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特許7529427ブーム作業機用モーメントリミッタ装置、ブーム作業機用モーメントリミッタ装置を備えたブーム作業機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】ブーム作業機用モーメントリミッタ装置、ブーム作業機用モーメントリミッタ装置を備えたブーム作業機
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/90 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
B66C23/90 Q
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020071203
(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公開番号】P2021167239
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-03-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)販売日 :令和1年6月3日 販売場所:ユニック静岡販売株式会社 公開者 :古河ユニック株式会社 (2)販売日 :令和1年7月18日 販売場所:アイチサ-ビス株式会社 公開者 :古河ユニック株式会社 (3)販売日 :令和1年8月8日 販売場所:ジーエム建機リース株式会社 公開者 :古河ユニック株式会社 (4)販売日 :令和1年9月27日 販売場所:株式会社多摩オートサービス 公開者 :古河ユニック株式会社 (5)販売日 :令和2年3月10日 販売場所:古河ユニック株式会社架装センター 公開者 :古河ユニック株式会社 (6)販売日 :令和1年10月9日 販売場所:古河ロックドリル(株)吉井工場 公開者 :古河ユニック株式会社 (7)販売日 :令和1年11月5日 販売場所:株式会社ミツワ 公開者 :古河ユニック株式会社 (8)販売日 :令和1年9月27日 販売場所:古河ユニック株式会社札幌営業所 公開者 :古河ユニック株式会社 (9)販売日 :令和1年11月8日 販売場所:ユニック九州販売株式会社 公開者 :古河ユニック株式会社 (10)販売日 :令和1年12月25日 販売場所:ユニック東北販売株式会社 公開者 :古河ユニック株式会社 (11)販売日 :令和2年3月30日 販売場所:ユニック関東販売株式会社高崎営業所 公開者 :古河ユニック株式会社 (12)販売日 :令和1年4月19日 販売場所:松尾自動車工業株式会社 公開者 :古河ユニック株式会社 (13)販売日 :令和1年5月30日 販売場所:ユニック中四国販売株式会社 公開者 :古河ユニック株式会社 (14)販売日 :令和1年6月21日 販売場所:山本自動車工業株式会社 公開者 :古河ユニック株式会社 (15)販売日 :令和1年10月5日 販売場所:新日本建販株式会社福岡営業所 公開者 :古河ユニック株式会社 (16)販売日 :令和1年10月8日 販売場所:ユニック中四国販売株式会社高松営業所 公開者 :古河ユニック株式会社 (17)販売日 :令和1年11月15日 販売場所:ユニック九州販売株式会社大分営業所 公開者 :古河ユニック株式会社 (18)販売日 :令和1年11月25日 販売場所:株式会社テイセンテクノ 公開者 :古河ユニック株式会社
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (19)販売日 :令和1年12月24日 販売場所:古河ユニック株式会社関西支店 公開者 :古河ユニック株式会社 (20)販売日 :令和2年1月20日 販売場所:ユニック広島販売株式会社 公開者 :古河ユニック株式会社 (21)販売日 :令和1年8月1日 販売場所:ユニック中四国販売株式会社 公開者 :古河ユニック株式会社 (22)販売日 :令和2年3月19日 販売場所:ユニック関東販売株式会社 公開者 :古河ユニック株式会社 (23)販売日 :令和1年6月6日 販売場所:株式会社レント千葉管理センター 公開者 :古河ユニック株式会社 (24)販売日 :令和1年8月5日 販売場所:ユニック静岡販売株式会社浜松営業所 公開者 :古河ユニック株式会社 (25)販売日 :令和1年9月4日 販売場所:ユニック東北販売株式会社 公開者 :古河ユニック株式会社 (26)販売日 :令和1年10月16日 販売場所:ユニック静岡販売株式会社 公開者 :古河ユニック株式会社 (27)販売日 :令和2年1月16日 販売場所:ユニック中部販売株式会社 公開者 :古河ユニック株式会社 (28)販売日 :令和1年6月12日 販売場所:三瓶自動車工業株式会社 公開者 :古河ユニック株式会社 (29)販売日 :令和1年7月10日 販売場所:ユニック静岡販売株式会社浜松営業所 公開者 :古河ユニック株式会社 (30)販売日 :令和1年7月24日 販売場所:有限会社吉祥院自動車工業 公開者 :古河ユニック株式会社 (31)販売日 :令和1年8月19日 販売場所:古河ユニック株式会社関西支店 公開者 :古河ユニック株式会社 (32)販売日 :令和1年8月20日 販売場所:ユニック静岡販売株式会社 公開者 :古河ユニック株式会社 (33)販売日 :令和1年9月18日 販売場所:ユニック兵庫販売株式会社 公開者 :古河ユニック株式会社 (34)販売日 :令和1年11月8日 販売場所:ユニック広島販売株式会社 公開者 :古河ユニック株式会社 (35)販売日 :令和1年11月18日 販売場所:古河ユニック株式会社京都営業所 公開者 :古河ユニック株式会社 (36)販売日 :令和1年12月6日 販売場所:ユニック九州販売株式会社南九州営業所 公開者 :古河ユニック株式会社
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (37)販売日 :令和2年3月17日 販売場所:ユニック関東販売株式会社高崎営業所 公開者 :古河ユニック株式会社 (38)販売日 :令和1年6月20日 販売場所:ユニック中四国販売株式会社 公開者 :古河ユニック株式会社 (39)販売日 :令和1年6月27日 販売場所:山本自動車工業株式会社 公開者 :古河ユニック株式会社 (40)販売日 :令和1年7月4日 販売場所:有限会社谷口重機工業 公開者 :古河ユニック株式会社 (41)販売日 :令和1年7月19日 販売場所:株式会社全車輛 公開者 :古河ユニック株式会社 (42)販売日 :令和1年10月2日 販売場所:ユニック中四国販売株式会社高松営業所 公開者 :古河ユニック株式会社 (43)販売日 :令和1年10月18日 販売場所:ユニック東北販売株式会社 公開者 :古河ユニック株式会社 (44)販売日 :令和1年12月18日 販売場所:古河ユニック株式会社関西支店 公開者 :古河ユニック株式会社 (45)販売日 :令和2年1月27日 販売場所:ユニック広島販売株式会社 公開者 :古河ユニック株式会社 (46)販売日 :令和1年5月31日 販売場所:アイチサ-ビス株式会社 公開者 :古河ユニック株式会社 (47)販売日 :令和1年10月23日 販売場所:新日本建販株式会社仙台営業所 公開者 :古河ユニック株式会社 (48)販売日 :令和2年3月12日 販売場所:古河ユニック株式会社長野営業所 公開者 :古河ユニック株式会社 (49)販売日 :令和1年6月18日 販売場所:株式会社新生エンジニアリング 公開者 :古河ユニック株式会社 (50)販売日 :令和1年6月24日 販売場所:株式会社電力機材サービスつくば事務所 公開者 :古河ユニック株式会社 (51)販売日 :令和1年6月27日 販売場所:ユニック中四国販売株式会社 公開者 :古河ユニック株式会社 (52)販売日 :令和1年8月6日 販売場所:愛知陸送株式会社 公開者 :古河ユニック株式会社 (53)販売日 :令和1年9月5日 販売場所:ユニック中部販売株式会社 公開者 :古河ユニック株式会社
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (54)販売日 :令和1年12月4日 販売場所:ユニック関東販売株式会社 公開者 :古河ユニック株式会社 (55)販売日 :令和1年12月24日 販売場所:古河ユニック株式会社金沢営業所 公開者 :古河ユニック株式会社 (56)販売日 :令和1年10月22日 販売場所:新日本建販株式会社福岡営業所 公開者 :古河ユニック株式会社 (57)販売日 :令和2年2月25日 販売場所:古河ユニック株式会社札幌営業所 公開者 :古河ユニック株式会社 (58)販売日 :令和2年3月3日 販売場所:ユニック中四国販売株式会社高松営業所 公開者 :古河ユニック株式会社 (59)販売日 :令和1年6月21日 販売場所:株式会社福岡共栄モータース 公開者 :古河ユニック株式会社 (60)販売日 :令和1年9月25日 販売場所:ユニック静岡販売株式会社 公開者 :古河ユニック株式会社 (61)販売日 :令和1年11月20日 販売場所:古河ユニック株式会社京都営業所 公開者 :古河ユニック株式会社 (62)販売日 :令和1年12月20日 販売場所:ユニック中四国販売株式会社高松営業所 公開者 :古河ユニック株式会社 (63)販売日 :令和1年10月28日 販売場所:新日本建販株式会社静岡リースセンター 公開者 :古河ユニック株式会社 (64)販売日 :令和2年1月7日 販売場所:ユニック岐阜販売株式会社 公開者 :古河ユニック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506002823
【氏名又は名称】古河ユニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小野 正人
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-112214(JP,A)
【文献】特開2016-185864(JP,A)
【文献】特開平09-086872(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02298689(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の周囲へ自在に展開、且つ張り出し可能な複数のアウトリガと、前記機体の上部に設けられ、且つ要求値に応じた旋回方向及び旋回速度で垂直な軸回りへ旋回可能なブームと、を備えたブーム作業機に適用可能なブーム作業機用モーメントリミッタ装置であって、
前記複数のアウトリガの張出状態を検出するアウトリガ張出状態検出部と、
前記ブームの旋回位置を検出するブーム旋回位置検出部と、
前記ブーム作業機の予め設定された基準位置の座標情報が記憶された座標情報記憶部と、
前記基準位置の座標と、前記アウトリガ張出状態検出部で検出した前記張出状態と、に基づき、前記複数のアウトリガが接地している状態において複数のアウトリガがそれぞれ有する複数の接地部材の座標である複数の接地座標を、前記基準位置の座標を原点とした相対座標として演算する相対座標演算部と、
前記相対座標演算部が演算した接地座標と前記ブームの旋回中心とを通る仮想直線を前記複数のアウトリガ毎に性能境界線として設定する性能境界線設定部と、
前記性能境界線設定部が設定した性能境界線を前記ブーム作業機の作業姿勢に対応する定格荷重性能が高い側へシフトさせた仮想直線を、対処制御線として設定する対処制御線設定部と、
前記ブームの旋回方向及び旋回速度に対する要求値と、前記ブーム旋回位置検出部が検出した旋回位置と、前記性能境界線設定部が設定した性能境界線と、前記対処制御線設定部が設定した対処制御線と、に応じて、前記ブームの旋回速度を制御する対処処理制御部と、を備え、
前記対処処理制御部は、前記対処制御線と前記性能境界線との間で前記ブームが旋回していると判断すると、前記要求値のみから決まる旋回速度である要求旋回速度を一定の割合で減速した旋回速度で前記ブームを旋回させることを特徴とするブーム作業機用モーメントリミッタ装置。
【請求項2】
前記対処処理制御部は、前記対処制御線と前記性能境界線との間において対処制御線に近い側に設定した領域である減速領域で前記ブームが旋回していると判断すると、前記要求旋回速度を一定の割合で減速した旋回速度で前記ブームを旋回させることを特徴とする請求項1に記載したブーム作業機用モーメントリミッタ装置。
【請求項3】
機体の周囲へ自在に展開、且つ張り出し可能な複数のアウトリガと、前記機体の上部に設けられ、且つ要求値に応じた旋回方向及び旋回速度で垂直な軸回りへ旋回可能なブームと、を備えたブーム作業機に適用可能なブーム作業機用モーメントリミッタ装置であって、
前記複数のアウトリガの張出状態を検出するアウトリガ張出状態検出部と、
前記ブームの旋回位置を検出するブーム旋回位置検出部と、
前記ブーム作業機の予め設定された基準位置の座標情報が記憶された座標情報記憶部と、
前記基準位置の座標と、前記アウトリガ張出状態検出部で検出した前記張出状態と、に基づき、前記複数のアウトリガが接地している状態において複数のアウトリガがそれぞれ有する複数の接地部材の座標である複数の接地座標を、前記基準位置の座標を原点とした相対座標として演算する相対座標演算部と、
前記相対座標演算部が演算した接地座標と前記ブームの旋回中心とを通る仮想直線を前記複数のアウトリガ毎に性能境界線として設定する性能境界線設定部と、
前記性能境界線設定部が設定した性能境界線を前記ブーム作業機の作業姿勢に対応する定格荷重性能が高い側へシフトさせた仮想直線を、対処制御線として設定する対処制御線設定部と、
前記ブームの旋回方向及び旋回速度に対する要求値と、前記ブーム旋回位置検出部が検出した旋回位置と、前記性能境界線設定部が設定した性能境界線と、前記対処制御線設定部が設定した対処制御線と、に応じて、前記ブームの旋回速度を制御する対処処理制御部と、を備え、
前記対処処理制御部は、前記対処制御線と前記性能境界線との間において対処制御線に近い側に設定した領域である減速領域で前記ブームが旋回していると判断すると、前記要求値のみから決まる旋回速度である要求旋回速度よりも低い旋回速度で前記ブームを旋回させることを特徴とするブーム作業機用モーメントリミッタ装置。
【請求項4】
前記対処処理制御部は、前記減速領域で前記ブームの前記要求値に応じた旋回方向が前記性能境界線から離れる方向であると判断すると、前記要求旋回速度で前記ブームを旋回させることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載したブーム作業機用モーメントリミッタ装置。
【請求項5】
前記対処処理制御部は、前記減速領域よりも前記性能境界線に近い側に設定した領域である停止領域で前記ブームが旋回していると判断すると、前記ブームの旋回を停止させることを特徴とする請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載したブーム作業機用モーメントリミッタ装置。
【請求項6】
前記対処処理制御部は、前記停止領域で前記ブームの前記要求値に応じた旋回方向が前記性能境界線から離れる方向であると判断すると、前記停止させているブームを前記要求旋回速度で旋回させることを特徴とする請求項5に記載したブーム作業機用モーメントリミッタ装置。
【請求項7】
前記ブームの旋回速度を検出するブーム旋回速度検出部を備え、
前記対処処理制御部は、前記ブーム旋回速度検出部が検出した旋回速度が予め設定した速度閾値未満である場合には、前記要求旋回速度で前記ブームを旋回させることを特徴と
する請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載したブーム作業機用モーメントリミッタ装置。
【請求項8】
機体の周囲へ自在に展開、且つ張り出し可能な複数のアウトリガと、前記機体の上部に設けられ、且つ要求値に応じた旋回方向及び旋回速度で垂直な軸回りへ旋回可能なブームと、を備えたブーム作業機に適用可能なブーム作業機用モーメントリミッタ装置であって、
前記複数のアウトリガの張出状態を検出するアウトリガ張出状態検出部と、
前記ブームの旋回位置を検出するブーム旋回位置検出部と、
前記ブーム作業機の予め設定された基準位置の座標情報が記憶された座標情報記憶部と、
前記基準位置の座標と、前記アウトリガ張出状態検出部で検出した前記張出状態と、に基づき、前記複数のアウトリガが接地している状態において複数のアウトリガがそれぞれ有する複数の接地部材の座標である複数の接地座標を、前記基準位置の座標を原点とした相対座標として演算する相対座標演算部と、
前記相対座標演算部が演算した接地座標と前記ブームの旋回中心とを通る仮想直線を前記複数のアウトリガ毎に性能境界線として設定する性能境界線設定部と、
前記性能境界線設定部が設定した性能境界線を前記ブーム作業機の作業姿勢に対応する定格荷重性能が高い側へシフトさせた仮想直線を、対処制御線として設定する対処制御線設定部と、
前記ブームの旋回方向及び旋回速度に対する要求値と、前記ブーム旋回位置検出部が検出した旋回位置と、前記性能境界線設定部が設定した性能境界線と、前記対処制御線設定部が設定した対処制御線と、に応じて、前記ブームの旋回速度を制御する対処処理制御部と、
前記ブームの旋回速度を検出するブーム旋回速度検出部と、を備え、
前記対処処理制御部は、前記対処制御線と前記性能境界線との間で前記ブームが旋回していると判断すると、前記ブーム旋回速度検出部が検出した旋回速度が予め設定した速度閾値以上である場合には、前記要求値のみから決まる旋回速度である要求旋回速度よりも低い旋回速度で前記ブームを旋回させ、前記ブーム旋回速度検出部が検出した旋回速度が予め設定した速度閾値未満である場合には、前記要求旋回速度で前記ブームを旋回させることを特徴とするブーム作業機用モーメントリミッタ装置。
【請求項9】
機体の周囲へ自在に展開、且つ張り出し可能な複数のアウトリガと、
前記機体の上部に設けられ、且つ垂直な軸回りへ旋回可能なブームと、
請求項1から請求項8のうちいずれか1項に記載したブーム作業機用モーメントリミッタ装置と、を備えることを特徴とするブーム作業機。
【請求項10】
機体の周囲へ自在に展開、且つ張り出し可能な複数のアウトリガと、前記機体の上部に設けられ、且つ要求値に応じた旋回方向及び旋回速度で垂直な軸回りへ旋回可能なブームと、ブーム作業機用モーメントリミッタ装置と、を備えたブーム作業機であって、
前記モーメントリミッタ装置は、
前記複数のアウトリガの張出状態を検出するアウトリガ張出状態検出部と、
前記ブームの旋回位置を検出するブーム旋回位置検出部と、
前記ブーム作業機の予め設定された基準位置の座標情報が記憶された座標情報記憶部と、
前記基準位置の座標と、前記アウトリガ張出状態検出部で検出した前記張出状態と、に基づき、前記複数のアウトリガが接地している状態において複数のアウトリガがそれぞれ有する複数の接地部材の座標である複数の接地座標を、前記基準位置の座標を原点とした相対座標として演算する相対座標演算部と、
前記相対座標演算部が演算した接地座標と前記ブームの旋回中心とを通る仮想直線を前記複数のアウトリガ毎に性能境界線として設定する性能境界線設定部と、
前記性能境界線設定部が設定した性能境界線を前記ブーム作業機の作業姿勢に対応する定格荷重性能が高い側へシフトさせた仮想直線を、対処制御線として設定する対処制御線設定部と、
前記ブームの旋回方向及び旋回速度に対する要求値と、前記ブーム旋回位置検出部が検出した旋回位置と、前記性能境界線設定部が設定した性能境界線と、前記対処制御線設定部が設定した対処制御線と、に応じて、前記ブームの旋回速度を制御する対処処理制御部と、を備え、
前記対処処理制御部は、前記対処制御線と前記性能境界線との間で前記ブームが旋回していると判断すると、前記要求値のみから決まる旋回速度である要求旋回速度よりも低い旋回速度で前記ブームを旋回させることを特徴とするブーム作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン等の作業機が備えるブームの旋回速度を制御するブーム作業機用モーメントリミッタ装置と、ブーム作業機用モーメントリミッタ装置を備えたブーム作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機が備えるブームの旋回速度を制御する技術として、例えば、特許文献1に開示されている技術がある。
特許文献1に開示されている技術は、複数のアウトリガが接地している座標とブームの旋回中心とを通る仮想直線を、定格荷重切替ラインとして設定する。そして、ブームが旋回して、定格荷重性能が高い領域から定格荷重性能が低い領域へ移動する場合に、定格荷重切替ラインでブームの旋回を停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-094180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術のように、旋回しているブームを定格荷重切替ラインで停止させると、旋回中のブームを急停止させることとなるため、ブームに吊り上げている吊荷が大きく揺れるという問題点がある。
本発明は、上記問題点を鑑み、旋回中のブームを停止させた際に発生する吊荷の揺れを低減させることが可能な、ブーム作業機用モーメントリミッタ装置と、ブーム作業機用モーメントリミッタ装置を備えたブーム作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態に係るブーム作業機用モーメントリミッタ装置は、ブーム作業機に適用可能なブーム作業機用モーメントリミッタ装置である。ブーム作業機は、機体の周囲へ自在に展開、且つ張り出し可能な複数のアウトリガと、機体の上部に設けられ、且つ要求値に応じた旋回方向及び旋回速度で垂直な軸回りへ旋回可能なブームを備える。また、ブーム作業機用モーメントリミッタ装置は、アウトリガ張出状態検出部と、ブーム旋回位置検出部と、座標情報記憶部と、相対座標演算部と、性能境界線設定部と、対処制御線設定部と、対処処理制御部を備える。アウトリガ張出状態検出部は、複数のアウトリガの張出状態を検出する。ブーム旋回位置検出部は、ブームの旋回位置を検出する。座標情報記憶部は、ブーム作業機の予め設定された基準位置の座標情報が記憶されている。相対座標演算部は、複数のアウトリガが接地している状態において複数のアウトリガがそれぞれ有する複数の接地部材の座標である複数の接地座標を、基準位置の座標を原点とした相対座標として演算する。なお、接地座標は、基準位置の座標と、アウトリガ張出状態検出部で検出した張出状態に基づいて演算する。性能境界線設定部は、相対座標演算部が演算した接地座標とブームの旋回中心とを通る仮想直線を、複数のアウトリガ毎に性能境界線として設定する。対処制御線設定部は、性能境界線設定部が設定した性能境界線をブーム作業機の作業姿勢に対応する定格荷重性能が高い側へシフトさせた仮想直線を、対処制御線として設定する。対処処理制御部は、ブームの旋回方向及び旋回速度に対する要求値と、ブーム旋回位置検出部が検出した旋回位置と、性能境界線設定部が設定した性能境界線と、対処制御線設定部が設定した対処制御線に応じて、ブームの旋回速度を制御する。これに加え、対処処理制御部は、対処制御線と性能境界線との間でブームが旋回していると判断すると、要求値のみから決まる旋回速度である要求旋回速度よりも低い旋回速度でブームを旋回させる。
【0006】
本発明の一実施形態に係るブーム作業機は、機体の周囲へ自在に展開、且つ張り出し可能な複数のアウトリガと、機体の上部に設けられ、且つ垂直な軸回りへ旋回可能なブームと、ブーム作業機用モーメントリミッタ装置とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、旋回中のブームを停止させた際に発生する吊荷の揺れを低減させることが可能な、ブーム作業機用モーメントリミッタ装置と、ブーム作業機用モーメントリミッタ装置を備えたブーム作業機を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ブーム作業機用モーメントリミッタ装置を備えるクレーンの側面図である。
図2】性能境界線と対処制御線を示したクレーンの平面図である。
図3】アウトリガの側面図である。
図4】ブーム作業機用モーメントリミッタ装置の構成を示すブロック図である。
図5】機体から前後方向側に設定された定格荷重テーブル判定ラインを用いた定格荷重性能を判定する方法の説明図である。
図6】機体から左右方向側に設定された定格荷重テーブル判定ラインを用いた定格荷重性能を判定する方法の説明図である。
図7】クレーンの動作を説明する図である。
図8】ブーム作業機用モーメントリミッタ装置を備えたクレーンの動作と、ブーム作業機用モーメントリミッタ装置が行う動作の一例を示すフローチャートである。
図9】信号出力処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。
【0010】
(第1実施形態)
(構成)
第1実施形態に係るブーム作業機用モーメントリミッタ装置は、例えば、クレーン(ブーム作業機)に適用可能である。
【0011】
<クレーン>
図1から図3に示すように、クレーン1(クローラクレーン)は、4基のアウトリガ7A~7Dと、走行体3と、コラム4と、ブーム5と、演算制御部100を備える。
【0012】
<アウトリガ>
アウトリガ7は、クレーン1を用いる作業(クレーン作業)の安定を確保するための構成である。
4基のアウトリガ7A~7Dは、クレーン1のフレーム2に対し、図2に示すように、前端部の車幅方向左側及び右側に設けられた一対のアウトリガ7A,7Bと、後端部の車幅方向左側及び右側に設けられた一対のアウトリガ7C,7Dで構成されている。
【0013】
また、アウトリガ7A~7Dは、図3に示すように、ブラケット11と、アーム12と、アウトリガシリンダ13と、アウターボックス14と、インナーボックス15と、アウトリガフロート16(接地部材)を備えている。
【0014】
ブラケット11は、フレーム2に対し、アウトリガ回転軸10を介して水平方向へ回転自在に支持されている。
アウトリガ回転軸10の軸上には、アウトリガ展開角検出器30が取り付けられている。
アウトリガ展開角検出器30は、アウトリガ(ブラケット11)の水平方向への展開角度を検出する。なお、アウトリガ展開角検出器30は、例えば、ポテンショメータやエンコーダを用いて形成されている。
【0015】
アーム12は、ブラケット11に対し、アーム起伏軸17を介して起伏自在に支持されている。
アーム12の先端部には、最大張出固定孔19と、最小張出固定孔20と、格納固定孔21が設けられている。
最大張出固定孔19は、アウターボックス14を、アウトリガの張出距離Lfを予め設定した最大距離を含む長めの距離に設定可能な角度に固定するための孔である。最小張出固定孔20は、アウトリガの張出距離Lfを予め設定した最小距離を含む短めの距離に設定可能な角度に固定するための孔である。格納固定孔21は、アウターボックス14を格納位置に固定するための孔である。
【0016】
また、アーム12の先端側には、アーム角検出器32と、アウターボックス角検出器33が取り付けられている。
アーム角検出器32は、例えば、ポテンショメータやエンコーダを用いて形成されており、アーム12の角度を検出する。
アウターボックス角検出器33は、例えば、リミットスイッチや近接スイッチを用いて形成されており、アウターボックス14の最大張出固定孔19に角度固定ピン22が挿入されたことと、最小張出固定孔20に角度固定ピン22が挿入されたことを検出する。
ここで、最大張出固定孔19に角度固定ピン22が挿入されたときアウターボックス14の角度と、最小張出固定孔20に角度固定ピン22が挿入されたときのアウターボックス14の角度は既知である。このため、角度固定ピン22が最大張出固定孔19又は最小張出固定孔20に挿入されているかを検出することで、アウターボックス14の角度を特定することが可能である。
【0017】
アウトリガシリンダ13は、アーム12を起伏させるシリンダであり、ブラケット11とアーム12との間に設けられている。
アウトリガシリンダ13の基端部には、アウトリガ接地検出器31が取り付けられている。
アウトリガ接地検出器31は、例えば、リミットスイッチ、近接スイッチ、ロードセルを用いて形成されており、アウトリガフロート16が接地したことを検出する。
【0018】
アウターボックス14は、アーム12に対し、アウターボックス起伏軸18を介して起伏自在に支持されている。
アウターボックス14の基端部には、角度固定孔(図示略)が設けられている。そして、角度固定孔を、最大張出固定孔19、最小張出固定孔20、又は格納固定孔21と同軸に重ね合わせて角度固定ピン22を挿入することにより、アーム12に対するアウターボックス14の角度を、各固定孔に応じた角度に固定することが可能である。
【0019】
アウターボックス14の先端部には、伸縮固定孔26が設けられている。
また、アウターボックス14には、インナーボックス長検出器34が取り付けられている。
インナーボックス長検出器34は、例えば、リミットスイッチ、近接スイッチ、ポテンショメータを用いて形成されており、インナーボックス15が伸長した長さを検出する。
【0020】
インナーボックス15は、アウターボックス14に対して、摺動自在に挿入されている。
また、インナーボックス15には、最大固定孔23と、最小固定孔24と、複数の中間固定孔27が設けられている。最大固定孔23は、インナーボックス15の基端側に設けられている。最小固定孔24は、インナーボックス15の先端側に設けられている。中間固定孔27は、インナーボックス15の最大固定孔23と最小固定孔24との中間位置に設けられている。なお、図3では、複数の中間固定孔27のうち、一つのみを図示している。
【0021】
アウターボックス14の伸縮固定孔26に、最大固定孔23を同軸に重ね合わせて長さ固定ピン25を挿入すると、アウターボックス14の固定角度との組み合わせから、アウトリガの張出距離Lfが最長となる。アウターボックス14の伸縮固定孔26に、中間固定孔27を同軸に重ね合わせて長さ固定ピン25を挿入すると、アウターボックス14の固定角度との組み合わせから、アウトリガの張出距離Lfが中間長(複数通り)となる。アウターボックス14の伸縮固定孔26に、最小固定孔24を同軸に重ね合わせて長さ固定ピン25を挿入すると、アウターボックス14の固定角度との組み合わせから、アウトリガの張出距離Lfが最短となる。
アウトリガフロート16は、インナーボックス15の先端へ、揺動自在に連結されている。
以上により、複数のアウトリガ7は、クレーン1の機体の周囲へ自在に展開、且つ張り出し可能である。
【0022】
<走行体>
走行体3は、フレーム2の下部に配置されており、クローラで走行する。
【0023】
<コラム>
コラム4は、フレーム2(機体)の上部に設けられており、オペレータ等の要求値に応じた旋回方向及び旋回速度で垂直な軸回りへ旋回可能である。
フレーム2とコラム4との間には、ブーム旋回角検出部43と、ブーム旋回速度検出部44が設けられている。
ブーム旋回角検出部43は、例えば、ポテンショメータやエンコーダを用いて形成されており、ブーム5の旋回角度を検出する。
ブーム旋回速度検出部44は、例えば、ポテンショメータやエンコーダを用いて形成されており、ブーム5の旋回速度を検出する。
なお、ブーム旋回角検出部43の構成は、ブーム5の旋回速度を検出する機能を備えた構成としてもよい。同様に、ブーム旋回速度検出部44の構成は、ブーム5の旋回角度を検出する機能を備えた構成としてもよい。すなわち、ブーム5の旋回角度とブーム5の旋回速度とを、一つのセンサによって検出する構成としてもよい。
【0024】
<ブーム>
ブーム5は、伸縮可能であり、コラム4に対し、起伏シリンダ6の伸縮動作に応じて起伏自在に取り付けられている。
また、ブーム5には、ブーム長検出器40と、ブーム角検出器41が設けられている。
ブーム長検出器40は、例えば、リミットスイッチ、近接スイッチ、ポテンショメータを用いて形成されており、ブーム5の長さを検出する。
ブーム角検出器41は、例えば、ポテンショメータやエンコーダを用いて形成されており、ブーム5の起伏角度を検出する。
起伏シリンダ6には、荷重検出器42が設けられている。
荷重検出器42は、内圧差で吊荷の実荷重を検出する。なお、荷重検出器42の構成は、内圧差で実荷重を検出する構成に限定するものではなく、例えば、ロードセルを用いた構成等、他の構成を用いることも可能である。
【0025】
<演算制御部>
演算制御部100は、クレーン1の適所に配置されている。
実施形態では、一例として、図1に示すように、演算制御部100を、フレーム2の内部に配置した場合について説明する。
図4に示すように、演算制御部100には、アウトリガ展開角検出器30と、アウトリガ接地検出器31と、アーム角検出器32と、アウターボックス角検出器33と、インナーボックス長検出器34が接続されている。これに加え、演算制御部100には、ブーム長検出器40と、ブーム角検出器41と、荷重検出器42と、ブーム旋回角検出部43と、ブーム旋回速度検出部44が接続されている。さらに、演算制御部100には、動作速度制御部201と、警報出力部202が接続されている。
【0026】
そして、演算制御部100には、接続された各種の検出器から信号が入力される。また、演算制御部100は、各種の検出器からの入力された信号を用いて、クレーン1の状態が対処を要する状態(要対処状態)であるか否かを判定する。そして、クレーン1の状態が要対処状態であると判定したときに、動作速度制御部201と警報出力部202に信号を出力する。
演算制御部100は、図4に示すように、定格荷重テーブル記憶部101と、座標情報記憶部102と、相対座標演算部103と、性能境界線設定部104を備えている。これに加え、演算制御部100は、判定ライン情報記憶部105と、対処制御線設定部106と、ブーム状態判定部107と、対処処理制御部200を備えている。
【0027】
定格荷重テーブル記憶部101は、定格荷重性能が異なる複数の定格荷重テーブルが、予め記憶されている。定格荷重テーブルは、複数の定格荷重値が登録されたテーブルである。複数の定格荷重値は、クレーン1が実施する複数の作業姿勢にそれぞれ対応する。
ここで、定格荷重テーブルは、最大定格荷重性能、中間定格荷重性能、最小定格荷重性能の各性能に対応するテーブルを含む。さらに、複数の定格荷重テーブルは、クレーン1が実施可能な複数の作業半径にそれぞれ対応した定格荷重値が登録されたテーブルである。
【0028】
また、各性能の違いは、例えば、同じ作業半径であっても、最大定格荷重性能、中間定格荷重性能、最小定格荷重性能の順に、定格荷重性能が劣るように設定されている。この場合、例えば、最大定格荷重性能では定格荷重値を3[t]、中間定格荷重性能では定格荷重値を2[t]、最小定格荷重性能では定格荷重値を1[t]と設定する。
なお、クレーン1の作業半径は、ブーム長検出器40が検出したブーム5の長さと、ブーム角検出器41が検出したブーム5の起伏角度に応じて算出する。
【0029】
座標情報記憶部102には、クレーン1に予め設定された基準位置の座標情報が記憶されている。なお、基準位置とは、例えば、図5に示すように、ブーム5の旋回中心であるブーム旋回中心SCである。
相対座標演算部103は、複数の接地座標を、基準位置の座標を原点とした相対座標として演算する。
【0030】
接地座標は、複数のアウトリガ7が接地している状態における、複数のアウトリガフロート16の中心座標である。また、接地座標の演算は、基準位置の座標と、アウトリガ展開角検出器30、アーム角検出器32、アウターボックス角検出器33、インナーボックス長検出器34で検出した、アウトリガ7の張出状態に基づいて行う。
具体的には、各アウトリガ7に対応するアウトリガ展開角検出器30、アーム角検出器32、アウターボックス角検出器33、インナーボックス長検出器34から入力された信号を参照する。そして、座標情報記憶部102に記憶されている基準位置(ブーム旋回中心SC)を原点としたアウトリガフロート16の中心座標(相対座標)を算出することで、接地座標を演算する。
【0031】
性能境界線設定部104は、相対座標演算部103が演算した接地座標とブーム5の旋回中心(ブーム旋回中心SC)とを通る仮想直線を、複数のアウトリガ7(7A~7D)毎に、性能境界線Lとして設定する。
具体的には、例えば、図5及び図6に示すように、ブーム旋回中心SCと四つのアウトリガフロート16の中心座標とを通る四本の仮想直線を、それぞれ、性能境界線La~Ldとして設定する。
【0032】
性能境界線Lを設定する際には、例えば、図5及び図6で破線によって示すように、ブーム旋回中心SCと、各アウトリガフロート16の中心座標(現在の接地位置に対応する中心座標)とを通る仮想直線を設定する。
なお、図5及び図6では、各アウトリガフロート16の中心座標を、白丸及び黒丸によって示す。また、図5及び図6では、アウトリガの張出距離Lfが最長となる場合における、水平方向の各展開角度における性能境界線La~Ldを、破線で示す。
【0033】
また、以降の説明では、性能境界線La及び性能境界線Lbで挟まれた機体前方側の領域を前方仮想エリア、性能境界線Lb及び性能境界線Lcで挟まれた機体右側方側の領域を右仮想エリアと記載する。同様に、性能境界線Lc及び性能境界線Ldで挟まれた機体後方側の領域を後方仮想エリア、性能境界線Ld及び性能境界線Laで挟まれた機体左側方側の領域を左仮想エリアと記載する。さらに、前方仮想エリア、右仮想エリア、後方仮想エリア及び左仮想エリアを区別する必要が無い場合には、単に「仮想エリア」と記載する。
判定ライン情報記憶部105には、定格荷重テーブル判定ラインが記憶されている。
定格荷重テーブル判定ラインは、クレーン1が最大定格荷重性能を発揮するために、アウトリガフロート16が超えなければならない張出距離を規定する仮想ラインである。
【0034】
ここで、図5及び図6において一点鎖線で示すように、クレーン1の機体の前方、右側方、後方及び左側方には、定格荷重テーブル判定ラインLwF、LwR、LwB及びLwLが設定されている。定格荷重テーブル判定ラインLwF、LwR、LwB及びLwLは、クレーン1の安定度に基づき、クレーン1の前方、右側方、後方、左側方に対して、それぞれ、所定値として設定されている。また、定格荷重テーブル判定ラインLwF、LwR、LwB及びLwLは、4本の仮想直線によって設定されており、クレーン1の機体部分を囲う四角を形成する。
具体的に、機体の前方側に設定されている定格荷重テーブル判定ラインLwFと、機体の後方側に設定されている定格荷重テーブル判定ラインLwBは、機体の左右方向に沿った直線によって構成されている。
【0035】
定格荷重テーブル判定ラインLwFは、前端側に配置した2基のアウトリガ7A及びアウトリガ7Bが備えるアウトリガフロート16の中心座標の位置が、最大定格荷重性能を発揮可能な位置となるか否かを分ける境界線である。定格荷重テーブル判定ラインLwBは、後端側に配置した2基のアウトリガ7C及びアウトリガ7Dが備えるアウトリガフロート16の中心座標の位置が、最大定格荷重性能を発揮可能な位置となるか否かを分ける境界線である。
すなわち、定格荷重テーブル判定ラインLwFは、ブーム5の先端が前方仮想エリア側へ向いているときに、クレーン1が最大吊上性能を発揮するために最低限越えなければならない、必要十分な張出距離を規定した仮想ラインである。また、定格荷重テーブル判定ラインLwBは、ブーム5の先端が後方仮想エリア側へ向いているときに、クレーン1が最大吊上性能を発揮するために最低限越えなければならない、必要十分な張出距離を規定した仮想ラインである。
【0036】
第1実施形態では、定格荷重テーブル判定ラインLwF及び定格荷重テーブル判定ラインLwBを、最大定格荷重性能を発揮可能な最短の張出距離の位置に設定する。そして、アウトリガフロート16の中心座標が、定格荷重テーブル判定ラインLwF及び定格荷重テーブル判定ラインLwBと重なっているときは、最大定格荷重性能を発揮可能と判定される。これに加え、アウトリガフロート16の中心座標が、定格荷重テーブル判定ラインLwF及び定格荷重テーブル判定ラインLwBよりも外側にあるときは、最大定格荷重性能を発揮可能と判定される。
【0037】
すなわち、図5に示すように、アウトリガフロート16の中心座標が、図5において黒丸で示す位置にあるときは、中心座標が定格荷重テーブル判定ラインLwF及びLwBと重なる、又は外側に位置しており、最大定格荷重性能を発揮可能な位置となる。一方、アウトリガフロート16の中心座標が、図5において白丸で示す位置にあるときは、中心座標が定格荷重テーブル判定ラインLwF及びLwBの内側に位置しており、最大定格荷重性能を発揮させてはいけない位置となる。
また、図5及び図6において一点鎖線で示すように、機体の右側方側に設定されている定格荷重テーブル判定ラインLwRと、機体の左側方側に設定されている定格荷重テーブル判定ラインLwLは、機体の前後方向に沿った直線によって構成されている。
【0038】
定格荷重テーブル判定ラインLwRは、右側方側に配置した2基のアウトリガ7B及びアウトリガ7Cが備えるアウトリガフロート16の中心座標の位置が、最大定格荷重性能を発揮可能な位置となるか否かを分ける境界線である。定格荷重テーブル判定ラインLwLは、左側方側に配置した2基のアウトリガ7A及びアウトリガ7Dが備えるアウトリガフロート16の中心座標の位置が、最大定格荷重性能を発揮可能な位置となるか否かを分ける境界線である。
すなわち、定格荷重テーブル判定ラインLwRは、ブーム5の先端が右仮想エリア側に向いているときに、クレーン1が最大吊上性能を発揮するために最低限越えなければならない、必要十分な張出距離を規定した仮想ラインである。また、定格荷重テーブル判定ラインLwLは、ブーム5の先端が左仮想エリア側に向いているときに、クレーン1が最大吊上性能を発揮するために最低限越えなければならない、必要十分な張出距離を規定した仮想ラインである。
【0039】
第1実施形態では、定格荷重テーブル判定ラインLwRと、定格荷重テーブル判定ラインLwLを、最大定格荷重性能を発揮可能な最短距離の位置に設定する。したがって、アウトリガフロート16の中心座標が、定格荷重テーブル判定ラインLwR及び定格荷重テーブル判定ラインLwLと重なっているときは、最大定格荷重性能を発揮可能と判定される。これに加え、アウトリガフロート16の中心座標が、定格荷重テーブル判定ラインLwR及び定格荷重テーブル判定ラインLwLよりも外側にあるときは、最大定格荷重性能を発揮可能と判定される。
【0040】
すなわち、図6に示すように、アウトリガフロート16の中心座標が、図6において黒丸で示す位置にあるときは、中心座標が定格荷重テーブル判定ラインLwR及びLwLと重なる、又は外側に位置しており、最大定格荷重性能を発揮可能な位置となる。一方、アウトリガフロート16の中心座標が、図6において白丸で示す位置にあるときは、中心座標が定格荷重テーブル判定ラインLwR及びLwLの内側に位置しており、最大定格荷重性能を発揮させてはいけない位置となる。
【0041】
ここで、定格荷重テーブル判定ラインLwF、LwR、LwB、LwLは、機体(例えばブーム旋回中心SC)から一定の距離で離れた位置に設定されているが、この距離は、図5及び図6で示すように、機体の前後方向と左右方向とで異なる。
第1実施形態では、ブーム5の旋回方向に沿って隣り合う二つのアウトリガ7が備えるアウトリガフロート16の中心座標が、それぞれ、定格荷重テーブル判定ラインと重なる、又は外側にあるか否かの組み合わせに基づき、各仮想エリアの定格荷重性能を判定する。
【0042】
具体的に、前方仮想エリア及び後方仮想エリアに対しては、図5に示すように、機体の前端側及び後端側に配置した各2基のアウトリガ7が備えるアウトリガフロート16の中心座標の位置が、共に黒丸となる組み合わせであれば、最大定格荷重性能と判定される。一方、共に白丸となる組み合わせであれば、最小定格荷重性能と判定され、一方が白丸で他方が黒丸となる組み合わせであれば、中間定格荷重性能と判定される。そして、判定結果の定格荷重性能が、該当する仮想エリアに設定される。
【0043】
一方、右仮想エリア及び左仮想エリアに対しては、図6に示すように、機体の右側端側及び左側端側に配置した各2基のアウトリガ7が備えるアウトリガフロート16の中心座標の位置が、共に黒丸となる組み合わせであれば、最大定格荷重性能と判定される。一方、共に白丸となる組み合わせであれば、最小定格荷重性能と判定され、一方が白丸で他方が黒丸となる組み合わせであれば、中間定格荷重性能と判定される。そして、判定結果の定格荷重性能が、該当する仮想エリアに設定される。
対処制御線設定部106は、性能境界線設定部104が設定した性能境界線Lを定格荷重性能が高い側へシフトさせた仮想直線を、対処制御線Cとして設定する。
【0044】
定格荷重性能が高い側と定格荷重性能が低い側を設定する際には、前方仮想エリア、右仮想エリア、後方仮想エリア及び左仮想エリアにおける定格荷重性能を、それぞれ設定する。前方仮想エリア、右仮想エリア、後方仮想エリア及び左仮想エリアにおける定格荷重性能は、例えば、ブーム5の旋回方向に沿って隣り合う二つのアウトリガ7が備えるアウトリガフロート16の中心座標に基づいて設定する。さらに、設定した定格荷重性能のエリアを、性能境界線Lを基準として、図7に示すように、定格荷重性能が高いエリア(最大定格荷重性能)と定格荷重性能が低いエリア(最小定格荷重性能)に区分する。なお、図7では、アウトリガ7を張り出した状態における、クレーン1の模式的な平面図に、性能境界線L及び定格荷重テーブル判定ラインを図示している。
【0045】
そして、図2に示すように、性能境界線Lの位置から、定格荷重性能が高いエリアへ向けて予め設定した角度でシフトさせた仮想直線を、対処制御線Cとして設定する。なお、図2では、アウトリガ7を張り出した状態における、クレーン1の模式的な平面図に、性能境界線L及び対処制御線Cを図示している。
実施形態では、予め設定した角度として、25[°]を設定する場合について説明する。なお、図2では、性能境界線Laの位置からシフトさせた対処制御線Cを符号「Ca」で示し、性能境界線Lbの位置からシフトさせた対処制御線Cを符号「Cb」で示す。同様に、性能境界線Lcの位置からシフトさせた対処制御線Cを符号「Cc」で示し、性能境界線Ldの位置からシフトさせた対処制御線Cを符号「Cd」で示す。また、図2では、説明のために、性能境界線Lと対処制御線Cがなす角度を、25[°]とは異なる角度で示す。
【0046】
さらに、対処制御線設定部106は、減速領域EBと、停止領域ESを設定する。
減速領域EBは、対処制御線Cと性能境界線Lとの間を分割する分割領域線Dと対処制御線Cとの間の領域であり、対処制御線Cと性能境界線Lとの間において、対処制御線Cに近い側に設定した領域である。
停止領域ESは、減速領域EBよりも性能境界線Lに近い領域であり、分割領域線Dと性能境界線Lとの間の領域である。
【0047】
実施形態では、分割領域線Dを、性能境界線Lの位置から対処制御線Cへ向けて5[°]でシフトさせて形成した場合について説明する。なお、図2では、性能境界線Laの位置からシフトさせた分割領域線Dを符号「Da」で示し、性能境界線Lbの位置からシフトさせた分割領域線Dを符号「Db」で示す。同様に、性能境界線Lcの位置からシフトさせた分割領域線Dを符号「Dc」で示し、性能境界線Ldの位置からシフトさせた分割領域線Dを符号「Dd」で示す。また、図2では、説明のために、性能境界線Lと分割領域線Dがなす角度を、5[°]とは異なる角度で示す。
【0048】
ブーム状態判定部107は、ブーム長検出器40が検出したブーム5の長さと、ブーム角検出器41が検出したブーム5の起伏角度と、荷重検出器42が検出した吊荷の実荷重に応じて、吊荷の実荷重と定格荷重とを比較する。そして、ブーム旋回角検出部43が検出したブーム5の旋回角度と、予め設定した基準角度と、ブーム5の旋回方向と、平面視におけるブーム5の旋回位置に応じ、ブーム5が旋回して、定格荷重性能が高いエリアから性能境界線Lを超えて定格荷重性能が低いエリアへ移動すると危険であるか否かを判定する。なお、「危険である」状態とは、例えば、吊荷の実荷重が、定格荷重性能が低いエリアにおける定格荷重を超えている状態である。
【0049】
<対処処理制御部>
対処処理制御部200は、要求値に応じたブーム5の旋回方向と、要求値に応じたブーム5の旋回速度と、ブーム状態判定部107が検出したブーム5の旋回位置と、性能境界線Lと、対処制御線Cに応じて、動作速度制御部201と警報出力部202へ信号を出力する。
対処処理制御部200から動作速度制御部201へ出力する信号には、減速処理信号と、減速解除処理信号と、停止処理信号と、停止解除処理信号を含む。
対処処理制御部200から警報出力部202へ出力する信号には、予告警報処理信号と、予告警報解除処理信号と、限界警報処理信号と、限界警報解除処理信号を含む。
【0050】
また、対処処理制御部200は、ブーム旋回速度検出部44が検出したブーム5の旋回速度が、予め設定した速度閾値未満である場合には、動作速度制御部201と警報出力部202への信号の出力を実施しない。
ここで、速度閾値とは、ブーム5が吊り上げている吊荷に荷ブレが発生しない程度の微速な旋回速度である。
減速処理信号は、オペレータ等による要求値のみから決まる旋回速度である要求旋回速度で旋回しているブーム5に対し、要求旋回速度よりも低い旋回速度でブーム5を旋回させる減速処理を、動作速度制御部201に実行させる指令信号である。
【0051】
なお、減速処理には、ブーム5の旋回速度に加え、ブーム5の起伏速度と、ウインチの回転速度と、ブーム5の伸縮速度に対する減速を加えてもよい。実施形態では、停止処理として、ブーム5の旋回速度のみを減速させる場合について説明する。
減速処理信号を出力する条件は、以下の条件(I)から条件(III)までを全て満たす場合である。
条件(I).ブーム5の旋回位置が、ブーム5の存在しているエリアが最大定格荷重性能と判定されたエリアである。
条件(II).対処制御線Cと性能境界線Lとの間にブーム5が存在していると判断する。
条件(III).吊荷の実荷重が、定格荷重性能が低いエリアにおける現在のブーム5の状態での、定格荷重を超えている。
なお、実施形態では、減速処理信号を出力する条件に、さらに、以下の条件(IV)を加える。
条件(IV).減速領域EBでブーム5が旋回していると判断する。
したがって、実施形態では、減速処理信号を出力する条件は、上述した条件(I)から条件(IV)までを全て満たす場合である。
【0052】
減速解除処理信号は、実施している減速処理を解除させる減速解除処理を、動作速度制御部201に実行させる指令信号である。
減速解除処理信号を出力する条件は、以下の条件(V)及び条件(VI)を全て満たす場合である。
条件(V).減速処理信号を出力している。
条件(VI).減速領域EBでブーム5の要求値に応じた旋回方向が性能境界線Lから離れる方向であると判断する。
【0053】
停止処理信号は、減速処理を実施している状態で旋回しているブーム5を、オペレータの意図に関わらず、制御によって自動的に停止させる停止処理を、動作速度制御部201に実行させる指令信号である。
なお、停止処理には、ブーム5の旋回に加え、ブーム5の起伏動作と、ブーム5の伸縮動作と、ウインチの回転に対する停止を加えてもよい。実施形態では、停止処理として、ブーム5の旋回のみを停止させる場合について説明する。
停止処理信号を出力する条件は、上述した条件(I)、条件(II)、条件(III)、条件(IV)と、以下の条件(VII)を全て満たす場合である。
条件(VII).停止領域ESでブーム5が旋回していると判断する。
【0054】
停止解除処理信号は、実施している停止処理を解除させる停止解除処理を、対処処理制御部200に実行させる指令信号である。
停止解除処理信号を出力する条件は、以下の条件(VIII)及び条件(IX)を全て満たす場合である。
条件(VIII).停止処理信号を出力している。
条件(IX).停止領域ESでブーム5の要求値に応じた旋回方向が性能境界線Lから離れる方向であると判断する。
【0055】
予告警報処理信号は、旋回しているブーム5の位置が、定格荷重性能が低いエリアへ近づいていることを予告する警報を出力する予告警報処理を、警報出力部202に実行させる指令信号である。
予告警報処理信号を出力する条件は、上述した条件(I)、条件(II)、条件(III)及び条件(IV)を全て満たす場合である。
予告警報解除処理信号は、実施している予告警報処理を解除させる予告警報解除処理を、警報出力部202に実行させる指令信号である。
予告警報解除処理信号を出力する条件は、上述した条件(V)及び条件(VI)を全て満たす場合である。
【0056】
限界警報処理信号は、旋回しているブーム5の位置が、定格荷重性能が低いエリアに到達したことを警告する警報を出力する限界警報処理を、警報出力部202に実行させる指令信号である。
限界警報処理信号を出力する条件は、上述した条件(I)、条件(II)、条件(III)及び条件(VII)を全て満たす場合である。
限界警報解除処理信号は、実施している限界警報処理を解除させる限界警報解除処理を、警報出力部202に実行させる指令信号である。
限界警報解除処理信号を出力する条件は、上述した条件(VIII)及び条件(IX)を全て満たす場合である。
【0057】
動作速度制御部201は、スプール、アンロード弁、アクセルシリンダ等、油圧回路が備える構成の動作を制御する装置を含む。
また、動作速度制御部201は、対処処理制御部200から入力された信号(減速処理信号、減速解除処理信号、停止処理信号、停止解除処理信号)に応じて、油圧回路が備える構成の動作を制御する。
減速処理信号を入力された動作速度制御部201は、要求旋回速度よりも低い旋回速度で、ブーム5を旋回させる。
【0058】
このとき、動作速度制御部201は、例えば、スプールとアクセルシリンダのストローク量を制限することで、ブーム5の旋回速度を、要求値に応じた旋回速度よりも減速させる。この場合、例えば、スプールのストローク量を、要求値に応じたストローク量を100%とした場合に、80%~50%まで低減させる。これに加え、例えば、アクセルシリンダのストローク量を、要求値に応じたストローク量を100%とした場合に、20%まで低減させる。
減速解除処理信号を入力された動作速度制御部201は、要求旋回速度で、ブーム5を旋回させる。
【0059】
停止処理信号を入力された動作速度制御部201は、ブーム5の旋回を停止させる。
このとき、動作速度制御部201は、例えば、スプールとアクセルシリンダのストローク量を制限することで、旋回しているブーム5を停止させる。この場合、例えば、スプールのストローク量を0%とする。これに加え、例えば、アクセルシリンダのストローク量を0%とする。
停止解除処理信号を入力された動作速度制御部201は、停止させているブーム5を、オペレータ等の要求値に応じた旋回速度で旋回させる。
【0060】
また、動作速度制御部201は、対処処理制御部200から信号が入力されていない場合、要求旋回速度で、ブーム5を旋回させる。
警報出力部202は、オペレータ等が視認可能なランプや、音声を出力可能なスピーカ等を含む。
また、警報出力部202は、ランプの点灯、警報ブザー音の出力等を行う。なお、実施形態では、ランプの構成を、三色(緑色、黄色、赤色)に発光が可能な構成とした場合について説明する。
【0061】
予告警報処理信号を入力された警報出力部202は、ランプを、通常時(衝撃緩和処理の実施中や、ブーム5等の油圧機器を停止させている状態)よりも強度の高い警報に対応する色で発光させる。この場合、例えば、通常時では緑色に発光させているランプを、黄色で発光させる。
また、予告警報処理信号を入力された警報出力部202は、例えば、スピーカから、断続的な警報音(例えば、「ピー ピー」)を発声させる。
予告警報解除処理信号を入力された警報出力部202は、ランプを緑色で発光させ、スピーカからの発声を停止させる。
【0062】
限界警報処理信号を入力された警報出力部202は、ランプを、予告警報処理を実施している状態よりも強度の高い警報に対応する色で発光させる。この場合、例えば、予告警報処理を実施している状態では黄色に発光させているランプを、赤色で発光させる。
また、限界警報処理信号を入力された警報出力部202は、例えば、スピーカから、連続的な警報音を発声させる。この場合、スピーカから、予告警報処理よりも音量を増加させた警報音を発声させてもよい。
限界警報解除処理信号を入力された警報出力部202は、ランプを緑色で発光させ、スピーカからの発声を停止させる。
【0063】
<動作>
図1から図7を参照しつつ、図8及び図9を用いて、ブーム作業機用モーメントリミッタ装置を備えたクレーン1の動作と、ブーム作業機用モーメントリミッタ装置の動作について説明する。
クレーン作業を行なう場合、まず、四つのアウトリガ7A~7Dを張り出す方向を決定し、図5から図7に示すように、四つのアウトリガ7A~7Dを放射状に展開させる。このとき、クレーン作業中にアウトリガ7が回転しないように、フレーム2とブラケット11をピンで固定する。その後、アウターボックス14を拡げて、アウターボックス14の角度固定孔を、最大張出固定孔19又は最小張出固定孔20へ同軸に重ね合わせて、角度固定ピン22を挿入する。
【0064】
次に、インナーボックス15を引き出して、アウターボックス14の伸縮固定孔26を、最大固定孔23、中間固定孔27又は最小固定孔24へ同軸に重ね合わせて、長さ固定ピン25を挿入する。そして、アウトリガシリンダ13を伸長させて、アウトリガフロート16を接地させる。このとき、走行体3のクローラ下面が地面から離れる(例えば、50mm程度)まで、アウトリガシリンダ13を伸長させて、アウトリガ7を設置する。なお、アウトリガ7の設置作業は、作業者の手によって行う構成に限らず、アクチュエータによる自動作業で行う構成としてもよい。
【0065】
アウトリガ7を設置した後、図8に示すように、ステップS1において、相対座標演算部103が接地座標を演算し、ステップS2の処理へ移行する。
ステップS2では、性能境界線設定部104が性能境界線Lを設定し、ステップS3の処理へ移行する。
ステップS3では、対処制御線設定部106により、ステップS2で性能境界線設定部104が設定した性能境界線Lを定格荷重性能が高い側へシフトさせた仮想直線を、対処制御線Cとして設定し、ステップS4の処理へ移行する。
【0066】
ステップS4では、対処処理制御部200により、ブーム旋回速度検出部44が検出したブーム5の旋回速度が、速度閾値未満であるか否かを判定する。そして、ブーム5の旋回速度が速度閾値未満であると判定した場合(Yes)は、ステップS1に戻り、ブーム5の旋回速度が速度閾値以上であると判定した場合(No)は、ステップS5の処理に移行する。
ステップS5では、対処処理制御部200により、動作速度制御部201と警報出力部202へ信号を出力する処理を行い、ステップS1に戻る。なお、ステップS5で行う処理(信号出力処理)については、後述する。
【0067】
以下、図9を用いて、信号出力処理について説明する。
まず、ステップS10において、対処処理制御部200により、条件(I)及び条件(II)及び条件(III)が成立しているか否かを判定する。そして、条件(I)及び条件(II)及び条件(III)が成立していると判定した場合(Yes)は、ステップS11の処理へ移行し、条件(I)及び条件(II)及び条件(III)のうち一つでも成立していないと判定した場合(No)は、ステップS1に戻る(RETURN)。
【0068】
ステップS11では、対処処理制御部200により、条件(IV)が成立しているか否かを判定する。そして、条件(IV)が成立していると判定した場合(Yes)は、ステップS12の処理へ移行し、条件(IV)が成立していないと判定した場合(No)は、ステップS15の処理へ移行する。
ステップS12では、対処処理制御部200により、条件(V)及び条件(VI)が成立しているか否かを判定する。そして、条件(V)及び条件(VI)が成立していないと判定した場合(No)は、ステップS13の処理へ移行し、条件(V)及び条件(VI)が成立していると判定した場合(Yes)は、ステップS14の処理へ移行する。
【0069】
ステップS13では、対処処理制御部200により、減速処理信号を動作速度制御部201へ出力し、予告警報処理信号を警報出力部202へ出力して、ステップS1に戻る(RETURN)。対処処理制御部200から減速処理信号と予告警報処理信号が出力されると、動作速度制御部201は減速処理を実行し、警報出力部202は予告警報処理を実行する。
動作速度制御部201が減速処理を実行することで、ブーム5に吊荷を吊り上げている状態で、旋回中のブーム5を停止させた際に発生する吊荷の揺れを低減させることが可能となる。
また、警報出力部202が予告警報処理を実行することで、クレーン1のオペレータ等に、ブーム5の旋回位置が、危険側へ近づいていることを予告して、注意喚起を行うことが可能となる。
【0070】
ステップS14では、対処処理制御部200により、減速解除処理信号を動作速度制御部201へ出力し、予告警報解除処理信号を警報出力部202へ出力して、ステップS1に戻る(RETURN)。対処処理制御部200から減速解除処理信号と予告警報解除処理信号が出力されると、動作速度制御部201は減速解除処理を実行し、警報出力部202は予告警報解除処理を実行する。
動作速度制御部201が減速解除処理を実行することで、ブーム5の旋回方向を反転させて、ブーム5を定格荷重性能が高い側へ旋回させる場合には、旋回速度を減速させずに、ブーム5を操作することが可能となる。
また、警報出力部202が予告警報解除処理を実行することで、クレーン1のオペレータ等に、ブーム5の旋回速度が減速されずに、ブーム5を安全側へ旋回させることが可能であること認識させることが可能となる。
【0071】
ステップS15では、条件(VII)が成立しているか否かを判定する。そして、条件(VII)が成立していると判定した場合(Yes)は、ステップS16の処理へ移行し、条件(VII)が成立していないと判定した場合(No)は、ステップS1に戻る(RETURN)。
ステップS16では、条件(VIII)及び条件(IX)が成立しているか否かを判定する。そして、条件(VIII)及び条件(IX)が成立していないと判定した場合(No)は、ステップS17の処理へ移行し、条件(VIII)及び条件(IX)が成立していると判定した場合(Yes)は、ステップS18の処理へ移行する。
【0072】
ステップS17では、対処処理制御部200により、停止処理信号を動作速度制御部201へ出力し、限界警報処理信号を警報出力部202へ出力して、ステップS1に戻る(RETURN)。対処処理制御部200から停止処理信号と限界警報処理信号が出力されると、動作速度制御部201は停止処理を実行し、警報出力部202は限界警報処理を実行する。
動作速度制御部201が停止処理を実行することで、要求値に応じた旋回速度よりも低い旋回速度でブーム5を旋回させている状態から、性能境界線Lへ近づく方向に旋回中のブーム5を停止させることとなる。
また、警報出力部202が限界警報処理を実行することで、クレーン1のオペレータ等に、ブーム5の旋回位置が、危険側へ到達したことを警告することが可能となる。
【0073】
ステップS18では、対処処理制御部200により、停止解除処理信号を動作速度制御部201へ出力し、限界警報解除処理信号を警報出力部202へ出力して、ステップS1に戻る(RETURN)。対処処理制御部200から停止解除処理信号と限界警報解除処理信号が出力されると、動作速度制御部201は停止解除処理を実行し、警報出力部202は限界警報解除処理を実行する。
動作速度制御部201が停止解除処理を実行することで、ブーム5の旋回方向を反転させて、ブーム5を定格荷重性能が高い側へ旋回させる場合には、旋回速度を減速させずに、停止していたブーム5を操作することが可能となる。
また、警報出力部202が限界警報解除処理を実行することで、クレーン1のオペレータ等に、ブーム5の旋回速度が減速されずに、停止していたブーム5を安全側へ旋回させることが可能であること認識させることが可能となる。
【0074】
<請求項との対応>
アウトリガ展開角検出器30と、アーム角検出器32と、アウターボックス角検出器33と、インナーボックス長検出器34は、複数のアウトリガ7の張出状態を検出するアウトリガ張出状態検出部に対応する。また、ブーム状態判定部107は、ブーム5の旋回位置を検出するブーム旋回位置検出部に対応する。これに加え、ブーム状態判定部107は、ブーム長検出器40が検出したブーム5の長さと、ブーム角検出器41が検出したブーム5の起伏角度と、荷重検出器42が検出した吊荷の実荷重に応じて、吊荷の実荷重と定格荷重とを比較し、ブーム5が旋回して、定格荷重性能が高いエリアから性能境界線Lを超えて定格荷重性能が低いエリアへ移動すると危険であるか否かを判定する。さらに、アウトリガ7の水平方向への展開角度と、アーム12の角度と、アウターボックス14の角度と、インナーボックス15の伸長量は、アウトリガの張出状態に対応する。
【0075】
<第1実施形態の作用及び効果>
(1)性能境界線設定部104が、相対座標演算部103が演算した接地座標とブーム5の旋回中心とを通る仮想直線を、複数のアウトリガ7毎に性能境界線Lとして設定する。さらに、対処制御線設定部106が、性能境界線設定部104が設定した性能境界線Lを定格荷重性能が高い側へシフトさせた仮想直線を、対処制御線Cとして設定する。これに加え、対処処理制御部200が、対処制御線Cと性能境界線Lとの間でブーム5が旋回していると判断すると、要求旋回速度よりも低い旋回速度で、ブーム5を旋回させる。
このため、通常時におけるブーム5の旋回操作を行っているときに、ブーム5の位置が定格荷重性能の低いエリアへ近づいた場合であっても、旋回中のブーム5を停止させる前に、ブーム5の旋回速度を減速させることとなる。
その結果、旋回中のブーム5を停止させた際に発生する吊荷の揺れを低減させることが可能な、ブーム作業機用モーメントリミッタ装置を提供することが可能となる。
【0076】
(2)対処処理制御部200が、減速領域EBでブーム5が旋回していると判断すると、要求旋回速度よりも低い旋回速度で、ブーム5を旋回させる。
このため、旋回しているブーム5の位置が対処制御線Cを超えた場合であっても、ブーム5の位置が性能境界線Lへ到達するよりも前に、ブーム5の旋回速度を減速させることが可能となる。
その結果、旋回しているブーム5を停止させたときに発生する衝撃を緩和させることが可能となる。
【0077】
(3)対処処理制御部200が、減速領域EBでブーム5の要求値に応じた旋回方向が性能境界線Lから離れる方向であると判断すると、要求旋回速度でブーム5を旋回させる。
その結果、ブーム5を定格荷重性能が高い側へ旋回させる場合には、旋回速度を減速させずに、ブーム5を操作することが可能となるため、操作性の低下を抑制することが可能となる。
【0078】
(4)対処処理制御部200が、停止領域ESでブーム5が旋回していると判断すると、ブーム5の旋回を停止させる。
このため、要求値に応じた旋回速度よりも低い旋回速度でブーム5を旋回させている状態から、性能境界線Lへ近づく方向に旋回中のブーム5を停止させることとなる。
その結果、旋回中のブーム5を停止させた際に発生する吊荷の揺れを低減させることが可能となる。
【0079】
(5)対処処理制御部200が、停止領域ESでブーム5の要求値に応じた旋回方向が性能境界線Lから離れる方向であると判断すると、停止させているブーム5を要求旋回速度で旋回させる。
その結果、停止させているブーム5を定格荷重性能が高い側へ旋回させる場合には、旋回速度を減速させずに、ブーム5を操作することが可能となるため、操作性の低下を抑制することが可能となる。
【0080】
(6)対処処理制御部200が、ブーム5の旋回速度が予め設定した速度閾値未満である場合には、要求旋回速度でブーム5を旋回させる。
このため、例えば、ブーム5の旋回速度を要求旋回速度よりも減速させているとともに警報を出力している状態で、ブーム5が吊り上げている吊荷に荷ブレが発生しない程度の微速な旋回速度でブーム5を旋回させると、ブーム5の旋回速度が要求旋回速度となるとともに、警報の出力が停止する。
その結果、定格荷重性能が低いエリアへブーム5が近づいていることを予告する警報や、定格荷重性能が低いエリアにブーム5が到達することを予告する警報を認識したうえで、ブーム5の旋回速度を微速な旋回速度まで減速させたオペレータが、警報によって受ける煩わしさを低減させることが可能となる。
【0081】
(7)クレーン1(ブーム作業機)が、複数のアウトリガ7と、機体の上部に設けられ、且つ垂直な軸回りへ旋回可能なブームと、ブーム作業機用モーメントリミッタ装置とを備える。
その結果、旋回中のブーム5を停止させた際に発生する吊荷の揺れを低減させることが可能な、ブーム作業機用モーメントリミッタ装置を備えたブーム作業機を提供することが可能となる。
【0082】
<第1実施形態の変形例>
(1)対処処理制御部200の構成を、減速処理信号を出力している状態で、ブーム5の旋回方向が、性能境界線Lから離れる方向であると、減速解除処理信号と予告警報解除処理信号を出力する構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、対処処理制御部200の構成を、例えば、減速処理信号を出力している状態で、ブーム5が停止している時間が予め設定した時間(例えば、3秒)継続すると、減速解除処理信号と予告警報解除処理信号を出力する構成としてもよい。
【0083】
(2)対処処理制御部200の構成を、停止処理信号を出力している状態で、ブーム5の旋回方向が、性能境界線Lから離れる方向であると、停止解除処理信号と限界警報解除処理信号を出力する構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、対処処理制御部200の構成を、例えば、停止処理信号を出力している状態で、ブーム5が停止している時間が予め設定した時間(例えば、3秒)継続すると、停止解除処理信号と限界警報解除処理信号を出力する構成としてもよい。
【0084】
(3)対処制御線Cを、性能境界線Lの位置から、定格荷重性能が高いエリアへ向けて予め設定した角度(25[°])でシフトさせて設定したが、これに限定するものではない。すなわち、対処制御線Cを、例えば、2~3[°]の範囲内でシフトさせて形成するなど、角度に範囲を持たせて設定してもよい。
【0085】
(4)クレーンを備える機体として、クローラクレーンを例に説明したが、クレーンを備える機体は、これに限定するものではない。すなわち、本発明は、例えば、ブーム等、旋回動作をすると構成部材を備えた機体であれば、タワークレーン等の機体に適用することが可能である。
【0086】
(5)ブーム5の旋回位置が、ブーム5の存在しているエリアが最大定格荷重性能と判定されたエリアである条件が成立している場合に、減速処理等の各種の処理を行う構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、ブーム5の存在しているエリアが最小定格荷重性能と判定されたエリアである場合に、減速処理等の各種の処理を行う構成としてもよい。また、例えば、ブーム5の存在しているエリアが中間定格荷重性能と判定されたエリアであり、ブーム5が最小定格荷重性能と判定されたエリアへ旋回する場合に、減速処理等の各種の処理を行う構成としてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 クレーン
2 フレーム
3 走行体
4 コラム
5 ブーム
6 起伏シリンダ
7 アウトリガ
10 アウトリガ回転軸
11 ブラケット
12 アーム
13 アウトリガシリンダ
14 アウターボックス
15 インナーボックス
16 アウトリガフロート
17 アーム起伏軸
18 アウターボックス起伏軸
30 アウトリガ展開角検出器
31 アウトリガ接地検出器
32 アーム角検出器
33 アウターボックス角検出器
34 インナーボックス長検出器
40 ブーム長検出器
41 ブーム角検出器
42 荷重検出器
43 ブーム旋回角検出部
44 ブーム旋回速度検出部
100 演算制御部
101 定格荷重テーブル記憶部
102 座標情報記憶部
103 相対座標演算部
104 性能境界線設定部
105 判定ライン情報記憶部
106 対処制御線設定部
107 ブーム状態判定部
200 対処処理制御部
201 動作速度制御部
202 警報出力部
La、Lb、Lc、Ld 性能境界線
LwF、LwR、LwB、LwL 定格荷重テーブル判定ライン
Ca、Cb、Cc、Cd 対処制御線
Da、Db、Dc、Dd 分割領域線
EB 減速領域
ES 停止領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9