(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】女性用尿装置
(51)【国際特許分類】
A61F 5/44 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
A61F5/44
(21)【出願番号】P 2019563565
(86)(22)【出願日】2018-05-27
(86)【国際出願番号】 IL2018000005
(87)【国際公開番号】W WO2018235065
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-04-02
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-24
(32)【優先日】2017-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519105108
【氏名又は名称】ティーラ ケア リミテッド
【住所又は居所原語表記】2 Etgar, Tirat Carmel 3903213, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】マイケル コーン
(72)【発明者】
【氏名】アミール ラニアド
(72)【発明者】
【氏名】ヌファー ホーラー
(72)【発明者】
【氏名】サナ ヤッシン
(72)【発明者】
【氏名】イラン アルフィア
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】小川 恭司
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4198979(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0037098(US,A1)
【文献】特開2011-200(JP,A)
【文献】米国特許第4846817(US,A)
【文献】特開2003-33392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/44 - 5/448
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿収集装置であって、
より大きな開口部からより小さな開口部に向けて先細になる、三日月形状の中空の曲線形状の漏斗で構成されている接続および尿収集コンポーネント(CUCC)であって、滑らかな内面と前記より大きな開口部を画定するリングとを有し、前記CUCCが尿道口周囲皮膚(UOSS)に押し付けられた後、女性の前記UOSSに接着する材料から製造されており、前記内面と前記リングを前記UOSSに接触させた状態を維持するための外力を必要とすることなく、前記内面と前記リングが接触面間の接着力によって前記UOSSに接着し続ける、CUCCと、
チューブ構成を有し、かつ前記CUCCに接続されて、前記CUCCから尿受容器への尿通路のための連続ダクトを形成する、尿誘導および排出コンポーネント(UDDC)と、
を含み、
可撓性および弾力性のある滑らかな表面のスカート状構造が、前記CUCCに接続され、かつ前記CUCCの一部を包囲し、
前記CUCCから前記UDDCに向けて伸び、前記スカート状構造の一端が前記UDDCにおける前記CUCC側の端部に到達して前記UDDCを包囲し
、
前記CUCC、前記UDDCおよび前記スカート状構造が単一のエンティティ構成を有し、
前記CUCCが前記UOSSに押し付けられた後、前記CUCCの前記滑らかな内面が前記UOSSに接着し、前記スカート状構造が大陰唇および小陰唇と前記UOSSとの間の空間を充填する、尿収集装置。
【請求項2】
前記CUCCの前記中空の曲線形状の漏斗の一部が、女性の膣の開口部を覆わないように前記膣に挿入されるように適合されている、請求項1に記載の尿収集装置。
【請求項3】
前記尿収集装置は、粘弾性の生体適合性の半剛性シリコーンベース材料から製造されている、請求項1に記載の尿収集装置。
【請求項4】
前記尿収集装置が前記UOSSに接着するとき、前記CUCCおよび前記UDDCはそれらの空間形状を維持する、請求項1に記載の尿収集装置。
【請求項5】
前記中空の曲線形状の漏斗が、より大きく開口した上部開口部およびより小さく開口した底部開口部並びに滑らかな内面および外面を有する、細長い三日月形状の、ドーム形状構造である、請求項1に記載の尿収集装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の主題は、尿装置を皮膚に押し付けた後、尿道口を包囲する皮膚に接着することができる材料から製造された外的な女性用尿装置に関し、また女性用尿装置をそのような皮膚に接触させた状態を維持するための外力を必要とすることなく、その皮膚に接着し続ける外的な女性用尿装置に関する。
【背景技術】
【0002】
世界の一部の地域では、女性が排尿することができる場所が不衛生であり、および/または露出している。このような状況では、女性は、周囲の環境に自分の裸体をさらすことを最小限に抑えつつ、排尿することが困難であると感じる場合が多い。他の一部の女性は、排尿の場所に関係なく、寝たきりである、または動きを妨げられる状況にある等の問題を抱えている。そのような女性は、尿漏れして周囲を濡らすことなく排尿することができない場合が多く、それによって女性に計り知れない肉体的および精神的な不快感が引き起こされる。
【0003】
従来型の尿装置の一部は、上述したような女性を助けることができない。例えば、従来型の尿装置:尿漏れは、長時間にわたり機能せず、女性の身体の動きによって引き起こされる生理的状態の変化に対して機能せず、女性の体内に留まるために、外力、例えば、女性の手、ベルト、ストラップ、安定装置、支持パネル、プレート、接着剤、他の外的装置等を必要とし、女性の身体に容易に接続できず、または女性の身体から容易に取り外しできず、人間工学的ではなく、女性に不快感をもたらすことが多い不快な構造を有しており、女性の体内で展開するのが困難であり、かつ、特に尿装置を長時間使用している場合に、ユーザに不快感や皮膚刺激をもたらす。
【0004】
従って、従来型の尿装置の少なくとも上述した問題に対処する女性用尿装置の必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に記載される主題は、接続および尿収集コンポーネント(CUCC)と、CUCCに接続するように構成された尿誘導および排出コンポーネント(UDDC)とから構成される外的な女性用尿装置に関する。CUCCは、より大きな開口部からより小さな開口部に向けて先細になっている。CUCCは、より大きな開口部を画定するリングを有する。CUCCの表面領域は、小陰唇および/または大陰唇の内側に面する表面の付近の皮膚に、並びに、CUCCが尿道口周囲皮膚(UOSS)に押し付けられた後にUOSSに接着することができる材料から製造されている。CUCCは、CUCCを皮膚に接触させた状態を維持するための外力を必要とすることなく、UOSSおよび/または陰唇に接着し続ける。
【0006】
接着力に加えて、尿装置のCUCCは、CUCCに印加される閉じ込め力によってUOSSおよび/または陰唇に接続する。追加の閉じ込め力は、挿入されたCUCCを包囲する壁をUOSSと陰唇との間の空間に押し込むことによって印加される力である。閉じ込め力には、大陰唇および/または小陰唇がCUCCを飲み込むように発達している場合に、挿入されたCUCCに向けて大陰唇および/または小陰唇を折り込むことによって印加される力が含まれる。
【0007】
尿収集装置の一態様では、装置は、CUCCおよびUDDCから構成される。CUCCは、より大きな開口部からより小さな開口部に向けて先細になる、三日月形の中空の曲線形状の漏斗で構成されている。CUCCは、より大きな開口部を画定するリングを有する。尿収集装置のUOSSとCUCCとの間は、CUCCの中空の三日月形漏斗の内壁がUOSSに押し付けられた後、女性の尿道口周囲皮膚(UOSS)に接着する材料から製造される。接着が形成されると、リングは、リングをUOSSに接触させた状態を維持するための外力を必要とすることなく、UOSSに接着され続ける。UDDCコンポーネントはチューブ構成で構築され、CUCCに接続されて、CUCCからUDDCへの、および尿受容器への尿通路のための連続ダクトを形成する。
【0008】
尿収集装置の別の態様では、中空の曲線形状の漏斗の内壁は、CUCCがUOSSに押し付けられた後にUOSSに接着され、リングをUOSSに接触させた状態を維持するための外力を必要とすることなくUOSSに接着され続ける。
【0009】
尿収集装置の別の態様では、CUCCおよびUDDCは、尿収集装置がUOSSに接着するときに空間構成を維持する。
【0010】
いくつかの変形形態では、以下の態様のうちの1つ以上を、個別にまたは任意の適切な組み合わせで実装することができる。
【0011】
尿収集装置の別の態様では、CUCCおよびUDDCは、尿収集装置がUOSSに接着したときにその形状を維持する。
【0012】
尿収集装置を女性の生殖器に接続する一態様では、前述したように、装置はCUCCおよびUDDCの両方から構成されており、CUCCが尿道口周囲皮膚(UOSS)に押し付けられた後、CUCCの外壁は女性の陰唇(大陰唇および小陰唇)の内壁に接着されているが、CUCCは、CUCCを陰唇の皮膚に接触させた状態を維持するための外力を必要とすることなく陰唇に接着され続ける。
【0013】
尿収集装置の別の態様では、CUCCおよびUDDCは、尿収集装置が陰唇に接着したときにその形状を維持する。
【0014】
尿収集装置の別の態様では、装置は、CUCCのリングがUOSSおよび/または陰唇に接着した状態を維持することを可能にする接着皮膚装置力を付与する、滑らかな表面を有する粘弾性かつ生体適合性のシリコーンベース材料から製造される。
【0015】
尿収集装置の別の態様では、尿収集装置は、CUCCおよびUDDCが単一のエンティティ構成を有するように構築される。
【0016】
尿収集装置の別の態様では、CUCCのリングは、ドーム状漏斗の壁の端縁に垂直に接続された、ほぼ平坦なプレート構造を有することで、より大きな開口部の端縁にT字形状を形成する。
【0017】
尿収集装置の別の態様では、中空の曲線形状の漏斗は、ドーム形状の構造を有する。
【0018】
尿収集装置の別の態様では、スカート状構造がCUCCに接続され、CUCCを包囲している。
【0019】
尿収集装置の別の態様では、装置はCUCCに取り付けられたウィングを有する。
【0020】
尿収集装置の別の態様では、装置はUDDCに取り付けられたウィングを有する。
【0021】
尿収集装置の別の態様では、上記のウィングは複数のバーで構成されている。
【0022】
尿収集装置の別の態様では、前述したウィングの複数のバーは平行な構成にある。
【0023】
尿収集装置の別の態様では、上述したウィングは、その上に複数の隆起部を有する。
【0024】
尿収集装置の別の態様では、CUCCは、陰唇の内面とUOSSとの間の空間に全体的に配置されるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】女性用尿装置の第1の実施形態の上面斜視図である。
【
図2】
図1に示される女性用尿装置の側面図である。
【
図3】
図1に示される女性用尿装置の正面図である。
【
図4】
図1に示される女性用尿装置の上面図である。
【
図5】
図3に示されるC-Cに沿った断面図である。
【
図6】
図3に示されるD-Dに沿った断面図である。
【
図7】女性用尿装置の第2の実施形態の上面斜視図である。
【
図8】
図7に示される女性用尿装置の側面図である。
【
図9】
図7に示される女性用尿装置の正面図である。
【
図10】女性用尿装置の第3の実施形態の上面斜視図である。
【
図11】女性用尿装置の第4の実施形態の上面斜視図である。
【
図12A】
図7の女性用尿装置を女性の生殖器に接続するプロセスを順番に示す図である。
【
図12B】
図7の女性用尿装置を女性の生殖器に接続するプロセスを順番に示す図である。
【
図12C】
図7の女性用尿装置を女性の生殖器に接続するプロセスを順番に示す図である。
【
図12D】
図7の女性用尿装置を女性の生殖器に接続するプロセスを順番に示す図である。
【
図12E】
図7の女性用尿装置を女性の生殖器に接続するプロセスを順番に示す図である。
【
図12F】
図7の女性用尿装置を女性の生殖器に接続するプロセスを順番に示す図である。
【
図13A】
図7の女性用尿装置を女性の生殖器から取り外すプロセスを順番に示す図である。
【
図13B】
図7の女性用尿装置を女性の生殖器から取り外すプロセスを順番に示す図である。
【
図14】女性の生殖器に接続されたときの
図7の女性用尿装置の断面図である。
【
図15A】
図7の女性用尿装置に接続されたときの女性の生殖器の断面図である。
【
図15B】女性の生殖器の断面図および生殖器に接続された
図15Aの尿装置の断面図である。
【
図16】女性用尿装置の開口した尿収集コンポーネントのリムを包囲するT字形状構造を更に含む、
図7の女性用尿装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
様々な図面における同様の参照記号は、同様の要素を示す。
【0027】
「接触」という用語は、固定構成にある表面間の物理的接続を指し得る。「安定化」という用語は、接触面を安定構成状態に維持することを指し得る。「生殖器」という用語は、大陰唇および/または小陰唇、並びに尿道口および膣口の周囲の組織の会陰皮膚を指しており、クリトリスは含まれない。女性用尿装置は、ユーザの生殖器に隣接して配置され、かつ接続される。用語「尿道口周囲皮膚」(UOSSと略す)とは、尿道口の周囲の組織の陰部皮膚、および膣口の周囲の皮膚組織として定義され、クリトリスは含まれない。女性用尿装置は、本明細書では、尿収集装置、尿装置(urinary device)、尿装置(urine device)、装置等とも呼ばれる。
【0028】
尿装置を生殖器に接続するために、CUCCは、大陰唇および/または小陰唇とUOSSとの間の空間に完全に挿入される。挿入されたコンポーネントは、UOSSと、大陰唇および/または陰唇の内側に面する表面のうちの表面とに可逆的に接続される。接続には2つの要因が関与しており、即ち、(I)接触面間の接着力と、(II)上方に伸ばされた状態に戻ろうとする、小陰唇の下の両側から挿入されたCUCCを包囲する壁によって印加される機械的な押し出し力とが挙げられる。更に、CUCCがUOSSと接触すると、UOSSは僅かに引き伸ばされる。上方に伸ばされた状態に戻ろうとするUSOSSによって印加される力により、装置が所定の位置に安定する。大陰唇および/または小陰唇が十分に発達している場合、身体に向けた折り込みが、壁の押し出しによって印加される機械的な力に加わる。機械的な力は、「閉じ込め力」と呼ばれる。
【0029】
尿装置の接続の安定化(ただし、接続を行う部分ではない)は、本文で後述するように、尿装置の一部を膣口に挿入することにより得られる。
【0030】
尿装置の「前側」および「裏側」という用語は、ユーザの身体方向に整列された尿装置の側面を指しており、尿装置のユーザの前方に面する側面および後方側を意味する。以下に説明する実施形態において、尿装置の「上側」とは、ユーザの身体に接続する尿装置の側面を指しており、「下側」とは尿装置の反対側を指す。
【0031】
人間の皮膚は、一般に低表面エネルギー表面であり、主に疎水性であり、25-29ダイン/cmの低表面張力を有する。(安定した接続を形成するために)生体適合性であるためには、皮膚に接触する表面は同等のまたはより低い表面張力を有する必要がある。シリコーンポリマーおよびPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)物質は、一般に、それぞれ、18ダイン/cmおよび21ダイン/cmの表面張力を有しており、それ故、皮膚に接触すると「粘着現象(sticking phenomena)」が発生する。もちろん、「粘着現象」は、18ダイン/cmおよび21ダイン/cmと同じ表面張力を有する全ての生体適合性物質に当てはまる。熱可塑性エラストマー(TPE、および熱可塑性ゴムとも呼ばれる)には、一般に、30-45ダイン/cmの範囲の表面張力エネルギーを有するいくつかのタイプの化合物が含まれ、それ故、尿装置には適さない。皮膚と低表面張力材料の表面との間の非常に薄い生体適合性液膜は、接着現象と呼ばれる粘着現象を大幅に増加させる。
【0032】
尿装置は、生体適合性の医療グレードの材料から製造することができ、典型的には、粘弾性の半剛性シリコーンベース材料から製造されるが、これに限定されない。
【0033】
シリコーンベース材料は、何らかの安定剤または接着剤を使用することなく、接着により可逆的ではあるが漏れのない方法でUOSSに接続する能力を有する。予想外の接着の効果は、尿装置を形成する材料の化学的適合性と、接触面の滑らかさ/粗さ並びに柔軟性および弾力性/剛性とに起因すると考えられる。接着力を高めるのは、皮膚と尿装置との間に介在する薄い液膜の存在である。多くの場合、UOSSの皮膚と大陰唇および/または小陰唇の内側に面する表面とは、汗、尿の痕跡、および膣排泄物により自然に湿潤している。皮膚の水分が接着を形成し、強化するための所望の膜を形成するのに十分でない場合、皮膚の水分は、少量の水および/またはグリセリン/水溶液等の生体適合性湿潤剤(限定されない)を皮膚に塗付することにより容易に増強される。湿潤は、ウェットティッシュで拭き取る、または噴霧装置を使用してスプレーする等の手段により実行される。UOSS接続および尿収集コンポーネント(CUCC)の漏斗の滑らかな表面リングの表面と、並びにCUCCのリング(本文にて後述する)の下の湾曲したドームの内側の滑らかな表面とは、リングおよびリングの下の表面がUOSSに接着した状態を維持することを可能にするために必要なしきい値を超える接着力を付与する。CUCCは第1のコンポーネントとも呼ばれ、UDDCは第2のコンポーネントとも呼ばれ得る。
【0034】
女性用尿装置は、子供を含むあらゆる年齢の女性に使用することができる。使用される尿装置の物理的サイズは、ユーザの身体の構造による。使用される尿装置の物理的サイズは、UOSSの周囲の大陰唇と小陰唇との間の空間にフィットし、空間を満たす必要がある。特定の尿装置の物理的サイズは、それぞれの女性の個々の解剖学的構造に基づいて尿装置を作成する必要なしに、女性(子供を含む)の広い範囲の身体サイズにおいて見られる広い範囲の異なる身体サイズを有する女性のグループに対応することができる。様々な女性の身体サイズのグループ(痩せ、肥満、または小柄等)に対して、特定の適切なサイズの尿装置が製造される。女性用尿装置は、身体のサイズに関係なく、全ての女性に使用可能である。
【0035】
尿装置は、不快感を引き起こすことなく、大陰唇および小陰唇とUOSSとの間の空間にフィットするように人間工学的に設計されている。更に、尿装置のユーザは、身体への接続および接続を維持する際に何らかの追加の干渉部品を必要としない故に、不快な調整および取り扱いも不要である。尿装置がUOSSと大陰唇および/または小陰唇とに接続されると、更なる介入なしに、かつ、生殖器付近に微生物学的に引き起こされる皮膚感染症の発症および尿の化学物質への接触による皮膚刺激をもたらし得る尿漏れなしに、長時間にわたり接続した状態を維持することができる。漏れの防止は、周囲の露出した尿によって引き起こされる悪臭も排除する。
【0036】
尿装置は、即時および短時間の使用(使用後すぐに接続、使用、および除去される)並びに、一度に数時間または数日間接続し続けることを意味する長時間の使用が可能である。長時間の使用中の感染症の発生を防ぐために、尿装置を取り外すことができ、尿装置とユーザの身体との接続面を(医療用消毒液を使用して拭き取ることによって)消毒し、尿装置をユーザの身体に再接続することができる。消毒処理は数分で完了する。
【0037】
尿装置は、2つのコンポーネント、即ち、(I)接続および尿収集コンポーネント(CUCC)と、(II)尿誘導および排出コンポーネント(UDDC)とから構成される。任意に、2つのコンポーネントを単一のエンティティ構造として製造することができる。
【0038】
CUCCは、典型的には、より大きく開口した上部開口部およびより小さく開口した底部開口部並びに滑らかな内面および外面を有する、細長い三日月形状の、中空で浅い凹状のドーム形状漏斗として構成される。開口した上部開口部は、上側の周囲にほぼ楕円形状の滑らかなマージンリングを有する。CUCCは、柔らかく滑らかなテクスチャ表面を有する。
【0039】
UDDCは、典型的には、CUCCに接続する中空の滑らかなチューブで構成されており、CUCCから尿受容器までの尿通路のための連続ダクトを形成する。
【0040】
尿装置は、好ましくは(必ずしも必須ではないが)、CUCCおよびUDDCの2つの一体化されたコンポーネントから構成される単一のエンティティ構造として構成される。任意に、尿装置は、一体的に接続された別個のCUCCおよびUDDCコンポーネントで構成されてもよい。
【0041】
CUCCは、半剛性材料、典型的には粘弾性の半剛性シリコーンベース材料で構成される。
【0042】
尿装置の展開時には、尿装置は、典型的には、次の方法でユーザのUOSSに挿入され、かつ接続される。
【0043】
第1段階:大陰唇および小陰唇の両側を分離する。第2段階:受容器CUCCをUOSSと小陰唇の内側との間の空間に挿入する。第3段階:大陰唇および小陰唇を解放することにより、CUCCの周囲を閉じ、尿装置の上側をUOSSに向けて押す。マージンリングおよびCUCCの滑らかな内面領域は、大陰唇および小陰唇の「閉じ込み」によって印加される接着および機械的力の両方によってUOSSに接続する。
【0044】
CUCCの体積は、UOSSと大陰唇および小陰唇との間の空間を密に満たすように設計されており、これが尿装置を安定させる。
【0045】
尿装置は、「駆動力」と呼ばれる2つの要因、即ち、(I)陰唇が発達している場合、挿入されたCUCCを包囲する壁によって、並びに大陰唇および小陰唇の折り込み力によってCUCCに印加される力と、(II)マージンリングおよびCUCCの滑らかな内面領域のUOSSの滑らかな表面への接着とによって生殖器を可逆的に接続し、安定させる。CUCCの突出した裏側部分を膣の開口部の上部(リム)に挿入することにより、尿装置はUOSSの尿道口上に正確に配置されるように誘導される。膣の開口部の上部(リム)への装置の挿入は、装置を所定の位置に安定させるのに役立つ。場合によっては、CUCCを押す(駆動力II)大陰唇および小陰唇の滑らかな内面が、CUCCの滑らかな外面との接着接続を形成することによって接着(駆動力I)に寄与する。
【0046】
尿装置を生殖器内に接続および安定化させる、上述した各「駆動力」の寄与の程度は可変であり、女性ごとに異なり、かつ尿装置を使用する女性の運動および姿勢に応じて個々の女性により変化する。
【0047】
尿装置の更なる実施形態は、前述したCUCCおよびUDDCに追加される一体部品を有する。尿装置の可能な全ての実施形態を列挙することを試みるわけではないが、追加部品を有する実施形態は、次のとおりである:(I)尿装置の接続表面積(および体積)を増加させることによって、尿装置のユーザの生殖器への接続を強化する、可撓性を有し、弾性があり、折り畳み可能かつ湾曲可能なスカート状シートテクスチャ構造がCUCCを包囲しており、かつ、(II)尿装置のユーザの身体への接続表面積(および体積)を増加させる、滑らかまたは溝付きのいずれかの、緩く、シート状テクスチャで、弾性があり、可撓性を有するウィング状構造がUDDCの側面またはUDDCに接続されている。
【0048】
尿装置の接触表面積を更に増加させるために、CUCCの周囲の楕円形状のマージンリングは、CUCCが製造されているのと同じ材料から製造されたT字型構造を有する。T字型構造は滑らかで柔らかい上部リムを有しており、これが尿受容器のUOSSへの強化された密な表面接続を可能にする。
【0049】
本明細書には、女性用尿装置の4つの実施形態が説明されている。
【0050】
1つ目の実施形態における尿装置(10)は、
図1~
図6に示されている。
【0051】
図1は、側方および上方から見た尿装置(10)の上側を示している。
図2は、尿装置(10)の側面を示している。
図3は、尿装置(10)の正面側を示している。
図4は、上方から見た尿装置(10)の上側を示している。
図5は、
図3に示されるC-Cの断面図である。
図6は、
図3に示されるD-Dの断面図を示す。
【0052】
尿装置は、典型的には、2つの接続されたコンポーネント、即ち生殖器接続および尿収集コンポーネント(CUCC)(12)と、尿誘導および排出コンポーネント(UDDC)(14)とからなる単一のエンティティ構造から構成されている。尿装置は、医療グレード(生体適合性)の粘弾性、半剛性、および柔軟な材料、好ましくはシリコーンベースの材料から製造されており、また、代替的に、2つの別個の(それぞれ単一のエンティティの)一体部品で構成されてもよい。
【0053】
CUCC(12)は、滑らかな内面および外面(15)と、三日月形状構造の周辺にほぼ楕円形状の滑らかなマージンリング(18)とを有する、細長い三日月形状の凹状の、上部が開口した尿受容器(11)から構成される。長手方向に、尿受容器(11)は、2つの部分、即ち、正面側面部分(13A)と、裏側部分(13B)とを有する。
図1、
図2および
図5に示すように、尿装置が水平面上に配置されている場合に見られるように、裏側部分(13B)は正面部分(13A)に対して相対的に突出している。滑らかな内面(15)および滑らかなマージンリング(18)は、
図14および
図15Aに示されるように、UOSSの柔らかく滑らかな皮膚のマージンとその周囲とに容易かつ可逆的に接続される(27)。正面側面部分(13A)に向けて、受容器(11)は、滑らかな内面(15)に、開口穴(
図4および5に示す16)を有する漏斗構造(19)を有する。穴(16)はUDDC(14)のチューブ(17)に通じている。漏斗構造(19)の開口部(16)は、一般に、CUCC(14)の正面側と裏側との間の長手方向距離の4分の1の距離に配置される。
【0054】
UDDC(14)は、CUCC(12)の漏斗構造(19)に接続する中空の滑らかなチューブ(17)から構成されており、漏斗(19)から尿の通路のための連続した中空チューブを形成し、開口穴(16)はUDDC(14)のチューブ(17)を通じて外的環境に通じている。チューブ(17)の開放端は、尿を尿受容器(11)から、一般的には使い捨てのプラスチック収集バッグ等の尿受容器に排出するチューブに接続されている。
【0055】
第2の実施形態である尿装置(20)は、
図7~
図9に示されている。この実施形態では、CUCC(12)は、CUCC(12)を製造したのと同じ材料の滑らかで柔らかく可撓性および弾力性のあるシートで構成されたスカート状構造(42)により包囲されている。構造(42)は尿装置の一体部品であり、一般的にはCUCC(12)のほぼ中央に接続し、一般的にはUDDC(14)の上部に到達してそれを包囲している。
【0056】
図7は、側方および上方から見た尿装置の上側を示す尿装置(20)を示している。
図9は、
図7に示される尿装置(20)の側面を示す。
図9は、
図7に示される尿装置(20)の前側を示す。
【0057】
図10に示される別の実施形態である尿装置(30)では、少なくとも2つの緩く滑らかで、可撓性かつ弾力性があり、柔らかいウィング状構造シート(22)が、UDDC(14)およびCUCC(12)の接続位置にて、またはその付近にて接続しており、CUCCのリムには到達せずに尿装置の上側に向けて突出している。シート(22)は、一般的には、シート(22)から突出する隆起状構造および/またはバー構造(
図11に示される31および33)とは反対方向を向いている。
【0058】
図10は、側方および上方から見た尿装置の上側を示す尿装置(30)を示している。
【0059】
図11に示される更に別の実施形態である尿装置(40)では、少なくとも2つの緩く、滑らかで、可撓性および弾力性があり、柔らかく突出しているウィング状構造シート(32)が、CUCC(12)のリムにて、またはその付近にて接続しており、UDDCに到達せずにUDDC(14)に向けて突出している。シート(32)は、通常、シート(
図10に示される33および31)から突出する隆起状構造および/またはバー構造とは反対側を向いている。
【0060】
図11は、側方および上方から見た尿装置の上側を示す尿装置(40)を示している。
【0061】
スカート状構造(42)、並びに、滑らかで、可撓性かつ弾力性があり柔らかなウィング状構造シート((22)および(32))および隆起状構造および/またはバー構造((31)および(33))の目的は、CUCC(12)と尿装置を使用する女性の身体との間の表面接触面積を、湾曲させ折り畳むことによって増加させることで、接着面積を増加させて、尿装置と大陰唇(72)、小陰唇(74)および治療対象の女性(78)のUOSS(27)との間の接続を強化することである。構造(31)、(32)、および(42)の効果は、若い女性や、大陰唇(72)および小陰唇(74)が比較的未発達である女性に対する尿装置の接続において、より重要な役割を果たす。
【0062】
以下には、治療対象の女性(78)の身体に尿装置を接続し、取り外す際の一連の動作が示されている。接続動作は、
図12A~
図12Fまでの一連の図に示されている。取り外し動作は、
図12D、
図13Aおよび
図13Bに順に示されている。
図12A~
図13Bに示される接続および取り外し動作は、第2の実施形態の尿装置(尿装置(20))を使用している。尿装置(20)を治療対象の女性(78)の身体に接続および取り外す動作と同じ手順が、他の3つの実施形態の尿装置((10)、(30)および(40))の接続にも使用される。
【0063】
図12Aに示される接続の第1段階では、尿装置(20)は、ユーザ/介護者の手のひら(29A)によってほぼ水平位置に保持され、生殖器(75)の付近に配置される。尿装置の受容器(11)の裏側部分(13B)は、床の方向に配置されている。受容器(11)はCUCC(12)の一部であり、丸形のスカート状構造(42)の下に部分的に隠されている。尿装置(20)が接続されているとき、ユーザは、通常横たわっている。
【0064】
図12Bに示される第2段階では、ユーザ/介護者は、自身の指を使用して、大陰唇(72)および小陰唇(74)を広げ、もう一方の手の指(29B)でUOSS(27)の周囲の組織を伸ばす。膣口(76)および尿道口(73)が露出される。
【0065】
図12Cに示される第3段階では、尿装置(20)は、大陰唇(72)および小陰唇(74)の内方に面する表面とUOSS(27)との間の空間に配置される。CUCC(12)の受容器(11)の裏側部分(13B)は、ユーザの後方に、膣口(76)のリム内に挿入される。
【0066】
図12Dに示される第4段階では、受容器(11)の前部(13A)は、ユーザの正面方向に、大陰唇(72)および小陰唇(74)の広がった唇部の収束端に挿入され、尿装置(20)のCUCC(12)がユーザの身体に向けて押し込まれる。押し込み時には、半剛性の尿受容器(11)の滑らかな内面(15)がUOSS(27)に押し付けられ、マージンリング(18)がUOSS(27)のマージンに密接に押し付けられ、尿漏れを防止する密閉が確保される。
【0067】
図12Eに示す第5段階では、CUCC(12)を挿入した後、伸ばされた大陰唇(72)、小陰唇(74)、およびUOSS(27)は、弛緩した非伸展状態に戻ろうとする。ユーザ/介護者は、指を使用して、CUCC(12)にわたる大陰唇(72)および小陰唇(74)の広がりを閉鎖するのを助ける。ユーザ/介護者は、マージンリング(18)のUOSS(27)への安定した堅固な接続と、受容器(11)の外壁と大陰唇(72)および小陰唇(74)の内側との接続とを確認し、確保する。
【0068】
図12Fに示される第6段階では、尿装置(20)は、ユーザの生殖器に安定的に接続されている。UDDC(14)のチューブは、大陰唇(72)の閉鎖した唇部から突出していることが示されている。
【0069】
CUCC(12)の受容器(11)の裏側部分(13B)を(第3段階にて)膣口(76)のリムに挿入することによって、尿装置(20)のCUCC(12)が尿道口上に位置付けられるように誘導され、ユーザの身体内で安定した構成になる。次の段階(第4段階)では、半剛性の尿受容器(11)の滑らかな内面(15)をUOSS(27)に、かつ、マージンリング(18)をUOSS(27)のマージンに押し付けることによって、接着接続が「粘着現象」を介して形成される。「粘着現象」は、2つの互換性のある滑らかな表面間の密接な接触スポットに形成される。圧力が印加されると、ますます多くの接触スポットが確立され、接着力も向上する。膣分泌物および/または尿からの水分が2つの滑らかな表面の間に膜を形成する場合、粘着は更に強化される。第5段階で説明したように、大陰唇および小陰唇がCUCC(12)を「閉じ込める」と、CUCC(12)に印加される機械的圧力が、UOSSおよびそのマージン(27)に対する受容器(11)の圧力の維持と、尿装置(20)の所定の位置への更なる安定化とに寄与する。大陰唇および小陰唇の滑らかな内面と受容器(11)の滑らかな外面との接触により、「粘着現象」の形態で接着接続が加わり、かつ形成される。
【0070】
次に、女性の身体からの尿装置(20)を取り外す段階について言及する。
【0071】
図12Dに示される第1段階では、ユーザ/介護者は、大陰唇(72)および小陰唇(74)を広く広げる。広げることにより、「閉じ込み」の機械的力が解放され、尿装置を生殖器に接続する接着力の解放に役立つ。
【0072】
図13Aに示される第2段階では、CUCC(12)の受容器(11)は、UOSS(27)との接触から、(13A)から(13B)に向けて優しく剥がされ、ユーザの身体から取り除かれる。
【0073】
図13Bに示される第3段階では、尿装置(20)は、UOSS(27)との接触から完全に剥がされ、かつユーザの身体から除去されている。
【0074】
図14は、治療対象の女性(78)の生殖器に接続された尿装置(20)の、上方から見た断面図を示す。図は、CUCC(12)の接着および「閉じ込め」によって接続されている、尿装置(20)と、滑らかな尿道口周囲皮膚(UOSS)(27)並びに大陰唇(72)および小陰唇(74)との接着接続を示している。可撓性かつ弾力性のある滑らかな表面のスカート構造(42)が、大陰唇(72)および小陰唇(74)とUOSS(27)との間の空間を充填している様子を示している。
【0075】
図15Aは、
図1に示される(切断されていない)尿装置(10)が接続されている女性の生殖器の横断面図を示す。
図15Bは、生殖器の横断面図および
図15Aに示す接続された尿装置の横断面図である。図は、安定化のための(本明細書に記載されている4つの全ての実施形態の)尿装置の膣口(76)への挿入と、尿道口(73)からの開放通路を可能にし、かつ穴(16)をUDDC(14)のチューブ(17)に通じさせつつ、尿受容器(11)の滑らかな内面および外面(15)の、治療対象の女性(78)のUOSS(27)並びに大陰唇(72)および小陰唇(74)への接着接続とを示す。
【0076】
図16は、尿受容器(11)のリムを包囲するT字形状構造(80)を有する、
図7に示される尿装置(20)の側面から見た図を示している。T字形状構造(80)は、
図7および
図8に示される尿受容器(11)の滑らかなマージンリング(18)に取って代わる。
図16Aは、尿装置(20)の正面から見た、
図16に示される断面D-Dの横断面図である。
【0077】
T字形状構造(80)は、尿受容器(11)のリム端縁に垂直に接続された平板構造であり、尿受容器(11)のリムリングの接触表面積を増加させる機能を有し、従って、尿受容器(11)とUOSS(27)との間の接着力を増加させる。
【0078】
いくつかの変形形態を上に詳細に説明したが、他の修正も可能である。例えば、添付の図面に示され、かつ本明細書で説明される論理フローは、所望の結果を達成するために、示されている特定の順序または連続的な順序である必要はない。一部の実装形態では、示されている図面はそれらの実装形態の等角投影図である。一部の代替的な実装形態では、比例における任意の変更が可能である。追加の実装形態は、以下の特許請求の範囲内に含まれ得る。