(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】電力供給システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/46 20060101AFI20240730BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240730BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240730BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240730BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20240730BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20240730BHJP
H02J 9/06 20060101ALI20240730BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240730BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J7/00 P
H02J3/32
H02J3/38 130
H02J7/35 A
H02J7/34 G
H02J9/06 120
H01M10/44 P
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2020072180
(22)【出願日】2020-04-14
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】山根 俊博
(72)【発明者】
【氏名】野村 義明
(72)【発明者】
【氏名】古知 正人
(72)【発明者】
【氏名】菊本 悦司
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-212659(JP,A)
【文献】特開2007-252117(JP,A)
【文献】特開2015-208167(JP,A)
【文献】特開2012-075247(JP,A)
【文献】特開2018-182925(JP,A)
【文献】特開2012-085406(JP,A)
【文献】特開2019-161881(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0276194(US,A1)
【文献】特開2020-005341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/46
H02J 7/00
H02J 3/32
H02J 3/38
H02J 7/35
H02J 7/34
H02J 9/06
H01M 10/44
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用系統からの電力供給がない場合に、発電装置と複数の電気自動車の蓄電池を活用して、前記発電装置の電力と前記電気自動車の電力とを自立運転範囲の電力系統に接続された重要負荷に供給する電力供給システムであって、
接続された前記電気自動車の前記蓄電池の充電率を検出するとともに、当該蓄電池の充放電を切替える充放電装置と、
前記充放電装置と、前記複数の電気自動車のいずれか一つとを切り替えて接続するとともに、接続された前記電気自動車を識別する識別情報を当該電気自動車から検出する切替スイッチと、
商用系統からの電力供給がない場合に、前記発電装置の発電電力と、前記重要負荷の消費電力とに基づいて、前記切替スイッチを介して接続された前記電気自動車の蓄電池の充放電の切替えを前記充放電装置に指示するとともに、前記充放電装置が検出した前記充電率と、前記切替スイッチが検出した前記識別情報とに基づいて、前記切替スイッチの接続を制御する制御装置と、
を備え
、
前記制御装置は、前記識別情報と、前記充電率とを対応付けた充電率テーブルを記憶する記憶部を備え、
充電の切替えを前記充放電装置に指示する場合に、前記切替スイッチが検出した前記識別情報に基づき、前記記憶部が記憶する前記充電率テーブルを参照して、前記切替スイッチが充電可能な前記電気自動車を接続しているか否かを判定し、接続していると判定した場合に、当該電気自動車の前記蓄電池を充電するように制御し、接続していないと判定した場合に、充電可能な前記電気自動車のいずれか一つに接続を切替えるように制御し、
前記制御装置は、前記記憶部が記憶する前記充電率テーブルに基づいて、充電可能な前記電気自動車の有無を判定し、充電可能な前記電気自動車が存在しない場合に、前記発電装置の発電を停止することにより、前記蓄電池の放電に切替えることを特徴とする電力供給システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記発電電力が前記消費電力よりも大きいか否かを判定し、大きいと判定した場合に、前記蓄電池の充電に切替えるとともに、充電可能な前記電気自動車の前記蓄電池を充電するように制御すること、
を特徴とする請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記発電電力が前記消費電力よりも大きいか否かを判定し、小さいと判定した場合に、前記蓄電池の放電に切替えるとともに、放電可能な前記電気自動車の前記蓄電池を放電するように制御すること、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記制御装置は、放電の切替えを前記充放電装置に指示する場合に、前記切替スイッチが検出した前記識別情報に基づき、前記記憶部が記憶する前記充電率テーブルを参照して、前記切替スイッチが放電可能な前記電気自動車を接続しているか否かを判定し、接続していると判定した場合に、当該電気自動車の前記蓄電池を放電するように制御し、接続していないと判定した場合に、放電可能な前記電気自動車のいずれか一つに接続を切替えるように制御すること、
を特徴とする請求項
1から請求項3のいずれか一項に記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記記憶部が記憶する前記充電率テーブルに基づいて、充電可能な前記電気自動車の有無を判定し、充電可能な前記電気自動車が2台以上あると判定された場合に、前記充電率に基づいて充電の優先度を設定し、前記優先度の高い前記電気自動車から前記切替スイッチに接続すること、
を特徴とする請求項
1から請求項4のいずれか一項に記載の電力供給システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記記憶部が記憶する前記充電率テーブルに基づいて、放電可能な前記電気自動車の有無を判定し、放電可能な前記電気自動車が2台以上あると判定された場合に、前記充電率に基づいて放電の優先度を設定し、前記優先度の高い前記電気自動車から順番に前記切替スイッチに接続すること、
を特徴とする請求項
1から請求項
5のいずれか一項に記載の電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、天然ガスコージェネレーション発電機や太陽光発電(以下、PVと称する場合がある)装置を含む複数の分散型電源と、蓄電装置とを組み合わせて電力供給を行う、マイクログリッドの開発が進められている。
【0003】
マイクログリッドを建物に適用して長期的に運用する場合には、十分な容量の蓄電装置が必要である。しかし、定置型蓄電装置の設置コストが高いことから、建物の定置型蓄電容量は限定的にならざるを得ない。
【0004】
定置型蓄電装置の容量不足を補うために、今後普及が見込まれる電気自動車(以下、EVと称する場合がある)の蓄電池を活用する方法が提唱されている(例えば、特許文献1および特許文献2)。
特許文献1では、一般住宅に充放電装置を設置し、停電時にEVを充放電装置に接続することにより、EVの電力を供給する方法が記載されている。
また、特許文献2では、停電時に、複数のEVをそれぞれ別々の充放電装置に接続することにより、EVの電力を安定的に供給する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-178234号公報
【文献】特開2018-182925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、停電時に自立運転を行うマイクログリッド等の電力供給システムでは、特許文献1のように、通常、充放電装置に一台しかEVを接続できず、停電時に十分な電力を得られない場合があった。また、特許文献2のように、複数の充放電装置を使用する場合には、複数の充放電装置の間で電力を融通することができないため、停電時に安定的に電力を得られない場合があった。このように、上述したような従来技術では、停電時に、複数のEVの電力を重要負荷に安定的に供給することは困難であった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、停電時に、PVの電力とEVの電力とを重要負荷に安定的に供給することができる電力供給システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、商用系統からの電力供給がない場合に、発電装置と複数の電気自動車の蓄電池を活用して、前記発電装置の電力と前記電気自動車の電力とを自立運転範囲の電力系統に接続された重要負荷に供給する電力供給システムであって、接続された前記電気自動車の蓄電池の充電率を検出するとともに、当該蓄電池の充放電を切替える充放電装置と、前記充放電装置と、前記複数の電気自動車のいずれか一つとを切り替えて接続するとともに、接続された前記電気自動車を識別する識別情報を当該電気自動車から検出する切替スイッチと、商用系統からの電力供給がない場合に、前記発電装置の発電電力と、前記重要負荷の消費電力とに基づいて、前記切替スイッチを介して接続された前記電気自動車の蓄電池の充放電の切替えを前記充放電装置に指示するとともに、前記充放電装置が検出した前記充電率と、前記切替スイッチが検出した前記識別情報とに基づいて、前記切替スイッチの接続を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記識別情報と、前記充電率とを対応付けた充電率テーブルを記憶する記憶部を備え、充電の切替えを前記充放電装置に指示する場合に、前記切替スイッチが検出した前記識別情報に基づき、前記記憶部が記憶する前記充電率テーブルを参照して、前記切替スイッチが充電可能な前記電気自動車を接続しているか否かを判定し、接続していると判定した場合に、当該電気自動車の前記蓄電池を充電するように制御し、接続していないと判定した場合に、充電可能な前記電気自動車のいずれか一つに接続を切替えるように制御し、前記制御装置は、前記記憶部が記憶する前記充電率テーブルに基づいて、充電可能な前記電気自動車の有無を判定し、充電可能な前記電気自動車が存在しない場合に、前記発電装置の発電を停止することにより、前記蓄電池の放電に切替えることを特徴とする電力供給システムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、停電時に、充放電に適切な電気自動車を切り替えることにより、発電装置の電力と電気自動車の電力とを重要負荷に安定的に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態による電力供給システムの一例を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】本実施形態に係る記憶部の構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】本実施形態に係るEV識別テーブルの一例を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る充電率テーブルの一例を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る電力供給処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態による電力供給システムについて説明する。
【0012】
図1は、本実施形態による電力供給システム1の一例を示す図である。
図1に示すように、電力供給システム1は、切替スイッチ10と、複数の電気自動車(以下、EVと称する)(20a、20b、20c)と、重要負荷30と、電力計40と、PV装置50(発電装置の一例)と、充放電装置60と、制御装置70とを備える。
【0013】
なお、停電等の異常時には、商用系統の電力はバツ印で表すように負荷80と重要負荷30とに供給されない。
【0014】
切替スイッチ10は、充放電装置60と、複数のEV(20a~20c)のいずれか一つとを切り替えて接続する。具体的には、切替スイッチ10は、指定されたEV20を接続する指示である接続指示を制御装置70(後述する、切替スイッチ制御部74)から受信して、当該EVを接続する。
また、切替スイッチ10は、接続されたEV20を識別する識別情報を当該EVから検出し、制御装置70(後述する、切替スイッチ制御部74)に送信する。例えば、本実施例では、識別情報として、EV20aにEV1、EV20bにEV2、EV20cにEV3が付与されているものとする。
【0015】
複数のEV(20a~20c)のいずれか一つは、切替スイッチ10を介して、充放電装置60に接続される。なお、本実施形態において、電力供給システム1が備える任意のEVを示す場合、又は特に区別しない場合には、EV20として説明する。
EV20a/20b/20cはそれぞれ、蓄電池21a/21b/21cを有する。なお、本実施形態において、電力供給システム1が備える任意のEVの蓄電池を示す場合、又は特に区別しない場合には、蓄電池21として説明する。
【0016】
また、EV20は、蓄電池21の充電率を検出する機能を有し、例えば、電池残量計IC(Integrated Circuit)が検出した充電率を充放電装置60に送信する。ここで、充電率が100パーセントの場合に、蓄電池21は満充電であり、0パーセントの場合に、蓄電池21は空である。
【0017】
重要負荷30は、電力計40を介してPV装置50と充放電装置60とに接続され、さらに、充放電装置60を介してEV20に接続される。商用系統の停電時には、PV装置50の出力電力であるPV電力、又はEV20の蓄電池21の電力であるEV電力が重要負荷30に供給される。
【0018】
電力計40は、重要負荷30に接続し、当該負荷の消費電力(以下、負荷消費電力と称する場合がある)を測定する。
【0019】
PV装置50は、太陽光発電装置であり、充放電装置60に接続され、EV20と、重要負荷30の少なくとも一方にPV装置50の出力電力であるPV電力を供給する。
【0020】
充放電装置60は、EV接続端子の先端に設けられた切替スイッチ10を介してEV20と接続され、EV20が検出した蓄電池21の充電率を受信する。さらに、充放電装置60は、重要負荷30と、電力計40と、PV装置50とを接続する。
【0021】
また、充放電装置60は、切替スイッチ10に接続されたEV20の蓄電池21の充電と放電を切り替える。本実施形態では、充放電装置60は、制御装置70(後述する、充放電装置制御部75)から、蓄電池21を充電する指示である充電指示を受信した場合に充電を行い、放電する指示である放電指示を受信した場合に放電を行う。
【0022】
制御装置70は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含み、切替スイッチ10と、PV装置50と、充放電装置60とを、無線もしくは有線により制御する。
【0023】
図2を参照して、制御装置70の構成の詳細について説明する。
図2は、本実施形態に係る制御装置70の構成を示す機能ブロック図である。
図2に示すように、制御装置70は、記憶部71と、EV管理部72と、PV装置制御部73と、切替スイッチ制御部74と、充放電装置制御部75とを備える。
【0024】
記憶部71は、制御装置70が利用する各種データを記憶する。
記憶部71は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)などの記憶媒体など、又は、これらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。また、記憶部71として、例えば、不揮発性メモリを用いることができる。
【0025】
ここで、記憶部71の構成について、
図3~
図4を参照して説明する。
図3は、本実施形態に係る記憶部71の構成を示す機能ブロック図である。
図3に示すように、記憶部71は、EV識別テーブル711と、充電率テーブル712とを記憶する。
【0026】
記憶部71は、EV識別テーブル711として、識別情報と、車両名(例えば、EV20a、EV20b、EV20c)とを対応付けて記憶する。
図4は、本実施形態におけるEV識別テーブル711の一例を示す図である。例えば、
図4に示すように、識別情報がEV1はEV20a、EV2はEV20b、EV1はEV20aを表す。
【0027】
記憶部71は、充電率テーブル712として、識別情報と、車両名と、充電率とを対応付けて記憶する。
図5は、本実施形態における充電率テーブル712の一例を示す図である。例えば、
図5に示すように、識別情報がEV1(車両名EV20a)の充電率は100パーセント、EV2(車両名EV20b)の充電率は20パーセント、EV3(車両名EV20c)の充電率は80パーセントであることを表す。
【0028】
図2に戻り、制御装置70の構成の続きを説明する。
EV管理部72は、充放電装置60が検出した蓄電池21の充電率を取得して、記憶部71(充電率テーブル712)に記憶させる。例えば、切替スイッチ10から受信した識別情報がEV2であり、取得した充電率が20パーセントである場合に、EV管理部72は、
図5に示すように、識別情報EV2(EV20b)と充電率20パーセントとを対応付けて記憶する。なお、切替スイッチ10に接続されていないEV20の充電率は、当該EVの切り離し直前に取得された値である。
【0029】
また、EV管理部72は、充電率テーブル712に基づいて、複数のEV(20a~20c)それぞれの蓄電池(21a~21c)が充電可能であるか否か、又は、放電可能であるか否かを判定する。
また、EV管理部72は、充電率が100パーセントの場合に充電不能と判定し、それ以外の場合に充電可能と判定する。例えば、
図5に示すように、EV20aの充電率が100パーセント、EV20bの充電率が20パーセント、EV20cの充電率が80パーセントの場合に、EV管理部72は、EV20aを充電不能と判定し、EV20bとEV20cを充電可能と判定する。
【0030】
また、EV管理部72は、充電率が0パーセントの場合に放電不能と判定し、それ以外の場合に放電可能と判定する。例えば、
図5に示すように、EV20aの充電率が100パーセント、EV20bの充電率が20パーセント、EV20cの充電率が80パーセントの場合に、EV管理部72は、EV20a~EV20cを全て放電可能と判定する。
【0031】
なお、全ての蓄電池(21a~21c)が充電不能と判定された場合に、EV管理部72は、PVを停止するPV停止指示をPV装置制御部73に送信する。
PV装置制御部73は、PV停止指示をEV管理部72から受信すると、PV装置50の太陽光発電を停止する。
【0032】
切替スイッチ制御部74は、切替スイッチ10が検出した識別情報に基づき、充電率テーブル712を参照して、切替スイッチ10が充電可能なEV20を接続しているか否かを判定する。接続してないと判定された場合に、切替スイッチ制御部74は、充電可能なEV20のいずれか1つに切り替えて接続する接続指示を切替スイッチ10に送信する。一方、接続していると判定された場合に、後述する充放電装置制御部75は、当該EVを充電する指示である充電指示を充放電装置60に送信する。
【0033】
また、切替スイッチ制御部74は、切替スイッチ10が検出した識別情報に基づき、充電率テーブル712を参照して、切替スイッチ10が放電可能なEV20を接続しているか否かを判定する。接続してないと判定された場合に、切替スイッチ制御部74は、放電可能なEV20のいずれか1つに切り替えて接続する接続指示を切替スイッチ10に送信する。一方、接続していると判定された場合に、後述する充放電装置制御部75は、当該EVを放電する指示である充電指示を充放電装置60に送信する。
【0034】
充放電装置制御部75は、PV装置50の出力電力であるPV電力と、重要負荷30の消費電力である負荷消費電力とに基づいて、蓄電池21の充放電の切り替えを判定する。充放電装置制御部75は、PV電力が負荷消費電力よりも大きい場合に、充電を行うと判定し、PV電力が負荷消費電力よりも小さい場合に、放電を行うと判定する。
また、切替スイッチ制御部74により、切替スイッチ10が充電可能なEV20を接続していると判定された場合、充放電装置制御部75は、当該EVを充電する指示である充電指示を充放電装置60に送信する。一方、切替スイッチ10が放電可能なEV20を接続していると判定された場合、充放電装置制御部75は、当該EVを放電する指示である放電指示を充放電装置60に送信する。
【0035】
次に、
図6を参照して、EV20の蓄電池21の充放電処理について説明する。
図6は、本実施形態に係る充放電処理の一例を説明したフローチャートである。
【0036】
停電発生時、充放電装置制御部75は、PV装置50の出力電力であるPV電力をPV装置50から取得し、重要負荷30の消費電力である負荷消費電力を電力計40から取得する(ステップS101)。
【0037】
充放電装置制御部75は、PV電力と負荷消費電力とに基づいて、蓄電池21の充放電の切り替えを判定する(ステップS102)。充放電装置制御部75は、PV電力が負荷消費電力よりも大きい場合に(ステップS102―YES)、充電と判定して処理をステップS103以降の充電処理に進め、PV電力が負荷消費電力よりも小さい場合に(ステップS102―NO)、充電と判定して処理をステップS103以降の充電処理に進める。
【0038】
まず、ステップS103以降の充電処理について説明する。
ステップS103において、EV管理部72は、記憶部71の充電率テーブル712に基づいて、充電可能なEV20の有無を判定する。
【0039】
ステップS103において、充電可能なEV20が1台もないと判定された場合(ステップS103-NO)、EV管理部72は、PVを停止するPV停止指示をPV装置制御部73に送信する。PV装置制御部73は、このPV停止指示に従って、PV装置50の発電を停止する(ステップS107)。
【0040】
ステップS107の後、制御装置70は、処理をステップS101に戻し、同様の処理を繰り返す。PV電力はゼロであるから、充放電装置制御部75は、PV電力は負荷消費電力よりも小さいと判定し(ステップS102-NO)、充電処理から放電処理に切替える。
【0041】
一方、ステップS103において、充電可能なEV20が1台以上あると判定された場合(ステップS103-YES)、切替スイッチ制御部74は、識別情報に基づき、充電率テーブル712を参照して、切替スイッチ10が充電可能なEV20に接続しているか否かを判定する(ステップS104)。
【0042】
切替スイッチ制御部74は、切替スイッチ10が充電可能なEV20に接続していないと判定した場合に(ステップS104-NO)、処理をステップS105に進め、接続していると判定した場合に(ステップS104-YES)、処理をステップS106に進める。
【0043】
ステップS105において、切替スイッチ制御部74は、充電可能なEV20のいずれか一つに切り替えて接続する接続指示を切替スイッチ10に送信する。この場合、例えば、充電可能なEV20の中で充電率が最も小さいものを指定してもよい。切替スイッチ10は、この接続指示に従って、指定されたEV20を接続する。ステップS105の処理後に、制御装置70は、処理をステップS106に進める。
【0044】
ステップS106において、充放電装置制御部75は、切替スイッチ10に接続された充電可能なEV20を充電する指示である、充電指示を充放電装置60に送信する。充放電装置60は、この充電指示に従って、接続されたEV20の蓄電池21の充電を開始する。この場合、PV電力は重要負荷30に供給されるとともに、余剰のPV電力が蓄電池21に充電される。
【0045】
ステップS106の後、制御装置70は、処理をステップS101に戻し、同様の処理を繰り返す。
【0046】
次に、ステップS108以降の放電処理について説明する。
ステップS108において、EV管理部72は、記憶部71の充電率テーブル712に基づいて、放電可能なEV20の有無を判定する。
【0047】
ステップS108において、放電可能なEV20が1台もないと判定された場合(ステップS108-NO)、EV電力は重要負荷30に供給されず、停電が発生する(ステップS112)。
【0048】
一方、ステップS108において、放電可能なEV20が1台以上あると判定された場合(ステップS108-YES)、切替スイッチ制御部74は、識別情報に基づき、充電率テーブル712を参照して、切替スイッチ10が放電可能なEV20に接続しているか否かを判定する(ステップS109)。
【0049】
切替スイッチ制御部74は、切替スイッチ10が放電可能なEV20に接続していないと判定した場合に(ステップS109-NO)、処理をステップS110に進め、接続していると判定した場合に(ステップS109-YES)、処理をステップS111に進める。
【0050】
ステップS110において、切替スイッチ制御部74は、放電可能なEV20のいずれか一つに切り替えて接続する接続指示を切替スイッチ10に送信する。この場合、例えば、放電可能なEV20の中で充電率が最も大きいものを指定してもよい。切替スイッチ10は、この接続指示に従って、指定されたEV20を接続する。ステップS110の処理後に、制御装置70は、処理をステップS111に進める。
【0051】
ステップS111において、充放電装置制御部75は、切替スイッチ10に接続された放電可能なEV20を充電する指示である、放電指示を充放電装置60に送信する。充放電装置60は、この放電指示に従って、接続されたEV20の蓄電池21の放電を開始する。この場合、PVの電力とEVの電力とが重要負荷30に供給される。
【0052】
ステップS111の後、制御装置70は、処理をステップS101に戻し、同様の処理を繰り返す。
【0053】
以上説明したように、本実施形態による電力供給システム1は、商用系統からの電力供給がない場合に、PV装置50と複数のEV(20a~20c)の蓄電池を活用して、PV装置50の電力とEV20の電力とを自立運転範囲の電力系統に接続された重要負荷30に供給する電力供給システムであって、充放電装置60と、切替スイッチ10と、制御装置70とを備える。充放電装置60は、接続されたEV20の蓄電池21の充電率を検出するとともに、蓄電池21の充放電を切替える。切替スイッチ10は、充放電装置60と、複数のEV(20a~20c)のいずれか一つとを切り替えて接続するとともに、接続されたEV20を識別する識別情報を当該EVから検出する。制御装置70は、商用系統からの電力供給がない場合に、PV装置50の発電電力と、重要負荷30の消費電力とに基づいて、切替スイッチ10を介して接続されたEV20の蓄電池21の充放電の切替えを充放電装置60に指示するとともに、充放電装置60が検出した充電率と、切替スイッチ10が検出した識別情報とに基づいて、切替スイッチ10の接続を制御する。
【0054】
これにより、本実施形態による電力供給システム1は、商用系統からの電力供給がない場合に、PV装置50と複数のEV(20a~20c)の蓄電池を活用して、PVの電力とEVの電力を重要負荷30に安定的に供給することができる。
【0055】
なお、上記実施形態における制御装置70は、充電可能なEV20の有無を判定し、充電可能なEV20が2台以上あると判定した場合に、充電率テーブル712に基づいて、充電の優先度を設定し、優先度の高い順に切替スイッチ10に接続するようにしてもよい。例えば、充電時には、充電率が小さいほど優先度を高く設定することにより、充電率の小さい(充電時間の長い)ものから順に充電されるため、切替スイッチ10の切替回数を最小限に抑えることができる。
【0056】
また、上記実施形態における制御装置70は、放電可能なEV20の有無を判定し、放電可能なEV20が2台以上あると判定した場合に、充電率テーブル712に基づいて、放電の優先度を設定し、優先度の高い順に切替スイッチ10に接続するようにしてもよい。例えば、放電時には、充電率が大きいほど優先度を高く設定することにより、充電率の大きい(放電時間の長い)ものから順に放電されるため、切替スイッチ10の切替回数を最小限に抑えることができる。
【0057】
また、上記実施形態において、発電装置がPV装置50である例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、天然ガスコージェネレーション発電機や風力発電装置などに風力発電装置など、他の発電装置であってもよい。
【0058】
なお、上記実施形態における切替スイッチ10として、例えば、半導体スイッチ等の高速スイッチを用いるようにしてもよい。この場合、無瞬断でEV20を切替えることができる。
【0059】
上述した実施形態における充放電処理をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0060】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1…電力供給システム、10…切替スイッチ、20…電気自動車、21…蓄電池、30…重要負荷、40…電力計、50…PV装置、60…充放電装置、70…制御装置、71…記憶部、72…EV管理部、73…PV装置制御部、74…切替スイッチ制御部、75…充放電装置制御部、80…負荷、711…EV識別テーブル、712…充電率テーブル