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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】レンズユニット
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20240730BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20240730BHJP
【FI】
G02B7/02 F
G02B7/02 A
G02B7/02 B
G02B7/02 Z
G03B30/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020060063
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021157150
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 大勇
(72)【発明者】
【氏名】吉田 稔幸
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 敏男
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-155337(JP,A)
【文献】特開2007-212601(JP,A)
【文献】特開2019-060944(JP,A)
【文献】特開2019-012111(JP,A)
【文献】特開2015-210333(JP,A)
【文献】特開2019-008201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
G03B 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸に沿った光軸方向の物体側に配された第1レンズと、
前記第1レンズに対して前記光軸方向の像側において隣接し、前記物体側において、像を形成する光線が通過するレンズ面と、前記光軸を中心とした径方向外側に位置するフランジ面と、を具備する第2レンズを含む複数のレンズと、
前記第1レンズ、および複数の前記レンズを内部に収容した鏡筒と、
を備えるレンズユニットであって、
前記第1レンズと前記鏡筒との間を封止する第1封止部材と、
前記第2レンズと前記鏡筒との間を封止する第2封止部材と、
を具備し、
前記鏡筒内における前記第1レンズと前記第2レンズとの間の空間と、前記鏡筒の外部との間を連通させる連通路が前記鏡筒に形成され、前記連通路を閉塞させる第3封止部材が前記連通路中に設けられ、
前記第2レンズは、前記鏡筒における前記光軸と交差する側に屈曲した部分である第2レンズ係止部によって前記物体側で係止され、前記第2封止部材は、前記第2レンズ係止部と前記第2レンズとを接合する接着剤で構成され、
前記連通路の前記鏡筒の内部側における開口部は、前記第2レンズ係止部よりも前記像側に形成されたことを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
光軸に沿った光軸方向の物体側に配された第1レンズと、
前記第1レンズに対して前記光軸方向の像側において隣接し、前記物体側において、像を形成する光線が通過するレンズ面と、前記光軸を中心とした径方向外側に位置するフランジ面と、を具備する第2レンズを含む複数のレンズと、
前記第1レンズ、および複数の前記レンズを内部に収容した鏡筒と、
を備えるレンズユニットであって、
前記第1レンズと前記鏡筒との間を封止する第1封止部材と、
前記第2レンズと前記鏡筒との間を封止する第2封止部材と、
を具備し、
前記鏡筒内における前記第1レンズと前記第2レンズとの間の空間と、前記鏡筒の外部との間を連通させる連通路が前記鏡筒に形成され、前記連通路を閉塞させる第3封止部材が前記連通路中に設けられ、
前記第2レンズは、前記鏡筒における前記光軸と交差する側に屈曲した部分である第2レンズ係止部によって前記物体側で係止され、前記第2封止部材は、前記第2レンズ係止部と前記第2レンズとを接合する接着剤で構成され、
前記第2レンズ係止部は前記レンズ面よりも前記像側に位置し、前記第2封止部材は、前記第2レンズ係止部を埋め込んで前記接着剤で構成され、
前記連通路の前記鏡筒の内部側における開口部は、前記第2封止部材よりも前記物体側に形成されたことを特徴とするレンズユニット。
【請求項3】
前記鏡筒には、前記径方向において前記第2レンズよりも外側に、前記像側から前記物体側に向けて掘り下げられた形態の溝である外周溝が形成され、
前記連通路は前記外周溝と連通することを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記連通路の前記鏡筒の内部側における開口部は、
前記径方向の内側からみた場合の開口面積が、前記光軸方向からみた開口面積よりも大きくなるように形成されたことを特徴とする請求項3に記載のレンズユニット。
【請求項5】
前記フランジ面は前記レンズ面よりも前記像側に位置し、前記第2レンズ係止部は前記フランジ面と当接することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のレンズユニット。
【請求項6】
前記鏡筒は、前記物体側から前記第1レンズが載置されて固定される第1載置部を具備し、
前記第1載置部において、前記第1レンズと当接するように前記物体側に突出した第1載置部凸部が前記光軸の周りの周方向において分断して複数形成され、
前記物体側からみて、前記連通路は前記第1載置部凸部とは重複しないように前記鏡筒に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項7】
前記鏡筒は、前記物体側から前記第1レンズが載置されて固定される第1載置部を具備し、
前記第1載置部において、前記第1レンズと当接するように前記物体側に突出した第1載置部凸部が前記光軸の周りの周方向において分断して複数形成され、
前記物体側からみて、前記連通路は前記第1載置部凸部と重複するように前記鏡筒に形成されたことを特徴とする請求項2に記載のレンズユニット。
【請求項8】
前記第2レンズの前記光軸周りの外周において、周方向で局所的に前記光軸からの距離が小さくされたカット部が形成され、
前記フランジ面における前記光軸を挟んで前記カット部との反対側において、局所的な凹凸で構成された異形部が形成されたことを特徴とする請求項5から請求項7までのいずれか1項に記載のレンズユニット。
【請求項9】
前記周方向において前記カット部が形成された領域における前記第2レンズ係止部の前記径方向内側の端部は、前記径方向において、前記カット部よりも内側に位置することを特徴とする請求項8に記載のレンズユニット。
【請求項10】
前記連通路は、前記連通路中を流れる空気の流路に垂直な断面積が前記鏡筒の内部側に向けて小さくなる形状とされたことを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載のレンズユニット。
【請求項11】
前記連通路における前記光軸側の内面において、前記鏡筒の内部側に向けて前記断面積が小さくなるような段差が設けられたことを特徴とする請求項10に記載のレンズユニット。
【請求項12】
前記鏡筒は、前記第1載置部よりも前記物体側で前記第1レンズの前記光軸周りの外周面を支持する第1レンズ外周支持部を具備し、
前記第1封止部材は、前記第1レンズと前記第1レンズ外周支持部との間に設けられ弾性材料で構成されたOリングであることを特徴とする請求項6又は7に記載のレンズユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のレンズと、これらを収容・固定する鏡筒とを具備するレンズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車、監視カメラ等に搭載される撮像装置において使用される光学系として、物体側から像側(撮像素子側)に至るまでの間に複数のレンズを光軸(撮像装置の光軸)方向に配したレンズユニットが使用されている。このレンズユニットは可視光による物体の画像を撮像素子上に良好に結像させるように設計される。このため、各レンズ間の位置関係、各レンズと鏡筒の間の位置関係、このレンズユニットと撮像素子の間の位置関係が高い精度で固定され、かつ各レンズに大きな負荷が加わらないことが要求される。
【0003】
一般的に使用されるレンズとしては、樹脂材料製のものとガラス製のものとが要求される機能等に応じて適宜選択され、これらのレンズが鏡筒の内部で積層されて固定される。こうした構造のレンズユニットの構造、その製造方法は、例えば特許文献1に記載されている。ここで、最も物体側に位置する第1レンズは、その物体側の表面は物体側において露出する。一方、第1レンズと像側において隣接する第2レンズ以降のレンズは、鏡筒の内部に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-54922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたようなレンズユニットにおいては、前記の通り、鏡筒内のレンズと鏡筒との間の位置関係を精密に定める必要があるため、第2レンズ以降のレンズと鏡筒との間の位置関係を定めるための構造(位置決め部)は必要最小限の箇所にのみ設けられ、この箇所以外ではレンズと鏡筒とは非接触とされる場合が多い。また、レンズと鏡筒とが直接接する場合でも、実際にはこれらは部分的に接する。この場合、第2レンズ以降のレンズと鏡筒との間は封止されていない。
【0006】
この場合、前記のレンズユニットにおいて、外部の温度が露出した第1レンズの物体側の表面から第1レンズの像側の表面に伝わる。この際、鏡筒内の温度よりも第1レンズの像側の表面の温度が低い場合には、第1レンズの像側の表面や第2レンズの物体側の表面に結露が発生してレンズが曇るおそれがある。
【0007】
このため、レンズの曇りが抑制されるレンズユニットが望まれた。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みなされたもので、レンズの曇りが抑制されるレンズユニットを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るレンズユニットは、光軸に沿った光軸方向の物体側に配された第1レンズと、前記第1レンズに対して前記光軸方向の像側において隣接し、前記物体側において、像を形成する光線が通過するレンズ面と、前記光軸を中心とした径方向外側に位置するフランジ面と、を具備する第2レンズを含む複数のレンズと、前記第1レンズ、および複数の前記レンズを内部に収容した鏡筒と、を備えるレンズユニットであって、前記第1レンズと前記鏡筒との間を封止する第1封止部材と、前記第2レンズと前記鏡筒との間を封止する第2封止部材と、を具備し、前記鏡筒内における前記第1レンズと前記第2レンズとの間の空間と、前記鏡筒の外部との間を連通させる連通路が前記鏡筒に形成され、前記連通路を閉塞させる第3封止部材が前記連通路中に設けられ、前記第2レンズは、前記鏡筒における前記光軸と交差する側に屈曲した部分である第2レンズ係止部によって前記物体側で係止され、前記第2封止部材は、前記第2レンズ係止部と前記第2レンズとを接合する接着剤で構成され、前記連通路の前記鏡筒の内部側における開口部は、前記第2レンズ係止部よりも前記像側に形成される。
この構成においては、第1レンズと第2レンズの間の空間は、第2封止部材によって第2レンズ以降の鏡筒内の空間と隔離できるため、第2レンズ以降の鏡筒内の空間の空気、あるいは、第2レンズ以降の鏡筒内の空間の空気および鏡筒を保持するカメラモジュール内部の空間の空気の湿気が第1レンズと第2レンズの間の空間側に流れ込むことを防げる。このため、第1レンズの像側の表面や第2レンズの物体側の表面に結露が発生してしまい曇ってしまうことを抑制できる。一方、このようにこの空間を第1封止部材及び第2封止部材によって封止する場合には、第1レンズと第2レンズとの間の空間の空気が排気できず組立が困難になる場合があるが、連通路を介して空気を流した後に連通路を第3封止部材を用いて封止することによって、容易にレンズユニットを製造することができる。
また、第2レンズ係止部によって第2レンズは鏡筒に対して固定され、かつ第2封止部材となる接着剤によって、第2レンズは鏡筒に対してさらに強固に固定される。更に、連通路の開口部が、第2レンズ係止部よりも像側に位置するため、第3封止部材となる接着剤がこの開口部から鏡筒の内部側に漏れた場合でも、第2レンズのレンズ面側に流れる接着剤が、第2レンズ係止部によって遮られる。すなわち、このような第3封止部材となる接着剤の漏れによる悪影響が抑制される。
また、本発明におけるレンズユニットは、光軸に沿った光軸方向の物体側に配された第1レンズと、前記第1レンズに対して前記光軸方向の像側において隣接し、前記物体側において、像を形成する光線が通過するレンズ面と、前記光軸を中心とした径方向外側に位置するフランジ面と、を具備する第2レンズを含む複数のレンズと、前記第1レンズ、および複数の前記レンズを内部に収容した鏡筒と、を備えるレンズユニットであって、前記第1レンズと前記鏡筒との間を封止する第1封止部材と、前記第2レンズと前記鏡筒との間を封止する第2封止部材と、を具備し、前記鏡筒内における前記第1レンズと前記第2レンズとの間の空間と、前記鏡筒の外部との間を連通させる連通路が前記鏡筒に形成され、前記連通路を閉塞させる第3封止部材が前記連通路中に設けられ、前記第2レンズは、前記鏡筒における前記光軸と交差する側に屈曲した部分である第2レンズ係止部によって前記物体側で係止され、前記第2封止部材は、前記第2レンズ係止部と前記第2レンズとを接合する接着剤で構成され、前記第2レンズ係止部は前記レンズ面よりも前記像側に位置し、前記第2封止部材は、前記第2レンズ係止部を埋め込んで前記接着剤で構成され、前記連通路の前記鏡筒の内部側における開口部は、前記第2封止部材よりも前記物体側に形成される。
この構成においては、第2レンズ係止部を像側に設けたことによって、第2封止部材は、前記第2レンズ係止部を含んでその周囲を埋め込んだ形状とすることができる。これによって、第2レンズと鏡筒との間をより強固に固定及び封止することができる。
【0010】
また、前記鏡筒には、前記径方向において前記第2レンズよりも外側に、前記像側から前記物体側に向けて掘り下げられた形態の溝である外周溝が形成され、前記連通路は前記外周溝と連通していてもよい。
この構成においては、連通口が外周溝と連通することによって、連通路を介して空気を流すことが特に容易となり、レンズユニットの製造や上記の空間の封止が特に容易となる。
【0011】
また、前記連通路の前記鏡筒の内部側における開口部は、前記径方向の内側からみた場合の開口面積が、前記光軸方向からみた開口面積よりも大きくなるように形成されていてもよい。
第3封止部材となる接着剤は外周溝の深さ方向(光軸と平行な方向)に沿って付与されるところ、この構成においては、この接着剤の流れに沿った連通路の開口部面積が小さくされるため、この際の接着剤の鏡筒内部への漏れが抑制される。
【0013】
また前記フランジ面は前記レンズ面よりも前記像側に位置し、前記第2レンズ係止部が前記フランジ面と当接してもよい。
この構成においてはフランジ面を第2レンズ係止部と当接させることによって、第2レンズの光学特性を維持しつつ、第2レンズを鏡筒に対して強固に固定することができる。
【0015】
また、前記鏡筒は、前記物体側から前記第1レンズが載置されて固定される第1載置部を具備し、前記第1載置部において、前記第1レンズと当接するように前記物体側に突出した第1載置部凸部が前記光軸の周りの周方向において分断して複数形成され、前記物体側からみて、前記連通路は前記第1載置部凸部とは重複しないように前記鏡筒に形成されていてもよい。
この構成においては、第1レンズの鏡筒に対する光軸方向の位置関係は第1載置部凸部で定まる。これに対して、連通路を第1載置部凸部と重複させないことによって、第1レンズの鏡筒に対する位置精度を高くすることができる。
【0017】
また、前記鏡筒は、前記物体側から前記第1レンズが載置されて固定される第1載置部を具備し、前記第1載置部において、前記第1レンズと当接するように前記物体側に突出した第1載置部凸部が前記光軸の周りの周方向において分断して複数形成され、前記物体側からみて、前記連通路は前記第1載置部凸部と重複するように前記鏡筒に形成されていてもよい。
この構成においては、第1レンズの鏡筒に対する光軸方向の位置関係は第1載置部凸部で定まる。これに対して、連通路を第1載置部凸部と重複させることによって、連通路をより物体側に設けることができ、これによって、連通路と第2封止部材(接着剤層)との間の距離を大きくとることができる。このため、第2封止部材を厚く形成することができる、あるいは第2封止部材となる固化前の接着剤が連通路に流れることを抑制することができる。
【0018】
また、前記第2レンズの前記光軸周りの外周において、周方向で局所的に前記光軸からの距離が小さくされたカット部が形成され、前記フランジ面における前記光軸を挟んで前記カット部と反対側において、局所的な凹凸で構成された異形部が形成されていてもよい。
この構成においては、カット部に対応するゲート部を設けた金型と、異形部に対応したガス抜き部とを用いた樹脂成形によって、この第2レンズを容易かつ精密に製造することができる。
【0019】
また、前記周方向において前記カット部が形成された領域における前記第2レンズ係止部の前記径方向内側の端部は、前記径方向において、前記カット部よりも内側に位置してもよい。
この構成においては、カット部よりも第2レンズ係止部の先端を光軸側に設けることにより、第2レンズを鏡筒に対してより強固に固定することができると共に、第2封止部材となる接着剤が第2レンズよりも像側に流れることが抑制される。
【0020】
また、前記連通路は、前記連通路中を流れる空気の流路に垂直な断面積が前記鏡筒の内部側に向けて小さくなる形状とされていてもよい。
この場合には、連通路の鏡筒の内部側における開口を接着剤を用いて封止することが特に容易となる。
また、前記連通路における前記光軸側の内面において、前記鏡筒の内部側に向けて前記断面積が小さくなるような段差が設けられていてもよい。
この場合には、この段差によって接着剤と連通路の内面との間の接触面積を多くすることによって、特に上記の開口の封止を確実に行うことができる。
【0021】
また、前記鏡筒は、前記第1載置部よりも前記物体側で前記第1レンズの前記光軸周りの外周面を支持する第1レンズ外周支持部を具備し、前記第1封止部材は、前記第1レンズと前記第1レンズ外周支持部との間に設けられ弾性材料で構成されたOリングであってもよい。
この場合においては、第1封止部材となるOリングによって、第1レンズと鏡筒との間の封止を特に確実に行うことができる。この際、上記の第2封止部材、連通路、第3封止部材を用いることによって、特にこのレンズユニットを容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、レンズの曇りが抑制され、かつその製造も容易であるレンズユニットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態に係るレンズユニットの断面図である。
図2】実施形態に係るレンズユニットで用いられる鏡筒の断面図である。
図3】実施形態に係るレンズユニットで用いられる鏡筒の斜視図(a)、底面図(b)である。
図4】実施形態に係るレンズユニットの分解組立図である。
図5】実施形態に係るレンズユニットを製造する際の工程断面図(その1)である。
図6】実施形態に係るレンズユニットを製造する際の工程断面図(その2)である。
図7】実施形態に係るレンズユニットを製造する際の工程断面図(その3)である。
図8】実施形態に係るレンズユニットを製造する際の工程断面図(その4)である。
図9】実施形態に係るレンズユニットを製造する際の工程断面図(その5)である。
図10】実施形態に係るレンズユニットにおける第3封止部材(連通路)の形状を示す斜視図である。
図11】実施形態に係るレンズユニットの変形例の断面図である。
図12】実施形態に係るレンズユニットの変形例で用いられる鏡筒の斜視図である。
図13】実施形態に係るレンズユニットの変形例における第3封止部材(連通路)の形状を示す斜視図である。
図14】実施形態に係るレンズユニットの変形例における第2レンズの斜視図である。
図15】第2レンズの製造の際の形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は本実施形態に係るレンズユニット1の、光軸Aに沿った断面図である。ここでは、物体(Ob)側は図中上側、像(Im)側は図中下側であり、撮像素子100は図中最下部に位置する。レンズL1~L6の各々は、鏡筒10に対して直接あるいは間接的に固定される。図1においては、各レンズと鏡筒10の間の位置関係が主に記載されており、実際には撮像素子100と鏡筒10の位置関係を固定するための構造も設けられているが、その記載は省略されている。
【0025】
撮像素子100は2次元CMOSイメージセンサであり、各画素は光軸Aと垂直な面内で2次元に配列されており、実際には撮像素子100はカバーガラス(図示せず)で覆われている。図1において、第1レンズL1から第6レンズL6を備えるレンズユニット1が構成される。レンズユニット1は、撮像対象の可視光の画像を所望の視野、所望の形態で撮像素子100上(像面)に結像させるように構成される。
【0026】
図1において、最も物体側(図中上側)に設けられた第1レンズL1は、魚眼レンズであり、主にこれによって、撮像装置の視野等が定まる。これよりも撮像素子100側(像側)に、第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、第5レンズL5、第6レンズL6が順次配置されている。各レンズは、光軸Aの周りで略対称な形状を具備する。また、光束を制限するための絞りや、不要な光を除去するための遮光板もレンズ間に適宜設けられるが、これらは本願発明とは無関係であるため、その記載は図1では省略されている。また、後述するように、隣接するレンズ間や各レンズと鏡筒とは互いの位置関係が固定されるように接触するが、これらは、これらは予め設定された箇所においてのみ部分的に接触するような形状とされている。このため、特定の方向の断面図である図1においては、これらの間には空隙が設けられている箇所が存在するように示されている。
【0027】
また、図2は、鏡筒10のみの光軸Aに沿った断面図、図3(a)は、鏡筒10を図1における斜め上側(物体側)からみた斜視図、図3(b)は、鏡筒10を像側からみた下面図である。である。この鏡筒10の物体側(図中上側)に、内周面が略円筒形状の空洞部である第1収容部10Aが設けられ、第1収容部10Aの像側の底面は第1レンズL1と当接する第1載置部11である。ただし、光軸A方向の第1レンズL1の鏡筒10に対する位置精度を高めるためには、第1レンズL1と第1載置部11とを全体では面接触させず、複数箇所に分散させた箇所でのみ接触させることが好ましい。このため、第1載置部11には、図3(a)に示されるように、物体側に向けて僅かに凸状に形成された第1載置部凸部11Aが周方向に3箇所(図においてはこのうち2箇所のみが表示)に形成されている。
【0028】
また、第1載置部11よりも像側(図中下側)には、第1収容部10Aと同軸とされ、第1収容部10Aより小径とされた略円筒形状の空洞部である第2収容部10Bが設けられ、第2収容部10Bの像側の底面は後述する最も像側の接合レンズL50と当接する第2載置部12である。第1収容部10A、第2収容部10Bの中心軸は共通とされ、光軸Aと等しい。また、図2に示されるように、実際には第2収容部10Bの内周面は物体側から像側に向かって徐々に小さくされる。
【0029】
また、第2レンズL2及びこれよりも像側にあるレンズのうち、その外周が第2収容部10B(鏡筒10)の内面と直接当接するものは、これによって鏡筒との間の光軸Aと垂直な方向(径方向)における位置関係が定まる。一方、第2レンズL2及びこれよりも像側にあるレンズのうち、その外周が第2収容部10B(鏡筒10)の内面と直接当接しないものは、外周が第2収容部10B(鏡筒10)の内面と直接当接するものと直接的あるいは他のレンズを介して間接的に係合することによって、径方向の位置関係が定まる。このため、結局、第2レンズL2及びこれよりも像側にあるレンズの全ての鏡筒10に対する径方向の位置関係が定まる。この際、前記の第1載置部11における第1載置部凸部11Aと同様に、この外周における接触箇所は周方向で複数に分離して設けることが好ましい。このため、図3(a)に示されるように、第1収容部10Bの内面には、内側(光軸A側)に向けて僅かに凸形状とされたレンズ固定用リブ10B1が、光軸Aに沿って延伸するように周方向に複数形成されている。
【0030】
また、図2に示されるように、鏡筒10における像側の光軸A付近には、像側からみて第6レンズL6を露出させる像側開口部10Cが第2載置部12よりも光軸A側に形成されている。このため、像側開口部10C内を通過する光線によって、図1において撮像素子100で各レンズによって形成された像を得ることができる。また、鏡筒10における第1載置部11よりも物体側は、第1レンズL1をその外周側から支持する円筒面形状の第1レンズ外周支持部15となる。
【0031】
また、図2に示されるように、第2収容部10B(第2載置部12)の光軸Aからみた外側には、像側から物体側に向けて掘り下げられた形態の外周溝10Dが形成されている。図3(b)に示されるように、外周溝10Dは、光軸Aを中心とした円環状に形成されている。
【0032】
図1において、各レンズにおける物体側、像側のレンズ面(画像を形成する光線が通過する面)は、レンズユニット1が所望の結像特性をもたらすように、適宜曲面(凸曲面、凹曲面)加工されている。以下では、各レンズにおける物体側のレンズ面を第1表面R1、像側のレンズ面を第2表面R2と呼称する。また、レンズ面の形状(凸曲面又は凹曲面)としては、第1表面R1の形状については物体側からみた形状、第2表面R2の形状については像側からみた形状を、それぞれ意味するものとする。
【0033】
一般的に、このような小型の撮像装置におけるレンズを構成する材料としては、ガラスと樹脂材料の2種類がある。本実施の形態では、最も物体側に配置された第1レンズL1は撮像装置1の最表面に位置するために、傷が付きにくいガラス製とされる。また、図1において記載が省略されている絞りは第3レンズL3と第4レンズL4の間に設けられ、この絞りと隣接する第4レンズL4も、温度変化に起因する焦点距離の変化が顕著に表れるため、ガラス製とされる。他のレンズとしては、安価な樹脂材料製のものが用いられる。
【0034】
第1レンズL1は、その物体側のレンズ面L1R1が凸曲面、その像側のレンズ面L1R2が凹曲面とされた負レンズである。第1レンズL1の上面側では、レンズ面L1R1がほぼ全体を占めている。第1レンズL1の下面側(像側)において、レンズ面L2R2の光軸Aからみた外側には、光軸Aと垂直な平面で構成された第1レンズ第1下面L1Aが設けられる。第1レンズ第1下面L1Aの更に外側には、第1レンズ第1下面L1Aと平行かつ第1下面L1Aよりも物体側(図中上側)に位置する第1レンズ第2下面L1Bが設けられる。また、第1レンズL1の最外周部は、光軸Aを中心軸とする円筒形状の第1レンズ第1外周面L1Cを構成する。これらの面のうち、光学的に使用されるのは、レンズ面L1R1、L1R2であり、他の面は、第1レンズL1を鏡筒10に対して固定するために用いられる。
【0035】
図1において、鏡筒10の上端側は、第1レンズL1の物体側への移動を規制するように光軸A(中心)側に向かって屈曲した第1レンズ係止部13となっている。また、第1レンズ第1下面L1Aは、実際には図2に示される鏡筒10の第1載置部11における第1載置部凸部11Aと当接する。このため、第1レンズL1の鏡筒10に対する光軸A方向における位置関係は、物体側(図中上側)では第1レンズ係止部13によって定まり、像側(図中下側)では第1載置部凸部11Aにより定まる。
【0036】
また、第1レンズ第1外周面L1Cが鏡筒10における第1レンズ外周支持部15と内側から当接することによって、第1レンズL1と鏡筒10の径方向における位置関係が定まる。すなわち、上記の構成により、第1レンズL1は鏡筒10に対して固定される。
【0037】
ここで、第1レンズL1における第1レンズ第1外周面L1Cよりも像側には、第1レンズ第1外周面L1Cよりも小径とされた同軸の円筒形状の第1レンズ第2外周面L1Dが設けられている。第1レンズ第2外周面L1Dと鏡筒10における第1レンズ外周支持部15の内周面との間の円環状の空隙には、弾性材料で構成された円環状のOリング(第1封止部材)20が配される。図1に示されるように、Oリング20は、第1レンズ第2外周面L1Dと第1レンズ外周支持部15の内周面によって光軸Aと垂直な方向(図中水平方向:径方向)で圧縮された状態でこの空隙内に設けられる。このため、これによって、第1レンズL1(第1レンズ第2外周面L1D)と鏡筒10(第1レンズ外周支持部15)との間が封止される。
【0038】
なお、図1図3(a)に示された第1レンズ係止部13の形状は、第1レンズL1を鏡筒10に固定するために加工した後の形状であり、固定前における鏡筒10の上端部側の形状は、図2に示されるように、物体側から第1レンズL1を第1収容部10A内に挿入可能な形状とされる。
【0039】
第2レンズL2は、その物体側のレンズ面L2R1が凸曲面、その像側のレンズ面L2R2が凹曲面とされた負レンズである。第2レンズL2の物体側(図中上側)において、レンズ面L2R1の外側には、光軸Aと略垂直でありレンズ面L2R1よりも像側(図中下側)に位置する第2レンズ上面(フランジ面)L2Aが設けられる。また、第2レンズL2の像側(図中下側)において、レンズ面L2R2の外側には、光軸Aと略垂直でありレンズ面L2R2よりも像側(図中下側)に位置する第2レンズ下面L2Bが設けられる。第2レンズL2の最外周を構成する面である第2レンズ外周面L2Cは、第2収容部10Bの内面に形成されたレンズ固定用リブ10B1と当接する。これによって第2レンズL2の径方向における鏡筒との間の位置関係が定まる。
【0040】
また、第1レンズL1に対する第1レンズ係止部13と同様に、図1に示されるように第2レンズL2の物体側への移動を規制するように光軸A(中心)側に向かって屈曲した第2レンズ係止部14が鏡筒10に形成されている。図1図3(a)における第2レンズ係止部14の形状は、第2レンズL2を鏡筒10に固定するために加工した後の形状であり、固定前における鏡筒10の上端部側の形状は、図2に示されるように、物体側から第2レンズL2を第2収容部10B内に挿入可能な形状とされる。また、第2レンズ係止部14は、図3(a)に示されるように、第2レンズL2の光軸A周りの全周にわたり形成されている。このため、第2レンズL2の光軸A方向に沿った位置は、物体側では第2レンズ係止部14によって制限される。図1に示されたように、鏡筒10内に固定された状態では、鏡筒10内において、第1レンズL1と第2レンズL2との間には空隙が形成される。
【0041】
図1に示されるように、第2レンズL2の物体側の第2レンズ上面L2Aにおいて、第2レンズ係止部14の光軸A側の端部を含む円環状に、接着剤で構成された第1接着剤層(第2封止部材)30が形成されている。これによって、第2レンズL2はより強固に鏡筒10に対して固定されると共に、第2レンズL2と鏡筒10との間が封止される。
【0042】
第3レンズL3は、その物体側のレンズ面L3R1が凹曲面、その像側のレンズ面L3R2が凸曲面とされた正レンズである。第3レンズL3の物体側(図中上側)において、レンズ面L3R1の外側には、光軸Aと略垂直でありレンズ面L2R1よりも物体側(図中上側)に位置する第3レンズ上面L3Aが設けられる。また、第3レンズL3の像側(図中下側)において、レンズ面L3R2の外側には、光軸Aと略垂直でありレンズ面L3R2よりも像側(図中下側)に位置する第3レンズ下面L3Bが設けられる。第3レンズL3の最外周を構成する面である第3レンズ外周面L3Cは、図1においては明確に示されていないが、第2収容部10Bの内面に形成されたレンズ固定用リブ10B1とは当接しない。
【0043】
前記の通り、第4レンズL4はガラス製であり、その物体側の面L4R1が凸曲面、その像側の面L4R2が凸曲面とされた正レンズである。ただし、第4レンズL4は、他のレンズとは異なり、樹脂材料製のレンズホルダ91に圧入固定されて一体化された第4レンズ体L40とされた状態で鏡筒10に収容される。すなわち、第4レンズL4は、第4レンズ体L40となった状態で、樹脂材料製である第2レンズL2、第3レンズL3と同様にレンズとして扱われる。
【0044】
第4レンズ体L40の物体側(図中上側)において、第4レンズL4の外側のレンズホルダ91には、第3レンズL3における第3レンズ下面L3Bと当接する第4レンズ体上面L40Aが設けられる。また、第4レンズ体L40の像側(図中下側)において、第4レンズL4よりも外側のレンズホルダ91には、光軸Aと略垂直な第4レンズ体下面L40Bが設けられる。
【0045】
また、第4レンズ体L40の最外周を構成する面である第4レンズ体外周面L40Cは、第2収容部10Bの内面に形成されたレンズ固定用リブ10B1と当接する。これによって第4レンズ体L40(第4レンズL4)の径方向における鏡筒10との間の位置関係が定まる。
【0046】
第5レンズL5は、その物体側の面L5R1が凹曲面、その像側の面L5R2が凹曲面とされた負レンズである。第6レンズL6は、外径が第5レンズL5よりも小さく、その物体側の面L6R1が凸曲面、その像側の面L6R2が凸曲面とされた正レンズである。また、第5レンズL5、第6レンズL6は対向するレンズ面が嵌合して接合されることにより、最も像側にある接合レンズL50を構成するように設定される。つまり、実質的に最も像側のレンズとなる像側レンズは、第5レンズL5の像側のレンズ面L5R2と第6レンズL6の物体側のレンズ面L6R1とが嵌合して接合された接合レンズL50となる。
【0047】
接合レンズL50(第5レンズL5)の物体側(図中上側)において、レンズ面L5R1の外側においては、第4レンズ体L40における第4レンズ体下面L40Bと当接する第5レンズ上面L5Aが設けられる。また、第5レンズL5の像側(図中下側)において、レンズ面L5R2(レンズ面L6R1)よりも外側には、光軸Aと垂直な平面である接合レンズ下面L5Bが設けられる。接合レンズ下面L5Bは、第2載置部12と当接し、かつ第6レンズL6は鏡筒10とは直接当接しない。また、接合レンズ下面L5Bにおける第2載置部12よりも内側には、物体側に向けて凹形状とされた段差部(係合構造)L5Cが設けられる。これに対応して、第6レンズL6には物体側に凸形状とされた段差部(係合構造)L6Aが設けられ、段差部L5Cと段差部L6Aとが係合する。すなわち、接合レンズL50においては、第5レンズL5のレンズ面L5R2、段差部L5Cと第6レンズL6のレンズ面L6R1、段差部L6Aがそれぞれ嵌合した状態で固定され固定されることによって、第5レンズL5、第6レンズL6の光軸A方向及び径方向における位置関係が定まる。
【0048】
また、接合レンズL50(第5レンズL5)の最外周を構成する面である第5レンズ外周面L5Dは第2収容部10Bの内面に形成されたレンズ固定用リブ10B1と当接する。このため、接合レンズL60の光軸Aに沿った方向、及び径方向に沿った位置は、鏡筒10に対して固定される。
【0049】
この場合、第4レンズ体L40は像側で接合レンズL50に係止されるため、第4レンズ体L40の光軸Aに沿った方向における位置は、像側では接合レンズL50を介して第2載置部12(鏡筒10)によって制限される。第3レンズL3、第2レンズL2についても同様である。
【0050】
また、前記の構成において、第2レンズL2、第4レンズ体L40(第4レンズL5)、接合レンズL50は、それぞれの外周面が鏡筒10と当接することによって、径方向におけるそれぞれの鏡筒10に対する位置関係が定まる。一方、第3レンズL3における第3レンズ下面L3Bと第4レンズ体L40における第4レンズ体上面L40Aには、これらの径方向における位置関係を固定するための係合部(図示せず)が形成されている。このため、第3レンズL3の鏡筒10に対する位置関係は、第4レンズ体L40を介して間接的に定まる。
【0051】
このため、上記の構成において、第1レンズL1以外の全てのレンズにおいても、その径方向における鏡筒10との間の位置関係が固定される。一方、第1レンズL1以外の全てのレンズにおいて、隣接するレンズ間は光軸A方向で当接し、最も像側にある接合レンズL50は、第2載置部12と当接する。このため、第1レンズL1以外の全てのレンズの光軸A方向に沿った位置は、像側では第2載置部12によって制限される。
【0052】
一方、前記のように、第2レンズL2の光軸A方向における鏡筒Aとの位置関係は、物体側では第2レンズ係止部14によって制限される。このため、第1レンズL1以外の全てのレンズの鏡筒10に対する光軸A方向における位置関係は固定される。前記のように第1レンズL1と鏡筒10に対する位置関係は固定されるため、結局、以上の構造における全てのレンズ間、及び全てのレンズと鏡筒10に対する位置関係は、光軸A方向及び径方向で固定される。
【0053】
図4は、このレンズユニット1の分解斜視図であり、ここでも前記の遮光板や絞りの記載は省略されている。ここでは、接合レンズL50、第4レンズ体L40、第3レンズL3、第2レンズL2、Oリング20、第1レンズL1が図中上側(物体側)から鏡筒10に対して順次装着される。ここでは、第1接着剤層30等の記載は省略されている。
【0054】
鏡筒10の材料としては、対候性に優れた結晶性プラスチック(ポリエチレン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン)が好ましく用いられる。一方、第2レンズL2、第3レンズL3、第5レンズL5、第6レンズL6は、レンズとしての性能(光透過性や成形性)に優れる非晶性プラスチック(ポリカーボネート等)で構成される。また、レンズホルダ91は第3レンズL3等と同じ非晶性プラスチックで構成されるため、第4レンズ体L40は、全体としては第3レンズL3等と同様のプラスチックレンズとして取り扱うことができる。前記の通り、第1レンズL1、第4レンズL4はガラス製とされる。
【0055】
ここで、図1において、第1レンズL1と第2レンズL2の間の空間は封止されているため、この空間内にあるレンズ面L1R2、L2R1に曇りが発生することを抑制することができる。このための構造について、以下に説明する。
【0056】
前記の通り、第1レンズL1(第1レンズ第2外周面L1D)と鏡筒10(第1レンズ外周支持部15の内周面)の間は、Oリング20によって封止されている。また、第2レンズLと鏡筒10の間も、第1接着剤層30によって封止される。
【0057】
ただし、図2に示されるように、レンズユニット1の製造前の状態の鏡筒10には、第2収容部10B(鏡筒10)の内部と外周溝10D(鏡筒10の外部)とを連通させる連通路10Eが、図2における左側の外周溝10Dの物体側(図中上側)に形成されている。前記のように外周溝10Dは光軸A周りの全周にわたり形成されているのに対し、連通路10Eは光軸A周りの周方向の一部にしか形成されておらず、その第2収容部10B側の開口(連通路開口(開口部)10EA)は、図3(a)における周方向の一部においてのみ形成されている。図1においては、連通路10E(図中左側)が形成された箇所におけるレンズユニット1の断面図が示されている。ただし、連通路10Eは製造後の図1の状態では、接着剤で構成された第2接着剤層(第3封止部材)31によって封止される。
【0058】
前記のように第1レンズL1と鏡筒10の間、第2レンズL2と鏡筒10の間は封止されているため、第1レンズL1と第2レンズL2の間の空間は、連通路開口10EAがある箇所のみにおいて、外周溝10Dを介して鏡筒10の外側の外気と連通させることができる。
【0059】
以下に、このレンズユニット1の製造工程において、このように連通路10Eを設けたことによる効果を説明する。
【0060】
図5図9は、このレンズユニット1を製造する際の状態を示す工程断面図である。まず、図5(a)において、鏡筒10に対して接合レンズL50、第4レンズ体L40、第3レンズL3が図1に示される状態となるように第2収容部10B内に図中上側(物体側)から順次装着される。この際、これらの各レンズ(レンズ体)の鏡筒10に対する光軸A方向、径方向における位置関係が固定されることは前記の通りである。
【0061】
次に、この状態から図5(b)に示されるように、第2レンズL2が図中上側から装着される。この際、前記のように第2レンズ係止部14は加工前の状態であるため、このように第2レンズL2を第2収容部10B内に図中上側から挿入することができる。
【0062】
第2レンズL2が鏡筒10内において図1の状態に固定された後、図6(c)に示されるように、第2レンズ係止部14をカシメ加工することによって、この状態で第2レンズL2が鏡筒10に対して所定の位置関係で固定される。このため、この時点で第1レンズL1以外の全てのレンズが鏡筒10に対して固定される。
【0063】
その後、図6(d)に示されるように、この状態で、第2レンズ上面L2Aにおいて、第2レンズ係止部14の光軸A側の端部を含む円環状に、固化前の接着剤を付与して固化させることによって、第1接着剤層30が形成される。これによって、第2レンズL2と鏡筒10の間は封止される。第1接着剤層30を構成する接着剤としては、例えばシリコーン系やアクリル系のものを用いることができる。
【0064】
この状態で、図7(e)に示されるように、気密性試験機(真空ポンプ)500を像側開口部10Cを含む領域に接続して鏡筒10内部を減圧して、第1接着剤層30による封止による気密性の試験(リークチェック)を行うことができる。前記のように、第3レンズL3から接合レンズL50と鏡筒10との間の接触箇所は局所的であるため、実際にはこれらの間には空隙が多く形成されており、この場合において鏡筒10との間は第1接着剤層30によってのみ封止されるため、このような気密性の試験が可能となる。
【0065】
これによって気密性の確認ができたら、次に、図7(f)に示されるように、Oリング20が第1レンズ第2外周面L1Dに装着された状態の第1レンズL1が第1収容部10A(第1レンズ外周支持部15)内に挿入される。前記のように第1レンズ係止部13は加工前の状態であるため、このように第1レンズL1を第1収容部10A内に図中上側から挿入することができる。
【0066】
この際、Oリング20は径方向で圧縮され、図7(f)に示されたような第1レンズL1が第1載置部11と当接する前の状態においても、第1レンズL1と鏡筒10の間は封止される。前記のようにこの時点で第2レンズL2と鏡筒10の間も封止されているため、第1レンズL1と第2レンズL2の間の空間の空気は、図7(f)の状態から第1レンズL1を像側に向けて押し下げる間に、図中黒矢印で示されるように、連通路10E、外周溝10Dを介して鏡筒10の外部に抜ける。このため、連通路10Eを設けたことによって、この作業を容易に行うことができる。なお、連通路10Eを設けない場合には、図7(f)の状態で第1レンズL1と第2レンズL2の間の空間は外部から封止されるため、第1レンズL1を図7(f)に示された状態から像側に向けて押し下げる作業を、この空間で圧縮された空気の圧力に抗して行うことになるため、第1レンズL1を図1に示されたように鏡筒10に対して装着することが困難である。
【0067】
その後、図8(g)に示されたように第1レンズL1が図1に示された位置に設置された後で、図8(h)に示されたように、第1レンズ係止部13を図1に示された状態に加工することによって、第1レンズL1は鏡筒10に対して固定される。
【0068】
この状態で、図9(i)に示されたように気密性試験機500を外周溝10Dを含む領域に接続し、Oリング20による気密性の試験を行うことができる。この際、第1レンズL1の外側(物体側)の気圧を高めてもよい。この気密性試験に合格した場合には、固化前の接着剤を連通路10E周囲の外周溝10Dから連通路10Eに付与して硬化させることによって第2接着剤層31を形成することができ、図1に示された形態が実現される。
【0069】
このように、連通路10Eを鏡筒10に設けたことによって、第1レンズL1と第2レンズL2との間の空間を封止する作業を特に容易に行うことが可能となる。これによって、第1レンズL1、第2レンズL2に曇りが発生することが抑制されたレンズユニット1を容易に製造することができる。
【0070】
図1において、固化前の接着剤は外周溝10Dにおいて像側(図中下側)から物体側(図中上側)に向けて付与される。この際、接着剤が第2レンズL2のレンズ面L2R1や第1レンズL1のL1R2側に流れた場合には、これによって結像特性が劣化するため、接着剤が連通路開口10EAから第1レンズL1と第2レンズL2との間の空間側(鏡筒10の内部)に流れることを抑制することが好ましい。これに対して、上記の構成において、図2等において連通路開口10EAは、径方向内側からみた図中水平の方向(固化前の接着剤が付与される方向と垂直な方向)では開口面積が大きく、図中上下方向(光軸A方向)からみて開口面積が小さくなるように形成される。連通路開口10EAをこのように形成することによって、固化前の接着剤がこの空間に侵入することが抑制される。
【0071】
また、外周溝10Dにおける周方向のごく一部においてのみ連通路開口10EAを設けても、前記のような連通路10Eの空気流路としての機能は実現される。一方、連通路開口10EAの開口面積が小さいほど、このような第1レンズL1と第2レンズL2との間の空間側への接着剤の流れは抑制される。このため、図3(a)に示されるように、連通路開口10EAは小さな開口面積で周方向の一部においてのみ形成される。
【0072】
この際、図3(a)に示されるように、周方向において、連通路10E(連通路開口10EA)は、隣接する第1載置部凸部11Aの間に形成され、光軸Aに沿った方向からみて、第1載置部凸部11Aと連通路10Eは重複しない。鏡筒10における連通路10Eが形成された付近では、連通路10Eが形成されていない部分に比べて鏡筒10の成形精度が出しにくい場合がある。第1載置部凸部11Aと連通路10Eは重複している場合、第1レンズL1の鏡筒10に対する位置精度が悪くなるおそれがある。図3(a)に示されたように、隣接する第1載置部凸部11Aの間に連通路10Eを設けることによって、第1レンズL1の位置精度の劣化を抑制することができる。
【0073】
また、図1に示されるように、連通路開口10EAは、第2レンズL2の固定後における第2レンズ上面L2Aよりも像側(図中下側)に形成される。これによって、固化前の接着剤が鏡筒10の内部に流れ出たとしても、第2レンズ上面L2Aと連通路10Eの間において物体側(図中上側)に突出する第2レンズ係止部14によって、この流れが遮られる。連通路10Eの形態や連通路開口10EAの位置を以上のように設定することによって、第2レンズL2のレンズ面L2R1や第1レンズL1のL1R2に接着剤が付着することが抑制される。
【0074】
図10は、図1における第2接着剤層31のみの形状を示す、物体(Ob)側かつ光軸A側からみた斜視図であり、この形状は、外周溝10Dから連通路開口10EAに至るまでの内部構造をそのまま反映する。この形状は、外周溝10Dから連通路10Eまでの内部において、固化前の接着剤が隙間なく充填され、第2接着剤層31による封止が確実に行われるような形状とされる。図中上側の板状部分31Aは、連通路開口10EAに対応する。この形状における光軸A及び径方向RAと垂直な幅は、光軸A方向の物体側に向けて小さくなるような形状とされているため、この部分を確実に閉塞させることができる。また、径方向RAにおける光軸Aに近い側の面(第2接着剤層内周面31B)には、光軸A側からみた場合にT字形状となるように段差が形成されている。この段差は、径方向RAに沿った幅が段差よりも物体側で小さく、あるいはこの幅が段差よりも周方向の中心側で小さくなるように形成される。このような段差を、外周溝10Dから連通路10Eまでの内部に形成することによって、接着剤とこの部分の内面との間の接触面積を大きくし、固化前の状態における接着剤を移動させにくくし、第2接着剤層31を確実に形成することができる。
【0075】
次に、上記のレンズユニット1の変形例について説明する。図11は、このレンズユニット2の構造の一部を示す光軸Aに沿った断面図であり、第3レンズL3よりも像側の構造については前記のレンズユニット1と変わるところがないため、記載が省略されている。また、第1レンズL1及びその外周部における固定に関わる構造についても同様であるため、ここで用いられる鏡筒40においては、前記の第1レンズ係止部13、第1レンズ外周支持部15等は同様に設けられる。このレンズユニット2において前記のレンズユニット1と大きく異なるのは、第2レンズの形状及びその固定に関わる構造である。特にこの点について以下に説明する。
【0076】
ここで用いられる第2レンズL20は、前記と同様のレンズ面L2R1、L2R2を具備する。ただし、その物体側におけるレンズ面L2R1の外側における第2レンズ上面L20Aは、前記の第2レンズ上面L2Aよりも像側(図中下側)に形成されている。一方、像側におけるレンズ面L2R2よりも径方向外側の第2レンズ下面L20Bは同様である。このため、この第2レンズL20は、レンズ面については前記の第2レンズL2と同様であるために同様の光学特性を有するが、前記の第2レンズL2よりも周囲でより薄く形成されている。
【0077】
これに対応して、この鏡筒40においては、第2レンズ係止部44も前記の第2レンズ係止部14よりも像側に設けられる。図12は、この鏡筒40の斜視図であり、図3(a)に対応する。ここでも、第1レンズ係止部13、第2レンズ係止部44については、加工後の形状が示されている。第1レンズ係止部13、第1レンズ外周支持部15等については、前記の鏡筒10と変わるところがない。
【0078】
図11において、鏡筒40における第2レンズ係止部44周囲の部分全体は、前記のレンズユニット1(図1)の場合と比べて、大きく掘り下げられている。このため、前記のレンズユニット1においては第1接着剤層30は第2レンズ係止部14の光軸A側の端部付近においてのみ形成された(図6(d))のに対し、このレンズユニット2においては、第1接着剤層50は、第2レンズ係止部44を埋め込んでこのように掘り下げられた部分を充填するように形成される。この際、固化前の接着剤はこのように掘り下げられた部分に流し込まれ、図11に示されるように、第2レンズL20の第2レンズ外周面L20Cと第2収容部40Bの内面との間の空隙(レンズ固定用リブ10B1が形成されない箇所)にも充填される。このため、この接着剤の固化後には、第1接着剤層50によって、第2レンズL20の鏡筒40に対する固定及び封止が、前記のレンズユニット1よりも強固となる。連通路40E内に第2接着剤層(第3封止部材)51を形成する工程については前記の鏡筒10における場合と同様であり、これよりも前における気密試験についても、同様に行われる。
【0079】
この場合、連通路開口40EAは、第1接着剤層50を構成する接着剤によって閉塞されないように、前記の鏡筒10における場合よりも、より物体側(図11における上側)に形成される。この際、図12に示されるように、この鏡筒40においては、前記の鏡筒10と同様に第1レンズL1を像側で支持する第1載置部41、第1載置部凸部41Aが形成されているが、光軸A方向からみて、周方向において連通路40Eは第1載置部凸部41Aとが重複するように形成される。第1載置部凸部41Aは物体側に凸形状となっているため、これにより、特に連通路開口部40EAをより物体側に設けやすくすることができ、連通路開口40EAが第1接着剤層50となる固化前の接着剤によって閉塞されることが抑制される。あるいは、このために、第1接着剤層50を厚く形成することができ、第2レンズL2の固定、封止がより確実に行われる。
【0080】
図13は、この場合における第2接着剤層51のみの形状を示す図10に対応した斜視図であり、この形状は、外周溝40Dから連通路開口40EAに至るまでの内部構造をそのまま反映する。この場合においても、この形状は、光軸Aに沿った物体側かつ光軸Aに向かう側(内側)にある連通路開口40EAに向けた経路が狭くなるような形状が実現されている。すなわち、光軸A及び径方向RAと垂直な幅は、径方向RAに沿った幅が物体側に向けて小さくなるような形状とされているため、この部分を確実に閉塞させ、封止することができる。
【0081】
また、前記のように、この第2レンズL20は、中心と比べて周囲が特に薄く形成され、この第2レンズL20は金型を用いて成形することによって製造することができる。この点について以下に説明する。図14は、この第2レンズL20を物体側からみた斜視図であり、図15は、金型を用いてこの第2レンズL20を製造する際の状況を示す断面図であり、この断面は図12における第2レンズL20の断面(光軸Aに沿った断面)に対応する。
【0082】
この場合には、第2レンズL20における物体側の形状(レンズ面L2R1等)に対応する内面形状を具備する第1金型700と、第2レンズL20における像側の形状(レンズ面L2R2等)に対応する内面形状を具備する第2金型701とが組み合わされて用いられる。図15における第1金型700と第2金型701の間の空洞の形状は図11における第2レンズL20の断面形状に対応し、固化前の液状の樹脂材料は、この状態で図中右側に設けられた入口となるゲート700Aからこの空洞に流し込まれる。図15においては、この際の樹脂材料の流れが矢印で図示されている。
【0083】
ここで、この第2レンズL20は、前記の第2レンズL2と比べてレンズ面L2R1の形状、位置については変わらないものの、その周囲の第2レンズ上面L20Aは、前記の第2レンズ上面L2Aよりも低くなる。このため、図15における領域Sの部分の段差が大きくなるため、この領域Sにガスが溜まりやすくなる。
【0084】
領域Sに溜まるガスを逃がすためには、ゲート700Aから遠い側、かつこのような段差がある側(領域Sがある側)から空気(ガス)を抜くガス抜きを行うことが有効である。このために、図15においては、第1金型700における図中左側の部分に、ガス抜き部702が設けられている。この際、ガスを抜くための経路としては、ガスが流れる流路の断面積は小さくとも十分であり、かつ、この中に樹脂材料が多く流れ込むことは好ましくない。このため、例えばガス抜き部702としては、単純な円筒形状のものを用いてもよく、第1金型700には、このガス抜き部702が図15に示されるように上下方向に貫通するように貫通孔が形成される。この場合、ガスはガス抜き部702の外周と第1金型700におけるこの貫通孔の内面との間の隙間を流れる。この場合の流路における流れに垂直な断面積は小さくなるが、上記のようなガス抜きのためには十分な効果を奏する。一方、この流路の一部には樹脂材料が流れ込んで固化するおそれがあるが、この部分は、成形後の第2レンズL20を取り出す際に分断され、成形後の第2レンズL20においては、バリ状の凸部となる。
【0085】
図14の斜視図において、右側において周方向が直線的にカットされた部分(カット部L20D)は、図15におけるゲート700Aに対応する部分である。カット部L20Dは、光軸Aからの距離がこれ以外よりも局所的に小さくされ周方向における一領域となる。このため、カット部L20Dは鏡筒40の内面とは当接せず、第2レンズL20の鏡筒40との間の位置関係には影響を及ぼさない。
【0086】
一方、第2レンズ上面(フランジ面)L20Aの図中左側においては、前記のガス抜き部702に対応する部分が局所的な凹部として形成され、この凹部の内部には前記のバリに対応した凸部も形成される。このため、この部分は、図14における左側の円環状に掘り下げられた部分(居所的な凹凸で構成された部分:異形部L20E)となる。図15の構成より、異形部L20Eは、光軸Aを挟んでカット部L20Dの反対側に形成される。第2レンズL20は第1レンズL1とは非接触であるため、異形部L20Eの凸部の突出量が大きくなければ、異形部L20Eは第2レンズL20の第1レンズL1との間の位置関係には影響を及ぼさない。
【0087】
ただし、図11において、第2レンズ係止部44の光軸A側の端部は、カット部L20Dよりも内側(光軸A側)に設けることが好ましい。これによって、より強固に第2レンズL20を鏡筒40に対して固定することができる。また、第2レンズ係止部44の光軸A側の端部がカット部L20Dよりも外側にあると、カット部L20Dと鏡筒40の内面との間の空隙から像側に固化前の接着剤が流れ出るため、第3レンズL3等に悪影響が及びおそれがあり、図11に示されたような第1接着剤層50の形態を実現することが難しくなる。
【0088】
なお、このような第2レンズの成形方法は前記のレンズユニット1における第2レンズL2についても同様に適用できるため、第2レンズにおけるカット部、異形部については、前記のレンズユニット1における第2レンズL2についても同様である。この場合において、上記のような第2レンズ係止部とカット部の関係についても、同様である。
【0089】
なお、上記の例においては、外周溝10D、40Dは周方向で全域に形成されるものとした。しかしながら、外周溝が周方向の全域で形成される必要はない。鏡筒も前記の第2レンズと同様に金型を用いた成形によって形成されるため、例えばこの成形が容易なように、この形態は適宜設定することができる。また、第1レンズ、第2レンズが鏡筒に対して固定される限りにおいて、第2レンズよりも像側にあるレンズの数や構成は適宜設定が可能である。この際、これらの各レンズのうち外周部と鏡筒とが直接接するもの(鏡筒に対する径方向の位置関係が直接固定されるもの)、直接接さないもの(鏡筒に対する径方向の位置関係が間接的に固定されるもの)の設定は、構成に応じて適宜設定される。これに応じて、隣接するレンズ間の径方向の位置関係を定めるための係合構造等は適宜設定される。
【0090】
また、上記の例では、図9(i)の気密性試験後に鏡筒10内が大気圧の状態で第2接着剤層31が形成させるが、この際に、第1レンズL1と第2レンズL2の間の空間に乾燥窒素等を導入してもよい。
【0091】
なお、図1図11において、第1接着剤層(第2封止部材)を第1レンズ第1下面L1Aと当接させ、この部分を封止してもよい。この場合においても、第1レンズL1と第2レンズL2の間は封止され、かつ第1レンズL1の装着(図7(f))を容易に行うことができる。この場合には、第1レンズL1と第2レンズL2の間の空間を構成する部材は、第1レンズL1、第2レンズL2、および第1接着剤層のみとなり、鏡筒は該空間を構成しない。したがって、吸湿性の高い材料で形成された鏡筒を使用した場合でも、第1レンズL1と第2レンズL2の間の空間に湿気が入り込みにくくなる。よって、第1レンズL1の像(Im)側の表面や第2レンズL2の物体(Ob)側の表面に結露が発生してしまい曇ってしまうことをさらに抑制できる。なお、この場合においても、図9(i)に示されたようOリング20による気密性の試験を、連通路10Eを介して同様に行うことができる。この際、この封止を、第1接着剤層(第2封止部材)自身ではなく、図1図11の第1接着剤層の上に他の部材を配置して封止を行ってもよい。
【0092】
(本形態の主な特徴)
本実施形態の特徴を簡単に纏めると次の通りである。
(1)このレンズユニット1は、光軸Aに沿った方向の物体(Ob)側に配された第1レンズL1と、これと光軸A方向の像(Im)側において隣接する第2レンズL2を含む複数のレンズ(L2~L6)と、これらのレンズを内部に収容した鏡筒10と、を備え、第1レンズL1と鏡筒10との間を封止するOリング(第1封止部材)20と、第2レンズL2と鏡筒10との間を封止する第1接着剤層(第2封止部材)30と、を具備し、鏡筒10内における第1レンズL1と第2レンズL2との間の空間と、鏡筒10の外部との間を連通させる連通路10Eが鏡筒10に形成され、連通路10Eを閉塞させる第2接着剤層(第3封止部材)31が連通路10E中に設けられる。
この構成においては、第1レンズL1と第2レンズL2の間の空間は、第2封止部材30によって第2レンズL2以降の鏡筒10内の空間と隔離できるため、第2レンズL2以降の鏡筒10内の空間の空気、あるいは、第2レンズL2以降の鏡筒10内の空間の空気および鏡筒10を保持するカメラモジュール内部の空間の空気の湿気が第1レンズL1と第2レンズL2の間の空間側に流れ込むことを防げる。このため、第1レンズL1の像(Im)側の表面や第2レンズL2の物体(Ob)側の表面に結露が発生してしまい曇ってしまうことを抑制できる。一方、このようにこの空間を第1封止部材20及び第2封止部材30によって封止する場合には、第1レンズL1と第2レンズL2との間の空間の空気が排気できず組立が困難になる場合があるが、連通路10Eを介して空気を流した後に連通路10Eを第3封止部材31を用いて封止することによって、容易にレンズユニット1を製造することができる。
【0093】
(2)鏡筒10には、光軸Aを中心とした径方向において第2レンズL2よりも外側に、像(Im)側から物体(Ob)側に向けて掘り下げられた形態の溝である外周溝10Dが形成され、連通路10Eは外周溝10Dと連通している。
この構成においては、連通口10Eが外周溝10Dと連通することによって、連通路10Eを介して空気を流すことが特に容易となり、レンズユニット1の製造や上記の空間の封止が特に容易となる。
【0094】
(3)連通路10Eの鏡筒10の内部側における連通路開口(開口部)10EAは、径方向の内側からみた場合の開口面積が、光軸A方向からみた開口面積よりも大きくなるように形成されている。
第2接着剤層31となる接着剤は外周溝10Dの深さ方向(光軸Aと平行な方向)に沿って付与されるところ、この構成においては、この接着剤の流れに沿った連通路10Eの開口部面積が小さくされるため、この際の接着剤の鏡筒内部への漏れが抑制される。
【0095】
(4)第2レンズL2は、鏡筒10における光軸Aと交差する側に屈曲した部分である第2レンズ係止部14によって物体(Ob)側で係止され、第1接着剤層30は、第2レンズ係止部14と第2レンズL2とを接合する接着剤で構成されている。
この構成においては、第2レンズ係止部14によって第2レンズL2は鏡筒10に対して固定され、かつ第1接着剤層30となる接着剤によって、第2レンズL2は鏡筒10に対してさらに強固に固定される。
【0096】
(5)第2レンズL2は、物体(Ob)側において、像を形成する光線が通過するレンズ面L2R1と、光軸Aを中心とした径方向外側に位置する第2レンズ上面(フランジ面)L2Aと、を具備し、第2レンズ上面L2Aはレンズ面L2R1よりも像(Im)側に位置し、第2レンズ係止部14が第2レンズ上面L2Aと当接する。
この構成においては、第2レンズL2は、物体(Ob)側において、光学的に機能するレンズ面L2R1と第2レンズ上面(フランジ面)L2Aを具備する。このうち、第2レンズ上面L2Aを第2レンズ係止部14と当接させることによって、第2レンズL2の光学特性を維持しつつ、第2レンズL2を鏡筒10に対して強固に固定することができる。
【0097】
(6)連通路10Eの鏡筒10の内部側における連通路開口(開口部)10EAは、第2レンズ係止部14よりも像(Im)側に形成されている。
この構成においては、連通路開口10EAが、第2レンズ係止部14よりも像(Im)側に位置するため、第2接着剤層31となる接着剤が連通路開口10EAから鏡筒10の内部側に漏れた場合でも、第2レンズL2のレンズ面L2R1側に流れる接着剤が、第2レンズ係止部14によって遮られる。すなわち、このような第2接着剤層31となる接着剤の漏れによる悪影響が抑制される。
【0098】
(7)鏡筒10は、物体(Ob)側から第1レンズL1が載置されて固定される第1載置部11を具備し、第1載置部11において、第1レンズL1と当接するように物体(Ob)側に突出した第1載置部凸部11Aが光軸Aの周りの周方向において分断して複数形成され、物体(Ob)側からみて、連通路10Eは第1載置部凸部11Aとは重複しないように鏡筒10に形成されている。
この構成においては、第1レンズL1の鏡筒10に対する光軸A方向の位置関係は第1載置部凸部11Aで定まる。これに対して、連通路10Eを第1載置部凸部11Aと重複させないことによって、第1レンズL1の鏡筒10に対する位置精度を高くすることができる。
【0099】
(8)第2レンズ係止部44はレンズ面L2R1よりも像(Im)側に位置し、第1接着剤層50は、第2レンズ係止部44を埋め込んで接着剤で構成され、連通路40Eの鏡筒40の内部側における開口である連通路開口(開口部)40EAはは、第1接着剤層50よりも物体(Ob)側に形成されている。
この構成においては、第2レンズ係止部44を像(Im)側に設けたことによって、第1接着剤層50は、第2レンズ係止部44を含んでその周囲を埋め込んだ形状とすることができる。これによって、第2レンズL20と鏡筒10との間をより強固に固定及び封止することができる。
【0100】
(9)鏡筒40は、物体(Ob)側から第1レンズL1が載置されて固定される第1載置部41を具備し、第1載置部41において、第1レンズL1と当接するように物体(Ob)側に突出した第1載置部凸部41Aが光軸Aの周りの周方向において分断して複数形成され、物体(Ob)側からみて、連通路40Eは第1載置部凸部40Aと重複するように鏡筒10に形成されている。
この構成においては、第1レンズL1の鏡筒40に対する光軸A方向の位置関係は第1載置部凸部41Aで定まる。これに対して、連通路40Eを第1載置部凸部41Aと重複させることによって、連通路40Eとその物体(Ob)側の第1載置部41との間の距離を大きくし、連通路40Eを設けた場合でも、鏡筒40におけるこの部分の強度を維持することができ、この強度を低下させずに第1接着剤層50を厚く形成することができる。
【0101】
(10)第2レンズL20の光軸A周りの外周において、周方向で局所的に光軸Aからの距離が小さくされたカット部L20Dが形成され、第2レンズ上面(フランジ面)L20Aにおける光軸Aを挟んでカット部L20Dと反対側において、局所的な凹凸で構成された異形部L20Eが形成されている。
この構成においては、カット部L20Dに対応するゲート部700Aを設けた第1金型700、第2金型701と、異形部に対応したガス抜き部702とを用いた樹脂成形によって、この第2レンズL20を容易かつ精密に製造することができる。
【0102】
(11)周方向においてカット部L20Dが形成された領域における第2レンズ係止部44の径方向内側の端部は、カット部L20Dよりも内側に位置する。この構成においては、カット部L20Dよりも第2レンズ係止部44の先端を光軸A側に設けることにより、第2レンズL20を鏡筒40に対してより強固に固定することができると共に、第1接着剤層50となる接着剤が第2レンズL20よりも像側に流れることが抑制される。
【0103】
(12)連通路10Eは、連通路10E中を流れる空気の流路に垂直な断面積が鏡筒10の内部側に向けて小さくなる形状とされている。
この場合には、連通路10Eの鏡筒10の内部側における開口である連通路開口10EAを接着剤を用いて封止することが特に容易となる。
(13)連通路10Eにおける光軸A側の内面(第2接着剤層内周面31Bに対応)において、鏡筒10の内部側に向けて断面積が小さくなるような段差が設けられている。
この場合には、この段差によって接着剤と連通路10Eの内面との間の接触面積を多くすることによって、特に連通路開口10EAの封止を確実に行うことができる。
【0104】
(14)鏡筒10は、第1載置部11よりも物体(Ob)側で第1レンズL1の光軸A周りの外周面である第1レンズ第1外周面L1Cを支持する第1レンズ外周支持部15を具備し、Oリング(第1封止部材)20は、第1レンズL1と第1レンズ外周支持部15との間に設けられ弾性材料で構成されたOリングである。
この場合においては、第1封止部材となるOリング20によって、第1レンズL1と鏡筒10との間の封止を特に確実に行うことができる。この際、上記の第1接着剤層20、連通路10E、第2接着剤層30を用いることによって、特にこのレンズユニット1を容易に製造することができる。
【0105】
本発明を、実施形態及びその変形例をもとに説明したが、この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせ等にいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0106】
1 レンズユニット
10、40 鏡筒
10A 第1収容部
10B 第2収容部
10B1 レンズ固定用リブ
10C 像側開口部
10D、40D 外周溝
10E、40E 連通路
10EA、40EA 連通路開口(開口部)
11、41 第1載置部
11A、41A 第1載置部凸部
12 第2載置部
13 第1レンズ係止部
14 第2レンズ係止部
15 第1レンズ外周支持部
20 Oリング(第1封止部材)
30、50 第1接着剤層(第2封止部材)
31、51 第2接着剤層(第3封止部材)
31A 板状部分
31B 第2接着剤層内周面
91 レンズホルダ
100 撮像素子
500 気密性試験機(真空ポンプ)
700 第1金型
700A ゲート
701 第2金型
702 ガス抜き部
A 光軸
Im 像(側)
L1 第1レンズ
L1A 第1レンズ第1下面
L1B 第1レンズ第2下面
L1C 第1レンズ第1外周面
L1D 第1レンズ第2外周面
L2、L20 第2レンズ
L2A、L20A 第2レンズ上面(フランジ面)
L2B、L20B 第2レンズ下面
L2C、L20C 第2レンズ外周面
L3 第3レンズ
L3A 第3レンズ上面
L3B 第3レンズ下面
L3C 第3レンズ外周面
L4 第4レンズ
L5 第5レンズ
L5A 第5レンズ上面
L5B 接合レンズ下面
L5C、L6A 段差部(係合構造)
L5D 第5レンズ外周面
L6 第6レンズ
L20D カット部
L20E 異形部
L40 第4レンズ体
L40A 第4レンズ体上面
L40B 第4レンズ体下面
L40C 第4レンズ体外周面
L50 接合レンズ
Ob 物体(側)
R1 第1表面
R2 第2表面
RA 径方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15