(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】超高感度アナライト測定方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/68 20180101AFI20240730BHJP
C12Q 1/6806 20180101ALI20240730BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20240730BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240730BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C12Q1/68 ZNA
C12Q1/6806 Z
C12M1/34 Z
C12N15/11 Z
G01N33/53 M
G01N33/53 N
(21)【出願番号】P 2023549613
(86)(22)【出願日】2023-04-06
(86)【国際出願番号】 JP2023014274
(87)【国際公開番号】W WO2023204045
(87)【国際公開日】2023-10-26
【審査請求日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2022069657
(32)【優先日】2022-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 茜
(72)【発明者】
【氏名】関野 哲男
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/022682(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/037282(WO,A1)
【文献】OMORI, A. et al.,Feasibility of using PALSAR technology as a signal amplifier for antibody bridging assay,Bioanalysis,2022年10月17日,Vol.14, No.17,p.1153-1163
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00-3/00
C12N 15/00-15/90
C12M 1/00-3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580 (JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS (STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む試料中のアナライトを検出する方法であって、前記アナライトは抗体又は核酸である方法:
(i)第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブとアシストプローブとが互いにハイブリダイズした凝集体(以下、シグナルプローブポリマーと呼ぶことがある。)を提供する工程;
(ii)前記(i)工程とは別の液相中で捕捉プローブに、アナライトを含む前記試料を接触させて、捕捉プローブ-アナライト複合体を形成する工程;
(iii)前記捕捉プローブ-アナライト複合体に前記シグナルプローブポリマーを接触させて、捕捉プローブ-アナライト-シグナルプローブポリマー複合体を形成する工程;及び
(iv)捕捉プローブ-アナライト-シグナルプローブポリマー複合体を検出する工程;
ここで、自己凝集可能な一対のプローブは、5’末端側から順に少なくとも核酸領域X、核酸領域Y、及び核酸領域Zを含む第1のオリゴヌクレオチドと、5’末端側から順に少なくとも前記核酸領域Xに相補的な核酸領域X’、前記核酸領域Yに相補的な核酸領域Y’、及び前記核酸領域Zに相補的な核酸領域Z’を含む第2のオリゴヌクレオチドからなり、
捕捉プローブ及びアシストプローブは、核酸を含み、かつ、前記アナライトが抗体の場合には当該抗体が結合するエピトープを有し、前記アナライトが核酸の場合には当該核酸の配列の一部と相補的な配列を有し、
アシストプローブは、その5'末端又は3'末端のヌクレオチドに隣接するタグ配列であって、自己凝集可能な一対のプローブの一方の配列と部分的に相補的なタグ配列を有する。
【請求項2】
以下の工程を含む試料中のアナライトを検出する方法であって、前記アナライトは抗体又は核酸である方法:
(i)第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブとアシストプローブとが互いにハイブリダイズした凝集体を提供する工程;
(ii)前記凝集体に、アナライトを含む試料と捕捉プローブを接触させて、捕捉プローブ、アナライト、アシストプローブ、並びに複数の第1及び第2のオリゴヌクレオチドの複合体を形成する工程、ここで、捕捉プローブは、アナライトと接触する前に固相に固定されている、又は、前記複合体の形成途中又は形成後に固相に結合させる;
(iii)捕捉プローブに結合した固相から液相を除去し、又は当該固相を洗浄することにより、複合体形成に関与していない第1及び第2のオリゴヌクレオチドを除去する工程;
(iv)第1又は第2のオリゴヌクレオチドに含まれる標識を検出する工程;
ここで、自己凝集可能な一対のプローブは、5’末端側から順に少なくとも核酸領域X、核酸領域Y、及び核酸領域Zを含む第1のオリゴヌクレオチドと、5’末端側から順に少なくとも前記核酸領域Xに相補的な核酸領域X’、前記核酸領域Yに相補的な核酸領域Y’、及び前記核酸領域Zに相補的な核酸領域Z’を含む第2のオリゴヌクレオチドからなり、
捕捉プローブ及びアシストプローブは、核酸を含み、かつ、前記アナライトが抗体の場合には当該抗体が結合するエピトープを有し、前記アナライトが核酸の場合には当該核酸の配列の一部と相補的な配列を有し、
アシストプローブは、その5'末端又は3'末端のヌクレオチドに隣接するタグ配列であって、自己凝集可能な一対のプローブの一方の配列と部分的に相補的なタグ配列を有する。
【請求項3】
以下の工程を含む試料中のアナライトを定量する方法であって、前記アナライトは抗体又は核酸である方法:
(i)第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブとアシストプローブとが互いにハイブリダイズした凝集体を提供する工程;
(ii)前記凝集体に、前記試料と捕捉プローブを接触させる工程、ここで、捕捉プローブは、前記の接触の前に固相に固定されている、又は、前記の接触の後に固相に結合させる;
(iii)固相から液相を除去し、又は当該固相を洗浄する工程; ここで、当該固相は捕捉プローブに結合している;及び
(iv)第1又は第2のオリゴヌクレオチドに含まれる標識からのシグナルを定量する工程;
ここで、自己凝集可能な一対のプローブは、5’末端側から順に少なくとも核酸領域X、核酸領域Y、及び核酸領域Zを含む第1のオリゴヌクレオチドと、5’末端側から順に少なくとも前記核酸領域Xに相補的な核酸領域X’、前記核酸領域Yに相補的な核酸領域Y’、及び前記核酸領域Zに相補的な核酸領域Z’を含む第2のオリゴヌクレオチドからなり、
捕捉プローブ及びアシストプローブは、核酸を含み、かつ、前記アナライトが抗体の場合には当該抗体が結合するエピトープを有し、前記アナライトが核酸の場合には当該核酸の配列の一部と相補的な配列を有し、
アシストプローブは、その5'末端又は3'末端のヌクレオチドに隣接するタグ配列であって、自己凝集可能な一対のプローブの一方の配列と部分的に相補的なタグ配列を有する。
【請求項4】
前記捕捉プローブ-アナライト複合体の形成に関与せずに、遊離の状態で存在するアナライトを分離し、除去する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
捕捉プローブが、アナライトと接触する前に固相に固定されている、請求項1~4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
前記第1及び第2のオリゴヌクレオチドはルテニウム錯体、ペルオキシダーゼ、蛍光色素、ビオチン、又はジゴキシゲニンにより標識されている、請求項1~4の何れかに記載の方法。
【請求項7】
試料が生体試料由来である、請求項1~4の何れかに記載の方法。
【請求項8】
第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブとアシストプローブを接触させることにより形成した、当該第1及び第2のオリゴヌクレオチド並びに当該アシストプローブからなる凝集体
であって、試料中のアナライトを検出する方法又は試料中のアナライトを定量する方法に用いるための凝集体:
ここで、自己凝集可能な一対のプローブは、5’末端側から順に少なくとも核酸領域X、核酸領域Y、及び核酸領域Zを含む第1のオリゴヌクレオチドと、5’末端側から順に少なくとも前記核酸領域Xに相補的な核酸領域X’、前記核酸領域Yに相補的な核酸領域Y’、及び前記核酸領域Zに相補的な核酸領域Z’を含む第2のオリゴヌクレオチドからなり、
アシストプローブは、核酸を含み、かつ、前記アナライトが抗体の場合には当該抗体が結合するエピトープを有し、前記アナライトが核酸の場合には当該核酸の配列の一部と相補的な配列を有し、
アシストプローブは、その5'末端又は3'末端のヌクレオチドに隣接するタグ配列であって、自己凝集可能な一対のプローブの一方の配列と部分的に相補的なタグ配列を有する。
【請求項9】
以下を含む、試料中のアナライトを検出するキットであって、前記アナライトは抗体又は核酸であるキット:
(1)捕捉プローブ;
(2)第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブとアシストプローブとの凝集体;
ここで、前記自己凝集可能な一対のプローブは、5’末端側から順に少なくとも核酸領域X、核酸領域Y、及び核酸領域Zを含む第1のオリゴヌクレオチドと、5’末端側から順に少なくとも前記核酸領域Xに相補的な核酸領域X’、前記核酸領域Yに相補的な核酸領域Y’、及び前記核酸領域Zに相補的な核酸領域Z’を含む第2のオリゴヌクレオチドからなり、
捕捉プローブ及びアシストプローブは、核酸を含み、かつ、前記アナライトが抗体の場合には当該抗体が結合するエピトープを有し、前記アナライトが核酸の場合には当該核酸の配列の一部と相補的な配列を有し、
アシストプローブは、その5'末端又は3'末端のヌクレオチドに隣接するタグ配列であって、自己凝集可能な一対のプローブの一方の配列と部分的に相補的なタグ配列を有する。
【請求項10】
前記第1及び第2のオリゴヌクレオチドはルテニウム錯体、ペルオキシダーゼ、蛍光色素、ビオチン、又はジゴキシゲニンにより標識されている、請求項9に記載の凝集体又はキット。
【請求項11】
試料が生体試料由来である、請求項9に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良されたシグナル増幅方法を利用した標的抗体、特に抗薬物抗体や、標的核酸、特に核酸医薬の超高感度測定方法と、そのような測定方法に用いるためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
試料中の核酸に起因するシグナルを増幅する方法として、第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブ(ハニカムプローブ、HCPとも呼ばれる。)を使用する方法(PALSAR法、パルサー法)が知られている(特許第3267576号)。PALSAR法の操作性の向上や、反応時間の短縮、シグナル増幅効率の向上などのために、今までに様々な研究開発がなされている(特許第3310662号、特許第3912595号、特許第4121757号)。
【0003】
また、前記第1のオリゴヌクレオチドが「5'端部から順に核酸領域X、核酸領域Y及び核酸領域Zが設けられた3箇所の核酸領域からなる第1プローブ」であり、前記第2のオリゴヌクレオチドが「5'端部から順に核酸領域Xに相補的な核酸領域X'、核酸領域Yに相補的な核酸領域Y'及び核酸領域Zに相補的な核酸領域Z'が設けられた3箇所の核酸領域からなる第2プローブ」である場合に、「5'端部から順に前記核酸領域X、前記核酸領域Y、前記核酸領域X、及びターゲット遺伝子にハイブリダイズ可能なターゲット領域が設けられた構造、又は5'端部から順に前記ターゲット領域、前記核酸領域Z、前記核酸領域Y、及び前記核酸領域Zが設けられた構造を有するアシストプローブ」を使用する「ターゲット遺伝子の検出方法」も考案されている(特許第4482557号)。更に、パルサー法に適したアシストプローブのデザイン方法についても開発が行われている(特許第5289314号)。
【0004】
これらの先行技術におけるパルサー法の手順の概略は以下のとおりである:
1. キャプチャープローブを固定したストリップウェルタイプの96ウェルマイクロプレートに、ターゲットオリゴDNAを含む試料及びアシストプローブ溶液を添加して一定時間反応させた後、洗浄液で洗浄する;
2. 洗浄後、洗浄液をよくきった96ウェルマイクロプレートにジゴキシゲニンで標識した第1及び第2のオリゴヌクレオチドを添加して一定時間反応させた後、洗浄液で洗浄する;
3. マイクロプレートウェルを洗浄後、アルカリホスファターゼ標識抗ジゴキシゲニン抗体を加え、37℃のインキュベーターで反応させる;
4. 洗浄液で洗浄後、アルカリホスファターゼの発光基質液を加え、暗所で一定時間反応後、ルミノメーターで発光強度(RLU)を測定する。
【0005】
ハニカムプローブ及びアシストプローブを利用するパルサー法は、汎用性が高く、特異性及び定量性に優れ、かつ、高感度であるため、PCRでは増幅が難しい核酸医薬などのオリゴヌクレオチドの検出に利用されている(特許第6718032号、特許第6995250号)。
【0006】
一方で、抗薬物抗体の測定方法として、捕獲薬物抗体とトレーサー薬物抗体を使用する二重抗原架橋イムノアッセイ法が知られている(特許第4902674号)。特許第4902674号の方法は、捕獲薬物抗体が、固相に結合される抗体部位が異なる、同じアミノ酸配列を有する少なくとも2つの該薬物抗体を含む該薬物抗体の混合物であること、及び、トレーサー薬物抗体が、検出可能な標識に結合される抗体部位が異なる、同じアミノ酸配列を有する少なくとも2つの該薬物抗体を含む該薬物抗体の混合物であることを特徴としている。
しかし、特許第4902674号の方法は、上記したように固相又は検出可能な標識に結合される抗体の部位が異なる、同じアミノ酸配列を有する薬物抗体を、捕獲薬物抗体用及びトレーサー薬物抗体用に、それぞれ2種以上ずつ、合計4種以上を調製することが必須であるため、両抗体の調製に高額な費用及び長い時間が必要になる。また、当該薬物抗体を使用したイムノアッセイ法の性能管理及び試薬の品質管理も複雑になる。
また、従来パルサー法(特許第6718032号、特許第6995250号)では、測定の都度ハニカムプローブを調製する必要があるため作業が煩雑であり、また、使い切れなかった溶液を廃棄する無駄が生じていた。
したがって、より簡便かつ安価な標的抗体や標的核酸などのアナライトの測定方法に対するニーズが存在する。
本発明者らは、捕獲核酸(本明細書においては、「捕捉プローブ」又は「キャプチャープローブ」又は略して「CP」と呼ぶ。)及びトレーサー核酸(本明細書においては、「アシストプローブ」又は略して「AP」と呼ぶ。)を使用し且つ改良したパルサー法を採用することにより、簡便かつ安価にアナライトを超高感度測定できることを見出した。捕捉プローブ及びアシストプローブは、極めて簡便かつ安価に化学合成することが可能であり、かつ、多種多様な修飾も容易に行うことができる。更にアッセイ法の性能管理及び試薬の品質管理も簡便に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3267576号
【文献】特許第3310662号
【文献】特許第3912595号
【文献】特許第4121757号
【文献】特許第4482557号
【文献】特許第5289314号
【文献】特許第6718032号
【文献】特許第6995250号
【文献】特許第4902674号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、従来法と比較して、簡便かつ安価なアナライトの超高感度測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題を解決するために、捕捉プローブ及びアシストプローブ並びに改良されたパルサー法を使用するアナライトの超高感度測定方法を提供する。即ち、本発明は以下の〔実施態様1〕~〔実施態様19〕の構成からなる。
[実施態様1]
以下の工程を含む試料中の標的抗体を検出する方法:
(i)第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブとアシストプローブとが互いにハイブリダイズした凝集体(以下、シグナルプローブポリマーと呼ぶことがある。)を提供する工程;
(ii)前記(i)工程とは別の液相中で捕捉プローブに含まれる前記標的抗体のエピトープに、標的抗体を含む前記試料を接触させて、捕捉プローブ-標的抗体複合体を形成する工程;
(iii)前記捕捉プローブ-標的抗体複合体に前記シグナルプローブポリマーを接触させて、捕捉プローブ-標的抗体-シグナルプローブポリマー複合体を形成する工程;及び
(iv)捕捉プローブ-標的抗体-シグナルプローブポリマー複合体を検出する工程。
[実施態様2]
以下の工程を含む試料中の標的抗体を検出する方法:
(i)第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブとアシストプローブとが互いにハイブリダイズした凝集体を提供する工程;
(ii)前記凝集体に、標的抗体を含む試料と捕捉プローブを接触させて、捕捉プローブ、標的抗体、アシストプローブ、並びに複数の第1及び第2のオリゴヌクレオチドの複合体を形成する工程;
(iii)捕捉プローブに結合した固相から液相を除去し、又は当該固相を洗浄することにより、複合体形成に関与していない第1及び第2のオリゴヌクレオチドを除去する工程;
(iv)第1又は第2のオリゴヌクレオチドに含まれる標識を検出する工程。
[実施態様3]
以下の工程を含む試料中の標的抗体を定量する方法:
(i)第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブとアシストプローブとが互いにハイブリダイズした凝集体を提供する工程;
(ii)前記凝集体に、前記試料と捕捉プローブを接触させる工程;
(iii)固相から液相を除去し、又は当該固相を洗浄する工程; ここで、当該固相は捕捉プローブに結合している;及び
(iv)第1又は第2のオリゴヌクレオチドに含まれる標識からのシグナルを定量する工程。
[実施態様4]
前記捕捉プローブ-標的抗体複合体の形成に関与せずに、遊離の状態で存在する標的抗体を分離し、除去する工程を含む、実施態様1に記載の方法。
[実施態様5]
捕捉プローブが、標的抗体と接触する前に固相に固定されている、実施態様1~4の何れかに記載の方法。
[実施態様6]
前記第1及び第2のオリゴヌクレオチドはルテニウム錯体、ペルオキシダーゼ、蛍光色素、ビオチン、又はジゴキシゲニンにより標識されている、実施態様1~5の何れかに記載の方法。
[実施態様7]
前記標的抗体が単一抗原と結合するモノスペシフィック抗体、またはバイスペシフィック抗体(二重特異性抗体)である、実施態様1~6の何れかに記載の方法。
[実施態様8]
前記標的抗体が抗薬物抗体である、実施態様1~7の何れかに記載の方法。
[実施態様9]
試料が生体試料由来である、実施態様1~8の何れかに記載の方法。
[実施態様10]
第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブとアシストプローブを接触させることにより形成した凝集体。
[実施態様11]
以下を含む、試料中の標的抗体を検出するキット:
(1)捕捉プローブ;
(2)アシストプローブ;及び
(3)第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブ;
ここで、捕捉プローブ及びアシストプローブは、核酸を含み、前記標的抗体が結合するエピトープを有する。
[実施態様12]
以下を含む、試料中の標的抗体を検出するキット:
(1)捕捉プローブ;
(2)第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブとアシストプローブとの凝集体;
ここで、捕捉プローブ及びアシストプローブは、核酸を含み、前記標的抗体が結合するエピトープを有する。
[実施態様13]
前記第1及び第2のオリゴヌクレオチドはルテニウム錯体、ペルオキシダーゼ、蛍光色素、ビオチン、又はジゴキシゲニンにより標識されている、実施態様10~12の何れかに記載の凝集体又はキット。
[実施態様14]
前記標的抗体が単一抗原と結合するモノスペシフィック抗体、またはバイスペシフィック抗体(二重特異性抗体)である、実施態様11~13の何れかに記載のキット。
[実施態様15]
前記標的抗体が抗薬物抗体である、実施態様11~14の何れかに記載のキット。
[実施態様16]
試料が生体試料由来である、実施態様11~15の何れかに記載のキット。
[実施態様17]
前記エピトープが、核酸、ポリペプチド、糖鎖、タンパク質、高分子化合物、中分子化合物、若しくは低分子化合物、又はそれらの一部である実施態様11~16の何れかに記載のキット。
[実施態様18]
前記エピトープが、5-メチル化シトシン、ホスホロチオエート核酸、ボラノホスフェート核酸、モルフォリノ核酸、LNA、BNA、2’-O-メチル化RNA(2’-OMe)、2’-O-メトキシエチル化RNA(2’-MOE)、2’-F-RNA、ENA(商標登録)(2'-O,4'-C-Ethylene-bridged Nucleic Acids)、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)核酸、又はポリエチレングリコールである実施態様11~16の何れかに記載のキット。
[実施態様19]
捕捉プローブ及びアシストプローブが、核酸を含み、前記標的抗体が結合するエピトープを有する実施態様1~9の何れかに記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
二重抗原架橋イムノアッセイ法において捕捉プローブ及びアシストプローブを使用し且つ改良されたパルサー法を採用することにより、アナライトの超高感度測定を簡便かつ安価に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】従来法と比較した本発明の方法の標的抗体の検出感度及びS/N比の向上を示す図である。シグナルを棒グラフで示し、S/N比を線グラフで示す。
【
図4】捕捉プローブを予め固相に固定した場合の従来法の測定結果を示す図である。
【
図5】捕捉プローブを予め固相に固定した場合の本発明の方法の測定結果を示す図である。
【
図6】従来法と比較した本発明の方法の標的核酸の検出感度及びS/N比の向上を示す図である。シグナルを棒グラフで示し、S/N比を線グラフで示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本件発明の測定方法の測定対象物質(アナライト)は、試料中に含まれる抗体(標的抗体)、特に、抗薬物抗体、並びに、核酸(標的核酸)、特に核酸医薬である。以下、臨床的に重要な抗薬物抗体及び核酸医薬を例として記載するが、本件発明の方法がこれに限定されないことは当業者に理解されるであろう。
【0013】
I. アナライトの超高感度測定方法
【0014】
本明細書において「測定方法」、「検出方法」の用語は、特に断らない限り同一の概念を含む最も広義な用語として使用している。従って、本発明の方法は、検出されるシグナルの強度を測定することにより、標的抗体や標的核酸などのアナライトの測定方法、検出方法、定量測定方法、又は定性測定方法として使用することが出来る。
【0015】
本明細書において、「標的抗体」という用語は、測定対象である抗体を意味する。本明細書において、標的抗体の一例を示す「抗薬物抗体」という用語は、薬物に対して向けられる抗体を意味する。そのような抗体は、例えば、薬物が投与された患者の免疫原性反応として薬物治療の際に産生される可能性がある。測定対象の「抗薬物抗体」は、生体試料中に含まれるものであれば特に限定はないが、好ましくは、IgG、IgM、IgD、IgE、又はIgAであり、更に好ましくはIgG又はIgMである。
【0016】
上記抗薬物抗体としては、「抗核酸医薬抗体」が挙げられる。当該「抗核酸医薬抗体」における「核酸医薬」としては、公知の「siRNA」、「miRNA」、「アンチセンス」、「アプタマー」、「デコイ」、「リボザイム」、「CpGオリゴ」、「その他 (自然免疫の活性化を目的としたPolyI:PolyC(二本鎖RNA)、アンチジーンなど)」などを挙げることができる。また、当該「核酸医薬」には、「遺伝子治療薬における遺伝子が組み込まれたベクター」や「遺伝子ワクチンに含まれる遺伝子」、更にデフィブロチドナトリウム(CAS 登録番号:83712-60-1)のようなポリデオキシリボヌクレオチド化合物など、有効成分として核酸鎖を含む医薬も含むものとする。また、当該「核酸医薬」は、2以上のヌクレオチドで構成されるオリゴ核酸を意味し、オリゴ核酸を構成する核酸は、天然の構造である以外に非天然の構造(いわゆる核酸アナログなど)であってもよい。ただし、5-FU(5-フルオロウラシル)などの核酸アナログそれ自体は本発明における「核酸医薬」には含まない。本発明の「核酸医薬」は一本鎖核酸であっても二本鎖核酸であってもよい。また、二本鎖核酸の場合には、ヘテロ二本鎖核酸であってもよい。なお本明細書において「核酸」の用語は、ヌクレオチドの重合体を意味するが、文脈によりヌクレオチドそれ自体を指す場合もある。
【0017】
上記「核酸医薬」に対して抗薬物抗体が産生された場合、核酸医薬における抗薬物抗体が結合するエピトープは、オリゴ核酸中の特定のヌクレオチドの、塩基部分、糖部分、リン酸部分であることができる。また、抗薬物抗体が結合するエピトープを構成する核酸の数は、特定のヌクレオチド単独である場合、2以上のヌクレオチドで構成される核酸(オリゴ核酸)である場合の両方であることができる。また、オリゴ核酸を核酸医薬とするための、相補結合の強弱の調節、生分解耐性の調節、DDSの調節などを目的とする修飾、例えば、後記するヌクレオチド中の糖やリン酸が修飾されていたり、オリゴ核酸が環状構造やヘアピン構造などの構造を有していたり、オリゴ核酸の配列中に核酸以外の分子が含まれていたり、当該核酸以外の分子がオリゴ核酸との間で形成する立体構造が含まれていたり、ポリエチレングリコールの付加などが施されていたりする場合には、抗薬物抗体が結合するエピトープは当該修飾部分であってもよい。
【0018】
本明細書において、「標的核酸」という用語は、測定対象である核酸を意味する。標的核酸の一例を示す「核酸医薬」については上記を参照のこと。本明細書において、「標的核酸」という用語は、捕捉プローブ及びアシストプローブと特異的なハイブリッドを形成できるものであれば、DNA又はRNAの何れでも良く、一本鎖又は二本鎖の何れでも良く、化学修飾されていても良い。化学修飾としては、ホスホロチオエート修飾(S化)、2'-F修飾、2'-O-Methyl(2'-OMe)修飾、2'-O-Methoxyethyl(2'-MOE)修飾、モルフォリノ修飾、LNA修飾、BNACOC修飾、BNANC修飾、ENA修飾、cEt BNA修飾などが挙げられる。上記、標的核酸が二本鎖の場合は、一本鎖にして本発明に使用される。標的核酸の塩基長は、限定されるものではないが、好ましくは、12mer、13mer、14mer、15mer、16mer、17mer、18mer、19mer、20mer、21mer、22mer、23mer、24mer、25mer、26mer、27mer、28mer、29mer、又は30merである。
【0019】
本発明の検出方法に使用する「試料」は、生体由来のものであり、アナライトが存在しうるものであれば特に限定は無く、好ましくは、ヒト、サル、イヌ、ブタ、ラット、モルモット、又はマウスの全血、血清、血漿、リンパ液、又は唾液であり、特に好ましくはヒトの血液由来成分、例えば、全血、血清、又は血漿である。これらは水又は緩衝液で希釈されて用いられることもある。また、本発明の試料には、既知の濃度のアナライトを水、緩衝液又はアナライトを含まない生体由来成分(例えば、血液由来成分)で希釈、濃度調整したものも含む。
【0020】
上記した試料は、必要に応じて前処理を行うことができる。例えば、酸や界面活性剤と混合し、試料中のアナライトの性状を変化させたり、特定の分子量画分を篩い分けられるフィルターでろ過して、試料中の、捕捉プローブ-アナライト-アシストプローブ複合体の形成に影響を与える物質を分離、除去することなどが挙げられる。
【0021】
上記緩衝液としては、一般的に使用されるものであればよく、例えばトリス塩酸、ホウ酸、リン酸、酢酸、クエン酸、コハク酸、フタル酸、グルタル酸、マレイン酸、グリシン及びそれらの塩などや、MES、Bis-Tris、ADA、PIPES、ACES、MOPSO、BES、MOPS、TES、HEPESなどのグッド緩衝液などが挙げられ、水としては、RNase, DNase free waterなどが挙げられる。なお、緩衝液の調製などの際に使用される水としてもRNase, DNase free waterが好適である。
【0022】
本発明の検出方法に使用する「捕捉プローブ」及び「アシストプローブ」は、核酸を含み、それぞれ、化学的に合成可能なものであれば特に限定はなく、好ましくは、DNA (deoxyribonucleic acid)、RNA(ribonucleic acid)、PNA(peptide nucleic acid)、又は化学修飾された核酸であり、非天然のヌクレオチドや任意の修飾基を含みうる。
【0023】
化学修飾は核酸の塩基部分、糖部分、リン酸部分のいずれの部位も対象となりうる。上記化学修飾された核酸としては、例えば、ホスホロチオエート修飾(S化)、2’-F修飾、2’-O-Methyl(2’-OMe)修飾、2’-O-Methoxyethyl(2’-MOE)修飾、モルフォリノ修飾、LNA修飾、BNACOC修飾、BNANC修飾、ENA修飾、cEtBNA修飾などが挙げられる。
【0024】
このうちでも、好ましくは、ロックド核酸(LNA)、架橋核酸(BNA)、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド、モルフォリノオリゴヌクレオチド、ボラノフォスフェートオリゴヌクレオチド、2’-O-メチル化RNA(2’-OMe)、2’-O-メトキシエチル化RNA(2’-MOE)、又は2’-F-RNAである。
【0025】
上記核酸は一本鎖又は二本鎖の何れでも良い。
【0026】
本発明に使用する「捕捉プローブ」及び「アシストプローブ」は、少なくともアナライトに結合する部分(アナライト結合部分)を構造中に含み、それぞれ更に任意の配列を含んでいてもよい。「捕捉プローブ」の配列と「アシストプローブ」の配列は、互いに同一でも良いし、異なってもよい。また、アナライトが抗薬物抗体の場合、本発明の検出方法に使用する「捕捉プローブ」及び「アシストプローブ」は、上記した「核酸医薬」それ自体を使用することができる。
【0027】
本発明における「捕捉プローブ」の具体的な構成としては、限定ではなく、以下の例が挙げられる。
5′-(n)a-(analyte-binding-moiety)-(n)b-(官能基)-3′(ここで、「n」は任意のヌクレオチド、「a」及び「b」はそれぞれ独立に0又は自然数(但し、後述の核酸鎖長の要件を満たす)、「analyte-binding-moiety」はアナライト結合部分、「官能基」は捕捉プローブを修飾するアミノ基等の官能基を表す。)
5′-(n)a-(analyte-binding-moiety)-(n)b-(アダプター)-3′(ここで、「n」は任意のヌクレオチド、「a」及び「b」はそれぞれ独立に0又は自然数(但し、後述の核酸鎖長の要件を満たす)、「analyte-binding-moiety」はアナライト結合部分、「アダプター」は捕捉プローブに結合するビオチン、ストレプトアビジン又はアビジン、及びこれらの組合せ、抗原、抗体、及びこれらの組合せ等のアダプターを表す。以下同じ。)
5′-(官能基)-(n)a-(analyte-binding-moiety)-(n)b-3′(ここで、「n」は任意のヌクレオチド、「a」及び「b」はそれぞれ独立に0又は自然数(但し、後述の核酸鎖長の要件を満たす)、「analyte-binding-moiety」はアナライト結合部分、「官能基」は捕捉プローブを修飾するアミノ基等の官能基を表す。)
5′-(アダプター)-(n)a-(analyte-binding-moiety)-(n)b-3′(ここで、「n」は任意のヌクレオチド、「a」及び「b」はそれぞれ独立に0又は自然数(但し、後述の核酸鎖長の要件を満たす)、「analyte-binding-moiety」はアナライト結合部分、「アダプター」は捕捉プローブに結合するビオチン等のアダプターを表す。)
【0028】
本発明における「アシストプローブ」の具体的な構成としては、限定ではなく、以下の例が挙げられる。
5′-(n)c-(analyte-binding-moiety)-(n)d-(タグ配列)-3′(ここで、「n」は任意のヌクレオチド、「c」及び「d」はそれぞれ独立に0又は自然数(但し、後述の核酸鎖長の要件を満たす)、「analyte-binding-moiety」はアナライト結合部分、「タグ配列」は後述の自己凝集可能な一対のプローブの一方の配列と部分的に同じ(自己凝集可能な一対のプローブの他方の配列と部分的に相補的な)タグ配列を表す。)
5′-(タグ配列)-(n)c-(analyte-binding-moiety)-(n)d-3′(ここで、「n」は任意のヌクレオチド、「c」及び「d」はそれぞれ独立に0又は自然数(但し、後述の核酸鎖長の要件を満たす)、「analyte-binding-moiety」はアナライト結合部分、「タグ配列」は後述の自己凝集可能な一対のプローブの一方の配列と部分的に同じ(自己凝集可能な一対のプローブの他方の配列と部分的に相補的な)タグ配列を表す。)
【0029】
一態様において、前記のタグ配列は、
前記第1のオリゴヌクレオチドが、
5’末端から順に核酸領域X、核酸領域Y、及び核酸領域Zからなるオリゴヌクレオチドの構成を有し、前記第2のオリゴヌクレオチドが、5’末端から順に前記核酸領域Xに相補的な核酸領域X’、前記核酸領域Yに相補的な核酸領域Y’、前記核酸領域Zに相補的な核酸領域Z’からなるオリゴヌクレオチド
の構成を有する場合に、
5’末端側から順に、第1のオリゴヌクレオチドの核酸領域X、第1のオリゴヌクレオチドの核酸領域Y、及び第1のオリゴヌクレオチドの核酸領域Xからなるオリゴヌクレオチド、若しくは、5’末端側から順に、第1のオリゴヌクレオチドの核酸領域Z、第1のオリゴヌクレオチドの核酸領域Y、及び第1のオリゴヌクレオチドの核酸領域Zからなるオリゴヌクレオチド、又は
5’末端側から順に、第2のオリゴヌクレオチドの核酸領域X'、第1のオリゴヌクレオチドの核酸領域Y'、及び第1のオリゴヌクレオチドの核酸領域X'からなるオリゴヌクレオチド、若しくは、5’末端側から順に、第2のオリゴヌクレオチドの核酸領域Z'、第2のオリゴヌクレオチドの核酸領域Y'、及び第2のオリゴヌクレオチドの核酸領域Z'からなるオリゴヌクレオチド、
の構成を有する。
【0030】
アナライトが抗薬物抗体の場合、本発明の検出方法に使用する「捕捉プローブ」及び「アシストプローブ」が有する抗薬物抗体が結合するエピトープは、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)を検出原理とするアフィニティーセンサーを使用する方法や、抗原競合法などによって特定することができる。本発明の「捕捉プローブ」及び「アシストプローブ」は、好ましくは、同一の、抗薬物抗体が結合するエピトープを有する。
【0031】
アナライトが標的核酸の場合、本発明に使用する「捕捉プローブ」は、標的核酸を捕捉するためのプローブであり、核酸プローブと、前記核酸プローブの3'末端又は5'末端のヌクレオチドに隣接する固相とを含む。
【0032】
アナライトが標的核酸の場合、本発明に使用する「アシストプローブ」は、標的核酸を検出するためのプローブであり、核酸プローブと、前記核酸プローブの5'末端又は3'末端のヌクレオチドに隣接するタグ又は標識とを含む。
【0033】
本発明において、捕捉プローブが標的核酸を「捕捉」するとは、第一義的には、捕捉プローブに含まれる核酸プローブと標的核酸とがハイブリダイズすることを意味する。一態様において、捕捉プローブが標的核酸を「捕捉」するとは、標的核酸が、捕捉プローブに含まれる核酸プローブを介して、捕捉プローブに含まれる固相に対して間接的に結合することを意味する。
【0034】
本明細書において、標的核酸に対して捕捉プローブ又はアシストプローブに含まれる核酸プローブがハイブリダイズするとは、特定の塩基配列を有する標的核酸に対して、当該配列の一部と相補的な配列を有する核酸プローブが塩基対形成を通じて結合し、二本鎖核酸分子を形成することを意味する。
【0035】
捕捉プローブは、1種又は2種以上であり、固相に結合される部位が異なる2種以上の組合せであっても良い。また、アシストプローブは、1種又は2種以上であり、2種以上の組合せであっても良い。
【0036】
本発明の検出方法に使用する「捕捉プローブ」は、後述する固相に結合させるためのアダプターを含んでいてもよく、「アシストプローブ」は、アナライトを検出するための後述する標識を結合させるために、化学修飾を含んでいてもよい。
【0037】
本発明に使用する「アダプター」としては、例えば、ビオチン、ストレプトアビジン又はアビジン、及びこれらの組合せ、抗原、抗体、及びこれらの組合せが挙げられ、好ましくはビオチン、ストレプトアビジン又はアビジン、及びこれらの組合せ等である。
【0038】
本発明における「捕捉プローブ」及び「アシストプローブ」の核酸鎖長は、特に限定されない。本発明の検出方法に好適な核酸鎖の鎖長は、アナライト検出における所望の特異性、感度などを考慮し適宜に設計することができる。捕捉プローブに含まれる核酸プローブは、一態様において、5mer、6mer、7mer、8mer、9mer、10mer、11mer、12mer、13mer、14mer、15mer、16mer、17mer、18mer、19mer、20mer、21mer、22mer、23mer、24mer又は25merの塩基長を有する。捕捉プローブに含まれる核酸プローブは、別の態様において、5mer、6mer、7mer、8mer、9mer、10mer、11mer、12mer、13mer、14mer、15mer、又は16merの塩基長を有する。捕捉プローブに含まれる核酸プローブは、更に別の態様において、5mer、6mer、7mer、8mer、9mer、10mer、又は11merの塩基長を有する。好ましい一例として、捕捉プローブ及びアシストプローブの鎖長が同一であるか又はアシストプローブの核酸鎖の鎖長が捕捉プローブより1mer~60mer長い場合が挙げられ、更に好ましい例としてアシストプローブの核酸鎖の鎖長が捕捉プローブより5mer~55mer、10mer~50mer、15mer~45mer、20mer~40mer、25mer~35mer、25mr~40mer、25mer~45mer、25mer~50mer、30mer~40mer、30mer~45mer、30~50mer、35mer~45mer、35mer~50mer長い場合が挙げられる。アシストプローブに含まれる核酸プローブは、一態様において、4mer、5mer、6mer、7mer、8mer、9mer、10mer、11mer、12mer、13mer、14mer、15mer、16mer、17mer、18mer、19mer、20mer、21mer、22mer、23mer、24mer、25mer、26mer、27mer、28mer、29mer、30mer、31mer、32mer、33mer、34mer、35mer、36mer、37mer、38mer、39mer、40mer、41mer、42mer、43mer、44mer、45mer、46mer、47mer、48mer、49mer、50mer、51mer、52mer、53mer、54mer、55mer、56mer、57mer、58mer、59mer、60mer、61mer、62mer、63mer、64mer、65mer、66mer、67mer、68mer、69mer、70mer、71mer、72mer、73mer、74mer、75mer、76mer、77mer、78mer、79mer、80mer、81mer、82mer、83mer、84mer、又は85merの塩基長を有する。アシストプローブに含まれる核酸プローブは、別の態様において、4mer、5mer、6mer、7mer、8mer、9mer、10mer、11mer、12mer、13mer、14mer、15mer、16mer、17mer、18mer、19mer、20mer、21mer、22mer、23mer、24mer、25mer、26mer、27mer、28mer、29mer、30mer、31mer、32mer、33mer、34mer、35mer、36mer、37mer、38mer、39mer、40mer、41mer、42mer、43mer、44mer、45mer、46mer、47mer、48mer、49mer、50mer、51mer、52mer、53mer、54mer、55mer、56mer、57mer、58mer、59mer、又は60merの塩基長を有する。アシストプローブに含まれる核酸プローブは、更に別の態様において、4mer、5mer、6mer、7mer、8mer、9mer、10mer、11mer、12mer、13mer、14mer、15mer、16mer、17mer、18mer、19mer、20mer、21mer、22mer、23mer、24mer、25mer、26mer、27mer、28mer、29mer、30mer、31mer、32mer、33mer、34mer、35mer、36mer、37mer、38mer、39mer、又は40merの塩基長を有する。
【0039】
アナライトが抗薬物抗体の場合、上記核酸鎖には、抗核酸医薬抗体産生の原因となった抗核酸医薬抗体が結合するエピトープを含む核酸医薬に由来する配列を含み、更に当該エピトープと同一又は類似の構造を含まない任意の配列が含まれ得る。アシストプローブの核酸鎖長が、捕捉プローブの核酸鎖長より長い場合には、当該長い核酸鎖長の部分は、当該エピトープと同一又は類似の構造を含まない任意の配列であることが好ましい。
【0040】
本明細書において、「接触させる」、あるいは「接触工程」という用語は、ある物質と他の物質との間で、共有結合、イオン結合、金属結合、非共有結合などの化学結合を形成できるように、これらの物質を互いに近傍に置くことを意味する。本発明の一態様においては、本発明の検出方法における、試料と、捕捉プローブと、アシストプローブとの「接触」工程は、液体状の試料と、捕捉プローブを含む溶液と、アシストプローブを含む溶液を、何れかの組合せで混合することにより行われる。
【0041】
アナライトが抗薬物抗体の場合、本発明の検出方法に使用する捕捉プローブ及びアシストプローブが有する「抗薬物抗体が結合するエピトープ」は、上記したとおりであり、抗薬物抗体が結合することができれば特に限定はないが、好ましくは、核酸、ポリペプチド、糖鎖、タンパク質、高分子化合物、中分子化合物、若しくは低分子化合物、又はそれらの一部である。
【0042】
「抗薬物抗体が結合するエピトープ」としては、限定ではないが、以下の例が挙げられる。
5-メチル化シトシン、ホスホロチオエート核酸、ボラノホスフェート核酸、モルフォリノ核酸、LNA、BNA、2’-O-メチル化RNA(2’-OMe)、2’-O-メトキシエチル化RNA(2’-MOE)、2’-F-RNA、ENA(商標登録)(2'-O,4'-C-Ethylene-bridged Nucleic Acids)、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)核酸、ポリエチレングリコール
【0043】
本明細書において、「自己凝集」という用語は、複数の第1のオリゴヌクレオチドが、第2のオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションにより複合体を形成した状態、及び、複数の第2のオリゴヌクレオチドが、第1のオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションにより複合体を形成した状態を意味する。
【0044】
本発明の検出方法に使用する「自己凝集可能な一対のプローブ」は、第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる。本明細書において、単に「第1のオリゴヌクレオチド」及び「第2のオリゴヌクレオチド」というときは、それぞれ、自己凝集可能な一対のプローブを構成する第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドを意味する。第1のオリゴヌクレオチドと第2のオリゴヌクレオチドが互いにハイブリダイズ可能な相補的塩基配列領域を有し、自己凝集反応によるオリゴヌクレオチドポリマーの形成が可能である。好ましくは、前記第1又は第2のオリゴヌクレオチドのうち少なくとも一方は、標識物質により標識されている。ここで、「ハイブリダイズ可能」とは、一態様においては、当該相補的塩基配列領域において完全に相補的であることを意味する。また別の一態様においては、1つ又は2つのミスマッチを除いて、当該相補的塩基配列領域において相補的であることを意味する。
【0045】
自己凝集可能な一対のプローブにはあらかじめ検出のための標識物質で標識しておくことも可能である。そのような標識物質として、放射性同位元素、ビオチン、ジゴキシゲニン、蛍光物質、発光物質、色素、又は金属錯体などが好適な例として挙げられる。
【0046】
好ましくは、当該標識物質はルテニウム錯体、ビオチン、又はジゴキシゲニンであり、当該オリゴヌクレオチドの標識は、好ましくは5’末端又は3’末端を標識することにより行われる。
【0047】
「自己凝集可能な一対のプローブ」をより具体的に説明すると、第1のオリゴヌクレオチドが、5’末端側から順に少なくとも核酸領域X、核酸領域Y、及び核酸領域Zを含むオリゴヌクレオチドであり、第2のオリゴヌクレオチドが、5’末端側から順に少なくとも前記核酸領域Xに相補的な核酸領域X’、前記核酸領域Yに相補的な核酸領域Y’、及び前記核酸領域Zに相補的な核酸領域Z’を含むオリゴヌクレオチドということになる。自己凝集した際の形態が蜂の巣を連想させることから、この自己凝集可能な一対のプローブの一方又は両方をハニカムプローブ(HCP)と呼ぶことがある。
【0048】
捕捉プローブを固相に結合させる場合の「固相」としては、不溶性の微粒子、マイクロビーズ、蛍光微粒子、磁気粒子、マイクロプレート、マイクロアレイ、スライドガラス、電気伝導性基板などの基板などが挙げられる。
【0049】
捕捉プローブの固相への結合は、化学結合による方法、生物学的相互作用による方法、物理吸着による方法などが挙げられる。化学結合による方法では、例えば、カルボキシル基等の官能基でコートされた固相を用いる場合、捕捉プローブに予めアミノ基等の官能基で修飾しておいて、当該官能基との間でカップリング反応をさせることができる。生物学的相互作用による方法では、例えば、固相にコートしたストレプトアビジンと、捕捉プローブに予め結合させたビオチンとの間の結合力を利用することができる。また、物理吸着による方法では、例えば、負の電荷を有する固相を用いた場合、捕捉プローブにアミノ基など正の電荷を有する物質を標識することで、静電気的に固相に吸着させることができる。
【0050】
捕捉プローブを修飾するための官能基としては、限定ではなく、以下の例が挙げられる。
アミノ基、カルボキシル基、チオール基、マレイミド基
【0051】
捕捉プローブが結合した固相を「洗浄」する方法は特に限定されず、例えば、固相に任意の量の洗浄液を加え、静置又は緩やかに振盪後、固相内の溶液を分離し、除去することにより行う。溶液の分離・除去方法は、好ましくは、デカント法、遠心分離法、吸引法などが挙げられる。
【0052】
溶液を「デカント法」により分離し、除去する工程は、通常、固相を傾けて溶液を取り除くことにより行う。
【0053】
溶液を「遠心分離」法により分離し、除去する工程は、通常、20~30℃で0.2~5分間、500~3000×gの遠心、23~28℃で0.5~2分間、800~1500×gの遠心、好ましくは、25℃で1分間、1000×gの遠心にて上清を生成させ、それを除去することによりに行う。
【0054】
溶液を「吸引」法により分離し、除去する工程は、通常、マイクロピペット又はアスピレーターを用いて行う。より具体的には、マイクロピペット又はアスピレーターの製造会社の取扱説明書に従えばよい。
【0055】
固相に結合された捕捉プローブ-アナライト-アシストプローブ-ハニカムプローブ複合体が形成された後に、当該複合体の形成に関与せず、遊離の状態で存在するハニカムプローブを捕捉プローブ-アナライト-アシストプローブ-ハニカムプローブ複合体から「分離・除去」するためには、好ましくは、デカント法、遠心分離法、吸引法を用いることが挙げられる。具体的な分離、除去方法は、溶液の分離、除去方法と同じである。ハニカムプローブに含まれる標識を検出する方法としては、濁度法、吸光度法、蛍光測定法、電気化学発光法、フローサイトメトリー法が挙げられ、好ましくは、電気化学発光法が挙げられる。
【0056】
電気化学発光法としては、例えば、捕捉プローブ-アナライト-アシストプローブ-ハニカムプローブ複合体が結合した電気伝導性基板に電気エネルギーを加え、ハニカムプローブに予め標識されたルテニウム錯体を還元することにより発する発光を検出することにより行う。
【0057】
本発明の一態様において、試料中のアナライトを検出するキットには、少なくとも以下の構成が含まれる。
(1)捕捉プローブ
(2)アシストプローブ
(3)第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブ
ここで、捕捉プローブ及びアシストプローブは、核酸を含み、かつ、前記アナライトに結合する部分を有する。
別の一態様において、試料中のアナライトを検出するキットには、少なくとも以下の構成が含まれる。
(1)捕捉プローブ
(2)第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブとアシストプローブとの凝集体
ここで、捕捉プローブ及びアシストプローブは、核酸を含み、かつ、前記アナライトに結合する部分を有する。
各構成については、上述のとおりである。
【0058】
本発明の基本工程の一態様を、
図1を参照して説明する。
まず、アシストプローブとハニカムプローブの凝集体(AP-HCP凝集体)を提供する。このAP-HCP凝集体は、測定法実施時に順次に又は同時に接触させて形成させることが出来る。第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブ(ハニカムプローブ)は、第1のオリゴヌクレオチドが、5’末端側から順に核酸領域X、核酸領域Y、及び核酸領域Zを含むオリゴヌクレオチドであり、第2のオリゴヌクレオチドが、5’末端側から順に核酸領域X’、核酸領域Y’、及び核酸領域Z’を含み、XとX’、YとY’、ZとZ’は相互に相補的である(以下、当該核酸領域を単に、X、Y、Z、X’、Y’、Z’ということがある)。また、
図1に例示した態様において、第1と第2のオリゴヌクレオチドの5’末端はジゴキシゲニン(
図1中、黒菱形)で標識されている。アシストプローブのY、Zに第2のオリゴヌクレオチドのY’、Z’がハイブリダイズし、第1のオリゴヌクレオチドのX、Y、Zに第2のオリゴヌクレオチドのX’、Y’、Z’がそれぞれハイブリダイズする。そして次々とXとX’、YとY’、ZとZ’がハイブリダイズを繰り返すことで、自己凝集プローブのシグナルプローブポリマーが形成される。このAP-HCP凝集体は、測定法実施前に予め形成され保存されていた凝集体を提供しても良い。
【0059】
このAP-HCP凝集体に、捕捉プローブ及び測定対象物であるアナライト(図では、抗薬物抗体)を含む試料を順次に又は同時に接触させて、CP-アナライト-AP-HCP複合体を形成させる。捕捉プローブ及びアシストプローブは、アナライトに結合する部分(
図1中、中白菱形)を含んでいる。捕捉プローブは、予め固相に結合させておいても良いし、複合体の形成途中又は形成後に結合させても良い。
【0060】
その後、固相を洗浄するか又は液相を除去することにより、複合体形成に関与していないHCPを除去し、HCPに含まれる標識を検出する。
【0061】
一実施態様においては、前記捕捉プローブ-アナライト-アシストプローブ-ハニカムプローブ複合体を含む試料とルテニウム錯体標識抗ジゴキシゲニン抗体を接触させる。ルテニウム錯体からの発光を検出することにより、アナライトの濃度などを測定することができる。
【0062】
パルサー法の基本的具体例は、国際公開2013/172305号の
図4~
図14などに示されており、ダイマー形成用プローブなどを用いて当業者常識にもとづき適宜変形して本発明の自己凝集反応に応用することが可能である。
【0063】
本発明の方法は、捕捉プローブとアナライトとアシストプローブが、捕捉プローブ及びアシストプローブ上のアナライトに結合する部分を介して複合体を形成するので極めて特異性が高い。また、アナライトが抗薬物抗体の場合は、複合体の形成に係る抗薬物抗体のIgクラスを選ばない。これより、試料中にIgG、IgM、IgD、IgE、又はIgAのIgクラスの抗薬物抗体が存在する場合、2以上のIgクラスを一の測定で検出することができる。ここで一の測定とは、試料と捕捉プローブ及びアシストプローブとの接触が1回であることを意味する。本発明の検出方法は、この特徴により、薬物(核酸医薬)の投与間隔、期間や、試料の採取時期にかかわらず、Igクラスのスイッチの影響を受けずに抗薬物抗体の存在を鋭敏に検出することができる。
【0064】
これより本発明は、核酸医薬を投与されている個体における核酸医薬の投与方針を決定するためのデータ取得や、核酸医薬を開発する際の、抗核酸医薬抗体産生の可能性確認、当該抗薬物抗体が結合するエピトープの特定による核酸医薬自体の設計にも使用することが可能である。また、本発明の測定法を用いることにより、医薬品開発の探索段階における薬物動態・薬力学(PK/PD)スクリーニング試験、非臨床段階における安全性試験、薬理試験及び薬物動態試験、臨床段階において、核酸医薬が投与された動物あるいはヒト生体試料中の核酸医薬濃度を高感度に測定することが出来る。
【0065】
以下、本発明をより理解しやすいように具体的な態様を、実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0066】
[実施例1] 従来法と本発明の方法の比較
【0067】
1.実験材料及び方法
【0068】
[従来法]
(1) 標的抗体
測定対象として抗ジゴキシゲニン抗体(MBL社製、製品番号M227-3)を抗体希釈液で300 ng/mLに調製して試験に供した。また、標的抗体を含まない抗体希釈液(0 ng/mL)のブランクサンプルも同時に測定した。
(1-1)抗体希釈液の組成
137mM Sodium Chloride、8.1mM Disodium Phosphate、2.68mM Potassium Chloride、1.47mM Potassium Dihydrogenphosphate、0.02% Tween20、1.5ppm ProClin300(以下、1×PBS-TP)、1% BSA(ウシ血清アルブミン)
(2) 捕捉プローブ
捕捉プローブとしては、核酸医薬として開発されたGTI-2040の配列の3′末端がビオチン標識され、5′末端がジゴキシゲニン標識されたCP-ADA-5Dig-GTI2040-3Biotinを用いた。この核酸塩基配列は、5′-GGCTAAATCGCTCCACCAAG-3′であり、合成をINTEGRATED DNA TECHNOLOGIES社にHPLC精製グレードで依頼した。また、Nuclease-Free Waterを用いて1pmol/μLに調製して試験に供した。
(3) アシストプローブ
アシストプローブとしては、捕捉プローブと同じ塩基配列(20塩基)及びシグナル増幅用プローブ(HCP-1)の一部と同じ塩基配列からなる、5′末端がジゴキシゲニン標識されたトレーサー核酸(AP-ADA-5Dig-GTI2040-ZYZ)を用いた。合成はINTEGRATED DNA TECHNOLOGIES社にHPLC精製グレードで依頼した。
< AP-ADA-5Dig-GTI2040-ZYZの配列>
5′- GGCTAAATCGCTCCACCAAG GATATAAGGAGTGGATACCGATGAAGGATATAAGGAGTG-(NH2)-3′。Nuclease-Free Waterを用いて1pmol/μLに調製して試験に供した。
(4) 標的抗体-捕捉プローブ-アシストプローブ複合体の形成(抗体ブリッジング反応)
96 well丸底プレートに300 ng/mLの標的抗体及び0 ng/mLのブランクサンプルを50μL分注し、さらに、ブリッジング反応液をそれぞれ50μL加えて計100μLとし、700rpmで振盪しながら37℃で3時間反応させた。
(4-1)ブリッジング反応液の組成
1×PBS-TPの40.3μLに1pmol/μL CP-ADA-5Dig-GTI2040-3Biotinを0.8μL及び1pmol/μL AP-ADA-5Dig-GTI2040-ZYZを0.8μL添加。
(5)測定プレートのブロッキング
ストレプトアビジンが固定された測定プレート(Meso Scale Diagnostics、製品番号L45SA-1)に、ブロッキング液を150μL加え、700rpmで振盪しながら37℃で1時間反応させた後、1×PBS-TP 200μLで2回洗浄した。
(5-1)ブロッキング液の組成
3% BSA添加1×PBS-TP
(6)測定プレートへの標的抗体-捕捉プローブ-アシストプローブ複合体の固定
ブリッジング反応後の反応液75μLをブロッキング後の測定プレートへ加え、700rpmで振盪しながら37℃で1時間反応させた後、1×PBS-TP 200μLで2回洗浄した。
(7)検出補助反応
標的抗体-捕捉プローブ-アシストプローブ複合体固定後の測定プレートに、検出補助反応液を50μL加え、700rpmで振盪しながら37℃で1時間反応させた後、1×PBS-TP 200μLで2回洗浄した。
(7-1)検出補助反応液の組成
147μLの溶液(189.3mM Tris-HCl (pH7.5)、2.4×PBS[328.8mM Sodium Chloride、19.44mM Disodium Phosphate、6.432mM Potassium Chloride、3.528mM Potassium Dihydrogenphosphate]、3.6mM EDTA(pH8.0)、0.12% Tween20)に50×Denhardt's Solution を7.0μL、5% PEG 8000を70μL、10pmol/μL Ru錯体標識HCP-1を2.4μL、10pmol/μL Ru錯体標識HCP-2を3.0μL及びNuclease-Free Waterを119.0μL添加。
(7-2)HCP-1の塩基配列
本実施例1に使用する核酸プローブ(HCP-1)は、自己凝集可能な一対のプローブのうちHCP-2の塩基配列に相補的な配列を含み、5′末端がRu錯体で標識されている。
<HCP-1の塩基配列>
5′- CAACAATCAGGACGATACCGATGAAGGATATAAGGAGTG -3′
(7-3)HCP-2の塩基配列
本実施例1に使用する核酸プローブ(HCP-2)は、自己凝集可能な一対のプローブのうちAP-ADA-M-DNA1-ZYZ-3Nの塩基配列の一部に相補的な配列を含み、5′末端がRu錯体で標識されている。
<HCP-2の塩基配列>
5′- GTCCTGATTGTTGCTTCATCGGTATCCACTCCTTATATC -3′
(8)検出
検出補助反応後の測定プレートに0.5×Read Buffer[[MSD GOLD Read Buffer A(Meso Scale Diagnostics、製品番号R92TG-1)]を滅菌精製水で2倍希釈]150μLを加え、Meso QuickPlex SQ 120MMシステム(Meso Scale Diagnostics社製)を用いてRu標識されたHCP-1及びHCP-2からの発光量を測定し、標的抗体を検出した。
【0069】
[本発明の方法]
(1) AP-HCP凝集体の形成
下記組成の検出補助反応液をDNA LoBind Tubeに108μL分注して800rpmで振盪しながら40℃で1時間反応させ、AP-HCP凝集体を形成させた。
(1-1)検出補助反応液の組成
「46μLの溶液(189.3mM Tris-HCl (pH7.5)、2.4×PBS[328.8mM Sodium Chloride、19.44mM Disodium Phosphate、6.432mM Potassium Chloride、3.528mM Potassium Dihydrogenphosphate]、3.6mM EDTA(pH8.0)、0.12% Tween20)に50×Denhardt's Solutionを2.2μL、5% PEG 8000を22μL、1pmol/μL AP-ADA-5Dig-GTI2040-ZYZを1.1μL、10pmol/μL Ru錯体標識HCP-1を3.0μL、10pmol/μL Ru錯体標識HCP-2を3.8μL及びNuclease-Free Waterを31.0μL添加
(2) 標的抗体-捕捉プローブ-AP-HCP凝集体複合体の形成(抗体ブリッジング反応)
96ウェル丸底プレートに300 ng/mLの標的抗体及び0 ng/mLのブランクサンプルを50μL分注し、さらに、ブリッジング反応液をそれぞれ50μL加えて計100μLとし、700rpmで振盪しながら37℃で3時間反応させた。
(2-1)ブリッジング反応液の組成
1×PBS-TPの323μLに1pmol/μL CP-ADA-5Dig-GTI2040-3Biotinを0.8μL及び上記AP-HCP凝集体を81μL添加
(3)測定プレートのブロッキング
[従来法]に記載の方法に同じ。
(4)測定プレートへの標的抗体-捕捉プローブ-AP-HCP凝集体複合体の固定
抗体ブリッジング反応後の反応液75μLをブロッキング後の測定プレートへ加え、700rpmで振盪しながら37℃で1時間反応させた後、1×PBS-TP 200μLで2回洗浄した。
(5)検出
洗浄後の測定プレートを用い、[従来法]に記載の方法と同様にシグナルを検出した。
【0070】
2.結果
測定結果を
図2に示す。300 ng/mLの標的抗体を測定したとき、従来法と比べ本発明の方法は、0 ng/mLのブランクサンプルのシグナルを減じたネットシグナルで約155倍(20859/135)、S/N比で約128倍(410/3.2)向上した。
【0071】
[実施例2] 本発明の方法の定量性
【0072】
1.実験材料及び方法
(1) AP-HCP凝集体の形成
下記組成の検出補助液をDNA LoBind Tubeに108μL分注して800rpmで振盪しながら40℃で2時間反応させ、AP-HCP凝集体を形成させた。
(1-1)検出補助液の組成
142μLの溶液(189.3mM Tris-HCl (pH7.5)、2.4×PBS[328.8mM Sodium Chloride、19.44mM Disodium Phosphate、6.432mM Potassium Chloride、3.528mM Potassium Dihydrogenphosphate]、3.6mM EDTA(pH8.0)、0.12% Tween20)に50×Denhardt's Solutionを7.0μL、5% PEG 8000を67μL、1pmol/μL AP-ADA-5Dig-GTI2040-ZYZを6.7μL、10pmol/μL Ru錯体標識HCP-1を9.4μL、10pmol/μL Ru錯体標識HCP-2を11.8μL及びNuclease-Free Waterを92.0μL添加
(2) 標的抗体
実施例1に記載の抗ジゴキシゲニン抗体を正常ヒト血清で1000、500、250、100、50、25及び12.5 ng/mLに希釈調製して試験に供した。また、標的抗体を含まない正常ヒト血清(0 ng/mL)のブランクサンプルも同時に測定した。
(3) 標的抗体-捕捉プローブ-AP-HCP凝集体複合体の形成(抗体ブリッジング反応)
96ウェル丸底プレートに上記標的抗体及び上記ブランクサンプルを50μL分注し、さらに、ブリッジング反応液をそれぞれ50μL加えて計100μLとし、700rpmで振盪しながら25℃で2.5時間反応させた。
(3-1)ブリッジング反応液の組成
1×PBS-TPの1146μLに1pmol/μL CP-ADA-5Dig-GTI2040-3Biotinを5.8μL及び上記AP-HCP凝集体を288μL添加
(4)測定プレートのブロッキング
実施例1の[従来法]に記載の方法に同じ。
(5)測定プレートへの標的抗体-捕捉プローブ-AP-HCP凝集体複合体の固定
抗体ブリッジング反応後の反応液75μLをブロッキング後の測定プレートへ加え、700rpmで振盪しながら37℃で1時間反応させた後、1×PBS-TP 200μLで2回洗浄した。
(6)検出
洗浄後の測定プレートを用い、実施例1の[従来法]に記載の方法と同様にシグナルを検出した。
【0073】
2.結果
測定結果を
図3に示す。本発明の方法は12.5~1000 ng/mLの範囲で定量性が確認された。
【0074】
[実施例3] 捕捉プローブを予め固相に固定した場合
【0075】
1.実験材料及び方法
【0076】
[従来法]
(1) 捕捉プローブの固定
実施例1に記載と同じ捕捉プローブを用い、1×PBS-TPで0.03 fmol/μLに調製し、ストレプトアビジンが固定された測定プレート(Meso Scale Diagnostics、製品番号L45SA-1)に50μL分注し、700rpmで振盪しながら25℃で45分間反応させた。反応後、1×PBS-TP 200μLで2回洗浄した。
(2) 測定プレートのブロッキング
上記測定プレートに、実施例1に記載と同じブロッキング液を150μL加え、700rpmで振盪しながら25℃で40分間反応させた後、1×PBS-TP 200μLで2回洗浄した。
(3) 標的抗体
測定対象として実施例1に記載の抗ジゴキシゲニン抗体を正常ヒト血清で50000、25000、6250、1563、391、97.7及び48.8 ng/mLに段階希釈し、さらに1×PBS-TP (EDTA)で50倍希釈した試料を試験に供した。また、標的抗体を含まない正常ヒト血清(0 ng/mL)のブランクサンプルも同時に測定した。
(3-1) 1×PBS-TP (EDTA)の組成
1×PBS-TPの7178μL に500mM EDTAを22μL添加。
(4)標的抗体-捕捉プローブ複合体の形成反応
上記希釈調製した標的抗体25μLをブロッキング後の測定プレートへ加え、さらに25μLの反応用溶液を分注して700rpmで振盪しながら25℃で1時間反応させた。その後、1×PBS-TP 200μLで2回洗浄した。
(4-1)反応用溶液の組成
137mM Sodium Chloride、8.1mM Disodium Phosphate、2.68mM Potassium Chloride、1.47mM Potassium Dihydrogenphosphate、0.02% Tween20、1.5ppm ProClin300、0.2 mg/mL ssDNA、1.5 mM EDTA (pH 8.0)
(5)検出補助反応
標的抗体-捕捉プローブ複合体形成後の測定プレートに、検出補助反応液を50μL加え、700rpmで振盪しながら25℃で1時間反応させた後、1×PBS-TP 200μLで2回洗浄した。
(5-1)検出補助液の組成
30μLの溶液(189.3mM Tris-HCl (pH7.5)、2.4×PBS[328.8mM Sodium Chloride、19.44mM Disodium Phosphate、6.432mM Potassium Chloride、3.528mM Potassium Dihydrogenphosphate]、3.6mM EDTA(pH8.0)、0.12% Tween20)に50×Denhardt's Solutionを3.0μL、10 mg/mL ssDNAを15.0μL 、0.1 pmol/μL AP-ADA-5Dig-GTI2040-ZYZを3.0μL、10pmol/μL Ru錯体標識HCP-1を1.5μL、10pmol/μL Ru錯体標識HCP-2を1.5μL及び1×PBS-TP (1% BSA)を1446μL添加。
(6)検出
洗浄後の測定プレートを用い、実施例1[従来法]に記載の方法と同様にシグナルを検出した。
【0077】
[本発明の方法]
(1) AP-HCP凝集体の形成
下記組成の検出補助液をDNA LoBind Tubeに29μL分注して800rpmで振盪しながら40℃で1時間反応させ、AP-HCP凝集体を形成させた。反応後は遮光下で4℃保管した。
(1-1)検出補助液の組成
15.8μLの溶液(189.3mM Tris-HCl (pH7.5)、2.4×PBS[328.8mM Sodium Chloride、19.44mM Disodium Phosphate、6.432mM Potassium Chloride、3.528mM Potassium Dihydrogenphosphate]、3.6mM EDTA(pH8.0)、0.12% Tween20)に50×Denhardt's Solutionを0.58μL、1pmol/μL AP-ADA-5Dig-GTI2040-ZYZを5.8μL、10pmol/μL Ru錯体標識HCP-1を2.32μL、10pmol/μL Ru錯体標識HCP-2を2.90μL及びNuclease-Free Waterを11.6μL添加
(2) 捕捉プローブの固定
実施例1に記載と同じ捕捉プローブを用い、1×PBS-TPで0.03 fmol/μLに調製し、ストレプトアビジンが固定された測定プレート(Meso Scale Diagnostics、製品番号L45SA-1)に50μL分注し、700rpmで振盪しながら25℃で45分間反応させた。反応後、1×PBS-TP 200μLで2回洗浄した。
(3) 測定プレートのブロッキング
本実施例[従来法]に記載の方法に同じ。
(4) 標的抗体
実施例1に記載の抗ジゴキシゲニン抗体を正常ヒト血清で50000~48.8 ng/mLに2倍段階希釈し、さらに前記1×PBS-TP (EDTA)で50倍希釈した試料を試験に供した。また、標的抗体を含まない正常ヒト血清(0 ng/mL)のブランクサンプルも同時に測定した。
(5)標的抗体-捕捉プローブ複合体の形成反応
上記希釈調製した標的抗体25μLをブロッキング後の測定プレートへ加え、さらに25μL の前記反応用溶液を分注して700rpmで振盪しながら25℃で1時間反応させた。その後、1×PBS-TP 200μLで2回洗浄した。
(6) 標的抗体-捕捉プローブ- AP-HCP凝集体複合体の形成反応
(1)に記載のAP-HCP凝集体を実施例1[従来法]に記載の抗体希釈液で10倍希釈し、さらにハイブリダイゼーション液で100倍希釈したAP-HCP凝集体の50μLを測定プレートへ分注した。続いて、700rpmで振盪しながら25℃で1時間反応させ、1×PBS-TP 200μLで2回洗浄した。
(6-1) ハイブリダイゼーション液の組成
189.3mM Tris-HCl (pH7.5)、2.4×PBS[328.8mM Sodium Chloride、19.44mM Disodium Phosphate、6.432mM Potassium Chloride、3.528mM Potassium Dihydrogenphosphate]、3.6mM EDTA(pH8.0)、0.12% Tween20の70.2μLに50×Denhardt's Solution 7.02μL、10mg/mL ssDNA 39.0μL、1×PBS-TP (1% BSA) 3744.8μL及び10倍希釈AP-HCP凝集体を39.0μL添加
(7) 検出
洗浄後の測定プレートを用い、実施例1[従来法]に記載の方法と同様にシグナルを検出した。
【0078】
2.結果
従来法の測定結果を
図4に、本発明の方法の測定結果を
図5に示す。捕捉プローブを予め固相に固定した場合、従来法では390.6~50000 ng/mLの測定範囲となった。一方、本発明の方法は48.8~50000 ng/mLの範囲で定量性が確認された。さらに、390.6~50000 ng/mLの測定範囲で感度比較すると、本発明の方法は従来法に対して、0 ng/mLのブランクサンプルのシグナルを減じたネットシグナルで157~304倍の高感度化を達成した。
【0079】
[実施例4] 従来法と本発明の方法の比較
【0080】
1.実験材料及び方法
【0081】
[従来法]
(1) 標的核酸
測定対象に核酸医薬として開発されたGTI-2040を用いた。この塩基配列は、5′-GGCTAAATCGCTCCACCAAG-3′であり、合成をINTEGRATED DNA TECHNOLOGIES社にHPLC精製グレードで依頼した。また、20%ヒト血清を含むTE溶液(pH8.0、ニッポンジーン社)を用いて0.00078~0.2nmol/Lに調製して試験に供した。また、標的核酸を含まない20%ヒト血清を含むTE溶液のブランクサンプル(0nmol/L)も同時に測定した。
(2) 捕捉プローブ
捕捉プローブとしては、前記標的核酸の5′末端から10塩基の相補配列を有し、3‘末端がビオチン標識されたCP-GTI2040-10-3Bを用いた。この塩基配列は、5′-CGATTTAGCC-3′であり、合成を日本遺伝子研究所にHPLC精製グレードで依頼した。また、Nuclease-Free Waterを用いて10pmol/μLに調製して試験に供した。
(3) アシストプローブ
アシストプローブとしては、前記標的核酸の3′末端から10塩基の相補配列を有し、かつ、シグナル増幅用プローブ(HCP-1)の一部と同じ塩基配列からなるAP-XYX-GTI2040-10を用いた。合成を日本遺伝子研究所にHPLC精製グレードで依頼した。また、Nuclease-Free Waterを用いて1pmol/μLに調製して試験に供した。
<AP-XYX-GTI2040-10の配列>
5′-CAACAATCAGGACGATACCGATGAAGCAACAATCAGGACCTTGGTGGAG-(NH2)-3′
(4) 測定プレートのブロッキング
ストレプトアビジンが固定された測定プレート(Meso Scale Diagnostics、製品番号L45SA-1)に、ブロッキング液を150μL加え、700rpmで振盪しながら37℃で1時間反応させた後、200μLの1×PBS-TPで2回洗浄した。
(4-1) ブロッキング液の組成
137mM Sodium Chloride、8.1mM Disodium Phosphate、2.68mM Potassium Chloride、1.47mM Potassium Dihydrogenphosphate、0.02%Tween20、1.5ppm ProClin300、3% BSA(ウシ血清アルブミン)
(4-2) 1×PBS-TPの組成
137mM Sodium Chloride、8.1mM Disodium Phosphate、2.68mM Potassium Chloride、1.47mM Potassium Dihydrogenphosphate、0.02%Tween20、1.5ppm ProClin300
(5) 測定プレートへの捕捉プローブの固定
前記捕捉プローブを1×PBS-TPで500倍希釈し、その50μLを前記ブロッキング済測定プレートの各ウエルに分注した。700rpmで振盪しながら25℃で1時間反応させた後、200μLの1×PBS-TPで2回洗浄した。
(6) 測定プレートへの捕捉プローブ-標的核酸-アシストプローブの固定
ハイブリダイゼーション溶液を30μLずつ測定プレートの各ウエルに分注した後、前記標的核酸の20μLを混合した。700rpmで振盪しながら25℃で2時間反応させた後、200μLの1×PBS-TPで2回洗浄した。
(6-1) ハイブリダイゼーション溶液の組成
0.004pmol/μL アシストプローブ、2.5M TMAC、7×Denhardt's Solution、0.8% N-Laurylsarcosine Sodium Salt及び40mM EDTAを加えた500mM Tris-HCl (pH 8.0)
(7) 検出補助反応
捕捉プローブ-標的核酸-アシストプローブ固定後の測定プレートに、検出補助反応液を50μL加え、700rpmで振盪しながら25℃で1時間反応させた後、200μLの1×PBS-TPで2回洗浄した。さらに、1%BSA添加1×PBS-TPで0.04μg/mLに調製したRu錯体標識抗ジゴキシゲニン抗体の50μLを各ウエルに分注した。700rpmで振盪しながら25℃で0.5時間反応させた後、200μLの1×PBS-TPで2回洗浄した。
(7-1) 検出補助反応液の組成
280μLの溶液(500mM Tris-HCl(pH7.5)、0.08% N-Laurylsarcosine Sodium Salt、40mM EDTA)に5M TMACを525μL、20pmol/μL Ru錯体標識HCP-1を4.9μL、20pmol/μL Ru錯体標識HCP-2を6.1μL及びNuclease-Free Waterを934.0μL添加。
(7-2) HCP-1の塩基配列
本実施例4に使用する核酸プローブ(HCP-1)は、自己凝集可能な一対のプローブのうちHCP-2の塩基配列に相補的な配列を含み、5′末端がジゴキシゲニンで標識されている。
<HCP-1の塩基配列>
5′- CAACAATCAGGACGATACCGATGAAGGATATAAGGAGTG -3′
(7-3) HCP-2の塩基配列
本実施例4に使用する核酸プローブ(HCP-2)は、自己凝集可能な一対のプローブのうちAP-XYX-GTI2040-10の塩基配列の一部に相補的な配列を含み、5′末端がジゴキシゲニンで標識されている。
<HCP-2の塩基配列>
5′- GTCCTGATTGTTGCTTCATCGGTATCCACTCCTTATATC -3′
(8) 検出
検出補助反応後の測定プレートに0.5×Read Buffer[[MSD GOLD Read Buffer A(Meso Scale Diagnostics、製品番号R92TG-1)]を滅菌精製水で2倍希釈]150μLを加え、Meso QuickPlex SQ 120MMシステム(Meso Scale Diagnostics社製)を用いてRu錯体標識抗ジゴキシゲニン抗体からの発光量を測定し、標的核酸を検出した。
【0082】
[本発明の方法]
(1) AP-HCP凝集体の形成
下記組成の検出補助反応液をDNA LoBind Tubeに分注して700rpmで振盪しながら40℃で1時間反応させ、AP-HCP凝集体を形成させた。
(1-1) 検出補助反応液の組成
「160μLの溶液(189.3mM Tris-HCl (pH7.5)、2.4×PBS[328.8mM Sodium Chloride、19.44mM Disodium Phosphate、6.432mM Potassium Chloride、3.528mM Potassium Dihydrogenphosphate]、3.6mM EDTA(pH8.0)、0.12% Tween20)に5M TMACを300μL、50×Denhardt's Solutionを80.0μL、1pmol/μL AP-XYX-GTI2040-10を2.5μL、20pmol/μL ジゴキシゲニン標識HCP-1を2.8μL、20pmol/μL ジゴキシゲニン標識HCP-2を3.5μL及びNuclease-Free Waterを453.7μL添加
(2) 測定プレートのブロッキング
[従来法]の「(4)測定プレートのブロッキング」に記載の方法に同じ。
(3) 測定プレートへの捕捉プローブの固定
[従来法]の「(5)測定プレートへの捕捉プローブの固定」に記載の方法に同じ。
(4) 測定プレートへの捕捉プローブ-標的核酸の固定
ハイブリダイゼーション溶液を30μLずつ測定プレートの各ウエルに分注した後、前記標的核酸の20μLを混合した。700rpmで振盪しながら25℃で1時間反応させた後、200μLの1×PBS-TPで2回洗浄した。
(4-1) ハイブリダイゼーション溶液の組成
2.5M TMAC、7×Denhardt's Solution、0.8% N-Laurylsarcosine Sodium Salt及び40mM EDTAを加えた500mM Tris-HCl (pH 8.0)。
(5) 捕捉プローブ-標的核酸-AP-HCP凝集体複合体の形成
捕捉プローブ-標的核酸固定後の測定プレートに、前記AP-HCP凝集体溶液を50μL加え、700rpmで振盪しながら25℃で1時間反応させた後、200μLの1×PBS-TPで2回洗浄した。さらに、1%BSA添加1×PBS-TPで0.04μg/mLに調製したRu錯体標識抗ジゴキシゲニン抗体の50μLを各ウエルに分注した。700rpmで振盪しながら25℃で0.5時間反応させた後、200μLの1×PBS-TPで2回洗浄した。
(6) 検出
洗浄後の測定プレートを用い、[従来法]の「(8)検出」に記載の方法と同様にシグナルを検出した。
【0083】
2.結果
測定結果を
図6に示す。0.00078~0.2nmol/Lの標的核酸を測定したとき、従来法と比べ本発明の方法は、0ng/mLのブランクサンプルのシグナルを減じたネットシグナルで1.2~1.5倍(標的核酸0.2nmol/Lのとき、1.32倍)、S/N比で2.1~3.4倍(標的核酸0.2nmol/Lのとき、3.4倍)向上した。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の検出方法は、生体由来の試料に含まれるアナライトを検出するため、及び当該検出方法を実施するための試薬やキットを設計及び製造するために、簡便かつ安価に使用することができる。
【配列表】