(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】可動部分を用いずに、動眼視野の周りに光学ビームを走査すること
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20240730BHJP
G01S 17/42 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G01S17/42
(21)【出願番号】P 2023065268
(22)【出願日】2023-04-12
(62)【分割の表示】P 2020544796の分割
【原出願日】2019-02-27
【審査請求日】2023-04-26
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ルマラ、イサ エス.
(72)【発明者】
【氏名】ルーサー、グレゴリー
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】特許第7264907(JP,B2)
【文献】特表2000-506676(JP,A)
【文献】特開2016-219258(JP,A)
【文献】国際公開第2016/049502(WO,A1)
【文献】特開2015-163912(JP,A)
【文献】特開2013-072878(JP,A)
【文献】米国特許第05283796(US,A)
【文献】中国特許出願公開第103594918(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51,
G01S 17/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学装置であって:
ある周波数範囲内において変化する周波数を有する光を発生する物理的に固定されたコヒーレント光源と;
前記コヒーレント光源から前記光を受ける一方の表面と、前記光の少なくとも一部が出る別の表面とを有する物理的に固定されたらせん状位相プレート共振器(SPPR)であって、前記光が前記光の前記周波数に依存して前記別の表面の異なる領域から出る、物理的に固定されたらせん状位相プレート共振器と;
前記別の表面を出るときの前記光の経路に対して約90度の角度で前記別の表面から出る前記光を反射し、前記別の表面の隣に搭載された固定反射器と;
物体から反射された後に戻る前記光の少なくとも一部の検出に対応するデータを生成する複数の光検出器と;
前記データに基づき前記光学装置に対する前記物体の距離を特定するプロセッサであって、前記データは前記プロセッサにとって利用可能である、プロセッサと;
を備え、
前記光が反射されることになる前記固定反射器の上における対応する位置は、前記光の周波数に依存して変化し、前記光は、前記光の前記周波数を変化させることによって、物理的に移動する部品を持たない前記光学装置によって平面内において360度の回りに走査される、
光学装置。
【請求項2】
前記SPPRの中心軸は、前記別の表面に略垂直であり、特定領域は、前記中心軸の周りの円形領域内にあり、
前記固定反射器は、前記中心軸に一致する円錐軸を持つ360度の円錐形反射面を有する、
請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
コマンド信号の供給源を更に備え、前記コマンド信号の前記供給源は前記コヒーレント光源に結合され、前記供給源では、前記コマンド信号は、物理的に固定された前記コヒーレント光源の異なる周波数を制御し、前記光が前記別の表面を出る前記領域が、前記SPPRの中心軸に垂直な方向にある、
請求項1に記載の光学装置。
【請求項4】
物理的に移動する部品を使用しない光学装置を用いて、平面内において異なる進行方位に光ビームを向かわせる方法であって、
物理的に固定されたらせん状位相プレート共振器の一方の表面に光源からのコヒーレント光を提供するステップであって、前記光源は、光の周波数の制御を提供し、物理的に固定された前記らせん状位相プレート共振器は、別の表面を有し、前記コヒーレント光の少なくとも一部が前記別の表面から出射し、前記コヒーレント光は、前記コヒーレント光の周波数に依存して前記別の表面の中心軸の周りの異なる領域から出射する、コヒーレント光を提供するステップと;
前記別の表面の隣りに搭載された固定反射器によって、出射する前記コヒーレント光を向き直すステップであって、前記固定反射器の表面は、前記別の表面を出るとき前記コヒーレント光の経路に対して約90度の角度で、出射する前記コヒーレント光を向き直し、前記コヒーレント光の前記周波数は、特定領域と、前記固定反射器の上における対応する位置とを特定し、前記コヒーレント光が前記特定領域から前記別の表面を出ると共に前記コヒーレント光が前記位置において反射されることになり、提供された前記コヒーレント光は、周波数範囲にわたって周波数において異なり、物理的に動く部品を持たない前記光学装置が平面内において前記コヒーレント光を走査することを生じさせる、出射する前記コヒーレント光を向き直すステップと、
物体から反射された後に戻る前記コヒーレント光の少なくとも一部の検出に対応する複数の光検出器によってデータを生成するステップと;
プロセッサによって、前記データに基づき、前記光学装置に対する前記物体の距離を特定するステップであって、前記データは前記プロセッサにとって利用可能である、距離を特定するステップと;
前記光源に結合されたコマンド信号を生成するステップであって、前記コマンド信号は、前記コヒーレント光の異なるそれぞれの周波数に対応する異なる値を持ち、前記コヒーレント光が前記別の表面を出る前記領域が前記中心軸の周りの360度内にあり、円錐形反射面によって反射されるときの前記コヒーレント光は、実質的に1つの平面内にあると共に前記中心軸に垂直な方向にある、コマンド信号を生成するステップと、
を備える、
方法。
【請求項5】
前記中心軸が、前記別の表面に対して略垂直であり、前記特定領域が、前記中心軸の周りにおいて360度の円形領域内にある、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
出射する前記コヒーレント光の前記向き直しは、前記中心軸に一致した円錐軸を持つ360度の円錐形反射面を持つ固定反射器によって達成される、
請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、走査を達成するためにいかなる構成部品の物理的な動き無しに、実質的な動眼視野の周りの光ビーム走査に関する。
【背景技術】
【0002】
光ビームを動眼視野(field of regard)の周りに掃引することが要求される様々な用途がある。そのような一例は、光検出及び測距(LIDAR、light detection and ranging)であって、多くの用途、例えば、自動運転(self-driving)車、航空宇宙車両を使用して地形の地図を作ること、静止物体をマッピングすること、様々なコンピュータ用途において使用するための部屋及び他の物体の3Dモデルを構築すること、において使用され、該様々なコンピュータ用途は、例えばゲーム及びソーシャルメディア又は通信用途等を含む。実際、顕微鏡画像化スケールにおいてさえ、安定堅固な、高速で広角の走査技術は、大きな有用性を有する。LIDARシステムの光学ハードウェアは、典型的には、光源、光ビームの走査を引き起こすべき要素、及び光反射を検出するための一又は複数の検出器から成る。多くの用途においては、自律した無人航空宇宙機、有人航空宇宙機、及び自動運転車のためといったものに、全0~360度までの視野(FOV、field of view)のまわりにビームを走査することに関心がある。LIDARシステム用にといった光ビームを走査するために、技術は、典型的には、可動な機械部品を使用してきた。多くの場合、光ビームの走査部品がミラーであって、該ミラーが、ミラーの向きに向けられた固定光ビームを向け直すために回転される、或いは、光ビーム源がジンバル上に取り付けられ、ジンバルが回転される。電気機械部品、例えば圧電素子に取り付けられたミラーは、それが向く方向を変えるように制御されることができる。該変化を生成する力を提供する機械的な及び/又は電気的な部品にかかわらず、ミラー又は光源自体の位置の物理的変化が利用される。該光ビーム分配(disburse)システムに可動な部品を使用せずに、単一のLIDARシステムにおいて全0~360度の投影走査範囲を達成することは、困難だがやり甲斐がある。また、回転速度は、これらの機構によって制限され、その制限は、寿命にわたって非常に多数のサイクルを実行するために予期される部品への通常の摩耗考慮だけでない。可動部品を使用せずに、実質的なFOVの周りに光ビームを走査できる光スキャナへのニーズがあり、特に高い走査速度で動作される場合にある
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、このニーズを満たすことにある。
【0004】
例示的な光学装置は、コマンド信号によって制御される周波数を有するコヒーレント光源を含む。らせん状位相プレート共振器の一方の表面は、光を受け、該光は、光の周波数に依存して別の表面の異なる領域から出射する。固定反射器が、該出射光の経路に対して約90度の角度で該出射光を反射するために、該別の表面に隣り合って搭載される。該コマンド信号の発信源は、該コマンド信号の異なる値をコヒーレント光源に送って該光の対応する周波数を生成し、該周波数は、光が該別の表面を出る特定の領域と、これ故固定反射器上における該光が反射されるであろう位置とを特定する。該光の周波数を変えることによって、該光は、物理的に動く部品を持たない光学装置によってある面内に出力される。
【0005】
別の例示的な実施形態は、可動な部品を使用せずに、実質的なFOVの周りに光ビームを走査するための方法を含む。
【0006】
本発明の例示的な実施の特徴は、明細書、クレーム、及び添付図面から明らかになるであろう。図面には、以下のものがる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態を組み込む例示的なLIDARのブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態の斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態の側面図である。
【
図4】
図4は、ある方向へ光ビームを向け直すことを示す、本発明の一実施形態の側面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示すような光の180°反対に光ビームを向け直すことを示す、本発明の一実施形態の側面図である。
【
図6】
図6は、LIDERシステムにおいて利用された本発明の実施形態の上面図である。
【
図7】
図7は、光パルス時間の持続時間に対する光の角度広がりを示すグラフである。
【
図8】
図8は、光パルス時間の持続時間に対する光のスペクトル幅を示すグラフである。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態を組み込む例示的なLIDARを制御し及び処理するための例示的なシステムのブロック図である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態に従った光ビームを走査することを制御するための例示的なステップのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態の態様は、光ビームの走査を引き起こすために可動な部品を使用することに関連する不利益の認識にあり、またらせん状位相プレート共振器(SPPR、single phase plate resonator)を通過して伝送された光ビームの周波数を制御することによって、該透過光が、物理的に可動な部品を使用することなく、固定された円錐形反射器の助けを借りて、実質的な(substantial)動眼視野(field of regard)、例えば0~360°にわたって走査されることができるという認識にある。このような実施形態のための1つの例示的な用途は、LIDARシステムにおけるものである。本発明の実施形態は、LIDARシステムにおける使用の文脈で説明されるけれども、当業者には、以下のことが明らかになるだろう:他の使用は、物理的に移動可能ないかなる部品を使用することなくFOV周りに光ビームを制御可能に走査することが望まれるところに存在すること。
【0009】
図1~
図5を参照すると、例示的なLIDAR100は、本発明の一実施形態を包含する。DFB(分布帰還)ダイオードレーザ若しくはDFBファイバレーザ、又は外部共振器チューニング可能ダイオードレーザといった周波数調整可能なレーザ105は、シングルモードファイバ107(又はシングルモード導波路)によってアイソレータ110に結合された出力を有していてもよく、アイソレータ110は、レーザへの戻り反射を防止する。ファイバ107を通して結合されるものとしてのレーザ105の出力は、好ましい実施形態において、実質的に一様な位相面を有する典型的に円形状のビーム形状を有するビームを有し、該実施形態は、次いで、光学導波器120に結合され、光学導波器120は、ビームの回転を達成するために物理的に移動されなければならない部品を使用せずに、平面内において0~360度まで制御可能に回転されることができる出力光ビーム125を提供する。物体から反射する光ビーム125の一部分である反射された光130は、光検出器135によって検出される。コントローラ140は、レーザ105に結合されたものとしての制御線145上に信号を供給し、レーザ105では、該信号がレーザ105の出力周波数を制御する。さらに説明されるように、出力ビーム125の掃引は、レーザ105の周波数の関数として制御される。光検出器135からのデータは、コントローラ140に結合される。デバイスの初期設定/較正においては、このデータは、以下の目的のために使用されることができる:その目的は、レーザ105の周波数を制御するために必要な信号値に対する出力光ビーム125の方向を較正して、対応する360度の進行方位に出力ビーム125があるようにさせることである。例示的なセットアップ較正は、信号値に対する対応するビーム進行方位の格納されるテーブル(表)を生成することを含み得るものであって、対応するビーム進行方位においては、ビーム進行方位が、反射光の方向を特定する能力がある光学検出器によって特定される。例示的なユニフォームな(一定の)環境が、較正中にLIDARを取り囲んでいるようにしてもよく、例えば、LIDARを所与の半径の円筒の内側に配置して整合する光反射を達成するといったようにである。較正に従ったLIDAR100の動作では、コントローラが、検出された反射光情報を格納しまた加工して異なる進行方位において物体に対する測距/距離を特定するために使用されることができる。
【0010】
例示的な実施形態では、光学導波器120は、らせん状位相プレート共振器(SPPR)160を含む。SPPR160の一方の面は、中心軸175の周りに渦巻き状になるらせん表面165を含む。円錐形状のミラーといった傾斜したミラー又は反射器170が、SPPRのらせん表面165の上部の上方に取り付けられている。円錐ミラーの軸は、軸175に合致している。光学ライン107からの結合されたものとしてのレーザ光180は、SPPR160の他方の面に入射し、SPPR160を通過し、該光は、SPPRのらせん表面165の領域185から出射し、概ね平面の周りにおける所望の視野にミラー170によって反射される。これらの表面は、部分的な反射であるので、光の一部は、該表面間に形成されたキャビティを、放出される前に数回通過する。光線は、角度に応じて異なる遅延を経験するので、各通過路上において放射されるビームの波面は、らせん状位相構造を有する。数回の通過を取ったビームは、大きな位相シフトを有する。放射場は、これらのビームの干渉であり、該干渉は、花弁(petals)のパターン又は単一の花弁/ビームを生成する。この例示的な実施形態では、該平面は、軸175に垂直である。
図4及び
図5の破線は、らせん表面165の2つの代表的領域185を示し、2つの代表的領域185から異なるビームが送出される。これらのビームは、レーザ105の2つの異なる周波数に対応しており、該2つの異なる周波数は、
図4におけるビーム125を生成し、ビーム125は、
図5におけるビーム125に角度180度で反対である。らせん表面165から出現するものしてのビームは、軸125に実質的に平行であり、軸125の反対する側上(on opposing sides)にあり、その後に、円錐状ミラー170によって反射されて、SPPR160の底面に平行な平面内に実質的にある反対方向に向けられたそれぞれのビームを形成する。
【0011】
ミラーの表面は、平坦な又は湾曲していることもあり得るものであり、レーザ光ビームの広がりを生じさせるために粗くされていることもあり得る。ミラー自体は、SPPRの軸に平行な方向に、その方向にビームが拡大されるように、セグメントに分けられてもよい。また、ミラーが、有限個の角度が指定可能(addressable)であるようにセグメントに分けられてもよい。反射面の曲率は、必要に応じて、ビームの焦点を合わせるために使用されることができる。ミラーは、また、回折格子構造を用いて光を分散させるような方法で製造されることもできる:つまり、このタイプの回折格子を持ち複数の狭い線幅の異なる波長の光源を用いると、複数の方向にビームが走査することを可能にする。「線幅」は、SPPRに入るレーザ光源の周波数幅を指す。線幅を持つ2以上の中心波長があると、該デバイスから出現する追加ビームが存在するであろう。ミラー上に格子構造がある場合には、光をさらに複数の方向に分散できるであろう。
【0012】
ライン145上の信号の値を介してレーザ周波数をチューニングすると、SPPRデバイスは、光を放射する領域を回転させ、また動眼視野(FOR:field of regard)において0~360度の光ビームプロファイルを、固定反射面/ミラーの助けを借りて、走査することを可能にする。DFBダイオードレーザの周波数チューニングをすることは、レーザダイオードに入る電流を変化させる、又はレーザダイオードの温度を変化させる、ことによって実行されることができる。例えば、数ミリアンペア(mA)による電流の変化により、ダイオードDFBレーザの周波数を数GHzチューニングすることができ、0.1ケルビンの温度変化により、レーザ周波数を数GHzだけチューニングすることができる。レーザは、直接に周波数調整(チューニング)でき、又は音響光学装置若しくは電気光学デバイスは、SPPRに入るレーザビームの周波数を調整(チューニング)するために使用されることができる。音響光学デバイスを用いてレーザ周波数を調整することは、典型的には、レーザビームの周波数をシフトするためにレーザの前に音響光学周波数シフタを置くことを伴うであろう。コントローラは、音響光学周波数シフタに信号を提供するであろう。
【0013】
この実施形態では、光が、ある部品に注入される。この部品は、部品の出力上において光角運動量の多重状態の干渉が部品の光軸の周りに分布する1又は複数の花弁のパターンを生成するように、入力光に光角運動量の多重状態を導入する。出力面を出る光ビームの角度配向は、光源の入力周波数に依存する。そのような部品の1つは、例示のらせん状位相プレート共振器であって、該らせん状位相プレート共振器では、らせん状位相プレート共振器の一方の表面が光を受け、出射光が、反対の(opposing)表面から来る。走査レートは、光源波長が変調され/変化されることができるレートによって制御されるので、走査レートが、高速であることができる。一実施形態では、レーザは、角度において360度の掃引に対応する波長範囲にわたって、MHz速度よりも大きい(1マイクロ秒よりも速い)速度で走査されることができる。
【0014】
図6は、LIDERシステムに利用される本発明の一実施形態の上面図である。ビーム125からの戻り光を集めるために、光学検出器190~197は、まとめると全0~360度の視野が覆われるような方法で方向付け(oriented)される。例えば、光学検出器190、191及び192は、それぞれ、FOV200、201及び202内の反射光を検出することができ、ここで、ミラー170から短い距離の後においてFOV200及び201は、FOV201及び202と同様に重なる。2つの隣り合う光学検出器の個々が同じ反射光を感知する領域では、該2つの光学検出器からの結果は、共に、反射光の進行方位(ヘッディング)/方向を特定するために使用されてもよい。使用できるいくつかのタイプの測距データがある。一例は、変調振幅であって、変調振幅では、ダイオードレーザが、光パルスを放射するように振幅変調される。変調振幅は、SPPRを介して対象物に向かって行き、反射されて検出器に戻る。検出器は、戻り振幅パルス信号の立ち上がりエッジを検出するように構成されることができる。送信振幅と受信振幅との間のタイミングから、通達距離が特定され、メモリに格納される。
【0015】
フィードバック同期スキームは、レーザ周波数を安定化すると共に光学システムの動作中におけるレーザ強度、周波数、及び位相におけるジッタを回避するのために、コントローラ140によって採用されるようにしてもよい。用途に依存して、レーザ光源は、振動のある環境において操作されることができる。斑点(スペックル、speckle)の発生を避けるために、空間的に非コヒーレント(incoherent)光が対象物のところにおいて好ましい用途では、ミラーの周囲に透明なディフューザを配置することができ、又はミラーの粗さが調整されることができる。
【0016】
図7は、レーザ光出力のパルス時間の持続時間に対する光の角度広がりを示すグラフ230である。角度広がりは、SPPRの出力面上における方位角の範囲の周りに広がるレーザビームとして定義される。換言すれば、ビーム125の、該ビームが円錐ミラーに当たる前のビーム幅が、ビーム角度広がりである。
図4から
図6におけるビームは、比較的小さな角度の広がりを持つビームを示している。例えば、ビームがSPPRから出現するので、ビームは、入力レーザパラメータ及びSPPRパラメータに依存して、幅広又は幅狭になり得る。小さな角度広がりは、以下のことを意味する:SPPRから出現するビームが狭く、また小さな範囲の角度をカバーすること。大きな角度広がりは、以下のことを意味する:ビームが広い範囲の角度にわたって出て行き、潜在的には360度の角度の全範囲をカバーし得ること。簡単に上述したように、回折格子構造が円錐ミラー上に作製される場合、ビームを以下のようにさせる得る:中程度の角度広がりを持つビームのための狭い範囲の角度にわたって光ビームの焦点を再び合わせる;又は、小さな角度広がりを持つビームのために発散ビームを生成する。理解されるように、ヘルツ単位における角度の広がりは、次第に長くなるパルス時間と共に減少する。
【0017】
図8は、レーザ光パルス時間の持続時間を示すグラフ240に対する変換制限された光のスペクトル幅である。理解されるように、ヘルツの単位におけるスペクトル幅は、パルス時間が次第に長くなるにつれて減少する。
【0018】
図9は、コントローラ140の例示的な実施形態を示すブロック図である。マイクロプロセッサ260は、読出し専用メモリ265、ランダムアクセスメモリ270、及びディスクドライブといった不揮発性メモリ記憶装置275に格納されたデータによってサポートされている。レーザの入力/出力インターフェース280は、マイクロプロセッサ260とレーザ105との間の通信をサポートする。光検出器の入力/出力インターフェース285は、マイクロプロセッサ260と光検出器125との間の通信をサポートする。ユーザ入力/出力インターフェース290は、マイクロプロセッサ260と人間のユーザとの間の通信をサポートする。インターフェース290は、キーボード、マウス、データ送信ストリームなどによったものでマイクロプロセッサ260への入力をサポートしてもよく、スクリーン上に表示されたもの又はプリンタ上に印刷されたものといった視覚画像情報、出力データの形成でマイクロプロセッサ260からの出力をサポートしてもよい。知られているように、マイクロプロセッサ260、及びマイクロプロセッサのサポート環境のコンポーネントは、既知のオペレーティングシステムのうちの1つの制御下において動作してもよい。本発明の一実施形態に従っておりオペレーティングシステムに従って実行されるアプリケーションプログラムは、マイクロプロセッサ260を利用することができ、レーザI/O280によってレーザ105に送信される一連のコマンド信号を生成する共に、進行方位(ヘッディング)の0°に関連付けられた最初の周波数から、進行方位360°に関連付けられた最終の周波数へ、レーザ周波数の変化を逐次的に制御する。理解されるように、最初の周波数と最後の周波数との間の異なる中間の周波数は、0°から360°の間の様々な角度の進行方位に対応するであろう。ビームの異なる進行方位間の制御の細かさ(granularity)に依存して、格納されたデータテーブル(初期の較正の一部として生成されたといったもの)が、格納済み進行方位に関連付けられた各値を用いてレーザ周波数を制御するために対応コマンド信号値を生成するように、利用されることができる。ビーム進行方位は、対応するコマンド信号に基づき知られるであろうから、以下のことが予期される:既知の進行方位からの対応する光ビーム反射が光検出器I/O285から受信されること。予想された光ビーム反射の進行方位を知ることは、以下の点において助けになることができる:反射を生じさせる物体の測距情報を特定するために、光検出器190~197からの異なる出力データのうちのどれを処理すべきかを解析する点。
【0019】
図10は、本発明の一実施形態に従う光ビームの走査を制御するための例示的なステップのフロー図である。ステップ300では、レーザの最初の及び最終の周波数が特定され、これらの周波数は、0°及び360°のそれぞれの軸方向ビームを生成することになる。軸方向ビームは、軸175の回りのSPPRらせん表面165を出るときのレーザ光ビームの位置を指す。レーザの周波数に依存して、レーザ光ビームは、軸175に原点を持つ円の外周上の位置においてSPPR螺旋表面165から出るであろう。ステップ305では、コマンド信号が決定されると共に格納されて、該コマンド信号は、レーザに最初の及び最終の周波数を生成させる。これらのコマンド信号は、軸175の周りのレーザビームの360°走査を引き起こすように生成されることができる信号値の範囲を規定する。
【0020】
ステップ310では、中間角度のビーム進行方位を、対応するコマンド信号にマッピングすると共に該コマンド信号を格納する。全てのレーザビームの走査速度の精度(granularity)に依存して、かなりの数のそのような中間の進行方位及び対応する信号、例えば1°刻みに対応する360個の中間の進行方位及び対応する信号が存在するであろう。前述のステップは、対応するレーザ周波数を生じさせる信号値が特定される較正プロセスの一部とみなされることができ、順に、SPPRを介するレーザの出力が軸175を中心として360°の掃引(スイープ)を行うという結果になる。望まれる場合には、以下のことが明らかである:コマンド信号が、レーザ出力を実質的に均一に約360°回転させるために発生されることができ、或いはレーザの出力が不連続な様式、例えば0°、90°、45°、180°、135°などにおいて回転させ得ること、或いはレーザの出力を360°より小さい範囲において回転され得ること。コントローラは、以下のような方法で、光源の周波数を制御するために、戻り信号から得られたデータを使用するように構成され得る:関心のある対象物を走査器(スキャナ)が指し示すような方法;走査速度(スキャン速度)を変化させるような方法;又は、走査プロファイルを最適化するような方法。
【0021】
ステップ315では、一連のセットのコマンド信号が、SPPRの軸に平行にSPPRの付近でおおよそ360°の掃引をレーザビームに引き起こすために、生成されまた格納される。ステップ320では、レーザビームの走査を1つの平面の周りに達成するために、SPPRからの出力ビームは、0°から360°までの水平面内で掃引するようにレーザビームを向け直す固定された円錐形反射器に向けて向き付けられる。円錐形反射器は、レーザビームが、SPPR160の底面平面に実質的に平行な水平面の周りに向け直されるように、例えば、軸175から外向きに広がる表面をほぼ45°に形成する円錐形の表面を有する円錐形ミラーであってもよい。以下のことが理解されよう:「水平面」への言及は、単に便宜上になされるものであり、レーザビームの実際の掃引面は、任意の所望の向きであってもよい。
【0022】
工程325で示されるように、LIDERの適用の場合、反射レーザ光に基づく光学測距データが、検出され、格納され、また掃引中に各レーザ方位に対応して処理されて、それぞれの進行方位における物体の存在/位置を特定する。本発明の実施形態は、LIDER用途での使用に適合されるように説明されてきたけれども、以下のことが当業者には明らかであろう:レーザビーム自体の回転又は回転反射器といった物理的に移動する構成要素を利用することなく、動眼視野の周りにレーザビームを制御可能に走査することからの利益を様々な他の用途及び使用が得ることができること。
【0023】
本発明の例示的な実施は、ここで詳細に描かれ説明されてきたけれども、種々の修正、追加、置換等を本発明の精神を逸脱することなく行うことができることは、当業者には明らかであろう。例えば、デバイスは、多数の方法によって複数のレーザビームを生成するように設計されることができる。一つの方法は、光の波長におけるフレキシビリティを用いることによるものであり、もう一つの方法は、SPPRデバイスを再設計することによるものである。屈折率が均一なデバイスの場合、SPPRデバイスが生成するビームの数は、式β=2*n*△h/λによって特定され、ここで、βはビームの数であり、nはデバイスの屈折率であり、△hはステップ高さであり、λはレーザ光の波長である。これらのパラメータの任意の1つを変更することによって、ビームの数を変更できる。
図4から
図6は、SPPRから出てくる1つだけのビーム、すなわちβ=1であるように、上の式におけるパラメータを示している。複数の狭線幅の波長源が、複数の出力ビームを生成するために使用されることもできる。
【0024】
本発明の範囲は、以下の請求の範囲において規定される。