(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】保持具、カテーテル、及びカテーテルシステム
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
A61M25/09 530
(21)【出願番号】P 2020012215
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2022-11-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】大島 史義
(72)【発明者】
【氏名】久保 佑太
(72)【発明者】
【氏名】浪間 聡志
【審査官】川上 佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/010177(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0223759(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用デバイスを保持する保持具であって、
前記医療用デバイスが挿入される挿入路を形成する筒状の本体部と、
前記本体部の内側に設けられ、前記挿入路に挿入された前記医療用デバイスを把持する把持部と、
前記挿入路に挿入された前記医療用デバイスの動きに関する情報を検出する力覚センサと、
を備え、
前記医療用デバイスは、前記保持具の先端側から突き出ており、
前記力覚センサは、前記把持部
の基端
部に固定されている、保持具。
【請求項2】
請求項1に記載の保持具であって、さらに、
前記力覚センサの検出値を、前記保持具の外部に設けられた情報処理装置に出力する出力部を備える、保持具。
【請求項3】
請求項2に記載の保持具であって、
前記出力部として、前記情報処理装置と前記力覚センサとを電気的に接続する接続部を備え、
前記保持具は、前記力覚センサの検出値を、前記接続部を介して前記情報処理装置に出力する、保持具。
【請求項4】
請求項2に記載の保持具であって、
前記出力部として、前記情報処理装置と無線通信可能な無線接続部を備え、
前記保持具は、前記力覚センサの検出値を、前記無線接続部を介して前記情報処理装置に出力する、保持具。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の保持具であって、
前記本体部は、先端側に配置されたハンドル部と、基端側に配置された筒状部とを有しており、
前記把持部と前記力覚センサは、前記ハンドル部の内側に収容され、
前記出力部は、少なくとも一部分が前記筒状部の内側に収容されている、保持具。
【請求項6】
カテーテルであって、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の保持具と、
長尺状の外形を有する中空シャフトと、
を備え、
前記保持具は、前記中空シャフトの基端部に設けられ、前記保持部の前記挿入路と前記中空シャフトの内腔とが連通している、カテーテル。
【請求項7】
カテーテルシステムであって、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の保持具と、
長尺状の外形を有する中空シャフトと、前記中空シャフトの基端側に設けられた中空のコネクタと、を有するカテーテルと、
を備え、
前記コネクタの基端部には、前記保持具を取り付けるための取付部が設けられている、カテーテルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持具、カテーテル、及びカテーテルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
血管系、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺及び生殖器官といった生体管腔内に挿入されるガイドワイヤが知られている。従来から、生体管腔の意図する枝までガイドワイヤの先端を導くために、ガイドワイヤの先端部に小さな湾曲形状を付して、生体管腔内においてガイドワイヤを時計回り、または反時計回りに回転させる手技が行われている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、このような手技において用いられる保持具であって、細径のガイドワイヤを把持することによって、手元のトルクをガイドワイヤへと伝達しやすくするための保持具(「トルカー」とも呼ばれる)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平06-026895号公報
【文献】特表2016-533785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで従来、術者は、保持具を通じて得られる感触から、ガイドワイヤの動きに関する情報(例えば、ガイドワイヤの動きの大きさや方向)を把握していた。しかしながら、感触から把握可能なガイドワイヤの動きに関する情報は、術者の熟練度に応じて大きく変動するという課題があった。また、ガイドワイヤの動きに関する情報を定量化し、治療や診断において活用したいという要望があった。この点、特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、ガイドワイヤの動きに関する情報を取得することについて、何ら考慮されていない。なお、このような課題は、ガイドワイヤに限らず、例えばマイクロカテーテルなど、生体管腔内に挿入される種々の医療用デバイスに共通する。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、医療用デバイスの動きに関する情報を取得することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、医療用デバイスを保持する保持具が提供される。この保持具は、前記医療用デバイスが挿入される挿入路を形成する筒状の本体部と、前記本体部の内側に設けられ、前記挿入路に挿入された前記医療用デバイスを把持する把持部と、前記挿入路に挿入された前記医療用デバイスの動きに関する情報を検出する力覚センサと、を備える。
【0008】
この構成によれば、保持具は力覚センサを備えるため、挿入路に挿入された医療用デバイスの動きに関する情報を取得できる。このため、本構成の保持具によれば、術者の熟練度に依存せずに、医療用デバイスの動きに関する定量的な情報を取得できると共に、この情報を治療や診断において活用できる。
【0009】
(2)上記形態の保持具では、さらに、外部に設けられた情報処理装置と、前記力覚センサとを電気的に接続する接続部を備え、前記保持具は、前記力覚センサの検出値を、前記接続部を介して前記情報処理装置に出力してもよい。
この構成によれば、保持具は、力覚センサの検出値を情報処理装置に出力するため、情報処理装置において、医療用デバイスの動きに関する定量的な情報を活用できる。
【0010】
(3)上記形態の保持具では、さらに、外部に設けられた情報処理装置と無線通信可能な無線接続部を備え、前記保持具は、前記力覚センサの検出値を、前記無線接続部を介して前記情報処理装置に出力してもよい。
この構成によれば、保持具は、力覚センサの検出値を情報処理装置に出力するため、情報処理装置において、医療用デバイスの動きに関する定量的な情報を活用できる。また、力覚センサの検出値は、無線接続部を介して情報処理装置に出力されるため、保持具と情報処理装置とを有線接続する場合と比較して、術者の手元近傍の配線を無くすことができ、保持具の使い勝手を向上できる。
【0011】
(4)本発明の一形態によれば、カテーテルが提供される。このカテーテルは、上記形態の保持具と、長尺状の外形を有する中空シャフトと、を備え、前記保持具は、前記中空シャフトの基端部に設けられ、前記保持部の前記挿入路と前記中空シャフトの内腔とが連通している。
この構成によれば、医療用デバイスの動きに関する情報を取得可能なカテーテルを提供できる。
【0012】
(5)本発明の一形態によれば、カテーテルシステムが提供される。このカテーテルシステムは、上記形態の保持具と、長尺状の外形を有する中空シャフトと、前記中空シャフトの基端側に設けられた中空のコネクタと、を有するカテーテルと、を備え、前記コネクタの基端部には、前記保持具を取り付けるための取付部が設けられている。
この構成によれば、医療用デバイスの動きに関する情報を取得可能なカテーテルシステムを提供できる。また、カテーテルのコネクタの基端部には、保持具を取り付けるための取付部が設けられているため、カテーテルに対して保持具を容易に取り付けることができる。
【0013】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、医療用デバイスを保持する保持具、保持具を備えるカテーテル、保持具とカテーテルとを備えるカテーテルシステム、保持具、カテーテル、及びカテーテルシステムの製造方法、保持具により取得された情報を利用するシステム、当該システムの機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、そのコンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態の保持具の構成を例示した説明図である。
【
図3】
図2のA-A線における横断面構成を例示した説明図である。
【
図4】力覚センサの概略構成を例示した説明図である。
【
図5】第2実施形態の保持具の断面構成を例示した説明図である。
【
図6】第3実施形態の保持具の断面構成を例示した説明図である。
【
図7】第4実施形態の保持具の断面構成を例示した説明図である。
【
図8】第5実施形態のカテーテルシステムの構成を例示した説明図である。
【
図9】カテーテルシステムの使用状態を例示した説明図である。
【
図10】第6実施形態のカテーテルの構成を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の保持具1の構成を例示した説明図である。保持具1は、ガイドワイヤ2を保持し、術者によるガイドワイヤ2の操作(回転操作、押込み操作)を容易にすると共に、ガイドワイヤ2の動きに関する情報を取得することが可能なデバイスである。保持具1は、本体部10を備えており、外部の情報処理装置9と通信可能に接続されている。なお、本実施形態では、保持具1によって保持される医療用デバイスとして、ガイドワイヤ2を例示するが、医療用デバイスには、例えばマイクロカテーテルなど、生体管腔内に挿入される種々の医療用デバイスを利用できる。また、生体管腔とは、血管系、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺及び生殖器官等の総称である。
【0016】
図1には、相互に直交するXYZ軸を図示する。X軸は保持具1及びガイドワイヤ2の長手方向(軸線方向)に対応し、Y軸は保持具1及びガイドワイヤ2の高さ方向に対応し、Z軸は保持具1及びガイドワイヤ2の幅方向に対応する。
図1の左側(-X軸方向)を保持具1、各構成部材、及びガイドワイヤ2の「先端側」と呼び、
図1の右側(+X軸方向)を保持具1、各構成部材、及びガイドワイヤ2の「基端側」と呼ぶ。保持具1、各構成部材、及びガイドワイヤ2について、先端側に位置する端部を「先端」と呼び、先端及びその近傍を「先端部」と呼ぶ。また、基端側に位置する端部を「基端」と呼び、基端及びその近傍を「基端部」と呼ぶ。ガイドワイヤ2の先端側は生体内部へ挿入され、ガイドワイヤ2の基端側は、保持具1が取り付けられた状態で医師等の術者により操作される。これらの点は、
図1以降においても共通する。
【0017】
図2は、保持具1の断面構成を例示した説明図である。本体部10は、ガイドワイヤ2が挿入される挿入路を形成する筒状の部材である。本体部10は、ハンドル部11と、凸部12(
図1)と、筒状部13とを備えている。
【0018】
ハンドル部11は、先端部と基端部にそれぞれ開口が形成され、内側に両開口を連通する内腔を有する中空の略円筒形状である。ハンドル部11の先端部の開口11oからは、ガイドワイヤ2の基端側が挿入される(
図2:白抜き矢印)。ハンドル部11の基端部の開口には、筒状部13の先端部が挿入されて接合されている。接合には、エポキシ系接着剤などの任意の接合剤を利用できる。ハンドル部11の先端側の一部分は、基端側から先端側にかけて外径が縮径した縮径形状を有している。しかし、ハンドル部11の先端側の一部分は、このような縮径形状を有していなくてもよい。また、ハンドル部11の全体がこのような縮径形状であってもよい。
【0019】
図3は、
図2のA-A線における横断面構成を例示した説明図である。凸部12は、ハンドル部11の外周面の一部分が、外側に向かって隆起した部分である(
図3)。凸部12は、ハンドル部11の基端側の一部分、具体的には、ハンドル部11のうち略一定の外径を有する部分において、等間隔に複数設けられている(
図1)。凸部12を設けることによって、術者の手とハンドル部11との間の摩擦力を増大させることができ、術者の手から保持具1へのトルク伝達力を向上できる。凸部12は、保持具1の長手方向(X軸方向)に沿って延びる直線状である。しかし、凸部12は、格子状、粒状等の任意の形状とできる。
【0020】
筒状部13は、先端部と基端部にそれぞれ開口が形成され、内側に両開口を連通する内腔を有する中空の略円筒形状である。筒状部13の内腔は、ハンドル部11の内腔と連通しており、ガイドワイヤ2の挿入路10Lを形成している。筒状部13の基端部の開口13oからは、接続部25が外部に延伸している(
図2)。筒状部13は、先端から基端まで略一定の外径を有している。しかし、筒状部13は、基端側から先端側にかけて外径が縮径した縮径形状を有していてもよく、基端側から先端側にかけて外径が拡径した拡径形状を有していてもよく、外径の異なる細径部や太径部を有していてもよい。
【0021】
ハンドル部11及び筒状部13の外径、内径、及び長手方向の長さは任意に決定できる。ハンドル部11と筒状部13とは、図示のように別々の部材として形成され、接合されていてもよいし、一体的に形成されていてもよい。ハンドル部11、凸部12、及び筒状部13は、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエーテルサルフォン等の樹脂材料で形成することができる。ハンドル部11の外周面、及び凸部12は、摩擦力をより向上させるために、弾性を有するゴムや、熱可塑性エラストマー(TPE)等により形成されていてもよい。
【0022】
保持具1は、本体部10の内側においてさらに、把持部21と、力覚センサ22と、内部接続部23と、基板24と、接続部25とを備えている(
図2)。
【0023】
把持部21は、本体部10の挿入路10Lに挿入されたガイドワイヤ2を把持する。把持部21は、第1把持部211と、第1把持部211から間隔SPを設けて配置された第2把持部212とを備えている(
図3)。第1把持部211と第2把持部212との間の間隔SPは、ハンドル部11を時計回りに回転させる(
図3:黒矢印)ことで小さくすることができる(
図3:白抜き矢印)。一方、間隔SPは、ハンドル部11を反時計回りに回転させることで大きくすることができる。ガイドワイヤ2を挿入路10Lに挿入する際は、ハンドル部11を反時計回りに回転させることにより、間隔SPを十分に大きくする。ガイドワイヤ2を挿入路10Lに挿入した後、ハンドル部11を時計回りに回転させることにより、間隔SPを狭くしてガイドワイヤ2を把持(固定)できる。把持部21は、ハンドル部11の内側に収容されている。
【0024】
図4は、力覚センサ22の概略構成を例示した説明図である。力覚センサ22は、本体部10の挿入路10Lに挿入されたガイドワイヤ2の動きに関する情報を検出する。力覚センサ22は、中心に貫通孔22hが形成された略円盤形状である。力覚センサ22は、貫通孔22hに挿入されたガイドワイヤ2に掛かる外力を検出するセンサチップを内蔵している。センサチップは、直交するxyz軸における荷重(Fx,Fy,Fz)と、トルク(Tx,Ty,Tz)を検出する。力覚センサ22は、貫通孔22hと、本体部10の挿入路10Lとを連通させた状態で、把持部21の基端部に固定されている。これにより、力覚センサ22は、挿入路10Lに挿入されたガイドワイヤ2の動きに関する情報を検出できる。「動きに関する情報」とは、ガイドワイヤ2に掛かる荷重と、トルクと、荷重及びトルクから演算により求められる種々の情報と、を含む。なお、力覚センサ22におけるxyz軸と、
図1に示すXYZ軸とは一致していてもよく、相違していてもよい。力覚センサ22は、ハンドル部11の内側に収容されている。
【0025】
基板24は、力覚センサ22の電圧を増幅すると共に、力覚センサ22による検出信号のAD変換(アナログ/デジタル変換)を行う基板である。基板24は、AD変換後の力覚センサ22の検出値を、接続部25を介して情報処理装置9に出力する。内部接続部23は、力覚センサ22と基板24とを電気的に接続する配線である。内部接続部23及び基板24は、筒状部13の内側に収容されている。なお、基板24及び内部接続部23は、力覚センサ22に内蔵されていてもよい。
【0026】
接続部25は、基板24と情報処理装置9とを電気的に接続する配線である。接続部25の先端部は、基板24に接続されている。接続部25の基端部には、例えばUSB(Universal Serial Bus)端子等のコネクタが設けられている。接続部25のコネクタを用いて、保持具1と情報処理装置9とを電気的に接続/取り外しできる。
【0027】
情報処理装置9は、出力部91と、処理部92を備えるパーソナルコンピュータである。出力部91は、タッチパネルや、液晶パネルや、スピーカー等を備えている。出力部91は、処理部92により制御されて、情報を出力する出力部として機能する。処理部92は、バスにより相互に接続されたCPU(Central Processing Unit)と、記憶部と、通信部と、ROM/RAM(Read Only Memory/Random Access Memory)と、入力部とを備えている。処理部92は、接続部25によって保持具1と接続される。処理部92は、保持具1から力覚センサ22の検出値を取得し、出力部91に出力する。なお、出力部91と処理部92とは、例えばノートパソコンやスマートフォンのように、一体的に構成されていてもよい。
【0028】
以上のように、第1実施形態の保持具1は、力覚センサ22を備える。このため、本体部10の挿入路10Lに挿入されたガイドワイヤ2(医療用デバイス)の動きに関する情報を取得できる。具体的には、ガイドワイヤ2に掛かる荷重(Fx,Fy,Fz)と、トルク(Tx,Ty,Tz)と、荷重及びトルクから演算により求められる種々の情報と、を取得できる。このため、第1実施形態の保持具1によれば、術者の熟練度に依存せずに、ガイドワイヤ2の動きに関する定量的な情報を取得できると共に、この情報を治療や診断において活用できる。
【0029】
また、第1実施形態の保持具1は、力覚センサ22の検出値を情報処理装置9に出力するため、情報処理装置9において、ガイドワイヤ2(医療用デバイス)の動きに関する定量的な情報を活用できる。例えば、情報処理装置9の処理部92は、ガイドワイヤ2の動きに関する情報を処理することで、ガイドワイヤ2に反発や捻れが生じているか否かを検知することができる。すなわち処理部92は、ガイドワイヤ2の損傷(例えば、ガイドワイヤ2の破断、コイル体のずれ等)の危険性を検知できる。また、処理部92は、損傷の危険性を出力部91に出力することによって、ガイドワイヤ2に更なる操作がなされること抑制できると共に、現にガイドワイヤ2が損傷することを抑制できる。この結果、手技の安全性を向上できる。
【0030】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態の保持具1Aの断面構成を例示した説明図である。第2実施形態の保持具1Aは、第1実施形態で説明した接続部25に代えて、内部接続部26と無線接続部27とを備える。無線接続部27は、保持具1Aと、外部に設けられた情報処理装置9とを無線通信可能に接続する。無線接続部27は、LAN(Local Area Network)用無線通信インタフェース、WAN(Wide Area Network)用無線通信インタフェース、近距離無線通信インタフェース(例えば、Bluetooth(登録商標)、NFC(登録商標))等の無線通信インタフェースを備えている。内部接続部26は、基板24と無線接続部27とを電気的に接続する配線である。内部接続部26及び無線接続部27は、筒状部13の内側に収容されている。なお、内部接続部26及び無線接続部27は、基板24に内蔵されていてもよい。情報処理装置9の処理部92は、無線接続部27によって保持具1Aと接続される。処理部92は、保持具1Aから力覚センサ22の検出値を取得し、出力部91に出力する。
【0031】
このように、保持具1Aの構成は種々の変更が可能であり、無線接続部27を介して情報処理装置9と接続されてもよい。無線接続部27における接続方式についても種々の変更が可能である。このような第2実施形態の保持具1Aによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第2実施形態の保持具1Aは、力覚センサ22の検出値を情報処理装置9に出力するため、情報処理装置9において、ガイドワイヤ2(医療用デバイス)の動きに関する定量的な情報を活用できる。また、力覚センサ22の検出値は、無線接続部27を介して情報処理装置9に出力されるため、保持具1Aと情報処理装置9とを有線接続する場合と比較して、術者の手元近傍の配線を無くすことができ、保持具1Aの使い勝手を向上できる(
図5)。
【0032】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態の保持具1Bの断面構成を例示した説明図である。第3実施形態の保持具1Bは、第1実施形態で説明した力覚センサ22に代えて、力覚センサ22Bを備える。力覚センサ22Bは、貫通孔22h(
図4)と、本体部10の挿入路10Lとを連通させた状態で、把持部21の先端部に固定されている。力覚センサ22Bは、直交するxyz軸における荷重(Fx,Fy,Fz)を検出するセンサチップを内蔵している。すなわち、保持具1Bの「動きに関する情報」は、ガイドワイヤ2に掛かる荷重である。このように、保持具1Bの構成は種々の変更が可能であり、例えば、保持具1Bが検出可能なガイドワイヤ2の動きに関する情報には、種々の情報を採用できる。また、保持具1Bの力覚センサ22Bの配置についても任意に変更できる。このような第3実施形態の保持具1Bによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0033】
<第4実施形態>
図7は、第4実施形態の保持具1Cの断面構成を例示した説明図である。第4実施形態の保持具1Cは、第1実施形態で説明した本体部10に代えて、本体部10Cを備える。本体部10Cは、先端部と基端部にそれぞれ開口が形成され、内側に両開口を連通する内腔(挿入路10L)を有する中空の略円筒形状である。本体部10Cは、先端から基端まで略一定の外径を有している。本体部10Cの先端部の開口10oには、ガイドワイヤ2の基端側が挿入される。本体部10Cの基端部の開口10oからは、接続部25が延伸している。このように、保持具1Cの構成は種々の変更が可能であり、ハンドル部11、凸部12、及び筒状部13を有していなくてもよい。このような第4実施形態の保持具1Cによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第4実施形態の保持具1Cによれば、本体部10Cを製造に要する部品点数を削減すると共に、保持具1Cの製造に要する工数及びコストを低減できる。
【0034】
<第5実施形態>
図8は、第5実施形態のカテーテルシステムの構成を例示した説明図である。第5実施形態のカテーテルシステムは、カテーテル100と、第1実施形態で説明した保持具1を備える。
図8では、カテーテル100の中心を通る軸と、保持具1の中心を通る軸とを、それぞれ軸線O(一点鎖線)で表す。以降、保持具1をカテーテル100に挿入した状態において、互いの中心を通る軸は軸線Oに一致するものとして説明するが、挿入状態における両者の中心を通る軸は、それぞれ相違していてもよい。
【0035】
カテーテル100は、長尺管形状であり、中空シャフト110と、先端チップ120と、コネクタ130とを備えている。中空シャフト110は、軸線Oに沿って延びる長尺状の部材である。中空シャフト110は、先端部110pと基端部110pとの両端部が開口した中空の略円筒形状(管形状)である。中空シャフト110は、内側にルーメン110Lを有する。ルーメン110Lは、カテーテル100に対してガイドワイヤ2を挿通させるためのガイドワイヤルーメンとして機能する。中空シャフト110の外径、内径、及び長さは任意に決定できる。
【0036】
先端チップ120は、中空シャフト110の先端部110pに接合されて、他の部材よりも先行して生体管腔内を進行する部材である。先端チップ120は、基端側から先端側にかけて縮径した外側形状を有している。先端チップ120の略中央部分には、軸線Oに先端チップ120を貫通する貫通孔120hが形成されている。貫通孔120hは、先端チップ120の開口120oに通じており、カテーテル100に対してガイドワイヤ2を挿入する際に使用される。先端チップ120の外径及び長さは任意に決定できる。
【0037】
コネクタ130は、中空シャフト110の基端部110pに接合されて、術者によって把持される部材である。コネクタ130は、中空の略円筒形状(管形状)の筒状部131と、一対の羽根部132とを備えている。筒状部131の先端部には、中空シャフト110の基端部110pが接合され、筒状部131の基端部には、羽根部132が接合されている。接合には、エポキシ系接着剤などの任意の接合剤を利用できる。コネクタ130の開口130oは、コネクタ130の内腔を通じてルーメン110Lに通じており、カテーテル100にガイドワイヤ2を挿入する際に使用される。筒状部131の外径、内径、及び長さと、羽根部132の形状とは、任意に決定できる。筒状部131と羽根部132とは、一体的に構成されていてもよい。
【0038】
コネクタ130の内腔の基端部には、さらに取付部130iが設けられている。取付部130iは、カテーテル100に対して保持具1を取り付けるために用いられる。取付部130iは、種々の態様を採用できる。例えば、取付部130iは、コネクタ130の基端部の内周面と、保持具1の先端部の外周面と、を凹凸嵌合構造によって嵌合させるための雄ねじまたは雌ねじとできる。この場合、保持具1のハンドル部11の先端部の外周面には、取付部130iと嵌合させるための雌ねじまたは雄ねじが形成される。例えば、取付部130iは、コネクタ130の基端部の内周面と、保持具1の先端部の外周面と、を摩擦力によって嵌合させるための弾性体層または突起部であってもよい。
【0039】
中空シャフト110は、抗血栓性、可撓性、生体適合性を有することが好ましく、樹脂材料や金属材料で形成することができる。樹脂材料としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等を採用できる。金属材料としては、例えば、SUS304等のステンレス鋼、ニッケルチタン合金、コバルトクロム合金、タングステン鋼等を採用できる。また、中空シャフト110は、上述した材料を複数組み合わせた接合構造体とすることもできる。先端チップ120は、柔軟性を有することが好ましく、例えば、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー等の樹脂材料により形成できる。コネクタ130は、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエーテルサルフォン等の樹脂材料で形成することができる。
【0040】
図9は、カテーテルシステムの使用状態を例示した説明図である。カテーテルシステムの使用時には、カテーテル100のコネクタ130の開口130oから、保持具1の先端側を挿入する(
図9:白抜き矢印)。そして、コネクタ130の取付部130iに対して、保持具1を取り付けることより、カテーテル100に対して保持具1を固定できる。このように、保持具1の構成は種々の変更が可能であり、カテーテル100と保持具1とを組み合わせて、カテーテルシステムを構成してもよい。このような第5実施形態の保持具1によっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第5実施形態によれば、ガイドワイヤ2(医療用デバイス)の動きに関する情報を取得可能なカテーテルシステムを提供できる。また、カテーテル100のコネクタ130の基端部には、保持具1を取り付けるための取付部130iが設けられているため、カテーテル100に対して保持具1を容易に取り付けることができる。
【0041】
<第6実施形態>
図10は、第6実施形態のカテーテル100Dの構成を例示した説明図である。第6実施形態のカテーテル100Dは、保持具1と、中空シャフト110と、先端チップ120と、羽根部132Dとを備えている。保持具1は、中空シャフト110の基端部110pに設けられている。保持具1は、本体部10の挿入路10Lと、中空シャフト110の内腔(ルーメン110L)とを連通させた状態で、中空シャフト110に接合されている。中空シャフト110は、コネクタ130に代えて保持具1が接合されている点を除いて、第5実施形態(
図8)と同様の構成を有している。先端チップ120は、第5実施形態(
図8)と同様の構成を有している。羽根部132Dは、中空の略円筒形状(管形状)であり、第5実施形態で説明した取付部130iを備えていない。羽根部132Dは、保持具1の基端部に接合されており、羽根部132Dの基端部の開口130oからは、接続部25が延伸している。
【0042】
このように、保持具1の構成は種々の変更が可能であり、保持具1をカテーテル100Dの構成要素の一部分としてもよい。このような第6実施形態の保持具1によっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第6実施形態によれば、ガイドワイヤ2(医療用デバイス)の動きに関する情報を取得可能なカテーテル100Dを提供できる。
【0043】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0044】
[変形例1]
上記第1~6実施形態では、保持具1,1A~1Cの構成を例示した。しかし、保持具1の構成は種々の変更が可能である。例えば、力覚センサ22は、貫通孔22hに代えて、平板状または局面状の検出面を備えていてもよい。この場合、力覚センサ22は、検出面に当接させたガイドワイヤ2(医療用デバイス)に掛かる外力を検出するセンサチップを内蔵する。例えば、保持具1の基板24には、情報処理装置9の処理部92の機能が内蔵されてもよい。例えば、保持具1のハンドル部11または筒状部13には、情報処理装置9の出力部91の機能が内蔵されてもよい。この場合、保持具1には、タッチパネル、液晶パネル、スピーカーに代えて、LED(Light Emitting Diode)インジケータ等を出力部として備えてもよい。
【0045】
例えば、第2実施形態の保持具1Aにおいて、無線接続部27は、第3世代移動通信システム(3G)、第4世代移動通信システム(4G)等の移動体通信網通信インタフェースを用いて、情報処理装置9と通信可能に構成されてもよい。例えば、保持具1は、基板24と情報処理装置9とを電気的に接続する配線である接続部25と、基板24と情報処理装置9とを無線通信可能に接続する無線接続部27と、の両方を備えていてもよい。
【0046】
[変形例2]
上記第1~6実施形態では、カテーテル100,100Dの構成を例示した。しかし、カテーテル1の構成は種々の変更が可能である。例えば、中空シャフト110には、他の構成要素(例えば、バルーン部材、網目状の素線からなるメッシュ部材、電極部材、放射線不透過性のマーカー等)が設けられていてもよい。例えば、中空シャフト110の外周面には、ルーメン110Lにアクセスするためのポートを設けてもよい。このポートは、換言すれば、ルーメン110Lの外周面と、ルーメン110Lとを連通する貫通孔である。そうすれば、カテーテル100をラピッドエクスチェンジ型のカテーテルとできる。例えば、中空シャフト110は、内側に複数のルーメン110Lを有していてもよい。そうすれば、カテーテル100をダブルルーメンカテーテル(またはマルチルーメンカテーテル)とできる。
【0047】
[変形例3]
上記第1~6実施形態の保持具1,1A~1Cの構成及びカテーテル100,100Dの構成と、上記変形例1,2の保持具1,1A~1Cの構成及びカテーテル100,100Dの構成は、適宜組み合わせてもよい。例えば、第2実施形態で説明した内部接続部26及び無線接続部27と、第3実施形態で説明した力覚センサ22Bと、第4実施形態で説明した本体部10Dと、を組み合わせてもよい。例えば、第2~第4実施形態で説明した保持具1A~1Dを用いて、第5実施形態で説明したカテーテルシステムを構成してもよい。例えば、第2~第4実施形態で説明した保持具1A~1Dを用いて、第6実施形態で説明したカテーテルを構成してもよい。
【0048】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0049】
1,1A~1C…保持具
2…ガイドワイヤ
9…情報処理装置
10,10C…本体部
10L…挿入路
11…ハンドル部
12…凸部
13…筒状部
21…把持部
22,22B…力覚センサ
23…内部接続部
24…基板
25…接続部
26…内部接続部
27…無線接続部
91…出力部
92…処理部
100,100D…カテーテル
110…中空シャフト
120…先端チップ
130…コネクタ
130i…取付部
131…筒状部
132,132D…羽根部
211…第1把持部
212…第2把持部