかも、管100を流れる液体が温水であっても、内フランジ3の先端側が内フランジ3の根元側よりも肉厚であるので、液体の温度による影響を抑制して管端面112への密着を長期にわたって維持できる。
【0027】
本実施形態において、フランジ外面32には、内フランジ3の周方向に沿って溝部34が適宜間隔をおいて複数形成されている。この溝部34は、ゴムカバー1の成形に用いるゴム成形金型に設けた突起部に相当する。この突起部によって、平板状の環状ワッシャ4を内フランジ3の内部の所定位置に配置(保持)して成形することができる。そのため、環状ワッシャ4の外側表面40aは、溝部34の底部35と接している。なお、溝部34の個数や形状は、図示されるものに限定されるものではない。但し、溝部34の周方向長さ(金型の突起部の周方向長さ)は、ゴム成形の圧縮の際に、環状ワッシャ4が変形しない程度の長さを有するのが望ましい。
【0028】
環状ワッシャ4は、
図6に示すように、円形のワッシャ本体40を有し、ワッシャ本体40には内周側端部41から内側(中心軸AX)側に向けて突出する突出部43が周方向に適宜間隔をおいて設けられている。この突起部43は、ゴム成形金型において円形のワッシャ本体40が中心に位置するように設けられたものであり、内周側端部41とゴム成形金型の隙間にゴムが充填される。なお、環状ワッシャ4は、ゴムカバー1のゴム材料よりも硬質の材料よりなり、例えばステンレス等の金属製である。また、ワッシャ本体40は、管軸方向に直交するように内フランジ3内に配置される。
【0029】
この環状ワッシャ4は、
図2,3,7,8に示すように、フランジ内面31とフランジ外面32との間に設けられている。ここで、
図8(a)に示す如く、内フランジ3の管軸側(内側)の先端部3aが管端面112に接触した状態から、筒状部2を引っ張って内フランジ3を管端面112に押圧(圧縮)させると、同図(b)に示す如く、引張力Fが、平板状の環状ワッシャ4を介して内フランジ3の先端部3a近傍を圧縮変形させて、フランジ内面31を管端面112に圧接(密着)させる。その一方、内フランジ3の基端部3bでは、内フランジ3の根元側(内側面21側)の肉厚が内フランジ3の先端側(フランジ端面33側)よりも薄いにもかかわらず、環状ワッシャ4によって弾性変形が制限(抑制)され、筒状部2の内側面21側に空間S(隙間)が維持される。このように、ゴムより硬質の環状ワッシャ4によって、内フランジ3と管端面112を接着剤等で接着しなくとも、これらの密着状態を維持でき、管本体111の管端面112における露出部113が液体に晒されることはない。
【0030】
しかし、
図11に示す比較例1のゴムカバー1’aの如く、内フランジ3’に環状ワッシャ4を設けない場合、同図(a)の状態から、筒状部2’を引っ張って内フランジ3’を管端面112に押圧(圧縮)させると、内フランジ3’の根元部分(内側面21’側)の肉厚が内フランジ3’の先端部分(フランジ端面33’側)よりも薄いため、同図(b)に示すように、内フランジ3’の先端部3’aは変形せずに基端部3’bが引っ張られ、空間S’(隙間)が消滅した状態でフランジ内面31’が管端面112と接する。しかし、同図(b)の状態からさらに筒状部2’を引っ張ると、内フランジ3’と管端面112とを接着剤等で接着していない場合、同図(c)に示すように、基端部3’bも追従して引っ張られて先端部3’aが管端面112から浮き上がり、内フランジ3’と管端面112との間に隙間Gが形成される。
【0031】
また、本実施形態において、環状ワッシャ4のワッシャ本体40の外周側端部42及び内周側端部41並びに突出部43は、
図7,8に示すように、内フランジ3の内部に位置し外部に露出していない。しかし、例えば、
図12(a)(b)に示す比較例2,3のゴムカバー1’b,1’cの如く、環状ワッシャ4’の外周側端部42’及び内周側端部41’の双方又は一方が内側周面35’及び外側周面36’に露出している場合、フランジ端面33’及び外周面36’において外周側端部42’及び内周側端部41’が内フランジ3’から剥がれやすくなり、密着状態を長期にわたって維持できない。このように、本実施形態の如く、ワッシャ本体40の外周側端部42及び内周側端部41を内フランジ3の内部に位置(内蔵)させることで、ゴム製の内フランジ3と金属製の環状ワッシャ4との接着力が低下したとしても、脱落したり密着性が低下したりすることはない。
【0032】
しかも、本実施形態において、環状ワッシャ4の幅Wは、
図8に示すように、管100の管本体110の肉厚t3と同程度であり、外周側端部42は、内側面21の延長線上に位置している。これにより、筒状部2を引っ張って内フランジ3を管端面112に押圧(圧縮)させると、先端部3a近傍は弾性変形して管端面112に密着すると共に基端部3b近傍には空間Sが形成される。そして、環状ワッシャ4により、内フランジ3と管端面112との密着状態が維持される。しかし、例えば、
図12(c)に示す比較例4のゴムカバー1’dの如く、環状ワッシャ4’の幅W’が短いと、環状ワッシャ4’が先端部3’aを押さえる(保持する)力が小さくなり、内フランジ3’の先端部3’aが管端面112から離隔しやすくなり、密着性が低下してしまう。
【0033】
さらに、本実施形態において、環状ワッシャ4は、
図8(a)に示すように、フランジ内面31の内側縁部31aとフランジ外面32との中間部Nよりもフランジ外面32側に位置させてある。これにより、フランジ内面31と環状ワッシャ4との間に弾性変形するゴムが十分な量存在するので、先端部3a近傍の密着性が向上すると共に、環状ワッシャ4によって密着後においても先端部3aの密着性(押圧力)を維持できる。しかし、例えば、
図12(d)に示す比較例5のゴムカバー1’eの如く、環状ワッシャ4’が中間部N’よりも内側縁部31’a近傍に位置すると、フランジ内面31’と環状ワッシャ4’との間のゴムの量が少なくなり、内フランジ3’の先端部3’aの密着力を確保できず、隙間が生じてしまう可能性がある。
【0034】
次に、主に
図9,10を参照しながら、本発明に係る管端防食構造10の管100への施工方法を説明する。
まず、管100の管端部110にゴムカバー1を装着させる。この時、筒状部2を管軸方向へ引っ張ることで内フランジ3を管端面112に圧接させる。上述したように、内フランジ3内部の所定位置に環状フランジ4を配置してあるので、内フランジ3の先端部3aは環状ワッシャ4を介して筒状部2の引張力によって圧縮変形して管端面112に密着する。なお、装着に際し、管端面112や内フランジ3の内側面31に接着剤を塗布する必要はなく、作業性を向上させることができる。
【0035】
次に、受口部11aにパッキン12を介在させて継手本体11にユニオンナット13を螺合緊締させると共に、止輪14をフック14dによりユニオンナット4の溝部13aに係止させる。そして、止輪14及びユニオンナット13を連結させた継手本体11にゴムカバー1を装着した管端部110を挿入していく。上述したように、受口部11aの内径R1及び開口部13cの内径R3は、管100の外径R2とゴムカバー1の肉厚t1の2倍の和よりも若干大きく形成されており、パッキン12も同様である。よって、ゴムカバー1が継手本体11、パッキン12やユニオンナット13に接触することはなく、管端部110の挿入をスムースに行える。
【0036】
管端部110の挿入は、ゴムカバー1の他端2bがユニオンナット13の開口部13cに近接するまで行う。例えば、他端2bが、止輪14の本体部14cとユニオンナット13の開口部13cとの間(隙間)から目視可能となるまで管端部110を挿入する。このように、筒状部2の他端2bを挿入作業の目印とすることができ、従前のように、管の外面に挿入位置をマークする必要がなく、作業効率も向上する。そして、挿入位置が決まれば、緊締手段15により第一、第二分割体14a,14bを管100に緊締固定する。
【0037】
最後に、他の実施形態の可能性について言及する。
上記実施形態において、環状ワッシャ4は、フランジ内面31の内側縁部31aとフランジ外面32との中間部Nよりもフランジ外面32側に位置させた。しかし、例えば、
図13に示すように、環状ワッシャ4を内フランジ3の中間部Nに位置させても構わない。
【0038】
また、上記実施形態において、環状ワッシャ4は、内フランジ3の内部に完全に埋設(内蔵)してあり、いずれの面も露出していない。しかし、例えば、
図14に示すように、環状ワッシャ4の外側面40aをフランジ外面32と同一面を構成しても構わない。
【符号の説明】
【0039】
1:管端防食ゴムカバー、2:筒状部、2a:一端、2b:他端、3:内フランジ、3a:先端部、3b:基端部、4:環状ワッシャ、10:管端防食構造、11:継手本体、11a:受口部、11b:雄ねじ、12:パッキン、13:押輪(ユニオンナット)、13a:溝部、13b:雌ねじ、13c:開口部、13d:環状フランジ、14:止輪、14a:第一分割体、14b:第二分割体、14c:本体部、14d:フック、14e:アーム、14f:歯部、15:緊締手段、15a:ボルト、15b:ナット、16:ゴム部材、21:内側面、22:外側面、30:、31:フランジ内面、31a:内側縁部、32:フランジ外面、33:フランジ端面、34:溝部、35:底部、36:外周面、40:ワッシャ本体、41:内周側端部、42:外周側端部、43:突出部、100:管(内面ライニング鋼管)、101:外周面、102:内周面、103:ライニング、110:管端部、111:管本体、112:管端面、113:露出部、AX:中心軸、F:引張力、L:筒状部の長さ、N:中間部、R1:受口部の内径、R2:管の外径、R3:開口部の内径、t1:筒状部の肉厚、t2:内フランジの肉厚、t3:管本体の肉厚、W:ワッシャ本体の幅、θ1,2:交差角