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特許7529337非等方性を考慮した水平方向対流圏遅延分類方法
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  • 特許-非等方性を考慮した水平方向対流圏遅延分類方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】非等方性を考慮した水平方向対流圏遅延分類方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/07 20100101AFI20240730BHJP
【FI】
G01S19/07
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2024088179
(22)【出願日】2024-05-30
【審査請求日】2024-05-30
(31)【優先権主張番号】202310635800.X
(32)【優先日】2023-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518411338
【氏名又は名称】山東科技大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】徐 瑩
(72)【発明者】
【氏名】周 宏展
(72)【発明者】
【氏名】李 治坤
(72)【発明者】
【氏名】楊 早早
(72)【発明者】
【氏名】孫 金杰
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-536341(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0002300(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0027624(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0194639(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第113359162(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113960635(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106407560(CN,A)
【文献】YUAN, Haijun 外4名,“An Extended Robust Estimation Method Considering the Multipath Effects in GNSS Real-Time Kinematic Positioning”,IEEE TRANSACTIONS ON INSTRUMENTATION AND MEASUREMENT [online],2022年08月03日,Volume 71,Article 8504509,<URL: https://doi.org/10.1109/TIM.2022.3193967 >
【文献】IWABUCHI, Tetsuya 外4名,“An impact of estimating tropospheric delay gradients on tropospheric delay estimations in the summer using the Japanese nationwide GPS array”,JOURNAL OF GEOPHYSICAL RESEARCH: ATMOSPHERES [online],2003年05月30日,Volume 108, Issue D10,Article ACL 10,<URL: https://doi.org/10.1029/2002JD002214 >
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 19/00 - G01S 19/55
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非等方性を考慮した水平方向対流圏遅延分類方法であって、
分類すべき高度角範囲内の各高度角における異なる方位角の対流圏遅延データを推定するステップ1と、
ステップ1で得られた対流圏遅延データに基づいて、各高度角における異なる方位角の非等方性値Δを推定するステップ2であって、各高度角における各方位角にいずれも対応する非等方性値Δが存在し、
前記ステップ2において、非等方性値Δの表現式は、式(1)に示すとおりであり、
Δ=SPD‐meanspd (1)
ここで、SPDは、対流圏遅延を表し、meanspdは、分類すべき高度角における各方位角のSPDの平均値であるステップ2と、
各高度角におけるσを結び付けて、異なる高度角における閾値関数k・σを決定するステップ3であって、σは、Δが位置する高度角における対流圏遅延の中央値誤差であり、kは、IGG-3重み方案に基づいて構築された三段式スライドウィンドウ関数であり、前記ステップ3において、三段式スライドウィンドウ関数kの表現式は、式(2)に示すとおりであり、
各高度角における各方位角の非等方性値Δと閾値関数k・σの絶対値との間の大小関係を判断し、この大小関係に基づいて対流圏遅延の水平方向における異なる性質の分類を実現するステップ4であって、
前記ステップ4において、対流圏遅延の水平方向における異なる性質の分類過程は、以下のとおりであり、
Δ>|k・σ|の場合、この条件を満たすΔに対応する方位角における対流圏遅延は、順方向性を呈し、Δ<‐|k・σ|の場合、この条件を満たすΔに対応する方位角における対流圏遅延は、逆方向性を呈し、
‐|k・σ|≦Δ≦|k・σ|の場合、この条件を満たすΔに対応する方位角における対流圏遅延は、等方性を呈するステップ4と
を含む、ことを特徴とする非等方性を考慮した水平方向対流圏遅延分類方法。
【請求項2】
前記ステップ1において、レイトレーシング法により、気象パラメータを利用して対流圏遅延データを推定する、ことを特徴とする請求項1に記載の非等方性を考慮した水平方向対流圏遅延分類方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全地球衛星航法と測位技術の技術分野に属し、特に非等方性を考慮した水平方向対流圏遅延分類方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対流圏遅延とは、電磁波信号が中性大気圏を透過する時に速度と経路がいずれも変化する効果であり、全地球衛星航法システム(Global Navigation Satellite System、GNSS)の高精度航法・測位の重要な誤差源の一つである。高精度対流圏遅延の推定は、精密測位、GNSS気象学などに対して重要な意義を持つ。一般的には、基準ステーションの天頂方向の対流圏遅延を天頂対流圏遅延(Zenith Tropospheric Delay、ZTD)と呼び、その他の方向を対流圏傾斜遅延(Slant Path Delay、SPD)と呼ぶ。GNSSデータ処理において、SPDは、一般的にZTDにマッピング関数を乗じて得られる。ここで、対流圏遅延マッピング関数は、GNSS対流圏遅延推定精度を向上させる重要な要素であり、マッピング関数の役割は、ZTDと任意方向のSPDとを関連付けて、計算を簡略化する目的を達成することである。
【0003】
NMF(Niell Mapping Function)、GMF(Global Mapping Function)モデル及びVMF(Vienna Mapping Function)シリーズモデルは、現在使用範囲が最も広く、精度が最も高い対流圏マッピング関数モデルである。上記モデルのモデリングの根拠は、気象要素の方位角対称性に関する原則であり、即ちこのようなモデルは、すべて対流圏等方性に基づいて確立されたものである。しかしながら、大気が流れているため、水蒸気運動も高い時空変化特性が存在し、SPDは、方位角の違いによって変化し、即ち観測ステーション上空の異なる方向における対流圏遅延に差異がある。これで分かるように、マッピング関数を利用して対流圏遅延を推定する方案は、対流圏遅延の異なる水平方向における差異を無視している。
【0004】
高精度測位アルゴリズム処理において、一般的には水平勾配項を導入してマッピング関数が異なる方位角の対流圏遅延の差異を無視することによる誤差を修正する。しかし、水平勾配補正の実質は、簡単に大気が異方性であると考えられ、SPDを方位角域の一階フーリエ級数を展開して、高階項を無視し、そしてパラメータ推定法を利用して東西方向と南北方向における異方性成分を算出して、該当する水平勾配マッピング関数を乗じて異方性値を取得する。マッピング関数と水平勾配関数とを結び付けた方法を利用して対流圏遅延を推定すると、対流圏遅延の異なる水平方向における差異を考慮しているが、対流圏遅延の水平方向における実際の特徴と一致しない。
【0005】
これで分かるように、等方性と異方性は、いずれも対流圏遅延の水平方向における実際の特徴を正確に表すことができない。
【0006】
本発明の出現以前には、積分法(レイトレーシング法、Ray tracing)を利用して高精度な対流圏遅延を推定する方法も提案された。この方法は、NWP(数値天気予報、Numerical Weather Prediction)資料に基づいて、レイトレーシング法を採用してBJFSステーション2018年DOY196 UTC18(DOY196 UTC18とは、年中カレンダー196日目の協定世界時18時)時のある高度角におけるすべての方位角のSPDを推定し、このSPDとこの高度角における各方位角に対応するSPD平均値との差を計算し、ここで、方位角180~360°におけるSPD値が似ているが、方位角30~150°におけるSPD値に明らかな差異があり、異なる方位角に対応するSPD最大値と最小値との差は、最大15cmに達することができ、且つ高度角が低いほど、差分値が大きくなる。それによって分かるように、大気の流動性及び水蒸気運動の高い時空変化特性条件下で、対流圏遅延は、等方性ではなく、異方性でもなく、非等方性である。積分法を利用して高精度な対流圏遅延を推定することができるが、リアルタイム気象資料の取得が困難であるため、このような方法をリアルタイム測位に応用することは、容易ではない。
【0007】
補足解釈:年中カレンダー(DOY-Day Of Year)は、一年間にのみ使用される連続した日付を計算する方法であり、その年の1月1日から起算する日数である。
【0008】
協定世界時の英語は、universal time coordinatedである。
【0009】
名詞の解釈:
対流圏遅延の等方性とは、物体の物理、化学などの方面の性質が測定方向の違いによって変化しないことであり、均質性とも呼ばれる。
【0010】
対流圏遅延の異方性とは、物体の全部又は一部の物理、化学などの性質が測定方向の変化によって変化し、異なる方向に差異を呈することである。
【0011】
対流圏遅延の非等方性とは、ある高度角において、いくつかの方位角における対流圏遅延がほぼ等しいと考えられるが、別の方位角における対流圏遅延が比較的大きい差異があることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、非等方性を考慮した水平方向対流圏遅延分類方法を提案し、提案した非等方性値の方法によって、対流圏遅延の非等方性を定量的に表すとともに、各高度角における対流圏遅延の中央値誤差を結び付けて、IGG-3重み方案に基づいて分類閾値関数を確立することによって、対流圏遅延の水平方向における異なる性質(等方性、非等方性)の分類を実現することである。
【0013】
IGG-3重み方案は、1994年に楊元喜氏によって提案されたものであり、それは、データにおける有効な情報を十分に利用し、有害情報を除去し、データ処理に適用される、耐差異性が優れた重み方案である。
【0014】
IGG-3重み方案の主な内容は、以下のようにまとめることができる。
【0015】
合計i個の観測値があり、各観測値がいずれも重みを有するとすると、IGG-3重み方案によれば、は、一定の規則に従って等価重みとして表されてもよく、それによって差抵抗の目的を達成し、その計算式は、以下のとおりであり、
ここで、|u|は、正規化残差を代表し、|u|=|v/σ|であり、vは、補正数を代表し、σは、標準差を代表し、eとeは、調節係数であり、一般的にはe=1.0~2.5、e=3.0~8.0である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記の目的を実現するために、以下の技術案を採用する。
【0017】
非等方性を考慮した水平方向対流圏遅延分類方法であって、
分類すべき高度角範囲内の各高度角における異なる方位角の対流圏遅延データを推定するステップ1と、
ステップ1で得られた対流圏遅延データに基づいて、各高度角における異なる方位角の非等方性値Δを推定するステップであって、各高度角における各方位角にいずれも対応する非等方性値Δが存在するステップ2と、
各高度角におけるσを結び付けて、異なる高度角における閾値関数k・σを決定するステップであって、σは、Δが位置する高度角における対流圏遅延の中央値誤差であり、kは、IGG-3重み方案に基づいて構築された三段式スライドウィンドウ関数であるステップ3と、
各高度角における異なる方位角の非等方性値Δと閾値関数k・σの絶対値との間の大小関係を判断し、この大小関係に基づいて対流圏遅延の水平方向における異なる性質の分類を実現するステップ4とを含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、以下の利点を有する。
【0019】
上述したように、本発明は、非等方性を考慮した水平方向対流圏遅延分類方法を記述し、この水平方向対流圏遅延分類方法は、元の等方性及び異方性理論を打ち破り、対流圏遅延の水平方向における非等方性を考慮しており、非等方性値を定義することにより定量化分析を実現するとともに、IGG-3重み方案を導入して、対流圏遅延の等方性と非等方性という二つの異なる性質を区別するための分類閾値を確立することによって、本発明による対流圏遅延の水平方向分類を実現した。ここで、非等方性値は、本発明がこの対流圏遅延分類方法を確立する基礎であり、IGG-3重み方案に基づいて確立された分類閾値は、分類後の同じ性質の方位角間の連続性をよく保証した。本発明による対流圏遅延分類方法は、大気の実情により近い対流圏遅延補正モデルを確立するのに有利であり、対流圏遅延の推定精度を向上させ、対流圏遅延による高精度GNSS測位への影響を低減させた。本発明による分類方法は、GNSS高精度対流圏遅延推定、極端天気予報などに技術サポートを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施例における非等方性を考慮した水平方向対流圏遅延分類方法のフローチャートである。
図2】本発明の実施例における係数k値曲線図である。
図3】本発明の実施例における対流圏遅延の非等方性分類方法の概略図である。
図4】本発明の方法を利用してBAKEステーションの5°~40°の高度角、10°~360°の方位角における分類平面図である。
図5】本発明の実施例における非等方性分類方法に基づく水平勾配モデルの概略図である。
図6】RT-SPD、水平勾配補正を加えたMF-SPD及び本発明の分類方法に基づく水平勾配モデルによって推定されるSPDによって推定されるBAKEステーション2019 DOY001 UTC18時刻17.5°の高度角SPDの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、図面と実施例を結び付けながら、本出願の具体的な実施の形態をさらに詳細に記述する。
図1に示すように、本実施例は、非等方性を考慮した水平方向対流圏遅延分類方法を記述し、この非等方性を考慮した水平方向対流圏遅延分類方法は、以下のステップを含む。
【0022】
ステップ1.分類すべき高度角範囲内の各高度角における(0°~360°範囲内)異なる方位角の対流圏遅延データを推定し、高度角範囲及び高度角、方位角のサンプリング間隔などは、いずれも需要に応じて自ら決定することができる。
【0023】
本実施例では、例えばレイトレーシング法により、気象パラメータを利用して対流圏遅延データを推定する。
【0024】
ステップ2.ステップ1で得られた対流圏遅延データに基づいて、各高度角における異なる方位角の非等方性値Δを推定し、ここで、各高度角における各方位角には、いずれも対応するΔが存在する。
【0025】
非等方性値Δの決定方法は、ある高度角の各方位角のSPDと、この高度角における各方位角のSPDの平均値meanspdとの差を計算し、その差分値を非等方性値Δとして定義する。
【0026】
非等方性値Δは、非対称性によるものであり、その表現式は、式(1)に示すとおりであり、
Δ=SPD‐meanspd (1)
ここで、SPDは、対流圏遅延を表し、meanspdは、分類すべき高度角における各方位角のSPDの平均値であり、即ち大気の対称性による対流圏遅延の等方性値である。
【0027】
非等方性値Δは、対流圏遅延の非等方性を定量的に表すものである。そして、Lilliefors仮説検定により、ある高度角における非等方性値は、正規分布に適合している。
【0028】
非等方性値Δは、SPDの一部の特性を継承しており、例えばΔは、高度角の低減に伴って指数的に増加し、実験によれば、Δは、40°の高度角の時にその値が約0.1mm級であり、5°の高度角の時に最大dm級に達することができる。
【0029】
本実施例で定義された非等方性値Δが等方性部分を除去したため、非等方性値Δは、ある高度角におけるSPDの水平方向の変化特徴をより良く示すことができる。
【0030】
本発明を実現するために、非等方性値Δを定義することにより定量化分析を実現することに加えて、別の重要な問題は、どのように対流圏遅延の等方性と非等方性という二つの異なる性質を区別するための閾値を決定するかである。
【0031】
ステップ3.各高度角におけるσを結び付けて、異なる高度角における閾値関数k・σを決定し、ここで、σは、Δが位置する高度角における対流圏遅延の中央値誤差であり、kは、IGG-3重み方案に基づいて構築された三段式スライドウィンドウ関数である。
【0032】
本発明は、連続性を有する関数を閾値として使用することにより、連続性を有する関数形式の閾値は、データに現れる異常値を効果的に検出し、対流圏遅延が同じ性質を示す方位角の連続した範囲内において、ある方位角における対流圏遅延が他の性質を示す状況の発生を回避し、分類後の同じ性質を有する対流圏遅延が位置する方位角の間を連続的に保つことができ、大気の実情により近い対流圏遅延推定モデルを確立するのに有利である。
【0033】
そのため、本発明は、IGG-3重み方案の分類方法を用いて三段式スライドウィンドウ関数kを閾値の一部として構築する。IGG-3重み方案は、データ品質によってそれを有効な情報、利用可能な情報、有害情報の三種類に分け、有効な情報を十分に利用し、利用可能な情報の影響を制限し、有害情報を排除し、測定データ処理に適合する方案である。
【0034】
IGG-3重み方案に基づいて三段式スライドウィンドウ関数kを構築し、k関数は、IGG-III重み方案と対流圏遅延の非等方性分類モデルの需要とを結び付けて構築された関数であり、それは、同じ高度角の対流圏遅延の中央値誤差と乗算されて、共に非等方性分類モデルの閾値を構成し、その表現式は、式(2)に示すとおりであり、
【0035】
大量の繰り返し実験によれば、40°~5°の高度角範囲内において、|u|の値範囲は、約0.3~3.8であるため、本実施例において、第一の制限閾値e、第二の制限閾値eをそれぞれe=0.5、e=2.0に設定する。
【0036】
k関数は、分類後の同じ種別の対流圏遅延に対応する方位角の連続性を保証している。kの値範囲曲線図は、図2に示すとおりである。分類結果を対流圏遅延の実際の特徴に近づけるだけでなく、分類結果を利用してより正確な対流圏遅延推定モデルを確立するのを便利にするために、繰り返し実験によってkの最大値を0.8に設定し、最小値を0.7に設定し、残りの部分を、連続性を有する関数形式に設定することによって、有効な情報を十分に利用し、利用可能な情報を制限し、有害情報を排除することができ、それによって分類後の同じ性質の方位角間の連続性を実現する。
【0037】
ある決定された空間位置、時刻、高度角条件において、この高度角におけるSPDの中央値誤差σのk倍を閾値として、対流圏遅延の非等方性値を利用して定量的に表し、k対流圏遅延の非等方性を結び付けて分類する。
【0038】
ステップ4.各高度角における異なる方位角の非等方性値Δと閾値関数k・σの絶対値との間の大小関係を判断し、この大小関係に基づいて対流圏遅延の水平方向における異なる性質の分類を実現する。
【0039】
Δ>|k・σ|の場合、この条件を満たすΔに対応する方位角における対流圏遅延は、順方向非等方性を呈し、Δ<‐|k・σ|の場合、この条件を満たすΔに対応する方位角における対流圏遅延は、逆方向非等方性を呈する。
【0040】
‐|k・σ|≦Δ≦|k・σ|の場合、この条件を満たすΔに対応する方位角における対流圏遅延は、等方性を呈する。
【0041】
図3に示すように、縦軸は、異なる性質を代表し、横軸は、非等方性値を代表し、点線の灰色の縞模様の領域は、順方向性部分表し、実線の灰色の縞模様の領域は、逆方向性部分を表し、中心に位置する実線の黒の縞模様の領域は、等方性部分を表す。
【0042】
決定された時刻で、任意の観測ステーションについて、本発明に基づいてこの観測ステーションの異なる高度角における各方位角の対流圏遅延を分類することができ、大気の実際の特性により適合した、より正確な対流圏遅延推定モデルの確立に技術サポートを提供する。
【0043】
以下では、IGS(国際GNSSサービス、International GNSS Service)観測ステーションのうちのBAKEステーション2020年DOY158 UTC18(DOY158 UTC18とは、年中カレンダー158日目の協定世界時18時である)時刻、5°~40°の高度角、10°~360°の方位角のSPDを例示的なデータとして、上記の分類方法に従って分類する。
【0044】
図4は、本発明の分類方法及びステップに従って例示的なデータを分類した後の結果を提示する。ここで、極座標系は、0mを円の中心とし、その極軸は、SPD(単位がm)を表し、極角は、方位角を表す。
【0045】
図における異なる円形曲線は、異なる高度角のSPDを代表し、最内輪の曲線は、40°の高度角における各方位角のSPDであり、最外輪は、5°の高度角における各方位角のSPDである。各曲線の点線部分は、逆方向性のSPDを表し、丸印のついた点線部分は、順方向性のSPDを表し、実線は、等方性のSPDを表す。
【0046】
図4から分かるように、BAKEステーションの各高度角における150°の方位角と270°の方位角との間のSPDは、いずれも順方向性を呈するが、SPDは、330°と90°の方位角との間に逆方向性を呈し、残りの方位角においてSPDは、等方性を呈する。
【0047】
本発明による分類方法を応用してSPDの分類を完了した後、異なる性質(順方向性、等方性、逆方向性)のSPDに対してターゲットを絞ったモデリングを行うことができ、確立されるモデルは、等方性又は異方性に基づいて確立される簡単なモデルではなく、SPDの水平方向の非等方性を考慮するようになり、対流圏遅延の真の特徴により近く、より高い精度を有するSPDを推定するのに有利であり、さらにGNSS高精度測位、GNSS気象学などの分野で技術サポートを提供する。
【0048】
なお、本発明による分類方法の有効性を検証するために、本発明の分類方法に基づいて、水平勾配補正モデルを結び付けて、対流圏遅延の非等方性に基づく水平勾配補正方法を確立した。
【0049】
図5に示すように、対流圏遅延の非等方性に基づく水平勾配補正方法は、以下のステップを含む。
【0050】
ステップ1.各高度角における同じ方位角間の水平勾配補正を加えたMF-SPD(マッピング関数によって推定されるSPD)とRT-SPD(レイトレーシングによって推定されるSPD)との差を計算し、各高度角における両者間の最大差分値(以下、最大差分値という)が0よりも大きいかどうかを判断する。
【0051】
ここで、記述を容易にするために、RT-SPD方案を方案1とし、MF-SPD方案を方案2とする。
【0052】
方案2に使用されるマッピング関数は、VMF1(Vienna Mapping Function 1)である。
【0053】
ステップ2.方案1のデータを本発明による分類方法に従って分類し、ここで、順方向性のSPDが位置する方位角を順方向性部分と呼び、逆方向性のSPDが位置する方位角を逆方向性部分と呼ぶ。
【0054】
ステップ3.ある高度角における最大差分値が0よりも大きい場合、方案2の推定値が方案1の推定値よりも大きいことを説明し、即ち順方向性部分において、水平勾配は、MF-SPDとRT-SPDとの間の差異を増大させる。このような場合に、VMF1のみを使用して順方向性部分のSPDを推定し、残りの方位角において方案2に従ってSPDを推定する。
【0055】
ある高度角における最大差分値が0よりも小さい場合、方案2の推定値が方案1の推定値よりも小さいことを説明し、即ち逆方向性部分において、水平勾配は、MF-SPDとRT-SPDとの間の差異を増大させ、このような場合に、VMF1のみを使用して逆方向性部分のSPDを推定し、残りの方位角において方案2に従ってSPDを推定する。
【0056】
なお、異なる性質のSPDの境界をスムーズ化処理する。
【0057】
BAKEステーション2019 DOY001 UTC18時刻5~40°の高度角、10-360°の方位角のSPDを計算例として、方案3(本発明の分類方法に基づく水平勾配モデルによって推定されるSPD)を構築し、このモデルの実施ステップに言及された方案1、方案2を結び付けて、このモデルの有効性を検証し、このモデルの精度を評価し、方案1を参照とする。
【0058】
図6は、BAKEステーションが三つの方案によって推定するSPD(高度角17.5°)である。図において、極座標系の極軸は、SPD値(単位がm、極点において7.590m、最外層境界において7.620mである)を表し、極角は、方位角を表す。
【0059】
三つの異なる密度の点からグラフィックスに組み合わせるのは、方案1の結果であり、点の密度は、密から疎までそれぞれ逆方向性、等方性、順方向性を表し、斜線グラフィックスは、方案2の結果を表し、黒で塗りつぶされたグラフィックスは、方案3の結果を表す。
【0060】
高度角17.5°の場合、方案2と方案1との間の最大差分値が0よりも小さいため、逆方向性部分(10°~120°の方位角)は、VMF1のみを使用してSPDを推定し、残りの方位角において方案2に従ってSPDを推定する。
【0061】
図6から分かるように、方案2に比べて、方案3は、明らかに方案1に近く、その推定値がより正確である。
【0062】
定量化分析により、方案1を参照する場合、方案2のRMS(root meam square、観測値と真値との間の偏差を測るための二乗平均平方根誤差)は、6.1mmであり、方案3のRMSは、3.9mmであり、これで分かるように、本発明による分類方法に基づく方案3は、方案2に比べて精度が約36%向上している。
【0063】
この実験により、本発明による対流圏遅延の非等方性の分類方法が有効であることを証明した。
【0064】
本発明は、高精度で、大気の実情により近い対流圏遅延補正モデルの確立に新たなモデリング構想及び技術サポートを提供し、GNSS気象学、GNSS高精度測位などの方面において重要な研究意義と応用価値がある。
【0065】
上述したのは本発明の好適な実施形態を示したものに過ぎず、指摘すべきことは、本技術分野の当業者にとって、本発明の技術原理から逸脱しない限り、さらに幾つかの改善及び置換を行うことができることであり、これらの改善及び置換も本発明の保護範囲に入っていると見なされるべきである。
【要約】
本発明は、全地球衛星航法と測位技術分野に属し、具体的には非等方性を考慮した水平方向対流圏遅延分類方法を開示する。この方法は、分類すべき高度角範囲内の各高度角における異なる方位角の対流圏遅延データを推定するステップと、対流圏遅延データに基づいて各高度角における異なる方位角の非等方性値を推定するステップと、各高度角における対流圏遅延の中央値誤差を結び付けて、IGG-3重み方案に基づいて異なる高度角における分類閾値を構築するステップと、非等方性値と分類閾値の絶対値との間の大小関係を判断することによって対流圏遅延の水平方向分類を実現するステップとを含む。本発明は、対流圏遅延の水平方向における非等方性を考慮しており、非等方性値を定義することにより定量化分析を実現するとともに、IGG-3重み方案を導入して分類閾値を確立するため、対流圏遅延の水平方向分類を良好に実現した。
【選択図】図1
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図6