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特許7529318イオン液体[TEA][TfOH]2を触媒とするα-ハロゲン化アセトフェノン系化合物の製造方法
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  • 特許-イオン液体[TEA][TfOH]2を触媒とするα-ハロゲン化アセトフェノン系化合物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】イオン液体[TEA][TfOH]2を触媒とするα-ハロゲン化アセトフェノン系化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/63 20060101AFI20240730BHJP
   C07C 49/80 20060101ALI20240730BHJP
   C07C 49/84 20060101ALI20240730BHJP
   C07C 201/12 20060101ALI20240730BHJP
   C07C 205/45 20060101ALI20240730BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20240730BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
C07C45/63
C07C49/80
C07C49/84 D
C07C201/12
C07C205/45
B01J31/02 103Z
C07B61/00 300
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023501130
(86)(22)【出願日】2021-12-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-30
(86)【国際出願番号】 CN2021142392
(87)【国際公開番号】W WO2023115621
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】202111576805.7
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517234538
【氏名又は名称】大▲連▼大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】王 愛玲
(72)【発明者】
【氏名】李 萍
(72)【発明者】
【氏名】崔 穎娜
(72)【発明者】
【氏名】曹 洪玉
(72)【発明者】
【氏名】王 立皓
(72)【発明者】
【氏名】鄭 学倣
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】molecules,2013年,18,p.74-96
【文献】Chemical Communications,24,2007年,p.2539-2541
【文献】Green and Sustainable Chemistry,2011年,1,p.54-62
【文献】PHYSICAL CHEMISTRY B,121,2017年,p.6042-6049
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
B01J
C07B
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン液体[TEA][TfOH]を触媒とするα-ハロゲン化アセトフェノン系化合物の製造方法であって、
前記イオン液体[TEA][TfOH]を触媒及び反応溶剤とし、アセトフェノン系化合物を基質とし、N-ハロゲン化イミド系化合物をハロゲン化試薬として、下記反応式(1)に示すように前記アセトフェノン系化合物と前記ハロゲン化試薬とを反応させて、前記α-ハロゲン化アセトフェノン系化合物を製造し、反応温度は、60-80℃であり、
【化1】
反応式(1)中、
は、NO、CH、OMe、Br、Cl、Hのうちの少なくとも1種であり、
は、-Hまたは-COCHであり、
Xは、Cl、BrまたはIであり、
前記イオン液体[TEA][TfOH]は、トリエチルアミンとトリフルオロメタンスルホン酸をモル比1:2の割合で製造した酸性イオン液体である、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記アセトフェノン系化合物と前記触媒とのモル比は、1:1-3であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アセトフェノン系化合物と前記触媒とのモル比は、1:1.5であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アセトフェノン系化合物と前記ハロゲン化試薬とのモル比は、1:1-2であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記反応温度は60℃であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
反応時間は2-3分間であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
は、4-NO、4-CH、3-NO、4-OMe、2,3-CH、4-Br、4-Cl、4-Hのうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
反応基質は、p-ニトロアセトフェノン、3’-ニトロアセトフェノン、4’-メチルアセトフェノン、4’-メトキシアセトフェノン、4’-クロロアセトフェノン、4’-ブロモアセトフェノン、2,3-ジメチルアセトフェノン、ベンゾイルアセトンまたはアセトフェノンであることを特徴とする請求項1または7に記載の方法。
【請求項9】
前記イオン液体[TEA][TfOH]の製造方法は、トリフルオロメタンスルホン酸をトリエチルアミンに滴下して加え、氷浴にて1-2時間反応させ、反応完了後に乾燥させて、前記イオン液体[TEA][TfOH]を得ることを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記α-ハロゲン化アセトフェノン系化合物の製造方法は、前記イオン液体[TEA][TfOH]を反応容器に加え、前記アセトフェノン系化合物を加え、反応温度まで昇温させてから、前記ハロゲン化試薬を加えて反応を行い、反応停止後に、反応混合物を水相に直接注いで反応を終了させ、室温まで冷却した後に、再結晶して目的生成物を得ることを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン液体[TEA][TfOH]を触媒とするα-ハロゲン化アセトフェノン系化合物の製造方法に関し、さらに、酸性イオン液体[(CHCHN][CFSOH]、即ち[TEA][TfOH]を触媒として用いてN-ハロゲン化イミド系化合物の作用下でα-ハロゲン化アセトフェノン系化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α-ハロゲン化アセトフェノンは、特有の反応性(非特許文献1)を有するので、薬物合成、有機合成、化学工業などの様々な分野において幅広く応用されている。その中、α-ハロゲン化アセトフェノン系化合物は、将来、抗血小板剤(非特許文献2)として、心血管疾患の治療に用いることができると報告されている。α-ハロゲン化アセトフェノン系化合物は、合成抗真菌薬の中間体としても用いられ、優れた抗真菌性を有する(非特許文献3)。α-ハロゲン化アセトフェノン系化合物は、アセトフェノン系化合物のハロゲン化反応の触媒反応によって合成可能であるので、優れたハロゲン化試薬と触媒を選択することが非常に重要である。
【0003】
従来のハロゲン化試薬は多く、現在利用可能なハロゲン化試薬には、従来のハロゲン類(Br、Cl、I)(非特許文献4、5)、ハロゲン酸類(HBr、HCl、HI)(非特許文献6-8)、及び無機金属ハロゲン化合物(ZnBr、CuBr、CuI)(非特許文献9、10)等が含まれる。ハロゲン化試薬の種類の多さにもかかわらず、大部分は選択性の欠如や副反応の発生しやすさなどの問題があり、同時にこれらのハロゲン化試薬は、反応時間が長く、反応性が低く、コストが高く、揮発性や刺激性が強いなどの特徴があり、人の健康に深刻な損害をもたらすだけでなく、環境にも深刻な汚染を引き起こす可能性がある。上記特徴はいずれも現在のグリーンケミストリーの理念に合わない(非特許文献11)。
【0004】
従来のハロゲン化試薬としては、N-ハロゲン化イミド系(NBS、NCS、NIS)が優れているが、触媒によるハロゲン化反応を行う場合には、通常水分に敏感な一定のLewisまたはBronsted酸(非特許文献12、13)類触媒を配合する必要があり、または、一部のハロゲン化反応は、マイクロ波放射条件下(非特許文献13)または強力な過酸化物開始剤(非特許文献14)の存在下でしか反応を起こさなく、これらの方法は、いずれも操作が複雑で、副生成物が生成しやすい。従って、N-ハロゲン化イミド類をハロゲン化試として選択する際には、適切な触媒の使用を必要とする。
【0005】
イオン液体(非特許文献15)は、効率的で環境に優しい溶剤及び触媒として用いられ、従来の触媒の問題を回避し、環境に優しい触媒反応を可能とする。近年来、イオン液体は、(1)有機及び無機化合物への良好な溶解性、(2)蒸気圧がほとんどなく、揮発し難い、(3)熱安定性が良い、(4)構造設計が可能で、特定の反応に応じて特定の機能基団を導入できることなど、多くの利点があるため、多くの研究者の関心を集めている。従って、効率的で環境に優しい新型イオン液体を触媒及び溶剤として用いて、α-ハロゲン化アセトフェノン系化合物を製造する方法を設計して利用することは重要な意義がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】N.R.Elejalde,M.Macias,J.C.Castillo,M.Sortino,L.Svetaz,S.Zacchino,J.Portilla,ChemistrySelect,3(2018)5220-5227
【文献】D.K.Jangid,S.Dhadda,P.G.Goswami,A.Guleria,K.Pareek,N.Jangir,Poonam,ChemistrySelect,4(2019)9348-9353
【文献】L.P.Sidorova,T.A.Tseitler,V.V.Emel’yanov,E.A.Savateeva,N.E.Maksimova,N.N.Mochul’skaya,V.A.Chereshnev,O.N.Chupakhin,PharmaceuticalChemistryJournal,51(2017)9-12
【文献】S.K.Juneja,D.Choudhary,S.Paul,R.Gupta,SyntheticCommunications,36(2007)2877-2881
【文献】Y.Pan,A.Wu,G.Yin,M.Gao,N.She,S.Hu,Synthesis,2007(2007)3113-3116
【文献】H.Xu,X.Wu,Y.Ding,C.Peng,X.Peng,AsianJournalofChemistry,27(2015)3185-3187
【文献】G.Zhang,R.Liu,Q.Xu,L.Ma,X.Liang,AdvancedSynthesis&Catalysis,348(2006)862-866
【文献】J.Zhang,S.Li,G.-J.Deng,H.Gong,ChemCatChem,10(2018)376-380
【文献】R.Jagatheesan,K.JosephSanthanaRaj,S.Lawrence,C.Christopher,RSCAdvances,6(2016)35602-35608
【文献】X.-C.Mao,X.-L.Liu,Q.Deng,S.-R.Sheng,JournalofChemicalResearch,36(2012)100-102
【文献】M.Poliakoff,P.Licence,Nature,450(2007)810-812
【文献】B.Das,K.Venkateswarlu,H.Holla,M.Krishnaiah,JournalofMolecularCatalysisA:Chemical,253(2006)107-111
【文献】J.-C.Lee,Y.-H.Bae,S.-K.Chang,BulletinoftheKoreanChemicalSociety,24(2003)407-408
【文献】H.Meshram,P.Reddy,K.Sadashiv,J.Yadav,TetrahedronLetters,46(2005)623-626
【文献】K.R.Seddon,JournalofChemicalTechnology&Biotechnology,68(1997)351-356
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、新型の環境に優しい反応系を提供して、α-ハロゲン化アセトフェノン系化合物の触媒製造に用いることを目的とする。その反応系は、p-ニトロアセトフェノン等のアセトフェノン系化合物を反応基質とし、かつ新型の酸性イオン液体即ち[TEA][TfOH]を触媒及び溶剤として用いることで、揮発しやすい有機溶剤と環境に悪影響を与える従来の触媒の使用を回避することができ、他の種類のイオン液体に比べて、よりよい安定性と選択性を有する。本発明の製造方法は、安全、低価で、環境に優しいである。その反応系は、適応範囲が広く、操作が簡単で、低価かつ安全、収率が高く、環境に優しい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
イオン液体[TEA][TfOH]を触媒とするα-ハロゲン化アセトフェノン系化合物の製造方法であって、酸性イオン液体[(CHCHN][CFSOH]、即ち[TEA][TfOH]を触媒とし、アセトフェノン系化合物を原料とし、N-ハロゲン化イミド系化合物をハロゲン化試薬として、下記反応式(1)に示すようにアセトフェノン系化合物とハロゲン化試薬とを反応させて、α-ハロゲン化アセトフェノン系化合物を製造し、反応温度は60-80℃、反応時間は2-3分間である。
【化1】
反応式(1)中、
は、NO、CH、OMe、Br、Cl、Hのうちの少なくとも一種であり、
は、-Hまたは-COCHであり、
Xは、Cl、BrまたはIであり、
その中、イオン液体[TEA][TfOH]は、トリエチルアミン(TEA)とトリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)をモル比で1:2の割合にして製造した酸性イオン液体である。
【0009】
さらに、Rは、4-NO、4-CH、3-NO、4-OMe、2,3-CH、4-Br、4-Cl、4-Hのうちの少なくとも一種である。
【0010】
さらに、前記イオン液体触媒である[TEA][TfOH]の製造方法は、トリフルオロメタンスルホン酸をトリエチルアミンに滴下して加え、氷浴にて1-2時間反応させ、反応完了後に乾燥させて、イオン液体触媒[TEA][TfOH]を得る。
【0011】
さらに、前記イオン液体[TEA][TfOH]は、反応において触媒及び反応溶剤として用いられる。
【0012】
さらに、前記アセトフェノン系化合物と触媒[TEA][TfOH]とのモル比は1:1-3であり、例えばそれぞれ1:1、1:1.5、1:3であってもよく、好ましくは、アセトフェノン系化合物と触媒[TEA][TfOH]とのモル比は1:1.5である。
【0013】
さらに、前記p-ニトロアセトフェノンとハロゲン化試薬のN-ハロゲン化イミド系化合物とのモル比は1:1-2であり、例えばそれぞれ1:1、1:1.5、1:2であってもよく、好ましくは、アセトフェノン系化合物とハロゲン化試薬のN-ハロゲン化イミド系化合物とのモル比は1:1である。
【0014】
さらに、前記反応において異なるハロゲン化試薬を用いてもよく、例えばそれぞれN-ヨードスクシンイミド(NIS)、N-ブロモスクシンイミド(NBS)、N-クロロスクシンイミド(NCS)であってもよく、好ましくは、ハロゲン化試薬がN-ヨードスクシンイミド(NIS)である。
【0015】
さらに、前記反応温度は、それぞれ60℃、70℃、80℃であってもよく、好ましくは、反応温度は60℃である。
【0016】
さらに、反応基質は、p-ニトロアセトフェノン、3’-ニトロアセトフェノン、4’-メチルアセトフェノン、4’-メトキシアセトフェノン、4’-クロロアセトフェノン、4’-ブロモアセトフェノン、2,3-ジメチルアセトフェノン、ベンゾイルアセトン、アセトフェノンの9つの基質から選ばれ、好ましい反応基質は、p-ニトロアセトフェノンである。
【0017】
好ましくは、本発明α-ハロゲン化アセトフェノン系化合物の製造方法は、具体的には、イオン液体、即ち[TEA][TfOH]を反応容器に加え、アセトフェノン系化合物を加え、完全に溶けるまでオイルバスによりゆっくりと昇温させ、反応温度に達したら、分割または一括でハロゲン化試薬を加えることで、反応を行い、反応停止後、反応混合物を水相に直接注いで反応を終了させて、直ちに固体生成物を析出させ、室温まで冷却した後、再結晶して、目的生成物を得る。
【発明の効果】
【0018】
従来技術と比べて、本発明は以下の有益な効果がある。本発明では、揮発し易く及び環境に有害な従来の酸触媒とは異なる、新型の環境に優しい触媒であるイオン液体を採用する。該反応系では、追加の溶剤や触媒を必要とせず、イオン液体[TEA][TfOH]を触媒及び溶剤として用いることができ、製造方法が簡単、安全、安価で、環境に優しい。該反応系は適応範囲が広く、操作が簡単で、安価で安全で、収率が高く(最高86%に達する)、環境に優しく、工業生産に適して、α-ハロゲン化アセトフェノン系化合物の合成研究に対して重要な意義がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】イオン液体触媒[TEA][TfOH]のプロトン核磁気共鳴スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、具体的な実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の請求範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。本発明の実験方法は、特別な説明がない限り従来のものであり、使用する実験機器、材料、試薬等は化学会社から購入することができる。
【0021】
以下の方法で、後述する実施例におけるイオン液体触媒[TEA][TfOH]を製造する。
【0022】
5mmol(0.50g)のトリエチルアミン(TEA)を50mLの三口フラスコに加え、窒素ガスを導入して保護した後、0-5℃の条件下で10mmol(1.50g)のトリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)ゆっくり滴下して加え、約30分間で滴下を完了し、混合物を0℃条件下で1時間撹拌して、透明な液体を得、その液体を真空乾燥器内で一晩乾燥させ、新型な酸性イオン液体[TEA][TfOH]を得る。
【0023】
(実施例1)
実験方法:5mmolのイオン液体触媒[TEA][TfOH]と5mmolのp-ニトロアセトフェノンを50mLの三口フラスコに加え、ゆっくり昇温する条件下で反応物が完全に溶けるまで撹拌する。温度が50℃に達したら、5mmolのNBSを加えて反応させる。TLC(thin-layer chromatography)分析により、生成物及びいずれの副生成物の生成が検出されなかった。次いで2時間撹拌して反応させた後、変化がなく、反応を停止させる。従って、p-ニトロアセトフェノン:イオン液体:NISの原料比が1:1:1である場合、50℃では生成物がなかった。
反応式は、以下の通りである。
【化2】
【0024】
(実施例2)
実験方法:5mmolのイオン液体触媒[TEA][TfOH]と5mmolのp-ニトロアセトフェノンを50mLの三口フラスコに加え、ゆっくり昇温する条件下で反応物が完全に溶けるまで撹拌する。温度が60℃に達したら、5mmolのNISを加えて反応させる。TLC分析により、生成物が検出され、かつ他の副生成物の生成が全く検出されなかった。反応時間は2-3分間である。反応混合物を水相に直接注いで反応を終了させ、室温まで冷却した後に、エチルアルコールで再結晶して白色固体を得、収率が80%であった。
反応式は、以下の通りである。
【化3】
【0025】
(実施例3)
実験方法:5mmolのイオン液体触媒[TEA][TfOH]と5mmolのp-ニトロアセトフェノンを50mLの三口フラスコに加え、ゆっくり昇温する条件下で反応物が完全に溶けるまで撹拌する。温度が70℃に達したら、5mmolのNISを加えて反応させる。TLC分析により、生成物が検出され、かつ他の副生成物の生成が全く検出されなかった。反応時間は2-3分間である。反応混合物を水相に直接注いで反応を終了させ、室温まで冷却した後に、エチルアルコールで再結晶して白色固体を得、収率が77%であった。
反応式は、以下の通りである。
【化4】
【0026】
(実施例4)
実験方法:5mmolのイオン液体触媒[TEA][TfOH]と5mmolのp-ニトロアセトフェノンを50mLの三口フラスコに加え、ゆっくり昇温する条件下で反応物が完全に溶けるまで撹拌する。温度が80℃に達したら、5mmolのNISを加えて反応させる。TLC分析により、生成物が検出され、かつ他の副生成物の生成が全く検出されなかった。反応時間は2-3分間である。反応混合物を水相に直接注いで反応を終了させ、室温まで冷却した後に、エチルアルコールで再結晶して白色固体を得、収率が73%であった。
反応式は、以下の通りである。
【化5】
【0027】
(実施例5)
実験方法:5mmolのイオン液体触媒[TEA][TfOH]と5mmolのp-ニトロアセトフェノンを50mLの三口フラスコに加え、ゆっくり昇温する条件下で反応物が完全に溶けるまで撹拌する。温度が90℃に達したら、5mmolのNISを加えて反応させる。TLC分析により、生成物及びいずれの副生成物の生成も検出されなかった。次いで2時間撹拌して反応させた後に、変化がなく、反応を停止させる。従って、p-ニトロアセトフェノン:イオン液体[TEA][TfOH]:NISの原料比が1:1:1である場合、90℃で、生成物の生成がなかった。
反応式は、以下の通りである。
【化6】
【0028】
(実施例6)
実験方法:5mmolのイオン液体触媒[TEA][TfOH]と5mmolのp-ニトロアセトフェノンを50mLの三口フラスコに加え、ゆっくり昇温する条件下で反応物が完全に溶けるまで撹拌する。温度が60℃に達したら、7.5mmolのNISを加えて反応させる。TLC分析により、生成物が検出され、かつ他の副生成物の生成が全く検出されなかった。反応時間は2-3分間である。反応混合物を水相に直接注いで反応を終了させ、室温まで冷却した後に、エチルアルコールで再結晶して白色固体を得、収率が75%であった。
反応式は、以下の通りである。
【化7】
【0029】
(実施例7)
実験方法:5mmolのイオン液体触媒[TEA][TfOH]と5mmolのp-ニトロアセトフェノンを50mLの三口フラスコに加え、ゆっくり昇温する条件下で反応物が完全に溶けるまで撹拌する。温度が60℃に達したら、10mmolのNISを加えて反応させる。TLC分析により、生成物が検出され、かつ他の副生成物の生成が全く検出されなかった。反応時間は2-3分間である。反応混合物を水相に直接注いで反応を終了させ、室温まで冷却した後に、エチルアルコールで再結晶して白色固体を得、収率が67%であった。
反応式は、以下の通りである。
【化8】
【0030】
(実施例8)
実験方法:7.5mmolのイオン液体触媒[TEA][TfOH]と5mmolのp-ニトロアセトフェノンを50mLの三口フラスコに加え、ゆっくり昇温する条件下で反応物が完全に溶けるまで撹拌する。温度が60℃に達したら、5mmolのNISを加えて反応させる。TLC分析により、生成物が検出され、かつ他の副生成物の生成が全く検出されなかった。反応時間2-3分間。反応混合物を水相に直接注いで反応を終了させ、室温まで冷却した後に、エチルアルコール再結晶して白色固体を得、収率が86%であった。
反応式は、以下の通りである。
【化9】
【0031】
(実施例9)
実験方法:7.5mmolのイオン液体触媒[TEA][TfOH]と5mmolのp-ニトロアセトフェノンを50mLの三口フラスコに加え、ゆっくり昇温する条件下で反応物が完全に溶けるまで撹拌する。温度が60℃に達したら、7.5mmolのNISを何回に分けて加えて反応させる。TLC分析により、生成物が検出され、かつ他の副生成物の生成が全く検出されなかった。反応時間は2-3分間である。反応混合物を水相に直接注いで反応を終了させ、室温まで冷却した後に、エチルアルコールで再結晶して白色固体を得、収率が78%であった。
反応式は、以下の通りである。
【化10】
【0032】
(実施例10)
実験方法:7.5mmolのイオン液体触媒[TEA][TfOH]と5mmolのp-ニトロアセトフェノンを50mLの三口フラスコに加え、ゆっくり昇温する条件下で反応物が完全に溶けるまで撹拌する。温度が60℃に達したら、10mmolのNISを何回に分けて加えて反応させる。TLC分析により、生成物が検出され、かつ他の副生成物の生成が全く検出されなかった。反応時間は2-3分間である。反応混合物を水相に直接注いで反応を終了させ、室温まで冷却した後に、エチルアルコールで再結晶して白色固体を得、収率が72%であった。
反応式は、以下の通りである。
【化11】
【0033】
(実施例11)
実験方法:15mmolのイオン液体触媒[TEA][TfOH]と5mmolのp-ニトロアセトフェノンを50mLの三口フラスコに加え、ゆっくり昇温する条件下で反応物が完全に溶けるまで撹拌する。温度が90℃に達したら、5mmolのNISを加えて反応させる。TLC分析により、生成物が検出され、かつ他の副生成物の生成が全く検出されなかった。反応時間は2-3分間である。反応混合物を水相に直接注いで反応を終了させ、室温まで冷却した後に、エチルアルコールで再結晶して白色固体を得、収率が78%であった。
反応式は、以下の通りである。
【化12】
【0034】
(実施例12)
実験方法:15mmolのイオン液体触媒[TEA][TfOH]と5mmolのp-ニトロアセトフェノンを50mLの三口フラスコに加え、ゆっくり昇温する条件下で反応物が完全に溶けるまで撹拌する。温度が60℃に達したら、7.5mmolのNISを加えて反応させる。TLC分析により、生成物が検出され、かつ他の副生成物の生成が全く検出されなかった。反応時間は2-3分間である。反応混合物を水相に直接注いで反応を終了させ、室温まで冷却した後に、エチルアルコールで再結晶して白色固体を得、収率が73%であった。
反応式は、以下の通りである。
【化13】
【0035】
(実施例13)
実験方法:15mmolのイオン液体触媒[TEA][TfOH]と5mmolのp-ニトロアセトフェノンを50mLの三口フラスコに加え、ゆっくり昇温する条件下で反応物が完全に溶けるまで撹拌する。温度が60℃に達したら、10mmolのNISを加えて反応させる。TLC分析により、生成物が検出され、かつ他の副生成物の生成が全く検出されなかった。反応時間は2-3分間である。反応混合物を水相に直接注いで反応を終了させ、室温まで冷却した後に、エチルアルコールで再結晶して白色固体を得、収率が70%であった。
反応式は、以下の通りである。
【化14】
【0036】
(実施例14)
実験方法:15mmolのイオン液体触媒[TEA][TfOH]と5mmolのp-ニトロアセトフェノンを50mLの三口フラスコに加え、ゆっくり昇温する条件下で反応物が完全に溶けるまで撹拌する。温度が60℃に達したら、10mmolのNBSを加えて反応させる。TLC分析により、生成物が検出され、かつ他の副生成物の生成が全く検出されなかった。反応時間は2-3分間である。反応混合物を水相に直接注いで反応を終了させ、室温まで冷却した後に、エチルアルコールで再結晶して白色固体を得、収率が82%であった。
反応式は、以下の通りである。
【化15】
【0037】
(実施例15)
実験方法:15mmolのイオン液体触媒[TEA][TfOH]と5mmolのp-ニトロアセトフェノンを50mLの三口フラスコに加え、ゆっくり昇温する条件下で反応物が完全に溶けるまで撹拌する。温度が60℃に達したら、10mmolのNCSを加えて反応させる。TLC分析により、生成物が検出され、かつ他の副生成物の生成が全く検出されなかった。反応時間は、2-3分間である。反応混合物を水相に直接注いで反応を終了させ、室温まで冷却した後に、エチルアルコールで再結晶して白色固体を得、収率が76%であった。
反応式は、以下の通りである。
【化16】
【0038】
上記実施例1-5、及び実施例1と実施例6-7、実施例8-10と実施例11-13、実施例8と実施例14-15を比べると、本発明の環境に優しいイオン液体[TEA][TfOH]を触媒及び溶剤として用いることで、α-ヨードp-ニトロアセトフェノンが得られることが分かる。最適な反応条件下、即ち温度が60℃、NISをヨード化試薬とし、p-ニトロアセトフェノン:[TEA][TfOH]:NIS=1:1.5:1で、反応時間が2-3分間である条件下で、得られた生成物の収率は最高で、86%に達した。
【0039】
(実施例16)
実験方法:7.5mmolのイオン液体触媒[TEA][TfOH]と5mmolの3’-ニトロアセトフェノンを50mLの三口フラスコに加え、ゆっくり昇温する条件下で反応物が完全に溶けるまで撹拌する。温度が60℃に達したら、5mmolのNISを加えて反応させる。TLC分析により、生成物が検出され、かつ他の副生成物の生成が全く検出されなかった。反応時間は2-3分間である。反応混合物を水相に直接注いで反応を終了させ、室温まで冷却した後に、エチルアルコールで再結晶して白色固体を得、収率が84%であった。
反応式は、以下の通りである。
【化17】
【0040】
(実施例17)
実験方法:7.5mmolのイオン液体触媒[TEA][TfOH]と5mmolの4’-ブロモアセトフェノンを50mLの三口フラスコに加え、ゆっくり昇温する条件下で反応物が完全に溶けるまで撹拌する。温度が60℃に達したら、5mmolのNISを何回に分けて加えて反応させる。TLC分析により、生成物が検出され、かつ他の副生成物の生成が全く検出されなかった。反応時間は、2-3分間である。反応混合物を水相に直接注いで反応を終了させ、室温まで冷却した後に、エチルアルコールで再結晶して白色固体を得、収率が81%であった。
反応式は、以下の通りである。
【化18】
【0041】
(実施例18)
実験方法:7.5mmolのイオン液体触媒[TEA][TfOH]と5mmolの4’-クロロアセトフェノンを50mLの三口フラスコに加え、ゆっくり昇温する条件下で反応物が完全に溶けるまで撹拌する。温度が60℃に達したら、5mmolのNISを加えて反応させる。TLC分析により、生成物が検出され、かつ他の副生成物の生成が全く検出されなかった。反応時間は、2-3分間である。反応混合物を水相に直接注いで反応を終了させ、室温まで冷却した後に、エチルアルコールで再結晶して白色固体を得、収率が79%であった。
反応式は、以下の通りである。
【化19】
【0042】
(実施例19)
実験方法:7.5mmolのイオン液体触媒[TEA][TfOH]と5mmolの4’-メチルアセトフェノンを50mLの三口フラスコに加え、ゆっくり昇温する条件下で反応物が完全に溶けるまで撹拌する。温度が60℃に達したら、5mmolのNISを何回に分けて加えて反応させる。TLC分析により、生成物が検出され、かつ他の副生成物の生成が全く検出されなかった。反応時間は、2-3分間である。反応混合物を水相に直接注いで反応を終了させ、室温まで冷却した後に、エチルアルコールで再結晶して白色固体を得、収率が76%であった。
反応式は、以下の通りである。
【化20】
【0043】
(実施例20)
実験方法:7.5mmolのイオン液体触媒[TEA][TfOH]と5mmolの4’-メトキシアセトフェノンを50mLの三口フラスコに加え、ゆっくり昇温する条件下で反応物が完全に溶けるまで撹拌する。温度が60℃に達したら、5mmolのNISを加えて反応させる。TLC分析により、生成物が検出され、かつ他の副生成物の生成が全く検出されなかった。反応時間は、2-3分間である。反応混合物を水相に直接注いで反応を終了させ、室温まで冷却した後に、エチルアルコールで再結晶して白色固体を得、収率が78%であった。
反応式は、以下の通りである。
【化21】
【0044】
(実施例21)
実験方法:7.5mmolのイオン液体触媒[TEA][TfOH]と5mmolのアセトフェノンを50mLの三口フラスコに加え、ゆっくり昇温する条件下で反応物が完全に溶けるまで撹拌する。温度が60℃に達したら、5mmolのNISを何回に分けて加えて反応させる。TLC分析により、生成物が検出され、かつ他の副生成物の生成が全く検出されなかった。反応時間は2-3分間である。反応混合物を水相に直接注いで反応を終了させ、室温まで冷却した後に、エチルアルコールで再結晶して透明な液体を得、収率が77%であった。
反応式は、以下の通りである。
【化22】
【0045】
(実施例22)
実験方法:7.5mmolのイオン液体触媒[TEA][TfOH]と5mmolの2,3-ジメチルアセトフェノンを50mLの三口フラスコに加え、ゆっくり昇温する条件下で反応物が完全に溶けるまで撹拌する。温度が60℃に達したら、5mmolのNISを何回に分けて加えて反応させる。TLC分析により、生成物が検出され、かつ他の副生成物の生成が全く検出されなかった。反応時間は、2-3分間である。反応混合物を水相に直接注いで反応を終了させ、室温まで冷却した後に、エチルアルコールで再結晶して透明な液体を得、収率が75%であった。
反応式は、以下の通りである。
【化23】
【0046】
(実施例23)
実験方法:7.5mmolのイオン液体触媒[TEA][TfOH]と5mmolのベンゾイルアセトンを加え、50mLの三口フラスコに加え、ゆっくり昇温する条件下で反応物が完全に溶けるまで撹拌する。温度が60℃に達したら、5mmolのNISを何回に分けて加えて反応させる。TLC分析により、生成物が検出され、かつ他の副生成物の生成が全く検出されなかった。反応時間は、2-3分間である。反応混合物を水相に直接注いで反応を終了させ、室温まで冷却した後に、エチルアルコールで再結晶して黄色液体を得、収率が78%であった。
反応式は、以下の通りである。
【化24】
【0047】
(付記)
(付記1)
イオン液体[TEA][TfOH]を触媒とするα-ハロゲン化アセトフェノン系化合物の製造方法であって、
前記イオン液体[TEA][TfOH]を触媒及び反応溶剤とし、アセトフェノン系化合物を基質とし、N-ハロゲン化イミド系化合物をハロゲン化試薬として、下記反応式(1)に示すように前記アセトフェノン系化合物と前記ハロゲン化試薬とを反応させて、前記α-ハロゲン化アセトフェノン系化合物を製造し、反応温度は、60-80℃であり、
【化25】
反応式(1)中、
は、NO、CH、OMe、Br、Cl、Hのうちの少なくとも1種であり、
は、-Hまたは-COCHであり、
Xは、Cl、BrまたはIであり、
前記イオン液体[TEA][TfOH]は、トリエチルアミンとトリフルオロメタンスルホン酸をモル比1:2の割合で製造した酸性イオン液体である、ことを特徴とする方法。
【0048】
(付記2)
前記アセトフェノン系化合物と前記触媒とのモル比は、1:1-3であることを特徴とする付記1に記載の方法。
【0049】
(付記3)
前記アセトフェノン系化合物と前記触媒とのモル比は、1:1.5であることを特徴とする付記2に記載の方法。
【0050】
(付記4)
前記アセトフェノン系化合物と前記ハロゲン化試薬とのモル比は、1:1-2であることを特徴とする付記1に記載の方法。
【0051】
(付記5)
前記反応温度は60℃であることを特徴とする付記1に記載の方法。
【0052】
(付記6)
反応時間は2-3分間であることを特徴とする付記1に記載の方法。
【0053】
(付記7)
は、4-NO、4-CH、3-NO、4-OMe、2,3-CH、4-Br、4-Cl、4-Hのうちの少なくとも1種であることを特徴とする付記1に記載の方法。
【0054】
(付記8)
反応基質は、p-ニトロアセトフェノン、3’-ニトロアセトフェノン、4’-メチルアセトフェノン、4’-メトキシアセトフェノン、4’-クロロアセトフェノン、4’-ブロモアセトフェノン、2,3-ジメチルアセトフェノン、ベンゾイルアセトンまたはアセトフェノンであることを特徴とする付記1または7に記載の方法。
【0055】
(付記9)
前記イオン液体[TEA][TfOH]の製造方法は、トリフルオロメタンスルホン酸をトリエチルアミンに滴下して加え、氷浴にて1-2時間反応させ、反応完了後に乾燥させて、前記イオン液体[TEA][TfOH]を得ることを含むことを特徴とする付記1に記載の方法。
【0056】
(付記10)
前記α-ハロゲン化アセトフェノン系化合物の製造方法は、前記イオン液体[TEA][TfOH]を反応容器に加え、前記アセトフェノン系化合物を加え、反応温度まで昇温させてから、前記ハロゲン化試薬を加えて反応を行い、反応停止後に、反応混合物を水相に直接注いで反応を終了させ、室温まで冷却した後に、再結晶して目的生成物を得ることを含むことを特徴とする付記1に記載の方法。
図1