(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】蒸気プラント
(51)【国際特許分類】
F22D 11/06 20060101AFI20240730BHJP
F22B 37/38 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
F22D11/06 A
F22B37/38 C
(21)【出願番号】P 2024019395
(22)【出願日】2024-02-13
【審査請求日】2024-02-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】110004303
【氏名又は名称】弁理士法人三協国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 成雄
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-247406(JP,A)
【文献】特開昭59-013198(JP,A)
【文献】特開平07-318006(JP,A)
【文献】特開2013-002681(JP,A)
【文献】特開2017-129329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22D 11/06
F22B 37/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気を発生する蒸気ボイラと、
前記蒸気ボイラが発生した前記蒸気を負荷機器に輸送する蒸気配管と、
前記蒸気配管内に生じたドレンを排出するスチームトラップと、
前記スチームトラップから回収した前記ドレンを圧送する
、駆動電力を必要としないタイプのポンピングトラップと、
前記ポンピングトラップから圧送された前記ドレンを高圧の熱水として断熱状態で貯留する
、駆動電力を必要としないタイプの圧力タンクと、
冷水供給源から圧送された冷水と前記圧力タンクから圧送された前記熱水とが供給され、供給された前記冷水及び前記熱水を混合して前記蒸気ボイラに供給する
、駆動電力を必要としないタイプのミキシングバルブと、
を備える、蒸気プラント。
【請求項2】
前記蒸気プラントを管理する管理装置をさらに備え、
前記管理装置は、
前記圧力タンクから前記ミキシングバルブへの前記熱水の供給を停止した状態で前記蒸気プラントを一定期間動作させた時の、前記蒸気ボイラの燃料使用量及び前記冷水供給源からの冷水供給量と、
前記圧力タンクから前記ミキシングバルブへ前記熱水を供給した状態で前記蒸気プラントを一定期間動作させた時の、前記蒸気ボイラの燃料使用量及び前記冷水供給源からの冷水供給量と、
を比較し、その比較の結果を出力する、
請求項1に記載の蒸気プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、背景技術に係る蒸気プラント回路のドレン回収システムが開示されている。当該システムは、高圧加熱機器のドレン排出回路にフラッシュタンクを接続してドレン排出回路を構成し、当該ドレン排出回路内のドレンをドレン排出回路より高い圧力に保持された圧力タンクにドレン圧送ポンプによって送給し、当該圧力タンク内の熱水をドレン回収ポンプの吸引によってボイラに供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
背景技術に係る蒸気プラント回路のドレン回収システムによると、回収したドレンをボイラに供給することによってドレンを再利用することはできるが、ドレン圧送ポンプ及びドレン回収ポンプの駆動のために電気エネルギーが消費されると、システム全体として省エネルギーの効果が不十分となる。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みて成されたものであり、蒸気プラントにおける省エネルギーの効果を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る蒸気プラントは、蒸気を発生する蒸気ボイラと、前記蒸気ボイラが発生した前記蒸気を負荷機器に輸送する蒸気配管と、前記蒸気配管内に生じたドレンを排出するスチームトラップと、前記スチームトラップから回収した前記ドレンを圧送する、駆動電力を必要としないタイプのポンピングトラップと、前記ポンピングトラップから圧送された前記ドレンを高圧の熱水として断熱状態で貯留する、駆動電力を必要としないタイプの圧力タンクと、冷水供給源から圧送された冷水と前記圧力タンクから圧送された前記熱水とが供給され、供給された前記冷水及び前記熱水を混合して前記蒸気ボイラに供給する、駆動電力を必要としないタイプのミキシングバルブと、を備える。
【0007】
第1態様によれば、スチームトラップから排出されたドレンを廃棄するのではなく、回収したドレンから得られた熱水を蒸気ボイラに供給することにより、冷水供給源からの水道水又は工業用水等の冷水のみを蒸気ボイラに供給する場合と比較して、蒸気ボイラの燃料使用量及び冷水供給源からの冷水供給量を節減できる。また、いずれも駆動電力を必要としないポンピングトラップ、圧力タンク、及びミキシングバルブを用いて、ドレンを蒸気ボイラに供給できる。その結果、蒸気プラントにおける省エネルギーの効果を向上することが可能となる。
【0008】
本発明の第2態様に係る蒸気プラントは、第1態様において、前記蒸気プラントを管理する管理装置をさらに備え、前記管理装置は、前記圧力タンクから前記ミキシングバルブへの前記熱水の供給を停止した状態で前記蒸気プラントを一定期間動作させた時の、前記蒸気ボイラの燃料使用量及び前記冷水供給源からの冷水供給量と、前記圧力タンクから前記ミキシングバルブへ前記熱水を供給した状態で前記蒸気プラントを一定期間動作させた時の、前記蒸気ボイラの燃料使用量及び前記冷水供給源からの冷水供給量と、を比較し、その比較の結果を出力する。
【0009】
第2態様によれば、回収したドレンから得られた熱水を蒸気ボイラに供給することによる、蒸気ボイラの燃料使用量及び冷水供給源からの冷水供給量の節減効果を、ユーザに提示することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、蒸気プラントにおける省エネルギーの効果を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る蒸気プラントの全体構成を簡略化して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る蒸気プラント1の全体構成を簡略化して示す図である。
図1に示すように、蒸気プラント1は、管理装置11、燃料供給源12、冷水供給源13、蒸気ボイラ14、蒸気配管15、スチームトラップ16、負荷機器17、ポンピングトラップ18、ドレン配管19、圧力タンク20、及びミキシングバルブ21を備えて構成される。
【0014】
燃料供給源12は、蒸気ボイラ14に、油又はガス等の燃料31を供給する。
【0015】
冷水供給源13は、水道水又は工業用水等の冷水32を圧送する。冷水供給源13から圧送された冷水32は、ミキシングバルブ21の冷水入口に供給される。冷水入口は逆止弁を有し、ミキシングバルブ21から冷水供給源13に向かう逆流方向への冷水32の移動が規制される。
【0016】
ミキシングバルブ21の熱水入口には、圧力タンク20から熱水33が供給される。熱水入口は逆止弁を有し、ミキシングバルブ21から圧力タンク20に向かう逆流方向への熱水33の移動が規制される。
【0017】
ミキシングバルブ21は、冷水供給源13から供給された冷水32と、圧力タンク20から供給された熱水33とを混合し、それによって得られた温水34を、温水出口から蒸気ボイラ14に供給する。温水出口は逆止弁を有し、蒸気ボイラ14からミキシングバルブ21に向かう逆流方向への温水34の移動が規制される。
【0018】
なお、様々なタイプのミキシングバルブが市販されているが、ミキシングバルブ21は、駆動電力を必要としないタイプのものであれば、どのようなものであっても良い。
【0019】
蒸気ボイラ14は、燃料31の燃焼によって温水34を加熱することにより、蒸気35を発生する。
【0020】
蒸気配管15は、耐熱耐圧性を有し、蒸気ボイラ14が発生した高温高圧の蒸気35を負荷機器17に輸送する。
【0021】
負荷機器17は、蒸気35を加熱源又は動力源として用いる任意の機器であり、例えば、空調機器、熱交換器、又は蒸気タービンである。
【0022】
蒸気配管15の複数の箇所には、スチームトラップ16が配設されている。蒸気35の凝縮等に起因して、蒸気配管15内にはドレン36が生じる。スチームトラップ16は、蒸気配管15内に生じたドレン36を蒸気配管15外に排出する。
【0023】
ポンピングトラップ18は、例えばフロート式のメカニカルポンプであり、スチームトラップ16から回収した高温のドレン36をドレン配管19に圧送する。
【0024】
なお、様々なタイプのポンピングトラップが市販されているが、ポンピングトラップ18は、駆動電力を必要としないタイプのものであれば、どのようなものであっても良い。
【0025】
圧力タンク20は、断熱材で覆われた耐熱耐圧性の容器を有し、当該容器内にはドレン配管19からドレン36が供給される。ドレン36が供給された当該容器内に圧縮空気を送り込むことによって、当該容器内のドレン36を圧縮空気によって加圧する。これにより、圧力タンク20は、ポンピングトラップ18からドレン配管19を介して圧送されたドレン36を、高温高圧の熱水33として断熱状態で貯留する。圧力タンク20は、熱水33を圧送する。圧力タンク20から圧送された熱水33は、ミキシングバルブ21の熱水入口に供給される。
【0026】
なお、様々なタイプの圧力タンクが市販されているが、圧力タンク20は、駆動電力を必要としないタイプのものであれば、どのようなものであっても良い。
【0027】
図2は、管理装置11の構成を簡略化して示す図である。管理装置11は、例えばコンピュータ端末を用いて構成され、蒸気プラント1の構成及び動作等を管理する。
【0028】
管理装置11は、処理部51、記憶部52、入力部53、表示部54、及び通信部55を有する。処理部51は、CPU等のプロセッサを備えて構成される。記憶部52は、HDD、SSD、又は半導体メモリ等を備えて構成される。入力部53は、キーボード、マウス、又はタッチパネル等を備えて構成される。表示部54は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等を備えて構成される。通信部55は、IP等の任意の通信規格に対応した通信モジュール等を備えて構成される。
【0029】
管理装置11は、一定期間内における燃料31の使用量を示す情報S1を、燃料供給源12から通信部55によって受信する。但し、情報S1は、オペレータによって入力部53から入力されても良い。一定期間は、数日であっても良いし、数週間であっても良い。
【0030】
また、管理装置11は、一定期間内における冷水32の供給量を示す情報S2を、冷水供給源13から通信部55によって受信する。但し、情報S2は、オペレータによって入力部53から入力されても良い。
【0031】
ミキシングバルブ21の熱水入口には、手動の開閉弁が設けられている。作業者が開閉弁を閉じることにより、圧力タンク20からミキシングバルブ21への熱水33の供給が停止される。作業者が開閉弁を開けることにより、圧力タンク20からミキシングバルブ21へ熱水33が供給される。
【0032】
処理部51は、開閉弁が閉じられた状態で蒸気プラント1を一定期間動作させた時の、情報S1で示される燃料使用量と情報S2で示される冷水供給量とを取得し、記憶部52に記憶する。また、処理部51は、開閉弁が開けられた状態で蒸気プラント1を一定期間動作させた時の、情報S1で示される燃料使用量と情報S2で示される冷水供給量とを取得し、記憶部52に記憶する。
【0033】
処理部51は、開閉弁が閉じられた状態での燃料使用量及び冷水供給量と、開閉弁が開けられた状態での燃料使用量及び冷水供給量とを比較し、その比較の結果を可視化したグラフ等として表示部54に表示する。比較の対象は、月単位の平均値等であっても良いし、季節単位の平均値等であっても良いし、年単位の平均値等であっても良い。
【0034】
本実施形態によれば、スチームトラップ16から排出されたドレン36を廃棄するのではなく、回収したドレン36から得られた熱水33を蒸気ボイラ14に供給することにより、冷水供給源13からの水道水又は工業用水等の冷水32のみを蒸気ボイラ14に供給する場合と比較して、蒸気ボイラ14の燃料使用量及び冷水供給源13からの冷水供給量を節減できる。また、いずれも駆動電力を必要としないポンピングトラップ18、圧力タンク20、及びミキシングバルブ21を用いて、ドレン36を蒸気ボイラ14に供給できる。その結果、蒸気プラント1における省エネルギーの効果を向上することが可能となる。
【0035】
また、本実施形態によれば、回収したドレン36から得られた熱水33を蒸気ボイラ14に供給することによる、蒸気ボイラ14の燃料使用量及び冷水供給源13からの冷水供給量の節減効果を、ユーザに提示することが可能となる。
【符号の説明】
【0036】
1 上記プラント
11 管理装置
14 蒸気ボイラ
15 蒸気配管
16 スチームトラップ
17 負荷機器
18 ポンピングトラップ
20 圧力タンク
21 ミキシングバルブ
32 冷水
33 熱水
36 ドレン
【要約】
【課題】省エネルギーの効果を向上することが可能な蒸気プラントを得る。
【解決手段】蒸気プラントは、蒸気を発生する蒸気ボイラと、前記蒸気ボイラが発生した前記蒸気を負荷機器に輸送する蒸気配管と、前記蒸気配管内に生じたドレンを排出するスチームトラップと、前記スチームトラップから回収した前記ドレンを圧送するポンピングトラップと、前記ポンピングトラップから圧送された前記ドレンを高圧の熱水として断熱状態で貯留する圧力タンクと、冷水供給源から圧送された冷水と前記圧力タンクから圧送された前記熱水とが供給され、供給された前記冷水及び前記熱水を混合して前記蒸気ボイラに供給するミキシングバルブと、を備える。
【選択図】
図1