(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】水処理剤管理システム、および、水処理剤管理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20230101AFI20240730BHJP
G08B 25/08 20060101ALI20240730BHJP
G08B 25/10 20060101ALI20240730BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20240730BHJP
G01F 23/60 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C02F1/00 K
C02F1/00 V
G08B25/08
G08B25/10 D
G08B21/00
G01F23/60
(21)【出願番号】P 2020083066
(22)【出願日】2020-05-11
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000101042
【氏名又は名称】アクアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】南川 拓也
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 眞央
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-210270(JP,A)
【文献】特開2000-191100(JP,A)
【文献】特開2003-019479(JP,A)
【文献】特開2003-022187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00- 1/78
G08B 19/00-21/24
G08B 23/00-31/00
G01F 23/30-23/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理剤タンクの内部の水処理剤の残液量を、当該残液量を管理する水処理剤管理者に報知する残液量監視システムを用いる水処理剤管理システムであって、
前記水処理剤タンクには、あらかじめ定めた満液時の液面高さとあらかじめ定めた最少残液量時の液面高さとの間に、水平方向断面の断面積が互いに異なる箇所があるとともに、前記水処理剤を水処理装置に送液するための定量ポンプが接続されており、
前記残液量監視システムは、液面高さ検知手段と、残液量換算手段と、残液量配信手段と、異常検出手段と、残液量報知手段と、を備え、
前記液面高さ検知手段が、前記水処理剤の前記液面高さを検知し当該液面高さを出力する手段であり、
前記残液量換算手段が、前記液面高さ検知手段から出力された前記液面高さをあらかじめ作成した換算式により前記残液量に換算し当該残液量を出力する手段であり、
前記残液量配信手段が、前記残液量換算手段から出力された前記残液量を配信する手段であり、
前記異常検出手段が、
当該定量ポンプでの送液量より前記水処理剤の減少量が大きいとき、または、小さいとき、あるいは、前記定量ポンプの非稼働時に前記水処理剤が減少することを検出する手段であり、
前記残液量報知手段が、前記残液量配信手段から配信された前記残液量を前記水処理剤管理者に報知する手段
であり、
前記異常検出手段が、当該定量ポンプでの送液量より前記水処理剤の減少量が大きいとき、または、小さいとき、あるいは、前記定量ポンプの非稼働時に前記水処理剤が減少することを検出したときに、前記残液量報知手段より警告が水処理剤管理者に報知され、
前記定量ポンプでの送液量は、前記定量ポンプのストローク数から算出される、ことを特徴とする水処理剤管理システム。
【請求項2】
前記残液量配信手段が、前記残液量を、複数種類の通信回線のうち少なくとも1種類以上の通信回線により構成される残液量配信回線を経由して前記残液量報知手段に配信することを特徴とする請求項1に記載の水処理剤管理システム。
【請求項3】
前記液面高さ検知手段から出力された前記液面高さを、複数種類の通信回線のうち少なくとも1種類以上を経由して前記残液量換算手段に送信する液面高さ送信手段、および/または、
前記残液量換算手段から出力された前記残液量を、複数種類の通信回線のうち少なくとも1種類以上を経由して前記残液量配信手段に送信する残液量送信手段を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水処理剤管理システム。
【請求項4】
前記水処理剤タンク、前記液面高さ検知手段、および、当該液面高さ検知手段から出力された前記液面高さを固有の識別情報とともに複数種類の通信回線のうち少なくとも1種類以上を経由して前記残液量換算手段に送信する液面高さ送信手段、を含む第1複合体、および/または、
前記水処理剤タンク、前記液面高さ検知手段、前記残液量換算手段、および、当該残液量換算手段から出力された前記残液量を固有の識別情報とともに複数種類の通信回線のうち少なくとも1種類以上を経由して前記残液量配信手段に送信する残液量送信手段、を含む第2複合体、を計2つ以上備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水処理剤管理システム。
【請求項5】
前記残液量報知手段を複数備え、前記残液量配信手段が、前記水処理剤タンクの残液量を、複数の前記残液量報知手段から前記固有の識別情報にしたがって選択した少なくとも1つの残液量報知手段に配信する手段であることを特徴とする請求項4に記載の水処理剤管理システム。
【請求項6】
前記換算式が、液量既知の液体を前記水処理剤タンクに複数回注液し、そのときに得た前記水処理剤タンクへの注液量と前記液面高さとの関係から作成した換算式であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の水処理剤管理システム。
【請求項7】
前記換算式が前記注液量と前記液面高さとの関係から最小2乗法で求めた多項式であることを特徴とする請求項6に記載の水処理剤管理システム。
【請求項8】
水処理剤タンクの内部の水処理剤の残液量を、当該残液量を管理する水処理剤管理者に報知する残液量監視システムで実行される水処理剤管理方法であって、
前記水処理剤タンクには、あらかじめ定めた満液時の液面高さとあらかじめ定めた最少残液量時の液面高さとの間に、水平方向断面の断面積が互いに異なる箇所があるとともに、前記水処理剤を水処理装置に送液するための定量ポンプが接続されており、
前記水処理剤管理方法は、液面高さ検知工程と、残液量換算工程と、残液量配信工程と、異常検出工程と、残液量報知工程と、を備え、
前記液面高さ検知工程が、前記水処理剤の前記液面高さを検知し当該液面高さを出力する工程であり、
前記残液量換算工程が、前記液面高さ検知工程において出力された前記液面高さをあらかじめ作成した換算式により前記残液量に換算し当該残液量を出力する工程であり、
前記残液量配信工程が、前記残液量換算工程において出力された前記残液量を配信する工程であり、
前記異常検出工程が、
当該定量ポンプでの送液量より前記水処理剤の減少量が大きいとき、または、小さいとき、あるいは、前記定量ポンプの非稼働時に前記水処理剤が減少することを検出する工程であり、
前記残液量報知工程が、前記残液量配信工程において配信された前記残液量を前記水処理剤管理者に報知する工程
であり、
前記異常検出工程において、当該定量ポンプでの送液量より前記水処理剤の減少量が大きいとき、または、小さいとき、あるいは、前記定量ポンプの非稼働時に前記水処理剤が減少することを検出したときに、前記残液量報知工程により警告が水処理剤管理者に報知され、
前記定量ポンプでの送液量は、前記定量ポンプのストローク数から算出される、ことを特徴とする水処理剤管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理剤タンクの残液量を監視し、水処理剤の残液量を管理する水処理剤管理者に報知する残液量監視システム、残液量監視方法、および、かかる残液量監視システムを用い、かつ、水処理剤タンクないし当該水処理タンクと水処理装置とを接続する配管からの漏液を報知する水処理剤管理システム、水処理剤管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理装置は各種産業において広く用いられており、そして、それら産業において安定生産、衛生管理、資源回収、あるいは、環境汚染防止などのために必須な技術である。
【0003】
しかしながら、水処理装置やそこで用いられる水処理剤の取り扱いには専門的な知識やノウハウが必要であるため、これらを水処理剤企業などの外部の水処理管理業者に委託することが多くなっている。
【0004】
このような水処理管理業者は水処理装置を遠隔監視し、水処理装置のメンテナンスや何らかの問題発生時に水処理装置設置場所に赴いて作業を行うようになっている。
【0005】
具体的な水処理装置の管理項目の一つとして水処理剤の残液量管理が挙げられる。水処理に必要な水処理剤が不足した場合には水処理が不十分となり、その結果、各種製品不良や資源漏出、環境汚染などの問題が発生する恐れが生じる。このため、水処理剤の残液量が不足する前に、水処理装置を用いる水処理装置使用者または水処理管理業者の、場合によっては両者の、水処理剤管理者が水処理剤の追加調製や手配、補充を行うことが極めて重要である。
【0006】
ここで水処理剤の残液量は、水処理剤タンクがガラスや樹脂などの透明素材から形成されたチューブ形状の液面計や、液面に追従するフロートを有する、あるいは、音波を用いる液面センサを備えることにより、検知される液面高さから知ることができるとされている。しかしながら、実際には円筒形や角筒形などのタンクなど、満液時の液面高さと最少残液量時の液面高さとの間で水平方向断面の形状が一定であるタンクではなく、その側面に強度向上などを目的として部分的な陥没部や部分的な突出部などが設けられていたり、あるいは、コンパクト化を目的として水処理剤タンクとともに用いる送液ポンプを収納するためにタンク側面に送液ポンプ収納部として陥没部を設けたものが知られている。このような満液時の液面高さと最少残液量時の液面高さとの間に水平方向断面の断面積が互いに異なる箇所がある水処理剤タンクを用いた場合、水処理剤タンク内部の水処理剤の液面高さの検知だけでは水処理剤の残液量監視に精度的に不十分となる場合がある。
【0007】
また、最近、水処理装置やこのような水処理装置を備えた設備の使用者が外部の水処理管理業者に水処理を委託することがあり、そのため、水処理の遠隔管理技術が提案されている(特許文献1~5)。
しかしながら水処理が遠隔管理できても水処理に必要な水処理剤が不足した場合に水処理剤タンクの液面高さや残液量を水処理剤の残液量を管理する水処理剤管理者に連絡し、追加調製、手配や補充を行う必要があるが、人為的なミスが発生しやすく解決が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-231591号公報
【文献】特許第5714155号公報
【文献】特開2014-198322号公報
【文献】特開2011-235229号公報
【文献】特開2011-104486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記したような従来技術の問題を解決する、すなわち、満液時の液面高さと最少残液量時の液面高さとの間に水平方向断面の断面積が互いに異なる箇所がある水処理剤タンクの残液量を精度よく検知し、かつ、その残液量を水処理剤管理者に報知する残液量監視システム、そのような残液量監視システムを用いた残液量監視方法、および、上記残液量監視システムに水処理剤タンクないし当該水処理タンクと水処理装置とを接続する配管からの漏液を報知する機能を付加する水処理剤管理システム、水処理剤管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の残液量監視システムは、上記問題点を解決するために、水処理剤タンクの内部の水処理剤の残液量を、当該残液量を管理する水処理剤管理者に報知する残液量監視システムにおいて、前記水処理剤タンクは、あらかじめ定めた満液時の液面高さとあらかじめ定めた最少残液量時の液面高さとの間に、水平方向断面の断面積が互いに異なる箇所があり、前記水処理剤の液面高さを検知し、当該液面高さを出力する液面高さ検知手段と、前記液面高さ検知手段から出力された前記液面高さをあらかじめ作成した換算式により前記残液量に換算し、当該残液量を出力する残液量換算手段と、前記残液量換算手段から出力された前記残液量を配信する残液量配信手段と、前記残液量配信手段から配信された前記残液量を前記水処理剤管理者に報知する残液量報知手段と、を備えていることを特徴とする(第一の構成)。
【0011】
本発明の残液量監視システムは、上記の第一の構成に加え、前記残液量配信手段が、前記残液量を、複数種類の通信回線のうち少なくとも1種類以上の通信回線により構成される残液量配信回線を経由して前記残液量報知手段に配信する構成(第二の構成)とすることができる。
【0012】
本発明の残液量監視システムは、上記第一の構成または第二の構成に加え、前記液面高さ検知手段から出力された前記液面高さを、複数種類の通信回線のうち少なくとも1種類以上を経由して前記残液量換算手段に送信する液面高さ送信手段、および/または、前記残液量換算手段から出力された前記残液量を、複数種類の通信回線のうち少なくとも1種類以上を経由して前記残液量配信手段に送信する残液量送信手段に送信する残液量送信手段を備えている構成とすることができる。
【0013】
本発明の残液量監視システムは、上記第一の構成または第二の構成に加え、前記水処理剤タンク、前記液面高さ検知手段、および、当該液面高さ検知手段から出力された前記液面高さを固有の識別情報とともに複数種類の通信回線のうち少なくとも1種類以上を経由して前記残液量換算手段に送信する液面高さ送信手段、を含む第1複合体、および/または、前記水処理剤タンク、前記液面高さ検知手段、前記残液量換算手段、および、当該残液量換算手段から出力された前記残液量を固有の識別情報とともに複数種類の通信回線のうち少なくとも1種類以上を経由して前記残液量配信手段に送信する残液量送信手段、を含む第2複合体、を計2つ以上備えている構成とすることができる。
【0014】
本発明の残液量監視システムは、直上の構成に加え、前記残液量報知手段を複数備え、前記残液量配信手段が、前記水処理剤タンクの残液量を、複数の前記残液量報知手段から前記固有の識別情報にしたがって選択した少なくとも1つの残液量報知手段に配信する手段である構成とすることができる。
【0015】
本発明の残液量監視システムは、上記構成に加え、前記換算式が、液量既知の液体を前記水処理剤タンクに複数回注液し、そのときに得た前記水処理剤タンクへの注液量と前記液面高さとの関係から作成した換算式である構成とすることができる。
【0016】
本発明の残液量監視システムは、直上の構成に加え、前記換算式が前記注液量と前記液面高さとの関係から最小2乗法で求めた多項式である構成とすることができる。
【0017】
本発明の残液量監視方法は、あらかじめ定めた満液時の液面高さとあらかじめ定めた最少残液量時の液面高さとの間に、水平方向断面の断面積が互いに異なる箇所がある水処理剤タンクの内部の水処理剤の残液量を、当該残液量を管理する水処理剤管理者に報知する残液量監視システムで実行される残液量監視方法であって、前記水処理剤の液面高さを検知し、当該液面高さを出力する液面高さ検知工程と、前記液面高さ検知工程から出力された前記液面高さをあらかじめ作成した換算式により前記残液量に換算し、当該残液量を出力する残液量換算工程と、前記残液量換算工程から出力された前記残液量を配信する残液量配信工程と、前記残液量配信工程から配信された前記残液量を前記水処理剤管理者に報知する残液量報知工程と、を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の水処理剤管理システムは、上記いずれかに記載の残液量監視システムを用いる水処理剤管理システムであって、前記水処理剤タンクに、前記水処理剤を水処理装置に送液するための定量ポンプが接続され、当該定量ポンプでの送液量より前記水処理剤の減少量が大きいとき、または、小さいとき、あるいは、前記定量ポンプの非稼働時に前記水処理剤が減少することを検出する異常検出手段を備え、前記異常検出手段が、当該定量ポンプでの送液量より前記水処理剤の減少量が大きいとき、または、小さいとき、あるいは、前記定量ポンプの非稼働時に前記水処理剤が減少することを検出したときに、前記残液量報知手段より警告が水処理剤管理者に報知されることを特徴とする。
【0019】
本発明の水処理剤管理方法は、あらかじめ定めた満液時の液面高さとあらかじめ定めた最少残液量時の液面高さとの間に、水平方向断面の断面積が互いに異なる箇所がある水処理剤タンクの内部の水処理剤の残液量を、当該残液量を管理する水処理剤管理者に報知する残液量監視システムを用いる水処理剤管理システムで実行される水処理剤管理方法であって、前記水処理剤の液面高さを検知し、当該液面高さを出力する液面高さ検知工程と、前記液面高さ検知工程から出力された前記液面高さをあらかじめ作成した換算式により前記残液量に換算し、当該残液量を出力する残液量換算工程と、前記残液量換算工程から出力された前記残液量を配信する残液量配信工程と、前記残液量配信工程から配信された前記残液量を前記水処理剤管理者に報知する残液量報知工程と、前記水処理剤タンクに、前記水処理剤を水処理装置に送液するための定量ポンプが接続され、当該定量ポンプでの送液量より前記水処理剤の減少量が大きいとき、または、小さいとき、あるいは、前記定量ポンプの非稼働時に前記水処理剤が減少することを検出する異常検出工程と、を含み、前記異常検出工程において、当該定量ポンプでの送液量より前記水処理剤の減少量が大きいとき、または、小さいとき、あるいは、前記定量ポンプの非稼働時に前記水処理剤が減少することを検出したときに、前記残液量報知工程により警告が水処理剤管理者に報知される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の残液量監視システムは、水処理剤タンクの内部の水処理剤の残液量を、残液量を管理する水処理剤管理者に報知する残液量監視システムにおいて、水処理剤タンクは、あらかじめ定めた満液時の液面高さとあらかじめ定めた最少残液量時の液面高さとの間に、水平方向断面の断面積が互いに異なる箇所があり、水処理剤の液面高さを検知し、液面高さを出力する液面高さ検知手段と、液面高さ検知手段から出力された液面高さをあらかじめ作成した換算式により残液量に換算し、残液量を出力する残液量換算手段と、残液量換算手段から出力された残液量を配信する残液量配信手段と、残液量配信手段から配信された残液量を水処理剤管理者に報知する残液量報知手段と、を備えている構成(第一の構成)により、満液時の液面高さと最少残液量時の液面高さとの間に水平方向断面の断面積が互いに異なる箇所がある水処理剤タンクの残液量を精度よく検知し、かつ、その残液量を水処理剤管理者に報知することができ、また、残液量の遠隔監視を可能とする。
【0021】
上記の第一の構成に加え、残液量配信手段が、前記残液量を、複数種類の通信回線のうち少なくとも1種類以上の通信回線により構成される残液量配信回線残液量配信回線を経由して残液量報知手段に配信する構成(第二の構成)とすることにより、水処理剤タンクから離間した場所で残液量の遠隔監視を行うことが可能となる。
【0022】
上記の第一の構成または第二の構成に加え、液面高さ検知手段から出力された液面高さを、複数種類の通信回線のうち少なくとも1種類以上を経由して残液量換算手段に送信する液面高さ送信手段、および/または、残液量換算手段から出力された残液量を、複数種類の通信回線のうち少なくとも1種類以上を経由して残液量配信手段に送信する残液量送信手段を設置することが可能となる。そのため、たとえば、水処理装置使用者から残液量の監視を委託された、水処理剤タンクから離間した場所に設置した水処理管理業者が有する残液量換算手段や残液量配信手段を用いて、残液量の監視が可能となる。
【0023】
上記第一の構成または第二の構成に加え、水処理剤タンク、液面高さ検知手段、および、液面高さ検知手段から出力された液面高さを固有の識別情報とともに複数種類の通信回線のうち少なくとも1種類以上を経由して残液量換算手段に送信する液面高さ送信手段、を含む第1複合体、および/または、水処理剤タンク、液面高さ検知手段、残液量換算手段、および、残液量換算手段から出力された残液量を固有の識別情報とともに複数種類の通信回線のうち少なくとも1種類以上を経由して残液量配信手段に送信する残液量送信手段、を含む第2複合体、を計2つ以上備えている構成とすることにより、複数の水処理剤タンク内の水処理剤の残液量を集中して効率よく監視することができる。その結果、たとえば、水処理装置使用者から残液量の監視を委託された、水処理管理業者が有する残液量換算手段や残液量配信手段を用いて、離間した場所に設置された水処理剤タンクの残液量の監視が可能となる。
【0024】
本発明の残液量監視システムは、直上の構成に加え、残液量報知手段を複数備え、残液量配信手段が、水処理剤タンクの残液量を、複数の残液量報知手段から固有の識別情報にしたがって選択した少なくとも1つの残液量報知手段に配信する手段である構成とすることにより、たとえば複数の水処理装置使用者が有する、複数の満液時の液面高さと最少残液量時の液面高さとの間に水平方向断面の断面積が互いに異なる箇所がある水処理タンク中の水処理剤の残液量を集中して監視できるとともに残液量をたとえば複数の水処理剤管理者にも報知することもできる。
【0025】
本発明の残液量監視システムは、上記構成に加え、換算式が、液量既知の液体を水処理剤タンクに複数回注液し、そのときに得た水処理剤タンクへの注液量と液面高さとの関係から作成した換算式である構成とすることにより、換算式作成の事前準備に必要な設備や時間を抑制することができる。
【0026】
本発明の残液量監視システムは、直上の構成に加え、換算式が注液量と液面高さとの関係から最小2乗法で求めた多項式である構成とすることにより、高性能な残液量換算手段を必ずしも必要としないので、システムのコストダウンが可能となる。
【0027】
本発明の残液量監視方法は、あらかじめ定めた満液時の液面高さとあらかじめ定めた最少残液量時の液面高さとの間に、水平方向断面の断面積が互いに異なる箇所がある水処理剤タンクの内部の水処理剤の残液量を、残液量を管理する水処理剤管理者に報知する残液量監視システムで実行される残液量監視方法であって、水処理剤の液面高さを検知し、液面高さを出力する液面高さ検知工程と、液面高さ検知工程から出力された液面高さをあらかじめ作成した換算式により残液量に換算し、残液量を出力する残液量換算工程と、残液量換算工程から出力された残液量を配信する残液量配信工程と、残液量配信工程から配信された残液量を水処理剤管理者に報知する残液量報知工程と、を含むことにより、満液時の液面高さと最少残液量時の液面高さとの間に水平方向断面の断面積が互いに異なる箇所がある水処理剤タンクの残液量を精度よく検知し、かつ、その残液量を水処理剤管理者に報知することができ、また、残液量の遠隔監視を可能とする。
【0028】
本発明の水処理剤管理システムは上記いずれかに記載の残液量監視システムを用いる水処理剤管理システムであって、水処理剤タンクに、水処理剤を水処理装置に送液するための定量ポンプが接続され、定量ポンプでの送液量より水処理剤の減少量が大きいとき、または、小さいとき、あるいは、定量ポンプの非稼働時に水処理剤が減少することを検出する異常検出手段を備え、異常検出手段が、定量ポンプでの送液量より水処理剤の減少量が大きいとき、または、小さいとき、あるいは、定量ポンプの非稼働時に水処理剤が減少することを検出したときに、残液量報知手段より警告が水処理剤管理者に報知される構成により、上記残液量監視システムに水処理剤タンクないし水処理タンクと水処理装置とを接続する配管からの漏液を報知する機能を付加することができる。
【0029】
本発明の水処理剤管理方法は、あらかじめ定めた満液時の液面高さとあらかじめ定めた最少残液量時の液面高さとの間に、水平方向断面の断面積が互いに異なる箇所がある水処理剤タンクの内部の水処理剤の残液量を、残液量を管理する水処理剤管理者に報知する残液量監視システムを用いる水処理剤管理システムで実行される水処理剤管理方法であって、水処理剤の液面高さを検知し、液面高さを出力する液面高さ検知工程と、液面高さ検知工程から出力された液面高さをあらかじめ作成した換算式により残液量に換算し、残液量を出力する残液量換算工程と、残液量換算工程から出力された残液量を配信する残液量配信工程と、残液量配信工程から配信された残液量を水処理剤管理者に報知する残液量報知工程と、水処理剤タンクに、水処理剤を水処理装置に送液するための定量ポンプが接続され、定量ポンプでの送液量より水処理剤の減少量が大きいとき、または、小さいとき、あるいは、定量ポンプの非稼働時に水処理剤が減少することを検出する異常検出工程と、を含み、異常検出工程において、当該定量ポンプでの送液量より水処理剤の減少量が大きいとき、または、小さいとき、あるいは、定量ポンプの非稼働時に水処理剤が減少することを検出したときに、残液量報知工程により警告が水処理剤管理者に報知されることにより、残液量監視システムに水処理剤タンクないし水処理タンクと水処理装置とを接続する配管からの漏液を報知する機能を付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の残液量監視システムのブロック図である。
【
図2】本発明の残液量監視システムの一例の概要を示すモデル図である。
【
図3】
図2の残液量監視システムの端末画面の表示例を示すモデル図である。
【
図4】
図4(a):
図2の残液量監視システムで用いる水処理剤タンクを示すモデル断面図である。
図4(b)、
図4(c)、および、
図4(d):
図4(a)の水処理剤タンクの高さh1、高さh2、および、高さh3におけるそれぞれの断面を示す図である。
図4(e):
図4(a)の水処理剤タンクでの液面高さと残液量との関係と、この関係から作成した一般的な、原点を通る直線からなる換算式の例を示すグラフである。
【
図5】換算式の作成のために
図2の水処理剤タンクに液量既知の水処理剤を複数回注液する状態を示すモデル図である。
【
図6】
図5に示した方法で得られた水処理剤の注液量(残液量)と液面高さとの関係と、これら関係から求めた換算式の例をグラフ化して示すモデル図である。
【
図7】本発明の他の残液量監視システムの概要を示す部分モデル図である。
【
図8】本発明で用いられる水処理剤タンクの他の例を示すモデル断面図である。
【
図9】
図9(a)、
図9(b)、
図9(a)、および、
図9(d):本発明で用いられる水処理剤タンクの他の例を示すモデル図である。
【
図10】水処理管理業者が、複数の水処理装置使用者(顧客)から水処理剤の残液量の監視を含む業務を委託された場合の本発明の残液量監視システムの例を示すモデル図である。
【
図11】上記の残液量監視システムに水処理剤タンクないし当該水処理タンクと水処理装置とを接続する配管からの漏液を報知する機能を付加した水処理剤管理システムのモデル図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、
図1~11を用いて本発明の残液量監視システム、水処理剤管理システム、および、水処理剤管理方法について説明する。
図1は本発明の残液量監視システムの一例を示すブロック図である。
水処理剤タンクTはこの例では略逆円錐台形状であり、満液時の液面高さ(以下、「第一液面高さ」とも云う)と最少残液量時の液面高さ(以下、「第二液面高さ」とも云う)との間で、垂直方向上に向かうにつれ拡径する、すなわち、水平方向断面の断面積が互いに異なる箇所があるタンクである。
【0032】
この水処理剤タンクTの内部の水処理剤Lの液面Sの高さは、液面センサなどの液面高さ検知手段B1により検知され、その値が出力される。出力された液面高さはコンピュータなどの残液量換算手段B2によって、あらかじめ作成した換算式により残液量に換算され、この残液量が残液量配信手段B3に出力される。残液量配信手段B3はこの残液量を残液量報知手段B4に配信し、残液量報知手段B4は残液量配信手段B3から配信された残液量を音声あるいは画面表示などにより水処理剤管理者に報知する。すなわち、
図1に示された残液量監視システムは、液面高さ検知手段B1で実行される動作が液面高さ検知工程、残液量換算手段B2で実行される動作が残液量換算工程、残液量配信手段B3で実行される動作が残液量配信工程、残液量報知手段B4で実行される動作が残液量報知工程としてそれぞれ機能する残液量監視方法が実行される。
【0033】
なお、液面高さ検知手段B1から出力された液面高さを残液量換算手段B2に直接送信せずに、公衆電話回線、携帯電話回線、インターネット回線、LAN回線、および、専用線といった複数種類の通信回線のうち少なくとも1種類以上を経由して前記残液量換算手段に送信する、一点鎖線C1に囲まれた液面高さ送信手段B5により残液量換算手段B2に送信するようにしてもよい。
【0034】
また、残液量換算手段B2から残液量を残配信報知手段B3に直接送信せずに、公衆電話回線、携帯電話回線、インターネット回線、LAN回線、および、専用線といった複数種類の通信回線のうち少なくとも1種類以上を経由して前記残液量配信手段に送信する、一点鎖線C2に囲まれた残液量送信手段B6により残液量配信手段S3に送信するようにしてもよい。
【0035】
また、残液量配信手段B3から残液量を残液量報知手段B4に直接配信せずに、公衆電話回線、携帯電話回線、インターネット回線、LAN回線、および、専用線といった複数種類の通信回線のうち少なくとも1種類以上により構成される、一点鎖線C3に囲まれた残液量配信回線B7を経由して残液量報知手段B4に配信するようにしてもよい。
【0036】
以下、本発明の残液量監視システムをより具体的に説明する。
<本発明の残液量監視システムの一例の概要>
図2は本発明の残液量監視システムの一例を示すモデル図である。
この例では水処理剤タンク1と送液ポンプ3とは水処理を実施する、図示しない水処理装置の付近の水処理剤タンク設置所6に設置されている。
【0037】
水処理剤タンク1には、水処理剤2の液面2aに連動するフロート4bを有するフロート式の液面センサ4が液面高さ検出手段として備えられ、そのフロート高さ検知部4aはフロート4bの高さに応じた電流(この例では4~20mA)を信号線4dにより接続されている液面高さ送信手段であるゲートウェイ5に出力する。
【0038】
ゲートウェイ5では液面高さhをデジタル値(この例では819~4095bit)に変換し、その値を携帯電話回線7により水処理剤タンク1およびゲートウェイ5から離間した地にあるサーバセンタ8内のデータサーバ8aに、定期的に送信する。なお、この送信は必要に応じて不定期的に送信してもよい。
【0039】
ここで、液面高さ送信手段であるゲートウェイ5は公衆電話回線、携帯電話回線、インターネット回線、LAN回線、および、専用線ネット回線、LAN回線、および、専用線といった複数種類の通信回線のうち少なくとも1つ以上により残液量を送信することが好ましい。ここで、水処理剤タンク1が設置された水処理装置使用者の設置場所から、この水処理装置使用者(顧客)より水処理剤の遠隔監視を依頼された水処理管理業者のデータサーバ8aへ液面高さを送信する場合、携帯電話回線を用いるものであると顧客設備での配線設備や工事が不要となる上、またデータサーバ8a等の水処理管理業者のシステムのハッキングやウィルス侵入、データ漏出の恐れを軽減することができるので好ましい。
【0040】
データサーバ8aは図示しないCPU、RAM、ROM、タイマ、および、各種インターフェースなどを有し、ゲートウェイ5により送信された水処理剤2の液面高さhの情報をこの例では携帯電話回線7を介して受け取ると、この値を内部のあらかじめ作成された換算式と演算プログラムとにより水処理剤2の残液量に換算する。このような演算プログラムを内部に有するデータサーバ8aは、液面センサ4により検知した水処理剤2の液面高さとあらかじめ作成した換算式とにより残液量を換算する残液量換算手段である。
【0041】
データサーバ8aは得られた残液量をこの例では、インターネット回線9により水処理剤2の残液量を、残液量を管理する水処理剤管理者に報知する残液量報知手段である、管理センタ10の端末装置10aに配信し、端末装置10aは、当該端末装置10aが有する端末画面10bに配信された水処理剤2の残液量を表示する。そして、水処理剤管理者はこの残液量を見て、必要に応じて新たな水処理剤の手配や補充などを行う。このようにデータサーバ8aは残液量換算手段であるとともに残液量配信手段でもある。
【0042】
水処理剤管理者への残液量の報知はこの例では上記した端末画面10bを常時表示可能な固定端末で行っているが、必ずしも常時表示する必要はなく、定期的に表示してもよく、あるいは、残液量があらかじめ定めた管理範囲の下限あるいはその近くとなったときに行うなど、不定期的に行っても、あるいは端末画面10bを表示可能な携帯端末を介した水処理剤管理者の求めに応じて行うようにしてもよい。また、電子メールやショートメッセージ等を送信して水処理剤管理者に報知してもよい。
【0043】
この端末画面10bによる残液量の報知は、この例では水処理を行う水処理装置使用者から水処理剤の管理を委託された水処理管理業者の管理センタ10内で行っているが、この水処理装置使用者の管理センタで行ってもよく、あるいは両者で行ってもよい。
【0044】
図3には、
図2に示した残液量監視システムの、残液量報知手段の一例である端末画面10bの表示例を示す。この例では水処理剤2の液面高さhが、あらかじめ定めた満液時の液面高さである第一液面高さh1と、水処理剤タンク1の送液ポンプ収納部1g内に設置された送液ポンプ3に配管3aに接続される液出口1hの高さよりも高い、あらかじめ定められた第二液面高さh2と、の間に位置するように残液量を管理している。そして、図示しない水処理装置への水処理剤2の送液により経時的に残液量が徐々に減少し(図中「i」部分)、水処理剤2の補充により急速に残液量が上昇している(図中「ii」部分)ことが理解される。なお、たとえば複数の水処理剤タンクの残液量を同時に、あるは、切り替えて表示するようにしてもよい。また、残液量があらかじめ定めた管理範囲の下限あるいはその近くなるなどの警告を表示できるようにしてもよく、あるいは、残液量とともにそれ以外の情報、たとえば水処理剤2を用いる図示しない水処理装置、さらにはこのような水処理装置が設置された設備の運転状況の表示を行うようにしてもよい。
【0045】
この残液量の報知は、常時、定期的、あるいは、たとえば水処理剤管理者の求めに応じて行う。また、この例ではインターネット回線9を用いていることにより、たとえば水処理剤管理者が端末装置10aから離れた場所にいてもインターネット回線9を介してLAN回線、無線電話回線、電話回線や専用線などの通信回線に接続された端末から残液量情報の提供を受けることができる。このとき、複数の水処理剤管理者がいる場合にはそれぞれの端末により残液量情報の提供を受けることができ、これら各端末はそれぞれ残液量報知手段として機能する。なお、残液量情報の提供はWEB画面で行うこともできる。
【0046】
なお、データサーバ8aによる残液量の残液量報知手段への配信は、インターネット回線9のみならず、インターネット回線とLAN回線、電話回線、携帯電話回線、および、専用線などの通信回線から選ばれる1つ以上とを組み合わせてもよく、また、インターネット回線9を併用せずに、LAN回線、電話回線、携帯電話回線、および、専用線などの通信回線から選ばれる1つ以上を利用して行ってもよい。また、データサーバ8aによる残液量の残液量報知手段への配信はデータサーバ8aが残液量を残液量報知手段に連続的、定期的、あるいは必要に応じて自動的に送信するようにしてもよい。
【0047】
<水処理剤タンクと換算式>
図4(a)に
図2の水処理剤タンク1と送液ポンプ3付近の拡大モデル図を、
図4(b)、
図4(c)、および、
図4(d)にはそれぞれ
図4(a)の符号h1、h2、および、h3を付して示した矢印の高さ位置における水処理剤タンク1の水平方向断面図を、さらに、
図4(e)には残液量と水処理剤タンク1での液面高さhとの関係aを実線で、これらの関係をもとに作成した一般的な、原点を通る直線からなる換算式の例のグラフ化したものbを二点破線で示す。
【0048】
この水処理剤タンク1は基本的には略四角筒形のプラスチック製タンクであるが、あらかじめ定めた満液時の液面高さである第一液面高さh1とあらかじめ定めた最少残液量時の液面高さである第二液面高さh2との間の側面が、部分的な陥没部のない第一側面部分1dと、部分的な溝状の2つの陥没部1eと後述する送液ポンプ3を収納するためのやはり部分的な陥没部である送液ポンプ収納部1gが形成されている、第二側面部分1fと、から構成されている。
【0049】
この水処理剤タンク1はプラスチック製であるが、上記のようにその側面に部分的な陥没部1eが形成されていることによりその機械的強度が向上しており、取り扱い時の潰れやそれに起因する液漏れなどの障害発生が抑制されている。また、上記において陥没部1eや送液ポンプ収納部1gが設けられた第二側面部分1fを、部分的な突出部のない側面部分であるとすると、第一側面部分1dが部分的に突出した突出部が形成された側面部分と見なすことができるように、陥没部と突出部とは互いに相対的なものである。
【0050】
この水処理剤タンク1は、
図4(b)、
図4(c)、および、
図4(d)に示した3箇所の断面図から理解されるように水処理剤タンクのあらかじめ定めた満液時の液面高さである第一液面高さh1とあらかじめ定めた最少残液量時の液面高さである第二液面高さh2との間に、水平方向断面の断面積が互いに異なる箇所があるタンクである。
【0051】
水処理剤タンク1に設けられた送液ポンプ収納部1gには、液出口1hに配管3aにより接続され、図示しない水処理装置に水処理剤2を供給する送液ポンプ3が収納されている。この構成により水処理剤タンク1および送液ポンプ3の設置に必要とする床面積は水処理剤タンク1の設置床面積と等しくなっている。このように水処理剤タンクに送液ポンプの少なくとも一部分を収納するための送液ポンプ収納部を形成することで水処理剤タンク1および送液ポンプ3の設置床面積を小さくすることが可能となる。
【0052】
水処理剤タンク1の上部には水処理剤2の補充のための補充口1aが設けられ、補充口1aは水処理剤2の補充時以外は蓋1bにより覆われている。なお、この蓋1bは補充口1aを覆うものの密閉はしていないので、図示しない水処理装置への水処理剤2の供給に伴い、水処理剤タンク1外部の空気が水処理剤タンク1内に入り込むために、蓋1bが水処理剤2の図示しない水処理装置への供給の妨げとなることはない。
【0053】
水処理剤タンク1の上部にはさらに液面センサ挿入口1cが設けられており、この液面センサ挿入口1cには液面センサ4がセットされ、そのフロート4bを有するシャフト4cが水処理剤タンク1内部へ挿入されている。液面センサ4はこの例ではフロート式液面センサであり、そのフロート4bはシャフト4cに沿って、水処理剤タンク1内の水処理剤2の液面高さhの変化に従って、第一液面高さh1と第二液面高さh2との間を上下する。フロート高さ検知部4aはフロート4bの上下位置により水処理剤2の液面高さに相当する電流を接続された機器に出力することができ、
図2に示した例ではこのような機器としてデジタル電流計機能を有するゲートウェイ5が接続されている。なお、フロート高さ検知部4aの出力はこの例では電流値であるが、電圧値や周波数値、あるいは、電気抵抗値などであってもよい。
【0054】
図4(e)には
図4(a)に示した水処理剤タンク1での水処理剤2の実際の残液量と、液面センサ4により検出された液面高さの関係を示す実線aと、これらの関係から作成した、残液量を算出される際に一般に用いられる、原点を通る直線からなる換算式(二点破線)b(グラフ化したもの)と、を示す。
【0055】
図4(e)により理解されるように実線aと換算式bとの間には部分的に小さくない差がある。そして、これらの差は液面が第二液面高さh2近くとなる付近では比較的大きく、このため安定した水処理を目的とする、水処理剤2の補充時期を判断するための残液量の監視としては換算式bの使用は適切ではないと考えられる。また、第二液面高さh2近くの残液量を精度よく近似できるように換算式を作成すると、満液時の液面高さの検出誤差が大きくなってしまう。
【0056】
次に、この換算式bよりも実際の残液量の算出に適した換算式の例の作成例について
図5および
図6を用いて説明する。この例では水処理剤タンク1周辺での換算式作成作業の完結を目的として、液面センサ4のフロート高さ検知部4aに一時的に電流計11を接続することで、データサーバ8aなどを介さずに液面センサ4の出力データの採取を可能としている。
【0057】
図5に示したように、まず、水処理剤タンク1内の水処理剤2の液面高さhが第二液面高さh2と同じとなるように水処理剤2の残液量を調整する。次いで水処理剤タンク1に水処理剤2を、ビーカー12などを利用しながら液面高さhが第一液面高さh1となるまで複数回(この例では10回)に分けて注液するが、このときの注液した水処理剤2の液量をそれぞれ測定し記録しておく。このようにして水処理剤2の水処理剤タンク1への注液によって上昇する液面高さ(電流値)と実際の注液量(積分値)との関係のデータを得る。
【0058】
図6に、このとき得られた水処理剤2の水処理剤タンク1への注液量(積分値)と、電流計11で検出された電流値から求めた液面高さとのデータを黒丸で、また、これらデータを用いて最小2乗法により求めた換算式c(2次多項式)をグラフ化して実線で示す。
【0059】
図6から、第一液面高さh1と第二液面高さh2との間の全域で実際の残液量と換算式cとの差が
図4(e)に示した例での差よりも小さくなり、その結果精度の高い残液量の監視が可能となる。
【0060】
なお、この例では水処理剤タンク1に注液する液体として水処理剤2を用いた。フロート式液面センサは、多少であるが液比重の影響を受けるため、用いる液体としては実際に用いる水処理剤2、あるいは、比重が水処理剤2に近い液体を用いることが好ましい。また、フロート式液面センサ4の代わりに音波式の液面センサなどの液体の比重に左右されずに液面高さを測定できる液面センサを用いてもよい。
【0061】
また、換算式の作成には、上記のように注液を複数回に分けることなく、定量ポンプや積算流量計などを用いて連続的に行うこともでき、このとき一般に精度の高い換算式を得ることができるが、上記した分割注液方法であると事前準備が簡単であり、かつ水処理剤タンク1の鉛直方向の断面形状の変化が極端に大きい場合を除き実用には十分な精度を備えた換算式が得られるので好ましい。
【0062】
なお、上記では換算式cは2次多項式としたが、本発明ではこの限りではなく、他の近似式、たとえば、3次以上の多項式や対数近似式、累乗近似式などを換算式として用いることもできる。ここで、一般に入手できるゲートウェイのなかには、あらかじめ入力した1次多項式などの簡単な演算式を用いて演算を行う演算機能を備えたものもある。そして、このような機能を備えたゲートウェイを残液量換算手段、兼、残液量送信手段として用いることで、データサーバ8aの負荷を分散させることができ、比較的安価なデータサーバであっても多くの水処理剤タンクの残液量の監視に対応できるなどの利点が得られる。
【0063】
<演算機能を備えたゲートウェイを用いる例>
図7に、このような演算機能を備えたゲートウェイを用いた残液量監視システムの例の、水処理剤タンク付近、および、サーバセンタ8付近のモデル図(管理センタ10は省略)を示す。
【0064】
水処理剤タンク1には液面高さ検知手段として液面センサ4がセットされ、フロート高さ検知部4aには上記のような演算機能を備えた残液量換算手段、兼、残液量送信手段であるゲートウェイ5aが信号線4dにより接続されている。このゲートウェイ5aはフロート高さ検知部4aから水処理剤2の液面高さを電流値として受け取り、この値をゲートウェイ5a内部の図示しないフラッシュメモリなどのROM内に格納された演算プログラムにより換算式によって残液量に換算し、その残液量をデジタル値として、携帯電話回線7により、水処理剤タンク1およびゲートウェイ5aから離間した地にあるサーバセンタ8内のデータサーバ8bに送信する。残液量配信手段であるデータサーバ8bはこの残液量を
図2に示した残液量監視システム同様に図示しない残液量報知手段としての端末装置10aに配信する。
【0065】
この例ではゲートウェイ5aは、液面センサ4により検知した液面高さhとあらかじめ作成した換算式とにより残液量を求める残液量換算手段を備えたゲートウェイとして機能する。なお、
図7に示した例では残液量換算手段を備えたゲートウェイ5aのみを用いた例を示したが、複数の水処理剤タンクの残液量を監視する残液量監視システムで、残液量換算手段を備えたゲートウェイと残液量換算手段のないゲートウェイとを併用してもよい。
【0066】
<水処理剤タンクの他の例>
図8には、
図2、
図4、
図5、および、
図7に示した水処理剤タンク1とは異なる、他の水処理剤タンクの例のモデル断面図を示した。
この水処理剤タンク1’底部付近の、この水処理剤タンク1’の第二液面高さh2付近の側面には、陥没部として、送液ポンプ収納部1g’が設けられており、この送液ポンプ収納部1g’には、第二液面高さh2’よりも低い位置に設けられた液出口1h’に配管3aにより接続された送液ポンプ3が収納されている。
【0067】
このような水処理剤タンク1’も第一液面高さh1’と第二液面高さh2’との間の前記水処理剤タンクの側面が、部分的な陥没部のない第一側面部分1d’と、部分的な陥没部として送液ポンプ収納部1g’が形成されている第二側面部分1f’と、から構成される。このように第一側面部分1d’における水平方向断面の断面積と、第二側面部分1f’における水平方向断面の断面積と、が互いに異なるタンク、すなわち、第一液面高さh1’と第二液面高さh2’との間に、水平方向断面の断面積が互いに異なる箇所があるタンクである。
【0068】
このような水処理剤タンク1’を用いた場合でも本発明の残液量監視システムによれば、脆弱性の発生を防止しながら、離間した地の水処理剤タンクの残液量を精度よく検知し、かつ、その残液量を、水処理装置使用者または水処理管理業者の、場合によっては両者の、水処理剤管理者に精度よく報知することができ、その情報を得た水処理剤管理者は水処理剤の調製、発注、水処理剤タンク1への水処理剤2の補充などの必要な作業を行うことができるので、水処理剤の不足による各種障害の発生を防止することができると云う本発明の効果を得ることができる。
【0069】
ここで、第一液面高さh1と第二液面高さh2との間に、水平方向断面の断面積が互いに異なる箇所があるタンクの例として
図9(a)、
図9(b)、
図9(c)、および、
図9(d)に示した。このように、本実施形態における水平方向断面の断面積が互いに異なる箇所がある水処理剤タンクとは、満液時の液面高さと最少残液量時の液面高さとの間までの任意の2箇所の水平方向の断面積を比較した場合に、互いの断面積が異なる組み合わせが存在するタンクである。ここで、互いの断面積が異なるとは、もっとも大きい断面積に対するもっとも小さい断面積の比率が0.98以下の場合を云う。
【0070】
<複数の水処理剤タンクの残液量の監視の例>
水処理管理業者が、水処理装置を有する複数の水処理装置使用者から水処理剤の残液量の監視を含む業務を委託された場合、複数の水処理剤タンクの残液量の監視を集中して監視することができる、本発明の残液量監視システムの例を
図10に示す。
【0071】
図中符号13A、13B、および、13Cを付して示されているのがそれぞれ水処理剤タンク1と液面高さ検知手段である液面センサ4と液面高さ送信手段であるゲートウェイ5とからなる複合体(第1複合体)であり、これらのうち複合体13Aおよび複合体13Bが、この例における水処理装置使用者である顧客Aが有する水処理剤タンク設置所6Aに設置されており、複合体13Cは別の水処理装置使用者である顧客Bが有する水処理剤タンク設置所6Bに設置されている。
【0072】
これら複合体13A、13B、および、13Cのゲートウェイ5はそれぞれ固有の識別情報を有しており、ゲートウェイ5はそれぞれの水処理剤のタンク液面高さをその固有の識別情報(ID)とともに、水処理管理業者のデータサーバ8aに、この例では携帯電話網を介して送信する。データサーバ8aは受信した3つの液面高さをそれぞれの識別情報を元に選択した、複合体の水処理剤タンク形状に適した換算式および演算プログラムによりそれぞれの複合体における水処理剤タンクの残液量に換算し、必要に応じて個別にデータサーバ8内のハードディスクなどの記憶装置に複合体ごとに、および/または、顧客ごとに保管する。このような構成により、複数の複合体の水処理剤タンクにおける残液量を複合体ごとに、および/または、水処理装置使用者ごとに効率的に監視できる。
【0073】
なお、データサーバ8aは上記例では残液量換算手段と残液量配信手段とを兼ねているため、この例ではこれら2つの手段はゲートウェイ5からの識別情報を共用していることとなるが、演算機能、すなわち残液量換算手段を備え、固有の識別情報を有したゲートウェイを用いた場合にはデータサーバ8aは残液量配信手段のみとして機能し、残液量とこの固有の識別情報を受信する。このような残液量換算手段を備えた複合体は第2複合体として機能する。
【0074】
データサーバ8aは残液量配信手段として上記の固有の識別情報を元に、水処理装置使用者Aの管理センタ10Aを選択し複合体13Aおよび13Bの水処理剤タンクの残液量を配信する。そしてこの2つの残液量の経時変化は管理センタ10Aの残液量報知手段である端末画面10bに同時に表示される。また、これとは別に、データサーバ8aは複合体13Cの残液量を上記の固有の識別情報を元に、水処理装置使用者(顧客)Bの管理センタ10Bを選択して送信し、複合体13Cの水処理剤タンク1の残液量の経時変化が管理センタ10Bの残液量報知手段である端末画面10bに表示される。
【0075】
このデータサーバ8aは水処理管理業者のサーバセンタ8内に設置してあり、このデータサーバ8aと社内LAN9aにより接続されている、このサーバセンタ8に隣接する水処理管理業者の管理センタ10C内の端末画面10bでこれら複合体13A、13B、および、13Cの水処理剤タンク1の残液量の経時変化が集中して表示される。また、必要に応じて水処理剤管理者は個々の複合体を選択してその残液量の経時変化を拡大表示させて詳細に確認することができる。なお、社内LAN9aにより接続した、水処理管理業者の管理センタ10C内の端末画面10bではなく、データサーバ8aに直接接続された端末画面で残液量を報知するようにしてもよい。
【0076】
各水処理装置使用者や水処理管理業者の水処理剤管理者はそれぞれの残液量報知手段である端末画面10bに表示された残液量により、必要により水処理剤の調製、発注、補充や警告などの必要な作業を行う。
図10に示したシステムではこのように複数の水処理装置使用者の、そして、複数の複合体の水処理剤タンクの残液量をこれら複合体よりも少ない数のデータサーバで集中的に、かつ、効率的に監視できる。なお、この例では液面高さからの残液量の換算はすべてデータサーバ8aで行っているが、本発明ではこの限りではなく一部ないし全部のゲートウェイで液面高さからの換算を行って得られた残液量をデータサーバ8aで行うようにしてもよい。
【0077】
ここで、上記した残液量監視システムに、水処理剤タンクないし当該水処理タンクと水処理装置とを接続する配管からの漏液を報知する機能を付加することができる。このような例として
図11に示した水処理剤管理システムは基本的に
図2に示した残液量監視システムに送液ポンプ3としてダイアグラムポンプ、プランジャーポンプなどの定量ポンプ、この例ではダイアグラムポンプを用いたものある。この送液ポンプ3のストローク数(パルス信号数)を信号線3bとゲートウェイ5とを介して携帯電話回線網によってデータサーバ8aに送信する。
【0078】
データサーバ8aはこのストローク数から送液量を算出し、算出された送液量より水処理剤2の減少量が大きいときには、水処理剤タンクや配管からの漏液の疑いがあり、算出された送液量より水処理剤2の減少量が小さいときには、送液ポンプ3の故障の疑いが生じる。これらの場合には残液量報知手段である端末画面10bより警告(図中、前者の場合の、漏液の警報時の例を示す。)が水処理剤管理者に報知される。なお、この例では送液ポンプ3のストローク数を送信しているが、送液ポンプ3のオン/オフ情報を送信して、その駆動時間から送液量を算出してもよい。また、送液ポンプ3の非稼働時に残液量が減少する場合も警告するようにしてもよい。すなわち、
図11の例では、データサーバ8aが異常検出手段として機能する。また、データサーバ8aで実行される異常検出手段としての動作が異常検出工程となり、
図11に示されたシステムは、水処理管理方法を実行している。
【0079】
以上、本発明について、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明の残液量監視システム、残液量監視方法、水処理剤管理システム、および、水処理剤管理方法は、上記実施形態の構成に限定されるものではない。
【0080】
当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の残液量監視システム、残液量監視方法、水処理剤管理システム、および、水処理剤管理方法を適宜改変することができる。このような改変によってもなお、本発明の残液量監視システム、残液量監視方法、水処理剤管理システム、および、水処理剤管理方法の構成を具備する限り、もちろん、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0081】
T 水処理剤タンク
L 水処理剤
S 液面
B1 液面高さ検知手段
B2 残液量換算手段
B3 残液量配信手段
B4 残液量報知手段
B5 液面高さ送信手段
B6 残液量送信手段
B7 残液量配信回線
1、1’ 水処理剤タンク
1a 補充口
1b 蓋
1c 液面センサ挿入口
1d、1d’ 第一側面部分
1e 部分的な陥没部
1f、1f’ 第二側面部分
1g、1g’ 送液ポンプ収納部
1h、1h’ 液出口
2 水処理剤
2a 液面
3 送液ポンプ
3a 配管
3b 信号線
4 液面センサ
4a フロート高さ検知部
4b フロート
4c シャフト
4d 信号線
5 ゲートウェイ
6、6A、6B 水処理剤タンク設置所
7 携帯電話回線
8 サーバセンタ
8a データサーバ
9 インターネット回線
9a 社内LAN
10、10A、10B、10C 管理センタ
10b 端末画面
11 電流計
12 ビーカー
13A、13B、および、13C 複合体
h 液面高さ
h1、h1’ 第一液面高さ
h2、h2’ 第二液面高さ