(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】チタンニオブ複合酸化物およびその製造方法、並びにそれを用いた活物質およびリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
C01G 33/00 20060101AFI20240730BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20240730BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20240730BHJP
【FI】
C01G33/00 A
H01M4/131
H01M4/485
(21)【出願番号】P 2022198582
(22)【出願日】2022-12-13
【審査請求日】2022-12-13
(32)【優先日】2022-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】518369763
【氏名又は名称】格斯科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】張 忠傑
(72)【発明者】
【氏名】葉 國偉
(72)【発明者】
【氏名】許 文嘉
(72)【発明者】
【氏名】王 家惠
(72)【発明者】
【氏名】鍾 佳歡
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 東哲
(72)【発明者】
【氏名】プレム・チャンダン・デヴァンガ
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/187127(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111874947(CN,A)
【文献】特開2017-168263(JP,A)
【文献】特開2017-107742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 33/00
H01M 4/131
H01M 4/485
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン元素、ニオブ元素、ドーパントM、および酸素元素を含み、上記チタン元素、上記ニオブ元素およ
び上記ドーパントMのモル比が1:(2-x):x(xが0.01~0.2)であるチタンニオブ複合酸化物であって、
上記ドーパントMは上記チタン元素、上記ニオブ元素および上記酸素元素からなる単斜晶系の結晶構造にドープされており、また、上記ドーパントMは
、AlおよびZrからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属元素であることを特徴とするチタンニオブ複合酸化物。
【請求項2】
上記結晶構造では、a軸の格子定数が20.375Å~20.415Åであり、b軸の格子定数が3.798Å~3.806Åであり、c軸の格子定数が11.897Å~11.920Åである、請求項1に記載のチタンニオブ複合酸化物。
【請求項3】
複数の数平均粒子径が1.5~1.9μmである粒子を含む、請求項1に記載のチタンニオブ複合酸化物。
【請求項4】
請求項1に記載のチタンニオブ複合酸化物を製造するチタンニオブ複合酸化物の製造方法であって、
第1の反応溶液および第2の反応溶液をそれぞれ用意する工程と、
滴下によりバッチで上記第2の反応溶液を
第1の反応溶液に混合して、混合溶液を形成する工程と、
上記混合溶液を加水分解および縮合反応させてチタンニオブ複合酸化物を得る工程と
、
加水分解および縮合反応の後に、上記チタンニオブ複合酸化物に乾燥、焼結および研削の順で処理を行う工程とを含み、
上記焼結処理は、温度が1000℃以上1400℃以下の条件で行われ、
上記研削処理の前に、焼結した前記チタンニオブ複合酸化物を4.5~8℃/minの冷却速度で冷却させ、
上記第1の反応溶液は、第1の溶媒、二種以上の酸剤、および界面活性剤を含み、
上記第2の反応溶液は、第2の溶媒、および上記溶媒に溶解した前駆体塩を含み、
上記前駆体塩は、チタン含有金属塩、ニオブ含有金属塩およびM含有金属塩を含み、また、上記Mは
、AlおよびZrからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属元素である、チタンニオブ複合酸化物の製造方法。
【請求項5】
上記第1の溶媒および第2の溶媒は、
それぞれ、脱イオン水、エタノール、イソプロパノールおよびテトラヒドロフランからなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
上記チタン含有金属塩は、チタンイソプロポキシド、クエン酸チタン、硫酸チタニル、チタンブトキシドおよび四塩化チタンからなる群から選ばれる少なくとも一つである、請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
上記ニオブ含有金属塩は、ニオブイソプロポキシド、五塩化ニオブ、ニオブエトキシドおよび水酸化ニオブからなる群から選ばれる少なくとも一つである、請求項4に記載の製造方法。
【請求項8】
上記M含有金属塩は
、アルミニウムイソプロポキシド、三塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムイソプロポキシドおよび酢酸ジルコニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項9】
上記界面活性剤は、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテルおよび臭化セチルトリメチルアンモニウムからなる群から選ばれる少なくとも一つである、請求項4に記載の製造方法。
【請求項10】
上記第2の反応溶液におけるチタン含有金属塩の滴下速度は0.06~0.10モル/minである、請求項4に記載の製造方法。
【請求項11】
上記混合溶液中の前駆体塩の体積モル濃度は20~25Mであり、上記混合溶液における界面活性剤と上記
チタン含有金属塩とのモル比は0.02:1~0.04:1である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項12】
上記酸剤は、硫酸、塩酸、硝酸および酢酸からなる群から選ばれる少なくとも二つである、請求項4に記載の製造方法。
【請求項13】
上記酸剤は塩酸と酢酸であり、第1の反応液における塩酸と酢酸の体積比は0.1:1~1:1である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項14】
上記混合溶液のpH値は1~6である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項15】
上記加水分解および縮合反応の温度は80~100℃であり、かつ、上記加水分解および縮合反応の時間は1~6時間である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項16】
上記乾燥処理は温度が50~150℃の条件で6~48時間連続して行われる、請求項
4に記載の製造方法。
【請求項17】
上記
焼結処理
は3~20時間連続して行われる、請求項
4に記載の製造方法。
【請求項18】
上記研削処理はボールミリングで2~20時間行う、請求項
4に記載の製造方法。
【請求項19】
請求項1に記載のチタンニオブ複合酸化物を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池用の活物質。
【請求項20】
正極と、請求項
19に記載の活物質を含む負極と、上記正極と上記負極との間に介在する電解質とを有することを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【請求項21】
上記活物質は、請求項1に記載のチタンニオブ複合酸化物を含み、上記チタンニオブ複合酸化物が負極に占める重量の比率は、60~80重量%である、請求項
20に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項22】
リチウム化率は5.1e-9~6.6e-9である、請求項
20に記載のリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の電極材料の技術分野に関し、特に、チタンニオブ複合酸化物、その製造方法、並びにそれを用いた活物質およびリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー貯蔵式の電子製品が現代生活に利便性をもたらし、充電・放電を繰り返す機能を持つ二次電池は、必要不可欠なものとなり、そのうちでも、リチウムイオン二次電池が最も広く使用されている。しかし、既存のリチウムイオン二次電池の電気容量および充放電スピードについて、需要に対応することはますます困難になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
良好なサイクル寿命とCレート性能を実現するために、現在では、従来の負極材料をチタン酸リチウムに置き換える研究が行われているが、その理論的な比容量(theoretical specific capacity)が低い(170mAh/g)ことに加えて、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度の向上についても非常に限られている。
【0004】
また、チタンニオブ酸化物(TiNb2O7)は、良好なサイクル寿命、およびチタン酸リチウムに近い作動電圧を有することから、最近では負極材料として注目されている。しかし、当該チタンニオブ酸化物の理論的な比容量は高い(270mAh)ものの、そのバンドギャップが大きすぎるため、電気伝導性が悪くなり、高速充放電性能試験においても有意な結果が得られない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記事情に鑑みて、産業界の実際的なニーズを満たすために、良好なサイクル寿命を有し、高電気容量で、充放電スピードが速い負極材料を提案する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決するために、本発明は、チタン元素、ニオブ元素、ドーパント(dopant)M、および酸素元素を含み、上記チタン元素、上記ニオブ元素および上記ドーパントMのモル比が1:(2-x):x(xが0.01~0.2)であるチタンニオブ複合酸化物であって、上記ドーパントMは上記チタン元素、上記ニオブ元素および上記酸素元素からなる単斜晶系の結晶構造にドープされており、また、上記ドーパントMは、Sn、AlおよびZrからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属元素であることを特徴とするチタンニオブ複合酸化物を提供する。
【0007】
本発明のチタンニオブ複合酸化物の一つの具体的な実施形態において、上記結晶構造では、a軸の格子定数が20.375Å~20.415Åであり、b軸の格子定数が3.798Å~3.806Åであり、c軸の格子定数が11.897Å~11.920Åである。
【0008】
本発明のチタンニオブ複合酸化物の一つの具体的な実施形態において、上記チタンニオブ複合酸化物は複数の数平均粒子径が1.5~1.9μmの粒子を含む。
【0009】
本発明は、また、
第1の反応溶液および第2の反応溶液をそれぞれ用意する工程と、
上記第1の反応溶液および上記第2の反応溶液をバッチで混合して、混合溶液を形成する工程と、
上記混合溶液を加水分解および縮合反応させてチタンニオブ複合酸化物を得る工程とを含み、
上記第1の反応溶液は、溶媒、二種以上の酸剤、および界面活性剤を含み、
上記第2の反応溶液は、溶媒、および上記溶媒に溶解した前駆体塩を含み、上記前駆体塩は、チタン含有金属塩、ニオブ含有金属塩およびM含有金属塩を含み、かつ、上記MはSn、AlおよびZrからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属元素であることを特徴とする、上記のチタンニオブ複合酸化物の製造方法を提供する。
【0010】
本発明の製造方法の一つの具体的な実施形態において、上記溶媒は、脱イオン水、エタノール、イソプロパノールおよびテトラヒドロフランからなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【0011】
本発明の製造方法の一つの具体的な実施形態において、上記チタン含有金属塩は、チタンイソプロポキシド、クエン酸チタン、硫酸チタニル、チタンブトキシドおよび四塩化チタンからなる群から選ばれる少なくとも一つである。
【0012】
本発明の製造方法の一つの具体的な実施形態において、上記ニオブ含有金属塩は、ニオブイソプロポキシド、五塩化ニオブ、ニオブエトキシドおよび水酸化ニオブからなる群から選ばれる少なくとも一つである。
【0013】
本発明の製造方法の一つの具体的な実施形態において、上記M含有金属塩は、塩化スズ、アルミニウムイソプロポキシド、三塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムイソプロポキシドおよび酢酸ジルコニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【0014】
本発明の製造方法の一つの具体的な実施形態において、上記界面活性剤は、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテルおよび臭化セチルトリメチルアンモニウムからなる群から選ばれる少なくとも一つである。
【0015】
本発明の製造方法の一つの具体的な実施形態において、上記第2の反応溶液は、滴下によりバッチで第1の反応溶液に混合されており、第2の反応溶液におけるチタン含有金属塩の滴下速度は0.06~0.10モル/minである。
【0016】
本発明の製造方法の一つの具体的な実施形態において、上記混合溶液に前駆体塩の体積モル濃度は20~25Mであり、混合溶液における界面活性剤と上記チタン含有金属塩とのモル比は0.02:1~0.04:1である。
【0017】
本発明の製造方法の一つの具体的な実施形態において、上記酸剤は、硫酸、塩酸、硝酸および酢酸からなる群から選ばれる少なくとも二つの酸剤をさらに含む。
【0018】
本発明の製造方法の一つの具体的な実施形態において、上記酸剤は塩酸と酢酸であり、第1の反応液における塩酸と酢酸の体積比は0.1:1~1:1である。
【0019】
本発明の製造方法の一つの具体的な実施形態において、上記混合溶液のpH値は1~6である。
【0020】
本発明の製造方法の一つの具体的な実施形態において、上記加水分解および縮合反応の温度は80~100℃であり、また、上記加水分解および縮合反応の時間は1~6時間である。
【0021】
本発明の製造方法の一つの具体的な実施形態において、上記チタンニオブ複合酸化物の製造方法は、加水分解および縮合反応の後に、チタンニオブ複合酸化物に乾燥、焼結および研削の順で処理を行うことをさらに含む。
【0022】
本発明の製造方法の一つの具体的な実施形態において、上記乾燥処理は温度が50~150℃の条件で6~48時間連続して行われる。
【0023】
本発明の製造方法の一つの具体的な実施形態において、上記焼結処理は温度が800~1400℃の条件で3~20時間連続して行われる。
【0024】
本発明の製造方法のもう一つの具体的な実施形態において、上記研削処理の前に、焼結した前記チタンニオブ複合酸化物を4.5~8℃/minの冷却速度で冷却させることをさらに含む。
【0025】
本発明の製造方法の一つの具体的な実施形態において、上記研削処理はボールミリングで2~20時間行う。
【0026】
本発明は、上記チタンニオブ複合酸化物を含むリチウムイオン二次電池用の活物質をさらに提供する。
【0027】
本発明は、正極と、上記活物質を含む負極と、正極と負極との間に介在する電解質とを有するリチウムイオン二次電池をさらに提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ドーパントMの導入により、フェルミ準位の不純物バンドが形成され、その伝導帯と価電子帯との間のバンドギャップを減少させ、電気伝導性の向上に寄与する。また、上記ドーパントMのインターカレーションにより、結晶構造の空間が延伸されるため、リチウムイオン二次電池に適用する場合のリチウムイオンのインターカレーションに対する内部抵抗を低減することができ、高いリチウム化率を達成する。
【0029】
一方、本発明は、(1)滴下の方法で反応溶液を混合するプロセスにより、チタンニオブ複合酸化物を生成する反応速度を制御して、上記チタンニオブ複合酸化物を最適な配列形態に形成する工程、(2)特定の焼結温度の範囲を選択することにより、生成されるチタンニオブ複合酸化物の粒子径のサイズをより微細化して、分布均一性を向上して、かつ、その結晶構造を一致化する工程、および(3)焼結後の冷却プロセスを特定の速度範囲で実行することで、当該チタンニオブ複合酸化物における結晶の核生成と成長速度を制御して、その結晶構造を最適化することにより、得られたチタンニオブ複合酸化物をリチウムイオン二次電池に適用する場合のリチウムイオンのインターカレーションに対する内部抵抗を効果的低減でき、これにより、その電気的性能を向上させる工程を含む、上記チタンニオブ複合酸化物の最適化された製造方法をさらに提供する。上記の技術的手段により、より長いサイクル寿命、より大きな電気容量、およびより速い充電・放電特性という良好な電気的性能を有するチタンニオブ複合酸化物を提供することができるため、適用の見通しは有望である。
以下、例示的な図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1はX線回折装置により同定された結晶構造であって、そのうち、
図1(A)はドーパントを添加しないチタンニオブ酸化物であり、
図1(B)はドーパントAlを有し、また、その導入量xが0.07のチタンニオブ複合酸化物である。
【
図2】
図2は本発明に係るチタンニオブ複合酸化物の製造方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は走査型電子顕微鏡で観察された表面トポグラフィーであって、そのうち、
図3(A)はドーパントを添加しないチタンニオブ酸化物であり、
図3(B)はドーパントAlを有し、また、その導入量xが0.03のチタンニオブ複合酸化物であり、
図3(C)はドーパントAlを有し、かつ導入量xが0.05のチタンニオブ複合酸化物であり、
図3(D)はドーパントAlを有し、また、その導入量が0.07のチタンニオブ複合酸化物である。
【
図4】
図4はX線回折装置で測定されたX線回折スペクトルであって、そのうち、
図4(A)は試験例1のチタンニオブ酸化物であり、
図4(B)は実施例1のチタンニオブ複合酸化物であり、
図4(C)は実施例2のチタンニオブ複合酸化物であり、
図4(D)は実施例3のチタンニオブ複合酸化物であり、
図4(E)はデータベース(JCPDS:77-1374)からの参考データである。
【
図5】
図5は試験試1~4のリチウムイオン二次電池の電気サイクル安定性を示すグラフである。
【
図6】
図6はX線回折装置で測定されたX線回折スペクトルであって、
図6(A)は試験例1のチタンニオブ酸化物であり、
図6(B)は試験例3のチタンニオブ酸化物であり、
図6(C)はデータベース(JCPDS:77-1374)からの参考データである。
【
図7】
図7は試験例1および試験例4のチタンニオブ酸化物のX線回折スペクトルの部分拡大図である。
【
図8A】
図8(A)~(D)はリチウムイオン二次電池の掃引ボルタンメトリー図であって、
図8(A)は比較例のチタンニオブ酸化物である。
【
図8B】
図8(A)~(D)はリチウムイオン二次電池の掃引ボルタンメトリー図であって、
図8(B)は実施例1のチタンニオブ複合酸化物である。
【
図8C】
図8(A)~(D)はリチウムイオン二次電池の掃引ボルタンメトリー図であって、
図8(C)は実施例2のチタンニオブ複合酸化物である。
【
図8D】
図8(A)~(D)はリチウムイオン二次電池の掃引ボルタンメトリー図であって、
図8(D)は実施例3のチタンニオブ複合酸化物である。
【
図9】本発明の実施例および比較例のリチウムイオン二次電池の抵抗を示すグラフである。
【
図10】本発明の実施例および比較例のリチウムイオン二次電池のCレート性能を示すグラフである。
【
図11】本発明の実施例および比較例のリチウムイオン二次電池の長期充電・放電サイクル安定性を示すグラフである。
【
図12】本発明の実施例4のリチウムイオン二次電池のレート充電・放電特性(部分拡大図)、および0.1Cの速度条件での長期充電・放電サイクル安定性を示すグラフである。
【
図13】本発明の実施例4のリチウムイオン二次電池を0.1Cの速度条件で充電・放電10サイクルさせた後、0.2Cの速度条件で充電・放電する場合の長期充電・放電サイクルの安定性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、特定の具体的な実施例により本発明の実施形態を説明するが、当業者は本明細書に記載される内容から容易に本発明の利点および効果を理解することができる。また、本発明は他の異なる実施形態により実施または適用され、本明細書に記載される詳細内容も、様々な観点や目的に応じて、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々な修飾、変更を行うことができる。また、本明細書に記載のすべての数値範囲は、包含的で組合せることができるものである。なお、本明細書に記載の範囲内に含まれる任意の数値または端点、例えば、任意の整数を最小値または最大値として、サブ範囲を導き出すことなどができる。
【0032】
本発明によれば、チタンニオブ複合酸化物とは、チタン元素、ニオブ元素、ドーパントM、および酸素元素を含み、上記チタン元素、上記ニオブ元素および上記ドーパントMのモル比が1:(2-x):x(xが0.01~0.2)であるチタンニオブ複合酸化物であって、上記xはドーパントMの導入量であり、上記ドーパントMは、Sn、AlおよびZrからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属元素である。本発明において、上記ドーパントMは、小さな割合でそのバンドギャップ構造を変化させ、伝導帯と価電子帯との間の距離を短縮して、その電気的性能を改善することができる。
【0033】
一つの具体的な実施形態において、チタンニオブ複合酸化物中のドーパントMはAlまたはZrであり、また、チタン元素、ニオブ元素およびドーパントMのモル比は1:(2-x):x(Xの範囲が0.01~0.1)である。他の実施形態において、xは0.03、0.05、または0.07であってもよいが、これらに限定されない。
【0034】
本発明において、上記チタンニオブ複合酸化物は結晶体を有する。本明細書において、上記「結晶構造」は、複数の単位胞(unit cell)が連続的に延伸して配列することにより形成されており、また、この単位胞の骨格部分は上記チタン元素、上記ニオブ元素および上記酸素元素から構成されるが、対称構造に限らず、非対称の歪み構造も含む。
【0035】
一つの具体的な実施形態において、本発明のチタンニオブ複合酸化物は、単斜晶系の結晶構造を有し、上記単斜晶系構造は、TiO6八面体およびNbO6八面体が稜および頂点を共有することで形成されるReO3型構造である。ここで、上記結晶構造は空間群C2/mを有するAB2O7構造であり、そのうち、Aはチタン元素、Bはニオブ元素であり、そのイオンの価数変化は限定されない。
【0036】
X線回折分析装置を同定したところ、上記ドーパントMが上記チタン元素、上記ニオブ元素および上記酸素元素からなる単斜晶系の結晶構造にドープされている。一つの実施例において、
図1(B)は、実施例であるドーパントAlを有するチタンニオブ複合酸化物の構造についての同定結果を示し、ドーパントを添加しない
図1(A)に比べて、当該ドーパントAlの導入量xが0.07である場合、その結晶構造の骨格にあるチタン元素、ニオブ元素、酸素元素の割合は変わらず、具体的には、当該ドーパントMは、結晶構造の骨格部のいずれかの元素を置換することがなく、上記結晶構造の空孔にインターカレーションされる。
【0037】
上記結晶構造の特徴である場合に、その単位胞の各軸における寸法および体積をさらに分析したところ、ドーパントを添加しないものに比べて、上記ドーパントを選択・使用ことにより、「上記結晶構造の空間を延伸する」という効果をさらに提供されることを示す。一つの具体的な実施形態において、本発明のチタンニオブ複合酸化物の結晶構造では、a軸の格子定数が20.375Å~20.415Åであり、b軸の格子定数が3.798Å~3.806Åであり、c軸の格子定数が11.897Å~11.920Åである。もう一つの具体的な実施形態において、本発明のチタンニオブ複合酸化物の結晶構造の体積が795.716Å3~800.181Å3であり、上記の数値について、精度が保証されているが、実験上の誤差や偏差値を考慮する必要がある。
【0038】
一つの実施例において、ドーパントが全く導入されていない場合に、上記結晶構造では、a軸の格子定数が20.3766Åであり、b軸の格子定数が3.79981Åであり、c軸の格子定数が11.89960Åであり、結晶構造全体の体積が795.9297Å3である。ドーパントがAlである場合、上記チタンニオブ複合酸化物の結晶構造では、a軸の格子定数が20.3820Å~20.415Åであり、b軸の格子定数が3.799Å~3.806Åであり、c軸の格子定数が11.904Å~11.920Åであり、ここで、チタンニオブ複合酸化物の結晶構造の体積が796.00Å3~796.45Å3である。もう一つの実施例において、ドーパントがZrである場合、上記チタンニオブ複合酸化物の結晶構造では、a軸の格子定数が20.400Å~20.415Åであり、b軸の格子定数は3.802Å~3.806Åであり、c軸の格子定数が11.911Å~11.920Åであり、ここで、チタンニオブ複合酸化物の結晶構造の体積が798.400Å3~800.181Å3である。
【0039】
上記ドーパントMのインターカレーションにより、その結晶構造の空間が延伸され、リチウムイオン二次電池に適用する場合、リチウムイオンのインターカレーションに対する内部抵抗を低減させ、リチウム化率の性能が向上する。
【0040】
以下、ドーパントの導入によるリチウム化率の変化について具体的に説明する。ドーパントが全く導入されない場合、リチウム化率は4.69e-9である。一つの実施例において、ドーパントAlを導入し、かつ導入量が0.03~0.07である場合、リチウム化率は5.1e-9~6.6e-9に達し得る。これは、ドーパントMの使用はリチウム化率を大幅に向上させる効果があることを示している。
【0041】
一方、ドーパントを有しないチタンニオブ酸化物に比べて、ドーパントAlの導入量xが0.03~0.07である場合、材料全体は単斜晶系の結晶構造のみを有し、他の結晶相は存在せず、すなわち、本発明のチタンニオブ複合酸化物は、純粋な単相である単斜晶系の結晶構造であり、その結晶の配列が一致であることを示すため、不完全な結晶相に起因する不具合が材料の電気伝導性に影響することを避けることができる。
【0042】
また、一つの具体的な実施形態において、本発明の製造方法により、本発明のチタンニオブ複合酸化物の(110)結晶面および(003)結晶面における回折強度の比が1~1.2の範囲内にあるため、リチウムイオン二次電池の使用において良好かつ安定である電気的性能を示すことができる。
【0043】
前記チタンニオブ複合酸化物の表面形態および粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察することができる。
【0044】
本発明のチタンニオブ複合酸化物は、複数の粒子を含み、前記複数の粒子の形状は特に限定されず、球状、塊状、柱状などのいずれの形状であってもよい。本発明において、前記チタンニオブ複合酸化物の粒子径の測定は、放大倍率10000Xの視野範囲での計測結果である。粒子の形状が球状ではない場合、粒子の輪郭上の任意の2点間での最長距離(最大フェレット径)を測定する。本発明において、上記チタンニオブ複合酸化物の複数の粒子の数平均粒子径は、1.5~1.9μmである。
【0045】
他の実施形態において、上記チタンニオブ複合酸化物の複数の粒子の数平均粒子径は、1.55、1.60、1.65、1.70、1.75、1.8または1.85μmであってもよいが、これらに限定されない。また、これらの数値は数平均粒子径の上限値または下限値とすることができ、例えば、上記チタンニオブ複合酸化物は数平均粒子径が1.5~1.85μmの粒子である。
【0046】
粒子径分布の均一性については、平均値から離れた標準偏差の値の大きさにより評価し、また、上記標準偏差の値は粒子径分布の統計解析に基づいて算出される。もう一つの実施形態において、本発明のチタンニオブ複合酸化物の粒子径分布での標準偏差は0.32~0.34μmであり、これは、本発明のチタンニオブ複合酸化物が非常に高い均一性を有することを示している。
【0047】
ドーパントMの導入により、本発明のチタンニオブ複合酸化物の結晶構造が延伸され、その伝導帯と価電子帯との間のバンドギャップを減少させるとともに、結晶の配列、結晶度および成形粒子径のサイズを最適化させることにより、従来のチタンニオブ酸化物(TiNb2O7)に存在する電気伝導性の問題を効果的に解決することができ、良好な充電・放電サイクル性能を提供する。
【0048】
上記チタンニオブ複合酸化物について、本発明は、さらに上記チタンニオブ複合酸化物の製造方法を提供する。以下、
図2を参照しながら、本発明のチタンニオブ複合酸化物の製造方法のフローについて説明する。まず、第1の反応液と第2の反応液をそれぞれ用意する(ステップS11);続いて、上記第1の反応液と上記第2の反応液をバッチで混合して、混合溶液を形成する(ステップS12);続いて、上記混合溶液を加水分解および縮合反応させる(ステップS13);チタンニオブ複合酸化物を得る(ステップS14)。
【0049】
上記第1の反応溶液は、溶媒、二種以上の酸剤、および界面活性剤を含むものである。上記第2の反応溶液は、溶媒、および上記溶媒に溶解した前駆体塩を含むものであり、上記前駆体塩は、チタン含有金属塩、ニオブ含有金属塩およびM含有金属塩を含み、上記Mは、Sn、AlおよびZrからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属元素である。一つの実施例において、上記金属塩は、金属アルコキシド、金属クエン酸塩、金属酢酸塩、金属硫酸塩、金属硫酸塩酸化物、金属ハロゲン化物、金属アセチルアセトネート系化合物および金属水酸化物からなる群から選択されるいずれか一方である。もう一つの実施例において、上記金属ハロゲン化物は金属塩化物である。
【0050】
上記第1の反応溶液および上記第2の反応溶液の調製については、一つの具体的な実施形態において、上記第1の反応溶液および上記第2の反応溶液の調製は、撹拌により溶液中の固形物を完全に溶解し、均一な相となるように行われる。
上記溶媒は、脱イオン水、エタノール、イソプロパノールおよびテトラヒドロフランからなる群から選ばれる少なくとも一種である。ここで、上記第1の反応溶液および上記第2の反応溶液における溶媒は、同じであっても異なっていてもよい。一つの具体的な実施形態において、上記第1の反応溶液の溶媒は上記第2の反応溶液の溶媒と同じであり、かつ上記溶媒はエタノールである。
【0051】
一つの具体的な実施形態において、上記チタン含有金属塩は、チタンアルコキシド、クエン酸チタン、硫酸チタニルおよびハロゲン化チタンからなる群から選択される少なくとも一つである。もう一つの具体的な実施形態において、上記チタン含有金属塩は、チタンイソプロポキシド、クエン酸チタン、硫酸チタニル、チタンブトキシドおよび四塩化チタンからなる群から選ばれる少なくとも一つである。さらにもう一つの具体的な実施形態において、上記チタン含有金属塩はチタンイソプロポキシドである。
【0052】
一つの具体的な実施形態において、上記ニオブ含有金属塩は、ニオブアルコキシド、ニオブ水酸化物およびニオブハロゲン化物からなる群から選ばれる少なくとも一つである。もう一つの具体的な実施形態において、上記ニオブ含有金属塩は、ニオブイソプロポキシド、五塩化ニオブ、ニオブエトキシドおよび水酸化ニオブからなる群から選ばれる少なくとも一つである。さらにもう一つの具体的な実施形態において、上記ニオブ含有金属塩は、ニオブエトキシドである。
【0053】
一つの具体的な実施形態において、上記M含有金属塩は、金属Mのアルコキシド、金属Mの硫酸塩、金属Mの酢酸塩、金属Mのハロゲン化物および金属Mのアセチルアセトネート系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一つである。もう一つの具体的な実施形態において、上記M含有金属塩は、塩化スズ、アルミニウムイソプロポキシド、三塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムイソプロポキシドおよび酢酸ジルコニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種である。さらにもう一つの実施形態において、上記M含有金属塩は、アルミニウムアセチルアセトネートまたはジルコニウムアセチルアセトネートである。
【0054】
上記酸剤は、硫酸、塩酸、硝酸および酢酸からなる群から選ばれる少なくとも二つである。一つの具体的な実施形態において、上記酸剤は塩酸と酢酸であり、かつ、上記第1の反応溶液中の塩酸と酢酸の体積比は0.1:1~1:1である。
【0055】
本明細書において、上記「界面活性剤」というのは、特定のpH値の範囲でミセルを形成し、成形テンプレートとして、チタン元素、ニオブ元素およびドーパントMを導き、比率でドーパントMがインターカレーションされた単斜晶系の結晶構造を有するチタンニオブ複合酸化物を形成するものである。一つの具体的な実施形態において、上記界面活性剤は、ブロック共重合体またはC12~18の直鎖アルキルセグメントを有する第四級アンモニウム塩であってもよい;もう一つの実施形態において、上記界面活性剤は、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテルおよび臭化セチルトリメチルアンモニウムからなる群から選ばれる少なくとも一つである。ここで、上記ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体の重量平均分子量の範囲は150~200g/molであり、上記ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテルの重量平均分子量の範囲は600~700g/molであり、上記臭化セチルトリメチルアンモニウムの分子量は364.45g/molである。
【0056】
第1の反応溶液と第2の反応溶液をバッチで混合する方法については、一つの具体的な実施形態において、本発明は、「滴下」という方法で混合することにより、反応速度を制御し、結晶構造の不具合や不純物の発生を減少させ、得られたチタンニオブ複合酸化物が最適な配列形態を形成し、リチウムイオン二次電池の用途で良好なサイクル安定性を示す。
【0057】
一つの具体的な実施形態において、上記のバッチで混合するプロセスとは、第2の反応溶液を第1の反応溶液に滴下することである。そのうち、上記第2の反応溶液中のチタン含有金属塩の滴下速度は、0.06~0.10モル/minであり、滴下時の温度条件は20~40度である。他の実施形態において、上記第2反応溶液中のチタン含有金属塩の滴下速度は、0.065、0.07、0.075、0.08、0.085、0.09または0.095モル/minであってもよいが、これらに限定されない。もう一つの具体的な実施形態において、上記のバッチで混合するプロセスは、上記第1の反応溶液を上記第2の反応溶液に滴下することにより行うこともできる。
【0058】
もう一つの具体的な実施形態において、混合プロセスが完了した後、上記混合溶液中の前駆体塩の体積モル濃度は20~25Mであり、上記混合溶液中の界面活性剤と上記チタン含有金属塩とのモル比は0.02:1~0.04:1である。
【0059】
さらにもう一つの具体的な実施形態において、混合プロセスが完了した後、上記混合溶液のpH値は1~6である。他の実施形態において、上記混合溶液のpH値は、2、3、4または5であってもよいが、これらに限定されない。
【0060】
本明細書において、上記「加水分解および縮合反応」は同時に起こる反応であり、具体的な反応工程は、前駆体反応物が加水分解により中間生成物を生成し、一度縮合してコロイド粒子を形成して、さらに縮合して三次元ネットワークを形成することである。一つの具体的な実施形態において、加水分解および縮合反応の温度は80~100℃であり、その時間は1~6時間である。他の実施形態において、上記加水分解および縮合反応の温度は、85、90または95℃であってもよく、上記処理時間は、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5または5.5時間であってもよいが、これらに限定されない。
【0061】
具体的な実施形態において、本発明の製造方法は、上記製造方法のフローの後で、上記チタンニオブ複合酸化物に対して乾燥処理、焼結処理を順次に行って、最適な結晶構造の配列を有するチタンニオブ複合酸化物を形成する。
【0062】
一つの実施例において、上記乾燥処理は、温度が50~150℃の条件で6~48時間連続して行われる。他の実施形態において、上記乾燥処理の温度は、60、70、80、90、100、110、120、130または140℃であってもよく、上記処理時間は、12、18、24、30、36または42時間であってもよいが、これらに限定されない。
【0063】
一つの実施例において、上記焼結処理は、温度が800~1400℃の条件で3~20時間連続して行われる。一つの実施例において、上記焼結処理の温度は1000℃以上1400℃以下であり、特定の焼結温度の範囲を選択することにより、生成されるチタンニオブ複合酸化物の粒子径のサイズをより微細化して、分布の均一性が高く、その結晶構造が一致化する傾向がある。もう一つの実施例において、本発明のチタンニオブ複合酸化物からなる結晶の構造を最適化するために、上記焼結処理の温度は、1100℃~1300℃である。他の実施形態において、上記焼結処理の温度は、1150、1200、1230、1250または1270℃であってもよく、上記焼結処理の時間は、5、7、10、12、15または17時間であってもよいが、これらに限定されない。
【0064】
焼結プロセスが完了した後、本発明では、上記チタンニオブ複合酸化物における結晶の核形成および成長速度を制御して、結晶構造を最適化することにより、得られたチタンニオブ複合酸化物がリチウムイオン二次電池に適用され、リチウムイオンのインターカレーションに対する内部抵抗を効果的低減させるために、さらに特定の速度で冷却プロセルを実施する。一つの実施形態において、上記焼結後の冷却速度は4.5~8℃/minである。他の実施形態において、上記焼結後の冷却速度は、5、5.5、6、6.5、7または7.5℃/minであってもよいが、これらに限定されない。
【0065】
もう一つの具体的な実施形態において、本発明の製造方法は、乾燥処理および焼結処理の後で、さらに上記チタンニオブ複合酸化物に研削処理を行うことにより、上記チタンニオブ複合酸化物の径子粒分布を制御する。一つの実施例において、上記研削処理は、ボールミリングで2~20時間行う。他の実施形態において、処理時間は、5、7、10、12、15、または17時間であってもよいが、これらに限定されない。
【0066】
一方、本発明は、上記チタンニオブ複合酸化物からなる、リチウムイオン二次電池の負極に用いる活物質をさらに提供する。また、本発明は、正極と、上記活物質を含む負極と、上記正極と上記負極との間に介在する電解質とを含むリチウムイオン二次電池をさらに提供し、これにより、本発明のリチウムイオン二次電池のリチウム化率が5.1e-9~6.6e-9となる。
【0067】
一つの具体的な実施形態において、上記チタンニオブ複合酸化物が負極に占める重量の比率は、60~90重量%である。
【0068】
もう一つの実施形態において、上記負極は、導電性材料および粘着剤をさらに含み、上記導電性材料および粘着剤は、従来の材料から選択することもできる。一つの実施例において、上記導電性材料は、アセチレンブラック、導電性カーボンおよびカーボンナノチューブからなる群から選ばれる一つである。上記粘着剤は、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリフッ化ビニリデン、アルギン酸ナトリウムおよびペクチンからなる群から選ばれる一つである。
【0069】
本発明により提供されるチタンニオブ複合酸化物は、良好な電気伝導性および優れた結晶構造などの特性を有するので、それを用いた活物質およびリチウムイオン二次電池は、より長いサイクル寿命、より大きな電気容量およびより速い充電・放電特性を実現することができ、適用の見通しが良好である。
【0070】
以下、具体的な実施例により、本発明の特性および効果についてより詳しく説明するが、本発明の範囲は実施例の記載に限定されない。
【0071】
実施例及び比較例で得られた生成物の特徴は次のように分析される。
(1)表面観察と粒子径の分析:走査型電子顕微鏡(Thermo Fisher、FEI Inspect-F)で上記生成物の外見を観察し、放大倍率10000Xの視野範囲でその粒子径サイズを計測し、さらに、粒子径分布の統計結果から標準偏差値を算出することにより、粒子径分布の均一性を評価する。
(2)結晶特性の分析: X線回折装置(Malvern Panalytical、Empyrean)を用いて生成物の結晶構造を分析し、標準データベース(JCPDS:77-1374)と対比する。Highscoreおよび Fullprofというソフトウェアで分析した後、さらに結晶面の回折強度の比、単位胞の各軸における寸法および体積などの情報が得られる。
【0072】
また、実施例及び比較例で得られたリチウムイオン二次電池は以下の方法で測定する。
(1)スイープボルタンメトリーの測定:電気化学インピーダンスアナライザー(PARSTA、PMC-1000)を用いて、電位掃引速度が0.1mV/Sの条件で、電圧掃引が0~3ボルトの範囲にわたって複数回のサイクリックスイープを行って、サイクリックボルタモグラムを取得する。
(2)リチウム化率:電気化学インピーダンスアナライザー(PARSTA、PMC-1000)を用いて、電圧掃引が0~3Vの範囲で、電位掃引速度が0.05mV/S、0.1mV/S、0.2mV/S、0.3mV/S、0.4 mV/S、0.5 mV/Sの条件で、それぞれサイクリックスイープを行って、そのリチウム化率を算出することにより、電池におけるリチウムのインターカレーション、脱出、およびその他の電気化学的特性を評価する。
(3)抵抗:電気化学インピーダンスアナライザー(PARSTA、PMC-1000)で分析し、ナイキスト線図(Nyquist Plot)を取得する。図の中に、半円弧は高周波での測定値であり、電解液の伝導の抵抗値を表し、また、半円弧が大きいほど電荷移動抵抗が大きくなり、斜線は低周波での測定値であり、電極材料中のリチウムイオンの拡散抵抗を表し、斜線の傾きが小さいほどリチウムイオンの拡散抵抗が大きくなる。
(4)レート充電・放電特性の分析:充放電試験機(Think Power、TPT-B1HC010A)を用いて、充放電スピードがそれぞれ0.1C、0.2C、0.5C、1C、3C、5C、10Cの条件で、それぞれの充放電スピードの条件下での電気容量を測定する。
(5)電気サイクル安定性:充放電試験機(Think Power、TPT-B1HC010A)を用いて、25℃の温度で、使用電圧が1~3Vの範囲にわたって充電・放電を複数回繰り返して、充電・放電サイクルごとでのリチウムイオン電池の電気容量を測定する。
【0073】
<製造方法のパラメータ試験>
試験例1:
【0074】
[第1の反応溶液の調製]
界面活性剤として臭化セチルトリメチルアンモニウム(10g)を、酸剤として塩酸(15ml)および酢酸(15ml)をそれぞれ用意し、上記界面活性剤および酸剤を溶媒であるエタノールに均一に溶解させて、第1の反応溶液を形成する。
【0075】
[第2の反応溶液の調製]
チタン含有金属塩であるチタンイソプロポキシド(8.52g)およびニオブ含有金属塩であるニオブエトキシド(19.08g)を前駆体塩として用い、上記前駆体塩を溶媒であるエタノールに均一に溶解させて、第2反応溶液を形成する。
【0076】
[混合および反応のプロセス]
上記第2反応液を上記第1反応液に滴下し、上記第2反応溶液をそのチタンイソプロポキシドの滴下速度が0.08モル/minとなるように滴下して混合し、混合液を形成する。上記混合溶液において、前駆体塩の体積モル濃度は23.07Mであり、上記チタン元素と上記ニオブ元素とのモル比は1:2であり、上記界面活性剤と上記チタンイソプロポキシドとのモル比は0.0274:1であり、上記塩酸と上記酢酸との体積比は1:1である。
【0077】
続いて、上記混合溶液を反応釜に移して攪拌を続けた後、80℃まで昇温して、それに保温し、加水分解および縮合反応を3時間行う。
【0078】
[反応後の処理]
反応終了後、反応釜を室温まで冷却して、チタンニオブ複合酸化物の粗生成物を得る。続いて、得られたチタンニオブ複合酸化物の粗生成物を真空オーブンに入れ、80℃で12時間乾燥した後、温度が1200℃のマッフル炉に移して10時間焼結処理する。焼結処理終了後、6℃/minの速度で室温まで冷却し、チタンニオブ酸化物を得る。
【0079】
上記の分析方法に従って、得られた上記チタンニオブ酸化物に対して表面観察、粒子径及び結晶性の分析を行い、その表面観察および結晶性の分析の結果を
図1、
図3、
図4および
図6に記録する。ここで、測定された数平均粒子径は2.3μmであり、その分布の標準偏差は0.32μmである。結晶性については、(110)結晶面と(003)結晶面との回折強度の比は1.04±0.01である。
【0080】
[負極材料の作製]
まず、活物質として、得られた上記チタンニオブ酸化物を用い、このチタンニオブ酸化物に前処理を行い、その手順は以下のとおりである。チタンニオブ酸化物(7g)と導電性カーボン(SuperPおよびKS6をそれぞれ1g)を混合し、750rpmの速度で2時間研削して、混合物を形成する。
【0081】
次に、研削した混合物を粘着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)および溶剤であるN-メチルピロリドンと混合して、塗布用スラリーを製造する。ここで、上記塗布用スラリー中の各組成成分の比率を重量%で表わすと、チタンニオブ酸化物が70重量%であり、導電性カーボンSuperPが10重量%であり、導電性カーボンKS6が10重量%であり、粘着剤PVDFが10重量%であり、当該スラリーの溶媒が約13.3~14.3mlであり、全固形分が57.7~55.8%である。
【0082】
撹拌装置により、上記スラリーを回転数2000rpmで30分間撹拌して、材料を均一に分散させる。上記スラリーを200μmのギャップを有するスクレイパーでアルミニウム箔に塗布する。続いて、塗布した半成品を120℃の恒温オーブンに入れて、乾燥処理し、一晩放置する。
【0083】
乾燥処理した後、厚さが80~85μmの負極を得る。上記負極をローリングすることにより厚さが60~65μmとなるように調整し、打錠機で切断して、上記負極を直径が13mmの円形である負極シートを作製し、また、組み立て前に、120℃の温度で8時間真空乾燥させる。
【0084】
[リチウムイオン二次電池の組み立て]
組み立て前に、作製した上記負極シートを秤量して、また、上記負極シートの表面を洗浄するために、それに予めに組成が1MのLiPF6および体積比が1:1のエチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)からなる電解質に含浸させる。次いで、電池カバー下部、リチウムシート、セパレータフィルム、本実施例で得られたチタンニオブ酸化物を含む負極シート、ステンレスガスケット、ステンレススプリングプレートおよび電池のトップカバーなどの部品を下から上への順で組み合わせる。組み立てる過程では、47.7μLの電解液を加えて、電池の正極と負極を電解液に含浸させ、1トンの重力で密閉して、ボタン型電池を形成する。
【0085】
最後に、上記の測定方法に従って、サイクル安定性を分析して、その結果を
図5に記録する。ここで、上記電気サイクル安定性の分析での充放電スピードは0.1Cである。
【0086】
試験例2:混合プロセスの方法の違い
【0087】
チタンニオブ酸化物、それを含む負極材料、リチウムイオン二次電池の製造方法は、いずれも試験例1と同様であり、ただし、加水分解および縮合反応の前の混合プロセスは、第2の反応溶液をそのまま第1の反応溶液に入れて混合するものとする。続いて、上記の測定方法に従い、試験例1と同様な充放電スピード条件で、リチウムイオン二次電池の電気サイクル安定性を分析して、その結果を
図5に記録する。
【0088】
以上のことから、試験例2の「そのまま混合する」ことに比べて、試験例1の「滴下」のほうが反応の速度を効果的制御して、結晶構造の不具合や不純物の発生を低減できるため、試験例1で得られたチタンニオブ複合酸化物は、リチウムイオン二次電池の用途において良好なサイクル安定性を示している。
【0089】
試験例3:焼結処理での温度変化
【0090】
チタンニオブ酸化物の製造方法において、焼結温度を900℃に調整する以外は、試験例1と同様に行う。なお、上記の粒子径および結晶特性の分析方法に従って、得られたチタンニオブ酸化物を分析する。分析したところ、その数平均粒子径は2.5μmであり、分布の標準偏差は0.49μmであり、その結晶特性の結果を
図6に記録する。
【0091】
次に、負極材料の作製およびリチウムイオン二次電池の組み立てる方法は、試験例1と同様に実施し、また、上記の測定方法に従って、試験例1と同様な充放電スピードの条件で、リチウムイオン二次電池に対して電気サイクル安定性を分析して、その結果を
図5に記録する。
【0092】
以上のことから、試験例3の低温焼成で得られたチタンニオブ酸化物は、分布の均一性が悪く、その結晶構造は、Ti2Nb10O29の結晶相をさらに含むことが分かる。これに対し、試験例1における高い焼結温度で得られたチタンニオブ酸化物は、粒子径がより細かく、分布の均一性が高く、その結晶構造が一致化する傾向があり、リチウムイオン二次電池の用途において良好なサイクル安定性も示していることから、焼結温度の条件が生成物および用途に大きな影響を与えることを示している。
【0093】
試験例4:焼結処理後の冷却速度の変更
【0094】
チタンニオブ酸化物の製造方法において、焼結後の冷却速度を3℃/minに変更する以外は、試験例1と同様に行う。また、上記結晶特性の分析方法に従って得られたチタンニオブ酸化物を分析し、その結晶特性の結果を
図7に記録する。
【0095】
次に、負極材料の製造およびリチウムイオン二次電池の組み立て方法は、試験例1と同様に実施し、上記測定方法に従って、試験例1と同様な充電・放電速度の条件で、リチウムイオン二次電池に対して電気サイクル安定性を分析して、その結果を
図5に記録する。
【0096】
以上のことから、冷却速度が遅い試験例4と比較する場合に、
図7のX線回折スペクトル図において、試験例4の回折ピークが高角側にシフトする傾向があり、冷却速度が遅い場合で形成される結晶構造、その空間は比較的に圧縮されることが示していることから、試験例1には、そのチタンニオブ酸化物における結晶の核の生成および成長の速度を制御することで、得られたチタンニオブ酸化物を試験例4よりも大きい結晶構造の空間を有し、リチウムイオン二次電池に適用するときに、リチウムイオンのインターカレーションに対する内部抵抗を低減できるため、サイクル安定性に優れていることを確認できる。
【0097】
<チタンニオブ複合酸化物の製造>
【0098】
比較例:チタンニオブ酸化物
【0099】
試験例1で得られたチタンニオブ酸化物、負極材料およびリチウムイオン二次電池を用いて、上記の分析方法および結果を参考する。結晶構造について、単位胞の各軸における寸法は、表1に記録する。
【0100】
次に、上記の測定方法に従って、得られたリチウムイオン二次電池に対してスイープボルタンメトリーの測定、リチウム化率、抵抗率、Cレート性能およびサイクル安定性の分析を行い、その結果を表2および
図8~11に記録する。ここで、前記サイクル安定性分析の充放電スピードの条件は1Cである。
【0101】
実施例1:ドーパントAlを有するチタンニオブ複合酸化物
【0102】
チタンニオブ複合酸化物の製造方法において、前駆体塩の組成をチタン含有金属塩であるチタンイソプロポキシド(8.52g)、ニオブ含有金属塩であるニオブエトキシドおよびアルミニウム含有金属塩であるアルミニウムアセチルアセトネート(0.291g)に変更することにより、混合溶液中のチタン元素、ニオブ元素およびアルミニウム元素のモル比を1:1.97:0.03にすること以外は、試験例1と同様にチタンニオブ複合酸化物を得る。
【0103】
次に、上記の表面形態、粒子径および結晶特性の分析方法に従って、得られたチタンニオブ複合酸化物を分析し、その表面観察および結晶特性の結果を表1、
図3および
図4に記録する。ここで、測定された数平均粒子径は1.6μmであり、分布の標準偏差は0.32μmである。結晶特性については、(110)結晶面と(003)結晶面との回折強度の比は1.07±0.01である。
【0104】
また、負極材料の作製およびリチウムイオン二次電池の組み立て方法は、試験例1と同様にして、上記の測定方法に従って、スイープボルタンメトリーの測定、リチウム化率、抵抗率、Cレート性能およびサイクル安定性の分析を行い、その結果を表2および
図8~
図11に記録する。ここで、サイクル安定性の分析における充放電スピードの条件は1Cである。
【0105】
実施例2:ドーパントAlの組成比の変更
【0106】
チタンニオブ複合酸化物の製造方法において、前駆体塩の組成におけるアルミニウムアセチルアセトネートの含有量を0.486gに変更して、混合溶液中のチタン元素、ニオブ元素およびアルミニウム元素のモル比を1:1.95:0.05にすること以外は、実施例1と同様にチタンニオブ複合酸化物を得る。
【0107】
次に、上記の表面形態、粒子径、結晶性の分析方法に従って得られたチタンニオブ複合酸化物を分析する。分析により、その数平均粒子径は1.8μm、分布の標準偏差は0.34μmであることが分かり、また、その表面観察および結晶特性の結果を表1、
図3および
図4に記録する。
【0108】
また、負極材料の作製およびリチウムイオン二次電池の組み立て方法は、実施例1と同様に行い、上記の測定方法に従って、スイープボルタンメトリーの測定、リチウム化率、抵抗率、Cレート性能およびサイクル安定性の分析を行い、その結果を表2および
図8~
図11に記録する。
【0109】
実施例3:ドーパントAlの組成比の変更
【0110】
チタンニオブ複合酸化物の製造方法において、前駆体塩の組成におけるアルミニウムアセチルアセトネートの含有量を0.681gに変更して、混合溶液中のチタン元素、ニオブ元素およびアルミニウム元素のモル比を1:1.93:0.07にすること以外は、実施例1と同様にチタンニオブ複合酸化物を得る。
【0111】
次に、上記の表面形態、粒子径および結晶特性の分析方法に従って、得られたチタンニオブ複合酸化物を分析する。分析により、数平均粒子径は1.6μm、分布の標準偏差は0.33μmであることが分かり、また、その表面観察および結晶特性の結果を表1、
図1、
図3および
図4に記録する。
【0112】
また、負極材料の作製およびリチウムイオン二次電池の組み立て方法は、実施例1と同様に行い、上記の測定方法に従って、スイープボルタンメトリーの測定、リチウム化率、抵抗率およびサイクル安定性の分析を行い、その結果を表2および
図8~
図9、
図11に記録する。
【0113】
実施例4:ドーパントZrを有するチタンニオブ複合酸化物
【0114】
チタンニオブ複合酸化物の製造方法において、前駆体塩の組成におけるアルミニウム含有金属塩をジルコニウム含有金属塩であるジルコニウムアセチルアセトネート(0.438g)に変更することにより、混合溶液中のチタン元素、ニオブ元素およびジルコニウム元素のモル比を1:1.97:0.03にすること以外は、実施例1と同様にチタンニオブ複合酸化物を得る。
【0115】
次に、上記分析方法に従って、得られたチタンニオブ複合酸化物に対して結晶特性を分析し、その結晶構造の単位胞の各軸における寸法を表1に記録する。
【0116】
また、負極材料の作製およびリチウムイオン二次電池の組み立て方法は、実施例1と同様に行い、上記の測定方法に従って、レート充電・放電性能およびサイクル安定性を分析して、その結果を、それぞれ、
図12および
図13に記録する。そこで、
図12のCレート性能分析における速度条件は、それぞれ0.1C、0.2C、0.3C、0.5C、1C、3C、5Cおよび10Cに調整されており、また、0.1Cの速度条件で電気サイクル安定性を分析する、
図13は、0.1Cの速度条件で10サイクルの充電・放電させた後、0.2Cの速度条件で充電・放電する場合の長期充電・放電のサイクル安定性の分析を表する。
【0117】
実施例5~6:ドーパントZrの組成比の変更
【0118】
チタンニオブ複合酸化物の製造方法において、前駆体塩の組成におけるジルコニウム含有金属塩であるジルコニウムアセチルアセトネートの含有量をそれぞれ0.729gおよび1.023gに変更して、混合溶液中のチタン元素、ニオブ元素およびジルコニウム元素のモル比をそれぞれ1:1.95:0.05および1:1.93:0.07にすること以外は、実施例1と同様にチタンニオブ複合酸化物を得る。
【0119】
次に、上記分析方法に従って、得られたチタンニオブ複合酸化物に対して結晶特性を分析し、その結晶構造の単位胞の各軸における寸法を表1に記録する。
【0120】
【0121】
【0122】
上記の結果を観察したところ、比較例に比べて、ドーパントAlの導入量が低い場合では、結晶構造の空間に大きな影響を及ぼさないが、ドーパントAlの導入量が0.05~0.07に達する場合、または、その代わりにドーパントZrを導入した場合では、その結晶構造の空間は大幅に増加する傾向がある。
【0123】
上記の特性の違いは、電池用途の性能にも影響を与える。
【0124】
図8(A)~
図8(D)を比較すると、複数回充電・放電のサイクルの後、反応電圧(1.6V)での電流のピーク値について、比較例では、電流のピーク値が大幅に低下し、そこで、本発明の実施例では、一定の電流のピーク値を維持しており、
図11のサイクル寿命の結果に対応する。
【0125】
次に、
図9のインピーダンスグラフを参照すると、半円弧および傾きの比較結果から、本発明の実施例のものが、電池の内部抵抗を大幅に低減する効果を有することが確認され、かつ、表2のリチウム化率の結果に対応する。
【0126】
また、
図10および
図12の分析を参照すると、本発明の実施例が高レートで充電・放電時に比較的高い電気容量を有する。また、本発明の実施例は、高レートの充電・放電から低レートの充電・放電に戻る場合にも、静電容量を回復することができ、さらに、長期間でのサークル分析において、その電気容量が維持される(
図12)。これは、本発明の実施形態の材料の構造はより良好な安定性を有し、高速充電により変化しないことを示している。
【0127】
以上のことから、本発明の実施例のチタンニオブ複合酸化物は、リチウムイオン二次電池の用途では、ドーパントを添加しないものに比べて、電気容量が高い、リチウム化率が高い、内部の抵抗が低い、充電・放電速度が速い、およびサイクル寿命が長いなどの特性がある。
【0128】
上記のように、本発明は、ドーパントMの導入および製造条件の最適化により、得られたチタンニオブ複合酸化物が従来の負極材料よりも優れた電気的性能を有するため、それを適用するリチウムイオン二次電池は、より長いサイクル寿命、より大きい電気容量、およびより速い充電・放電性能を実現し、適用の見通しは有望である。
【0129】
上記の実施例は、例示的な説明のためのものであり、本発明を限定することは意図していない。本発明は、本発明の思想および範囲から逸脱することがないことを前提として、当業者によって様々な変更や修正を行うことができる。よって、本発明の権利範囲は、特許請求の範囲により規定されるものであり、本発明の効果および実施の目的に影響しないものであれば、本発明に含まれている。