(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】リアクティブアレイ
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/08 20060101AFI20240730BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H01Q13/08
H05K3/46 G
H05K3/46 Q
(21)【出願番号】P 2022567460
(86)(22)【出願日】2021-01-21
(86)【国際出願番号】 US2021014263
(87)【国際公開番号】W WO2021230926
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-11-07
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】シキナ,トーマス,ヴイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヘイヴン,ジョン,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ファヴロー,チャニング,ピー.
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0348749(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/08
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエータであって、
パッチアンテナ層と第1のグランドプレーン層とを有するアンテナであり、前記パッチアンテナ層と前記第1のグランドプレーン層との間に当該ラジエータの反応場領域を持つアンテナと、
前記
反応場領域内に位置する集積回路と、
前記第1のグランドプレーン層の下に位置する基板と、
前記基板の下に位置する第2のグランドプレーン層であり、前記基板を貫く第1のビアによって前記パッチアンテナ層に接続された第2のグランドプレーン層と、
を有するラジエータ。
【請求項2】
前記集積回路はモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)を有する、請求項1に記載のラジエータ。
【請求項3】
前記MMICはベアダイである、請求項2に記載のラジエータ。
【請求項4】
前記MMICはワイヤボンド接続を持たない、請求項2に記載のラジエータ。
【請求項5】
前記集積回路はモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)を有し、該MMICは、パワーアンプ、RFスイッチ、低雑音増幅器、位相シフタ、及び/又はデジタル減衰器を有す
る、請求項1に記載のラジエータ。
【請求項6】
前記第2のグランドプレーン層の下に位置し、前記MMICに接続されたロジック層、を更に含む請求項2に記載のラジエータ。
【請求項7】
前記ロジック層は、
前記第2のグランドプレーン層及び前記基板を貫く第2のビアで前記MMICに接続されている、請求項6に記載のラジエータ。
【請求項8】
当該ラジエータは、約2.2mm以下の厚さを持つ、請求項1に記載のラジエータ。
【請求項9】
当該ラジエータは、前記アンテナと、前記パッチアンテナ層上の塗料層と、少なくとも1つの
モノリシックマイクロ波集積回路(MMIC
)を含んだ前記集積回路と、ボンドフィルムと、
前記基板と、
前記第2のグランドプレーン層と、ロジック層と、構造キャリア層とを有する、請求項
8に記載のラジエータ。
【請求項10】
当該ラジエータは、
前記基板の単位面積当たりの当該ラジエータの質量を表す密度について、約2.0kg/m
2未満の密度を持つ、請求項
9に記載のラジエータ。
【請求項11】
パッチアンテナ層と第1のグランドプレーン層とを有するアンテナを使用し、前記アンテナはラジエータの一部を形成し、前記アンテナは、前記パッチアンテナ層と前記第1のグランドプレーン層との間に前記ラジエータの反応場領域を持ち、
前記
反応場領域内に位置する集積回路を使用する、
ことを有
し、
前記ラジエータは更に、
前記第1のグランドプレーン層の下に位置する基板と、
前記基板の下に位置する第2のグランドプレーン層であり、前記基板を貫く第1のビアによって前記パッチアンテナ層に接続された第2のグランドプレーン層と、
を有する、
方法。
【請求項12】
前記集積回路はモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)を有する、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記MMICはベアダイである、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記MMICはワイヤボンド接続を持たない、請求項
12に記載の方法。
【請求項15】
前記集積回路はモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)を有し、該MMICは、パワーアンプ、RFスイッチ、低雑音増幅器、位相シフタ、及び/又はデジタル減衰器を有す
る、請求項
11に記載の方法。
【請求項16】
前記ラジエータは、約2.2mm以下の厚さを持つ、請求項
11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
技術的に知られているように、複数のアンテナ素子を配置してアレイアンテナを形成することができる。無線周波数(RF)信号を受信することが可能なアンテナ素子を利用することが望ましいことが多い。パッチラジエータを使用することができ、パッチラジエータは低コストであり且つ一体化するのが容易である。さらに、パッチラジエータは、薄くて軽量のラジエータ(放射器)が望ましい場合に有用であり得る。従来のラジエータは、例えば接続を介して当該ラジエータに接続された回路ボード層上のフロントエンド回路から信号を受信する。能力及びコンポーネントが増加するにつれて、回路ボード層が混み合ったものとなり、コンポーネント密度が限界に達する。パッチエリア内にコンポーネントを配置することで、回路ボード上の密度を低くし、更なる能力を可能にすることができる。そのようなビア接続は無損失ではなく、適切な設計なしでは好適な伝播特性を提供することができないことがある。また、ボード層間のビア接続は、困難な製造上の問題を示し得る。
【0002】
技術的に知られているように、マイクロ波回路は、より高次のカップリングモードに起因する性能問題に悩まされ得る。ストリップラインアーキテクチャでは、これらは、グランドプレーンとグランドプレーンに接続するめっきビアを用いて対処される。導電性の蓋部(リッド)を有するマイクロストリップアセンブリでは、めっきしたスルーホールビアを用いることができない。高次モードカップリングに対処するための従前の試みは、マイクロ波PCBアセンブリに薄い吸収体層を挿入するもの、吸収体ブロックを導入するもの、マイクロ波とMMICとの間の隔たりを増加させるもの、及び増幅器利得を低下させるものを含む。これらの方法は幾分の性能向上を提供し得るが、決定論的ではない試行錯誤の方法であるという点で欠点を持つ。結果として、複雑なマイクロ波回路は、設計及び製造のサイクルを遅らせるカップリング問題に遭遇することが多い。吸収体ブロックは、クリティカルな回路に損失を導入してしまうことがあり、かなりのユニット間バラつきを有し、また、完全には効果的ではないことがある。クリティカルなMMIC間の隔たりを増加させることは一般的に、限られたリアルエステートのために高周波又は高度な回路では実用的でなく、新たな過密PCBレイアウト状態を生み出し、常に効果的であるわけではない。増幅器利得を低下させることは、システム全体の性能を低下させ、製造上の欠陥のリスクを高め、性能向上を制限してしまう。
【発明の概要】
【0003】
本発明の実施形態は、例えばパッチラジエータなどのラジエータ(放射器)内にフロントエンドマイクロ波コンポーネントを有する反応場(リアクティブフィールド)アレイに関する方法及び装置を提供する。放射素子及び回路からの接続は基本的に無損失である。実施形態において、回路は、パッケージコスト及び損失を排するベアダイ構成としてもよいMMICで提供される。実施形態において、ラジエータポートから最初の受信増幅器までの電気経路長が基本的にゼロであり、それにより、最小のフロントエンド損失を達成する。ラジエータの反応場内にフロントエンドMMICを収容することは、サイズ及び重量を前例のないレベルまで減少させる。
【0004】
一部の実施形態において、既知のモードサプレッション技術を使用することができる。一部の実施形態において、ラジエータは、MMIC又は他の回路を有するパッチ導体の下のキャビティ内に短絡ポストを含めることによって高次モードサプレッションを含む。
【0005】
実施形態において、PCBを収容したキャビティが、キャビティ内で高次モードサプレッションを達成するように配置された一連の短絡ポストを含む。キャビティは、底部グランドプレーンと見なし得る第1のグランドプレーンと、頂部グランドプレーンと見なし得る第2のグランドプレーンとを含むことができる。キャビティは、当該キャビティのエッジで導電性の壁によって画成されることができる。PCBの表面に1つ以上のICをマウントすることができる。短絡ポストは、より高次のモードを抑圧するために、第2のグランドプレーンからキャビティ内に延びることができる。
【0006】
一態様において、ラジエータは、パッチアンテナ層と第1のグランドプレーン層とを有するアンテナであり、パッチアンテナ層と第1のグランドプレーン層との間に当該ラジエータの反応場領域を持つアンテナと、アクティブ領域内に位置する集積回路と、を有する。
【0007】
ラジエータは、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる:集積回路はモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)を有する;;MMICはベアダイである;MMICはワイヤボンド接続を持たない;集積回路はモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)を有し、該MMICは、パワーアンプ、RFスイッチ、低雑音増幅器、位相シフタ、及び/又はデジタル減衰器を有することができる;MMICに接続されたロジック層;ロジック層は、ビアでMMICに接続されている;パッチアンテナ層に接続された第2のグランド層;第2のグランド層はビアによってパッチアンテナ層に接続されている;当該ラジエータは、約2.2mm以下の厚さを持つ;当該ラジエータは、アンテナと、パッチアンテナ層上の塗料層と、少なくとも1つのMMICを含んだ集積回路と、ボンドフィルムと、ラミネート層と、第2のグランドプレーン層と、ロジック層と、構造キャリア層とを有する;当該ラジエータは、約2.0kg/m2未満の密度を持つ。
【0008】
他の一態様において、方法は、パッチアンテナ層と第1のグランドプレーン層とを有するアンテナを使用し、アンテナはラジエータの一部を形成し、アンテナは、パッチアンテナ層と第1のグランドプレーン層との間にラジエータの反応場領域を持ち、アクティブ領域内に位置する集積回路を使用する、ことを有する。
【0009】
方法は、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる:集積回路はモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)を有する;;MMICはベアダイである;MMICはワイヤボンド接続を持たない;集積回路はモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)を有し、該MMICは、パワーアンプ、RFスイッチ、低雑音増幅器、位相シフタ、及び/又はデジタル減衰器を有することができる;MMICに接続されたロジック層;ロジック層は、ビアでMMICに接続されている;パッチアンテナ層に接続された第2のグランド層;第2のグランド層はビアによってパッチアンテナ層に接続されている;ラジエータは、約2.2mm以下の厚さを持つ;ラジエータは、アンテナと、パッチアンテナ層上の塗料層と、少なくとも1つのMMICを含んだ集積回路と、ボンドフィルムと、ラミネート層と、第2のグランドプレーン層と、ロジック層と、構造キャリア層とを有する;ラジエータは、約2.0kg/m2未満の密度を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0010】
この発明の前述の特徴並びに発明それ自体は、以下の図面の説明からいっそう十分に理解され得る。
【
図1】
図1及び
図1Aは、アンテナ素子の下のキャビティ内に位置するMMICを有するラジエータの例を示している。
【
図1A】
図1及び
図1Aは、アンテナ素子の下のキャビティ内に位置するMMICを有するラジエータの例を示している。
【
図1B】
図1のラジエータのロジック層を寸法例とともに示している。
【
図1C】
図1のラジエータを寸法例とともに示している。
【
図2】
図1のラジエータの一部を形成し得る回路の例の概略表現である。
【
図3】フェーズドアレイアンテナを形成し得るラジエータ素子のタイルの例を示している。
【
図4】PCBと高次モードサプレッションのための短絡ポストとを有するキャビティを示している。
【
図5】短絡ポストを有する2×2ユニットセルを備えたキャビティ内のPCBの上面図である。
【
図6A】モードサプレッションなしのキャビティ内の電界強度のグラフ表現である。
【
図6B】モードサプレッション例ありのキャビティ内の電界強度のグラフ表現である。
【
図7】隙間のある短絡ポスト分布の例を有するキャビティの概略表現である。
【
図8】ICと短絡ポストとを有する概念的なPCBの上面図を示している。
【
図10】高次モードサプレッション用の短絡ポストを設けるステップのシーケンス例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1及び
図1Aは、ラジエータの反応場(リアクティブフィールド)領域内に回路を有するラジエータ100の一例を示している。パッチアンテナ層106の下のキャビティ104内で、集積回路102が1つ以上のMMIC(モノリシックマイクロ波集積回路)を含むことができる。パッチアンテナ層106は、所望の特性を持つ例えば塗料などの材料108で覆われ得る。技術的に知られているように、MMICは、例えば300MHzから300GHzといったマイクロ波周波数で動作する集積回路(IC)を指す。MMICの例は、信号ミキサー、パワーアンプ、低雑音増幅器(LNA)、及び高周波スイッチを含む。MMICデバイスの入力及び出力は典型的に50オームのインピーダンスに整合される。
【0012】
図示の実施形態では、MMIC102の下に、誘電体材料の層112によって隔てられて、ストリップラインにて提供され得るグランド層110がある。例えば銅を有し得るものであるグランド層110と更なるグランド層116との間に、誘電体材料として設けられ得るものであるラジエータ基板層114が置かれている。グランド層116の下のロジック層118が、デジタル回路及びDC電力分配を含むことができる。ロジック層118はキャリア層120の上に置かれることができる。
【0013】
実施形態において、パッチ層106とグランド層110とでパッチアンテナを提供する。アンテナからのフリンジング場が放射を担う。アンテナのエッジのフリンジング電界が同相で足し合わさってアンテナの放射を作り出す。パッチアンテナ上で電流が同相で足し合わさり、そして、反対方向の等しい電流がグランドプレーン上にあり、それは放射を打ち消すものである。アンテナ放射は、有利な電圧分布によるものであるフリンジング場から生じる。すなわち、放射は、電流ではなく電圧によって生じる。パッチアンテナは電圧ラジエータと見なすことができる。実施形態において、パッチ106とグランド層110との間のアクティブ領域内にMMIC102が位置する。
【0014】
グランド層116からパッチラジエータ106への接続を第1のビア122が提供し、ロジック層118からMMIC102への接続を第2のビア124が提供する。実施形態例において、複数のビアがMMIC102に接続される。
【0015】
実施形態において、コンポーネントモジュール126が、例えば抵抗、インダクタ、及び/又はキャパシタ(RLC)のような受動コンポーネントなどの、様々な回路コンポーネントを含むことができ、それをロジック層118の近傍に設けることができる。理解されることには、当業者に知られた多様な回路コンポーネントがコンポーネントモジュール126の一部を形成することができる。
【0016】
実施形態において、MMIC102はベアダイコンポーネントを有し、例えば、MMICはパッケージ(封入体)を含まず、このことは、MMICに必要な面積及び高さを大幅に減少させる。MMIC102は、ワイヤボンドの代わりに、印刷されたベース接続を有してもよい。
【0017】
図1Bは、
図1のロジック層118の層及び層厚さの例を示しており、
図1Cは、
図1のラジエータ100例の層厚さの例を示している。分かるように、図示した実施形態では、ラジエータ例100の総厚は約0.086インチ(2.2mm)よりも小さい。この厚さは、既知の如何なるラジエータよりも小さい。実施形態において、上述のラジエータ実施形態を有するアレイは、2.0kg/m
2よりも小さい重量を持つことができる。容易に理解されることには、このような軽い重量は、例えば、宇宙ベースのレーダ及び航空機搭載レーダを含む重量クリティカルな用途において非常に望ましい。従来のアレイでこのような低い重量密度を持つものは知られていない。
【0018】
理解されることには、図示した実施形態中のTLY-5は、使用可能な約2.2程度の誘電率を持つラミネート層材料の一例として、TACONIC社からのTLY-5を指す。好適なラミネートは、ガラス繊維織物で強化されたガラス充填PTFE複合材を有することができる。低重量の要求のために材料は低密度であるべきである。
【0019】
図2は、
図1のラジエータ100の一部を形成することができる回路200の一例を示している。第1の領域202が、例えば
図1に示したパッチラジエータ100のキャビティ104内のMMIC102などのMMICのための、キャビティ内へのビアインタフェースを提供する。図示した実施形態では、4ポートアセンブリ202がマイクロ波PWBからパッチ領域内まで4本の伝送線路を持ち込んでいる。これらは、2つの偏波の送信及び受信を表す。RXポートは、ラジエータフィードに接続する前に、2ポートのLNA210を通り抜けてからRFスイッチ208、209に至る。TXポートはRFスイッチに直接接続する。実施形態例において、ビアインタフェースは4つのビアを含む。第1及び第2の接続204、206が、V偏波及びH偏波を含むことができるものである例えば
図1のパッチアンテナ102などのパッチアンテナへのインタフェースを提供する。RFスイッチ208、209は、ラジエータの送信動作と受信動作との間で選択を行うように制御される。LNA210は、受信モードにおいてスイッチ208、209を介して選択的にパッチアンテナに結合されることができる。送信モードでは、パワーアンプ(図示せず)からの信号が、空気中への送信のために、スイッチ208、209を介してパッチアンテナに送られる。当該ラジエータは、キャビティ内でのモードサプレッションを含み得る。モードサプレッション構成の例は、キャビティ内の短絡ポスト、MMIC回路の上の薄い吸収体層、PCB上の吸収体ブロック、MMIC離隔距離の増加、増幅器利得の制限、及びこれらに類するものを含み得る。
【0020】
図3は、アレイから取り外して示されているラジエータのタイル又はサブアレイ302の中に上述のラジエータ実施形態例を有した、説明のためのアレイ300を示している。理解されることには、ラジエータの実施形態は、多種多様なアンテナアレイに使用されることができる。
【0021】
反応場アレイの実施形態例は、インテグレートされたベアダイMMICを備えたラジエータを含むことができる。実施形態において、MMIC内の回路は、例えばパッチラジエータで必要なリアルエステートを制限するために比較的単純であり得る。一部のラジエータ実施形態は、表面実装技術(SMT)適合であり、既知のPCBレイアウトプロセスにインテグレートされることができる。
【0022】
理解されることには、上述のラジエータ実施形態は、例えばXバンドからKuバンドのフェーズドアレイなどの従来のラジエータと比較して、フェーズドアレイの大幅な軽量化を達成する。このような軽量化は、ウェアラブルなセンサ及び通信、望ましい航空機センサ、新しいクラスの宇宙ベースのアレイ、レーダ、CubeSAT、及びナノSATを可能にする。
【0023】
理解されることには、ラジエータの実施形態に関して、ここでは時々、特定のアレイ形状及び/又はサイズ(例えば、特定数のアンテナ素子)を持つアレイアンテナ、又は特定数のアンテナ素子で構成されるアレイアンテナを参照している。しかしながら、当業者が理解することには、ここに記載される概念、回路、及び技術は、様々なサイズ、形状、及びタイプのアレイアンテナに適用可能である。
【0024】
従って、ここで提供される説明は、保護を求める概念、システム、及び回路を、実質的に正方形又は長方形の形状を持つアンテナアレイであって、各々が実質的に正方形又は長方形の形状を持つa個の素子を有するアレイアンテナの文脈で記述するが、当業者が理解することには、当該概念は、他のサイズ及び形状のアレイアンテナ、並びに多様な異なるサイズや形状を持つアンテナ素子にも等しく適用される。
【0025】
また、ここでは時々、特定の周波数での動作向けに構成された特定のタイプ、サイズ、及び/又は形状のアンテナ素子を含むアレイアンテナを参照する。当業者が理解することには、当然ながら、他のアンテナ形状も使用することができ、また、RF周波数レンジ内の任意の周波数での動作のために1つ以上のアンテナ素子のサイズを選択することができる。
【0026】
これまた理解されるべきことには、アンテナ素子は、例えば長方形、円形正方形、三角形(例えば、正三角形又は二等辺三角形)、及びスパイラル構成などの周期的な格子配置(又は構成)、並びに、任意の形状の格子配置を含んだ非周期的又は他の幾何学的な配置を含め、複数の異なるアンテナ素子格子配置のうちのいずれかを有して提供されることができる。
【0027】
図4は、キャビティ内で高次モードサプレッションを達成するように配置された短絡ポスト402を有するキャビティ400の一例を示している。図示した実施形態において、キャビティ400は、底部グランドプレーンと見なし得る第1のグランドプレーン404と、頂部グランドプレーンと見なし得る第2のグランドプレーン406とを含んでいる。キャビティ400は、当該キャビティのエッジで導電性の壁408によって画成されている。誘電体層414を含むPCB412の表面上にIC410がマウントされている。図示した実施形態では、マイクロストリップフィードライン416がIC410に接続されている。短絡ポスト402は、第1のグランドプレーン404から、めっきスルーホール又はビア418によって、キャビティ400内に延びている。
【0028】
図5は、一例の2×2ユニットセルを持つマイクロ波プリント回路基板(PCB)500の例を示しており、それ故に、破線で示す4つのユニットセル502a-502dがある。
図4に示したように、PCBは、導電性の壁で取り囲まれたキャビティ内に配置されることができる。PCBは、多数のIC並びに例えばキャパシタ及び抵抗などのコンポーネントを含む。ユニットセル502の交点に第1のIC504が位置している。ICは、特定の用途のニーズを満たすのに適した任意の実用デバイスを含み得る。特定の一実施形態において、第1のIC504は、例えばスイッチ並びにパワーアンプ及び/又は低雑音増幅器に結合された、例えば4-1ビームフォーマなどのビームフォーマデバイスを有する。様々な位置に一連のめっきスルーホール506が示されている。ここで更に詳しく説明するように、短絡ポスト(図示せず)を様々な位置に配置することで高次モードカップリングを抑制することができる。
【0029】
図6Aは、モードサプレッションなしのキャビティ内のPCBについてシミュレーションした電界600を示している。見て取れるように、幾つかの領域602で高次モードカップリングが存在する。
図6Bは、例えば
図5に示したPCBなど、一連の短絡ポストによって高次モードサプレッションが提供されるキャビティ内のPCBについてシミュレーションした電界を示している。図示した実施形態では、隣接するユニットセルのアイソレーションについて30dBの改善が示されている。図示したモードサプレッション例では、電界を発生するIC又は他の発生源を取り囲む8個のレシーバ604が存在する。所望の高次モードサプレッションを達成するために、ユニットセルのエッジに短絡ポスト606が配置されている。
【0030】
実施形態において、高次モードカップリングを抑圧するための短絡ポストを配置するために、カットオフ境界が使用される。そのようなカップリングモードは、インピーダンス不整合、分散、増幅器発振、及び乏しいアイソレーションを含む予期しない電気的な問題の原因となる。これらの問題は、キャビティモードがしばしば考慮されず、正確にモデル化するのが難しいために発生する。結果として、これらのモードは、それ以外の点では高価で注意深く設計された回路に侵入し、しばしば許容できない電気性能を生み出す。
【0031】
高次モードカップリングに対処するための従前の試みは、マイクロ波PCBアセンブリに薄い吸収体層を挿入するもの、吸収体ブロックを導入するもの、マイクロ波とMMICとの間の隔たりを増加させるもの、及び増幅器利得を低下させるものを含む。これらの方法は幾分の性能向上を提供し得るが、決定論的ではない試行錯誤の方法であるという点で欠点を持つ。結果として、複雑なマイクロ波回路は、設計及び製造のサイクルを遅らせるカップリング問題に遭遇することが多い。吸収体ブロックは、クリティカルな回路に損失を導入してしまうことがあり、かなりのユニット間バラつきを有し、また、完全には効果的ではないことがある。
【0032】
クリティカルなMMIC間の隔たりを増加させることは一般的に、限られたリアルエステートのために高周波又は高度な回路では実用的でなく、新たな過密PCBレイアウト状態を生み出し、常に効果的であるわけではない。増幅器利得を低下させることは、システム全体の性能を低下させ、製造上の欠陥のリスクを高め、性能向上を制限してしまう。
【0033】
高次モードサプレッションの実施形態例は、意図したTEM伝播への影響は最小限でカップリングを抑制する。実施形態において、短絡ポストは、PCBレイアウトプロセスに容易にインテグレートすることができる表面実装技術(SMT)を用いて形成される。
【0034】
実施形態において、高次キャビティモードを特定するために、FEM(有限要素法)全波ソルバーを用いてPCB設計が分析される。キャビティの全体サイズが、低損失カップリング機構を形成するモード組成を決定する。導電性の短絡ポストは、意図するマイクロストリップTEM場への影響は殆どなしにキャビティモードカップリングを断ち切る。
【0035】
短絡ポスト又は接地ポストを用いてユニットセルの周囲にエッジ壁を作り出すことにより、より小さい有効ユニットセルが生成され、それにより、キャビティの最小共振周波数が高められる。一般に、短絡ポストによって作り出される“壁”は連続である必要はない。実施形態において、より詳しく後述するように、壁は隙間を持つことができる。この隙間のサイズが、許されるユニットセル間カップリングを決定する。短絡ポストをユニットセル内に配置することで、高次共鳴モードを抑圧するだけでなく、反応場による直接的なポイント・ツー・ポイントカップリングに対処することができる。
【0036】
図7は、ユニットセルの周囲にぐるりと一連の短絡ポスト702を有するユニットセル700の一例を示している。図示した実施形態において、キャビティ704は中央短絡ポスト706を含んでいる。キャビティ704の各側面は、短絡ポスト702が配置されない隙間708を含むことができる。隙間708は、所望レベルのモードサプレッションを達成するように寸法決めされるべきである。キャビティ704は、例えば同軸接続用のポートなどのコネクタ710を含むことができる。
【0037】
図8は、高次モードサプレッションのための一連の短絡ポスト802を有するPCB800のレイアウトの一例を示している。図示した実施形態では、2×2ユニットセルU1、U2、U3、U4構造が画成されている。PCB800上に、SMT ICを有し得るものであるMMIC804が多数配置されている。出力ポート806がPCB800の外部接続を提供し得る。トレース808がMMICを相互接続している。
【0038】
図示した実施形態において、短絡ポスト802は、ユニットセルのセット間のリークを防止するために、より小さい有効キャビティを作り出す“たるんだ”円を形成するように配置されている。実施形態において、短絡ポスト802は、IC804の周りに概して円形の編隊を提供する。実施形態において、寸法Aとして示している短絡ポスト802間の間隔は、およそλ/5である。実施形態において、λ/5というモードサプレッションピン間隔は、ユニットセル間に30dBのアイソレーションを達成する。コンポーネント及びマイクロストリップトレースの周囲にピンを配置しなければならない実際の回路には、λ/5以下の間隔ルールが適用され得る。
【0039】
ユニットセル内の短絡ポスト802は、低次/帯域内モード場構造をサポートしない境界条件を作り出すことによって2×2ユニットセル構造内のカップリングを抑制するとともに、例えばチップインタフェースや、出力への移行部といった、高いカップリングのポイント同士の間の見通し線を遮ることによって直接的な反応場カップリングを防止する。短絡ポスト802は、任意の好適技術を用いて形成されることができる。
【0040】
図9A及び
図9Bに示す一実施形態において、短絡ポストは、スタッドバンプを形成するためのワイヤボンディングシステムを用いて形成される。キャピラリーと呼ばれることがある針状のツール902を通してワイヤ900が供給される。ワイヤ900に高電圧の電荷を与えることで、キャピラリー902の先端にあるワイヤを溶かす。溶けた金属の表面張力により、ワイヤ900の先端がボール904の形になる。ボール904はすぐに固化し、キャピラリー902が、典型的に125°C以上に加熱されるものであるチップの表面まで降下される。そして、マシンがキャピラリー902上に押し下がり、付属のトランスデューサで超音波エネルギーを印加する。熱、圧力、及び超音波エネルギーの組み合わせが、金属ボールとチップの表面との間の溶接を生み出す。スタッドバンプと呼び得る一連のボールを互いの上に積み重ねることができる。スタッドバンプは、特定の用途の要求を満たすように実用的な任意の寸法を有して形成されることができる。実施形態において、スタッドバンプは5ミル程度の直径を持つことができる。
【0041】
図10は、本発明の実施形態例に従った、キャビティ内に高次モードサプレッションを提供するための一連のステップの一例を示している。ステップ1000にて、PCBを収容するキャビティの寸法が受け取られる。寸法例は、キャビティの長さ、幅、及び高さを含む。実施形態において、キャビティは導電性の壁によって画成される。ステップ1002にて、PCBのレイアウトが受け取られる。例えば、レイアウトは、PCB上のIC、コンポーネント、及びこれらに類するものの位置を含むことができる。ステップ1004にて、短絡ポストの位置が決定される。ステップ1006にて、所望の高次モードサプレッションを提供すべく、決定された位置に短絡ポストが形成される。
【0042】
実施形態の理解を容易にするために、例えば“垂直”、“上”、“下”、“下側”、“上側”、“左”、“右”、及びこれらに類するものなどの相対語が使用されることがあるが、そのような用語は、請求項に係る発明の範囲を何ら限定するものではない。これらの用語は、及び如何なる類似の相対語も、何らかの限定として解釈されるべきでなく、むしろ、本発明の実施形態を記述する際の便宜上の用語として解釈されるべきである。
【0043】
ここに記載された概念、システム、回路、及び技術の少なくとも一部の実施形態の用途は、以下に限られないが、軍事及び非軍事(すなわち民生)の用途を含み、それらは、以下に限られないが、船舶ベースの、空中(例えば、飛行機、ミサイル、又は無人航空機(UAV))の、並びに宇宙及び衛星の用途を含む多種多様な用途向けのレーダシステム、電子戦(EW)システム、及び通信システムを含む。従って、理解されるべきことには、ここに記載された回路は、レーダシステム又は通信システムの一部として使用されることができる。
【0044】
本発明の例示的な実施形態を説明したが、当業者にもはや明らかになることには、それらの概念を組み込んだ他の実施形態も使用され得る。ここに含まれる実施形態は、開示された実施形態に限定されるべきでなく、むしろ、添付の特請求項の精神及び範囲によってのみ限定されるべきである。ここで引用される全ての刊行物及び参考文献は、それらの全体にてここに明示的に援用される。
【0045】
ここに記載した複数の異なる実施形態の要素を組み合わせて、具体的には上述していない他の実施形態を形成してもよい。単一の実施形態の文脈で説明されたものである様々な要素がまた、別々に又は何らかの好適なサブコンビネーションで提供されてもよい。ここでは具体的に記載されていない他の実施形態も、以下の請求項の範囲内にある。