(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】アンテナビーム方向制御装置、アンテナビーム方向制御システム、アンテナビーム方向制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/06 20060101AFI20240730BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20240730BHJP
【FI】
H04B7/06 860
H04W16/28
(21)【出願番号】P 2023028052
(22)【出願日】2023-02-27
【審査請求日】2023-02-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省、「アクティブ空間無線リソース制御技術に関する研究開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000232287
【氏名又は名称】日本電業工作株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149113
【氏名又は名称】加藤 謹矢
(72)【発明者】
【氏名】大本 隆太郎
(72)【発明者】
【氏名】萩原 弘樹
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-053615(JP,A)
【文献】国際公開第2022/012596(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/06
H04W 16/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信が行われる無線通信環境において、アクセスポイント
と、当該アクセスポイントと通信する通信相手装置
と、電波を反射する反射体及び電波を中継するリピータのいずれか一方又は両方とを含む通信に関わる装置の位置に関する位置情報と、当該装置を個別に識別する個体識別情報とを取得する情報取得部と、
前記位置情報及び前記個体識別情報に従って、前記アクセスポイント側のアンテナから放射されるビーム状の電波の方向であるアンテナビーム方向をビームフォーミングに基づいて決定するアンテナビーム方向決定部と、
前記アクセスポイントに前記アンテナビーム方向を通知する通知部と
を備えるアンテナビーム方向制御装置。
【請求項2】
前記通信に関わる装置には
、電波の伝搬を遮蔽する遮蔽
物を含むことを特徴とする請求項1に記載のアンテナビーム方向制御装置。
【請求項3】
前記アンテナビーム方向決定部は、使用する周波数帯域、チャネル数の決定と、使用するストリームの決定を含むことを特徴とする請求項1に記載のアンテナビーム方向制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアンテナビーム方向制御装置と、
前記アンテナビーム方向制御装置によるアンテナビーム方向の決定に従って、ストリームを選択するアクセスポイントと、
前記アクセスポイントによって選択されたストリームに接続され、アンテナビーム方向をビームフォーミングにより設定するビームフォーマと、
前記ビームフォーマに接続されたアレイアンテナを含むアンテナモジュールと
を備えるアンテナビーム方向制御システム。
【請求項5】
前記アンテナモジュールは、前記アクセスポイントが選択したストリームに、前記ビームフォーマを介さないで接続されたアンテナを含むことを特徴とする請求項4に記載のアンテナビーム方向制御システム。
【請求項6】
無線通信が行われる無線通信環境において、アクセスポイント
と、当該アクセスポイントと通信する通信相手装置
と、電波を反射する反射体及び電波を中継するリピータのいずれか一方又は両方とを含む通信に関わる装置の位置に関する位置情報と、当該装置を個別に識別する個体識別情報とを取得する情報取得ステップと、
前記位置情報及び前記個体識別情報に従って、前記アクセスポイント側のアンテナから放射されるビーム状の電波の方向であるアンテナビーム方向をビームフォーミングに基づいて決定するアンテナビーム方向決定ステップと、
前記アクセスポイントに前記アンテナビーム方向を通知する通知ステップと
を含むアンテナビーム方向制御方法。
【請求項7】
コンピュータに、
無線通信が行われる無線通信環境において、アクセスポイント
と、当該アクセスポイントと通信する通信相手装置
と、電波を反射する反射体及び電波を中継するリピータのいずれか一方又は両方とを含む通信に関わる装置の位置に関する位置情報と、当該装置を個別に識別する個体識別情報とを取得する情報取得機能と、
前記位置情報及び前記個体識別情報に従って、前記アクセスポイント側のアンテナから放射されるビーム状の電波の方向であるアンテナビーム方向をビームフォーミングに基づいて決定するアンテナビーム方向決定機能と、
前記アクセスポイントに前記アンテナビーム方向を通知する通知機能と
を実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナビーム方向制御装置、アンテナビーム方向制御システム、アンテナビーム方向制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の基地局と端末とが存在し、それらの間で無線通信が行われる無線通信環境では、電波間の干渉や、電波が届かない不感地帯が生じやすい。
【0003】
特許文献1には、基地局に適用され、アンテナアレイを少なくとも2つのアンテナサブアレイに分割し、受信された、ユーザ端末(UE)から送信された第1の上り信号に基づいて、各アンテナサブアレイ毎の、異なる送信側の無線伝搬チャネル間の空間相関性を示す送信側相関性パラメータを推定し、各アンテナサブアレイ毎に、前記送信側相関性パラメータに基づいて、下り参照信号に対してビームフォーミングを行い、ビームフォーミング後の下り参照信号を、該アンテナサブアレイによって、前記UEに送信する、ことを含むマルチアンテナ伝送方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、無線通信環境においては、通信相手装置である端末の移動などにより時々刻々に変化する。よって、無線通信環境における電波間の干渉や、電波が届かない不感地帯の発生の抑制には、電波の進む方向を動的に制御できることがよい。電波の進む方向の動的な制御に、アンテナから放射されるビーム状の電波(以下では、ビームと表記する。)の方向(以下では、アンテナビーム方向と表記する。)を動的に制御できるビームフォーミング技術を用いることが考えられる。
本発明は、ビームフォーミング技術によりアンテナビーム方向を動的に制御するアンテナビーム方向制御装置などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明が適用されるアンテナビーム方向制御装置は、無線通信が行われる無線通信環境において、アクセスポイントと、アクセスポイントと通信する通信相手装置と、電波を反射する反射体及び電波を中継するリピータのいずれか一方又は両方とを含む通信に関わる装置の位置に関する位置情報と、装置を個別に識別する個体識別情報とを取得する情報取得部と、位置情報及び個体識別情報に従って、アクセスポイント側のアンテナから放射されるビーム状の電波の方向であるアンテナビーム方向をビームフォーミングに基づいて決定するアンテナビーム方向決定部と、アクセスポイントにアンテナビーム方向を通知する通知部とを備える。
【0007】
このようなアンテナビーム方向制御装置において、通信に関わる装置には、電波の伝搬を遮蔽する遮蔽物を含むことを特徴とすることができる。
また、このようなアンテナビーム方向制御装置において、アンテナビーム方向決定部は、使用する周波数帯域、チャネル数の決定と、使用するストリームの決定を含むことを特徴とすることができる。
【0008】
他の観点から捉えると、本発明が適用されるアンテナビーム方向制御システムは、上記のアンテナビーム方向制御装置と、アンテナビーム方向制御装置によるアンテナビーム方向の決定に従って、ストリームを選択するアクセスポイントと、アクセスポイントによって選択されたストリームに接続され、アンテナビーム方向をビームフォーミングにより設定するビームフォーマと、ビームフォーマに接続されたアレイアンテナを含むアンテナモジュールとを備える。
【0009】
このようなアンテナビーム方向制御システムにおいて、アンテナモジュールは、アクセスポイントが選択したストリームに、ビームフォーマを介さないで接続されたアンテナを含むことを特徴とすることができる。
【0010】
さらに他の観点から捉えると、本発明が適用されるアンテナビーム方向制御方法は、無線通信が行われる無線通信環境において、アクセスポイントと、アクセスポイントと通信する通信相手装置と、電波を反射する反射体及び電波を中継するリピータのいずれか一方又は両方とを含む通信に関わる装置の位置に関する位置情報と、装置を個別に識別する個体識別情報とを取得する情報取得ステップと、位置情報及び個体識別情報に従って、アクセスポイント側のアンテナから放射されるビーム状の電波の方向であるアンテナビーム方向をビームフォーミングに基づいて決定するアンテナビーム方向決定ステップと、アクセスポイントにアンテナビーム方向を通知する通知ステップとを含む。
【0011】
さらにまた、他の観点から捉えると、本発明が適用されるプログラムは、コンピュータに、無線通信が行われる無線通信環境において、アクセスポイントと、アクセスポイントと通信する通信相手装置と、電波を反射する反射体及び電波を中継するリピータのいずれか一方又は両方とを含む通信に関わる装置の位置に関する位置情報と、装置を個別に識別する個体識別情報とを取得する情報取得機能と、位置情報及び個体識別情報に従って、アクセスポイント側のアンテナから放射されるビーム状の電波の方向であるアンテナビーム方向をビームフォーミングに基づいて決定するアンテナビーム方向決定機能と、アクセスポイントにアンテナビーム方向を通知する通知機能とを実現させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ビームフォーミング技術によりアンテナビーム方向を動的に制御するアンテナビーム方向制御装置などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ビームフォーミングを利用するシナリオを説明する図である。(a)は、APと端末との間に電波の伝搬に対する遮蔽物が存在しない場合、(b)は、APと端末との間に電波に対する遮蔽物が存在する場合、(c)は、端末の近傍からAPの方向に干渉を生じさせる電波が入射する場合である。
【
図2】ビームフォーミング技術を用いてアンテナビーム方向を制御するアンテナビーム方向制御システムの一例を示す図である。
【
図3】アンテナビーム方向制御装置の構成を説明する図である。
【
図4】アンテナビーム方向制御装置の機能ブロック図である。
【
図5】アンテナビーム方向制御装置が行うアンテナビーム方向制御方法を説明するフロチャートである。
【
図6】APとビームフォーマとアンテナモジュールとの関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
無線LAN(Local Area Network)で構成される無線通信環境(電波環境と呼ばれることがある。)において、アンテナビーム方向を動的に制御するアンテナビーム方向制御技術を説明する。ここでは、電波を送受信する無線局(以下では、アクセスポイント(AP)と表記する。)と、APからの電波を受信又はAPへ電波を送信する通信相手装置(以下では、端末と表記する)との間における電波伝搬路を設定するためにアンテナビーム方向を制御する。本実施の形態で説明する技術は、無線LANに限らず、他の無線通信環境に適用できる。
【0015】
初めに、アンテナビーム方向を制御する技術であるビームフォーミング技術について説明する。
図1は、ビームフォーミングを利用するシナリオを説明する図である。
図1(a)は、AP1と端末2との間に電波の伝搬に対する遮蔽物が存在しない場合、
図1(b)は、AP1と端末2との間に電波に対する遮蔽物4が存在する場合、
図1(c)は、端末2の近傍からAP1の方向に干渉を生じさせる電波(以下では、干渉波と表記する。)が入射する場合である。ここで、AP1側から、予め定められた方向に予め定められた周波数帯域のビームを放射する。予め定められた方向は、指向方向と表記されることがあり、予め定められた方向にビームを放射することを指向性と表記することがある。
【0016】
図1(a)に示す、AP1と端末2との間に電波に対する遮蔽物が存在しない場合には、AP1側から、端末2にビームの方向(以下では、ビーム方向と表記する。)を向けて電波を放射すればよい。この場合、遮蔽物がないため、AP1側からのビームは端末2に届く。つまり、AP1と端末2とを直線的に結ぶ経路が電波伝搬路3になる。このように、電波伝搬路3は、最短距離で構成され、伝搬損失が最小となり、高いC/N(Carrier to Noise Ratio)が得られる。高いC/Nが得られることから、AP1と端末2との間の距離を長くできる。つまり、電波伝搬路3が延長できる。さらに、電波伝搬路3はAP1と端末2とを直線的に結ぶ経路であるので、電波伝搬路3の断面積を縮小できる。つまり、AP1に干渉波が入射しにくい。
【0017】
図1(b)に示す、AP1と端末2との間に電波を遮蔽する遮蔽物4が存在する場合、AP1と端末2との間を直線的に結ぶ電波伝搬路3を構成しようとしても、ビームは、端末2に届かない。この場合、端末2の周囲は不感地帯5となっている。しかし、AP1側から反射体6の方向にビームを放射し、反射体6で反射したビームが端末2に届くならば、AP1と端末2との間で遮蔽物4を回避した通信が可能な電波伝搬路7が構成される。なお、電波伝搬路7は、AP1から反射体6までの電波伝搬路7Aと反射体6から端末2までの電波伝搬路7Bとで構成されている。つまり、AP1側からのビームがビームフォーミング技術により、ビーム方向が変更されることにより、端末2にビームが届き、不感地帯5が解消する。このように、ビームフォーミング技術を使用すると、不感地帯5が解消して通信が可能となるエリアが拡大する。
【0018】
なお、反射体6は、例えば、メタマテリアルであるIRS(Intelligent Reflecting Surface)であって、電極の構造により入射角と反射角との関係が設定される。なお、反射体6は、IRSでなくともよく、金属で構成された反射板でもよい。
【0019】
図1(c)に示す、AP1側から放射される電波と干渉する電波(干渉波)が端末2近傍の電波源8からAP1の方向に入射する場合、AP1と端末2との間を直線的に結ぶ電波伝搬路3を構成しても、干渉により通信が不能になる場合がある。しかし、
図1(b)と同様に、AP1側から反射体6の方向にビームを放射し、反射体6で反射したビームが端末2に届くならば、干渉を回避した通信が可能な電波伝搬路7が構成される。なお、電波伝搬路7は、AP1から反射体6までの電波伝搬路7Aと反射体6から端末2までの電波伝搬路7Bとで構成されている。つまり、AP1側からのビーム方向と干渉波の方向との間に角度(離角)θを設けるように、ビームフォーミングにより、AP1側からのビーム方向を変更することにより干渉が回避される。
【0020】
ビームフォーミングは、例えば、複数のアンテナ素子を平面上に配列したアレイアンテナを用い、各アンテナ素子に供給する信号の位相及び/又は振幅を制御することにより、行える。以下では、ビームフォーミングは、アレイアンテナを対象として行うとして説明する。なお、必ずしも、ビーム方向を変えるのにアレイアンテナを用いなくともよい。
【0021】
図2は、ビームフォーミング技術を用いてアンテナビーム方向を制御するアンテナビーム方向制御システム100の一例を示す図である。
アンテナビーム方向制御システム100は、情報サーバ20と、アンテナビーム方向制御装置10と、AP1と、ビームフォーマ30とを備える。なお、ビームフォーマ30には、アンテナモジュール40(後述する
図3参照)が接続されているが、
図2においては、図示を省略している。
【0022】
情報サーバ20には、電波センサ(不記載)などによって測定された端末2、リピータ(不図示)、遮蔽物4、反射体6等の位置に関する情報(以下では、位置情報と表記する。)と、端末2、リピータ、反射体6、遮蔽物4等を個体ごとに個別に識別する情報(以下では、個体識別情報と表記する。)とが集約(記憶)されている。なお、リピータは、電波を中継する中継装置である。ここでは、AP1、端末2、リピータ(不図示)、遮蔽物4、反射体6等を通信に関わる装置と呼ぶ。
【0023】
アンテナビーム方向制御装置10は、情報サーバ20から、位置情報と個体識別情報とを取得し、AP1と端末2との間における電波伝搬路を決定する。すなわち、アンテナビーム方向制御装置10は、通信品質であるQoS(Quality of Service)などを考慮して、使用する帯域、チャネル数を決定する。そして、アンテナビーム方向制御装置10は、使用するストリーム、アンテナビーム方向等を決定して、AP1に通知する。
【0024】
AP1は、アンテナビーム方向制御装置10からの通知に基づいて、ストリームを選択し、アンテナビーム方向をビームフォーマ30に入力する。
【0025】
ビームフォーマ30は、アンテナビーム方向制御装置10からの指示に従って、ビーム方向を制御する。なお、端末2が移動した場合には、情報サーバ20から取得した端末2の位置情報の変化に追従して、AP1への通知を変更する。AP1への通知に対応して、ビームフォーマ30は、端末2の位置情報の変化に追従して、ビーム方向を動的に変化させる。つまり、ビームフォーマ30は、移動する端末2に対してビームトラッキングを行う。
【0026】
このように、アンテナビーム方向制御装置10は、AP1と端末2との間において、遮蔽物4の存在や干渉波により通信不能とならないアンテナビーム方向を設定する。つまり、遮蔽物4が存在せず、干渉波による影響を受けない場合には、
図1(a)に示したように、AP1と端末2とを直線で結ぶ方向にアンテナビーム方向(
図1(a)の電波伝搬路3)を設定するようにAP1に通知する。一方、遮蔽物4が存在する場合には、
図1(b)に示したように、ビーム方向を反射体6に向けて、遮蔽物4を回避したアンテナビーム方向(
図1(b)の電波伝搬路7)をAP1に通知する。干渉波がある場合には、ビームの向きを反射体6に向けて、干渉波の方向に対して離角を設けたアンテナビーム方向(
図1(c)の電波伝搬路7)をAP1に通知する。
【0027】
図3は、アンテナビーム方向制御装置10の構成を説明する図である。アンテナビーム方向制御装置10は、例えばコンピュータとして構成されている。
【0028】
アンテナビーム方向制御装置10は、CPU11と、記憶部12と、入力部13と、出力部14と、インターフェース15(
図3及び以下では、I/F15と表記する。)とを備える。CPU11、記憶部12、入力部13、出力部14、I/F15は、バス16で接続されている。情報サーバ20及びAP1は、I/F15に接続されている。なお、CPU11は、プロセッサと、記憶部12は、メモリと表記されることがある。
【0029】
入力部13は、キーボードやマウスなどの入力デバイスであって、CPU11が実行する処理に関する指示が入力される。出力部14は、ディスプレイやプリンタなどであって、CPU11が実行した処理の結果が出力される。記憶部12は、HDDやフラッシュメモリなどの記憶媒体であって、CPU11が実行する処理に関するプログラムやデータを記憶する。CPU11は、記憶部12に記憶されたプログラムを実行する。例えば、CPU11は、情報サーバ20からI/F15を介して取得した位置情報と個体識別情報とを、記憶部12に記憶させ、記憶部12が記憶した位置情報と個体識別情報とに基づいて、AP1と端末2との間における電波伝搬路を決定する。そして、I/F15を介して、決定した電波伝搬路に基づいて、アンテナビーム方向をAP1に指示する。
【0030】
図4は、アンテナビーム方向制御装置10の機能ブロック図である。
図4では、アンテナビーム方向制御装置10に加えて、情報サーバ20と、AP1と、ビームフォーマ30と、アンテナモジュール40とを示している。アンテナモジュール40は、アレイアンテナ41と、アンテナ42とを備える。前述したように、アレイアンテナ41は複数のアンテナ素子を備え、AP1への通知に基づいて、接続されたビームフォーマ30によりビームフォーミングする。つまり、アレイアンテナ41は、ビームフォーマ30によりビーム方向が設定される。一方、アンテナ42は、ビームフォーマ30を介さないで、AP1に接続され、放射するビーム方向が予め定められている。なお、アンテナモジュール40は、アンテナ42を備えなくともよい。なお、AP1からビームフォーマ30又はアンテナ42に信号を送信する経路は、ストリームと呼ばれる。ストリーム51により、AP1からビームフォーマ30に信号が送信され、ストリーム52により、AP1からアンテナ42に信号が送信される。なお、ストリーム51、52を区別しない場合は、ストリーム50と表記する。
【0031】
アンテナビーム方向制御装置10は、情報取得部111と、周波数帯域及びチャネル数決定部112と、ストリーム決定部113と、通知部114とを備える。情報取得部111は、情報サーバ20から位置情報及び個体識別情報を取得する。周波数帯域及びチャネル数決定部112は、取得した位置情報及び個体識別情報から、AP1と端末2との間に設定される電波伝搬路に基づいて、使用する周波数帯域及びチャネル数を決定する。ストリーム決定部113は、決定された周波数帯域及びチャネル数に応じてストリーム50(ストリーム51又はストリーム52)を決定する。そして、所望の方向にアンテナビームを向けるようにビームフォーマ30の位相と振幅とを決定する。通知部114は、決定されたアンテナビーム方向をAP1に通知する。情報取得部111が有する機能が情報取得機能の一例である。周波数帯域及びチャネル数決定部112とストリーム決定部113とを合わせて、アンテナビーム方向決定部の一例であるとし、周波数帯域及びチャネル数決定部112とストリーム決定部113との機能がアンテナビーム方向決定機能の一例である。そして、通知部114が有する機能が通知機能の一例である。
【0032】
情報取得部111及び通知部114は、
図3におけるI/F15によって実現される。周波数帯域及びチャネル数決定部112及びストリーム決定部113は、
図3におけるCPU11が記憶部12に記憶されたプログラム、情報サーバ20から取得した位置情報、個体識別情報等を用いて処理することによって実現される。
【0033】
AP1は、アンテナビーム方向制御装置10からの通知されたストリーム50に信号を送信する。通知されたストリーム50がビームフォーマ30に接続されたストリーム51であれば、ビームフォーマ30は、アンテナビーム方向制御装置10からの指示にしたがったビームフォーミングを行い、ビームフォーマ30に接続されたアレイアンテナ41からビームを放射する。一方、通知されたストリーム50がビームフォーマに接続されていないストリーム52であれば、ビームフォーミングを行うことなく、アンテナ42からビームを放射する。
【0034】
図5は、アンテナビーム方向制御装置10が行うアンテナビーム方向制御方法を説明するフロチャートである。
ステップ1(
図5においてS1と表記する。以下同様とする。)において、情報サーバ20から位置情報及び個体識別情報を取得する。ステップ1は、情報取得ステップの一例である。
ステップ2において、AP1と端末2との間に電波伝搬路を構成するために使用する周波数帯域及びチャネル数を決定する。
ステップ3において、ステップ2において決定された周波数帯域及びチャネル数に基づいて使用するストリーム50を決定する。
ステップ4において、位置情報及び個体識別情報より決定した電波伝搬路に従って、所望の方向にアンテナビームを向けるようにビームフォーマ30の位相と振幅とを決定する。ステップ4は、アンテナビーム方向決定ステップの一例である。
ステップ5において、ステップ4で決定したアンテナビーム方向をAP1に通知する。ステップ5は、通知ステップの一例である。
ステップ6において、情報サーバ20から位置情報及び個体識別情報を取得する。
ステップ7において、端末2の位置情報に変化があるか否かを判断する。ステップ7において、端末2の位置情報に変化がないと判断された場合(Noの場合)は、ステップ6に戻る。一方、ステップ7において、端末2の位置情報に変化があると判断された場合(Yesの場合)は、ステップ2に戻る。なお、ステップ7において、位置情報に変化があるか否かの判断の対象を端末2としたが、遮蔽物4、リピータ、反射体6を含めてもよい。さらに、ステップ7に、新たな端末が出現したか否かを判断することを含めてもよく、通信中の端末2が通信を終了したか否かを判断することを含めてもよい。
【0035】
ここでは、端末2が移動した場合に対応して、アンテナビーム方向を変更する。つまり、アンテナビーム方向は動的に構成されるので、AP1と端末2との間における電波伝搬路が切れて通信が途絶えることが抑制される。
【0036】
図6は、AP1とビームフォーマ30とアンテナモジュール40との関係を説明する図である。ここでは、従来のWi-Fi(登録商標)に6GHz帯を加えたWi-Fi 6Eを例として説明する。なお、アンテナモジュール40から、端末2又は反射体6に向かって電波が放射される。ここで、後に説明する端末2-1を除く、端末2は、紙面の最上部の端末2を除いて符号を省略する。
【0037】
AP1は、Wi-Fi 6Eの通信機能を集積したWi-Fi 6E対応SoC(System on Chip)を備え、2.4GHz帯、5GHz帯、6GHz帯を扱う。ここでは、一例として2.4GHz帯、5GHz帯、及び6GHz帯のそれぞれが4個のストリーム50を備えるとする。そして、ビームフォーマ30-1、30-2が、5GHz帯のストリーム50における2つのストリーム51-1、51-2に対して設けられている。そして、ビームフォーマ30-1、30-2のそれぞれに、4個のアンテナ素子で構成されたアレイアンテナ41(アレイアンテナ41-1、41-2)が接続されている。なお、他のストリーム50は、ストリーム52であって、それぞれアンテナ42に接続されている。なお、符号は紙面の最上部のストリーム52及びアンテナ42にのみ付す。ここでは、2.4GHz帯の4個のストリーム52(
図6では最上部を除いて符号なし)、6GHz帯の4本のストリーム52(
図6では符号なし)はそれぞれ4個が組になって、5GHz帯のビームフォーマ30-1、30-2に接続されていない2個のストリーム52(
図6では符号なし)は2個が組になって、MIMO(Multi Input Multi Output)を構成する。なお、周波数帯ごとにストリーム50を4本としたが、他の本数でもよい。
【0038】
図6に示すように、ビームフォーマ30-1に接続されたアレイアンテナ41-1は、端末2-1の方向にビーム方向を向け、ビームフォーマ30-2に接続されたアレイアンテナ41-2は、反射体6の方向にビーム方向を向けている。
ここでは、ビームフォーマ30-1、30-2を複数あるストリームの一部に設けている。つまり、12本あるストリームの内の2本にのみビームフォーマ30が設けられている。ビームフォーマ30は、すべてのストリーム50に設けることを要しない。アレイアンテナ41でビームフォーミングを行う場合、位相や振幅を変化させた信号をアレイを構成する複数のアンテナ素子に供給する。このため、ビームフォーマ30を多数のストリーム50に設けると、アンテナモジュール40におけるアンテナ素子数が増大する。しかし、ビームフォーミングを必要とする一部のストリーム50にのみビームフォーマ30を設けることで、アンテナモジュール40を構成するアンテナ素子の数が抑制され、アンテナモジュール40を小型化できる。
【0039】
以上において、本発明における実施の形態を説明したが、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な変形を行っても構わない。
【符号の説明】
【0040】
1…アクセスポイント(AP)、2…端末、3、7…電波伝搬路、4…遮蔽物、5…不感地帯、6…反射体、8…電波源、10…アンテナビーム方向制御装置、20…情報サーバ、30…ビームフォーマ、40…アンテナモジュール、41…アレイアンテナ、42…アンテナ、50、51、52…ストリーム、100…アンテナビーム方向制御システム、111…情報取得部、112…周波数帯域及びチャネル数決定部、113…ストリーム決定部、114…通知部
【要約】
【課題】ビームフォーミング技術によりアンテナビーム方向を動的に制御するアンテナビーム方向制御装置などを提供する。
【解決手段】アンテナビーム方向制御装置は、無線通信が行われる無線通信環境において、アクセスポイント及びアクセスポイントと通信する通信相手装置を含む通信に関わる装置の位置に関する位置情報と、装置を個別に識別する個体識別情報とを取得する情報取得部と、位置情報及び個体識別情報に基づいて、アクセスポイント側のアンテナから放射されるビーム状の電波の方向であるアンテナビーム方向をビームフォーミングに基づいて決定するアンテナビーム方向決定部と、アクセスポイントにアンテナビーム方向を通知する通知部とを備える。
【選択図】
図4