(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】油圧ブレーカ
(51)【国際特許分類】
B25D 9/06 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
B25D9/06
(21)【出願番号】P 2020054428
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】594149398
【氏名又は名称】古河ロックドリル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小柴 英俊
(72)【発明者】
【氏名】原 秀治
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-078301(JP,A)
【文献】特開昭60-104666(JP,A)
【文献】特開2011-011324(JP,A)
【文献】実開昭62-029278(JP,U)
【文献】特開2014-136302(JP,A)
【文献】特開2018-001384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25D 1/00 - 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身先端側からチゼルが挿着されるフロントヘッド部と、自身内部にシリンダライナを介してピストンが摺嵌されるシリンダ部と、自身内部にガス室が画成されるバックヘッド部と、が一体構造とされたブレーカ本体を備え
、
前記ブレーカ本体は、前記シリンダ部内からの圧油の漏れを防止可能に前記シリンダ部の後端開口を覆うシリンダ部カバーと、前記バックヘッド部内からのガスの漏れを防止可能に前記バックヘッド部の後端開口を覆うバックヘッド部カバーと、を有し、
前記ガス室が、前記シリンダ部カバーと前記バックヘッド部カバーとの間に画成されており、
前記ブレーカ本体の後端面には、ショベル取り付け用のブラケットが直接装着されるように構成されており、
前記バックヘッド部カバーの後端面は、前記ブレーカ本体の後端面と面一または面一の位置よりも先端側寄りになっていることを特徴とする油圧ブレーカ。
【請求項2】
自身先端側からチゼルが挿着されるフロントヘッド部と、自身内部にピストンが摺嵌されるシリンダ部と、自身内部にガス室が画成されるバックヘッド部と、が一体構造とされたブレーカ本体を備え、
前記ブレーカ本体は、前記シリンダ部内からの圧油の漏れを防止可能に前記シリンダ部の後端開口を覆うシリンダ部カバーと、前記バックヘッド部内からのガスの漏れを防止可能に前記バックヘッド部の後端開口を覆うバックヘッド部カバーと、を有し、
前記ガス室が、前記シリンダ部カバーと前記バックヘッド部カバーとの間に画成されており、
前記シリンダ部カバーは、前記ブレーカ本体に固定されていることを特徴とする油圧ブレーカ。
【請求項3】
前記シリンダ部と前記ピストンとの間に配置されたシリンダライナを備
える請求項2に記載の油圧ブレーカ。
【請求項4】
前記ブレーカ本体の後端面には、ショベル取り付け用のブラケットが直接装着されるように構成されており、
前記バックヘッド部カバーの後端面は、前記ブレーカ本体の後端面と面一または面一の位置よりも先端側寄りになっている請求項
2または3に記載の油圧ブレーカ。
【請求項5】
前記バックヘッド部の外形は、前記シリンダ部の外形の幅よりも拡幅して形成されている請求項1
から4のうちいずれか1項に記載の油圧ブレーカ。
【請求項6】
前記シリンダ部カバーの側面と対向する位置に、前記ガス室に連通する連通穴が形成されるとともに、該連通穴にガス封入弁が付設されている請求項
1から5のうちいずれか1項に記載の油圧ブレーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ブレーカに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フロントヘッド、シリンダおよびバックヘッドが分割された分割型の油圧ブレーカが知られている(例えば特許文献1参照)。この種の分割型の油圧ブレーカは、軸方向の中央部にシリンダを有し、このシリンダの前側にフロントヘッドが連結されるとともに、後側にバックヘッドが連結される。フロントヘッド、シリンダ及びバックヘッドは、長尺なスルーボルトによって相互に締結される。
【0003】
また、分割型の油圧ブレーカにおいて、例えば
図4に示す油圧ブレーカ100のように、フロントヘッド部101aとシリンダ部101bとを一体化してシリンダ101を構成し、このシリンダ101の後側にバックヘッド103を連結した油圧ブレーカも知られている。
同図のタイプは、フラットトップ仕様と呼ばれており、シリンダ101の両側には、二枚合わせのプレート160が設けられ、バックヘッド103の後端側に張り出したプレート160の後端面に、ショベル取り付け用のブラケット170が配置され、油圧ブレーカ100を後部(ショベル取り付け時には上部)から保持可能になっている。
【0004】
シリンダ101及びバックヘッド103は、ボルト121によって相互に締結される。シリンダ101内にはピストン105が摺嵌される。フロントヘッド102内には、先端側からチゼル112が挿着され、このチゼル112の後端側とピストン105の先端側との間に打撃室111が形成される。
シリンダ101には、公知の油圧打撃機構が設けられ、不図示の油圧供給源から圧油を供給することにより圧力油の流路を切り換えてピストン105が軸方向CL上で前後進可能になっている。そして、チゼル112は、ピストン105の打撃によって軸方向に所定距離の往復移動が可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、油圧ブレーカにおいて、打撃エネルギを上げる方策として、第一に、ピストンのロングストローク化、第二に、バックヘッドに封入されるガスの高圧化が考えられる。
しかし、ピストンのロングストローク化をするためには、機長(油圧ブレーカの軸方向の長さ)が伸びることになるため、小型コンパクトな構成とする上ではトレードオフの関係となる。特に、上述したような分割型の油圧ブレーカ100においては、シリンダ101及びバックヘッド103が、ボルト121で相互に締結される。
【0007】
そのため、機長が伸びることによってボルト121に捩りが生じたり、ボルト121の締め付けが弛んだりするという問題が潜在している。また、機長が伸びることにより、ショベル取り付け状態での取り回し操作性が悪くなるという問題がある。特に、特許文献1記載の技術のように、フロントヘッド、シリンダおよびバックヘッドが分割された油圧ブレーカでは、このような問題がより顕著である。
一方、打撃エネルギを上げる方策として、バックヘッドのガス室に封入されるガスの高圧化も有効なものの、上述したような、バックヘッド103が分割型の油圧ブレーカ100においては、封入ガスの高圧化により、シリンダおよびバックヘッド相互の分割部分からガス漏れが生じるおそれがある。
【0008】
また、封入ガス(例えば窒素ガス)は、油膜への浸入によって打撃とともにガス圧が低下するところ、高圧化によって油膜への浸入もより多くなるため、ガス圧を維持することがより難しくなる。さらに、ガス容量が小さいと、外気温の変化や、油圧ブレーカの温度変化、封入ガス自体の温度変化による影響を受け易いという問題がある。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、小型コンパクトな構成にしつつもガス室のガス容量を増加し得る油圧ブレーカを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る油圧ブレーカは、自身先端側からチゼルが挿着されるフロントヘッド部と、自身内部にシリンダライナを介してピストンが摺嵌されるシリンダ部と、内部にガス室が画成されるバックヘッド部と、が一体構造とされたブレーカ本体を備えることを特徴とする。
本発明の一態様に係る油圧ブレーカによれば、フロントヘッド部、シリンダ部およびバックヘッド部が一体構造とされたブレーカ本体を備えるので、長尺なスルーボルトが不要であり、小型コンパクトな構成にしつつもガス室のガス容量を増加できる。
【0010】
ここで、本発明の一態様に係る油圧ブレーカにおいて、前記バックヘッド部の外形は、前記シリンダ部の外形の幅よりも拡幅して形成されていることは好ましい。このような構成であれば、ブレーカ本体のバックヘッド部が、シリンダ部の幅よりも拡幅して形成されるので、封入ガスのガス容量を大幅に増加可能とする上で好適である。
また、本発明の一態様に係る油圧ブレーカにおいて、前記ブレーカ本体は、前記シリンダ部内からの圧油の漏れを防止可能に前記シリンダ部の後端開口を覆うシリンダ部カバーと、前記バックヘッド部内からのガスの漏れを防止可能に前記バックヘッド部の後端開口を覆うバックヘッド部カバーと、を有し、前記ガス室が、前記シリンダ部カバーと前記バックヘッド部カバーとの間に画成されていることは好ましい。
【0011】
このような構成であれば、バックヘッド部内のガス室が、シリンダ部カバーとバックヘッド部カバーとの間に画成されるので、後部のバックヘッド部の内部空間総べてをガス室として用いることにより、封入ガスのガス容量を大幅に増加可能とする上で好適である。
さらに、ガス室の前後をそれぞれシリンダ部カバーとバックヘッド部カバーとによって閉止することにより、これら前後の専用カバーの協働により、シリンダ部内からの圧油の漏れを防止するとともに、バックヘッド部内からのガスの漏れを防止できるので、機長を伸ばすことなく小型コンパクトな構成を維持しつつも、ガス室のガス容量を増加するとともに、バックヘッドからの封入ガスのガス漏れを防止または抑制可能とする上で好適である。
【発明の効果】
【0012】
上述のように、本発明によれば、小型コンパクトな構成を維持しつつも、ガス室のガス容量を増加できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一態様に係る油圧ブレーカの第一実施形態の説明図であり、同図(a)は正面視における軸線に沿った断面図、(b)は平面図である。
【
図2】
図1の油圧ブレーカのブレーカ本体を説明する図であり、同図(a)は平面図、(b)は背面視における軸線に沿った断面図、(c)は(b)での右側面視の図である。
【
図3】本発明の一態様に係る油圧ブレーカの第二実施形態の説明図であり、同図(a)は背面視における軸線に沿った断面図、(b)は(a)での右側面視の図である。
【
図4】従来の分割型の油圧ブレーカの一例(シリンダ部とバックヘッド部とが分割構造)を説明する図であり、同図(a)はブラケットを装着した状態での正面図、(b)は平面図、(c)は、ブラケットを非装着状態において、背面視におけるブレーカ本体の軸線に沿った断面図である。
【
図5】従来の分割型の油圧ブレーカでのシリンダ部とバックヘッド部との結合部分のシール構造を説明する図(
図4(c)の要部拡大図)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0015】
図1に示すように、この油圧ブレーカ10は、自身先端側からチゼル12が挿着されるフロントヘッド部41と、自身内部にピストン5が摺嵌されるシリンダ部42と、内部にガス室60が画成されるバックヘッド部43と、が一体に形成とされたブレーカ本体1を有する。
つまり、本実施形態の油圧ブレーカ10は、一のブレーカ本体1の軸方向後側がバックヘッド部43とされ、シリンダ部42の前側がフロントヘッド部41とされ、フロントヘッド部41とバックヘッド部43との間の部分が、シリンダ部42とされた一体構造を備える。ブレーカ本体1の後端にはフランジ部1fが形成され、フランジ部1fの後端面には、ショベル取り付け用のブラケット70が直接装着されている。
【0016】
図2に示すように、フロントヘッド部41内には、先端側からチゼル12が挿着され、チゼル12はピストン5と同軸線CL上に一体型のフロントブシュ3によって保持されている。チゼル12は、不図示のロッドピンによって、軸方向での移動が規制され、その往復移動範囲が制限されている。なお、同図の例では、一体型のフロントブシュ3を例示したが、これに限らず、軸方向の前後それぞれを支持する複数のブシュからフロントブシュ3を構成してもよい。
【0017】
シリンダ部42内には、シリンダライナ23を介してピストン5が摺嵌されている。フロントヘッド部41とシリンダ部42との間には、チゼル12の後端側とピストン5の先端側との間に打撃室2が形成されている。
打撃室2は、フロントヘッド部41とシリンダ部42との間の部分に設けられている。この油圧ブレーカ10の打撃室2は、打撃室2の内径を全体として拡大するような加工は施されておらず、ピストン5の外形に対して僅かな隙間を隔てた程度のほぼ同寸法である。
【0018】
ブレーカ本体1のシリンダ部42には、油圧打撃機構を構成する切り替え制御弁6がピストン5と同軸に配置された、公知の油圧打撃機構が設けられ、不図示の油圧供給源からシリンダ部42に圧油を供給することにより、圧力油の流路を切り替え制御弁6によって切り換えてピストン5が軸線CL上で前後進可能になっている。そして、チゼル12は、ピストン5の打撃によって軸方向に所定距離の往復移動が可能になっている。
【0019】
ここで、本実施形態のブレーカ本体1は、シリンダ部42内からの圧油の漏れを防止可能にシリンダ部42の後端開口を覆うシリンダ部カバー52と、バックヘッド部43のガス室60内からのガスの漏れを防止可能にバックヘッド部43の後端開口を覆うバックヘッド部カバー53と、を有する。シリンダ1とピストン5との間にはガスシール部90が設けられ、シリンダ部カバー52は、シリンダ部42の後端面に、複数(この例では4箇所)のボルト51によって固定されている。
【0020】
バックヘッド部43は、
図2に示すように、シリンダ部42の幅よりも拡幅して形成されるとともに、ガス室60が、シリンダ部カバー52とバックヘッド部カバー53との間に画成されている。本実施形態では、バックヘッド部カバー53の後端面は、ブレーカ本体1の後端面と面一になっている。なお、バックヘッド部カバー53の後端面は、ブレーカ本体1の後端面と面一の位置よりも先端側寄りに形成してもよい。
【0021】
また、同図(c)に示すように、バックヘッド部カバー53は、拡幅されたバックヘッド部43の後端面を覆うように円形に設けられ、その周囲にはOリングによるシール部80が設けられている。バックヘッド部カバー53の周囲の適所が複数(この例では8箇所)のボルト54によって固定されている。ボルト54の頭は、後方に突出しないように、バックヘッド部カバー53に形成された凹の段部内に埋め込まれている。
バックヘッド部43は、シリンダ部カバー52の側面と対向する位置に、ガス室60に連通する連通穴61が形成されるとともに、この連通穴61にガス封入弁62が付設されている。
【0022】
次に、本実施形態の油圧ブレーカ10の作用・効果について説明する。
本実施形態の油圧ブレーカ10を駆動するときは、不図示の油圧供給源からシリンダ部42の油圧打撃機構に圧油を供給する。これにより、圧力油の流路が油圧打撃機構で切り換えられてピストン5が軸線CL上で前後進し、チゼル12が、ピストン5の打撃によって軸方向に所定距離の往復移動を行うことにより、所望の打撃動作を行うことができる。
【0023】
そして、本実施形態の油圧ブレーカ10は、自身先端側からチゼル12が挿着されるフロントヘッド部41と、自身内部にシリンダライナ23を介してピストン5が摺嵌されるシリンダ部42と、バックヘッド部43とが一体構造とされたブレーカ本体1を有するので、長尺なスルーボルトが不要であり、ボルトの捩れや弛みの問題を解消できる。また、小型でコンパクトにブレーカ本体1を構成できる。
本実施形態の油圧ブレーカ10は、ブレーカ本体1のフランジ部1fの後端面に、ショベル取り付け用のブラケット70が直接装着されるので、
図4に示した油圧ブレーカ100と比べて、バックヘッド103の締結用のボルト121および二枚合わせのプレート160等の部品が不要なため、その分、より一層小型でコンパクトにブレーカ本体1を構成できる。
【0024】
特に、本実施形態の油圧ブレーカ10は、バックヘッド部カバー53の後端面が、ブレーカ本体1のフランジ部1fの後端面と面一または面一の位置よりも先端側寄りになっているので、ブレーカ本体1の後端面に、ショベル取り付け用のブラケット70を装着する構成において、油圧ブレーカの軸方向の長さ(機長)をコンパクトにする上で好適である。機長は、ショベル取り付け状態での取り回し操作性に影響するため、機長が短く重心がショベル取り付け部側に近い方が、取り回し操作性に優れる。
【0025】
また、本実施形態の油圧ブレーカ10によれば、バックヘッド部43が、シリンダ部42の幅よりも拡幅して形成され、バックヘッド部43の内部のガス室60が、シリンダ部カバー52とバックヘッド部カバー53との間に画成されるので、シリンダ部42よりも後部のバックヘッド部43の内部空間総べてをガス室60とし、ガス容量を大幅に増加可能である。
さらに、本実施形態の油圧ブレーカ10によれば、ガス室60の前後をそれぞれシリンダ部カバー52とバックヘッド部カバー53とによって閉止しているので、シリンダ部42内からの圧油の漏れを防止するとともに、バックヘッド部43のガス室60内からのガスの漏れを防止できる。よって、本実施形態の油圧ブレーカ10によれば、機長を短縮して小型コンパクトな構成としつつ、ガス室60のガス容量を大幅に増加可能である。
【0026】
ここで、
図4に示した油圧ブレーカ100では、同図(c)に示すように、バックヘッド103をシリンダ101に締結用のボルト121で固定する構造なので、バックヘッド103および締結用のボルト121は、バックヘッド103の固定機能に加え、ピストン105側の圧油の圧力およびガス室160のガス圧に対する耐圧機能を同時に担うことになる。
これに対し、本実施形態の油圧ブレーカ10によれば、ガス室60の前側を、専用のシリンダ部カバー52によって閉止し、ガス室60の後側を、専用のバックヘッド部カバー53によって閉止して、いわば「役割分担」をしているので、シリンダ部カバー52は、ピストン5側の圧油の圧力を専ら担い、バックヘッド部カバー53は、ガス室60のガス圧を専ら担うことができる。
【0027】
つまり、
図4に示した油圧ブレーカ100において、バックヘッド103内のガス室の密封部は、
図5に要部を拡大図示するように、バックヘッド103とシリンダ101との境界のインロー部に設けられたOリングによるシール部180と、シリンダ101とピストン105との間に設けられたガスシール部190とが担っている。
ここで、Oリングによるシール部180に着目すれば、このシール部180に偏った外力が作用すればシール機能が低下するところ、この油圧ブレーカ100では、バックヘッド103とシリンダ101とをボルト121で締結しているため、バックヘッド103にコジリ方向の外力が作用すると、これがシール部180へと伝搬し、シール部180に偏った外力が作用してシール機能が低下することになる。
【0028】
これに対し、本実施形態の油圧ブレーカ10によれば、そもそもバックヘッドが存在せず、これに替えてバックヘッド部カバー53でガス室60を閉止する構造である。上述のように、バックヘッド部カバー53は、複数のボルト54によってブレーカ本体1に固設されるから、バックヘッド部カバー53のシール部80には、コジリ方向の外力が作用することがない。
そのため、バックヘッド部カバー53のシール部80のシール機能は安定しており、その結果、ガス漏れを防止または抑制することができる。換言すれば、上記「役割分担」により、専用のバックヘッド部カバー53は、封入ガスの高圧化に対し、ガス室60のガス圧に対する耐圧機能に特化できる。これにより、ガス圧を従来よりも高く設定することも可能となる。
【0029】
そして、専用のシリンダ部カバー52についても、複数のボルト51によってブレーカ本体1のガス室60内の位置に固定されるので、封入ガス(例えば窒素ガス)の高圧化によって油膜へのガスの浸入を防止しつつピストン105側の圧油の圧力を受ける上で、専用部品化により役割が分担されているため、
図4に示した油圧ブレーカ100に比べ、ガス室60からのガス漏れを防止または抑制する上でより好適である。よって、ガス室60のガス容量を大幅に増加してその機能をより確実に奏しつつ、機長を短縮して小型コンパクトな構成とする上で優れた構造であるといえる。
【0030】
特に、
図2(b)に示したように、バックヘッド部43の外形は、シリンダ部42の外形の幅よりも拡幅して形成され、
図2(c)に示したように、その拡幅されたバックヘッド部43の後端面を覆うようにバックヘッド部カバー53が円形に設けられているので、ガス室60のガス容量を大幅に増加してその機能をより確実に奏しつつ、機長を短縮して小型コンパクトな構成とするに際し、高圧ガスの耐圧蓋とする上で優れた構造であるといえる。
【0031】
このように、本実施形態の油圧ブレーカ10によれば、ガス室60が、専用のシリンダ部カバー52と専用のバックヘッド部カバー53との間に画成されているので、これら二つのカバー52、53との協働による作用効果によって、
図4に示した油圧ブレーカ100では奏し得ない、ガス室60のガス容量を大幅に増加してその機能をより確実に奏しつつ機長を短縮して小型コンパクトな構成とすることができるのである。
【0032】
以上説明したように、本実施形態の油圧ブレーカ10によれば、機長を伸ばすことなく小型コンパクトな構成を維持しつつも、ガス室のガス容量を増加するとともに、バックヘッドからの封入ガスのガス漏れを防止または抑制できる。
なお、本発明に係る油圧ブレーカは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能であることは勿論である。例えば、上記第一実施形態では、油圧打撃機構を構成する切り替え制御弁6が、ピストン5と同軸に配置された例を示したが、これに限らず、
図3に第二実施形態を示すように、油圧打撃機構を構成する切り替え制御弁6をピストン5とは非同軸に形成することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 ブレーカ本体
2 打撃室
3 フロントブシュ
5 ピストン
6 制御弁
10 油圧ブレーカ
12 チゼル
23 シリンダライナ
41 フロントヘッド部
42 シリンダ部
43 バックヘッド部
52 シリンダ部カバー
53 バックヘッド部カバー
60 ガス室
61 連通穴
62 ガス封入弁
70 ブラケット
CL 軸線