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特許7529320薬物注入装置の注入口詰まりの発生を決定する方法、装置およびコンピュータプログラム製品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】薬物注入装置の注入口詰まりの発生を決定する方法、装置およびコンピュータプログラム製品
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20240730BHJP
   A61M 5/172 20060101ALI20240730BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
A61M5/168 510
A61M5/172
A61M5/168 500
A61M5/142 500
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023515856
(86)(22)【出願日】2021-07-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 KR2021008628
(87)【国際公開番号】W WO2022055101
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-03-15
(31)【優先権主張番号】10-2020-0116213
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523049225
【氏名又は名称】イオフロー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EOFLOW CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソンファン
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/156848(WO,A1)
【文献】特表2007-530860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
A61M 5/172
A61M 5/142
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に沿って直線往復運動するシャフトを含むポンプモジュールと、
前記シャフトに連結される第1端、および、前記直線往復運動によって回転往復運動する第2端を含む回転子と、
前記第2端と接触する接触時刻情報を取得する少なくとも1つのセンサと、
前記接触時刻情報を用いて前記ポンプモジュールの駆動時間を算出し、前記駆動時間に基づいて薬物注入装置の注入口詰まり(occlusion)の発生を決定するプロセッサと
を含み、
前記プロセッサは、
所定数の連続した前記駆動時間をフィルタリングしてフィルタリング時間を算出し、
現在のフィルタリング時間と前のフィルタリング時間との差が第1基準値以上である場合に評価値を増加させ、前記現在のフィルタリング時間と前記前のフィルタリング時間との差が前記第1基準値未満である場合に前記評価値を減少させるように前記評価値を算出し、
前記評価値が第2基準値以上である場合、前記薬物注入装置の注入口詰まりの発生を決定する、薬物注入装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記評価値が前記第2基準値以上であり、前記現在のフィルタリング時間が第3基準値以上である場合、前記薬物注入装置の注入口詰まりの発生を決定する、請求項に記載の薬物注入装置。
【請求項3】
前記薬物注入装置は、
前記薬物注入装置の温度を測定する温度感知センサをさらに含み、
前記プロセッサは、
前記温度感知センサから現在の温度を受信し、
前記現在の温度に基づいて前記駆動時間を補償することで補償された駆動時間を算出し、
所定数の連続した前記補償された駆動時間をフィルタリングしてフィルタリング時間を算出する、請求項に記載の薬物注入装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記接触時刻情報を用いて前記ポンプモジュールの駆動間隔を算出し、
所定数の連続した前記駆動間隔をフィルタリングしてフィルタリング間隔を算出し、
前記フィルタリング間隔に基づいて第2基準値を調整し、
前記評価値が前記調整された第2基準値以上である場合、前記薬物注入装置の注入口詰まりの発生を決定する、請求項に記載の薬物注入装置。
【請求項5】
プロセッサを含む薬物注入装置によって実行される、前記薬物注入装置の注入口詰まりの発生を決定する方法において、
前記薬物注入装置の前記プロセッサが、少なくとも1つのセンサがポンプモジュールに連結される回転子と接触する接触時刻情報を取得するステップと、
前記プロセッサが、前記接触時刻情報を用いて前記ポンプモジュールの駆動時間を算出するステップと、
前記プロセッサが、前記駆動時間に基づいて前記薬物注入装置の注入口詰まりの発生を決定するステップと
を含み、
前記プロセッサが、前記薬物注入装置の注入口詰まりの発生を決定するステップは、
前記プロセッサが、所定数の連続した前記駆動時間をフィルタリングしてフィルタリング時間を算出するステップと、
前記プロセッサが、現在のフィルタリング時間と前のフィルタリング時間との差が第1基準値以上である場合に評価値を増加させ、前記現在のフィルタリング時間と前記前のフィルタリング時間との差が前記第1基準値未満である場合に前記評価値を減少させるように前記評価値を算出するステップと、
前記プロセッサが、前記評価値が第2基準値以上である場合、前記薬物注入装置の注入口詰まりの発生を決定するステップと
を含む、方法。
【請求項6】
コンピュータプログラム製品であって、
少なくとも1つのセンサがポンプモジュールに連結される回転子と接触する接触時刻情報を取得するステップと、
前記接触時刻情報を用いて前記ポンプモジュールの駆動時間を算出するステップと、
前記駆動時間に基づいて薬物注入装置の注入口詰まりの発生を決定するステップと
を実行するようにするプログラムが記憶されており、
前記薬物注入装置の注入口詰まりの発生を決定するステップは、
所定数の連続した前記駆動時間をフィルタリングしてフィルタリング時間を算出するステップと、
現在のフィルタリング時間と前のフィルタリング時間との差が第1基準値以上である場合に評価値を増加させ、前記現在のフィルタリング時間と前記前のフィルタリング時間との差が前記第1基準値未満である場合に前記評価値を減少させるように前記評価値を算出するステップと、
前記評価値が第2基準値以上である場合、前記薬物注入装置の注入口詰まりの発生を決定するステップと
を含む、
1つ以上のコンピュータで読み取り可能な記録媒体を含むコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬物注入装置の注入口詰まりの発生を決定する方法、装置、およびコンピュータプログラム製品を提供する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、インスリンの分泌量が不足するか、正常な機能が行われず、血糖が正常範囲外の兆候を引き起こす代謝障害である。糖尿病は、失明、腎不全、心不全、神経障害などの合併症により人体の各組織に影響を及ぼす可能性がある複合病であり、糖尿病患者数は毎年増加しているという。
【0003】
糖尿病の場合、血糖測定器を用いて血糖を測定し、食事療法、運動プログラム、インスリン注射、経口糖尿病治療薬などの適切な手段によって血糖値をコントロールする必要がある。
【0004】
最近は、薬物注入装置の注入口詰まりが発生する場合をより正確に判断するための技術が求められる実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、薬物注入装置の注入口詰まりの発生を決定する方法、装置、およびコンピュータプログラム製品を提供することに関する。本実施形態が解決しようとする技術的課題は、上記のような技術的課題に限定されず、以下の実施形態から他の技術的課題を類推することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の技術的課題を解決するための技術的手段として、本開示の第1態様は、一方向に沿って直線往復運動するシャフトを含むポンプモジュールと、前記シャフトに連結される第1端、および、前記直線往復運動によって回転往復運動する第2端を含む回転子と、前記第2端と接触する接触時刻情報を取得する少なくとも1つのセンサと、前記接触時刻情報を用いて前記ポンプモジュールの駆動時間を算出し、前記駆動時間に基づいて薬物注入装置の注入口詰まり(occlusion)の発生を決定するプロセッサとを含む、薬物注入装置を提供できる。
【0007】
本開示の第2態様は、薬物注入装置の注入口詰まりの発生を決定する方法において、少なくとも1つのセンサがポンプモジュールに連結される回転子と接触する接触時刻情報を取得するステップと、前記接触時刻情報を用いて前記ポンプモジュールの駆動時間を算出するステップと、前記駆動時間に基づいて前記薬物注入装置の注入口詰まりの発生を決定するステップとを含み、前記薬物注入装置の注入口詰まりの発生を決定するステップは、所定数の連続した前記駆動時間をフィルタリングしてフィルタリング時間を算出するステップと、現在のフィルタリング時間と前のフィルタリング時間との差が第1基準値以上である場合に評価値を増加させ、前記現在のフィルタリング時間と前記前のフィルタリング時間との差が前記第1基準値未満である場合に前記評価値を減少させるように前記評価値を算出するステップと、前記評価値が第2基準値以上である場合、前記薬物注入装置の注入口詰まりの発生を決定するステップとを含む方法を提供できる。
【0008】
本開示の第3態様は、コンピュータプログラム製品であって、少なくとも1つのセンサがポンプモジュールに連結される回転子と接触する接触時刻情報を取得するステップと、前記接触時刻情報を用いて前記ポンプモジュールの駆動時間を算出するステップと、前記駆動時間に基づいて薬物注入装置の注入口詰まりの発生を決定するステップとを実行するようにするプログラムが記憶されており、前記薬物注入装置の注入口詰まりの発生を決定するステップは、所定数の連続した前記駆動時間をフィルタリングしてフィルタリング時間を算出するステップと、現在のフィルタリング時間と前のフィルタリング時間との差が第1基準値以上である場合に評価値を増加させ、前記現在のフィルタリング時間と前記前のフィルタリング時間との差が前記第1基準値未満である場合に前記評価値を減少させるように前記評価値を算出するステップと、前記評価値が第2基準値以上である場合、前記薬物注入装置の注入口詰まりの発生を決定するステップとを含む、1つ以上のコンピュータで読み取り可能な記録媒体を含むコンピュータプログラム製品を提供できる。
【発明の効果】
【0009】
上述した本開示の課題解決手段によれば、所定数の連続した駆動時間をフィルタリングしたフィルタリング時間を用いて注入口詰まりを決定することにより、駆動時間の誤差および偏差を減らして注入口詰まりの有無をより正確に決定することができる。
【0010】
また、フィルタリング時間が増加傾向であるうえで、フィルタリング時間が所定の値以上である条件が全て満たされた場合にのみ、薬物注入装置の注入口詰まりが発生したと決定することにより、ノイズによる誤判定を防止することができる。
【0011】
本開示の他の課題解決手段の一つによれば、薬物注入装置の温度に基づいて駆動時間を補償することで、温度による駆動時間の誤差によって実際に薬物注入装置の注入口詰まりが発生しない場合にも注入口詰まりが発生したものと誤判定することを防止できる。
【0012】
本開示の他の課題解決手段の1つによれば、薬物注入装置の注入速度に基づいて感知感度を調整することで、注入口詰まりの有無をより正確に決定することができる。
【0013】
本開示の他の課題解決手段の一つによれば、注入口詰まりではない他の理由によって薬物注入装置の内部圧力が瞬間的に上昇した場合、ポンプモジュールの駆動を遅延させることで注入口詰まりが発生したものと誤判定することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、一実施形態による薬物注入装置を示す斜視図である。
図2a図2aは、図1の薬物注入装置の内部配置を示す斜視図である。
図2b図2bは、図2aの薬物注入装置を示す平面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態によるポンプモジュールの斜視図である。
図4図4は、図3のII-II’線に沿った断面図である。
図5a図5aは、メンブレンを中心とした第1および第2電極体における反応を示す模式図である。
図5b図5bは、メンブレンを中心とした第1および第2電極体における反応を示す模式図である。
図6a図6aは、シャフトの往復運動を説明する断面図である。
図6b図6bは、シャフトの往復運動を説明する断面図である。
図7図7は、本発明の一実施形態による薬物注入装置がポンプモジュールおよび駆動ユニットを介して薬物を注入することを説明するための平面図である。
図8図8は、本発明の一実施形態による薬物注入装置がポンプモジュールおよび駆動ユニットを介して薬物を注入することを説明するための斜視図である。
図9図9は、本発明の一実施形態による駆動ユニットの動作を説明するための平面図である。
図10図10は、一実施形態による薬物注入装置の内部圧力とポンプモジュールの駆動時間との相関関係を説明するための図である。
図11図11は、一実施形態による薬物注入装置の注入口詰まりの発生を決定する方法のフローチャートである。
図12図12は、一実施形態によるポンプモジュールの駆動時間を補償する温度補償係数を説明するための図である。
図13図13は、一実施形態によるポンプモジュールの駆動間隔を考慮して薬物注入装置の注入口詰まりの発生を決定する方法のフローチャートである。
図14図14は、一実施形態による注入速度に従ってポンプモジュールの駆動を遅延させる方法のフローチャートである。
図15図15は、一実施形態による薬物注入装置の注入口詰まりの発生を決定する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
薬物注入装置は、ポンプモジュール、回転子、少なくとも1つのセンサおよびプロセッサを含み得る。
【0016】
ポンプモジュールは、一方向に沿って直線往復運動するシャフトを含み得る。回転子は、シャフトに連結される第1端および、直線往復運動によって回転往復運動する第2端を含むことができる。少なくとも1つのセンサは、第2端と接触する接触時刻情報を取得することができる。プロセッサは、接触時刻情報を用いてポンプモジュールの駆動時間を算出し、駆動時間に基づいて薬物注入装置の詰まり(occlusion)の発生を決定することができる。
【0017】
以下では、添付の図面を参照して、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施形態を詳細に説明する。しかしながら、本発明は様々な異なる形態で実施することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されない。なお、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略しており、明細書全体で類似した部分においては類似した図の符号を付けた。
【0018】
本明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結」されているとする場合、これは「直接的に連結」されている場合だけでなく、その中間に他の素子を挟んで「電気的に連結」されている場合も含む。さらに、ある部分がある構成要素を「含む」と言う場合、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0019】
以下、添付の図面を参照して本開示を詳細に説明する。
【0020】
図1は、一実施形態による薬物注入装置を示す斜視図である。
【0021】
図1を参照すると、薬物注入装置1は薬物注入対象に取り付けられ、内部に保存された薬物をユーザーに所定の定量で注入することができる。任意の実施形態では、薬物注入装置1をユーザーの身体に取り付けることができる。また、他の任意の実施形態では、薬物注入装置1を動物に装着して薬物を注入することができる。
【0022】
薬物注入装置1は、注入される薬物の種類に応じて様々な用途に使用することができる。例えば、薬物は糖尿病患者のためのインスリン系薬物を含むことができ、その他、膵臓のための薬物、心臓用薬物など、様々な種類の薬物を含み得る。
【0023】
薬物注入装置1は、有線または無線でつながっている遠隔装置2と連結することができる。ユーザーは遠隔装置2を操作して薬物注入装置1を使用することができ、薬物注入装置1の使用状態をモニタリングすることができる。例えば、薬物注入装置1から注入される薬物の量、薬物の注入回数、リザーバ200に保存された薬物の量、ユーザーのバイオ情報などをモニタリングすることができ、これに基づいてユーザーが薬物注入装置1を駆動することができる。
【0024】
一実施形態で、遠隔装置2は、有無線通信環境でアプリケーションを利用することができる通信端末を意味する。ここで、遠隔装置2は、ユーザーの携帯端末であってもよい。これをより詳細に説明すると、遠隔装置2は、コンピュータ(例えば、デスクトップ、ラップトップ、タブレットなど)、メディアコンピューティングプラットフォーム(例えば、ケーブル、衛星セットトップボックス、デジタルビデオレコーダ)、ハンドヘルドコンピューティングデバイス(例えば、PDA、電子メールクライアントなど)、携帯電話の任意の形態、ユーザーの身体に取り付け、または、装着して使用可能なウェアラブル(wearable)デバイスの形態、または他の種類のコンピューティングまたはコミュニケーションプラットフォームの任意の形態を含むことができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0025】
薬物注入装置1と遠隔装置2は通信網を介して通信することができる。この時、通信網とは、遠隔装置2がサービスサーバ(図示せず)に接続した後にデータを送受信できるように接続経路を提供する通信網を意味する。 通信網は、例えば、LANs(Local Area Networks)、WANs(Wide Area Networks)、MANs(Metropolitan Area Networks)、ISDNs(Integrated Service Digital Networks)などの有線ネットワークや、無線LANs、CDMA、Bluetooth(登録商標)、衛星通信などの無線ネットワークを網羅することができるが、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0026】
図1によれば、遠隔装置2は単一のデバイスであるように示されているが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、薬物注入装置1と通信できる複数のデバイスを含むことができる。
【0027】
図2aは、図1の薬物注入装置の内部配置を示す斜視図であり、図2bは、図2aの薬物注入装置を示す平面図である。
【0028】
図2a~図2bを参照すると、薬物注入装置1の一実施形態は、外側を覆うハウジング5と、ユーザーの肌に隣接して位置する取り付け部6とを含むことができる。薬物注入装置1は、外部のハウジング5と取り付け部6との間の内部空間に配置された複数の部品を含む。取り付け部6とユーザーの肌との間には別の接合手段をさらに介在することができ、接合手段によって薬物注入装置1を肌に固定することができる。
【0029】
薬物注入装置1は、ベース本体50、ポンプモジュール100、リザーバ200、ニードル組立体300、駆動ユニット400、クラッチユニット500、トリガー部材600およびバッテリー700を含むことができる。
【0030】
ベース本体50は、外部ハウジング5の基本的な枠組みを形成し、外部ハウジング5の内部空間に取り付けられる。ベース本体50は複数設けられてもよい。一実施形態では、内部部品の上側を覆う第1本体50aと、内部部品の下側を覆う第2本体50bとを設けてもよい。第1本体50aと第2本体50bとは組み立てられて、薬物注入装置1の内部部品を所定の位置に固定することができる。別の実施形態で、ベース本体は一体型の1つのフレームで形成することができる。
【0031】
ベース本体50は、トリガー部材600が回転運動できる空間を提供することができる。ベース本体50はトリガー部材600を支持し、トリガー部材600がベース本体50から突出した回動軸51を基準に回動することができる。
【0032】
ベース本体50は、トリガー部材600の回動距離を制限するストッパを備えてもよい。ストッパは複数設けられてもよく、トリガー部材600が所定の位置まで回動するようにトリガー部材600の移動距離を制限してもよい。一実施形態によれば、前記ストッパは第1ストッパ52および第2ストッパ53を含むことができる。
【0033】
第1ストッパ52はベース本体50から上部に突出して、ニードル組立体300に隣接して配置される。第1ストッパ52は、トリガー部材600の第1端610に接触するように配置され、第1端610が一方向に回転した後に反対方向に回転しないように、回転方向と回転距離を制限できる。
【0034】
具体的には、第1ストッパ52は、トリガー部材600と接触する面が傾斜して突出するように形成されてもよい。トリガー部材600の第1端610が一方向に回動すると、第1端610は第1ストッパ52の上面に沿って移動する。第1ストッパ52の上面はトリガー部材600の移動を案内するので、ニードル組立体300が回転して滑らかにトリガー部材600を回動させることができる。
【0035】
第1ストッパ52は、トリガー部材600の回転方向を制限することができる。第1ストッパ52の側壁は前記上面から延び、ベース本体50の平面と実質的に垂直に形成されてもよい。側壁は、トリガー部材600が一方向に所定の回転距離で回転した後に、ニードル組立体300とトリガー部材600が反対方向に回転することを防止して、薬物注入装置1の安定性を確保できる。
【0036】
第2ストッパ53は、リザーバ200、駆動ユニット400およびクラッチユニット500に隣接して配置される。第2ストッパ53は、ベース本体50から上部も突出して配置され、トリガー部材600の第2端620の移動距離を制限することができる。一実施形態で、第2ストッパ53は、長手方向の延長線が回転軸51の中心を通過することができる。
【0037】
一方、ニードル組立体300のニードルNを介してリザーバ200内の薬物をユーザーに注入する過程で、各種異物や針周囲の血液凝固等の原因で薬物が注入される通路である注入口が詰まる可能性がある。注入口は、ニードルNの内部通路、またはニードルNとリザーバ200とを連結する薬物移動通路を含むことができるが、これらに限定されない。これらの原因によって注入口が詰まった場合、ユーザーに必要な量の薬物が注入されない可能性がある。あるいは、ユーザーに薬物がまったく注入されない可能性がある。
【0038】
一実施形態では、薬物注入装置1は、ポンプモジュール100の駆動時間に基づいて注入口詰まりの有無を決定することができる。例えば、ポンプモジュール100の駆動時間が閾値を超えると、注入口が詰まったと決定することができる。
【0039】
図3は、本発明の一実施形態によるポンプモジュールの斜視図である。図4は、図3のII-II’線に沿った断面図である。
【0040】
図3を参照すると、本発明のポンプモジュール100は、プロセッサ800によって全般的な動作を実行することができる。具体的に、プロセッサ800は、ポンプモジュール100で感知した情報に基づいてポンプモジュール100の駆動時間などを算出することができ、算出の結果に基づいて薬物注入装置1が詰まったか否かを決定できる。
【0041】
図3では、プロセッサ800はポンプモジュール100とは別の構成で実装されていることを示しているが、また別の本発明の例によれば、プロセッサ800はポンプモジュール100に含まれる構成で実装され得る。プロセッサ800がポンプモジュール100とは別の構成で実装される場合には、薬物注入装置1に含まれてもよく、遠隔装置2に含まれて薬物注入装置1と通信網を介して通信されることもできる。
【0042】
通信網は、例えば、LANs(Local Area Networks)、WANs(Wide Area Networks)、MANs(Metropolitan Area Networks)、ISDNs(Integrated Service Digital Networks)などの有線ネットワークや、無線LANs、CDMA、Bluetooth、衛星通信などの無線ネットワークを網羅することができるが、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0043】
また、プロセッサ800は、デジタル信号を処理するデジタルシグナルプロセッサ(digital signal processor(DSP))、マイクロプロセッサ(microprocessor)、TCON(Time controller)として実装することができる。ただし、これに限定されるものではなく、中央処理装置(central processing unit(CPU))、MCU(Micro Controller Unit)、MPU(micro processing unit)、コントローラ(controller)、アプリケーションプロセッサ(application processor(AP))、または、コミュニケーションプロセッサ(communication processor(CP))、ARMプロセッサのうちの1つ、または複数を含むか、当該用語で定義することができる。また、プロセッサ800は、プロセッシングアルゴリズムが組み込まれたSoC(System on Chip)、LSI(large scale integration)で実装されてもよく、FPGA(Field Programmable gate array)の形態で実装されてもよい。
【0044】
図3および図4を参照すると、ポンプモジュール100の内部ハウジング110は、一側に設けられたシャフト孔112Hを含み、シャフト孔112Hを介して所定の長さを有するシャフト120が内部ハウジング110の外側に延びることができる。一実施形態では、シャフト孔112Hは、内部ハウジング110の本体111に対して一側に延びた突出部112に形成されてもよく、突出部112の直径は本体111の直径より小さく形成することができる。
【0045】
シャフト120の第1部分121は内部ハウジング110の内部に配置され、第2部分122は上述のようにシャフト孔112Hを通過して内部ハウジング110の外部に延びる。シャフト120は、図3および図4の上下方向(Z方向)に沿って往復運動することができる。シャフト120の往復運動において、第1部分121は、内部ハウジング110の内部空間、例えば突出部112に該当する内部空間で線形的に往復運動することができる。シャフト120の第1部分121の直径R1はシャフト孔112Hの直径R3よりも大きいので、第1部分121は内部ハウジング110の外部に抜けない。
【0046】
シャフト120の第2部分122は、シャフト孔112Hの直径R3よりも小さい直径R2を有するが、このとき第2部分122がシャフト孔112Hから抜けるのを防止するために、第2部分122は、内部ハウジング110の外部に配置された動力伝達部130と結合することができる。
【0047】
シャフト120の第1部分121の側面には、第1シール材125が配置されてもよい。内部ハウジング110の内部空間、例えば内部ハウジング110の内側面とシャフト120の内側面とによって定義される空間は密閉空間であり、内部空間には流体が存在し、第1シール材125は、内部ハウジング110とシャフト120との間の隙間への流体の漏れ(露出)を防止することができる。図4では説明の便宜のために流体を省略して示した。
【0048】
一実施形態によれば、図4に示すように、第1シール材125は、Oリングの形態で第1部分121の側面を覆うことができ、第1シール材125によって、内部ハウジング110の内部に存在する流体がシャフト孔112Hを介して内部ハウジング110の外部に漏れる(漏出する)ことを防止できる。流体の漏れは、シャフト120の第1部分121から動力伝達部130までの第1距離D1を突出部112の内側長さD2と同じかそれより短く形成することで、さらに効果的に防止することができる。
【0049】
メンブレン140は、内部ハウジング110の内部空間、例えば、本体111と対応する内部空間に配置することができる。内部空間は、メンブレン140を中心に両側にそれぞれ位置する第1空間S1と第2空間S2とを含む。図4では、メンブレン140を基準としてシャフト120から遠い空間が第1空間S1であり、メンブレン140を基準としてシャフト120に隣接する空間を第2空間S2と示す。
【0050】
メンブレン140は、流体とイオンの移動が可能な多孔質構造を有することができる。メンブレン140は、例えば、球状シリカを熱で焼成して製造したフリット状のメンブレンであってもよい。例えば、メンブレンの形成に使用される球状シリカは、約20nm~約500nmの直径を有するものであってもよく、具体的には約30nm~約300nmの直径を有するものであってもよく、より具体的には約40nm~約200nmの直径を有するものであってもよい。前記球状シリカの直径が上記の範囲を満たす場合、メンブレン140を通過する第1流体による圧力、すなわちシャフト120を移動させるのに十分な圧力を発生させることができる。
【0051】
上記の実施形態では、メンブレン140が球状シリカを含むことを説明したが、メンブレン140はこれに限定されるものではない。別の実施形態で、メンブレン140は、多孔質シリカまたは多孔質アルミナなどのようにゼータポテンシャル(zeta potential)によるエレクトロキネティック(eletrokinetic)現象を引き起こす可能性がある材料であれば、その種類を限定するものではない。
【0052】
メンブレン140は、約20μm~約10mmの厚さを有することができ、具体的には約300μm~5mmの厚さを有することができ、より具体的には約1,000μm~約4mmの厚さを有することができる。
【0053】
メンブレン140の両側には、第1電極体150と第2電極体160がそれぞれ配置される。第1電極体150は、メンブレン140の第1側に配置された第1多孔質プレート151および第1電極ストリップ152を含むことができる。第2電極体160は、メンブレン140の第2側に配置された第2多孔質プレート161および第2電極ストリップ162を含むことができる。
【0054】
第1多孔質プレート151、および第2多孔質プレート161は、それぞれ、メンブレン140の両側主面(main surface)と接触するように配置することができる。第1多孔質プレート151、および第2多孔質プレート161は、多孔構造を介して流体およびイオンを効果的に移動させることができる。第1多孔質プレート151、および第2多孔質プレート161は、多孔質ベース層に電気化学反応物質が形成された構造を有することができる。電気化学反応物質は、例えば、無電解メッキ、真空蒸着、コーティング、ゾル-ゲルプロセスなどの方法を通じて多孔質ベース層に電着またはコーティングすることによって形成することができる。
【0055】
多孔質ベース層は絶縁体であり得る。例えば、多孔質ベース層は、非導電性のセラミック、非導電性の高分子樹脂、非導電性のガラス、およびそれらの組み合わせから選択された1つ以上を含み得る。
【0056】
非導電性のセラミックは、例えば、岩綿、石膏、セラミックス、セメント、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上を含むことができ、具体的には、岩綿、石膏およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上を含むことができるが、これに限定されない。
【0057】
非導電性の高分子樹脂は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるものなどの合成繊維と、ウール、木綿、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるものなどの天然繊維と、海綿と、生物体、例えば生物体の骨に由来する多孔質材料と、それらの組み合わせとからなる群から選択される1つ以上を含むことができるが、これらに限定されない。
【0058】
非導電性のガラスは、グラスウール、ガラスフリット(glass frit)、多孔質ガラス、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されない。
【0059】
多孔質ベース層は、約0.1μm~約500μmの細孔サイズを有することができ、具体的には約5μm~約300μmの細孔サイズを有することができ、より具体的には約10μm~約200μmの細孔サイズを有することができる。多孔質支持体の細孔サイズが上記の範囲を満たす場合、流体とイオンを効果的に移動させ、ポンプモジュール100の安定性、寿命特性および効率を向上させることができる。
【0060】
電気化学反応物質は、第1電極体150および第2電極体160の電極反応時に、酸化電極と還元電極がカチオン、例えば、水素イオンのやりとりできる一対の反応を成すことができ、同時に可逆的な電気化学反応を構成することができる物質を含み得る。電気化学反応物質は、例えば、銀/酸化銀、銀/塩化銀、MnO(OH)、ポリアニリン(polyaniline)、ポリピロール(polypyrrole)、ポリチオフェン(polythiophene)、ポリチオニン(polythionine)、キノン系ポリマー(quinone-based polymer)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0061】
第1電極ストリップ152および第2電極ストリップ162は、第1多孔質プレート151および第2多孔質プレート161の縁に配置することができ、内部ハウジング110の外部にある第1端子153および第2端子163とつながることができる。第1電極ストリップ152および第2電極ストリップ162は、銀、銅などの導電性材料を含むことができる。
【0062】
内部ハウジング110の内部空間に設けられた流体は、相(phase)が異なる第1流体と第2流体とを含むことができる。第1流体は水などの液体を含み、第2流体は空気などの気体を含み得る。内部空間に存在する第1流体は内部空間を全体的に埋めない。すなわち、内部空間の体積は、内部空間に存在する第1流体の体積よりも大きい。内部空間のうち水が存在しない部分には第2流体が存在する。
【0063】
メンブレン140、第1電極体150、および第2電極体160の構造物の両側には、第2シール材170が配置される。第2シール材170は、上述した構造物の縁に対応する面積を有するリング状であってもよい。上述の流体、例えば、第1流体は、メンブレン140を通過するようにメンブレン140の厚さ方向に沿って第1空間S1から第2空間S2へ、またはその逆方向に移動することになるが、第2シール材170は、内部ハウジング110の内側面と上述の構造物との間の隙間を塞ぎ、液体がこの隙間に移動するのを防止することができる。
【0064】
流体は、図3に示すような補充口180を通って内部空間に入ることができる。一実施形態では、両側の補充口180を介して第1流体を内部空間に完全に充填した後、いずれかの補充口180を介して第1流体の一部を外部に引き出した後に補充口180を閉鎖することによって、第1流体および第2流体が内部ハウジング110の内部空間に存在することができる。
【0065】
以下では、図5a~図6bを参照して、流体の動きおよびそれに伴うシャフトの移動について説明する。
【0066】
図5aおよび図5bは、メンブレンを中心とした第1および第2電極体における反応を示す模式図である。
【0067】
図5aおよび図5bを参照すると、第1電極体150および第2電極体160は、それぞれ、第1端子153および第2端子163を介して電源部190と電気的に連結される。電源部190が供給する電圧の極性を交互に変更して供給することにより、水などの液体の移動方向を変えることができる。
【0068】
一実施例では、銀/酸化銀を電気化学反応物質として用い、第1流体が水を含む溶液である場合について説明する。
【0069】
図5aに示すように、第1電極体150が酸化電極であり、第2電極体160が還元電極である場合、第1電極体150ではAg(s)+H2O→Ag2O(s)+2H++2e-の反応が起こり、第2電極体160ではAg2O(s)+2H++2e-→Ag(s)+H2Oの反応が起こる。
【0070】
第1電極体150における酸化反応により生成されたカチオン(Mn+、例えば、水素イオン)は、電圧差によってメンブレン140を通過して第2電極体160に向かって移動するが、この際、カチオンとともに水(H2O)が一緒に移動しながら所定の圧力が発生する可能性がある。
【0071】
この後、図5bに示すように電源部190が供給する電圧の極性を逆に変えると、先に酸化電極として使用したときに消費された電気化学反応物質が還元電極として使用されたときに回復し、還元電極の場合も同様に回復しながら、第1電極体150および第2電極体160は、電源部190の電圧供給に応じて連続的に反応可能である。図5aとは異なり、第1電極体150および第2電極体160に供給される電圧の極性が変わると、図5bに示すように、カチオン(Mn+、例えば、水素イオン)と水(H2O)が第2空間S2から第1空間S1に再び移動することになる。
【0072】
図6aおよび図6bは、シャフトの往復運動を説明する断面図である。
【0073】
図6aはシャフトの移動前の状態であり、図6bはシャフトの移動後の状態である。図6aは、先に図5aを参照して説明した電源部190によって第1電極体150および第2電極体160に電圧が印加される前の状態であることと理解されてもよい。
【0074】
図6aを参照すると、内部ハウジング110の内部空間には水などの液体の第1流体が存在するが、内部空間に存在する第1流体の体積は内部空間の体積より小さい。内部空間のうち液体が存在しない部分には、空気などの気体を含む第2流体が存在する。
【0075】
例えば、第1空間S1および第2空間S2には、それぞれ第1流体が存在する上で、第1空間S1には第1流体および第2流体が共存しながら、第1空間S1に存在する第1流体の体積は、第1空間S1の体積より小さくてもよい。第2空間S2にも第1流体が存在するが、第1空間S1と異なり第2流体は存在しない。以下、説明の便宜のために、第1空間S1のうち液体である第1流体が存在する空間を第1サブ空間SS1といい、気体である第2流体が存在する空間を第2サブ空間SS2という。第1サブ空間SS1と第2サブ空間SS2とは、第1空間S1を成すことができる。例えば、第1空間S1から第1サブ空間SS1を除いた残りが第2サブ空間SS2であってもよい。
【0076】
図6aの状態で、電源部190が第1電極体150および第2電極体160に電圧を供給すると、図5aで上述した反応が起こり、カチオン(例えば、水素イオン)が第1空間S1から第2空間S2に向かう第1方向(図4の-Z方向)に沿って移動する。この際、カチオンと共に第1空間S1の第1流体(例えば、H2O)がメンブレン140を通って第1方向に沿って移動しながら圧力が発生し、圧力によって図6bに示すようにシャフト120が第1方向に沿って線形に移動する。第1空間S1の第1流体(例えば、H2O)が第2空間S2に移動すると、第1空間S1の体積に対する第1サブ空間SS1の体積比率は減少する一方、第1空間S1のうち、第2サブ空間SS2が占める割合は増加する。
【0077】
逆に、図6bの状態で電源部190が第1電極体150および第2電極体160に電圧の極性を変えて供給すると、カチオン(例えば、水素イオン)と第1流体(例えば、水)が第2空間S2から第1空間S1に向かう第2方向(図4のZ方向)に沿って移動し、シャフト120は再び図6aに示すように元の位置に移動する。
【0078】
電源部190が第1電極体150および第2電極体160に印加する電圧の極性を交互に変えると、シャフト120は第1方向に移動してから第1方向の逆方向である第2方向に移動し、再び第1方向に移動するように往復運動することができる。
【0079】
シャフト120の往復運動は、第1空間S1のうち第2流体が存在する空間、すなわち第2サブ空間SS2の体積比率による変化として説明することができる。
【0080】
図7は、本発明の一実施形態による薬物注入装置がポンプモジュールおよび駆動ユニットを介して薬物を注入することを説明するための平面図である。図8は、本発明の一実施形態による薬物注入装置がポンプモジュールおよび駆動ユニットを介して薬物を注入することを説明するための斜視図である。図9は、本発明の一実施形態による駆動ユニットの動作を説明するための平面図である。
【0081】
図7図9を参照すると、動力伝達部130は回転子430と連結されてもよい。このとき、回転子430は、第1端431、第2端432および第3端433a、433bを含むことができる。第1端431は少なくとも1つのセンサ421、422と接触する部分であり、第2端432は動力伝達部130と連結される部分であり、第3端433a、433bは第1連結端401および第2連結端402にそれぞれ接触する部分であってもよい。
【0082】
本発明の一実施形態による少なくとも1つのセンサ421、422は、アンカーセンサ(Anchor sensor)であってもよいが、これに限定されず、接触動作によって感知可能なあらゆる種類のセンサを介して実施することができる。
【0083】
本発明のポンプモジュール100は、図3図6bで説明したように、シャフト120を直線往復運動させることができ、それによってシャフトの第2部分122に連結された動力伝達部130も同じ方向の直線往復運動を行うことができる。
【0084】
すなわち、動力伝達部130は回転子430の第2端432に接続することができ、動力伝達部130の直線往復運動に応じて第2端432も共に直線往復運動を行うことができる。
【0085】
図9の例のように、第1端431が第2センサ422に接触した状態でポンプモジュール100の往復運動により第2端432が右方向(Y方向)にしたがって直線運動を行うと、回転子430が回転運動を行うことができる。回転子430の第3端433bは、上方向(Z方向)に移動しながら第1連結端401のギヤに力を掛け、駆動ユニット400が回転することができる。また、回転子430の第1端431は、第1センサ421に接触するまで左(-Y方向)に回転運動を行うことができ、第1センサ421に接触することにより回転子430の回転運動が停止される。
【0086】
同様に、第1端431が第1センサ421に接触した状態でポンプモジュール100の往復運動により第2端432が左方向(-Y方向)に沿って直線運動を行うと、回転子430が回転運動を行うことができる。回転子430の第3端433aは、上方向(Z方向)に移動しながら第2連結端402のギヤに力を掛けて駆動ユニット400が回転することができる。また、回転子430の第1端431は、第2センサ422に接触するまで右(Y方向)に回転運動を行うことができ、第2センサ422に接触することにより回転子430の回転運動が停止される。
【0087】
上述したように、駆動ユニット400からリザーバ200方向に延びて形成された連結シャフト410は、駆動ユニット400と接続され、駆動ユニット400の回転に対応して回転する。
【0088】
すなわち、図9と同様に、動力伝達部130を介して伝達されたポンプモジュール100における直線往復運動を駆動ユニット400の回転往復運動に切り替えることができ、本発明の一実施形態による薬物注入装置1は、前記回転往復運動を介してリザーバ200に保存された薬物を注入することができる。
【0089】
本発明の一実施形態によるプロセッサ800は、センサ421、422を介して感知された接触時刻情報を取得することができる。
【0090】
図9の例を見ると、プロセッサ800は、第1端431が第2センサ422と接触分離される第1接触時刻情報を取得し、第1端431が第1センサ421と接触する第2接触時刻情報を取得することができる。その後、プロセッサ800は、上述した第1および第2接触時刻情報に基づいてポンプモジュール100の第1駆動時間を算出することができる。このとき、第1駆動時間は、ポンプモジュール100のプッシュ(Push)動作を駆動するための駆動時間であってもよい。
【0091】
同様に、プロセッサ800は、第1端431が第1センサ421と接触分離される第3接触時刻情報を取得し、第1端431が第2センサ422と接触する第4接触時刻情報を取得することができる。その後、プロセッサ800は、上述した第3および第4接触時刻情報に基づいてポンプモジュール100の第2駆動時間を算出することができる。このとき、第2駆動時間は、ポンプモジュール100のプル(Pull)動作を駆動するための駆動時間であってもよい。
【0092】
一方、上述した第1駆動時間(Push駆動時間)および第2駆動時間(Pull駆動時間)は、メンブレン、機構、摩擦力、長さ、温度、負荷、電気分解など様々な要素の影響を受けることができる。
【0093】
図10は、一実施形態による薬物注入装置の内部圧力とポンプモジュールの駆動時間との相関関係を説明するための図である。
【0094】
ポンプモジュールの駆動時間は様々な原因によって変わり得る。
【0095】
例えば、ユーザーに薬物が注入される通路である注入口が詰まっているか否かによって、ポンプモジュールの駆動時間が変わり得る。具体的には、注入口詰まりが発生した場合、薬物注入装置の内部圧力が上昇し、これによりポンプモジュールの駆動時間が増加する可能性がある。
【0096】
また、薬物注入装置の温度に応じてポンプモジュールの駆動時間が変わり得る。具体的には、同じ圧力条件下で、薬物注入装置の温度が基準温度より低い場合、ポンプモジュールの駆動時間を増加させることができ、薬物注入装置の温度が基準温度より高い場合、ポンプモジュールの駆動時間を短縮することができる。
【0097】
また、薬物注入装置の薬物注入速度に応じてポンプモジュールの駆動時間が変わり得る。具体的には、薬物注入速度が速いほど、薬物注入装置の内部圧力が増加し、ポンプモジュールの駆動時間が増加する可能性がある。
【0098】
図10に示すグラフのx軸はポンプ周期(pump cycles)を示し、y軸はポンプモジュールの駆動時間を示す。ポンプモジュールが1回のプッシュ動作と1回のプル動作を完了することが、1回のポンプ周期であり得る。ポンプモジュールの駆動時間の単位はms(milliseconds)であり得る。図10を参照すると、ポンプ周期が進むにつれて薬物注入装置の内部圧力が増加する場合、ポンプモジュールの駆動時間も増加傾向にある。
【0099】
ポンプモジュールの駆動時間を算出する方法は、図9で詳細に説明したので、ここでは省略する。
【0100】
一方、ポンプモジュールの駆動時間は、算出するたびに誤差および偏差が発生する可能性があり、以下では、駆動時間の誤差および偏差を最小化して薬物注入装置の詰まりの発生を決定する方法について説明する。
【0101】
図11は、一実施形態による薬物注入装置の注入口詰まりの発生を決定する方法のフローチャートである。
【0102】
図11を参照すると、ステップ1110で評価値Cを0に設定することができる。評価値Cは、ポンプモジュールの駆動時間の増加または減少傾向を確認するために用いられる値であり、これについては後述する。
【0103】
ステップ1120で、薬物注入装置はポンプモジュールの駆動時間を算出することができる。
【0104】
図3および図9を参照して説明すると、プロセッサ800は、第1端431が第2センサ422と接触分離される第1接触時刻情報を取得し、第1端431が第1センサ421と接触する第2接触時刻情報を取得することができる。その後、プロセッサ800は、上述した第1および第2接触時刻情報に基づいてポンプモジュール100の第1駆動時間を算出することができる。このとき、第1駆動時間は、ポンプモジュール100のプッシュ(Push)動作を駆動するための駆動時間であってもよい。
【0105】
同様に、プロセッサ800は、第1端431が第1センサ421と接触分離される第3接触時刻情報を取得し、第1端431が第2センサ422と接触する第4接触時刻情報を取得することができる。その後、プロセッサ800は、上述した第3および第4接触時刻情報に基づいてポンプモジュール100の第2駆動時間を算出することができる。このとき、第2駆動時間は、ポンプモジュール100のプル(Pull)動作を駆動するための駆動時間であってもよい。
【0106】
ステップ1130において、薬物注入装置は、所定数の連続した駆動時間をフィルタリングしてフィルタリング時間を算出することができる。
【0107】
フィルタリング時間を算出するために用いられる駆動時間は、ステップ1120で算出された第1駆動時間または第2駆動時間であり得る。あるいは、フィルタリング時間を算出するために用いられる駆動時間は、ステップ1120で算出された第1駆動時間と第2駆動時間とを比較して、より長い駆動時間を用いることができる。
【0108】
例えば、薬物注入装置は、12の連続した駆動時間を取得し、移動平均方式を適用してフィルタリング時間を算出することができる。しかしながら、フィルタリング時間を算出するために用いられる駆動時間の数およびフィルタリング方式は、上記の例に限定されない。
【0109】
ステップ1140で、薬物注入装置は、現在のフィルタリング時間と前のフィルタリング時間とを比較することができる。
【0110】
現在のフィルタリング時間と前のフィルタリング時間との差が第1基準値以上である場合、ステップ1151が進むことができる。ステップ1151で、薬物注入装置は評価値を増加させることができる。あるいは、現在のフィルタリング時間と前のフィルタリング時間との差が第1基準値未満である場合、ステップ1152が進むことができる。ステップ1152で、薬物注入装置は評価値を減少させることができる。
【0111】
例えば、現在のフィルタリング時間が2.30秒であり、前のフィルタリング時間が1.90秒であり、第1基準値が0.30秒に設定されている場合、薬物注入装置は評価値を1増加させることができる。第1基準値は、0.30秒、0.25秒、0.20秒、0.15秒、0.10秒または0.05秒であり得るが、これらに限定されない。
【0112】
一方、図11では、ステップ1151で評価値が1増加し、ステップ1152で評価値が1減少することが示されているが、評価値の増加/減少幅はこれに限定されない。一実施形態では、ステップ1152で評価値が減少する幅は、ステップ1151で評価値が増加される幅よりも大きくてもよい。例えば、ステップ1151で評価値は1増加し、ステップ1152で評価値は2減少することができる。すなわち、現在のフィルタリング時間と前のフィルタリング時間との差が第1基準値以上である場合より第1基準値未満である場合に、減少重みをさらに与える方式で、薬物注入装置は評価値を算出することができる。
【0113】
ステップ1160で、薬物注入装置は評価値と第2基準値とを比較することができる。
【0114】
評価値が第2基準値以上である場合、ステップ1170に進むことができる。さらに、評価値が第2基準値未満である場合、ステップ1120に戻ることができる。例えば、第2基準値が「20回」である場合、評価値が20回以上になればステップ1170に進むことができる。第2基準値は、10回、15回、20回、または25回とすることができるが、これらに限定されない。
【0115】
ステップ1170で、薬物注入装置は、現在のフィルタリング時間と第3基準値とを比較することができる。
【0116】
現在のフィルタリング時間が第3基準値以上である場合、ステップ1180に進むことができる。さらに、現在のフィルタリング時間が第3基準値未満である場合、ステップ1120に戻ることができる。
【0117】
ステップ1180で、薬物注入装置は、注入口詰まりが発生したと決定することができる。
【0118】
例えば、現在のフィルタリング時間が2.30秒であり、第3基準値が2.25秒に設定されている場合、薬物注入装置は注入口詰まりが発生したと決定することができる。
【0119】
各種異物、機械的破損、針周囲の血液凝固など様々な原因で、ユーザーに薬物が注入される通路である注入口が詰まる可能性がある。
【0120】
ステップ1130を参照すると、本発明では、ポンプモジュールの駆動時間は算出ごとに誤差および偏差が発生する可能性があるので、このような誤差および偏差を減らすために所定数の連続した駆動時間をフィルタリングしたフィルタリング時間を用いることができる。
【0121】
また、ステップ1140~ステップ1170を総合すると、本発明では、フィルタリング時間が増加傾向であり(すなわち、評価値が第2基準値以上)、フィルタリング時間が所定の値以上(すなわち、現在のフィルタリング時間が第3基準値以上)の条件が全て満たされた場合にのみ、薬物注入装置の注入口詰まりが発生したと決定することで、ノイズの影響を最小限に抑えることができる。
【0122】
一方、一実施形態では、ステップ1170は省略されてもよい。この場合、ステップ1160で評価値が第2基準値未満である場合、ステップ1180に進むことができる。
【0123】
図12は、一実施形態によるポンプモジュールの駆動時間を補償する温度補償係数を説明するための図である。
【0124】
薬物注入装置は、薬物注入装置の内部および/または外部の温度を測定する温度感知センサをさらに含み得る。薬物注入装置は、温度変動の多い環境で使用することができる。例えば、薬物注入装置の温度は、ユーザーの体温、外部環境に応じて変わり得る。
【0125】
薬物注入装置は、温度感知センサから薬物注入装置の現在の温度を受信することができる。薬物注入装置は、基準温度と現在の温度とを比較して駆動時間を補償することによって補償された駆動時間を算出することができる。
【0126】
薬物注入装置は、所定数の連続の補償された駆動時間をフィルタリングしてフィルタリング時間を算出することができる。フィルタリング時間を算出した後に、薬物注入装置がフィルタリング時間を用いて注入口詰まりを決定する方法は、図11のステップ1140~ステップ1180で説明した内容と重複するので、ここでは省略する。
【0127】
温度を除いた他の条件(例えば、周囲圧力など)が等しい場合、ポンプモジュールの駆動時間は温度に影響を受ける可能性がある。薬物注入装置の現在の温度が高いほど、ポンプモジュールの駆動時間は短くなる。さらに、薬物注入装置の現在の温度が低いほど、ポンプモジュールの駆動時間は長くなる。
【0128】
本発明では、温度による駆動時間誤差によって実際に薬物注入装置の注入口詰まりが発生しなくても注入口詰まりが発生したと誤判定することを防止するために、補償された駆動時間を用いることができる。
【0129】
図12を参照すると、x軸は温度を表し、y軸は温度補償係数を表す。温度が上昇するほど、温度補償係数の値は大きくなる可能性がある。例えば、薬物注入装置の温度が24℃の場合、温度補償係数は1.007であり得る。
【0130】
薬物注入装置は、ポンプモジュールの駆動時間に温度補償係数を掛けることによって補償された駆動時間を算出することができる。例えば、薬物注入装置の温度が39℃であり、温度補償係数が1.5であり、ポンプモジュールの駆動時間が2.0秒である場合、補償された駆動時間は3.0秒(=2.0秒×1.5)であり得る。
【0131】
一実施形態で、薬物注入装置の温度に応じた温度補償係数は、薬物注入装置のメモリにルックアップテーブルの形態で記憶されることができる。あるいは、薬物注入装置は、所定の演算により温度に応じた温度補償係数をリアルタイムで算出してもよい。
【0132】
図13は、一実施形態によるポンプモジュールの駆動間隔を考慮して薬物注入装置の注入口詰まりの発生を決定する方法のフローチャートである。
【0133】
図13を参照すると、ステップ1310で、薬物注入装置は接触時刻情報を用いてポンプモジュールの駆動間隔を算出することができる。
【0134】
図3および図9を参照して説明すると、プロセッサ800は、第1端431が第2センサ422と接触分離される第1接触時刻情報を取得し、第1端431が第1センサ421と接触する第2接触時刻情報を取得することができる。その後、プロセッサ800は、上述した第1および第2接触時刻情報に基づいてポンプモジュール100の第1駆動時間を算出することができる。このとき、第1駆動時間は、ポンプモジュール100のプッシュ(Push)動作を駆動するための駆動時間であってもよい。
【0135】
同様に、プロセッサ800は、第1端431が第1センサ421と接触分離される第3接触時刻情報を取得し、第1端431が第2センサ422と接触する第4接触時刻情報を取得することができる。その後、プロセッサ800は、上述した第3および第4接触時刻情報に基づいてポンプモジュール100の第2駆動時間を算出することができる。このとき、第2駆動時間は、ポンプモジュール100のプル(Pull)動作を駆動するための駆動時間であってもよい。
【0136】
一実施形態で、ポンプモジュールが1回のプッシュ動作と1回のプル動作を完了するまでの時間を駆動時間に設定することができる。また、プル動作が完了してから次回のプッシュ動作が開始されるまでの時間を駆動間隔として設定することができる。ただし、駆動時間と駆動間隔を上記のように設定することは例示に過ぎない。例えば、プッシュ動作が完了してから次回のプル動作が開始されるまでの時間を駆動間隔に設定することもできる。
【0137】
ステップ1320で、薬物注入装置は、所定数の連続した駆動間隔をフィルタリングしてフィルタリング間隔を算出することができる。
【0138】
例えば、薬物注入装置は、12の連続した駆動間隔を取得し、移動平均方式を適用してフィルタリング間隔を算出することができる。しかしながら、フィルタリング間隔を算出するために用いられる駆動間隔の数およびフィルタリング方式は上記の例に限定されない。
【0139】
ステップ1330で、薬物注入装置は、フィルタリング間隔に基づいて第2基準値を調整することができる。
【0140】
具体的には、薬物注入装置は、フィルタリング間隔が長いほど第2基準値をより低く調整し、フィルタリング間隔が短いほど第2基準値をより高く調整することができる。
【0141】
フィルタリング間隔が長いほど薬物注入装置の注入速度が遅いことを示し、フィルタリング間隔が短いほど薬物注入装置の注入速度が速いことを示す。本発明では、フィルタリング間隔に応じて第2基準値を調整することで感度を適用することができる。本発明では、フィルタリング間隔が長いほど、すなわち薬物注入装置の注入速度が遅いほど、注入口の詰まりが発生したか否かをより迅速に決定するために、第2基準値を低く調整することができる。
【0142】
例えば、第2基準値を調整する方式として、数式1を用いることができる。
【0143】
【数1】
【0144】
前記数式1において、Bは調整された第2基準値を表し、Bmaxは最大第2基準値、Bminは最小第2基準値、Tは平均フィルタリング間隔、Tmaxは最大フィルタリング間隔を意味する。Tmax、Bmax、Bminは予め設定された値である。
【0145】
一実施形態で、薬物注入装置は、注入の種類に応じて第2基準値を調整することができる。例えば、注入タイプがBasal(商標)である場合、注入タイプがBolus(商標)である場合よりも薬物注入装置の注入速度が遅い。薬物注入装置は、注入タイプがBasal(商標)である場合、注入タイプがBolus(商標)である場合よりも第2基準値を低く調整することにより、注入口詰まりが発生したかどうかをより迅速に決定することができる。
【0146】
ステップ1340において、薬物注入装置は、評価値が調整された第2基準値以上である場合、注入口詰まりが発生したと決定することができる。
【0147】
本発明では、薬物注入装置の注入速度が遅いほど第2基準値を小さく設定し、薬物注入装置の注入速度が速いほど第2基準値を大きく設定するように感知感度を調整することで注入口が詰まったか否かをより正確に決定することができる。
【0148】
一方、様々な注入タイプ(例えば、Bolus、Extended Bolus、Basalなど)を組み合わせて薬物を注入する場合には、総注入速度の平均を計算することが困難であるという問題がある。本発明では、ポンプモジュールの基本注入単位ごとに駆動間隔を測定し、測定された駆動間隔に基づいて注入速度(すなわち、フィルタリング間隔)を計算するので、注入タイプを組み合わせた場合でも全体の注入速度を容易に計算することができる。
【0149】
図14は、一実施形態による注入速度に従ってポンプモジュールの駆動を遅延させる方法のフローチャートである。
【0150】
瞬間的に薬物注入装置の注入量が多くなる場合、すなわち薬物装置の注入速度が速い場合、注入口が詰まらない正常な状況でも薬物注入装置の内部圧力が上昇することがある。また、注入口が詰まっていない場合でも、人の吸収率、皮膚、付着部位、血液、針状態、温度、気圧、運動、圧迫、衝撃等により薬物注入装置の内部圧力が瞬間的に上昇することができる。
【0151】
薬物注入装置の内部圧力が一時的に上昇した場合に、これを注入口詰まりが発生したと誤判定するのを防ぐために、薬物注入装置はポンプモジュールの駆動を遅らせることができる。
【0152】
図14を参照すると、ステップ1410で薬物注入装置はポンプモジュールの駆動時間を算出することができる。
【0153】
ステップ1420で、薬物注入装置は、所定数の連続した駆動時間をフィルタリングしてフィルタリング時間を算出することができる。
【0154】
ステップ1410およびステップ1420は、それぞれ、図10のステップ1120およびステップ1130と同じであるので詳細な説明は省略する。
【0155】
ステップ1430で、薬物注入装置は、現在のフィルタリング時間と第4基準値とを比較することができる。
【0156】
現在のフィルタリング時間が第4基準値未満である場合、ステップ1440に進むことができる。あるいは、現在のフィルタリング時間が第4基準値以上である場合、ステップ1410に戻ることができる。
【0157】
図10を参照して説明すると、第4基準値は第3基準値より小さくなってもよい。例えば、ポンプモジュールの平均駆動時間(または、平均フィルタリング時間)が2.0秒である場合、第3基準値は注入口詰まりの可否の基準となる時間であるため、平均駆動時間より長い6.0秒に設定することができ、第4基準値は、注入口詰まりを決定する前に、一時的なノイズまたは圧力上昇などの要因による注入口詰まりの誤判定を減らすために、第3基準値よりも短い4.0秒に設定することができる。
【0158】
ステップ1440で、薬物注入装置は遅延時間を算出し、遅延時間ほどポンプモジュールの駆動を遅延させることができる。
【0159】
一実施形態で、薬物注入装置は、フィルタリング時間に比例するように遅延時間を算出することができる。遅延時間は、予め設定された最大遅延時間および予め設定された最小遅延時間との間の値を有することができる。遅延時間は、フィルタリング時間に予め設定された比例定数を掛けることによって算出することができる。
【0160】
図15は、一実施形態による薬物注入装置の注入口詰まりの発生を決定する方法を示すフローチャートである。
【0161】
図15を参照すると、ステップ1510において、プロセッサは、少なくとも1つのセンサがポンプモジュールに連結される回転子と接触する接触時刻情報を取得することができる。
【0162】
図3および図9を参照して説明すると、プロセッサ800は、第1端431が第2センサ422と接触分離される第1接触時刻情報を取得し、第1端431が第1センサ421と接触する第2接触時刻情報を取得することができる。
【0163】
同様に、プロセッサ800は、第1端431が第1センサ421と接触分離される第3接触時刻情報を取得し、第1端431が第2センサ422と接触する第4接触時刻情報を取得することができる。
【0164】
ステップ1520で、プロセッサは接触時刻情報を用いてポンプモジュールの駆動時間を算出することができる。
【0165】
図3および図9を参照して説明すると、プロセッサ800は、上述した第1および第2接触時刻情報に基づいてポンプモジュール100の第1駆動時間を算出することができる。このとき、第1駆動時間は、ポンプモジュール100のプッシュ(Push)動作を駆動するための駆動時間であってもよい。
【0166】
また、プロセッサ800は、上述した第3および第4接触時刻情報に基づいてポンプモジュール100の第2駆動時間を算出することができる。このとき、第2駆動時間は、ポンプモジュール100のプル(Pull)動作を駆動するための駆動時間であってもよい。
【0167】
ステップ1530において、プロセッサは、所定数の連続した駆動時間をフィルタリングしてフィルタリング時間を算出することができる。
【0168】
プロセッサは、フィルタリング時間を算出するために、第1駆動時間または第2駆動時間を用いることができる。あるいは、プロセッサは、フィルタリング時間を算出するために、第1駆動時間と第2駆動時間を足した時間を用いることができる。
【0169】
例えば、プロセッサは12の連続した駆動時間を取得し、移動平均方式を適用してフィルタリング時間を算出することができる。しかしながら、フィルタリング時間を算出するために用いられる駆動時間の数およびフィルタリング方式は、上記の例に限定されない。
【0170】
ステップ1540で、プロセッサは、現在のフィルタリング時間と前のフィルタリング時間との間の差に基づいて評価値を算出することができる。
【0171】
評価値は初期設定値にすることができる。例えば、初期設定値は0であってもよく、評価値は0以上の値に維持されてもよい。現在のフィルタリング時間と前のフィルタリング時間との差が第1基準値以上である場合、プロセッサは評価値を増加させることができる。あるいは、現在のフィルタリング時間と前のフィルタリング時間との差が第1基準値未満である場合、プロセッサは評価値を減少させることができる。
【0172】
ステップ1550において、プロセッサは、評価値が第2基準値以上である場合、薬物注入装置の注入口詰まりの発生を決定することができる。
【0173】
例えば、第2基準値が「20回」の場合、評価値が20回以上になると、プロセッサは薬物注入装置の注入口詰まりが発生したと決定することができる。第2基準値は、10回、15回、20回、または25回とすることができるが、これらに限定されない。
【0174】
本開示の様々な実施形態は、機器(machine)によって読み取り可能な記憶媒体(storage medium)に記憶された1つ以上の命令を含むソフトウェア(例えば、プログラム)として実装することができる。例えば、機器のプロセッサは、記憶媒体から記憶された少なくとも1つ以上の命令のうち、少なくとも1つの命令を呼び出し、それを実行することができる。これは、機器が前記呼び出された少なくとも1つの命令に従って少なくとも1つの機能を実行するように動作することを可能にする。前記1つ以上の命令は、コンパイラによって生成されたコード、またはインタプリタによって実行され得るコードを含み得る。機器で読み取り可能な記憶媒体は、非一時的(non-transitory)記憶媒体の形態で提供することができる。ここで、「非一時的」とは、記憶媒体が実在(tangible)する装置であり、信号(signal)(例えば、電磁波)を含まないことを意味するだけであり、この用語は、データが記憶媒体に半永久的に記憶される場合と、一時的に保存された場合を区別しない。
【0175】
一実施形態によれば、本開示の様々な実施形態による方法は、コンピュータプログラム製品(computer program product)に含まれて提供されてもよい。コンピュータプログラム製品は、商品として販売者と購入者との間で取引することができる。コンピュータプログラム製品は、機器で読み取り可能な記憶媒体(例えば、compact disc read only memory(CD-ROM))の形態で配布されるか、またはアプリケーションストア(例えば、プレイストアTM)を介して、または2つのユーザー装置の間で直接、オンラインで配布(例えば、ダウンロードまたはアップロード)することができる。オンライン配布の場合、コンピュータプログラム製品の少なくとも一部は、製造元のサーバ、アプリケーションストアのサーバ、または中継サーバのメモリなどの機器で読み取り可能な記憶媒体に、少なくとも一時的に保存するか、一時的に生成することができる。
【0176】
さらに、本明細書において、「部分」は、プロセッサまたは回路などのハードウェア構成(hardware component)、および/またはプロセッサなどのハードウェア構成によって実行されるソフトウェア構成(software component)であり得る。
【0177】
本実施例の範囲は、上記の詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および範囲並びにその均等概念から導出される全ての変更または変形された形態が含まれるものと解釈されるべきである。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15