(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】多孔質ケイ酸カルシウム水和物、その調製方法、吸着剤及びその応用
(51)【国際特許分類】
C01B 33/24 20060101AFI20240730BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20240730BHJP
B01D 53/02 20060101ALI20240730BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20240730BHJP
【FI】
C01B33/24 101
B01J20/26 A
B01J20/26 E
B01D53/02
C02F1/28 B
(21)【出願番号】P 2023549129
(86)(22)【出願日】2022-05-13
(86)【国際出願番号】 CN2022092655
(87)【国際公開番号】W WO2023165022
(87)【国際公開日】2023-09-07
【審査請求日】2023-08-14
(31)【優先権主張番号】202210194894.7
(32)【優先日】2022-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523309691
【氏名又は名称】深▲たん▼科技(深▲せん▼)有限公司
【氏名又は名称原語表記】DECARBON TECHNOLOGY (SHENZHEN) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 702-G012, Haiyunzhongxin Kouanlou, NO. 59 Linhai Blvd, Qianhai Shenzhen and Hong Kong Cooperation District, Shenzhen, Guangdong 518000 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】顔 楓
(72)【発明者】
【氏名】曲 凡
(72)【発明者】
【氏名】張 作泰
(72)【発明者】
【氏名】李 春艶
(72)【発明者】
【氏名】沈 雪華
(72)【発明者】
【氏名】陳 黒錦
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-097927(JP,A)
【文献】特開2018-202275(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105502446(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113398875(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110813264(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101837982(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106395838(CN,A)
【文献】特開2010-131556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20 -39/54
B01J 20/00 -20/28
20/30 -20/34
B01D 53/02 -53/12
C02F 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質ケイ酸カルシウム水和物の調製方法であって、前記調製方法は、
浸出工程であって、アルカリ剤でフライアッシュを浸出し、ケイ酸塩浸出液を得る工程と、
反応工程であって、前記ケイ酸塩浸出液を水酸化カルシウム懸濁液に等速で滴下し、撹拌して加熱反応させた後、ケイ酸カルシウム水和物ゲルを得る工程と、
細孔拡張工程であって、前記ケイ酸カルシウム水和物ゲルと有機アルコール溶媒を混合した後に共沸蒸留し、次に、分離し、乾燥し、焼成し、前記多孔質ケイ酸カルシウム水和物を得る工程とを含むことを特徴とする、調製方法。
【請求項2】
前記浸出工程では、前記アルカリ剤は、水酸化ナトリウム水溶液であり、前記水酸化ナトリウム水溶液と前記フライアッシュを混合して加熱した後、水熱反応させ、濾過して分離し、前記ケイ酸塩浸出液及び脱ケイ酸フライアッシュを得て、前記ケイ酸塩浸出液は、ケイ酸ナトリウム浸出液であり、前記脱ケイ酸フライアッシュは、酸化アルミニウムを回収するために使用され、
前記浸出工程では、前記水酸化ナトリウム水溶液における水酸化ナトリウムと前記フライアッシュとの質量比が0.4:1~0.8:1、前記水酸化ナトリウム水溶液の濃度が10重量%~30重量%、水熱反応の条件が105℃~115℃、反応時間が0.4時間~0.6時間であることを特徴とする、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
前記アルカリ剤は、水酸化ナトリウム水溶液であり、前記反応工程では、撹拌して加熱反応させた後に濾過し、前記ケイ酸カルシウム水和物ゲル及び水酸化ナトリウム副生成物を得て、前記水酸化ナトリウム副生成物は、前記アルカリ剤として反復使用されることを特徴とする、請求項1に記載の調製方法。
【請求項4】
前記反応工程では、前記ケイ酸塩浸出液におけるケイ酸塩と前記水酸化カルシウム懸濁液における水酸化カルシウムとのモル比は、0.9:1~1.1:1であり、前記ケイ酸塩浸出液の濃度は、0.067mol/L~1.067mol/Lであり、
15mL/時間~35mL/時間の滴下速度で前記ケイ酸塩浸出液を前記水酸化カルシウム懸濁液に等速で滴下し、撹拌速度が450rpm~550、加熱反応の温度が25℃~80℃、加熱反応の時間が2時間~12時間であることを特徴とする、請求項1に記載の調製方法。
【請求項5】
前記細孔拡張工程では、前記有機アルコール溶媒は、エタノール、プロパノール又はブタノールのうちの少なくとも1つであり、前記ケイ酸カルシウム水和物ゲルの質量と前記有機アルコール溶媒の体積との比は、0.9g:15mL~1.1g:15mLであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項6】
前記細孔拡張工程では、前記共沸蒸留は、まず、前記ケイ酸カルシウム水和物ゲル及び有機アルコール溶媒を第1温度まで加熱し、15分間~25分間定温蒸留し、次に、第2温度まで加熱し、35分間~45分間定温蒸留することであり、ここで、前記第1温度は、前記有機アルコール溶媒と水で形成された系の沸点温度であり、前記第2温度は、前記有機アルコール溶媒の沸点温度であり、
前記乾燥の条件は、80℃~85℃で10時間~14時間乾燥させることであり、前記焼成の条件は、400℃~600℃で4時間~4.5時間焼成することであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、産業固形廃棄物の資源利用の技術分野に関し、特に、多孔質ケイ酸カルシウム水和物、その調製方法、吸着剤及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
ケイ酸カルシウム水和物は、幅広い用途を持つ多孔質材料の一種である。現在、ケイ酸カルシウム水和物を調製する場合、通常、ケイ酸カルシウム水和物の細孔構造を調整するために、高価なテンプレート剤を加える必要があり、その結果、調製コストが高くなる。なお、テンプレート剤の調整によって調製されたケイ酸カルシウム水和物の細孔径及び体積には一定のネックがあり、それらを大幅に大きくすることは困難であり、その結果、ケイ酸カルシウム水和物の用途には多くの制約があり、産業応用も困難である。
【発明の概要】
【0003】
本願は、従来のケイ酸カルシウム水和物の調製方法が高価であり、得られたケイ酸カルシウム水和物の細孔径及び体積を大幅に大きくすることが困難であり、産業応用には制約があるという問題を解決するために、多孔質ケイ酸カルシウム水和物、その調製方法及びその応用を提供する。
【0004】
第1態様では、本願は、多孔質ケイ酸カルシウム水和物の調製方法を提供し、前記調製方法は、
浸出工程であって、アルカリ剤でフライアッシュを浸出し、ケイ酸塩浸出液を得る工程と、
反応工程であって、前記ケイ酸塩浸出液を水酸化カルシウム懸濁液に等速で滴下し、撹拌して加熱反応させた後、ケイ酸カルシウム水和物ゲルを得る工程と、
細孔拡張工程であって、前記ケイ酸カルシウム水和物ゲルと有機アルコール溶媒を混合した後に共沸蒸留し、次に、分離し、乾燥し、焼成し、前記多孔質ケイ酸カルシウム水和物を得る工程とを含む。
【0005】
更に、前記浸出工程では、前記アルカリ剤は、水酸化ナトリウム水溶液であり、前記水酸化ナトリウム水溶液と前記フライアッシュを混合して加熱した後、水熱反応させ、濾過して分離し、前記ケイ酸塩浸出液及び脱ケイ酸フライアッシュを得て、前記ケイ酸塩浸出液は、ケイ酸ナトリウム浸出液であり、前記脱ケイ酸フライアッシュは、酸化アルミニウムを回収するために使用される。
【0006】
更に、前記浸出工程では、前記アルカリ剤は、水酸化ナトリウム水溶液であり、前記水酸化ナトリウム水溶液における水酸化ナトリウムと前記フライアッシュとの質量比が0.4:1~0.8:1、前記水酸化ナトリウム水溶液の濃度が10重量%~30重量%、水熱反応の条件が105℃~115℃、反応時間が0.4時間~0.6時間である。
【0007】
更に、前記アルカリ剤は、水酸化ナトリウム水溶液であり、前記反応工程では、撹拌して加熱反応させた後に濾過し、前記ケイ酸カルシウム水和物ゲル及び水酸化ナトリウム副生成物を得て、前記水酸化ナトリウム副生成物は、前記アルカリ剤として反復使用される。
【0008】
更に、前記反応工程では、前記ケイ酸塩浸出液におけるケイ酸塩と前記水酸化カルシウム懸濁液における水酸化カルシウムとのモル比は、0.9:1~1.1:1であり、前記ケイ酸塩浸出液の濃度は、0.067mol/L~1.067mol/Lであり、
15mL/時間~35mL/時間の滴下速度で前記ケイ酸塩浸出液を前記水酸化カルシウム懸濁液に等速で滴下し、撹拌速度が450 rpm~550、加熱反応の温度が25℃~80℃、加熱反応の期間が2時間~12時間である。
【0009】
更に、前記細孔拡張工程では、前記有機アルコール溶媒は、エタノール、プロパノール又はブタノールのうちの少なくとも1つであり、前記ケイ酸カルシウム水和物ゲルの質量と前記有機アルコール溶媒の体積との比は、0.9 g:15mL~1.1g:15mLである。
【0010】
更に、前記細孔拡張工程では、前記共沸蒸留は、まず、前記ケイ酸カルシウム水和物ゲル及び有機アルコール溶媒を第1温度まで加熱し、15分間~25分間定温蒸留し、次に、第2温度まで加熱し、35分間~45分間定温蒸留することであり、ここで、前記第1温度は、前記有機アルコール溶媒と水で形成された系の沸点温度であり、前記第2温度は、前記有機アルコール溶媒の沸点温度であり、
前記乾燥の条件は、80℃~85℃で10時間~14時間乾燥させることであり、前記焼成の条件は、400℃~600℃で4時間~4.5時間焼成することである。
【0011】
第2態様では、本願は、多孔質ケイ酸カルシウム水和物を提供し、前記多孔質ケイ酸カルシウム水和物は、第1態様に記載の調製方法によって得られる。
【0012】
更に、前記多孔質ケイ酸カルシウム水和物は、比表面積≧400m2/g、細孔体積≧2.7 cm3/g、細孔径が20nm~40nmである。
【0013】
更に、本願は、吸着剤を提供し、前記吸着剤は、担体と、前記担体に担持された有機アミン活性成分とを含み、前記担体は、第1態様に記載の調製方法によって得られた多孔質ケイ酸カルシウム水和物である。
【0014】
第4態様では、本願の実施例は、第3態様に記載の吸着剤の応用を提供し、前記吸着剤は、二酸化炭素をキャプチャ及び/又は廃水中の重金属を吸着するために使用される。
【0015】
従来技術に比べて、本願は、具体的には、以下の有益な効果を有する。
【0016】
本願の実施例によって提供された調製方法では、テンプレート剤を使用せずに細孔体積がより大きく細孔構造が良好な多孔質ケイ酸カルシウム水和物を得るため、該多孔質ケイ酸カルシウム水和物は、吸着剤の担体として使用することができ、それを吸着剤として使用する場合に優れた吸着特性を有する。更に、本願の実施例における調製方法は、コストが低く、操作しやすく、実現しやすいという利点も有し、大規模な産業応用に適する。
【0017】
具体的には、本願の実施例は、フライアッシュから抽出したケイ酸塩浸出液を原料として使用し、溶液沈殿法によってケイ酸カルシウム水和物を合成し、原料の供給源が広く、コストが低いという利点があり、フライアッシュ資源の利用コストを削減でき、また、本願の実施例による調製プロセスは、操作しやすくなり、大規模な産業応用の可能性を有する。更に、多孔質ケイ酸カルシウム水和物の調製プロセスでは、テンプレート剤を使用しないため、多孔質ケイ酸カルシウム水和物の調製コストを更に削減することができる。それらに基づいて、本願の実施例では、上記の調製方法によって得られた多孔質ケイ酸カルシウム水和物は、より良好な構造的特性を有し、その比表面積≧400m2/g、細孔体積≧2.7cm3/gであり、細孔径が主に20nm~40nmの範囲であり、多孔質ケイ酸カルシウム水和物の良好な構造的特性により、吸着剤(固体アミン吸着剤など)の調製に適した担体となり、アミン修飾によって吸着剤を調製してCO2及び/又は重金属を吸着するという環境処理分野での幅広い応用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本願の実施例の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、実施例の説明に必要な図面を簡単に紹介し、明らかに、以下の説明における図面は本願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労働なしで、これらの図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【
図1】実施例1による多孔質ケイ酸カルシウム水和物の調製プロセスの流れ図である。
【
図2】適用例による吸着剤の調製プロセスの流れ図である。
【
図3】実施例3による多孔質ケイ酸カルシウム水和物のX線スペクトルである。
【
図4】実施例3による多孔質ケイ酸カルシウム水和物のSEM画像である。
【
図6】適用例及び比較適用例による吸着剤が二酸化炭素への吸着量の結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本願の実施例における図面を参照し、本願の実施例における技術的解決手段を明確、完全に説明し、明らかに、説明された実施例は、本願の全てではないが一部の実施例に過ぎない。本願における実施例に基づき、創造的な作業なしに当業者によって得られる他の全ての実施例は、本願の保護範囲に属する。
【0020】
本願では、用語「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」、「頂」、「底」、「内」、「外」、「中」、「垂直」、「水平」、「横方向」、「縦方向」などで示される方位又は位置関係は、図面に示される方位又は位置関係に基づくものである。これらの用語は主に、本願及びその実施例をよりよく説明するために使用され、示された装置、素子若しくは構成要素が特定の方位を持たなければならない、又は特定の方位で構築及び操作されなければならないという事実を限定することを意図するものではない。
【0021】
また、上記の用語の一部には、方位又は位置関係以外の意味を表す場合もあり、例えば、用語「上」は、ある依存関係又は接続関係を表す場合にも使用され得る。当業者は、本願におけるこれらの用語の特定の意味を特定の状況で理解することができる。
【0022】
なお、「取り付ける」、「配置する」、「設ける」、「接続する」、「結合する」という用語は、広い意味で理解する必要がある。それらは、例えば、固定接続、取り外し可能な接続、又は一体化構造であり得、機械的接続又は電気的接続であり得、直接接続又は中間媒体を介した間接的接続であり得、2つの装置、素子、又はコンポーネント間の内部の連通であり得る。当業者は、本考案における上記用語の特定の意味を特定の状況に応じて理解することができる。
【0023】
なお、「第1」、「第2」などの用語は、主に異なる装置、素子、又はコンポーネントを区別するために使用され(特定の種類や構造は同じでも異なる場合もある)、示された装置、素子、又はコンポーネントの相対的な重要性及び数を示したり暗示したりすることを意図したものではない。特に明記されない限り、「複数」は、2つ以上を意味する。
【0024】
以下、特定の実施例及び図面を参照しながら、本願の技術的解決手段を更に説明する。
【0025】
ケイ酸カルシウム水和物は、様々な分野に適用できる多孔質材料の一種であり、関連技術では、テンプレート剤を使用することでケイ酸カルシウム水和物の細孔構造を調整し、ケイ酸カルシウム水和物の性能を最適化できるため、主にテンプレート剤によって合成される。しかし、テンプレート剤の価格が高いため、調製されたケイ酸カルシウム水和物のコストが高くなり、大規模な産業応用には役立たない。本発明者は、研究の過程で、テンプレート剤がケイ酸カルシウム水和物の細孔構造を調整することができるが、その調整範囲にはネックがあり、細孔体積が2.0cm3/gを超えるような大きな細孔体積を得ることが困難であり、その結果、調製されたケイ酸カルシウム水和物の適用範囲が制限されることが分かる。化学沈殿法を使用してケイ酸カルシウム水和物を合成する場合、合成されたケイ酸カルシウム水和物は凝集しやすく、また、緩い多孔質ケイ酸カルシウム水和物構造を得ることは困難であり。従って、テンプレート剤を使用せずに緩い多孔質ケイ酸カルシウム水和物を得ることは困難であるが、テンプレート剤を使用してもケイ酸カルシウム水和物の細孔構造を更に最適化することは困難であり、ケイ酸カルシウム水和物の性能が制限される。
【0026】
上記の分析に基づいて、本願の実施例によって提供された多孔質ケイ酸カルシウム水和物、その調製方法及びその応用は、テンプレート剤を使用せず、より低いコストで細孔構造がより良好なケイ酸カルシウム水和物を調製することができ、また、該ケイ酸カルシウム水和物を吸着剤として使用する場合により優れた吸着性能を有する。
【0027】
第1態様では、本願の実施例は、多孔質ケイ酸カルシウム水和物の調製方法を提供し、該調製方法は、
浸出工程であって、アルカリ剤でフライアッシュを浸出し、ケイ酸塩浸出液を得る工程と、
反応工程であって、ケイ酸塩浸出液を水酸化カルシウム懸濁液に等速で滴下し、撹拌して加熱反応させた後、ケイ酸カルシウム水和物ゲルを得る工程と、
細孔拡張工程であって、ケイ酸カルシウム水和物ゲルと有機アルコール溶媒を混合した後に共沸蒸留し、次に、分離し、乾燥し、焼成し、多孔質ケイ酸カルシウム水和物を得る工程と、を含む。
【0028】
本願の実施例によって提供された調製方法では、テンプレート剤を使用せずに細孔体積がより大きく細孔構造が良好な多孔質ケイ酸カルシウム水和物を得るため、該多孔質ケイ酸カルシウム水和物を吸着剤として使用した場合に優れた吸着特性を有する。更に、本願の実施例における調製方法は、コストが低く、操作しやすく、実現しやすいという利点も有し、大規模な産業応用に適する。
【0029】
第1、本願の実施例による調製方法は、テンプレート剤を使用せず、まず、ケイ酸塩浸出液を水酸化カルシウム懸濁液に等速で加え、両者が適度な速度で反応してケイ酸カルシウム水和物ゲルを生成し、ケイ酸カルシウム水和物の粒子がより規則的であることを確保し、次に、共沸蒸留の手段により、ケイ酸カルシウム水和物ゲルの脱水過程における細孔構造の崩壊を回避し、そのため、より大きな細孔体積と細孔径を維持し、より良好な構造を有するケイ酸カルシウム水和物を得て、続いて、それに基づいて、共沸蒸留、分離、乾燥後のケイ酸カルシウム水和物を更に焼成する。本発明者は、多数の実験結果から、上記の方法によって調製された多孔質ケイ酸カルシウム水和物が、テンプレート剤で調製されたケイ酸カルシウム水和物よりも優れた細孔構造を有するだけでなく、該多孔質ケイ酸カルシウム水和物を吸着剤として使用する場合に吸着性能を更に向上させることができることが分かる。
【0030】
第2、本願の実施例によって調製された多孔質ケイ酸カルシウム水和物のケイ素源はフライアッシュであり、アルカリ剤でフライアッシュを浸出することによってケイ素源としてケイ酸ナトリウムが得られ、供給源が豊富で原料コストが低いだけでなく、フライアッシュなどの固形廃棄物が高価値で回収・再利用できるため、フライアッシュの資源再利用は産業化や応用が期待される。
【0031】
なお、関連技術では、化学沈殿法によってケイ酸カルシウム水和物を調製することができるが、得られたものは、通常、より大きな細孔体積とより大きな細孔径を備えたケイ酸カルシウム水和物ではない。その原因は、以下のとおりである。化学沈殿法を使用すると、反応過程でケイ酸カルシウム水和物は凝集しやすくなり、撹拌によって凝集度を制御しても、その後の乾燥後に得られたケイ酸カルシウム水和物は細孔の崩壊などの現象が発生し、体積が大きくて細孔径の大きなケイ酸カルシウム水和物を得ることは困難である。従って、関連技術では、より大きな細孔体積を有する多孔質ケイ酸カルシウム水和物を調製する場合、当業者の一般的な慣行は、上記の目的を達成するためにテンプレート剤及び細孔拡張剤を使用することである。しかし、テンプレート剤の価格が高いため、調製されたケイ酸カルシウム水和物のコストが高くなり、大規模な産業応用には役立たない。本発明者は、研究の過程で、テンプレート剤がケイ酸カルシウム水和物の細孔構造を調整することができるが、その調整範囲にはネックがあり、細孔体積が2.0cm3/gを超えるような大きな細孔体積を得ることが困難であり、その結果、調製されたケイ酸カルシウム水和物の適用範囲が制限されることが分かる。
【0032】
本願の実施例による上記の調製方法は、テンプレート剤を使用する場合、ケイ酸ナトリウム水和物の細孔体積が2.0cm3/gを超えることが困難であるという制限を突破し、本願の実施例による調製方法では、ケイ酸ナトリウムを水酸化カルシウム懸濁液に等速で滴下して沈殿反応させ、共沸蒸留し、その結果、得られた多孔質ケイ酸カルシウム水和物は、比表面積≧400m2/g、細孔体積≧2.7cm3/g、細孔径が主に20 nm~40nmの範囲であり、それは、テンプレート剤で調製されたケイ酸ナトリウム水和物よりも優れた細孔構造を有する。
【0033】
更に、浸出工程では、アルカリ剤は、水酸化ナトリウム水溶液であり、水酸化ナトリウム水溶液とフライアッシュを混合して加熱した後、水熱反応させ、濾過して分離し、前記ケイ酸塩浸出液及び脱ケイ酸フライアッシュを得て、ケイ酸塩浸出液は、ケイ酸ナトリウム浸出液であり、脱ケイ酸フライアッシュは、酸化アルミニウムを回収するために使用される。
【0034】
本願の実施例では、水酸化ナトリウムでフライアッシュを浸出し、両者を水熱反応させた後に濾過して分離し、その結果、フライアッシュにおけるケイ酸は、ケイ酸ナトリウムの形で浸出液に浸出し、残りの固体は、ケイ酸が除去された脱ケイ酸フライアッシュであり、この部分の脱ケイ酸フライアッシュは主に酸化アルミニウムを含有し、酸化アルミニウムを回収するために使用され得る。従って、本願の実施例は、フライアッシュをケイ素源として使用すると同時に、ケイ素とアルミニウム元素を効果的に分離することができ、ケイ素とアルミニウム元素との共同回収を実現する。
【0035】
なお、本発明の実施例によるアルカリ剤は、水酸化カリウム水溶液などの他のアルカリ剤も使用できる。
【0036】
更に、浸出工程では、アルカリ剤は、水酸化ナトリウム水溶液であり、水酸化ナトリウム水溶液における水酸化ナトリウムとフライアッシュとの質量比が0.4:1~0.8:1、水酸化ナトリウム水溶液の濃度が10重量%~30重量%、水熱反応の条件が105℃~115℃、反応期間が0.4時間~0.6時間である。
【0037】
ここで、水酸化ナトリウム水溶液における水酸化ナトリウムとフライアッシュとの質量比が0.4:1~0.8:1である場合は、該質量比の範囲内の任意の値を含み、例えば、水酸化ナトリウム水溶液における水酸化ナトリウムとフライアッシュとの質量比が0.4:1、0.5:1、0.6:1、0.7:1又は0.8:1であり、水酸化ナトリウム水溶液の濃度が10重量%~30重量%である場合は、該質量濃度の範囲内の任意の値を含み、例えば、水酸化ナトリウム水溶液の濃度が10重量%、15重量%、20重量%、25重量%又は30重量%である。水熱反応の条件が105℃~115℃である場合は、該反応温度の範囲内の任意の値を含み、例えば、水熱反応の条件が105℃、108℃、110℃、112℃又は115℃であり、反応期間が0.4時間~0.6時間である場合、該反応時間内の任意の値を含み、例えば、反応時間が0.4時間、0.5時間又は0.6時間である。
【0038】
上記の水酸化ナトリウムとフライアッシュとの質量比、水酸化ナトリウム水溶液の濃度(即ち、水酸化ナトリウムが占めた該水溶液の質量百分率)及び対応する水熱反応の温度と時間により、フライアッシュにおけるケイ酸を水酸化ナトリウムのアルカリ剤でよってよく浸出することができ、その結果、フライアッシュにおけるケイ素及びアルミニウム元素を効果的に分離し、生成されたケイ酸ナトリウムを使用して多孔質ケイ酸カルシウム水和物を更に調製できるだけでなく、脱ケイ酸フライアッシュを酸化アルミニウムの回収に使用することもできる。
【0039】
更に、アルカリ剤は、水酸化ナトリウム水溶液であり、反応工程では、撹拌して加熱反応させた後に濾過し、ケイ酸カルシウム水和物ゲル及び水酸化ナトリウム副生成物を得て、水酸化ナトリウム副生成物は、前記アルカリ剤として反復使用される。本願の実施例による調製方法では、水酸化ナトリウム水溶液は、フライアッシュからケイ酸を抽出するためのアルカリ剤であり、抽出後に得られたケイ酸浸出液は、ケイ酸ナトリウム浸出液であり、反応工程では、ケイ酸ナトリウム浸出溶液と水酸化カルシウム懸濁液との間の沈殿反応により、ケイ酸カルシウム水和物ゲルに加えて、水酸化ナトリウム副生成物も生成し、これらの水酸化ナトリウム副生成物は、フライアッシュを浸出するために反復使用され、その結果、フライアッシュの資源利用と多孔質ケイ酸カルシウム水和物の調製のコストを更に削減する。
【0040】
更に、反応工程では、ケイ酸塩浸出液におけるケイ酸塩と水酸化カルシウム懸濁液における水酸化カルシウムとのモル比は、0.9:1~1.1:1であり、前記ケイ酸塩浸出液の濃度は、0.067 mol/L~1.067 mol/Lである。上述のケイ酸塩浸出溶液の濃度は、ケイ酸カルシウム水和物粒子の成長に役立ち、適切な細孔径及びより規則的な粒子を有するケイ酸カルシウム水和物を得ることができる。
【0041】
ここで、ケイ酸塩浸出液におけるケイ酸塩と水酸化カルシウム懸濁液における水酸化カルシウムとのモル比が0.9:1~1.1:1である場合は、該モル比の範囲内の任意の値を含み、例えば、ケイ酸塩と水酸化カルシウムとのモル比が0.9:1、1:1又は1.1:1である。ケイ酸塩浸出液の濃度が0.067mol/L~1.067mol/Lである場合は、該濃度の範囲内の任意の値を含み、例えば、ケイ酸塩浸出液の濃度が0.067mol/L、0.08mol/L、0.1mol/L、0.2mol/L、0.5mol/L、0.8mol/L、1mol/L又は1.067mol/Lである。
【0042】
更に、反応工程では、15mL/時間~35mL/時間の滴下速度でケイ酸塩浸出液を水酸化カルシウム懸濁液に等速で滴下し、撹拌速度が450rpm~550、加熱反応の温度が25℃~80℃、加熱反応の時間が2時間~12時間である。
【0043】
本願の実施例では、15mL/時間~35mL/時間の滴下速度でケイ酸塩浸出液を水酸化カルシウム懸濁液に等速で滴下し、ケイ酸塩と水酸化カルシウムの沈殿反応中に450rpm~550rpmの速度で上記の反応系を撹拌し、その結果、生成されたケイ酸カルシウム水和物の凝集を効果的に回避し、その後に大きな細孔体積及び大きな細孔径を有する多孔質ケイ酸カルシウム水和物を得るために良好なケイ酸カルシウム水和物ゲルの構造を提供することができる。
【0044】
ここで、ケイ酸浸出液の滴下速度が15mL/時間~35mL/時間である場合は、該滴下速度の範囲内の任意の値を含み、例えば、ケイ酸浸出液の滴下速度が15mL/時間、18mL/時間、20mL/時間、25mL/時間、30mL/時間又は35mL/時間である。撹拌速度が450rpm~550rpmである場合は、該速度の範囲内の任意の値を含み、例えば、撹拌速度が450rpm、480rpm、500rpm、520rpm又は550rpmである。加熱反応の温度が25℃~80℃である場合は、該温度の範囲内の任意の値を含み、例えば、加熱反応の温度が25℃、35℃、45℃、55℃、65℃又は80℃である。加熱反応の時間が2時間~12時間である場合は、該反応時間の範囲内の任意の値を含み、例えば、加熱反応の時間が2時間、5時間、8時間、10時間又は12時間である。
【0045】
更に、細孔拡張工程では、有機アルコール溶媒は、エタノール、プロパノール又はブタノールのうちの少なくとも1つであり、ケイ酸カルシウム水和物ゲルの質量と有機アルコール溶媒の体積との比は、0.9g:15mL~1.1g:15mLである。
【0046】
エタノール、プロパノール又はブタノールのうちの少なくとも1つを有機アルコール溶媒として使用し、ケイ酸カルシウム水和物ゲルを共沸蒸留する場合、これらのアルコール系物質の表面張力は水の表面張力よりも小さいため、有機アルコール溶媒を介して水を除去する過程でケイ酸カルシウム水和物の細孔が崩壊するという問題は起こらない。本発明者は、多数の実験により、ブタノールを有機アルコール溶媒として使用する場合、ケイ酸カルシウム水和物の細孔が崩壊しないだけでなく、ケイ酸カルシウム水和物の体積が更に拡大し、その結果、得られた多孔質ケイ酸カルシウム水和物がより優れた細孔構造を有することが分かる。
【0047】
ここで、ケイ酸カルシウム水和物ゲルの質量と有機アルコール溶媒の体積との比が0.9g:15mL~1.1g:15mLである場合は、該比の範囲内の任意の値を含み、例えば、ケイ酸カルシウム水和物ゲルの質量と有機アルコール溶媒の体積との比が0.9g:15 mL、1g:15mL又は1.1g:15mLである。
【0048】
更に、細孔拡張工程では、共沸蒸留は、まず、ケイ酸カルシウム水和物ゲル及び有機アルコール溶媒を第1温度まで加熱し、15分間~25分間定温蒸留し、次に、第2温度まで加熱し、35分間~45分間定温蒸留することであり、ここで、第1温度は、有機アルコール溶媒と水で形成された系の沸点温度であり、第2温度は、有機アルコール溶媒の沸点温度であり、
乾燥の条件は、80℃~85℃で10時間~14時間乾燥させることであり、焼成の条件は、400℃~600℃で4時間~4.5時間焼成することである。
【0049】
本願の実施例では、異なる温度での上記の二段階の蒸留により、水と有機アルコール溶媒をより完全に除去することができる。それに基づいて、80℃~85℃の低温乾燥で、残った少量の有機アルコール溶剤を更に除去するだけで済み、そのため、高温乾燥条件を使用せずに乾燥の目的を達成することができ、高温乾燥条件下でケイ酸カルシウム水和物の細孔構造への損傷を回避する。なお、多孔質ケイ酸カルシウム水和物の構造は、低温乾燥後に得ることができるが、本発明者らは、実験試験により、乾燥後に焼成し、特に、400℃~600℃で4時間~4.5時間焼成した後、多孔質ケイ酸カルシウム水和物の細孔構造は影響を受けず、破壊されず、有機アミン活性成分を担体として担持して得られた吸着剤の相対吸着性能を向上させることができる。
【0050】
ここで、第1温度まで加熱する時の定温蒸留時間が15分間~25分間である場合は、該時間の範囲内の任意の値を含み、例えば、定温蒸留時間が15分間、18分間、20分間、22分間又は25分間であり、第2温度まで加熱する時の定温蒸留時間が35分間~45分間である場合は、該時間の範囲内の任意の値を含み、例えば、定温蒸留時間が35分間、38分間、40分間、42分間又は45分間である。乾燥温度が80℃~85℃である場合は、該乾燥温度の範囲内の任意の値を含み、例えば、乾燥温度の条件が80℃、82℃又は85℃であり、乾燥時間が10時間~14時間である場合は、該時間の範囲内の任意の値を含み、例えば、乾燥時間が10時間、11時間、12時間、13時間又は14時間である。焼成温度が400℃~600℃である場合は、該焼成温度の範囲内の任意の値を含み、例えば、焼成温度が400℃、450℃、500℃、550℃又は600℃であり、焼成時間が4時間~4.5時間である場合は、該時間の範囲内の任意の値を含み、例えば、焼成時間が4時間、4.2時間又は4.5期間である。
【0051】
第2態様では、本願は、多孔質ケイ酸カルシウム水和物を更に提供し、該多孔質ケイ酸カルシウム水和物は、第1態様に記載の調製方法によって得られる。
【0052】
更に、前記多孔質ケイ酸カルシウム水和物は、比表面積≧400m2/g、細孔体積≧2.7 cm3/g、細孔径が20nm~40nmである。
【0053】
本分野では、テンプレート剤を使用しても、調製された多孔質ケイ酸カルシウム水和物の細孔体積が2.0cm3/gを超えることは困難であり、しかし、本願の実施例による多孔質ケイ酸カルシウム水和物は、テンプレート剤を使用しない調製条件下でも、より大きな細孔体積(≧2.7cm3/g)、より大きな比表面積、及び大きな細孔径を得ることができる。
【0054】
更に、本願の実施例は、吸着剤を更に提供し、該吸着剤は、担体と、該担体に担持された有機アミン活性成分とを含み、該担体は、第1態様に記載の調製方法によって得られた多孔質ケイ酸カルシウム水和物である。
【0055】
第4態様では、本願の実施例は、第3態様に記載の吸着剤の応用を提供し、該吸着剤は、二酸化炭素をキャプチャ及び/又は廃水中の重金属を吸着するために使用される。
【0056】
二酸化炭素のキャプチャ及び/又は廃水中の重金属の吸着のために使用される触媒の分野では、本分野で一般的に使用される触媒担体は、通常、無水ケイ酸などのより大きな細孔体積を有する構造であり、しかし、一般的なケイ酸カルシウム水和物は、触媒担体として使用できる上記のような優れた細孔構造を有さないため、当業者は、通常、上記の分野において触媒担体としてケイ酸カルシウム水和物を使用することを考えない。しかし、本願の実施例は、調製方法の改良により、より大きな細孔体積を有する多孔質ケイ酸カルシウム水和物を得ることができ、該多孔質ケイ酸カルシウム水和物は、触媒担体として優れた細孔構造を有し、更に、有機アミン活性成分を担持して吸着剤を調製するための担体として使用することができる。
【0057】
本願の実施例によって調製された多孔質ケイ酸カルシウム水和物は、比表面積≧400m2/g、細孔体積≧2.7cm3/g、細孔径が20nm~40nmであるという優れた細孔構造を有し、特に、細孔体積は、従来技術に比べて大幅に増加する。従って、同量の担体の条件下で、多孔質ケイ酸カルシウム水和物を担体として使用することにより、より多くの有機アミン活性成分を効果的に担持することができ、また、両者によって形成された吸着剤は、より優れた吸着量及び吸着速度を有する。
【0058】
以下、特定の実施例及び実験結果により、本願の技術的解決手段を更に説明する。
【0059】
(実施例1)
本実施例は、多孔質ケイ酸カルシウム水和物を提供し、
図1は、該多孔質ケイ酸カルシウム水和物の調製方法のプロセスの流れ図である。
【0060】
浸出工程であって、水酸化ナトリウム水溶液でフライアッシュを浸出し、水熱合成リアクタで両者を混合して加熱し、110℃で0.5時間水熱反応させ、濾過して分離し、ケイ酸塩浸出液及び脱ケイ酸フライアッシュを得て、脱ケイ酸フライアッシュは、酸化アルミニウムを回収するために使用され、水酸化ナトリウム水溶液は、8gの水酸化ナトリウム及び72mLの超純水を含有し、フライアッシュが20gである工程と、
反応工程であって、35mL/時間の滴下速度で濃度が0.267mol/Lのケイ酸ナトリウム浸出溶液の75mLを濃度が0.16mol/Lの水酸化カルシウム懸濁液の125mLに等速で滴下し、500rpmの速度で撹拌し、25℃の条件下で12時間完全に反応した後、濾過して分離し、ケイ酸カルシウム水和物ゲル及び水酸化ナトリウム副生成物を得て、水酸化ナトリウム副生成物は、フライアッシュを浸出するためのアルカリ剤として前述の浸出工程で反復使用され、ケイ酸カルシウム水和物ゲルにおけるカルシウムとケイ素との比が1であり、ルシウムとケイ素との比は、カルシウム元素とケイ素とのモル比を指し、ケイ酸ナトリウム浸出液と水酸化カルシウム懸濁液との反応式は、Na2SiO3+Ca(OH)2→CaSiO3↓+2NaOHである工程と、
細孔拡張工程であって、反応工程で調製されたケイ酸カルシウム水和物ゲルと30mLのエタノールを混合し、ロータリーエバポレータで78.2℃まで加熱し、水を除去するために、20分間定温蒸留し、次に、79℃まで加熱し、エタノールを除去するために、40分間定温蒸留し、共沸蒸留後の混合物を遠心分離した後、80℃で12時間乾燥させ、最後に、400℃で4時間焼成し、多孔質ケイ酸カルシウム水和物を得る工程と、を含む。
【0061】
(実施例2)
本実施例は、多孔質ケイ酸カルシウム水和物を提供し、その調製方法は、
浸出工程であって、水酸化ナトリウム水溶液でフライアッシュを浸出し、水熱合成リアクタで両者を混合して加熱し、110℃で0.5時間水熱反応させ、濾過して分離し、ケイ酸塩浸出液及び脱ケイ酸フライアッシュを得て、脱ケイ酸フライアッシュは、酸化アルミニウムを回収するために使用され、水酸化ナトリウム水溶液は、10 gの水酸化ナトリウム及び40 mLの超純水を含有し、フライアッシュが20 gである工程と、
反応工程であって、30 mL/時間の滴下速度で濃度が0.133 mol/Lのケイ酸ナトリウム浸出溶液の75 mLを濃度が0.08 mol/Lの水酸化カルシウム懸濁液の125 mLに等速で滴下し、500 rpmの速度で撹拌し、40℃の条件下で10時間完全に反応した後、濾過して分離し、ケイ酸カルシウム水和物ゲル及び水酸化ナトリウム副生成物を得て、水酸化ナトリウム副生成物は、フライアッシュを浸出するためのアルカリ剤として前述の浸出工程で反復使用され、ケイ酸カルシウム水和物ゲルにおけるカルシウムとケイ素との比が1であり、ルシウムとケイ素との比は、カルシウム元素とケイ素とのモル比を指す工程と、
細孔拡張工程であって、反応工程で調製されたケイ酸カルシウム水和物ゲルと90 mLのプロピルアルコールを混合し、ロータリーエバポレータで88℃まで加熱し、水を除去するために、20分間定温蒸留し、次に、96℃まで加熱し、プロピルアルコールを除去するために、40分間定温蒸留し、共沸蒸留後の混合物を遠心分離した後、80℃で12時間乾燥させ、最後に、600℃で4時間焼成し、多孔質ケイ酸カルシウム水和物を得る工程とを含む。
【0062】
(実施例3)
本実施例は、多孔質ケイ酸カルシウム水和物を提供し、その調製方法は、
浸出工程であって、水酸化ナトリウム水溶液でフライアッシュを浸出し、水熱合成リアクタで両者を混合して加熱し、110℃で0.5時間水熱反応させ、濾過して分離し、ケイ酸塩浸出液及び脱ケイ酸フライアッシュを得て、脱ケイ酸フライアッシュは、酸化アルミニウムを回収するために使用され、水酸化ナトリウム水溶液は、10gの水酸化ナトリウム及び30mLの超純水を含有し、フライアッシュが20gである工程と、
反応工程であって、25mL/時間の滴下速度で濃度が0.267mol/Lのケイ酸ナトリウム浸出溶液の75mLを濃度が0.16mol/Lの水酸化カルシウム懸濁液の125mLに等速で滴下し、500rpmの速度で撹拌し、80℃の条件下で8時間完全に反応した後、濾過して分離し、ケイ酸カルシウム水和物ゲル及び水酸化ナトリウム副生成物を得て、水酸化ナトリウム副生成物は、フライアッシュを浸出するためのアルカリ剤として前述の浸出工程で反復使用され、ケイ酸カルシウム水和物ゲルにおけるカルシウムとケイ素との比が1であり、ルシウムとケイ素との比は、カルシウム元素とケイ素とのモル比を指す工程と、
細孔拡張工程であって、反応工程で調製されたケイ酸カルシウム水和物ゲルと90mLのn-ブチルアルコールを混合し、ロータリーエバポレータで93℃まで加熱し、水を除去するために、20分間定温蒸留し、次に、117℃まで加熱し、n-ブチルアルコールを除去するために、40分間定温蒸留し、共沸蒸留後の混合物を遠心分離した後、80℃で12時間乾燥させ、最後に、500℃で4時間焼成し、多孔質ケイ酸カルシウム水和物を得る工程と、を含む。
【0063】
(実施例4)
本実施例は、多孔質ケイ酸カルシウム水和物を提供し、その調製方法は、
浸出工程であって、水酸化ナトリウム水溶液でフライアッシュを浸出し、水熱合成リアクタで両者を混合して加熱し、110℃で0.5時間水熱反応させ、濾過して分離し、ケイ酸塩浸出液及び脱ケイ酸フライアッシュを得て、脱ケイ酸フライアッシュは、酸化アルミニウムを回収するために使用され、水酸化ナトリウム水溶液は、12gの水酸化ナトリウム及び28mLの超純水を含有し、フライアッシュが20gである工程と、
反応工程であって、20mL/時間の滴下速度で濃度が0.533mol/Lのケイ酸ナトリウム浸出溶液の75mLを濃度が0.32mol/Lの水酸化カルシウム懸濁液の125mLに等速で滴下し、500rpmの速度で撹拌し、60℃の条件下で6時間完全に反応した後、濾過して分離し、ケイ酸カルシウム水和物ゲル及び水酸化ナトリウム副生成物を得て、水酸化ナトリウム副生成物は、フライアッシュを浸出するためのアルカリ剤として前述の浸出工程で反復使用され、ケイ酸カルシウム水和物ゲルにおけるカルシウムとケイ素との比が1であり、ルシウムとケイ素との比は、カルシウム元素とケイ素とのモル比を指す工程と、
細孔拡張工程であって、反応工程で調製されたケイ酸カルシウム水和物ゲルと90mLのt-ブチルアルコールを混合し、ロータリーエバポレータで80℃まで加熱し、水を除去するために、20分間定温蒸留し、次に、85℃まで加熱し、t-ブチルアルコールを除去するために、40分間定温蒸留し、共沸蒸留後の混合物を遠心分離した後、80℃で12時間乾燥させ、最後に、400℃で4時間焼成し、多孔質ケイ酸カルシウム水和物を得る工程とを含む。
【0064】
(実施例5)
本実施例は、多孔質ケイ酸カルシウム水和物を提供し、その調製方法は、
浸出工程であって、水酸化ナトリウム水溶液でフライアッシュを浸出し、水熱合成リアクタで両者を混合して加熱し、110℃で0.5時間水熱反応させ、濾過して分離し、ケイ酸塩浸出液及び脱ケイ酸フライアッシュを得て、脱ケイ酸フライアッシュは、酸化アルミニウムを回収するために使用され、水酸化ナトリウム水溶液は、14gの水酸化ナトリウム及び40mLの超純水を含有し、フライアッシュが20gである工程と、
反応工程であって、15mL/時間の滴下速度で濃度が1.067mol/Lのケイ酸ナトリウム浸出溶液の75mLを濃度が0.64mol/Lの水酸化カルシウム懸濁液の125mLに等速で滴下し、500rpmの速度で撹拌し、50℃の条件下で4時間完全に反応した後、濾過して分離し、ケイ酸カルシウム水和物ゲル及び水酸化ナトリウム副生成物を得て、水酸化ナトリウム副生成物は、フライアッシュを浸出するためのアルカリ剤として前述の浸出工程で反復使用され、ケイ酸カルシウム水和物ゲルにおけるカルシウムとケイ素との比が1であり、ルシウムとケイ素との比は、カルシウム元素とケイ素とのモル比を指す工程と、
細孔拡張工程であって、反応工程で調製されたケイ酸カルシウム水和物ゲルと90mLのプロピルアルコールを混合し、ロータリーエバポレータで88℃まで加熱し、水を除去するために、20分間定温蒸留し、次に、88℃まで加熱し、プロピルアルコールを除去するために、40分間定温蒸留し、共沸蒸留後の混合物を遠心分離した後、80℃で12時間乾燥させ、最後に、600℃で4時間焼成し、多孔質ケイ酸カルシウム水和物を得る工程とを含む。
【0065】
(実施例6)
本実施例は、多孔質ケイ酸カルシウム水和物を提供し、その調製方法は、
浸出工程であって、水酸化ナトリウム水溶液でフライアッシュを浸出し、水熱合成リアクタで両者を混合して加熱し、110℃で0.5時間水熱反応させ、濾過して分離し、ケイ酸塩浸出液及び脱ケイ酸フライアッシュを得て、脱ケイ酸フライアッシュは、酸化アルミニウムを回収するために使用され、水酸化ナトリウム水溶液は、16gの水酸化ナトリウム及び50mLの超純水を含有し、フライアッシュが20gである工程と、
反応工程であって、25mL/時間の滴下速度で濃度が0.267mol/Lのケイ酸ナトリウム浸出溶液の75mLを濃度が0.16mol/Lの水酸化カルシウム懸濁液の125mLに等速で滴下し、500rpmの速度で撹拌し、70℃の条件下で2時間完全に反応した後、濾過して分離し、ケイ酸カルシウム水和物ゲル及び水酸化ナトリウム副生成物を得て、水酸化ナトリウム副生成物は、フライアッシュを浸出するためのアルカリ剤として前述の浸出工程で反復使用され、ケイ酸カルシウム水和物ゲルにおけるカルシウムとケイ素との比が1であり、ルシウムとケイ素との比は、カルシウム元素とケイ素とのモル比を指す工程と、
細孔拡張工程であって、反応工程で調製されたケイ酸カルシウム水和物ゲルと90mLのn-ブチルアルコールを混合し、ロータリーエバポレータで93℃まで加熱し、水を除去するために、20分間定温蒸留し、次に、117℃まで加熱し、n-ブチルアルコールを除去するために、40分間定温蒸留し、共沸蒸留後の混合物を遠心分離した後、80℃で12時間乾燥させ、最後に、500℃で4時間焼成し、多孔質ケイ酸カルシウム水和物を得る工程とを含む。
【0066】
(比較例)
本比較例は、多孔質ケイ酸カルシウム水和物を提供し、本比較例と実施例3との違いは、本比較例の調製方法では、細孔拡張工程では、共沸蒸留後、焼成せずに遠心分離及び乾燥のみを行うことである。
【0067】
(適用例)
本適用例は、吸着剤を提供し、該吸着剤は、担体と、前記担体に担持された有機アミン活性成分とを含み、該担体は、実施例3によって調製された多孔質ケイ酸カルシウム水和物であり、有機アミン活性成分は、ポリエチレンイミンである。
図2を参照し、
図2は、本適用例による吸着剤の調製プロセスの流れ図である。該吸着剤の調製方法は、含浸法でポリエチレンイミンを実施例3における多孔質ケイ酸カルシウム水和物に担持し、吸着剤を得る工程であって、該吸着剤における有機アミン活性成分の担持質量百分率は60%である工程を含む。
【0068】
(比較適用例)
本比較適用例は、吸着剤を提供し、本比較適用例と適用例との違いは、本比較適用例で使用された担体が比較例で調製された多孔質ケイ酸カルシウム水和物であることである。
【0069】
(性能試験)
本願の実施例は、調製された多孔質ケイ酸カルシウム水和物の相組成及び形態に対して一連の特性評価を行う。
図3は、実施例3による多孔質ケイ酸カルシウム水和物のX線スペクトルであり、照射条件は、放射線源がCu-Kαで、連続走査方式を使用し、走査速度が5°/分間、2θ=10~80°であることである。
図3の結果から分かるように、該多孔質ケイ酸カルシウム水和物は、CaSi2O5、Ca3(Si3O8(OH)2)及びCaCO3という3つの相で構成され、サンプルの結晶性が低いため、基本的には、アモルファス状態に属する。
図4は、実施例3による多孔質ケイ酸カルシウム水和物のSEM画像であり、
図4から分かるように、該多孔質ケイ酸カルシウム水和物の表面は、繊維状のシート構造を形成し、発達した細孔構造を有する。
【0070】
本願の実施例では、多孔質ケイ酸カルシウム水和物の構造特性を更に分析するために、比表面積及び空隙率分析装置も使用され、その結果が表1に示される。表1から分かるように、本願の実施例によって調製された多孔質ケイ酸カルシウム水和物は、比表面積≧400m
2/g、細孔体積≧2.7cm
3/gである。なお、
図5は、実施例3による細孔径の分布図であり、
図5から分かるように、多孔質ケイ酸カルシウム水和物の細孔径は主に20nm~40nmの範囲内に分布し、均一な単峰性の細孔径分布特徴を示す。
【0071】
発明者による多数の実験から分かるように、実施例3によって調製された多孔質ケイ酸カルシウム水和物は、最良の構造特性を有し、その細孔体積は、3.0cm3に達し、n-ブチルアルコールを共沸蒸留の共沸剤として使用すると、ケイ酸カルシウム水和物の細孔構造の最適化と細孔体積の拡大に更に役立つ。更に、発明者による研究過程から分かるように、反応工程では、適切なケイ酸ナトリウム浸出溶液の濃度を制御することは、生成されたケイ酸カルシウム水和物の粒径と細孔体積の制御に更に役立つ。ケイ酸ナトリウム浸出溶液の濃度が高いと、pH値の低下速度が遅くなり、生成されたケイ酸カルシウム水和物の粒子がより多くの成長の機会を得ることができ、その結果、ケイ酸カルシウム水和物の粒子が大きくなり、隣り合った粒子間の細孔の量が減少する。しかし、ケイ酸ナトリウム浸出溶液の濃度が低いと、核生成中の効果的な衝突が不足し、ケイ酸カルシウム水和物の粒子がより小さく、より不規則になり、より密に詰まり、細孔体積が低下する。本願の多数の実験から分かるように、ケイ酸ナトリウム浸出液の濃度が0.267mol/Lの場合は、より大きな細孔体積及び比表面積を有する多孔質ケイ酸カルシウム水和物構造を得ることに役立つ。
【0072】
本願では、適用例及び比較適用例における吸着剤の吸着性能が試験され、具体的には、適用例及び比較適用例における吸着剤は、二酸化炭素を吸着するために使用され、その結果は、
図6で示され、
図6は、適用例及び比較適用例による吸着剤が二酸化炭素への吸着量の結果図である。
図6及び表1から分かるように、本願の調製方法における焼成工程は、最終的に得られた多孔質ケイ酸カルシウム水和物の細孔体積と細孔径を更に向上させることに役立ち、より重要なことは、焼成された多孔質ケイ酸カルシウム水和物が吸着剤になった後、二酸化炭素への吸着能力が大幅に向上することであり、二酸化炭素への適用例の吸着剤の吸着量は197mg/gに達することができるが、担体を焼成しない比較適用例の吸着剤の吸着容量はわずか175mg/gである。従って、焼成工程では、ケイ酸カルシウム分子間の架橋酸素結合を切断してより大きな細孔を形成することができ、それは、二酸化炭素の吸着速度と吸着量の向上に重要な役割を果たす。
【0073】
以上は、本願の実施例によって開示された多孔質ケイ酸カルシウム水和物、その調製方法、吸着剤及びその応用を詳細に説明し、本明細書では、特定の実施例を使用して本願の原理及び実施形態を説明し、以上の実施例への説明は、本願の技術的解決手段及びその中心的思想を理解するのを助けるためにのみ使用され、同時に、当業者は、本願の思想によれば、特定の実施形態及びその適用範囲にも変更することができ、要するに、本明細書の内容は、本願を限定するものとして解釈されるべきではない。