(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】増大した触媒活性を備えた電気化学触媒
(51)【国際特許分類】
H01M 4/86 20060101AFI20240730BHJP
H01M 4/92 20060101ALI20240730BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20240730BHJP
B01J 23/42 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H01M4/86 M
H01M4/92
H01M8/10 101
B01J23/42 M
(21)【出願番号】P 2019568036
(86)(22)【出願日】2018-06-13
(86)【国際出願番号】 US2018037352
(87)【国際公開番号】W WO2018231998
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-03-24
(32)【優先日】2017-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(73)【特許権者】
【識別番号】591037096
【氏名又は名称】フオルクスワーゲン・アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】VOLKSWAGEN AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】プリンツ, フリードリヒ ビー.
(72)【発明者】
【氏名】シュー, シチェン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヨンミン
(72)【発明者】
【氏名】ジャラミロ, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヒギンス, ドリュー シー.
(72)【発明者】
【氏名】ユースフ, マハ
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ジャオシュアン
(72)【発明者】
【氏名】リー, ケイト
(72)【発明者】
【氏名】オラゾフ, マラト
(72)【発明者】
【氏名】リー, ドン ウン
(72)【発明者】
【氏名】グラフ, ターニャ
(72)【発明者】
【氏名】シュラド, トマス
(72)【発明者】
【氏名】ヒューブナー, ゲロルド
(72)【発明者】
【氏名】ウィッテルン, ハンナ-レナ
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー, ヨナタン エドワード
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-115324(JP,A)
【文献】特表2015-525675(JP,A)
【文献】特開2013-243119(JP,A)
【文献】特開2009-235467(JP,A)
【文献】特開2009-021211(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103053058(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0260278(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86-4/98
H01M 8/00-8/0297
H01M 8/08-8/2495
B01J 23/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒構造であって、前記触媒構造は、
基質と、
前記基質上の触媒層と、
前記基質と前記触媒層との間に配置されている接着層と
を備え、
前記接着層の平均厚さは、1nmまたはそれ未満であり、
前記接着層は、金属または半金属酸化物、金属または半金属窒化物、金属または半金属炭化物、金属または半金属ホウ化物、金属または半金属硫化物、金属または半金属リン化物、金属または半金属珪化物、または、これらのうちの2つ以上の合金または組み合わせを含む群から選択される少なくとも1つを含み、
前記接着層は
、酸素空孔、または、ドーパント、または、酸素空孔およびドーパントの組み合わせを含む
ことにより、前記接着層の導電率を増加させ、前記酸素空孔、または、前記ドーパント、または、前記酸素空孔および前記ドーパントの組み合わせは、前記接着層の厚さにわたって濃度勾配を有する、触媒構造。
【請求項2】
触媒構造であって、前記触媒構造は、
基質と、
前記基質上の触媒層と、
前記基質と前記触媒層との間に配置されている接着層と
を備え、
前記触媒層の材料は、前記接着層の領域の中に少なくとも部分的に延在し、
前記接着層は、金属または半金属酸化物、金属または半金属窒化物、金属または半金属炭化物、金属または半金属ホウ化物、金属または半金属硫化物、金属または半金属リン化物、金属または半金属珪化物、または、これらのうちの2つ以上の合金または組み合わせを含む群から選択される少なくとも1つを含み、
前記接着層は
、酸素空孔、または、ドーパント、または、酸素空孔およびドーパントの組み合わせを含む
ことにより、前記接着層の導電率を増加させ、前記酸素空孔、または、前記ドーパント、または、前記酸素空孔および前記ドーパントの組み合わせは、前記接着層の厚さにわたって濃度勾配を有する、触媒構造。
【請求項3】
前記領域は、前記触媒層の材料および前記接着層の材料の合金を含む、請求項2に記載の触媒構造。
【請求項4】
前記接着層は、金属酸化物または半金属酸化物のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~2のいずれか1項に記載の触媒構造。
【請求項5】
触媒構造であって、前記触媒構造は、
基質と、
前記基質上の触媒層と
を備え、
前記触媒層は、相互に離間される離散領域を含み、前記離散領域のうちの少なくとも1つは、前記基質に接合される部分と、前記基質にわたって延在し、ある間隙だけ前記基質から離間される別の部分とを含む、触媒構造。
【請求項6】
前記触媒層は、白金族金属を含む、請求項1、2、5のいずれか1項に記載の触媒構造。
【請求項7】
前記触媒構造は、前記触媒層上に被覆層をさらに備える、請求項1、2、5のいずれか1項に記載の触媒構造。
【請求項8】
前記被覆層の平均厚さは、1nmまたはそれ未満である、請求項7に記載の触媒構造。
【請求項9】
前記被覆層は、前記触媒層の部分的表面被覆を提供する、請求項7に記載の触媒構造。
【請求項10】
触媒構造であって、前記触媒構造は、
基質と、
前記基質上の触媒層と、
前記触媒層上の被覆層と、
前記基質と前記触媒層との間に配置されている接着層と
を備え、
前記接着層は、金属または半金属酸化物、金属または半金属窒化物、金属または半金属炭化物、金属または半金属ホウ化物、金属または半金属硫化物、金属または半金属リン化物、金属または半金属珪化物、または、これらのうちの2つ以上の合金または組み合わせを含む群から選択される少なくとも1つを含み、
前記接着層は
、酸素空孔、または、ドーパント、または、酸素空孔およびドーパントの組み合わせを含む
ことにより、前記接着層の導電率を増加させ、前記酸素空孔、または、前記ドーパント、または、前記酸素空孔および前記ドーパントの組み合わせは、前記接着層の厚さにわたって濃度勾配を有する、触媒構造。
【請求項11】
前記被覆層は、前記触媒層の部分的表面被覆を提供する、請求項10に記載の触媒構造。
【請求項12】
前記触媒層は、白金族金属を含み、前記被覆層は、金属酸化物、半金属酸化物、金属窒化物、半金属窒化物、金属炭化物、半金属炭化物、金属ホウ化物、半金属ホウ化物、金属硫化物、半金属硫化物、金属リン化物、半金属リン化物、金属珪化物、または、半金属珪化物のうちの少なくとも1つを含む、請求項10に記載の触媒構造。
【請求項13】
燃料電池のための膜電極アセンブリであって、
前記燃料電池のための前記膜電極アセンブリは、ポリマーイオン伝導性膜と、前記ポリマーイオン伝導性膜に隣接する電気触媒層とを備え、前記電気触媒層は、請求項1、2、5、10のいずれか1項に記載の触媒構造を含む、燃料電池のための膜電極アセンブリ。
【請求項14】
燃料電池であって、前記燃料電池は、
カソード電気触媒層と、
アノード電気触媒層と、
前記カソード電気触媒層と前記アノード電気触媒層との間に配置されているポリマーイオン伝導性膜と
を備え、
前記カソード電気触媒層または前記アノード電気触媒層のうちの少なくとも1つは、請求項1、2、5、10のいずれか1項に記載の触媒構造を含む、燃料電池。
【請求項15】
燃料電池であって、前記燃料電池は、
第1のガス拡散層と、
第2のガス拡散層と、
前記第1のガス拡散層と前記第2のガス拡散層との間に配置されているポリマーイオン伝導性膜と
を備え、
前記第1のガス拡散層または前記第2のガス拡散層のうちの少なくとも1つは、請求項1、2、5、10のいずれか1項に記載の触媒構造を含む、燃料電池。
【請求項16】
基質上に触媒の薄フィルムを形成するための方法であって、前記方法は、
原子層堆積によって前記基質上に接着層を堆積させることにより、接着層コーティング基質をもたらすこと
であって、前記接着層は、金属または半金属酸化物、金属または半金属窒化物、金属または半金属炭化物、金属または半金属ホウ化物、金属または半金属硫化物、金属または半金属リン化物、金属または半金属珪化物、または、これらのうちの2つ以上の合金または組み合わせを含む群から選択される少なくとも1つを含む、ことと、
原子層堆積によって前記接着層コーティング基質上に触媒層を堆積させることにより、触媒コーティング基質をもたらすことと、
前記接着層の中に酸素空孔、または、ドーパント、または、酸素空孔およびドーパントの組み合わせを導入することにより、前記接着層の導電率を増加させること
であって、前記酸素空孔、または、前記ドーパント、または、前記酸素空孔および前記ドーパントの組み合わせは、前記接着層の厚さにわたって濃度勾配を有する、ことと
を含む、方法。
【請求項17】
前記接着層の平均厚さは、1nmまたはそれ未満である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記方法は、前記触媒層の材料が前記接着層の領域の中に少なくとも部分的に延在するように、前記触媒層および前記接着層を相互混合することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記触媒層の材料は、前記接着層の材料と反応することにより、前記接着層の領域内に合金を形成する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記酸素空孔、または、ドーパント、または、酸素空孔およびドーパントの組み合わせを導入することは、酸素空孔を前記接着層の中に導入することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記酸素空孔、または、ドーパント、または、酸素空孔およびドーパントの組み合わせを導入することは、ドーパントを前記接着層の中に導入することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記方法は、前記触媒層を堆積させることに続けて、前記接着層の相転移を誘発することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記相転移を誘発することは、前記接着層を加熱することにより、アモルファス相から結晶相への転移を誘発することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記方法は、前記触媒層を堆積させることに続けて、前記接着層を少なくとも部分的に除去することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記接着層を少なくとも部分的に除去することは、前記接着層の材料が前記触媒層の材料に対してより高い可溶性を有する溶液に前記触媒コーティング基質を暴露することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記接着層は、セラミックを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記方法は、前記接着層を堆積させることに先立って、前記基質を官能化することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
前記方法は、前記触媒層を堆積させることに先立って、前記接着層を官能化することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項29】
前記方法は、原子層堆積によって前記触媒コーティング基質上に被覆層を堆積させることをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項30】
前記被覆層の平均厚さは、1nmまたはそれ未満である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記被覆層は、前記触媒層の部分的表面被覆を提供する、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記被覆層は、セラミックを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記方法は、前記被覆層を堆積させることに先立って、前記触媒層を官能化することをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年6月13日に出願された米国仮出願番号第62/519,056号の利益を主張しており、その内容は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
詳細な説明
ポリマー電解質膜(PEM)燃料電池は、ゼロエミッション車両等の用途のための電源として大きな潜在性を有する。しかしながら、最新技術のPEM燃料電池は、いくつかの欠点に悩まされる。最も困難な欠点のうちの1つは、燃料電池の膜電極アセンブリ(MEA)における電気化学触媒としての役割を果たす、ナノサイズの粒子(またはナノ粒子)の形態における高コストな白金族金属(PGM)の量である。PGM触媒の量は、典型的には、燃料電池スタックにおける単位セルあたりの電力仕様によって判定される。しかしながら、有意な付加的量のPGM触媒が、典型的には、いくつかの劣化プロセスを考慮し、燃料電池の寿命にわたって信頼性のある動作を可能にするために含まれる。典型的な劣化プロセスは、PGM材料の損失または触媒活性表面積の損失に関連付けられ、PGM粒子溶解および腐食、オストワルド熟成を通したPGM粒子成長、PGM粒子凝集、炭素質支持体からのPGM粒子脱離、ならびに炭素質支持体の腐食を含む。
【0003】
本開示の実施形態を開発する必要性が生じたのは、本背景のためである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
要旨
いくつかの実施形態では、触媒構造は、(1)基質と、(2)基質上の触媒層と、(3)基質と触媒層との間に配置される、接着層とを含み、接着層の平均厚さは、約1nmまたはそれ未満である。
【0005】
いくつかの実施形態では、触媒構造は、(1)基質と、(2)基質上の触媒層と、(3)基質と触媒層との間に配置される、接着層とを含み、触媒層の材料は、少なくとも部分的に、接着層の領域の中に延在する。
【0006】
いくつかの実施形態では、触媒構造は、(1)基質と、(2)基質上の触媒層と、(3)基質と触媒層との間に配置される、接着層とを含み、触媒層は、接着層によって付与される格子歪みによって特徴付けられる。
【0007】
いくつかの実施形態では、触媒構造は、(1)基質と、(2)基質上の触媒層とを含み、触媒層は、相互に離間される離散領域を含み、離散領域のうちの少なくとも1つは、基質に接合される部分と、基質にわたって延在し、ある間隙だけ基質から離間される別の部分とを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、触媒構造は、(1)基質と、(2)基質上の触媒層と、(3)触媒層上の被覆層とを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、燃料電池のための膜電極アセンブリは、(1)ポリマーイオン伝導性膜と、(2)ポリマーイオン伝導性膜に隣接する電気触媒層とを含み、電気触媒層は、前述の実施形態のうちのいずれか1つの触媒構造を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、燃料電池は、(1)カソード電気触媒層と、(2)アノード電気触媒層と、(3)カソード電気触媒層とアノード電気触媒層との間に配置される、ポリマーイオン伝導性膜とを含み、カソード電気触媒層またはアノード電気触媒層のうちの少なくとも1つは、前述の実施形態のうちのいずれか1つの触媒構造を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、燃料電池は、(1)第1のガス拡散層と、(2)第2のガス拡散層と、(3)第1のガス拡散層と第2のガス拡散層との間に配置される、ポリマーイオン伝導性膜とを含み、第1のガス拡散層または第2のガス拡散層のうちの少なくとも1つは、前述の実施形態のうちのいずれか1つの触媒構造を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、方法は、(1)原子層堆積によって基質上に接着層を堆積させるステップであって、接着層コーティング基質をもたらすステップと、(2)原子層堆積によって接着層コーティング基質上に触媒層を堆積させるステップであって、触媒コーティング基質をもたらすステップとを含む。
【0013】
本開示の他の側面および実施形態もまた、考慮される。前述の概要および以下の詳細な説明は、本開示を任意の特定の実施形態に制限することを意味せず、単に、本開示のいくつかの実施形態を説明することを意味する。
例えば、本願は以下の項目を提供する。
(項目1)
触媒構造であって、
基質と、
前記基質上の触媒層と、
前記基質と前記触媒層との間に配置される、接着層と、
を備え、
前記接着層の平均厚さは、1nmまたはそれ未満である、触媒構造。
(項目2)
触媒構造であって、
基質と、
前記基質上の触媒層と、
前記基質と前記触媒層との間に配置される、接着層と、
を備え、
前記触媒層の材料は、少なくとも部分的に、前記接着層の領域の中に延在する、触媒構造。
(項目3)
前記領域は、前記触媒層の材料および前記接着層の材料の合金を含む、項目2に記載の触媒構造。
(項目4)
触媒構造であって、
基質と、
前記基質上の触媒層と、
前記基質と前記触媒層との間に配置される、接着層と、
を備え、
前記触媒層は、前記接着層によって付与される格子歪みによって特徴付けられる、触媒構造。
(項目5)
前記接着層は、結晶相を含む、項目4に記載の触媒構造。
(項目6)
前記接着層は、金属酸化物または半金属酸化物のうちの少なくとも1つを含む、項目1、2、および4のいずれか1項に記載の触媒構造。
(項目7)
触媒構造であって、
基質と、
前記基質上の触媒層と、
を備え、
前記触媒層は、相互に離間される離散領域を含み、前記離散領域のうちの少なくとも1つは、前記基質に接合される部分と、前記基質にわたって延在し、ある間隙だけ前記基質から離間される別の部分とを含む、触媒構造。
(項目8)
前記触媒層は、白金族金属を含む、項目1、2、4、および7のいずれか1項に記載の触媒構造。
(項目9)
前記触媒層上に被覆層をさらに備える、項目1、2、4、および7のいずれか1項に記載の触媒構造。
(項目10)
前記被覆層の平均厚さは、1nmまたはそれ未満である、項目9に記載の触媒構造。
(項目11)
前記被覆層は、前記触媒層の部分的表面被覆を提供する、項目9に記載の触媒構造。
(項目12)
触媒構造であって、
基質と、
前記基質上の触媒層と、
前記触媒層上の被覆層と、
を備える、触媒構造。
(項目13)
前記被覆層の平均厚さは、1nmまたはそれ未満である、項目12に記載の触媒構造。
(項目14)
前記被覆層は、前記触媒層の部分的表面被覆を提供する、項目12に記載の触媒構造。
(項目15)
前記触媒層は、白金族金属を含み、前記被覆層は、金属酸化物、半金属酸化物、金属窒化物、半金属窒化物、金属炭化物、半金属炭化物、金属ホウ化物、半金属ホウ化物、金属硫化物、半金属硫化物、金属リン化物、半金属リン化物、金属珪化物、または半金属珪化物のうちの少なくとも1つを含む、項目12に記載の触媒構造。
(項目16)
ポリマーイオン伝導性膜と、前記ポリマーイオン伝導性膜に隣接する電気触媒層とを備え、前記電気触媒層は、項目1、2、4、7、および12のいずれか1項に記載の触媒構造を含む、燃料電池のための膜電極アセンブリ。
(項目17)
燃料電池であって、
カソード電気触媒層と、
アノード電気触媒層と、
前記カソード電気触媒層と前記アノード電気触媒層との間に配置される、ポリマーイオン伝導性膜と、
を備え、
前記カソード電気触媒層または前記アノード電気触媒層のうちの少なくとも1つは、項目1、2、4、7、および12のいずれか1項に記載の触媒構造を含む、燃料電池。
(項目18)
燃料電池であって、
第1のガス拡散層と、
第2のガス拡散層と、
前記第1のガス拡散層と前記第2のガス拡散層との間に配置される、ポリマーイオン伝導性膜と、
を備え、
前記第1のガス拡散層または前記第2のガス拡散層のうちの少なくとも1つは、項目1、2、4、7、および12のいずれか1項に記載の触媒構造を含む、燃料電池。
(項目19)
方法であって、
原子層堆積によって基質上に接着層を堆積させるステップであって、接着層コーティング基質をもたらすステップと、
原子層堆積によって前記接着層コーティング基質上に触媒層を堆積させるステップであって、触媒コーティング基質をもたらすステップと、
を含む、方法。
(項目20)
前記接着層の平均厚さは、1nmまたはそれ未満である、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記触媒層の材料が、少なくとも部分的に、前記接着層の領域の中に延在するように、前記触媒層および前記接着層を相互混合するステップをさらに含む、項目19に記載の方法。
(項目22)
前記触媒層の材料は、前記接着層の材料と反応し、前記接着層の領域内に合金を形成する、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記接着層の中に欠損を導入するステップであって、前記接着層の導電率を増加させるステップをさらに含む、項目19に記載の方法。
(項目24)
前記欠損を導入するステップは、酸素空孔を前記接着層の中に導入することを含む、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記欠損を導入するステップは、ドーパントを前記接着層の中に導入することを含む、項目23に記載の方法。
(項目26)
前記触媒層を堆積させるステップに続けて、前記接着層の相転移を誘発するステップをさらに含む、項目19に記載の方法。
(項目27)
前記相転移を誘発するステップは、前記接着層を加熱することであって、アモルファス相から結晶相への転移を誘発することを含む、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記触媒層を堆積させるステップに続けて、前記接着層を少なくとも部分的に除去するステップをさらに含む、項目19に記載の方法。
(項目29)
前記接着層を少なくとも部分的に除去するステップは、前記触媒コーティング基質を、前記接着層の材料が前記触媒層の材料に対してより高い可溶性を有する溶液に暴露することを含む、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記接着層は、セラミックを含む、項目19に記載の方法。
(項目31)
前記接着層を堆積させるステップに先立って、前記基質を官能化するステップをさらに含む、項目19に記載の方法。
(項目32)
前記触媒層を堆積させるステップに先立って、前記接着層を官能化するステップをさらに含む、項目19に記載の方法。
(項目33)
原子層堆積によって前記触媒コーティング基質上に被覆層を堆積させるステップをさらに含む、項目19に記載の方法。
(項目34)
前記被覆層の平均厚さは、1nmまたはそれ未満である、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記被覆層は、前記触媒層の部分的表面被覆を提供する、項目33に記載の方法。
(項目36)
前記被覆層は、セラミックを含む、項目33に記載の方法。
(項目37)
前記被覆層を堆積させるステップに先立って、前記触媒層を官能化するステップをさらに含む、項目33に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本開示のいくつかの実施形態の性質および目的のより深い理解のために、付随の図面と併せて検討される、以下の詳細な説明が参照されるべきである。
【0015】
【
図1A】
図1Aは、触媒の堆積に先立って基質の随意の官能化を伴う、基質上に触媒の薄フィルムを形成する概略プロセスフローである。
【0016】
【
図1B】
図1Bは、触媒層を含む堆積された層のセットが基質を被覆する、
図1Aのプロセスフローから結果として生じる構造の実施例の概略図示である。
【0017】
【
図1C】
図1Cは、触媒層を含む堆積された層のセットが基質を被覆する、
図1Aのプロセスフローから結果として生じる構造の別の実施例の概略図示である。
【0018】
【
図2A】
図2Aは、基質上に触媒の薄フィルムを形成する概略プロセスフローである。
【0019】
【
図2B】
図2Bは、触媒層を含む堆積された層のセットが基質を被覆する、
図2Aのプロセスフローから結果として生じる構造の実施例の概略図示である。
【0020】
【
図2C】
図2Cは、触媒層を含む堆積された層のセットが基質を被覆する、
図2Aのプロセスフローから結果として生じる構造の別の実施例の概略図示である。
【0021】
【
図2D】
図2Dは、触媒層を含む堆積された層のセットが基質を被覆する、
図2Aのプロセスフローから結果として生じる構造の別の実施例の概略図示である。
【0022】
【
図3A】
図3Aは、基質上に触媒の薄フィルムを形成する概略プロセスフローである。
【0023】
【
図3B】
図3Bは、基質上に触媒の薄フィルムを形成する概略プロセスフローである。
【0024】
【
図4】
図4は、触媒層を含む1つまたはそれを上回る堆積された層のセットが伝導性支持体を被覆する、支持された触媒の構造の概略図示である。
【0025】
【
図5】
図5は、ガス拡散層の構造の概略図示である。
【0026】
【
図6】
図6は、本明細書に開示される支持された触媒を組み込むPEM燃料電池の概略図示である。
【0027】
【
図7】
図7は、本明細書に開示される触媒の構造を組み込む別のPEM燃料電池の概略図示である。
【0028】
【
図8】
図8は、4つの異なる触媒システムに関する加速耐久性試験の前後の反応電流密度(i
k)である。
【0029】
【
図9】
図9は、ガラス状炭素上に堆積される白金の量によって正規化される、20のサイクル数に至るまでの異なる接着層(Nb
2O
5、TiO
2、HfO
2、ZrO
2、Al
2O
3、およびSiO
2)を用いて基質上に堆積される白金の量である。
【0030】
【
図10】
図10は、20のサイクル数に至るまでの異なる接着層(SiO
2、Al
2O
3、TiO
2、およびNb
2O
5)を用いて基質上に堆積される白金の表面粗度(二乗平均平方根(rms))である。
【0031】
【
図11】
図11は、種々のドーピングレベルx=0、0.02、0.04、0.06、0.12、および0.25における、密度汎関数理論を使用するTiO
2におけるNbドーピングのシミュレーション結果である。
【0032】
【
図12】
図12は、以下である。(a)は、白金(Pt)/酸化物(TiO
2またはNb
2O
5)/ガラス状炭素(GC)触媒の概略図である。白金層および酸化層の両方が、原子層堆積(ALD)を通してGCディスク上に堆積される。GC支持された触媒(Pt/GC、Pt/TiO
2/GC、およびPt/Nb
2O
5/GC)の電気化学性質が、約0.1M HClO
4水性溶液中で室温において記録される。(b)は、H
2焼鈍の前の異なる触媒調合物(Pt/GC、Pt/TiO
2/GC、およびPt/Nb
2O
5/GC)に関するPt ALDサイクル数対質量活性(MA、Pt質量負荷によって正規化される、約0.9Vにおいて測定される反応電流密度対可逆水素電極(RHE))である。(c)は、GC、TiO
2/GC、およびNb
2O
5/GCに対するALD Pt 20サイクル(Pt×20)に関する水素熱事後焼鈍温度対MAである。
【0033】
【
図13】
図13は、(a)水素事後焼鈍の有無別の異なるALDサイクル(×5、×10、×15、および×20)ならびにPt×20/TiO
2/GCおよびPt×20/Nb
2O
5/GCを伴うPt/GCに関する比活性(mA/cm
2
Pt)対電位のターフェルプロット、Pt×20/TiO
2/GCに関するH
2事後焼結温度対比活性(i
s、粗度係数RFによって正規化される、約0.9Vにおいて測定される反応電流密度対RHE)およびRF(b)、ならびにOH基の約1/10、約1/3、および約1/2単層(ML)を遊離させるOH脱離電位(U
*OH)(c)である。
【0034】
【
図14】
図14は、テンプレート層の少なくとも大部分が酸性溶液の中への浸漬に応じて除去されることを示す、(a)X線光電子分光法(XPS)結果および(b)誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)結果である。
【0035】
【
図15】
図15は、PtCoおよびPtサンプルの質量活性対Pt質量負荷である。
【0036】
【
図16】
図16は、約120℃および約160℃において堆積されるPtを伴うPt/CoO
xならびにH
2プラズマ焼鈍が続く約120℃において堆積されるPtを伴うPt/CoO
xの電気化学性能((a)電気化学表面積(ECSA)、(b)反応電流密度(J
k)、(c)比活性(SA)、および(d)質量活性(MA))である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
説明
金属/セラミック複合電気化学触媒:
【0038】
本開示のいくつかの実施形態は、PEM燃料電池を含む、燃料電池のための高安定、高活性、および超低負荷触媒のための金属/セラミック複合物を形成する改良されたプロセスならびに金属/セラミック複合物の結果として生じる構造を対象とする。下層接着層によって安定化される、触媒の薄フィルムの形成は、溶解および腐食が最も生じやすい角および縁等の明確に異なる表面欠損の実質的な不在ならびにオストワルド熟成および粒子凝集等のナノ粒子に影響を及ぼす劣化プロセスへの薄フィルムの実質的な耐性の結果として、触媒のナノ粒子形態と比較して、より高い安定性を提供する。原子層堆積の使用を通して、触媒の薄フィルムが、低減された厚さおよび高共形性で堆積されることができる。薄フィルムの低減された厚さは、低負荷における触媒の効率的使用を可能にし、さらに、薄フィルム内の触媒表面原子のさらなる暴露とともにより高い質量活性につながる。さらに、原子層堆積の使用を通して、セラミックの1つまたはそれを上回る薄フィルムが、触媒に隣接して堆積され、強化された安定性を触媒にもたらす、例えば、強金属支持体相互作用(SMSI)を通して強化された触媒活性をもたらす、ならびに触媒成長を加速させる等の利益を付与することができる。
【0039】
図1Aは、触媒の堆積に先立って基質の随意の官能化を伴う、基質上に触媒の薄フィルムを形成する概略プロセスフローである。いくつかの実施形態では、基質は、カーボンナノ粒子、カーボンブラック、黒鉛状炭素、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、カーボンマイクロファイバ、グラフェンシート、炭素の他の高表面積および伝導性形態のような炭素含有または炭素質支持体、ならびに窒化チタン支持体および伝導性酸化物支持体等の非炭素ベースの伝導性支持体等の伝導性支持体である。他の実施形態では、基質は、炭素繊維布、カーボン紙、または他の炭素質もしくは非炭素ベースの繊維状材料等のガス拡散層として使用され得る多孔性伝導性材料である。他のタイプの基質も、下記にさらに議論されるような接着層の好適な官能化または選択を通して使用されることができる。
【0040】
図1Aを参照すると、プロセスフローは、随意に、基質を官能化し、官能化基質をもたらすステップを含み、官能化基質上の触媒層を含む1つまたはそれを上回る層のセットの堆積が続く。基質を官能化するステップは、基質の表面にアンカまたは反応性官能基を導入し、基質上に堆積される触媒の前駆体との化学結合を強化または助長するために実施される。いくつかの実施形態では、官能化に先立つ基質は、実質的にアンカ基が欠如し、触媒の堆積に向かって実質的に不活性であり得る。例えば、未処理グラフェンシートの基底面は、白金(Pt)等のPGMの原子層堆積に向かって実質的に不活性であり得、未処理グラフェンシート上にPtの原子層堆積を実施するステップは、シートの縁上にPtナノ粒子の形成をもたらすことができる。グラフェンシートの官能化は、例えば、触媒の前駆体との化学結合を助長する、sp
3混成炭素(未処理グラフェンシートにおけるsp
2混成炭素の代わり)の形成によって現れるように、基底面上の欠損部位の導入を伴うことができる。他の実施形態では、官能化に先立つ基質は、いくつかのアンカ基を含み、基質の官能化は、付加的アンカ基を導入し、基質の表面を横断してアンカ基のより高い密度およびより高い均一性をもたらし、触媒の薄フィルムの後続形成を助長する。基質を官能化するステップは、水素プラズマ、酸素プラズマ、硫化水素プラズマ、または窒素プラズマ等のプラズマ処理を適用することによって実施されることができ、例えば、水素含有アンカ基(例えば、-C-H基を導入するための水素化)、酸素含有アンカ基(例えば、-C-O-部分またはカルボニル部分を含有する基)、硫黄含有アンカ基、窒素含有アンカ基、またはそのような基の組み合わせの形成をもたらすことができる。プラズマ処理の代わりに、またはそれと組み合わせて、基質を官能化するステップは、表面酸化物エッチング等の湿式化学処理によって実施され、酸化性酸による処理、または塩基もしくは他の反応性化合物の使用、または熱処理が続くことができる。
【0041】
次に、官能化基質上の触媒の堆積は、化学蒸着、特に、原子層堆積によって実施され、触媒コーティング基質をもたらす。触媒は、単一元素材料、例えば、単一PGMとして堆積されることができるが、二元元素材料、三元元素材料、または他の多元素材料の堆積もまた、本開示によって包含される。原子層堆積のプロセスフローは、第1の原子層堆積サイクルを実施し、堆積チャンバ内に保持される基質上に触媒の材料を堆積させるステップを含み、材料の必須の量が堆積されるまで、基質上に材料を堆積させるために第2の原子層堆積サイクルを実施するステップが続き、基質上に材料を堆積させるために第3の原子層堆積サイクルを実施するステップが続き、以下同様である。各原子層堆積サイクルを実施するステップは、基質または基質の一部を、堆積される材料を含有する第1の前駆体と、第2の酸化前駆体とを含む堆積ガスに連続的に暴露するステップを含む。例えば、単一元素材料の場合では、第1の前駆体は、有機配位子と配位されたPGMを伴う有機金属化合物等のPGM含有前駆体であり得、第2の酸化前駆体は、酸素、オゾン、水、または酸素プラズマであり得る。例えば、Ptの具体的な場合に関して、第1の前駆体は、トリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金(IV)または別のPt含有有機金属化合物であり得る。Ptに加えて、堆積は、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、およびイリジウム(Ir)等の他のPGM、ならびに銀(Ag)および金(Au)等の他の貴金属、ならびに鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)等の他の遷移金属に対して実施されることができる。第1の原子層堆積サイクルの間、第1の前駆体は、チャンバの中に導入され、第1の前駆体が、第1の前駆体の分子、第1の前駆体の分子の残留物、または両方の組み合わせの形態において基質に吸着されることをもたらし、第2の酸化前駆体は、チャンバ内に導入され、吸着された第1の前駆体と第2の酸化前駆体との間の反応をもたらし、吸着された第1の前駆体中に含まれる配位子を遊離させ、それによって、基質上に堆積された材料を残す。基質上のアンカ基(官能化を通して導入される)は、より高い密度かつより均一な様式で基質への第1の前駆体の吸着を助長する。いくつかの実施形態では、基質上のアンカ基は、吸着された第1の前駆体との反応を受け、直接または間接的のいずれかで酸素または窒素原子等の1つまたはそれを上回る介在原子を通して、基質の炭素原子と吸着された第1の前駆体中に含まれる金属原子との間の結合または連鎖の形成をもたらすことができる。水素または水素プラズマ等の第2の還元性前駆体が、第2の酸化前駆体の代わりに、またはそれと組み合わせて使用されることができる。除去動作が、各前駆体を導入するステップに続けて実施され、不活性キャリアガスを用いた排出またはパージによって等、反応生産物およびいずれの未反応前駆体も除去することができる。
【0042】
随意に、いくつかの実施形態では、不動態化ガスが、第1の原子層堆積サイクルを含む各原子層堆積サイクルにおいて前駆体を導入するステップに続けて、および後続原子層堆積サイクルにおいて前駆体を導入するステップに先立って、チャンバの中に導入される。不動態化ガスは、第1の前駆体の後続吸着が、すでに堆積された材料の代わりに基質の空き面積を被覆することに向けて優先または助長されるであろうように、第1の前駆体とすでに堆積された材料との間の吸着エネルギーを調整または変化させ、その吸着エネルギーをより好ましくないものにする役割を果たす。そのような様式では、不動態化ガスの使用は、基質に沿った第1の前駆体の分散を強化し、基質に沿って堆積された材料の強化されたより均一な被覆につながり、ならびにその被覆に対する制御を可能にする。いくつかの実施形態では、不動態化ガスに関する基準は、以下のうちの1つまたはそれを上回るもの、すなわち、1)堆積された材料上に吸着する能力、2)基質と比較して堆積された材料上へのより強い吸着に向けたさらなる傾向を呈する、またはそれを有すること、3)堆積された材料上への吸着後、不動態化ガスが、中間化学種を形成すること、および4)中間種への第1の前駆体の吸着エネルギーが、約-5kJ/モルまたはそれを上回る(もしくは約-0.052eVまたはそれを上回る)、約0kJ/モルまたはそれを上回る(もしくは約0eVまたはそれを上回る)、もしくは約10kJ/モルまたはそれを上回る(もしくは約0.104eVまたはそれを上回る)等の約-10kJ/モルを上回る(例えば、それよりも負ではない、またはそれよりも正である)(または約-0.104eVを上回る)、もしくは中間種への第1の前駆体の吸着エネルギーが、基質への第1の前駆体の吸着エネルギーを上回る、を含む。例えば、Ptまたは別の単一元素材料の場合に関して、不動態化ガスは、一酸化炭素(CO)であり得る。COに加えて、アンモニア(NH3)、一酸化窒素(NO)、およびメタン(CH4)の反応形態等の上記に留意される基準を満たす他の不動態化ガスも、使用されることができる。プロセス温度が、不動態化ガスの脱着を軽減するために制御されることができる。例えば、COまたは別の不動態化ガスの場合に関して、基質の温度は、約50℃~約250℃、約80℃~約200℃、または約100℃~約150℃の範囲内であるように制御されることができる。
【0043】
結果として生じる触媒層は、約8nmまたはそれ未満、約7nmまたはそれ未満、約6nmまたはそれ未満、約5nmまたはそれ未満、もしくは約4nmまたはそれ未満、および約1nmまたはそれ未満に至るまでの範囲内の平均厚さを有することができる。例えば、触媒層の平均厚さは、約1nm~約4nmの範囲内であり得る。換言すると、触媒層の平均厚さは、約3原子層~約12原子層等の約1原子層~約15原子層の範囲内であり得る。Ptの場合に関するいくつかの実施形態では、Ptの単一原子層またはPtの2原子層は、Ptの3またはそれを上回る原子層よりも触媒的に活性が若干低い場合がある。単一元素材料の場合では、1原子層は、元素の原子の単一層の厚さに対応することができる。a%の第1の元素およびb%の第2の元素のモル組成を有する二元元素材料の場合では、1原子層は、(a/100)×(第1の元素の原子のサイズ)+(b/100)×(第2の元素の原子のサイズ)によって与えられる有効サイズを有する原子の単一層の厚さに対応することができる。モル組成による類似する加重平均が、三元元素材料または他の多元素材料に関する1原子層の厚さを規定するために使用されることができる。触媒層の所望の厚さは、原子層堆積サイクルの回数または堆積される触媒層の材料の量に対する制御を含む、原子層堆積のプロセス条件に対する制御を通して達成されることができる。
【0044】
触媒層による基質の表面被覆は、部分的もしくは不完全であり得る、または実質的に完全であり得る。触媒層の所望の表面被覆は、原子層堆積サイクルの回数または堆積される触媒層の材料の量に対する制御を含む、原子層堆積のプロセス条件に対する制御を通して達成されることができる。結果として生じる触媒層は、実質的に連続的な共形フィルムまたは下層基質を暴露する間隙または開口部を有する等、非連続的な共形フィルムの形態にある、または下層基質を暴露するために相互から離間される離散領域の形態にあり得る。例えば、触媒層は、概して、0%~約100%の範囲内の基質の表面被覆を提供することができ、より具体的には、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約98.5%、または少なくとも約99%、および最大約100%等の少なくとも約30%の基質の表面被覆を提供することができる。表面被覆は、透過型電子顕微鏡法(TEM)もしくは走査型電子顕微鏡法(SEM)、ラザフォード後方散乱分光法、X線光電子分光法(XPS)、原子間力顕微鏡法(AFM)、または誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)を使用する等、撮像技法を使用して評価されることができる。
【0045】
次に、
図1Aを参照すると、プロセスフローは、随意に、触媒コーティング基質上に被覆層(または保護もしくはキャッピング層)を堆積させるステップを含む。触媒層上に堆積される被覆層は、腐食または酸化環境下で触媒層を保護することによって、触媒層に強化された安定性をもたらす。被覆層はまた、反応物質種の誘引に起因する触媒活性の増加等の付加的利益を提供することができる。被覆層の材料の実施例は、金属または半金属酸化物(例えば、酸化スズ(SnOx)、酸化アルミニウム(Al
xO
y)、酸化ジルコニウム(ZrO
x)、酸化ハフニウム(HfO
x)、酸化ケイ素(SiO
x)、酸化チタン(TiO
2等のTiO
x)、酸化ニオブ(Nb
2O
5等のNb
xO
y)、酸化タンタル(TaO
x)、酸化バナジウム(VO
x)、酸化タングステン(WO
x)、酸化コバルト(CoO
x)、酸化ニッケル(NiO
x)、酸化セリウム(CeO
x)、および酸化モリブデン(MoO
x)等の1価または多価金属もしくは半金属の二元酸化物を含む二元酸化物、ならびに酸化ストロンチウムチタン(ドーピングの有無を問わないSr
xTi
yO
z)等の三元、四元、またはより高次の酸化物)、金属または半金属窒化物(例えば、窒化チタン(TiN)、窒化クロム(CrN)、および窒化クロムアルミニウム(Cr
2AlN))、金属または半金属炭化物(例えば、炭化タングステン(WC)および炭化クロムアルミニウム(Cr
2AlC))、金属または半金属ホウ化物、金属または半金属硫化物(例えば、硫化亜鉛ZnS))、金属または半金属リン化物(例えば、リン化チタン(TiP))、金属または半金属珪化物、他のセラミック、もしくは前述のうちの2つまたはそれを上回るものの合金または組み合わせを含む。
【0046】
被覆層を堆積させるステップは、化学蒸着、特に、原子層堆積によって実施される。例えば、金属または半金属酸化物の場合では、各原子層堆積サイクルを実施するステップは、触媒コーティング基質または触媒コーティング基質の一部を、金属または半金属を含有する第1の前駆体と、第2の酸化前駆体とを含む堆積ガスに連続的に暴露するステップを含む。別の実施例として、各原子層堆積サイクルを実施するステップは、触媒コーティング基質または触媒コーティング基質の一部を、堆積される被覆層の材料の第1の元素を含有する第1の前駆体と、堆積される材料の第2の元素を含有する第2の前駆体と、第3の酸化前駆体とを含む堆積ガスに連続的に暴露するステップを含む。例えば、第1の元素は、金属または半金属であり得、第2の元素は、酸素、窒素、炭素、ホウ素、リン、硫黄、またはケイ素であり得る。第3の還元性前駆体が、酸化前駆体の代わりに、またはそれと組み合わせて使用されることができる。
【0047】
望ましくは、強化された安定性が、触媒層にもたらされる一方、触媒活性部位の十分な暴露を維持し、活性化損失を軽減するように、被覆層は、低減された厚さを有することができ、被覆層による触媒層の表面被覆は、部分的または不完全であり得る。被覆層の所望の厚さおよび表面被覆は、原子層堆積サイクルの回数または堆積される被覆層の材料の量に対する制御を含む、原子層堆積のプロセス条件に対する制御を通して達成されることができる。結果として生じる被覆層は、下層触媒層を暴露する間隙または開口部を有する等、多孔性もしくは非連続的な共形フィルムの形態にあり得る、または下層触媒層を暴露するために相互から離間される離散領域の形態にあり得る。例えば、被覆層は、概して、約100%未満の範囲内の触媒層の表面被覆を提供することができ、より具体的には、約55%またはそれ未満、約50%またはそれ未満、約45%またはそれ未満、約40%またはそれ未満、約35%またはそれ未満、約30%またはそれ未満、約25%またはそれ未満、もしくは約20%またはそれ未満、および約15%またはそれ未満に至るまで、もしくは約10%またはそれ未満に至るまで等、最大約60%の触媒層の表面被覆を提供することができる。表面被覆は、TEMもしくはSEM撮像技法、ラザフォード後方散乱分光法、XPS、AFM、またはICP-MSを使用して評価されることができる。被覆層の平均厚さは、約3nmまたはそれ未満、約2nmまたはそれ未満、もしくは約1nmまたはそれ未満、および約0.5nmまたはそれ未満に至るまでの範囲内であり得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、プロセスフローは、随意に、触媒層を官能化し、官能化触媒層をもたらすステップを含み、官能化触媒層上の被覆層の堆積が続く。触媒層を官能化するステップは、触媒層の表面にアンカまたは反応性官能基を導入し、触媒層上に堆積される被覆層の前駆体との化学結合を強化または助長するために実施される。触媒層を官能化するステップは、水素プラズマ、酸素プラズマ、硫化水素プラズマ、または窒素プラズマ等のプラズマ処理を適用することによって実施されることができ、例えば、水素含有アンカ基(例えば、-C-H基を導入するための水素化)、酸素含有アンカ基(例えば、-C-O-部分またはカルボニル部分を含有する基)、硫黄含有アンカ基、窒素含有アンカ基、またはそのような基の組み合わせの形成をもたらすことができる。プラズマ処理の代わりに、またはそれと組み合わせて、触媒層を官能化するステップは、表面酸化物エッチング等の湿式化学処理によって実施され、酸化性酸による処理、または塩基もしくは他の反応性化合物の使用、または熱処理が続くことができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、プロセスフローは、随意に、触媒層の材料が、少なくとも部分的に、被覆層の領域の中に延在する、またはその中に組み込まれる、被覆層の材料が、少なくとも部分的に、触媒層の領域の中に延在する、またはその中に組み込まれる、もしくは両方であるように、触媒層および被覆層を相互混合するステップを含む。例えば、相互混合するステップは、被覆層の堆積に続けて、水素ガスまたは水素プラズマ等の還元雰囲気中もしくは真空条件下のプラズマ処理または熱処理の適用を通して材料相互拡散を誘発することによって達成されることができる。還元雰囲気中または真空下のそのような事後もしくは原位置外処理は、被覆層における空孔(例えば、酸素空孔)を導入し、空孔を占有する触媒層内のPtまたは他のPGM原子の拡散を助長することができる。別の実施例として、相互混合するステップは、触媒層および被覆層の原子層堆積の一部として達成されることができ、触媒層の材料を堆積させるための原子層堆積サイクルは、被覆層の材料を堆積させるための原子層堆積サイクルとともに散在する。相互混合の結果として、触媒層の材料は、被覆層内に部分的に組み込まれ、被覆層の厚さにわたって触媒層の材料の濃度勾配を生成することができる。例えば、被覆層内のPtまたは別のPGMの原子濃度は、被覆層の厚さにわたって不均一であり得、触媒層と被覆層との間の界面または境界における値から、単調または他の様式等で界面から離れるように被覆層の中に延在する方向に沿って減少することができる。いくつかの実施形態では、相互混合の結果として、触媒層の材料は、被覆層の材料と反応し、合金を形成することができる。例えば、被覆層内に組み込まれるPt原子(または別のPGMもしくは別の金属の原子)は、被覆層の金属元素の原子との結合を形成し、被覆層の領域内に合金または金属/セラミック複合物を形成することができる。
【0050】
図1Bは、触媒層100を含む堆積された層のセットが基質102を被覆する、
図1Aのプロセスフローから結果として生じる構造の実施例の概略図示である。示されるように、触媒層100は、実質的に連続的なフィルムの形態にあり、触媒層100による基質102の表面被覆は、実質的に完全である。被覆層104による触媒層100の表面被覆は、強化された安定性が触媒層100にもたらされる一方、触媒活性部位の十分な暴露を維持するように、部分的または不完全である。
【0051】
図1Cは、触媒層100を含む堆積された層のセットが基質102を被覆する、
図1Aのプロセスフローから結果として生じる構造の別の実施例の概略図示である。示されるように、触媒層100は、非連続的なフィルムの形態にあり、触媒層100による基質102の表面被覆は、部分的または不完全である。被覆層104による触媒層100の表面被覆もまた、強化された安定性が触媒層100にもたらされる一方、触媒活性部位の十分な暴露を維持するように、部分的または不完全である。
【0052】
図2Aは、基質上に触媒の薄フィルムを形成する別の概略プロセスフローである。
図2Aのプロセスフローのある側面は、
図1Aに関して上記に解説されるように同様に実施されることができ、これらの側面は、繰り返されない。
【0053】
図2Aを参照すると、プロセスフローは、随意に、基質を官能化し、官能化基質をもたらすステップを含み、官能化基質上の触媒層を含む1つまたはそれを上回る層のセットの堆積が続く。基質を官能化するステップは、
図1Aに関して上記に解説されるように同様に実施されることができる。
【0054】
次に、プロセスフローは、官能化基質上に接着層(または下層)を堆積させ、接着層コーティング基質をもたらすステップを含み、接着層コーティング基質上の触媒層の堆積が続く。接着層は、基質および触媒層の両方に強く結合し、強化された安定性を触媒層にもたらす材料を含む(
図8の実施例節参照)。いくつかの実施形態では、接着層は、接着層の表面上にアンカまたは反応性官能基を含み、基質上に堆積される触媒の前駆体との化学結合を強化または助長する。いくつかの実施形態では、接着層は、下記にさらに解説されるような接着層および触媒層の相互混合の有無を問わず、燃料電池動作環境(例えば、高電気化学電位および低pH)下の溶解または表面再配列に対する触媒層内に存在する縁、角、または段の保護をもたらす。接着層はまた、SMSI(例えば、構造(例えば、格子歪み)、電子(例えば、dバンド中心遷移)、および配位子効果のうちの1つまたはそれを上回るものを含む)を通した触媒活性の増加等の付加的利益を提供し、基質の実質的に完全な被覆または下層基質の欠損部位上の接着層の部分的もしくは選択的堆積を伴うかどうかにかかわらず、燃料電池動作条件下で酸化または腐食環境から下層基質を保護することができる。さらに、接着層は、触媒層のより速い成長速度を助長することができ、接着層上の触媒層の成長挙動を改良することができる(
図9の実施例節参照)。いくつかの実施形態では、接着層の材料は、基質と比較して、触媒層の材料に対して改良された湿潤性を呈し、基質上の直接成長と比較して、接着層上の触媒層の加速された成長につながり、触媒層の前駆体の改良された利用および基質の暴露された面積上ではなく接着層上の触媒層の優先的な成長につながる(
図10の実施例節参照)。接着層の材料の実施例は、金属または半金属酸化物、金属または半金属窒化物、金属または半金属炭化物、金属または半金属ホウ化物、金属または半金属硫化物、金属または半金属リン化物、金属または半金属珪化物、他のセラミック、もしくは前述のうちの2つまたはそれを上回るものの合金または組み合わせを含む、被覆層に関して上記に解説されるものを含む。
【0055】
接着層を堆積させるステップは、化学蒸着、特に、原子層堆積によって実施される。例えば、金属または半金属酸化物の場合では、各原子層堆積サイクルを実施するステップは、官能化基質または官能化基質の一部を、金属または半金属を含有する第1の前駆体と、第2の酸化前駆体とを含む堆積ガスに連続的に暴露するステップを含む。別の実施例として、各原子層堆積サイクルを実施するステップは、官能化基質または官能化基質の一部を、堆積される被覆層の材料の第1の元素を含有する第1の前駆体と、堆積される材料の第2の元素を含有する第2の前駆体と、第3の酸化前駆体とを含む堆積ガスに連続的に暴露するステップを含む。例えば、第1の元素は、金属または半金属であり得、第2の元素は、酸素、窒素、炭素、ホウ素、リン、硫黄、またはケイ素であり得る。第3の還元性前駆体が、酸化前駆体の代わりに、またはそれと組み合わせて使用されることができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、接着層は、強化された活性および安定性が接着層によって触媒層にもたらされる一方、低減された厚さが触媒層と基質との間の電気経路距離を短縮し、それによって、オーム損失を軽減するように、低減された厚さを有することができる。接着層の所望の厚さおよび表面被覆は、原子層堆積サイクルの回数または堆積される接着層の材料の量に対する制御を含む、原子層堆積のプロセス条件に対する制御を通して達成されることができる。結果として生じる接着層は、実質的に連続的な共形フィルムまたは下層基質を暴露する間隙もしくは開口部を有する等、非連続的な共形フィルムの形態にある、または下層基質を暴露するために相互から離間される離散領域の形態にあり得る。例えば、接着層は、概して、0%~約100%の範囲内の基質の表面被覆を提供することができ、より具体的には、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約98.5%、または少なくとも約99%、および最大約100%等の少なくとも約30%の基質の表面被覆を提供することができる。表面被覆は、TEMもしくはSEM撮像技法、ラザフォード後方散乱分光法、XPS、AFM、またはICP-MSを使用して評価されることができる。いくつかの実施形態では、接着層の平均厚さは、約3nmまたはそれ未満、約2nmまたはそれ未満、もしくは約1nmまたはそれ未満、および約0.5nmまたはそれ未満に至るまでの範囲内であり得る。例えば、接着層の平均厚さは、約1nm~約2nmの範囲内であり得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、接着層は、約4nmまたはそれ未満範囲内の平均厚さを有する等、若干より大きい厚さを有することができ、プロセスフローは、触媒層の材料が、少なくとも部分的に、接着層の領域の中に延在する、またはその中に組み込まれるように、触媒層および接着層を相互混合するステップを含む。例えば、相互混合するステップは、触媒層の堆積に続けて、水素ガスまたは水素プラズマ等の還元雰囲気(例えば、酸素欠乏雰囲気)中もしくは真空条件下のプラズマ処理または熱処理の適用を通して材料相互拡散を誘発することによって達成されることができる。還元雰囲気中または真空下のそのような事後もしくは原位置外処理は、接着層における空孔(例えば、酸素空孔)を導入し、空孔を占有する触媒層内のPtまたは他のPGM原子の拡散を助長することができる。別の実施例として、相互混合するステップは、触媒層および接着層の原子層堆積の一部として達成されることができ、触媒層の材料を堆積させるための原子層堆積サイクルは、接着層の材料を堆積させるための原子層堆積サイクルとともに散在する。相互混合の結果として、触媒層の材料は、接着層内に部分的に組み込まれ、接着層の厚さにわたって触媒層の材料の濃度勾配を生成し、それによって、触媒層と基質との間に伝導性架橋を形成することができる。例えば、接着層内のPtまたは別のPGMの原子濃度は、接着層の厚さにわたって不均一であり得、触媒層と接着層との間の界面または境界における値から、単調または他の様式等で界面から離れるように接着層の中に延在する方向に沿って減少することができる。いくつかの実施形態では、相互混合の結果として、触媒層の材料は、接着層の材料と反応し、合金を形成することができる。例えば、接着層内に組み込まれるPt原子(または別のPGMもしくは別の金属の原子)は、接着層の金属元素の原子との結合を形成し、接着層の領域内に合金または金属/セラミック複合物を形成することができる。
【0058】
オーム損失をさらに軽減するために、接着層の導電率が、欠損を接着層の中に導入することによって増加されることができる。例えば、二酸化チタン(TiO
2)の場合では、欠損は、酸素空孔、導電率を強化するためにカチオン部位もしくはアニオン部位に導入されるドーパント、または前述のうちの2つまたはそれを上回るものの組み合わせを含むことができる。カチオンドーパントの実施例は、ニオブ、タンタル、バナジウム、ニッケル、コバルト、ルテニウム、マンガン、タングステン、モリブデン、およびクロムを含み、アニオンドーパントの実施例は、窒素、炭素、およびフッ素を含む。例えば、酸素空孔の場合では、欠損濃度は、TiO
2-xにおいてx=約12.5%を上回り得る。例えば、ニオブの場合では、ドーパント濃度は、約5.5%(原子パーセント)またはそれを上回り得る(
図11の実施例節参照)。欠損の導入は、接着層の堆積に続けて、水素ガスまたは水素プラズマ等の還元雰囲気中もしくは真空条件下のプラズマ処理または熱処理の適用を通して達成されることができる、または接着層の原子層堆積の一部として達成されることができる。結果として生じる欠損濃度は、接着層の厚さにわたって濃度勾配を有することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、プロセスフローは、随意に、接着層を官能化し、官能化接着層をもたらすステップを含み、官能化接着層上の触媒層の堆積が続く。接着層を官能化するステップは、
図1Aに関して上記に解説されるように同様に実施されることができる。
【0060】
次に、接着層コーティング基質上の触媒層の堆積は、化学蒸着、特に、原子層堆積によって実施され、触媒コーティング基質をもたらす。触媒層を堆積させるステップは、
図1Aに関して上記に解説されるように同様に実施されることができる。随意に、いくつかの実施形態では、不動態化ガスが、前駆体の後続吸着が、すでに堆積された材料の代わりに空き面積を被覆することに向けて優先または助長されるであろうように、触媒層の前駆体とすでに堆積された材料との間の吸着エネルギーを調整または変化させ、その吸着エネルギーをより好ましくないものにするために導入される。触媒層による接着層の表面被覆は、部分的もしくは不完全であり得る、または実質的に完全であり得る。触媒層の所望の表面被覆は、原子層堆積サイクルの回数または堆積される触媒層の材料の量に対する制御を含む、原子層堆積のプロセス条件に対する制御を通して達成されることができる。結果として生じる触媒層は、実質的に連続的な共形フィルムまたは下層接着層を暴露する間隙もしくは開口部を有する等、非連続的な共形フィルムの形態にある、または下層接着層を暴露するために相互から離間される離散領域の形態にあり得る。例えば、触媒層は、概して、0%~約100%の範囲内の接着層の表面被覆を提供することができ、より具体的には、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約98.5%、または少なくとも約99%、および最大約100%等の少なくとも約30%の接着層の表面被覆を提供することができる。表面被覆は、TEMもしくはSEM撮像技法、ラザフォード後方散乱分光法、XPS、AFM、またはICP-MSを使用して評価されることができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、接着層は、SMSI(例えば、格子歪み効果)を通して触媒活性の増加を提供し、接着層コーティング基質上に堆積された触媒層は、水素ガスまたは水素プラズマ等の還元雰囲気(例えば、酸素欠乏雰囲気)中で熱処理を受ける。還元雰囲気中のそのような事後処理もしくは事後焼鈍は、触媒層上に格子歪み(例えば、圧縮歪み)を付与する接着層の相転移(例えば、結晶化)を誘発することができ、格子歪みは、接着層の後続冷却に応じて、維持または補強される。相転移を誘発するために、触媒コーティング基質の温度は、約600℃またはそれを超えて、約650℃またはそれを超えて、約700℃またはそれを超えて、約750℃またはそれを超えて、もしくは約800℃またはそれを超えて、および最大約900℃またはそれを超えて増加されることができる。還元雰囲気の利点は、接着層の酸化を軽減する一方、下層基質および上層触媒層への接着層の強力な結合を維持し、下層基質の酸化を軽減することを含む。例えば、接着層の材料としての二酸化チタン(TiO2)の場合では、最初に堆積されるような材料は、アモルファス相であり得る、またはそれを含むことができ、温度の増加は、アモルファス相から結晶相、すなわち、アナターゼ相への転移を誘発することができ、温度のさらなる増加は、アナターゼ相から異なる結晶相、すなわち、ルチル相への転移を誘発することができる。TiO2は、接着層の後続冷却に応じて、ルチル相のままであることができる。TiO2のルチル相は、上層触媒層のものに対して不整合される格子パラメータを有することができ、格子パラメータの本不整合は、接着層および触媒層の格子パラメータの温度依存性における差異に照らして、接着層の後続冷却に応じて、維持または補強されることができる。ひいては、格子パラメータの本不整合は、触媒層上に格子歪みを付与し、触媒活性の増加をもたらすことができる。触媒層の低減された厚さは、触媒層のより大きい割合を横断する付与された格子歪みのさらなる伝達を可能にすることによって、触媒活性の強化を助長することができる。格子歪みは、歪みの不在下の格子パラメータの平衡値にわたって正規化される、(絶対値の観点から)触媒層の格子パラメータの変動として特徴付けられることができ、少なくとも1つまたは各格子パラメータに関する格子歪みは、約1%またはそれを上回る、約2%またはそれを上回る、約3%またはそれを上回る、約4%またはそれを上回る、約5%またはそれを上回る、もしくは約8%またはそれを上回り、最大約10%またはそれを上回り得る。格子パラメータの変動は、X線吸収(XAS)によって評価されることができる。触媒活性の増加は、酸化ニオブ(Nb2O5)ならびに他の二元、三元、四元、またはより高次の酸化物等の接着層のための他の材料に対して事後処理または事後焼鈍を適用することによって達成されることができる。
【0062】
次に、
図2Aを参照すると、プロセスフローは、随意に、触媒コーティング基質上に被覆層(または保護もしくはキャッピング層)を堆積させるステップを含む。被覆層を堆積させるステップは、
図1Aに関して上記に解説されるように同様に実施されることができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、プロセスフローは、随意に、触媒層の材料が、少なくとも部分的に、被覆層の領域の中に延在する、またはその中に組み込まれる、被覆層の材料が、少なくとも部分的に、触媒層の領域の中に延在する、またはその中に組み込まれる、もしくは両方であるように、触媒層および被覆層を相互混合するステップを含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、プロセスフローは、随意に、触媒層を官能化し、官能化触媒層をもたらすステップを含み、官能化触媒層上の被覆層の堆積が続く。触媒層を官能化するステップは、
図1Aに関して解説されるように同様に実施されることができる。
【0065】
図2Bは、触媒層200を含む堆積された層のセットが基質202を被覆する、
図2Aのプロセスフローから結果として生じる構造の実施例の概略図示である。示されるように、接着層204は、実質的に連続的なフィルムの形態にあり、接着層204による基質202の表面被覆は、実質的に完全である。また、触媒層200は、実質的に連続的なフィルムの形態にあり、触媒層200による接着層204の表面被覆は、実質的に完全である。接着層204は、強化された活性および安定性が接着層204によって触媒層200にもたらされる一方、低減された厚さが触媒層200と基質202との間の電気経路距離を短縮し、それによって、オーム損失を軽減するように、約2nmまたはそれ未満もしくは約1nmまたはそれ未満の低減された厚さを有する。被覆層206による触媒層200の表面被覆は、強化された安定性が被覆層206によって触媒層200にもたらされる一方、触媒活性部位の十分な暴露を維持するように、部分的または不完全である。接着層204および被覆層206の両方が、接着層204および被覆層206によってカプセル化される触媒層200に安定性をもたらす。
【0066】
図2Cは、触媒層200を含む堆積された層のセットが基質202を被覆する、
図2Aのプロセスフローから結果として生じる構造の別の実施例の概略図示である。示されるように、接着層204は、実質的に連続的なフィルムの形態にあり、接着層204による基質202の表面被覆は、実質的に完全である。また、触媒層200は、実質的に連続的なフィルムの形態にあり、触媒層200による接着層204の表面被覆は、実質的に完全である。接着層204は、約4nmまたはそれ未満の範囲内の厚さを有し、触媒層200および接着層204は、触媒層200の材料が、少なくとも部分的に、接着層204の領域の中に延在する、またはその中に組み込まれるように、相互混合される。相互混合の結果として、触媒層200の材料は、接着層204内に部分的に組み込まれ、相互混合された領域208において接着層204の厚さにわたって触媒層200の材料の濃度勾配を生成する。そのような様式で、強化された活性および安定性が、接着層204によって触媒層200にもたらされる一方、濃度勾配は、触媒層200の組み込まれた材料と基質202との間の電気経路距離を短縮し、それによって、オーム損失を軽減する。
図2Cに示されるように、濃度勾配の終点(例えば、触媒層200の組み込まれた材料の濃度がゼロになる、または検出可能なレベルを下回る)間の距離は、約1nmまたはそれ未満の範囲であるが、濃度勾配は、基質202に到達し、それとの直接接触を提供するように延在してもよい。被覆層206による触媒層200の表面被覆は、強化された安定性が被覆層206によって触媒層200にもたらされる一方、触媒活性部位の十分な暴露を維持するように、部分的または不完全である。接着層204および被覆層206の両方が、接着層204および被覆層206によってカプセル化される触媒層200に安定性をもたらす。
【0067】
図2Dは、触媒層200を含む堆積された層のセットが基質202を被覆する、
図2Aのプロセスフローから結果として生じる構造の別の実施例の概略図示である。示されるように、接着層204は、非連続的なフィルムの形態にあり、接着層204による基質202の表面被覆は、部分的または不完全である。また、触媒層200は、非連続的なフィルムの形態にあり、触媒層200による接着層204の表面被覆は、部分的または不完全であり、接着層204の一部は、触媒層200から被覆されていない、または暴露されたままである。また、触媒層200による接着層204の表面被覆は、実質的に完全であり得る、または触媒層200は、接着層204を越えて延在し、基質202に到達し、それと直接接触し得ることが考慮される。接着層204は、強化された活性および安定性が接着層204によって触媒層200にもたらされる一方、低減された厚さが触媒層200と基質202との間の電気経路距離を短縮し、それによって、オーム損失を軽減するように、約2nmまたはそれ未満もしくは約1nmまたはそれ未満の低減された厚さを有する。また、触媒層200の材料が、少なくとも部分的に、接着層204の中に延在する、またはその中に組み込まれるように相互混合が起こり得ることが考慮される。被覆層206による触媒層200の表面被覆は、強化された安定性が被覆層206によって触媒層200にもたらされる一方、触媒活性部位の十分な暴露を維持するように、部分的または不完全である。接着層204および被覆層206の両方が、接着層204および被覆層206によってカプセル化される触媒層200に安定性をもたらす。
【0068】
テンプレート効果を通して強化された触媒活性を伴う電気化学触媒:
【0069】
本開示のいくつかの実施形態は、高活性および超低負荷触媒を形成する改良されたプロセスならびに触媒の結果として生じる構造を対象とする。基質上に堆積されるテンプレート層の使用を通して、触媒が、最初に、テンプレート層コーティング基質上に堆積されることができる。テンプレート層の少なくとも部分的な除去に応じて、歪みが、触媒上に付与され、それによって、構造(例えば、格子歪み)効果を通して触媒活性の増加を付与することができる。
【0070】
図3Aは、基質上に触媒の薄フィルムを形成する概略プロセスフローである。
図3Aのプロセスフローのある側面は、
図1Aおよび
図2Aに関して上記に解説されるように同様に実施されることができ、それらの側面は、繰り返されない。
【0071】
図3Aを参照すると、プロセスフローは、随意に、基質を官能化し、官能化基質をもたらすステップを含む。基質を官能化するステップは、
図1Aに関して上記に解説されるように同様に実施されることができる。
【0072】
次に、プロセスフローは、官能化基質上にテンプレート層として接着層を堆積させ、テンプレート層コーティング基質をもたらすステップを含む。テンプレート層は、続けて堆積される触媒層のより速い成長速度を助長し、基質上の直接成長と比較して、テンプレート層上の触媒層の加速された成長につながることができる。テンプレート層の材料の実施例は、金属または半金属酸化物を含む、被覆層に関して上記に解説されるものを含む。特定の実施例は、酸化コバルト(CoO
x)、酸化ニッケル(NiO
x)、および酸化セリウム(CeO
x)を含む。テンプレート層を堆積させるステップは、化学蒸着、特に、原子層堆積によって実施される。テンプレート層の所望の厚さおよび表面被覆は、原子層堆積サイクルの回数または堆積されるテンプレート層の材料の量に対する制御を含む、原子層堆積のプロセス条件に対する制御を通して達成されることができる。
図3Aに示されるように、結果として生じるテンプレート層は、下層基質を暴露するために相互から離間される離散領域(例えば、離散堆積物)の形態等、非連続的な共形フィルムの形態にある。例えば、テンプレート層は、最大約80%、最大約70%、最大約60%、または最大約50%、および約40%またはそれ未満に至るまで、もしくは約30%またはそれ未満に至るまでの範囲内の基質の表面被覆を提供することができる。表面被覆は、TEMもしくはSEM撮像技法、ラザフォード後方散乱分光法、XPS、AFM、またはICP-MSを使用して評価されることができる。いくつかの実施形態では、テンプレート層の平均厚さは、約3nmまたはそれ未満、約2.5nmまたはそれ未満、約2nmまたはそれ未満、約1.5nmまたはそれ未満、もしくは約1nmまたはそれ未満、および約0.5nmまたはそれ未満に至るまでの範囲内であり得る。例えば、テンプレート層の平均厚さは、最大約1.5nmの範囲内であり得る。テンプレート層の離散領域の平均側方サイズは、約15nmまたはそれ未満、約10nmまたはそれ未満、約8nmまたはそれ未満、約5nmまたはそれ未満、約4nmまたはそれ未満、もしくは約3nmまたはそれ未満、および約0.3nmまたはそれ未満に至るまで等、約20nmまたはそれ未満であり得る。領域のサイズは、その中で領域が完全に囲繞され得、TEMまたはSEM画像を使用する等、撮像技法を使用して評価され得る、最も小さい対応する円の直径に対応する。
【0073】
いくつかの実施形態では、プロセスフローは、随意に、テンプレート層を官能化し、官能化テンプレート層をもたらすステップを含み、官能化テンプレート層上の触媒層の堆積が続く。テンプレート層を官能化するステップは、
図1Aに関して上記に解説されるように同様に実施されることができる。
【0074】
次に、テンプレート層コーティング基質上の触媒層の堆積が、化学蒸着、特に、原子層堆積によって実施され、触媒コーティング基質をもたらす。触媒層を堆積させるステップは、
図1Aに関して上記に解説されるように同様に実施されることができる。触媒層による基質の表面被覆は、部分的もしくは不完全であり得る、または実質的に完全であり得る。触媒層の所望の表面被覆は、原子層堆積サイクルの回数または堆積される触媒層の材料の量に対する制御を含む、原子層堆積のプロセス条件に対する制御を通して達成されることができる。
図3Aに示されるように、結果として生じる触媒層は、下層テンプレート層および基質を暴露するために相互から離間される離散領域(例えば、離散堆積物)の形態等、非連続的な共形フィルムの形態にある。例えば、触媒層は、最大約90%、最大約80%、最大約70%、または最大約60%、および約50%またはそれ未満に至るまで、もしくは約40%またはそれ未満に至るまでの範囲内の基質の表面被覆を提供することができる。表面被覆は、TEMもしくはSEM撮像技法、ラザフォード後方散乱分光法、XPS、AFM、またはICP-MSを使用して評価されることができる。いくつかの実施形態では、触媒層の平均厚さは、約8nmまたはそれ未満、約7nmまたはそれ未満、約6nmまたはそれ未満、約5nmまたはそれ未満、もしくは約4nmまたはそれ未満、および約1nmまたはそれ未満に至るまでの範囲内であり得る。例えば、触媒層の平均厚さは、約1nm~約4nmの範囲内であり得る。触媒層の離散領域の平均側方サイズは、15nmまたはそれ未満、約10nmまたはそれ未満、約8nmまたはそれ未満、約5nmまたはそれ未満、約4nmまたはそれ未満、もしくは約3nmまたはそれ未満、および約1nmまたはそれ未満に至るまで等、約20nmまたはそれ未満であり得る。領域のサイズは、その中で領域が完全に囲繞され得、TEMまたはSEM画像を使用する等、撮像技法を使用して評価され得る、最も小さい対応する円の直径に対応する。
図3Aに示されるように、触媒層の種々の領域の各領域は、基質に結合される(例えば、直接結合される、または接触する)部分と、触媒層の領域と基質との間に間置されるテンプレート層の領域に結合される(例えば、直接結合される、または接触する)別の部分とを含む。
【0075】
次に、プロセスフローは、テンプレート層を少なくとも部分的に除去するステップを含む。特に、テンプレート層は、基質上に触媒層を大量に、または実質的に保定するように、触媒層に対して選択的に、または優先的に除去される。テンプレート層の除去は、テンプレート層の材料が触媒層の材料よりも高い可溶性を有する溶液に浸漬または別様に暴露し、それによって、テンプレート層の材料を溶解または浸出させることによって等、湿式化学処理によって実施されることができる。テンプレート層の材料と触媒層の材料との間の可溶性の差異は、約1.5倍またはそれを上回る、約2倍またはそれを上回る、約3倍またはそれを上回る、もしくは約5倍またはそれを上回り、最大約10倍またはそれを上回り得る。テンプレート層の除去のための溶液は、酸または別の反応性化合物を含むことができる。テンプレート層の除去はまた、熱処理によって等、別の技法によって実施されることができる。
【0076】
図3Aに示されるように、テンプレート層の除去に続けて、触媒層の種々の領域の各領域は、基質に結合される(例えば、直接結合される、または接触する)少なくとも1つの部分と、基質にわたって延在し、間隙または隙間によって基質から離間される少なくとも別の部分とを含み、間隙は、触媒層の領域と基質との間に以前に間置されたテンプレート層の領域に対応する。そのような間隙は、触媒層の領域上に格子歪みを付与することができ、格子歪みは、例えば、触媒層の領域の変形からもたらされ、間隙の存在および触媒層の領域と基質との間の結合によって付与される構造的制約を適応させることができる。触媒層の低減された厚さは、触媒層のより大きい割合を横断する付与された格子歪みのさらなる伝達を可能にすることによって、触媒活性の強化を助長することができる。格子歪みは、歪みの不在下の格子パラメータの平衡値にわたって正規化される、(絶対値の観点から)触媒層の格子パラメータの変動として特徴付けられることができ、少なくとも1つまたは各格子パラメータに関する格子歪みは、約1%またはそれを上回る、約2%またはそれを上回る、約3%またはそれを上回る、約4%またはそれを上回る、約5%またはそれを上回る、もしくは約8%またはそれを上回り、最大約10%またはそれを上回り得る。格子パラメータの変動は、XASによって評価されることができる。
【0077】
テンプレート層の除去は、部分的または不完全であり得る。
図3Bは、基質上に触媒の薄フィルムを形成する別の概略プロセスフローである。
図3Bのプロセスフローのある側面は、
図1A、
図2A、および
図3Aに関して上記に解説されるように同様に実施されることができ、それらの側面は、繰り返されない。
【0078】
図3Bを参照すると、プロセスフローは、随意に、基質を官能化し、官能化基質をもたらすステップを含む。基質を官能化するステップは、
図1Aに関して上記に解説されるように同様に実施されることができる。
【0079】
次に、プロセスフローは、官能化基質上にテンプレート層を堆積させ、テンプレート層コーティング基質をもたらすステップを含む。テンプレート層を堆積させるステップは、
図3Aに関して上記に解説されるように同様に実施されることができる。
図3Bに示されるように、結果として生じるテンプレート層は、下層基質を暴露するために相互から離間される離散領域(例えば、離散堆積物)の形態等、非連続的な共形フィルムの形態にある。
【0080】
いくつかの実施形態では、プロセスフローは、随意に、テンプレート層を官能化し、官能化テンプレート層をもたらすステップを含み、官能化テンプレート層上の触媒層の堆積が続く。テンプレート層を官能化するステップは、
図1Aに関して上記に解説されるように同様に実施されることができる。
【0081】
次に、テンプレート層コーティング基質上の触媒層の堆積が、化学蒸着、特に、原子層堆積によって実施され、触媒コーティング基質をもたらす。触媒層を堆積させるステップは、
図1Aに関して上記に解説されるように同様に実施されることができる。
図3Bに示されるように、結果として生じる触媒層は、下層テンプレート層および基質を暴露するために相互から離間される離散領域(例えば、離散堆積物)の形態等、非連続的な共形フィルムの形態にある。触媒層の種々の領域の各領域は、触媒層の領域と基質との間に間置されるテンプレート層の領域に結合される(例えば、直接結合される、または接触する)。
【0082】
次に、プロセスフローは、テンプレート層を部分的に除去するステップを含む。特に、テンプレート層は、基質上に触媒層を大量に、または実質的に保定するように、触媒層に対して選択的に、または優先的に除去される。テンプレート層の部分的除去は、テンプレート層の材料が触媒層の材料よりも高い可溶性を有する溶液に浸漬または別様に暴露することによって等、湿式化学処理によって実施されることができる。テンプレート層の部分的除去は、テンプレート層が溶液または溶液の組成物に暴露される持続時間に対する制御を含む、湿式化学処理のプロセス条件に対する制御を通して達成されることができる。
【0083】
図3Bに示されるように、テンプレート層の部分的除去に続けて、触媒層の種々の領域の各領域は、触媒層の領域と基質との間に間置されるテンプレート層の領域に結合される(例えば、直接結合される、または接触する)少なくとも1つの部分と、基質にわたって延在し、間隙または隙間によって基質から離間される少なくとも別の部分とを含み、間隙は、テンプレート層の間置された領域の部分的に除去された部分に対応する。そのような間隙は、触媒層の領域上に格子歪みを付与することができ、格子歪みは、例えば、触媒層の領域の変形からもたらされ、間隙の存在および触媒層の領域とテンプレート層の間置された領域との間の結合によって付与される構造的制約を適応させることができる。触媒層の低減された厚さは、触媒層のより大きい割合を横断する付与された格子歪みのさらなる伝達を可能にすることによって、触媒活性の強化を助長することができる。格子歪みは、歪みの不在下の格子パラメータの平衡値にわたって正規化される、(絶対値の観点から)触媒層の格子パラメータの変動として特徴付けられることができ、少なくとも1つまたは各格子パラメータに関する格子歪みは、約1%またはそれを上回る、約2%またはそれを上回る、約3%またはそれを上回る、約4%またはそれを上回る、約5%またはそれを上回る、もしくは約8%またはそれを上回り、最大約10%またはそれを上回り得る。格子パラメータの変動は、XASによって評価されることができる。テンプレート層の間置された領域の暴露された側方面は、略平坦、凹状、凸状、または別の形状である外形を有することができる。
【0084】
支持された触媒、ガス拡散層、および燃料電池:
【0085】
図4は、触媒層を含む1つまたはそれを上回る堆積された層400のセットが伝導性支持体402を被覆する、支持された触媒の構造の概略図示である。ここでは、伝導性支持体402は、約10nm~約400nm、約10nm~約300nm、約10nm~約200nm、約10nm~約150nm、または約10nm~約100nm等の約5nm~約500nmまたはそれを上回る範囲内のサイズを有し、約3またはそれ未満もしくは約2またはそれ未満の縦横比を有する、炭素質ナノ粒子等のナノ粒子の形態にある。カーボンブラック、黒鉛状炭素、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、カーボンマイクロファイバ、グラフェンシート、炭素の他の高表面積および伝導性形態、ならびに窒化チタン支持体および伝導性酸化物支持体等の非炭素ベースの伝導性支持体等の他のタイプの伝導性支持体も、使用されることができる。堆積された層400のセットは、前述に解説されるものと類似する様式で実装されることができる。
【0086】
図5は、炭素繊維布、炭素繊維、またはカーボン紙等の炭素質繊維状層500を含む、ガス拡散層の構造の概略図示であるが、他の炭素質または非炭素ベースの繊維状材料も、使用されることができる。ガス拡散層はまた、メソポーラス層502を含む。炭素質繊維状層500は、比較的に大きい細孔を有することができ、比較的に粗くあり得、メソポーラス層502によって被覆される。メソポーラス層502は、水輸送を制御するために、炭素質ナノ粒子または他の伝導性支持体、ポリマー結合剤、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素化ポリマーを含む。メソポーラス層502の細孔構造は、炭素質繊維状層500と比較して、かなり微細かつ平滑であり得、これは、ガスおよび水の輸送のために望ましく、また、炭素質繊維状層500の繊維による機械的穿孔からポリマーイオン伝導性膜を保護する。触媒層が、メソポーラス層502内の伝導性支持体上に堆積され、それによって、触媒層の貫通深さは、原子層堆積プロセス条件によって影響を受け得る。
【0087】
燃料電池の種々の用途が、本明細書に開示される触媒の構造から利益を享受することができる。実施例は、以下を含む。
【0088】
1)自動車、バス、トラック、およびオートバイ等の燃料電池動力車両
【0089】
2)定置用燃料電池用途
【0090】
3)家電製品における燃料電池
【0091】
4)活性および安定性の犠牲を殆どまたは全く伴わない貴金属の使用の削減が所望されるナノスケール触媒システム
【0092】
種々のタイプの燃料電池が、本明細書に開示される触媒の構造から利益を享受することができる。具体的実施例は、とりわけ、水素(H2)-PEM燃料電池、メタノール燃料、およびエタノール燃料電池を含む。
【0093】
利益の実施例は、以下を含む。
【0094】
1)触媒構造は、回転ディスク電極(RDE)測定において約0.5A/mg(Pt)またはそれを上回る酸素還元反応(ORR)活性を呈する。
【0095】
2)原子層堆積が、数nmまたはそれを上回る範囲内の厚さの高均一性を伴う超薄層を堆積させるために使用され得る、表面対体積強化触媒構造。
【0096】
3)他の触媒システムと比較して、原子層堆積の使用は、有意により低い劣化速度を伴って、1桁を上回って質量活性(例えば、Ptまたは他のPGMの量によって正規化される触媒活性)を改良することができる。
【0097】
4)原子層堆積の使用を含むプロセスフローは、活性および安定性の犠牲を殆どまたは全く伴わずに炭素質触媒を加工するためのコスト効果の高い拡張可能な方法を提供する。
【0098】
図6は、本明細書に開示される支持された触媒を組み込むPEM燃料電池の概略図示である。燃料電池は、燃料電池の膜電極アセンブリをともに構成する、カソード電気触媒層602とアノード電気触媒層604との間に配置される、ポリマーイオン伝導性膜600を含む。燃料電池はまた、バイポーラ板またはユニポーラ板であり得る、導電性流動フィールド板606および608を含む。ガス拡散層610および612もまた、流動フィールド板606および608と電気触媒層602および604との間に間置される。カソード電気触媒層602およびアノード電気触媒層604の一方または両方は、本明細書に開示される支持された触媒を含むことができる。例えば、支持された触媒は、カソード電気触媒層602の中に組み込まれるとき、カソード側において酸素還元反応を助長することができ、また、アノード電気触媒層604の中に組み込まれるとき、アノード側において水素酸化反応を助長することができる。
【0099】
図7は、本明細書に開示される触媒の構造を組み込む別のPEM燃料電池の概略図示である。燃料電池は、ガス拡散層702および704の間に配置されるポリマーイオン伝導性膜700を含み、これらは、順に、バイポーラ板またはユニポーラ板であり得る、導電性流動フィールド板706および708の間に配置される。カソード側におけるガス拡散層702およびアノード側におけるガス拡散層704の一方または両方は、本明細書に開示される触媒層を含む1つまたはそれを上回る堆積された層のセットを含むことができる。例えば、触媒層は、カソード側においてガス拡散層702の中に組み込まれるとき、酸素還元反応を助長することができ、また、アノード側においてガス拡散層704の中に組み込まれるとき、水素酸化反応を助長することができる。ガス拡散層上に触媒の薄フィルムを直接形成することによって、触媒支持体を含む付加的層が、省略されることができる。
【実施例】
【0100】
以下の実施例は、当業者のための説明を例証および提供するために、本開示のいくつかの実施形態の具体的側面を説明する。実施例は、実施例が、単に、本開示のいくつかの実施形態を理解および実践する際に有用な具体的方法論を提供するため、本開示の限定として解釈されるべきではない。
【0101】
(実施例1)
原子層堆積(ALD)
【0102】
白金(Pt)および酸化フィルム(例えば、Nb2O5、TiO2、Al2O3、およびSiO2)のALDが、約13.56MHzにおける約300Wにおいて動作された遠隔誘電結合プラズマ(ICP)発生器を具備する、FlexAL(Oxford Instruments)ホットウォール反応器において実施された。フィルムに関する対応する前駆体は、トリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金(IV)(MeCpPtMe3)、ニオブ(V)エトキシド、テトラキス(ジメチルアミド)チタン(TDMAT)、トリメチルアルミニウム(TMA)、およびトリス[ジメチルアミノ]シラン3DMAS)である。ICP発生器によって生成された酸素プラズマが、共反応物質として使用された。基質温度は、約250℃であった。ALDプロセスの間に前駆体に関する投与時間を調節することによって、チャンバ圧力が、約20ミリトルを上回って持続された。
【0103】
以下は、TiO2のプラズマ強化ALD(PEALD)の例示的プロセス条件を提供する。
・ TiO2の成長速度=約0.5Å/サイクル
・ PEALD条件
・ 約250℃における基質温度
・ Ti含有前駆体=>約45℃のTDMAT
【0104】
以下は、PtのPEALDに関する例示的プロセス条件を提供する。
・ Ptの成長速度=約0.5Å/サイクル
・ PEALD条件
・ 約250℃における基質温度
・ Pt含有前駆体=>約45℃のMeCpPtMe3
【0105】
以下は、金属/セラミックマトリクス複合触媒を形成するためのプロセスフローの実施例を提供する。
1. 伝導性基質上に官能基を形成するためのプラズマ処理(例えば、O2またはH2プラズマもしくは両方)
2. 接着層(または下層)を形成するための金属酸化物のALD
・選択肢1)ALD(例えば、熱ALD、オゾンALD、またはPEALD)を通した0~約1nmの厚さを伴うTiO2接着層。約250℃におけるTiO2のPEALDの場合では、0~20サイクルが、前述の厚さを達成するために実施される。
・選択肢2)ALDを通した0~約4nmの厚さを伴うTiO2接着層。Ptの堆積後、>約200℃の水素熱処理または水素プラズマ処理が、PtをTiO2マトリクスの中に組み込むために実施される。
3. 触媒層を形成するための1つまたはそれを上回る金属(例えば、Ptまたは他のPGM;純金属または合金)のALD
・PEALDを通した0~約4nmの厚さを伴うPt層。約250℃におけるPtのPEALDの場合では、0~80サイクルが、前述の厚さを達成するために実施される。
4. 被覆層(または保護もしくはキャッピング層)を形成するための金属酸化物の(随意の)ALD
・ 約250℃におけるTiO2のPEALDの場合では、0~20サイクルが、0~約1nmの厚さを達成するために実施される。
【0106】
回転ディスク電極(RDE)を使用する活性測定
【0107】
約5mmの直径を伴うALDフィルムコーティングガラス状炭素(GC)ディスクが、反応電流密度(ik)および加速耐久性試験(ADT)の電気化学測定のために使用された。ディスクは、活性評価のためにRDE先端上に組み立てられた。電解物が、超純水を用いて約70%過塩素酸(Vertias Doubly Distilled, GES chemicals)から約0.1モル/Lに希釈された(約8.2MΩ・cm、全有機炭素(TOC)<約5ppb)。対電極としての白金ワイヤおよび基準電極としての可逆水素電極(RHE)を伴う3電極セルが、使用された。酸素還元反応(ORR)測定の間、酸素の圧力が、大気圧によって平衡にされた。測定温度は、23±2℃であった。汚染物質を低減させるために、全てのガラス製品は、約24時間を上回ってピラニア溶液中に浸けられ、使用に先立って超純水を用いて5回濯がれた。それらのik値を測定する前に、触媒コーティングGCディスクは、約500mV/秒の走査速度における約100サイクルにわたる約0.025V~約1.4Vのサイクリックボルタンメトリ(CV)を用いてアルゴンガスパージ電解物中で活性化プロセスを受けた。ik値は、異なる電極回転速度下で約-0.01V~約1Vの種々の走査速度(約5~100mV/秒)において線形掃引ボルタンメトリ(LSV)によって評価された。ADTに関して、約10,000サイクルにわたる約0.6V~約1VのCVが、約100mV/秒の走査速度で実行された。ik測定およびADTの間、RDE先端は、約1,600rpmの速度で回転された。
【0108】
図8は、4つの異なる触媒システムに関するADT、すなわち、xの異なるPEALD TiO
2サイクルを伴うTiO
2接着層に対するPEALD Pt 20サイクル(x=0、5、10、および20、それぞれ、0、約0.3nm、約0.7nm、および約1.5nmの対応する厚さ値)の前後の反応電流密度(i
k)を示す。値i
kは、触媒性能のインジケーションである一方、ADTの前後のi
kの変化は、触媒の安定性を表す。触媒構成Pt/TiO
2/GCは、約-23%のi
k変化を伴うPt/GCよりも高い安定性、すなわち、それぞれ、TiO
2×5に対するPt×20およびTiO
2×10に対するPt×20に関して約-13%および約-15%のより低い変化を示す。しかしながら、下層TiO
2の厚さが約1nmを超える場合、初期i
k値は、有意に低下し(例えば、約0.11mA/cm
2)、さらなるADT分析は、この場合に実行されなかった。
【0109】
X線光電子分光法(XPS)および白金原子組成測定
【0110】
XPSおよび白金原子組成測定が、XPS(PHI VersaProbe Scanning XPS Microscope)によって実行された。
【0111】
図9は、ガラス状炭素上に堆積されるPtの量によって正規化される、20のサイクル数に至るまでのPtに関するPEALDを通して異なる接着層(Nb
2O
5、TiO
2、HfO
2、ZrO
2、Al
2O
3、およびSiO
2)を用いて基質上に堆積されるPtの量を示す。
【0112】
原子間力顕微鏡法(AFM)
【0113】
AFM撮像が、<約10nmの公称半径を伴うアルミニウム反射コーティングを伴うシリコン先端(Tap300AL-G, Ted Pella)およびカスタム作製振動絶縁チャンバの内側に設置される赤外線レーザ源に適している圧電走査装置(約11×11μm2)を具備するAgilent 5500顕微鏡(Agilent Technologies, Santa Clara, CA)を使用して接触モードで実施された。走査分析面積は、約0.5μm×約0.5μmである。
【0114】
図10は、20のサイクル数に至るまでのPtに関するPEALDを通して異なる接着層(SiO
2、Al
2O
3、TiO
2、およびNb
2O
5)を用いて基質上に堆積されるPtの表面粗度(二乗平均平方根(rms))を示す。ここでは、Ptのより低い表面粗度は、酸化物表面上のPt層の改良された湿潤性を示す。
【0115】
密度汎関数理論(DFT)を使用するTiO2におけるNbドーピングの効果のシミュレーション
【0116】
図11は、種々のドーピングレベルx=0、0.02、0.04、0.06、0.12、および0.25における、DFTを使用するTiO
2におけるNbドーピングのシミュレーション結果を示す。観察され得るように、Nbドーピングは、バンドギャップΔE
gを変動させ、これは、材料の導電率を示し、より低いΔE
gは、より高い導電率につながる。
【0117】
(実施例2)
概観
【0118】
自動車分野における実装のために最も有望と見なされるポリマー電解質膜燃料電池(PEMFC)が、効率的な電気化学触媒の開発を規定する。PEMFCの技術経済的見通しを高めるための成功する方略は、触媒の本質的な原子あたり活性を増加させ、したがって、高コストな白金族金属(PGM)の規定された負荷を低減させることを通したものである。電気化学活性評価、透過型電子顕微鏡法(TEM)、およびX線光電子分光法(XPS)を含む、組み合わせられた努力によって、本実施例は、H2環境内での熱焼鈍が続く、白金ナノ粒子と炭素基質との間の界面(Pt/酸化物/C)を形成するためのTiO2およびNb2O5等の還元可能酸化物層の挿入が、カソード酸素還元反応(ORR)に向けて質量活性(白金負荷によって正規化される電気化学活性)を大幅に強化し得ることを実証する。加えて、本強化は、i)Pt-Pt結合距離およびii)Pt配位数(CN)の変化を示す広域X線吸収微細構造(EXAFS)によって確認される、白金と下層酸化物層との間の強金属支持体相互作用(SMSI)に起因することが見出される。
【0119】
導入
【0120】
PEMFCが、輸送分野の電化のため、特に、長い運転距離および速い燃料補給時間が重要である用途のための変革的技術として高く評価されている。しかしながら、両方の電極のための電気化学触媒としての有意なPGM負荷の使用は、本技術の普及した実装に向けて費用の障害を生じる。本質的に不活発であり得、PEMFC動作の間の性能限定プロセスであり得る、ORRのためのカソード触媒を開発することに、大きな重点が置かれている。ORR触媒開発のための魅力的なアプローチは、Ptのための支持体として金属酸化物(例えば、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、SnO2、またはそれらの組み合わせ)を使用することである。これらの酸化物を使用する利益は、より高い反応性および優れた耐久性を含み、これらは、特に、Pt/TiO2およびPt/Nb2O5に関して、触媒活性金属と還元可能酸化物との間のSMSIから生じることができる。具体的には、これらの還元可能酸化物における準化学量論的な酸素濃度の容易な形成は、還元雰囲気下で熱事後処理の間にPt堆積物との強力な相互作用を誘発することができる。
【0121】
結果
【0122】
原子層堆積(ALD)を通して、高活性電気化学触媒が、両方が炭素上に支持されるPt/TiO
2およびPt/Nb
2O
5の触媒調合物を用いて開発され、これらの触媒の概略図が、
図12aに提示される。
図12bは、H
2熱事後処理を伴わない異なる触媒調合物(異なる白金ALDサイクル数を伴うPt/G、Pt/TiO
2/GC、およびPt/Nb
2O
5/GC(GCは、ガラス状炭素の略である))の質量活性(MA)を示す。Pt/GC触媒に関して、MAは、20のPt ALDサイクル数において約0.8A/mg
Ptの最大値に到達する(別様に留意されない限り、NのPt ALDサイクル数は、Pt×Nと省略される)。PtとGCとの間の15のALDサイクル数を伴う超薄TiO
2およびNb
2O
5層(それぞれ、TiO
2×15およびNb
2O
5×15)の挿入は、サイクル数対MAの類似する飽和挙動を呈し、いかなるMA強化も、H
2事後焼鈍を伴わないPt/酸化物/GCにおいて観察され得ない。異なる基質上のPt×20のMAに対するH
2事後焼鈍温度の効果が、さらに評価される(
図12c)。留意すべきこととして、H
2事後焼鈍は、それぞれ、約1.84A/mg
Pt(約800℃におけるH
2事後焼鈍後)および約1.04A/mg
Pt(約700℃におけるH
2事後焼鈍後)の最大値を伴って、Pt×20/TiO
2/GCおよびPt×20/Nb
2O
5/GCの両方のMAを有意に改良する。性能改良は、(熱処理を伴わないものを伴うH
2熱処理後に達成される最大MAと比較して)Pt/TiO
2/GCに関して約2.7倍およびPt/Nb
2O
5/GCに関して約1.5倍有意である。最大MAが達成される、約800℃を上回る温度(Pt/TiO
2/GC)および約700℃を上回る温度(Pt×20/Nb
2O
5/GC)におけるH
2焼鈍は、触媒活性を劣化させ得る。
【0123】
温度とMAとの間の関係の明白な「ピーク形状」傾向を表すPt×20/TiO
2/GCおよびPt×20/Nb
2O
5/GCと異なり、Pt×20/GCのMAは、H
2焼鈍温度の増加とともに減少し続ける。
図13bは、優れたMA値を伴うPt×20/TiO
2/GCに関するH
2事後焼鈍温度を伴う比活性(i
s)および粗度係数(RF、幾何学的面積で除算される電気化学活性面積(ECSA)によって規定される)の進展を示し、RFは、最大約800℃までのH
2焼鈍温度の増加とともに漸進的に低下するが、約800℃を上回って低下する。RFの減少に起因して、温度対i
sの「ピーク形状」関係は、より明白になり、約4.28mA/cm
2
Ptの最も高い比活性が、約800℃におけるH
2事後焼鈍後にPt×20/TiO
2/Cから達成される。本比活性は、Pt×20/C(約1.18mA/cm
2
Pt)および焼鈍を伴わないPt×20/TiO
2/C H
2(約1.19mA/cm
2
Pt)に対して約3.6倍の有意な強化を呈する。これらの電気化学観察は、変化されるORR活性につながる、触媒のより複雑な化学的変換を示す。OH脱離電位(U
*OH)が、具体的電流密度との明確な関連を呈し(
図13c)、比活性が最大限にされた約800℃における水素焼鈍は、OH基の約1/10、約1/3、および約1/2単層(ML)を遊離させる約0.88、約0.82、および約0.78Vの最も高いU
*OH値を示した。より高いU
*OHは、OH種が、活性部位(ここではPt)に弱く結合され、これらの種の遊離が、より低い過電位(開放回路電圧とU
*OHとの間の差異によって規定される)を伴うことを意味する。
【0124】
(実施例3)
プロセスフロー
【0125】
加工プロセスフローは、以下の通りである。
・ 伝導性基質が、提供され(炭素ベースの材料または伝導性酸化物から形成される等)、これは、適正な親和力を伴う触媒に結合することができる。
・ プラズマ処理が、伝導性基質上に官能基を形成するために含まれることができる(例えば、空気プラズマ)。
・ テンプレート層が、最初に、基質上に堆積される(約160℃における熱原子層堆積(ALD)を通して0~約1.5nmの厚さを伴い、前述の厚さ範囲を達成するために0~30サイクルを伴うCoOx層)。テンプレート層は、基質を完全には被覆せず、約0.3nm~約10nmに及ぶサイズを伴う離散堆積物の形態にある。
・ 触媒層が、次いで、基質上に堆積される(約120~160℃における熱ALDを通して0~約2nmの厚さを伴い、前述の厚さ範囲を達成するために0~40サイクルを伴うPt層)。触媒層の堆積毎に、ある部分は、基質に結合され、別の部分は、テンプレート層の堆積物に結合される。
・ テンプレート層は、次いで、テンプレート層の材料の可溶性および触媒層の材料の可溶性が異なる溶液中に構造全体を浸漬させることによって除去される(テンプレート材料は、触媒材料よりも可溶性であり、少なくとも1桁の差異が、望ましくあり得る)。テンプレート層の除去は、基質上の触媒層の堆積物の少なくとも一部を残し、これは、基質との初期結合によって付与される構造的制約に起因して歪む。
【0126】
X線光電子分光法(XPS)および誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)の両方によって確認されるように、テンプレート層(Co)の少なくとも大部分が、回転ディスク電極(RDE)プロセスの間に除去され、サンプルが、CoOxが溶解される酸性溶液中に浸漬される(
図14)。
【0127】
回転ディスク電極(RDE)電気化学結果
【0128】
電気化学測定によると、コバルト含有テンプレート層の組み込みは、Pt質量活性を約2倍を上回って増加させた(
図15に示されるように)。最良に機能するPtCoサンプルは、1.89
+0.77A/mgPtの質量活性を実証した一方、Ptのみを伴う基準サンプルは、約0.85A/mgPtを下回る質量活性を実証した。
【0129】
電気化学活性に対するPt ALDサイクル数、堆積温度、および水素プラズマ事後処理の効果の評価もまた、行われる。
図16(a)、(b)は、電気化学表面積(ECSA)および反応電流密度(J
k)がPtサイクル数の増加とともに増加することを示す。比活性(SA)は、Ptサイクル数の増加に伴って飽和挙動の傾向を有する(
図16(c))。水素プラズマ処理サンプルは、そのような処理を伴わないものに優る比活性の強化を示す。それにもかかわらず、これらのサンプルの質量活性は、約20~30Pt ALDサイクルにおいてピークに達した(
図16(d))。水素プラズマ処理サンプルおよび約120℃において堆積されたPtを伴うサンプルに関して、20サイクルのPtが、最も高い質量活性をもたらした。約160℃において堆積されたPtを伴うサンプルに関して、30サイクルのPtが、最も高い質量活性をもたらした。
【0130】
本明細書で使用されるように、単数用語「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に別様に示さない限り、複数指示物を含んでもよい。したがって、例えば、物体の言及は、文脈が明確に別様に示さない限り、複数の物体を含んでもよい。
【0131】
本明細書で使用されるように、用語「実質的に」、「実質的な」、「およそ」、および「約」は、わずかな変動を説明および考慮するために使用される。事象または状況と併用されるとき、その用語は、事象または状況が精密に起こる事例ならびに事象または状況が近接近して起こる事例を指し得る。数値と併用されるとき、その用語は、±5%未満またはそれに等しい、±4%未満またはそれに等しい、±3%未満またはそれに等しい、±2%未満またはそれに等しい、±1%未満またはそれに等しい、±0.5%未満またはそれに等しい、±0.1%未満またはそれに等しい、もしくは±0.05%未満またはそれに等しい等、その数値の±10%未満またはそれに等しい変動の範囲を指し得る。
【0132】
本明細書で使用されるように、用語「サイズ」は、物体の特徴的寸法を指す。したがって、例えば、球形である物体のサイズは、物体の直径を指し得る。非球形である物体の場合では、物体のサイズは、対応する球形物体の直径を指し得、対応する球形物体は、非球形物体のものと実質的に同一である導出可能または測定可能な特性の特定のセットを呈する、または有する。特定のサイズを有するものとして物体のセットに言及するとき、物体は、特定のサイズの周囲のサイズの分布を有し得ることが考慮される。したがって、本明細書で使用されるように、物体のセットのサイズは、平均サイズ、中央サイズ、またはピークサイズ等のサイズの分布の典型的なサイズを指し得る。
【0133】
いくつかの実施形態の説明では、別の物体の「上」の物体は、前者の物体が直接後者の物体上にある(例えば、それと物理接触する)場合、ならびに1つまたはそれを上回る介在する物体が前者の物体と後者の物体との間に位置する場合を包含することができる。
【0134】
加えて、量、比率、および他の数値は、時として、本明細書では、範囲形式において提示される。そのような範囲形式は、便宜上、かつ簡潔化のために使用され、範囲の限界として明示的に規定される数値を含むが、また、各数値および部分的範囲が明示的に規定されるようにその範囲内に包含される全ての個々の数値または部分的範囲を含むように柔軟に理解されるべきであることを理解されたい。例えば、約1~約200の範囲内の比率は、約1および約200の明示的に列挙される限界を含むが、また、約2、約3、および約4等の個々の比率ならびに約10~約50、約20~約100等の部分的範囲を含むように理解されるべきである。
【0135】
本開示は、その具体的実施形態を参照して説明されているが、添付される請求項によって定義されるような本開示の真の精神および範囲から逸脱することなく、種々の変更が行われ得、均等物が代用され得ることが、当業者によって理解されるべきである。加えて、多くの修正が、特定の状況、材料、物質の組成、方法、動作、または複数の動作を本開示の目的、精神、および範囲に適合させるために行われてもよい。全てのそのような修正は、本明細書に添付される請求項の範囲内であることを意図している。特に、ある方法が、特定の順序で実施される特定の動作を参照して説明されている場合があるが、これらの動作は、本開示の教示から逸脱することなく、同等の方法を形成するために組み合わせられる、部分分割される、または再順序付けられ得ることを理解されたい。故に、本明細書に具体的に示されない限り、動作の順序および群化は、本開示の限定ではない。