(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】液体柔軟剤組成物
(51)【国際特許分類】
D06M 13/325 20060101AFI20240730BHJP
A01N 25/30 20060101ALI20240730BHJP
A01N 59/00 20060101ALI20240730BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240730BHJP
D06M 11/56 20060101ALI20240730BHJP
D06M 13/203 20060101ALI20240730BHJP
D06M 13/342 20060101ALI20240730BHJP
D06M 13/46 20060101ALI20240730BHJP
D06M 15/53 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
D06M13/325
A01N25/30
A01N59/00 B
A01P3/00
D06M11/56
D06M13/203
D06M13/342
D06M13/46
D06M15/53
(21)【出願番号】P 2019238660
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】桶田 翔太
(72)【発明者】
【氏名】中村 太一
(72)【発明者】
【氏名】森田 耕平
(72)【発明者】
【氏名】天谷 友彦
【審査官】橋本 憲一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-163559(JP,A)
【文献】特開2015-166503(JP,A)
【文献】国際公開第2009/075284(WO,A1)
【文献】特開2014-009245(JP,A)
【文献】国際公開第2012/090989(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0061173(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 11/00-11/84
D06M 13/00-15/715
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体柔軟剤組成物であって、下記(A)~(D)成分:
(A)エステル基及び/又はアミド基で分断されていてもよい、炭素数10~26の炭化水素基を分子内に1~3個有するアミン化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる化合物、
(B)
水溶性亜鉛塩、水溶性銅塩、水溶性鉄塩及び水溶性マンガン塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価金属の水溶性塩、
(C)式(I)~(IV)で表されるアミノカルボン酸化合物、リシノール酸及びこれらの塩からなる群から選ばれる化合物、
【化1】
(式中、
A
Iは、炭素数8~22の直鎖又は分岐アルキル基、スルホ基、アミノ基、水酸基、水素原子又はCOOM
Iであり、
M
Iは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、カチオン性アンモニウム基、及びアルカノールアミンからなる群より選ばれ、
m
I及びn
Iは、それぞれ0~2の整数である。)
【化2】
(式中、
X
II-1~X
II-4は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、カチオン性アンモニウム基、及びアルカノールアミンからなる群より選ばれ、
Q
IIは、水素原子、又は炭素数8~22の直鎖又は分岐アルキル基であり、
R
IIは、水素原子又は水酸基であり、
n
IIは、0又は1である。)
【化3】
(式中、
R
IIIは、炭素数8~22の直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル基であり、
A
IIIは、H、メチル基又は(CH
2)m
III-COOX
IIIであり、
m
IIIは、1~3であり、
X
IIIは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカノールアミン又はNH
4であり、
n
IIIは、1~3である。)
【化4】
(式中、
X
IVは、水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、
n
IVは1又は2である。)、並びに
(D)ノニオン界面活性剤
を含み、
(B)成分と(C)成分の合計の(A)成分に対する質量比(〔B+C〕/A)が0.01~0.5であり
、
(B)成分と(C)成分の合計の(D)成分に対する質量比(〔B+C〕/D)が0.1~4であ
り、かつ
(C)成分の含量が、液体柔軟剤組成物の総質量に対し0.5~3質量%であることを特徴とする、液体柔軟剤組成物。
【請求項2】
(C)成分が、式(I)で表される化合物又はその塩、又は、リシノール酸又はその塩である、請求項
1に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項3】
(D)成分が、炭素数10~18のアルキル基を有し、エチレンオキシドの平均付加モル数が20~80モルのポリオキシエチレンアルキルエーテルである、請求項1
又は2に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項4】
(B)成分の含量が、液体柔軟剤組成物の総質量に対し0.05~3質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項5】
(B)成分と(C)成分の質量比(B/C)が0.1~10である、請求項1~4のいずれか一項に記載の液体柔軟剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体柔軟剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本国内における柔軟剤の市場規模は拡大傾向にあり、なかでも消臭機能を有する柔軟剤のシェアは年々伸長している。一方、現在の消臭技術の多くは、香りによるマスキングに頼っており、スメハラ等の問題が懸念されている。
そこで、香りに頼らない消臭技術が求められている。その具体例として、水溶性無機亜鉛化合物(塩化亜鉛等)及び水溶性ヒドロキシカルボン酸亜鉛(クエン酸亜鉛等)を液体柔軟剤へ配合する技術が知られている(特許文献1)。
また、柔軟剤ではないが、2価金属の水溶性塩(硫酸亜鉛等)とキレート剤(メチルグリシンジ酢酸等)とを併用した消臭剤が知られている(特許文献2)。
その他、柔軟剤の色相安定性を向上させために、メチルグリシンジ酢酸を配合する技術が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2009/075284号
【文献】国際公開第2012/090989号
【文献】特開2015-200049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者が特許文献1~2の技術を検討したところ課題を見出した。特許文献1の技術については、亜鉛化合物の配合のみでは十分な消臭効果が得られないという課題や、亜鉛化合物の種類によっては柔軟剤粘度の著しい低下又は上昇が起こり、使用性が低下するという課題が見出された。特許文献2の技術については、2価金属の水溶性塩やキレート剤を柔軟剤へ配合すると、使用性が低下するという課題が見出された。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を鋭意検討した結果、本発明者は(A)特定種類のカチオン界面活性剤と、(B)2価金属の水溶性塩と、(C)特定種類のアミノカルボン酸化合物又はリシノール酸と、(D)ノニオン界面活性剤とを特定比率で配合すると、消臭効果(特に、部屋干し臭に対する消臭効果)、使用性及び凍結復元性に優れた液体柔軟剤が得られることを見出した。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の〔1〕~〔6〕に関するものである。
〔1〕液体柔軟剤組成物であって、下記(A)~(D)成分:
(A)エステル基及び/又はアミド基で分断されていてもよい、炭素数10~26の炭化水素基を分子内に1~3個有するアミン化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる化合物、
(B)2価金属の水溶性塩、
(C)式(I)~(IV)で表されるアミノカルボン酸化合物、リシノール酸及びこれらの塩からなる群から選ばれる化合物、
【化1】
(式中、
A
Iは、炭素数8~22の直鎖又は分岐アルキル基、スルホ基、アミノ基、水酸基、水素原子又はCOOM
Iであり、
M
Iは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、カチオン性アンモニウム基、及びアルカノールアミンからなる群より選ばれ、
m
I及びn
Iは、それぞれ0~2の整数である。)
【化2】
(式中、
X
II-1~X
II-4は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、カチオン性アンモニウム基、及びアルカノールアミンからなる群より選ばれ、
Q
IIは、水素原子、又は炭素数8~22の直鎖又は分岐アルキル基であり、
R
IIは、水素原子又は水酸基であり、
n
IIは、0又は1である。)
【化3】
(式中、
R
IIIは、炭素数8~22の直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル基であり、
A
IIIは、H、メチル基又は(CH
2)m
III-COOX
IIIであり、
m
IIIは、1~3であり、
X
IIIは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカノールアミン又はNH
4であり、
n
IIIは、1~3である。)
【化4】
(式中、
X
IVは、水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、
n
IVは1又は2である。)、並びに
(D)ノニオン界面活性剤
を含み、
(B)成分と(C)成分の合計の(A)成分に対する質量比(〔B+C〕/A)が0.01~0.5であり、かつ
(B)成分と(C)成分の合計の(D)成分に対する質量比(〔B+C〕/D)が0.1~4であることを特徴とする、液体柔軟剤組成物。
〔2〕(B)成分が、水溶性亜鉛塩又は水溶性銅塩である、前記〔1〕に記載の液体柔軟剤組成物。
〔3〕(C)成分が、式(I)で表される化合物又はその塩、又は、リシノール酸又はその塩である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の液体柔軟剤組成物。
〔4〕(B)成分と(C)成分の合計の(A)成分に対する質量比(〔B+C〕/A)が0.25~0.45である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物。
〔5〕(B)成分と(C)成分の合計の(D)成分に対する質量比(〔B+C〕/D)が1~2である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物。
〔6〕(D)成分が、炭素数10~18のアルキル基を有し、エチレンオキシドの平均付加モル数が20~80モルのポリオキシエチレンアルキルエーテルである、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物。
【発明の効果】
【0007】
後述の実施例で示されるように、本発明の液体柔軟剤組成物は、消臭効果、使用性及び凍結復元性に優れている。したがって、本発明は従来製品にはない付加価値を有する柔軟剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔(A)成分:カチオン界面活性剤〕
(A)成分は「エステル基及び/又はアミド基で分断されていてもよい、炭素数10~26の炭化水素基を分子内に1~3個有するアミン化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる化合物」であるカチオン界面活性剤である。
(A)成分は、柔軟性付与効果を液体柔軟剤組成物へ付与するために配合する。
【0009】
炭素数10~26の炭化水素基(以下、本明細書において「長鎖炭化水素基」ということがある)の炭素数は、10~26であり、17~26が好ましく、19~24がより好ましい。炭素数が10以上であると柔軟性が良好で、26以下であるとハンドリング性が良好である。長鎖炭化水素基は、飽和であっても不飽和であってもよい。長鎖炭化水素基が不飽和である場合、二重結合の位置はいずれの箇所にあっても構わないが、二重結合が1個の場合には、その二重結合の位置は長鎖炭化水素基の中央であるか、中央周辺に存在していることが好ましい。
長鎖炭化水素基は、鎖状の炭化水素基であっても構造中に環を含む炭化水素基であってもよく、好ましくは鎖状の炭化水素基である。鎖状の炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよい。鎖状の炭化水素基としては、アルキル基またはアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0010】
長鎖炭化水素基は、エステル基(-COO-)及び/又はアミド基(-NHCO-)で分断されていてもよい。すなわち、長鎖炭化水素基は、その炭素鎖中に、エステル基及びアミド基からなる群から選択される少なくとも1種の分断基を有し、該分断基によって炭素鎖が分断されたものであってもよい。該分断基を有すると、生分解性が向上する等の点から好ましい。
該分断基を有する場合、1つの長鎖炭化水素基が有する分断基の数は1つであっても2つ以上であってもよい。すなわち、長鎖炭化水素基は、分断基によって1ヶ所が分断されていてもよく、2ヶ所以上が分断されていてもよい。分断基を2つ以上有する場合、各分断基は、同じであっても異なっていてもよい。
なお、炭素鎖中に分断基を有する場合、分断基が有する炭素原子は、長鎖炭化水素基の炭素数にカウントするものとする。
長鎖炭化水素基は、通常、工業的に使用される牛脂由来の未水添脂肪酸、不飽和部を水添もしくは部分水添して得られる脂肪酸、パーム椰子、油椰子などの植物由来の未水添脂肪酸もしくは脂肪酸エステル、あるいは不飽和部を水添もしくは部分水添して得られる脂肪酸又は脂肪酸エステル等を使用することにより導入される。
(A)成分であるアミン化合物としては、2級アミン化合物又は3級アミン化合物が好ましく、3級アミン化合物がより好ましい。
【0011】
(A)成分であるアミン化合物として、より具体的には、下記一般式(A1)で表される化合物が挙げられる。
【化5】
〔式中、R
1~R
3はそれぞれ独立に、炭素数10~26の炭化水素基、-CH
2CH(Y)OCOR
4(Yは水素原子又はCH
3であり、R
4は炭素数7~21の炭化水素基である。)若しくは-(CH
2)
nNHCOR
5(nは2又は3であり、R
5は炭素数7~21の炭化水素基である。)、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、-CH
2CH(Y)OH、又は-(CH
2)
nNH
2であり、R
1~R
3のうちの少なくとも1つは、炭素数10~26の炭化水素基、-CH
2CH(Y)OCOR
4又は-(CH
2)
nNHCOR
5である。〕
【0012】
一般式(A1)中、R1~R3における炭素数10~26の炭化水素基の炭素数は、17~26が好ましく、19~24がより好ましい。該炭化水素基は、飽和であっても不飽和であってもよい。該炭化水素基としては、アルキル基又はアルケニル基が好ましい。
-CH2CH(Y)OCOR4中、Yは水素原子又はCH3であり、水素原子が特に好ましい。R4は炭素数7~21の炭化水素基、好ましくは炭素数15~19の炭化水素基である。一般式(A1)で表される化合物中にR4が複数存在するとき、該複数のR4は互いに同一であってもよく、それぞれ異なっていても構わない。
【0013】
R4の炭化水素基は、炭素数8~22の脂肪酸(R4COOH)からカルボキシ基を除いた残基(脂肪酸残基)であり、R4のもととなる脂肪酸(R4COOH)は、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよく、また、直鎖脂肪酸でも分岐脂肪酸でもよい。中でも、飽和又は不飽和の直鎖脂肪酸が好ましい。柔軟処理した衣類に良好な吸水性を付与するために、R4のもととなる脂肪酸の飽和/不飽和比率(質量比)は、90/10~0/100が好ましく、80/20~0/100がより好ましい。
R4が不飽和脂肪酸残基である場合、シス体とトランス体が存在するが、シス体/トランス体の質量比率は、40/60~100/0が好ましく、70/30~90/10が特に好ましい。
【0014】
R4のもととなる脂肪酸として具体的には、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、部分水添パーム油脂肪酸(ヨウ素価10~60)、部分水添牛脂脂肪酸(ヨウ素価10~60)などが挙げられる。中でも、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、エライジン酸、およびリノール酸から選ばれる2種以上を所定量ずつ組み合わせて、以下の条件(a)~(c)を満たすように調整した脂肪酸組成物を用いることが好ましい。
(a)飽和脂肪酸/不飽和脂肪酸の比率(質量比)が90/10~0/100、より好ましくは80/20~0/100である。(b)シス体/トランス体の比率(質量比)が40/60~100/0、より好ましくは70/30~90/10である。(c)炭素数18の脂肪酸が60質量%以上、好ましくは80質量%以上であり、炭素数20の脂肪酸が2質量%未満であり、炭素数21~22の脂肪酸が1質量%未満である。
【0015】
-(CH2)nNHCOR5中、nは2又は3であり、3が特に好ましい。R5は炭素数7~21、好ましくは15~19の炭化水素基である。一般式(A1)で表される化合物中にR5が複数存在するとき、該複数のR5は互いに同一であってもよく、それぞれ異なっていても構わない。R5としては、R4と同様のものが挙げられる。
【0016】
R1~R3のうち、少なくとも1つは長鎖炭化水素基(炭素数10~26の炭化水素基、-CH2CH(Y)OCOR4、又は-(CH2)nNHCOR5)であり、2つが長鎖炭化水素基であることが好ましい。R1~R3のうち、1つ又は2つが長鎖炭化水素基である場合、残りの2つ又は1つは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、-CH2CH(Y)OH、又は-(CH2)nNH2であり、炭素数1~4のアルキル基、-CH2CH(Y)OH、又は-(CH2)nNH2であることが好ましい。これらのうち、炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。-CH2CH(Y)OHにおけるYは、-CH2CH(Y)OCOR4中のYと同様である。-(CH2)nNH2におけるnは、-(CH2)nNHCOR5中のnと同様である。
【0017】
前記一般式(A1)で表される化合物の好ましい例として、下記一般式(A1-1)~(A1-8)で表される化合物が挙げられる。
【化6】
〔式中、R
7及びR
8はそれぞれ独立に、炭素数10~26の炭化水素基である。R
9及びR
10はそれぞれ独立に、炭素数7~21の炭化水素基である。〕
【0018】
R7及びR8における炭化水素基としては、前記R1~R3における炭素数10~26の炭化水素基と同様のものが挙げられる。
R9、R10における炭素数7~21の炭化水素基としては、前記R4における炭素数7~21の炭化水素基と同様のものが挙げられる。式中にR9が複数存在するとき、該複数のR9は互いに同一であってもよく、それぞれ異なっていても構わない。
【0019】
(A)成分は、アミン化合物の塩又は4級化物であってもよい。
アミン化合物の塩は、アミン化合物を酸で中和することにより得られる。アミン化合物の中和に用いる酸としては、有機酸でも無機酸でもよく、例えば塩酸、硫酸、メチル硫酸等が挙げられる。アミン化合物の中和は、公知の方法により実施できる。
アミン化合物の4級化物は、該アミン化合物に4級化剤を反応させて得られる。アミン化合物の4級化に用いる4級化剤としては、例えば、塩化メチル等のハロゲン化アルキル、ジメチル硫酸等のジアルキル硫酸などが挙げられる。これらの4級化剤をアミン化合物と反応させると、アミン化合物の窒素原子に4級化剤のアルキル基が導入され、4級アンモニウムイオンとハロゲンイオン又はモノアルキル硫酸イオンとの塩が形成される。4級化剤により導入されるアルキル基は、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。アミン化合物の4級化は、公知の方法により実施できる。
【0020】
(A)成分としては、前記一般式(A1)で表される化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、前記一般式(A1-1)~(A1-8)、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、(A1-4)~(A1-6)(各式中、R9は炭素数15~17のアルキル基及びアルケニル基である)、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種が特に好ましい。
【0021】
一般式(A1)で表される化合物、その塩及びその4級化物は、市販のものを用いてもよく、公知の方法により製造したものを用いてもよい。
例えば、一般式(A1-2)で表される化合物(以下「化合物(A1-2)」)、一般式(A1-3)で表される化合物(以下「化合物(A1-3)」)は、上記脂肪酸組成物、または該脂肪酸組成物における脂肪酸を該脂肪酸のメチルエステルに置き換えた脂肪酸メチルエステル組成物とメチルジエタノールアミンとの縮合反応により合成できる。その際、柔軟性を良好にする観点から、「化合物(A1-2)/化合物(A1-3)」で表される存在比率が、質量比で99/1~50/50となるように合成することが好ましい。
更に、その4級化物を用いる場合には、4級化剤としてジメチル硫酸を用いることがより好ましい。その際、柔軟性の観点から「化合物(A1-2)の4級化物/化合物(A1-3)の4級化物」で表される存在比率が、質量比で99/1~50/50となるように合成することが好ましい。
【0022】
一般式(A1-4)で表される化合物(以下「化合物(A1-4)」)、一般式(A1-5)で表される化合物(以下「化合物(A1-5)」)、一般式(A1-6)で表される化合物(以下「化合物(A1-6)」)は、上記脂肪酸組成物または脂肪酸メチルエステル組成物とトリエタノールアミンとの縮合反応により合成できる。その際、化合物(A1-4)、(A1-5)、(A1-6)の合計質量に対する個々の成分の含有比率は、柔軟性の観点から、化合物(A1-4)が1~60質量%、化合物(A1-5)が5~98質量%、化合物(A1-6)が0.1~40質量%であることが好ましく、化合物(A1-4)が30~60質量%、化合物(A1-5)が10~55質量%、化合物(A1-6)が5~35質量%であることがより好ましい。
また、その4級化物を用いる場合には、4級化反応を十分に進行させる点で、4級化剤としてジメチル硫酸を用いることがより好ましい。化合物(A1-4)、(A1-5)、(A1-6)の各4級化物の存在比率は、柔軟性の観点から質量比で、化合物(A1-4)の4級化物が1~60質量%、化合物(A1-5)の4級化物が5~98質量%、化合物(A1-6)の4級化物が0.1~40質量%であることが好ましく、化合物(A1-4)の4級化物が30~60質量%、化合物(A1-5)の4級化物が10~55質量%、化合物(A1-6)の4級化物が5~35質量%であることがより好ましい。また、化合物(A1-4)、(A1-5)、(A1-6)を4級化する場合、一般的に4級化反応後も4級化されていないエステルアミンが残留する。その際、「4級化物/4級化されていないエステルアミン」の比率は70/30~99/1の質量比率の範囲内であることが好ましい。
【0023】
一般式(A1-7)で表される化合物(以下「化合物(A1-7)」)、一般式(A1-8)で表される化合物(以下「化合物(A1-8)」)は、上記脂肪酸組成物とN-メチルエタノールアミンとアクリロニトリルの付加物より、J.Org.Chem.,26,3409(1960)に記載の公知の方法で合成したN-(2-ヒドロキシエチル)-N-メチル-1,3-プロピレンジアミンとの縮合反応により合成できる。その際、「化合物(A1-7)/化合物(A1-8)」で表される存在比率が質量比で99/1~50/50となるように合成することが好ましい。またその4級化物を用いる場合には4級化剤として塩化メチルを用いることが好ましく、「化合物(A1-7)の4級化物/化合物(A1-8)の4級化物」で表される存在比率が、質量比で99/1~50/50となるように合成することが好ましい。
【0024】
(A)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能であるか、又は調製可能である。
【0025】
(A)成分は、単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0026】
(A)成分の含量は、配合目的を達成し、かつ、後述の他成分との配合比を満たす限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、例えば4~16質量%、好ましくは6~14質量%、より好ましくは8~12質量%である。(A)成分の含量が4質量%以上であると、より向上した柔軟性付与効果が得られ、16質量%以下であると、より良好な使用性を可能にする柔軟剤粘度が得られる。
【0027】
〔(B)成分:2価金属の水溶性塩〕
(B)成分は、液体柔軟剤組成物へ消臭効果を付与するために配合する。
「水溶性」とは、25℃の水1リットルに10g以上溶解することをいう。
(B)成分の具体例としては、水溶性亜鉛塩(硫酸亜鉛、塩化亜鉛等)、水溶性銅塩(硫酸銅、塩化銅等)、水溶性鉄塩(硫酸鉄等)や、水溶性マンガン塩(塩化マンガン等)等があげられる。(B)成分には、これらの水和物も含む。
(B)成分としては、消臭性能の面から水溶性亜鉛塩及び水溶性銅塩が好ましい。
水溶性亜鉛塩としては、硫酸亜鉛及び塩化亜鉛が好ましい。
水溶性銅塩としては、硫酸銅及びその水和物が好ましく、硫酸銅水和物がより好ましく、硫酸銅5水和物が更に好ましい。
【0028】
(B)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能である、又は、調製可能である。
【0029】
(B)成分は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。2種類以上を併用する場合、亜鉛塩を含むのが好ましい。
【0030】
(B)成分の含量は、配合目的を達成し、かつ、後述の他成分との配合比を満たす限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、例えば0.05~3質量%、好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.5~2.5質量%、更に好ましくは1.5~2.5質量%である。なお、(B)成分が水和物の場合は、無水物としての含量を意味する。(B)成分の含量が0.05質量%以上であると、より向上した消臭効果が得られ、3質量%以下であると、より良好な使用性を可能にする柔軟剤粘度が得られる。
【0031】
〔(C)成分:アミノカルボン酸化合物、リシノール酸及びこれらの塩〕
(C)成分は、液体柔軟剤組成物へ消臭効果を付与するために配合する。
(C)成分は、下記式(I)~(IV)で表される化合物、リシノール酸及びこれらの塩である。
【化7】
【0032】
式(I)中、AIは炭素数8~22の直鎖又は分岐アルキル基、スルホ基、アミノ基、水酸基、水素原子又はCOOMIを表す。AIとしては、CH3、OH、H、COOMIが好ましく、CH3、Hがより好ましく、CH3が特に好ましい。
MIは、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、カチオン性アンモニウム基、アルカノールアミンからなる群より選ばれる1種を示す。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムが好ましい。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが好ましい。MIとしては、アルカリ金属が好ましく、ナトリウムが特に好ましい。
mI及びnIは、それぞれ0~2の整数である。mIは、好ましくは0又は1である。nIは、好ましくは0又は1である。mIとnIとがいずれも0の場合、AIはCH3である。
【0033】
式(I)で表される化合物のなかで好適なものとしては、メチルグリシンジ酢酸(MGDA)、アスパラギン酸ジ酢酸(ASDA)、イソセリンジ酢酸(ISDA)、β-アラニンジ酢酸(ADAA)、セリンジ酢酸(SDA)、グルタミン酸ジ酢酸(GLDA)、又はこれらの塩が挙げられる。なかでもMGDA又はその塩が好ましい。
【0034】
【0035】
式(II)中、XII-1~XII-4は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、カチオン性アンモニウム基、アルカノールアミンからなる群より選ばれる1種を表す。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムが好ましい。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが好ましい。XII-1~XII-4としては、アルカリ金属が好ましく、ナトリウムが特に好ましい。
QIIは、水素原子または炭素数8~22の直鎖又は分岐アルキル基を表す。
RIIは、水素原子または水酸基を表す。
nIIは、0または1を表す。
【0036】
式(II)で表される化合物のなかで好適なものとしては、イミノジコハク酸(IDS)、ヒドロキシイミノジコハク酸(HIDS)、又はこれらの塩が挙げられ、なかでもIDS又はその塩がより好ましい。
【0037】
【0038】
式(III)中、RIIIは、炭素数8~22、好ましくは12~18の直鎖又は分岐アルキル又はアルケニル基を表す。
AIIIは、H、メチル基又は(CH2)mIII-COOXIIIを表す。AIIIとしては、(CH2)mIII-COOXIIIが好ましい。mIIIは、1~3のいずれかの数を表す。
XIIIは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカノールアミン又はNH4を表わす。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムが好ましい。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが好ましい。
nIIIは、1~3のいずれかを表す。
【0039】
式(III)で表わされる化合物の具体例としては、
オクチルアミノ酢酸ナトリウム、ラウリルアミノ酢酸ナトリウム、ミリスチルアミノ酢酸ナトリウム、パルミチルアミノ酢酸ナトリウム、オレイルアミノ酢酸ナトリウム等のアルキル及びアルケニルアミノ酢酸塩;
オクチルアミノプロピオン酸ナトリウム、デシルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ミリスチルアミノプロピオン酸ナトリウム、パルミチルアミノプロピオン酸ナトリウム、オレイルアミノプロピオン酸ナトリウム等のアルキル及びアルケニルアミノプロピオン酸塩;
N‐オクチルグリシンナトリウム、N‐デシルグリシンナトリウム、N‐ラウリルグリシンナトリウム、N‐ミリスチルグリシンナトリウム、N‐パルミチルグリシンナトリウム、N‐オレイルグリシンナトリウム等のN‐アルキル及びアルケニルグリシン塩;
N‐オクチル‐N‐メチル‐β‐アラニンナトリウム、N‐デシル‐N‐メチル‐β‐アラニンナトリウム、N‐ドデシル‐N‐メチル‐β‐アラニンナトリウム、N‐ミリスチル‐N‐メチル‐β‐アラニンナトリウム、N‐パルミチル‐N‐メチル‐β‐アラニンナトリウム、N‐オレイル‐N‐メチル‐β‐アラニンナトリウム等のN‐アルキル及びアルケニル‐N‐メチル‐β‐アラニン塩;
オクチルアミノジ酢酸ナトリウム、デシルアミノジ酢酸ナトリウム、ラウリルアミノジ酢酸ナトリウム、ミリスチルアミノジ酢酸ナトリウム、パルミチルアミノジ酢酸ナトリウム、オレイルアミノジ酢酸ナトリウム等のアルキル及びアルケニルアミノジ酢酸塩;及び
オクチルアミノジプロピオン酸ナトリウム、デシルアミノジプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウム、ミリスチルアミノジプロピオン酸ナトリウム、パルミチルアミノジプロピオン酸ナトリウム、オレイルアミノジプロピオン酸ナトリウム等のアルキル及びアルケニルアミノジプロピオン酸塩等が挙げられる。
これらの中では、保存安定性から考えて、アルキル及びアルケニルアミノジ酢酸塩が好ましく、その中でもデシルアミノジ酢酸、ラウリルアミノジ酢酸、ミリスチルアミノジ酢酸、パルミチルアミノジ酢酸又はその塩が好ましく、特にラウリルアミノジ酢酸、ミリスチルアミノジ酢酸、パルミチルアミノジ酢酸又はその塩がより好ましい。
【0040】
【0041】
式(IV)中、XIVは水素原子、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を表す。
nIVは1又は2を表し、nIVが2の場合、XIVは同一でも異なっていても良い。(COOXIV)nIV基の置換位置は、特に限定されないが、α位が好ましい。
【0042】
リシノール酸(12-ヒドロキシ-9-cis-オクタデケン酸)は下記の構造を有する化合物である。
【化11】
リシノール酸の塩としては、ナトリウム塩、亜鉛塩や銅塩等が挙げられる。
【0043】
(C)成分としては、式(I)又は(II)で表される化合物及びその塩と、リシノール酸とが好ましく、特に、MGDA、IDS及びこれらの塩並びにリシノール酸が好ましい。消臭効果の点では、MGDA及びその塩とリシノール酸が最も好ましい。消臭効果と液体柔軟剤組成物の使用性及び凍結復元性の点においては、MGDAが最も好ましい。
【0044】
(C)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能である、又は、調製可能である。
【0045】
(C)成分は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0046】
(C)成分の含量は、配合目的を達成し、かつ、後述の他成分との配合比を満たす限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、例えば0.05~3質量%、好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.5~2.5質量%、更に好ましくは1.5~2.5質量%である。(C)成分の含量が0.05質量%以上であると、より向上した消臭効果が得られ、3質量%以下であると、より良好な使用性を可能にする柔軟剤粘度が得られる。
(B)成分と(C)成分の質量比((B)/(C))は、消臭効果の点で好ましくは0.1~10、より好ましくは0.2~5、さらに好ましくは0.5~2である。
【0047】
〔(D)成分:ノニオン界面活性剤〕
(D)成分は、液体柔軟剤組成物の使用性や凍結復元性を向上するために配合する。
(D)成分としては、例えば、多価アルコール、高級アルコール、高級アミン又は高級脂肪酸から誘導されるものを使用できる。
(D)成分の具体例としては、
グリセリンまたはペンタエリスリトールに炭素数10~22の脂肪酸がエステル結合したグリセリン脂肪酸エステルまたはペンタエリスリトール;
炭素数10~22のアルキル基又はアルケニル基を有し、エチレンオキシド(EO)の平均付加モル数が10~100モルであるポリオキシエチレンアルキルエーテル;
ポリオキシエチレン脂肪酸アルキル(該アルキルの炭素数1~3)エステル;
エチレンオキシドの平均付加モル数が10~100モルであるポリオキシエチレンアルキルアミン;
炭素数8~18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキルポリグルコシド;や
エチレンオキシドの平均付加モル数が10~100モルである硬化ヒマシ油などが挙げられる。
(D)成分としては、炭素数10~18のアルキル基を有し、エチレンオキシドの平均付加モル数が20~80モル(好ましくは30~60モル)のポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。
【0048】
(D)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能である、又は、調製可能である。
【0049】
(D)成分は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0050】
(D)成分の含量は、配合目的を達成し、かつ、後述の他成分との配合比を満たす限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、例えば0.5~10質量%、好ましくは1~5質量%、より好ましくは1.5~4質量%、特に好ましくは1.5~3質量%である。(D)成分の含量が0.5質量%以上であると、より向上した使用性や凍結復元性に加えて高温安定性が得られ、10質量%以下であると、より良好な使用性を可能にする粘度や分離安定性が得られる。
【0051】
〔各成分の配合比率〕
本発明では、(B)成分と(C)成分の合計(〔B+C〕)の(A)成分に対する質量比(〔B+C〕/A)は0.01~0.5、好ましくは0.08~0.45、より好ましくは0.25~0.45である。この比率で配合すると、優れた消臭効果が得られ、更に液体柔軟剤組成物が分離しにくくなり、使用性が向上する。これは、(A)成分から構成されるベシクルへの(B)成分と(C)成分の一部の過剰な取り込みが起こるとベシクル粒子径が増大して液体柔軟剤組成物が分離しやすくなるところ、前記の質量比で配合することでベシクル粒子径の過剰な増大が抑制されるためであると考えられる。但し、本発明は前記理論により限定されるものではない。
【0052】
本発明では、(B)成分と(C)成分の合計(〔B+C〕)の(D)成分に対する質量比(〔B+C〕/D)は0.1~4、好ましくは0.4~2.5、より好ましくは1~2である。この比率で配合すると、優れた消臭効果が得られ、更に液体柔軟剤組成物の凍結復元性と使用性とが向上する。これは、(A)成分から構成されるベシクルへ(B)成分と(C)成分の一部の取り込みが起こるとベシクルの粒度分布や排除体積が変化して液体柔軟剤組成物が増粘しやすくなる(使用性が低下しやすくなる)ところ、前記の質量比で配合することでベシクルの粒度分布や排除体積の過剰な変化が抑制され、更に(D)成分により凍結復元性が向上するためであると考えられる。但し、本発明は前記理論により限定されるものではない。
【0053】
〔任意成分〕
液体柔軟剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、前記(A)~(D)の必須成分以外の下記の任意成分を配合してもよい。
【0054】
〔(E)成分:カプセル化されていない香料組成物〕
(E)成分は、後述のカプセル香料((H)成分)に芯物質として含まれる香料組成物とは別の、カプセルに内包されていない香料組成物(フリーの香料組成物)である。
(E)成分は、その香気によるマスキング効果によって液体柔軟剤組成物の消臭効果を向上するために配合する。
(E)成分は、液体柔軟剤組成物に一般的に使用される香料成分を1種類以上含む香料組成物から、目的に応じて適宜選択できるが、(E)成分としての香料組成物の全質量に対して、ClogP値が5以上の香料成分を25質量%以上含有することが好ましい。
香料成分の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルデヒド類、フェノール類、アルコール類、エーテル類、エステル類、ハイドロカーボン類、ケトン類、ラクトン類、ムスク類、テルペン骨格を有する香料、天然香料、動物性香料などが挙げられる。
【0055】
各香料の具体例は以下の通りである。
アルデヒド類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウンデシレンアルデヒド、ラウリルアルデヒド、アルデヒドC-12MNA、ミラックアルデヒド、α-アミルシンナミックアルデヒド、シクラメンアルデヒド、シトラール、シトロネラール、エチルバニリン、ヘリオトロピン、アニスアルデヒド、α-ヘキシルシンナミックアルデヒド、オクタナール、リグストラール、リリアール、リラール、トリプラール、バニリンや、ヘリオナールなどが挙げられる。
【0056】
フェノール類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オイゲノールや、イソオイゲノールなどが挙げられる。
【0057】
アルコール類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シトロネロール、ジハイドロミルセノール、ジハイドロリナロール、ゲラニオール、リナロール、ネロール、サンダロール、サンタレックス、ターピネオール、テトラハイドロリナロール、メントール、ボルネオール、1-デカナール、バクダノールや、フェニルエチルアルコールなどが挙げられる。
【0058】
エーテル類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、セドランバー、グリサルバ、メチルオイゲノールや、メチルイソオイゲノールなどが挙げられる。
【0059】
エステル類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シス-3-ヘキセニルアセテート、シス-3-ヘキセニルプロピオネート、シス-3-ヘキセニルサリシレート、p-クレジルアセテート、p-t-ブチルシクロヘキシルアセテート、アミルアセテート、メチルジヒドロジャスモネート、アミルサリシレート、ベンジルサリシレート、ベンジルベンゾエート、ベンジルアセテート、セドリルアセテート、シトロネリルアセテート、デカハイドロ-β-ナフチルアセテート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、エリカプロピオネート、エチルアセトアセテート、エリカアセテート、ゲラニルアセテート、ゲラニルフォーメート、ヘディオン、リナリルアセテート、β-フェニルエチルアセテート、ヘキシルサリシレート、スチラリルアセテート、ターピニルアセテート、ベチベリルアセテート、o-t-ブチルシクロヘキシルアセテート、マンザネートや、アリルヘプタノエートなどが挙げられる。
【0060】
ハイドロカーボン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リモネン(特に、d-リモネン)、α-ピネン、β-ピネン、ミルセン、カンフェンや、テルピノーレン等が挙げられる。
【0061】
ケトン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、α-ヨノン、β-ヨノン、メチル-β-ナフチルケトン、α-ダマスコン、β-ダマスコン、δ-ダマスコン、ダマセノン、シス-ジャスモン、メチルヨノン、アリルヨノン、カシュメラン、ジハイドロジャスモン、イソイースーパー、ベルトフィックス、イソロンジフォラノン、コアボン、カルボン、ローズフェノン、ラズベリーケトン、ダイナスコンやマルトールなどが挙げられる。
【0062】
ラクトン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、γ-デカラクトン、γ-ウンデカラクトン、γ-ノナラクトン、γ-ドデカラクトン、クマリンや、アンブロキサンなどが挙げられる。
【0063】
ムスク類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シクロペンタデカノライド、エチレンブラシレート、ガラクソライド、ムスクケトン、トナリッド、トナライドや、ニトロムスク類などが挙げられる。
【0064】
テルペン骨格を有する香料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゲラニオール(ゼラニオール)、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、ミント、シトロネラール、ミルセン、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、テレピネロール、カルボン、ヨノン(例えばβ-ヨノン)、カンフェンや、ボルネオールなどが挙げられる。
【0065】
天然香料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オレンジ油、レモン油、ライム油、プチグレン油、ユズ油、ネロリ油、ベルガモット油、ラベンダー油、ラバンジン油、アビエス油、アニス油、ベイ油、ボアドローズ油、イランイラン油、シトロネラ油、ゼラニウム油、ペパーミント油、ハッカ油、スペアミント油、ユーカリ油、レモングラス油、パチュリ油、ジャスミン油、ローズ油、シダー油、ベチバー油、ガルバナム油、オークモス油、パイン油、樟脳油、白檀油、芳樟油、テレピン油、クローブ油、クローブリーフ油、カシア油、ナツメッグ油、カナンガ油や、タイム油などの精油が挙げられる。
【0066】
動物性香料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、じゃ香、霊猫香、海狸香や、竜涎香などが挙げられる。
【0067】
(E)成分は、当該(E)成分としての香料組成物の全質量に対して、ClogP値が5以上の香料成分を25質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上含有することが好ましい。(E)成分中の、ClogP値が5以上の香料成分の配合量が25質量%以上であると、より良好な香り持続性を得ることができる。
ClogP値が5以上の香料成分としては、特に種類は制限されないが、好ましい例として、アンブロキサン(5.3)、トナライド(6.3)、ヘキシルサリシレート(5.1)、ガラクソライド(6.1)、ムスコン(6.0)、エキサルトリド(6.2)、イソイースーパー(5.2)、ベルトフィックス(アセチルセドレン)(5.0)、セドリルメチルエーテル(5.1)等が挙げられる(カッコ内の数値は、ClogP値を表す)。なかでも、より好ましくは、アンブロキサン、ガラクソライド、イソイースーパー、トナライドである。
ClogP値とは、化学物質について、1-オクタノール中及び水中の平衡濃度の比を表す1-オクタノール/水分配係数Pを、底10に対する対数logPの形態で表した値である。ClogP値は、f値法(疎水性フラグメント定数法)により、化合物の化学構造をその構成要素に分解し、各フラグメントの有する疎水性フラグメント定数・f値を積算して求めることができる(例えば、Clog 3 Reference Manual DaylightSoftware 4.34,Albert Leo,David Weininger, Version 1,March 1994 参照)。
一般に、香料はClogP値が大きいほど疎水的であることから、ClogP値が小さい香料成分を多く含む香料組成物は、ClogP値が大きい香料成分を多く含む香料組成物よりも親水的な香料組成物であるといえる。
【0068】
香料組成物には、液体柔軟剤組成物、例えば、繊維製品用仕上げ剤組成物又は柔軟剤組成物に一般的に使用される溶剤を配合してもよい。香料用溶剤としては、アセチン(トリアセチン)、MMBアセテート(3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート)、スクロースジアセテートヘキサイソブチレート、エチレングリコールジブチレート、ヘキシレングリコール、ジブチルセバケート、デルチールエキストラ(イソプロピルミリステート)、メチルカルビトール(ジエチレングリコールモノメチルエーテル)、カルビトール(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、TEG(トリエチレングリコール)、安息香酸ベンジル(BB)、プロピレングリコール、フタル酸ジエチル、トリプロピレングリコール、アボリン(ジメチルフタレート)、デルチルプライム(イソプロピルパルミテート)、ジプロピレングリコール(DPG)、ファルネセン、ジオクチルアジペート、トリブチリン(グリセリルトリブタノエート)、ヒドロライト-5(1,2-ペンタンジオール)、プロピレングリコールジアセテート、セチルアセテート(ヘキサデシルアセテート)、エチルアビエテート、アバリン(メチルアビエテート)、シトロフレックスA-2(アセチルトリエチルシトレート)、シトロフレックスA-4(トリブチルアセチルシトレート)、シトロフレックスNo.2(トリエチルシトレート)、シトロフレックスNo.4(トリブチルシトレート)、ドゥラフィックス(メチルジヒドロアビエテート)、MITD(イソトリデシルミリステート)、ポリリモネン(リモネンポリマー)や、1,3-ブチレングリコール等が挙げられる。
溶剤の配合量は、香料組成物の総質量に対して、例えば0.1~30質量%、好ましくは1~20質量%である。
【0069】
香料組成物には、液体柔軟剤組成物、例えば、繊維製品用仕上げ剤組成物又は柔軟剤組成物に一般的に使用される酸化防止剤を配合してもよい。香料用酸化防止剤としては、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)、t-ブチル-p-ヒドロキシアニソール(BHA)、p-メトキシフェノール、β-ナフトール、フェニル-α-ナフチルアミン、テトラメチルジアミノジフェニルメタン、γ-オリザノール、ビタミンE(α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール)、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)、トリス(テトラメチルヒドロキシピペリジノール)・1/3クエン酸塩、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、クェルセチンや、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等が挙げられる。好ましくは3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)である。
酸化防止剤の配合量は、香料組成物の総質量に対して、例えば0.001~10質量%、好ましくは0.01~5質量%である。
【0070】
(E)成分の含量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、0.1~2質量%、好ましくは0.5~1.5質量%である。(E)成分の含量が0.1質量%以上であると優れたマスキング効果が得られる。(E)成分の含量が2質量%以下であると、液体柔軟剤組成物の分離安定性をより良好に維持できる。
【0071】
〔(F)成分:高度分岐環状デキストリン〕
(F)成分は、液体柔軟剤組成物の安定性(特に凍結復元性)の更なる向上や、繊維製品へ消臭性や防臭性を付与するために配合する。
(F)成分の高度分岐環状デキストリンとは、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する、重量平均重合度が50から10000の範囲にあるグルカンをいう。
内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有するグルカンは、高度分岐環状デキストリン又はクラスターデキストリンとも呼ばれている物質である。
高度分岐環状デキストリンは、1つの内分岐環状構造部分に複数(例えば、100個)の非環状のグルコース鎖(外分岐構造部分)が結合した構造を有している。
内分岐環状構造部分とは、α-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合とで形成される環状構造部分をいう。高度分岐環状デキストリンの内分岐環状構造部分は10~100個程度のグルコースで構成されている。すなわち、内分岐環状構造部分の重合度は10~100の範囲である。
外分岐構造部分とは、該内分岐環状構造部分に結合した非環状構造部分をいう。高度分岐環状デキストリンの外分岐構造部分を構成する非環状グルコース鎖における平均重合度は10~20である。但し、1本の非環状グルコース鎖における重合度は40以上であってもよい。
高度分岐環状デキストリンにおけるグルコースの重量平均重合度は50~10000、具体的には50~5000の範囲、更に具体的には2500程度である。
また、本発明における高度分岐環状デキストリンの分子量は3万~100万程度の範囲である。
【0072】
かかる構造及び重合度(分子量)を有する高度分岐環状デキストリンは、グルコースの重合度が6~8の一般的なシクロデキストリンであるα-シクロデキストリン(重合度6)、β-シクロデキストリン(重合度7)や、γ-シクロデキストリン(重合度8)とは相違する物質である。
【0073】
高度分岐環状デキストリンは、例えば、デンプンを原料として、ブランチングエンザイムという酵素を作用させて製造することができる。
原料であるデンプンは、グルコースがα-1、4-グルコシド結合によって直鎖状に結合したアミロースと、α-1,6-グルコシド結合によって複雑に分岐した構造をもつアミロペクチンからなる。アミロペクチンは、クラスター構造が多数連結された巨大分子である。
使用酵素であるブランチングエンザイムは、動植物や微生物中に広く見いだされるグルカン鎖転移酵素である。ブランチングエンザイムは、アミロペクチンのクラスター構造の継ぎ目部分に作用し、これを環状化する反応を触媒する。
【0074】
高度分岐環状デキストリンの具体例としては、特開平8-134104号公報に記載の、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する、重合度が50から10000の範囲にあるグルカンが挙げられる。本発明において、高度分岐環状デキストリンは、特開平8-134104号公報の記載を参酌して理解され得る。
【0075】
(F)成分は前述の通り製造することができ、また、市場において容易に入手可能である。高度分岐環状デキストリンの市販品としては、グリコ栄養食品株式会社の「クラスターデキストリン」(登録商標)が挙げられる。
【0076】
(F)成分は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0077】
(F)成分の含量は配合目的を達成できる限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.05~5質量%、さらに好ましくは0.1~2質量%である。含量が0.01質量%以上であると、配合効果(特に、繊維への消臭性及び防臭性の付与効果)を充分に発現させることができる。含量が10質量%以下であると、液体柔軟剤組成物の粘度上昇を抑制して、容器からの排出性や、洗濯機の投入口への入れやすさ等の使用性を良好に保つことができる。
【0078】
〔(G)成分:防腐剤〕
(G)成分は、主に長期保存中の防腐性を保つために配合する。
(G)成分の具体例としては、イソチアゾロン系の有機硫黄化合物、ベンズイソチアゾリン系の有機硫黄化合物、安息香酸類、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールなどが挙げられる。
イソチアゾロン系の有機硫黄化合物の例としては、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-n-ブチル-3-イソチアゾロン、2-ベンジル-3-イソチアゾロン、2-フェニル-3-イソチアゾロン、2-メチル-4,5-ジクロロイソチアゾロン、5-クロロ-2-メチル-3-イソチアゾロン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、およびそれらの混合物があげられる。好ましくは、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンと2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンとの水溶性混合物であり、さらに好ましくは約77%の5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンと約23%の2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンとの水溶性混合物(例えば、イソチアゾロン液)である。
ベンズイソチアゾリン系の有機硫黄化合物の例としては、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4,5-トリメチレン-4-イソチアゾリン-3-オンなどがあげられ、類縁化合物としてジチオ-2,2-ビス(ベンズメチルアミド)なども使用できる。これらの化合物は任意の混合比で使用できる。このうち1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンが特に好ましい。
安息香酸類の例としては、安息香酸又はその塩、パラヒドロキシ安息香酸又はその塩、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸ベンジル等を挙げることができる。
【0079】
(G)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能である、又は、調製可能である。
【0080】
(G)成分は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0081】
(G)成分の含量は配合目的を達成できる限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.0001~1質量%である。
【0082】
〔(H)成分:機能性カプセル〕
(H)成分は、カプセル内に内包された芯物質に起因する様々な機能を液体柔軟剤組成物へ付与するために配合する。
機能性カプセルは、芯物質と当該芯物質を覆う壁物質とから構成される。
【0083】
芯物質としては、液体柔軟剤分野でカプセル封入物質として一般的に用いられているものを特に制限なく使用できる。具体例としては、香料、精油、増白剤、虫除け剤、シリコーン、ワックス、香味料、ビタミン、スキンケア剤、酵素、プロバイオティクス、染料、顔料、香料前駆体、冷感剤、温感剤、フェロモン等の誘引剤、抗菌剤、漂白剤、香味料、甘味料、ワックス、薬剤、肥料や、除草剤等が挙げられる。
芯物質は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせてもよい。
【0084】
壁物質としては、液体柔軟剤組成物分野においてカプセル化材料として一般的に用いられているものを特に制限なく使用できる。具体例としては、ゼラチンや寒天等の天然系高分子や、油脂やワックス等の油性膜形成物質や、ポリアクリル酸系、ポリビニル系、ポリメタクリル酸系、メラミン系、ウレタン系等の合成高分子物質等を挙げることができ、それら1種を単独又は2種以上を適宜併用することができる。
【0085】
香料を芯物質とするカプセル化香料の具体例としては、フィルメニッヒ社製のBLUEFLOWERPOP「FFMHN2814」、ジボダン社製のGREEN BREEZE CAPS、GREENBREEZE DeoB、ORCHARD GARDEN CAPS、RAINBOW CAPS、VELVET CAPS、VELVET UP、AURORACAPS、及びCOSMICCAPSや、IFF社製のUNICAP101及びUNICAP503等が挙げられる。
冷感剤を芯物質とする冷感カプセルの具体例としては、SALVONA Technologies社製のMultiSal SalCool、HydroSal FreshCool、SalSphere SalCoolや、日華化学株式会社製のネオアージュAROMA-C等が挙げられる。
温感剤を芯物質とする温感カプセルの具体例としては、三木理研株式会社製のリケンレジンRMC-TOや、SALVONA Technologies社製のHydrosal Heat等が挙げられる。
他の具体例としては、三木理研株式会社製のリケンレジンNFHO-W(抗菌効果)や、リケンレジンRMC-HBP(防虫効果)及びRMC-PT(防虫効果)等が挙げられる。
【0086】
機能性カプセルの平均粒子径は10μm~30μmであることが好ましい。前記粒子径を有する機能性カプセルは、衣類への吸着性に優れ、かつ液体柔軟剤組成物中に安定に分散させることができる。
【0087】
(H)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能である、又は、調製可能である。
【0088】
(H)成分は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0089】
(H)成分の含量は配合目的を達成できる限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.0001~1質量%である。
【0090】
〔水〕
液体柔軟剤組成物は、好ましくは水を含む水性組成物である。
水としては、水道水、イオン交換水、純水や、蒸留水等を使用できる。なかでもイオン交換水が好適である。
水の含量は特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。含量が50質量%以上であると、ハンドリング性がより良好となる。
【0091】
〔液体柔軟剤組成物のpH〕
液体柔軟剤組成物のpHは特に限定されないが、保存経日に伴う(A)成分の分子中に含まれるエステル基の加水分解を抑制する観点から、25℃におけるpHを1~6の範囲に調整することが好ましく、2~4の範囲に調整することがより好ましい。pH調整剤として、任意の無機または有機の酸およびアルカリを使用することができる。
【0092】
〔液体柔軟剤組成物の粘度〕
液体柔軟剤組成物の粘度は、その使用性を損なわない限り特に限定されないが、25℃における粘度が800mPa・s未満であることが好ましい。保存経日による粘度上昇を考慮すると、製造直後の液体柔軟剤組成物の25℃における粘度が500mPa・s未満であるのがより好ましく、300mPa・s未満であるのがさらに好ましい。このような範囲にあると、洗濯機への投入の際のハンドリング性等の使用性が良好である。
液体柔軟剤組成物の粘度は、B型粘度計(TOKIMEC社製)を用いて測定することができる。
【0093】
〔製造方法〕
液体柔軟剤組成物は、公知の方法、例えば主剤としてカチオン界面活性剤を用いる従来の液体柔軟剤組成物の製造方法と同様の方法により製造できる。
例えば、(A)成分、(D)成分、(E)成分を含む油相と、(G)成分を含む水相とを、(A)成分の融点以上の温度条件下で混合して乳化物を調製し、その後、得られた乳化物に(B)成分、(C)成分、及び必要に応じて他の成分を添加、混合することにより製造することができる。
尚、(B)成分、(C)成分、(D)成分は、上記記載の添加方法に限定されない。
【0094】
〔液体柔軟剤組成物の使用方法〕
液体柔軟剤組成物を用いた繊維製品の処理方法は特に制限されず、従来の液体柔軟剤と同様に使用できる。例えば、洗濯のすすぎの段階ですすぎ水に液体柔軟剤組成物を溶解させて処理を行う、又はたらいのような容器中で液体柔軟剤組成物を水に溶解させ、更に繊維製品を入れて浸漬処理する方法がある。いずれも場合も適度な濃度に希釈して使用するが、浴比(繊維製品に対する処理液の重量比)は3~100倍、特に5~50倍であることが好ましい。具体的には、全使用水量に対して、(A)成分の濃度が好ましくは0.01ppm~1000ppm、さらに好ましくは0.1ppm~300ppmとなるような量で使用される。
液体柔軟剤組成物で処理可能な繊維製品の種類は特に限定されず、例えば、衣類、カーテン、ソファー、カーペット、タオル、ハンカチ、シーツや、マクラカバー等が挙げられる。その素材も、綿や絹、ウール等の天然繊維でもよいし、ポリエステル等の化学繊維でもよい。
【実施例】
【0095】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
尚、実施例及び比較例において、各成分の配合量はすべて質量%(指定のある場合を除き、純分換算)を示す。
【0096】
〔(A)成分:カチオン界面活性剤〕
下記のA-1を使用した。
A-1:特開2019-163559号公報の実施例(合成例1)に記載のカチオン界面活性剤。A-1は、一般式(A1-4)、(A1-5)及び(A1-6)で表される化合物(各式中、R9は炭素数15~17のアルキル基又はアルケニル基である)をジメチル硫酸で4級化したものを含む組成物である。
【0097】
〔(B)成分:2価の水溶性金属塩〕
下記のB-1を使用した。
B-1:硫酸亜鉛(供給者:三井金属鉱業株式会社。商品名:硫酸亜鉛七水和物)
【0098】
〔(C)成分:アミノカルボン酸化合物及びリシノール酸〕
下記のC-1~C-3を使用した。
C-1:メチルグリシンジ酢酸3ナトリウム「MGDA」(BASF社製)
C-1は、一般式(I)中、AIがCH3、MIがナトリウム、mIが0、nIが0である化合物である。
C-2:リシノール酸(供給者:東京化成工業株式会社。商品名:リシノール酸)
C-3:クエン酸(供給者:ライオン株式会社。商品名:クエン酸)
C-3は、アミノカルボン酸化合物及びリシノール酸のいずれにも該当せず、比較例において使用した。
【0099】
〔(D)成分:ノニオン界面活性剤〕
下記のD-1を使用した。
D-1:ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテルEO60モル(一級イソトリデシルアルコール(C13)の平均EO60モル付加物に相当)(供給者:ライオン株式会社。商品名:TA600)
【0100】
〔(E)成分:カプセル化されていない香料〕
下記表に示す組成を有するフリー香料組成物E-1~E-2を用いた。表中の香料成分の値は、香料組成物の総質量に対する含量(質量%)である。
【0101】
【0102】
【0103】
〔(F)成分:高度分岐環状デキストリン〕
下記のF-1を使用した。
F-1:高度分岐環状デキストリン(グリコ栄養食品株式会社製。商品名:クラスターデキストリン)
【0104】
〔(G)成分:防腐剤〕
下記のG-1を使用した。
G-1:イソチアゾロン液(ダウ・ケミカル日本株式会社 商品名:ケーソンCG-ICP)
【0105】
〔(H)成分:機能性カプセル〕
下記のH-1~H-2を使用した。
H-1:カプセル化香料(供給者:ジボダン株式会社。商品名:GREENBREEZE DeoB)
H-2:カプセル化香料(供給者:ジボダン株式会社。商品名:VELVET UP)
【0106】
〔液体柔軟剤組成物の調製方法〕
後記の表1に示す組成を有する液体柔軟剤組成物を調製した。表1中、各成分の数値の単位は、液体柔軟剤組成物の総質量に対する質量%である。
表1中の「(B+C)/A」は、(B)成分と(C)成分の合計(B+C)の(A)成分に対する質量比を示す。
「(B+C)/D」は、(B)成分と(C)成分の合計(B+C)の(D)成分に対する質量比を示す。
【0107】
液体柔軟剤組成物を、ガラス容器(内径100mm、高さ150mm)と攪拌機(アジターSJ型、島津製作所製)とを用い、次の手順により調製した。
まず、(A)成分及び(D)成分の一部、(E)成分を混合攪拌して油相混合物を得た。
一方、(G)成分をバランス用イオン交換水に溶解して水相混合物を得た。バランス用イオン交換水の質量は、980gから油相混合物と(B)成分と、(C)成分と、(D)成分の残部と、(F)成分と、(H)成分との合計量を差し引いた残部に相当した。
次に(A)成分の融点以上に加温した油相混合物をガラス容器に収納して攪拌しながら、(A)成分の融点以上に加温した水相混合物を2度に分割して添加し、攪拌した。水相混合物の分割比率は30:70(質量比)とし、攪拌は回転速度1,000rpmで、1回目の水相混合物添加後に3分間、2回目の水相混合物添加後に2分間行った。
しかる後、(B)成分と、(C)成分と、(D)成分の残部と、(F)成分と、(H)成分とを添加し、必要に応じて、塩酸(試薬1mol/L、関東化学)又は水酸化ナトリウム(試薬1mol/L、関東化学)を適量添加してpH3.0(25℃)に調整し、更に全体質量が1,000gになるようにイオン交換水を添加して、目的の液体柔軟剤組成物を得た。
【0108】
〔液体柔軟剤組成物の評価〕
調製した液体柔軟剤組成物の「消臭効果」「使用性」及び「凍結復元性」を評価した。
【0109】
〔部屋干し臭の抑制(消臭)効果〕
生乾き臭が気になる使い古しのタオルを一般家庭から回収して評価布とした。
評価布を液体柔軟剤組成物で処理して脱水後、室内(25℃、相対湿度100%RH)で6時間乾燥(部屋干し)した。部屋干し後の評価布の臭いを、以下の評価基準に従い官能評価した。評価は、専門パネラー6名で行った。
<評価基準>
0点:異臭が全くしない。
1点:異臭がやっと感知できる程度に感じられる。
2点:異臭が弱く感じられる。
3点:異臭がやや強く感じられる。
4点:異臭が強く感じられる。
5点:異臭が強烈に感じられる。
液体柔軟剤組成物の消臭効果を、専門パネラー6名の平均点(小数点第1位まで算出)に基づき、下記判定基準に従って判定した。結果を表1の「消臭効果」欄に示す。○又は◎を商品価値上合格であると判定した。
<判定基準>
◎:2.0点未満
○:2.0点以上2.5点未満
△:2.5点以上3.0点未満
×:3.0点以上
【0110】
〔使用性〕
液体柔軟剤組成物400mLを、市販の繊維処理剤の容器(ライオン(株)社製「ソフランプレミアム消臭」の容器)に充填した。充填後の液体柔軟剤組成物の使用性を「粘度上昇又は計量キャップに計量する際の注ぎやすさ」及び「パウチからボトルへの詰替えやすさ」の観点で、以下の評価基準に従い評価した。評価は、専門パネラー5名で行った。
<評価基準>
3点:問題なく計量でき、かつ詰替えできる。
2点:粘度上昇はみられるが、問題なく計量でき、かつ詰替えできる。
1点:著しい粘度上昇がみられ、計量しにくい又は計量できない、又は、詰替えしにくい又は詰替えできない。
液体柔軟剤組成物の使用性を、専門パネラー5名の平均点(小数点第1位まで算出)に基づき、下記判定基準に従って判定した。結果を表1の「使用性」欄に示す。○又は◎を商品価値上合格であると判定した。
<判定基準>
◎:2.5点以上
〇:2.0点以上2.5点未満
△:1.5点以上2.0点未満
×:1.5点未満
【0111】
〔凍結復元性〕
軽量ガラスビン(PS-No.11、田沼硝子工業所製)に液体柔軟剤組成物80mL入れて密栓したものを評価用サンプルとした。
評価用サンプルを、-15℃で40時間保持(凍結)し、その後、25℃で8時間保持(溶解)するサイクルを3回繰り返す耐久試験に付した。
耐久試験後の評価用サンプルの25℃における液状態を目視で観察し、下記評価基準により評価した。評価は、専門パネラー8名で行った。
<評価基準>
5:流動性が充分にあり、かつ耐久試験前と比較して変化がほとんど認められない。
4:耐久試験前と比較して粘度の上昇が認められるが、流動性は充分にある。
3:耐久試験前と比較して粘度の上昇が認められるが、流動性は認められる。
2:耐久試験前と比較して粘度が上昇し、あまり流動性がない。
1:耐久試験前と比較して粘度が著しく上昇し、ほとんど流動性がない。
0:耐久試験前と比較して粘度が著しく上昇し、流動性が全くない。
液体柔軟剤組成物の凍結復元性を、専門パネラー8名の平均点(小数点第1位まで算出)により、下記判定基準に従って判定した。結果を表1の「凍結復元性」欄に示す。○又は◎を商品価値上合格であると判定した。
<判定基準>
◎:4.0点以上
○:3.0点以上~4.0点未満
△:2.0点以上~3.0点未満
×:2.0点未満
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、柔軟剤分野で利用可能である。
【0113】