IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ▲蘇▼州▲貝▼克▲微▼▲電▼子股▲ふん▼有限公司の特許一覧

特許7529323EDAソフト二次開発力を用いたチップ設計方法
<>
  • 特許-EDAソフト二次開発力を用いたチップ設計方法 図1
  • 特許-EDAソフト二次開発力を用いたチップ設計方法 図2
  • 特許-EDAソフト二次開発力を用いたチップ設計方法 図3
  • 特許-EDAソフト二次開発力を用いたチップ設計方法 図4
  • 特許-EDAソフト二次開発力を用いたチップ設計方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】EDAソフト二次開発力を用いたチップ設計方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/398 20200101AFI20240730BHJP
   G06F 119/08 20200101ALN20240730BHJP
【FI】
G06F30/398
G06F119:08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023526359
(86)(22)【出願日】2022-06-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 CN2022096633
(87)【国際公開番号】W WO2023273779
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】202110748503.7
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522479212
【氏名又は名称】▲蘇▼州▲貝▼克▲微▼▲電▼子股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲真▼
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07472363(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0019411(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0159978(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107342279(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111856653(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 - 30/398
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主な機能の設計及び検証を完了したチップに基づく、環境安定化システムを自動的に追加するチップ設計方法であって、
温度補償及び電磁シールドを実現することを含む環境安定化システムを自動的に追加し、
前記温度補償を実現することは、
チップを設計するEDAソフトウェア開発プラットフォームに温度補償に対応する機能モジュールを予め配置しておくステップであって、前記機能モジュールは、加熱制御回路と、シリコン基板及び抵抗に基づく加熱回路と、を含み、前記加熱回路中の抵抗の数、分布及び配線サイズが、EDAソフトウェア開発プラットフォームによって、抵抗の発熱電力、チップ完成品の設計のフレームサイズ及び座標に基づいて算出され、前記加熱制御回路は、チップ完成品の設計電源部分と加熱電流制限モジュールとの間に接続され、電源部分のオンオフを制御するための第2温度検出回路と、加熱電流制限モジュールを駆動・制御するための第1温度検出回路と、前記第1温度検出回路及び前記第2温度検出回路に通信可能に接続され、チップの温度を測定するための正の温度係数抵抗器及び負の温度係数抵抗器と、を含み、前記第1温度検出回路及び前記第2温度検出回路による制御信号出力の切り替え閾値が、EDAソフトウェア開発プラットフォームによって調整可能に設定されるステップS11と、
チップ設計開発プラットフォームにおいて温度補償追加を選択し、温度の環境要件パラメータを入力するステップS12と、
EDAソフトウェア開発プラットフォームによって環境要件パラメータに基づいて温度補償に必要な発熱電力を自動的に算出し、機能モジュールを呼び出し、チップ完成品の設計に追加し、原理図及びレイアウトを作成するステップS13と、を含み、
前記電磁シールドを実現することは、
チップを設計するEDAソフトウェア開発プラットフォームにおいて、金属層追加とアースシールドに対応する機能モジュールを予め配置しておくステップS21と、
チップ設計開発プラットフォームにおいて、電磁シールド追加を選択し、電磁界強度に関する環境パラメータを入力するステップS22と、
EDAソフトウェア開発プラットフォームによって、環境パラメータ及びチップ完成品の設計のフレームサイズ及び座標に基づいて、被覆金属層の幅面及び厚さのサイズを自動的に算出し、機能モジュールを呼び出してチップ完成品の設計に追加し、原理図及びレイアウトを作成するステップS23と、を含み、
ステップS23では、機能モジュールを呼び出してチップ完成品の設計に金属層を追加する順番は、まず、環境パラメータに基づき、必要な金属層の厚さサイズを算出し、チップ完成品の設計からのフレームサイズ及び座標と合わせて、チップ表面全体を覆う多角形金属のサイズ及び座標を得て、次に、最上側の金属層が閉じられ、前記チップ完成品の設計を前記金属層で完全に覆うまで、前記チップ完成品の設計の周辺の最下層に接地アイランドを追加して成長させ始める順番であり、
前記最上側の金属層においてチップ接点に対応する位置にビアが開けられて、多角形の前記金属層の各々の面が接地されることを特徴とする環境安定化システムを自動的に追加するチップ設計方法。
【請求項2】
前記温度の環境要件パラメータは、少なくとも、温度安定点下限、チップ動作環境温度、パッケージ放熱速度及び推定チップ発熱電力を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の環境安定化システムを自動的に追加するチップ設計方法。
【請求項3】
前記ステップS12で入力される温度に関する前記環境要件パラメータは、チップ完成品の設計のフレームを除去することを含み、
前記ステップS13では、機能モジュールを追加して原理図及びレイアウトを作成する場合、EDAソフトウェア開発プラットフォームによって、周辺加熱回路と除去されたフレーム内の回路との間の安全圧差を算出することを特徴とする請求項1に記載の環境安定化システムを自動的に追加するチップ設計方法。
【請求項4】
前記ステップS12で入力される環境要件パラメータは、チップパッケージにより制限される最大サイズを含み、ステップS13では、EDAソフトウェア開発プラットフォームによって、前記チップパッケージにより制限される最大サイズを範囲制約にして、機能モジュールを追加して原理図及びレイアウトを作成することを特徴とする請求項1に記載の環境安定化システムを自動的に追加するチップ設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、半導体チップの設計方法に関し、特に、入力されるチップ運転環境条件に基づいてEDAソフト二次開発力を用いてチップを設計する技術的解決手段に関する。
【0002】
本願は2021年07月02日に中国特許庁に提出された、出願番号が202110748503.7、発明の名称が「環境安定化システムを自動的に追加するチップ設計方法」である中国特許出願の優先権を主張しており、そのすべての内容は引用により本願に組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
スマート端末機器の急速な発展に伴い、データアダプタ、ブルートゥースヘッドホンなどの小さな部品から、車、船、航空機の制御システムなどの大型部品に至るまで、高精密に設計・加工された半導体チップが欠かせない。また、チップ応用対象製品の多様性と環境の違いに伴い、チップ運転の環境耐性に対してもよりも高い要求が出されている。通常、電子製品のチップは機能設計の当初は安定運転の温度区間を考慮して設定するが、電子製品は使用者によって地球の異なる緯度で移動し、極寒地域に入ると、性能が大幅に弱まる現象がよく発生する。蓄電池と同様に、半導体基材でも温度が一定の下限まで下がると「クラッシュ」現象が発生する。
一般的なチップ設計は消費級、工業級、軍用級などに分けられ、等級ごとはチップの運転可能な温度範囲に対して詳細な期待があり、明らかに一度に最高規格を満たすチップを設計するのはかなり難しいことがあり、高温の限界は半導体の真性化によりPN接合が消失する温度制限に制限される。低温の限界は半導体装置自体の性能変化に制限され、回路動作点が予想から外れて故障する。
【0004】
一般的に回路を設計する時にさまざまな温度を考慮して最適化するが、その反面、設計難度を高め、設計周期を延長してしまう。
【0005】
同様に、無線通信技術の発展と周辺電磁環境の複雑化に伴い、チップが予め設定された機能通りに正常に動作することにも少なからぬリスクをもたらしている。チップの保護が不十分であれば、大規模な電磁放射を経た後に大面積の設備が機能しなくなり、故障することになる。このため、チップの設計過程でますます多くの開発者がチップに環境安定化システムを追加する技術的ブレークスルーを重視している。
【0006】
しかしながら、チップの環境安定化システムに関する既存の手段としては、温度の面では、商業的な用途に応じて温度範囲と電気的性能範囲との間のバランスを取るように工夫しており、このスキームは、より多くのデバイスの温度特性を考慮する必要があり、回路設計時の難易度が上昇している。あるいは、原理回路の設計の時に、チップが低温環境下で動作できるように設計のいくつかの加熱方法を設計するが、これは、設計の難易度を高めて、レイアウトの設計の時にもこの部分の温度補償の回路をチップのレイアウトで実現するために手動操作が必要とされる。電磁シールドについては、現在、例えば回路設計の際に金属カバーを追加するなど、主にパッケージや回路基板の設計の際に電磁シールドを追加することを考えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来技術の欠点を解決するために、本願は、チップ設計においてチップの環境変化抵抗性や機能安定性維持の能力を向上させる課題を解決するために、EDAソフト二次開発力を用いたチップ設計方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願が上述した目的を達成させるための技術的解決手段は以下のとおりである。主な機能の設計及び検証を完了したチップに基づく、EDAソフト二次開発力を用いたチップ設計方法であって、温度補償を実現するための環境安定化システム、電磁シールドを実現するための環境安定化システムのうちの少なくとも1つを自動的に追加する。
【0009】
任意選択に、前記温度補償を実現するための環境安定化システムを自動的に追加する場合、前記方法は、
チップを設計するEDAソフトウェア開発プラットフォームに少なくとも1つの温度補償に対応する機能モジュールを予め配置しておくステップS11と、
チップ設計開発プラットフォームにおいて温度補償追加を選択し、温度に関する少なくとも1つの環境要件パラメータを入力するステップS12と、
EDAソフトウェア開発プラットフォームによって温度に関する前記環境要件パラメータに基づいて温度補償に必要な発熱電力を自動的に算出し、算出した発熱電力に基づいて前記温度補償に対応する機能モジュールを呼び出して、チップ完成品の設計に追加し、対応する原理図及びレイアウトを作成するステップS13と、を含む。
【0010】
任意選択に、前記電磁シールドを実現するための環境安定化システムを自動的に追加する場合、前記方法は、
チップを設計するEDAソフトウェア開発プラットフォームにおいて、金属層追加とアースシールドを含む電磁シールドに対応する少なくとも1つの機能モジュールを予め配置しておくステップS21と、
チップ設計開発プラットフォームにおいて電磁シールド追加を選択し、電磁界強度に関する少なくとも1つの環境パラメータを入力するステップS22と、
EDAソフトウェア開発プラットフォームによって、前記電磁界強度に関する環境パラメータ及びチップ完成品の設計のフレームサイズ及び座標に基づいて、被覆金属層の幅面及び厚さのサイズを自動的に算出し、算出した被覆金属層の幅面及び厚さのサイズに基づいて、前記電磁シールドに対応する機能モジュールを呼び出し、チップ完成品の設計に追加し、対応する原理図及びレイアウトを作成するステップS23と、を含む。
【0011】
任意選択に、温度に関する前記環境要件パラメータは、少なくとも、温度安定点下限、チップ動作環境温度、パッケージ放熱速度及び推定チップ発熱電力を含む。
【0012】
任意選択に、前記温度補償に対応する機能モジュールは、加熱制御回路と、シリコン基板及び抵抗に基づく加熱回路と、を含み、前記加熱回路中の抵抗の数、分布及び配線サイズが、EDAソフトウェア開発プラットフォームによって、抵抗の発熱電力、前記チップ完成品の設計のフレームサイズ及び座標に基づいて算出される。
【0013】
任意選択に、前記加熱制御回路は、チップ完成品の設計電源部分と加熱電流制限モジュールとの間に接続され、電源部分のオンオフを制御するための第2温度検出回路と、加熱電流制限モジュールを駆動・制御するための第1温度検出回路と、前記第1及び第2温度検出回路に通信可能に接続され、チップの温度を測定するための正の温度係数抵抗器及び負の温度係数抵抗器と、を含み、前記第1及び第2温度検出回路による制御信号出力の切り替え閾値が、EDAソフトウェア開発プラットフォームによって調整可能に設定される。
【0014】
任意選択に、前記ステップS12では、少なくとも1つの温度に関する環境要件パラメータを入力する前記ステップは、前記チップ完成品の設計のフレームを除去することを含み、
前記ステップS13では、前記温度補償に対応する機能モジュールを呼び出して、チップ完成品の設計に追加し、対応する原理図及びレイアウトを作成する前記ステップは、EDAソフトウェア開発プラットフォームによって、周辺加熱回路と除去されたフレーム内の回路との間の安全圧差を算出することを含む。
【0015】
任意選択に、前記ステップS12で入力される温度に関する前記環境要件パラメータは、チップパッケージにより制限される最大サイズを含み、ステップS13では、EDAソフトウェア開発プラットフォームによって、前記チップパッケージにより制限される最大サイズを範囲制約にして、前記温度補償に対応する機能モジュールを追加して原理図及びレイアウトを作成する。
【0016】
任意選択に、前記ステップS23では、電磁シールドが金属層追加である場合、前記電磁シールドに対応する機能モジュールを呼び出し、チップ完成品の設計に追加する前記ステップは、
前記電磁界強度に関する環境パラメータに基づき、必要な金属層の厚さサイズを算出し、前記チップ完成品の設計のフレームサイズ及び座標と合わせて、チップ表面全体を覆う金属層のサイズ及び座標を得るステップであって、前記金属層は多角形であるステップと、
得られた前記チップ表面全体を覆う金属層のサイズ及び座標に基づき、最上側の金属層が閉じられるまで、前記チップ完成品の設計の周辺の最下層に接地アイランドを追加して成長させ始め、前記チップ完成品の設計を前記金属層で完全に覆うステップであって、前記最上側の金属層においてチップ接点に対応する位置にビアが開けられて、多角形の前記金属層の各々の面が接地されるステップと、を含む。
【0017】
任意選択に、得られた前記チップ表面全体を覆う金属層のサイズ及び座標に基づき、最上側の金属層が閉じられるまで、前記チップ完成品の設計の周辺の最下層に接地アイランドを追加して成長させ始め、前記チップ完成品の設計を前記金属層で完全に覆う前記ステップは、
前記最上側の金属層上の、前記チップの接点層に対するウィンドウズについて所定幅だけ拡張する論理演算を行い、位置及び大きさが接点の位置及び大きさに1対1で対応する前記ビアを備えている、前記チップ全体を覆う前記金属層を得るステップを含む。
【発明の効果】
【0018】
本願のEDAソフト二次開発力を用いたチップ設計方法によれば、以下の顕著な進歩性がある。本方法では、環境安定化システム追加に関する最適化作業をチップの主な機能の設計から分離し、主な機能の設計及び検証を完了しており、原チップ設計のレイアウトをあまり変更しない上に、EDAソフト二次開発力を利用して単独して最適化し、環境安定化システムを自動的に追加することによって、チップ設計の難度及びかかる時間を最大限に低減させ、元の設計において想定したものよりも過酷な温度や電磁環境でも正常に機能する能力をチップに持たせる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本願の一実施例に係るEDAソフト二次開発力を用いたチップ設計方法の概略的なフローチャートである。
図2】本願の一実施例に係るEDAソフト二次開発力を用いたチップ設計方法によって温度補償を追加したチップの効果の概略図である。
図3図2における加熱制御回路のトポロジー概略図である。
図4】本願の一実施例に係るEDAソフト二次開発力を用いたチップ設計方法によって電磁シールドを追加したチップの立体効果の概略図である。
図5】本願の一実施例に係るEDAソフト二次開発力を用いたチップ設計方法によって、電磁シールド追加設計において原チップの接点層に対応して最上側の金属層にウィンドウズを開ける成形の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本願の技術的解決手段をより理解しやすく、把握しやすくするために、実施例の図面を参照して、本願の具体的な実施形態をさらに詳細に説明し、それによって、本願の保護範囲をより明確に定義する。
【0021】
本願の設計者は、従来技術ではチップが環境に対応して安定的に運転する能力を向上させる設計や具体的な手段などにおいて多くの欠点が存在し、チップの設計経験に依存することに対して、原チップ設計を維持しつつ、EDAソフトウェアプラットフォームの二次開発力を利用して、合理的かつ最適な環境安定化システムを原チップに自動的に追加し、完全な原理図及びレイアウトを作成する環境安定化システムを自動的に追加するチップ設計方法を初めて提案している。これによって設計されたチップは、各種の複雑で変化の多い応用環境において予期せぬ故障やクラッシュを防ぐことができる。
【0022】
本願の上述したチップ設計方法は、図1に示すように、その解決手段の概略から、チップ設計のソフトウェアプラットフォームに基づいて実現され、同様に、主な機能の設計及び検証を完了したチップ(以下、原チップと略す)を設計対象とする。その革新的な特徴は、EDA(電子設計の自動化、Electronic Design Automation)ソフトウェア開発プラットフォームで対応するチップの運転環境要件パラメータをカスタム追加し、システムリソースを呼び出して、環境安定化システムの原理図を自動的に追加し、原チップの原理図と組み合わせてレイアウトを作成することである。チップ製品は機能設計が異なるため、さまざまな種類が存在し、実体組立後に使用状態で製品が置かれる環境にも多様性があり、温度、湿度、電離放射線、機械振動、化学腐食、静電場などを含む。ある環境要素がチップ自体の材料負荷を超えたり、その一部の部品のパラメータ性能の微小な変化を引き起こしたりする場合、機能不全、さらに故障や自己破壊という壊滅的な結果が発生する。そのため、チップ設計における環境適合性が重要なことである。しかし、上述したすべての環境要素の影響はすべてチップ設計過程で的確に克服することができるわけではなく、そのため、以上のいわゆる運転環境要件パラメータは、チップの運転温度環境、自己発熱状態、電磁界強度を含むが、これらに限定されない。チップの広い温度範囲内での運転安定性を的確に向上させるために、原チップ自身の周辺温度の可変性を向上させる必要があり、同様に、金属層を追加することにより、周辺電磁界の干渉を克服する。
【0023】
本願に係るEDAソフト二次開発力を用いたチップ設計方法の実施をより明確に理解するために、好適な実施例について以下で詳細に説明する。
【0024】
まず、温度補償を主とした環境保護手段(即ち、環境安定化システム)を実現することは、ステップS11~ステップS13を含む。
ステップS11、チップを設計するEDAソフトウェア開発プラットフォームに少なくとも1つの温度補償に対応する機能モジュールを予め配置しておく。
ステップS12、チップ設計開発プラットフォームにおいて温度補償追加を選択し、温度に関する少なくとも1つの環境要件パラメータを入力する。
ステップS13、EDAソフトウェア開発プラットフォームによって温度に関する前記環境要件パラメータに基づいて温度補償に必要な発熱電力を自動的に算出し、算出した発熱電力に基づいて上述した温度補償に対応する機能モジュールを呼び出し、チップ完成品の設計に追加し、対応する原理図及びレイアウトを作成する。
【0025】
従来の温度補償回路では、コントローラを除いて温度調整を実現する主な方法は、抵抗を配置して電流を流し、発熱させることである。しかし、一般的なPCB基板や完成品の設備と異なり、ICチップの分野で温度補償回路を追加するには、チップ基材の材料選択などを含む、より精密な回路設計案が必要であり、より最適な目的は、人工的に目標を設定したオンライン自動化設計を実現する必要がある。
【0026】
高純度シリコンは熱伝導率が140W/mKであり、それ自体が良好な熱伝導性材料である。この基材の特性を利用してチップをシリコン基材の製造プロセスに追加した後、チップに通電した後、低温でチップが自己加熱することができ、それによって、もともとマイナス45℃以上の環境温度で動作するように設計されていた一部のチップをさらに低い環境温度で動作させることを可能にする。このため、図2に示すように、低い環境温度で動作する温度補償回路を設計する必要がある。もちろん、この回路の原理ブロック図はこれに限定されるものではなく、様々なチッププロセスでのその実現には多様性がある。一方、この温度補償回路は、開発プラットフォームに予め追加された機能モジュールから得られ、加熱制御回路21(具体的な内部回路構成は図3に示す)と、シリコン基板及び抵抗に基づく加熱回路22(又は加熱回路となる)とを含む。
【0027】
EDAソフトウェア開発プラットフォームを利用してチップの温度補償設計を実現するには、開発者が温度に関する環境要件パラメータを入力する必要があるが、チップ設計の主体である開発プラットフォームは、チップが安定的に運転する温度環境や、チップが運転しているときのチップ自体の異なる負荷下での発熱状態を明確にする必要がある。したがって、上述した温度に関する環境要件パラメータは、少なくとも、温度安定点下限(例えば、マイナス45℃)、チップ動作環境温度(マイナス60℃~30℃)、パッケージ放熱速度、及びチップの推定発熱電力を含む。これを基に、開発プラットフォームは、原チップの仕様に基づいて必要な発熱電力を自動的に算出し、算出結果を基に加熱制御回路と加熱回路の2つの部分の位置とレイアウト構成を設計することができる。
【0028】
まず、図3に示される加熱制御回路は、原チップの電源部分と加熱電流制限モジュールとの間に接続され、電源部分のオンオフを制御するための第2温度検出回路と、加熱電流制限モジュールを駆動・制御するための第1温度検出回路と、第1及び第2温度検出回路に通信可能に接続され、チップの温度を測定するための正の温度係数抵抗及び負の温度係数抵抗と、を含み、前記第1温度検出回路及び第2温度検出回路による制御信号出力の切り替え閾値が、EDAソフトウェア開発プラットフォームによって調整可能に設定される。この加熱制御回路は、原チップのVIN接点が所在する位置の近傍であって、原チップのフレームに最も近い位置に追加された一体ユニットとしての回路であり、一方、回路の詳細については、第2温度検出回路は原チップの電源スイッチに接続され、信号制御によりそのオンオフ状態を切り替える。以前に設定されたマイナス45℃を温度安定点下限とする実施例では、この第2温度検出回路の信号制御は、電源スイッチがオフ状態にある環境温度がマイナス45℃よりも高い場合に電源スイッチをオンにして、原チップを正常に運転させることと、電源スイッチがオン状態にある環境温度がマイナス50℃まで低い場合に電源スイッチをオフにすることとを含み、これにより、原チップの不合理な温度条件での自己破壊動作を防止する。
【0029】
また、この加熱制御回路は、加熱回路の持続的な加熱状態に伴って昇温が一定の上限に達した後の電流制限に向けた信号制御を必要とし、すなわち加熱回路の発熱量は制御性を必要とし、温度の過度な上昇がチップの安定運転状態に対する他の破壊を引き起こすことを回避する。例えば、加熱回路が運転し続けて発熱している場合、環境温度がマイナス23℃よりも高い場合、電流制限を行うように制御し、加熱を一時停止したり、加熱の幅を下げたりし、一方、この加熱回路がオフになり、環境温度がマイナス40℃以下になると、電流制限を停止するように制御し、温度補償を実現することができる。
【0030】
さらに、図2に示すように、加熱回路22は、レイアウトにおいて単一の抵抗で実現できるものではなく、原チップ1のレイアウトの周囲の外側に均等に分布する複数の抵抗とワイヤとの直列接続により構成されるものである。これらの直列抵抗では、各抵抗の抵抗値が同じであり、直列接続により、比較的安定した発熱電力がもたらされるので、このようにして原チップはこれらの抵抗によって均一に加熱される。ここで、加熱回路中の抵抗の数、分布、配線サイズは、抵抗の発熱電力、チップ完成品の設計のフレームサイズ及び座標に基づいてEDAソフトウェア開発プラットフォームによって算出される。
【0031】
なお、特定のプロセスにおいて、この温度補償回路の原理図の部分は同一であるが、各チップの機能設計及びプロセスの差異性のため、すべてのチップのレイアウト形状が完全に一致するわけではない。そのため、本チップ設計方法は原チップ上に拡張機能を追加し、原チップのレイアウトを手動で修正する必要がない。
【0032】
この加熱回路レイアウト設計の具体的な過程は、コード化可能な文字記述を参照して、原チップのフレームサイズ及び座標を取得するステップ1と、原チップのVIN接点の位置座標を取得するステップ2と、加熱制御回路をVIN接点の傍の特定の位置に追加するステップ3と、VIN接点から金属線を原チップの電源スイッチの出力点に引き出してステップ4と、原チップのフレームが一定の幅を増やした後の周長を算出するステップ5と、発熱電力需要と既知の動作電圧を参照して、総加熱抵抗の縦横を算出するステップ6と、追加した加熱点の個数を算出し、周長を200μmで割って第1商を得て、周長を500μmで割って第2商を得て、第1商と第2商の間の整数を取って加熱点の個数とするステップ7であって、第1商と第2商の整数部が一致する場合には、第1商よりも少し大きい値を取り、加熱点数が加熱抵抗の長さをプロセス精度で割った商の約数となるようにする。満足できない場合、そのうちの1つの抵抗を他の抵抗より少し大きいか小さくし、誤差を10%以下にするステップ7と、加熱抵抗の位置を加熱点数で均等に分布させ、すなわち周長を加熱点数で割るように分布させ、外側に新しいパッケージフレームを追加するステップ8と、を含む。以上の算出方法は唯一のものではなく、原チップ形状及びそのフレーム寸法の多様性、並びに加熱抵抗自体の電力性能及び定格発熱電力の比較関係に基づいて、この加熱抵抗の数及び配置の算出方法は編集・調整可能である。
【0033】
上述したステップ6における加熱抵抗の縦横の算出原理は以下のとおりである。集積回路のレイアウトでは、通常、抵抗は厚さが定められた薄膜であり、通電方向は薄膜の一方の端部から他方の端部に至ることである。このとき、薄膜の厚さは変えられないので、この薄膜からなる正方形に対応する抵抗値が決定され、薄膜の幅によってその抵抗に流すことができる電流の上限が決定され、発熱電力の需要から必要な抵抗値が推定され、薄膜の長さ、すなわち必要な加熱抵抗の長さが決定される。
【0034】
また、上述したステップS12において、入力された温度に関する少なくとも1つの前記環境要件パラメータは以下を含む。チップ完成品の設計のフレームを除去し、上述したステップS13において、機能モジュールを追加して回路図及びレイアウトを作成する際に、周辺加熱回路と除去されたフレーム内の回路との間の安全圧差をEDAソフトウェア開発プラットフォームによって算出し、周辺加熱回路が運転して昇温したときに原チップの内部回路に破壊的ダメージを与えることが回避される。上述したステップS12で入力された温度に関する前記環境要件パラメータは、チップパッケージの最大サイズを含み、ステップS13では、EDAソフトウェア開発プラットフォームにより、前記チップパッケージの最大サイズを範囲の制約として、上述した温度補償に対応する機能モジュールを追加し、原理図及びレイアウトを作成する。
【0035】
任意選択に、上述したステップS12において、加熱電力を選択するためのオプションも提供し、異なる幅の加熱回路をセットする必要があり、選択電力が大きいほど、切り替える対象として選択される加熱回路が広くなり、これによって、チップ周辺の発熱量が多くなり、放熱量が大きくても安定して動作する能力が得られる。
【0036】
さらに、電磁シールドを主とした環境保護手段(即ち、環境安定化システム)を実現することは、ステップS21~ステップS23を含む。
ステップS21、チップを設計するEDAソフトウェア開発プラットフォームにおいて、金属層追加とアースシールドを含む電磁シールドに対応する少なくとも1つの機能モジュールを予め配置しておく。
ステップS22、チップ設計開発プラットフォームにおいて電磁シールド追加を選択し、電磁界強度に関する少なくとも1つの環境パラメータを入力する。
ステップS23、EDAソフトウェア開発プラットフォームによって電磁界強度に関する前記環境パラメータ及びチップ完成品の設計のフレームサイズ及び座標に基づいて、被覆金属層の幅面及び厚さのサイズを自動的に算出し、算出した被覆金属層の幅面及び厚さのサイズに基づいて、前記電磁シールドに対応する機能モジュールを呼び出し、チップ完成品の設計に追加し、対応する原理図及びレイアウトを作成する。
【0037】
金属カバーの追加を利用して回路の電磁干渉抵抗を強化することは、回路設計分野の通常の方法である。しかし、EDAソフトウェア開発プラットフォームを利用してチップの電磁シールド能力の自動設計最適化を実現するには、開発者は電磁界強度に関する環境パラメータを入力する必要があり、すなわち、チップ設計の主体である開発プラットフォームはチップの安定運転の場合の電磁干渉抵抗能力及び現在の環境下の電磁界強度を明確にして、合理的に必要な金属層カバーの規格寸法を算出し、そして高精度の位置及び規格寸法のレイアウト設計を行う必要がある。
【0038】
なお、この環境保護手段において、金属層は主に原チップの最上側に追加され、一体成形された多角形のカバーとして原チップの表面を覆っているものである。実際の応用製品のメインコントロールボードにおけるチップの設計位置と仕様は非常にコンパクトであり、原チップがその周辺に電磁干渉抵抗に関する障壁を構築していることから離れることができないからである。
【0039】
図4及び図5に示すように、上述したステップS23では、機能モジュールを呼び出して原チップに金属層を追加する順番は以下のとおりである。まず、環境パラメータに基づき、必要な金属層の厚さサイズを算出し、原チップからのフレームサイズ及び座標を参照して、チップ表面全体を覆う多角形金属のサイズ及び座標を得て、次に、最上側の金属層32を完成するまで、チップ完成品の設計の周辺の最下層に接地アイランド31を追加して成長させ始め、上述した多角形の金属の各々の面が接地され、これにより、チップ設計が完了する。上述した最上側の金属層32上の、原チップの接点層に対応するウィンドウズについて所定幅だけ拡張する論理演算を行い、位置及び大きさが接点の位置及び大きさに1対1で対応するビア33を備えている原チップ全体を覆う金属層を得る。
【0040】
以上のように、図示した実施例の詳細な説明から分かるように、本願のEDAソフト二次開発力を用いたチップ設計方法では、突出した実質的な特徴に加えて、以下の顕著な進歩性を有する。本方法では、環境安定化システムを追加する点の最適化作業をチップの主な機能の設計から分離し、主な機能の設計及び検証を完了しており、元のチップ設計レイアウトをあまり変更しない上に、EDAソフト二次開発力を利用して単独して最適化し、環境安定化システムを自動的に追加することによって、チップ設計の難度及びかかる時間を最大限に低減させ、元の設計において想定したものよりも過酷な温度や電磁環境でも正常に機能する能力をチップに持たせる。チップの性能を向上させるための設計の効率が大幅に向上する。
【0041】
上述した実施例に加えて、本願は他の実施形態を有してもよく、等同置換又は等価変化によって形成される技術的解決手段はすべて本願が保護しようとする範囲内に含まれるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5