(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】食品容器内貼りフィルム、及びその製造方法、用途、食品容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20240730BHJP
B65D 81/38 20060101ALI20240730BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240730BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240730BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B65D81/34 U
B65D81/38 B
B32B27/00 H
B32B27/32 E
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2020098716
(22)【出願日】2020-06-05
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩城 優介
(72)【発明者】
【氏名】山地 理嗣
(72)【発明者】
【氏名】岡本 拓真
(72)【発明者】
【氏名】坪井 立也
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-348203(JP,A)
【文献】再公表特許第2015/166848(JP,A1)
【文献】特開2004-167823(JP,A)
【文献】特開平01-009186(JP,A)
【文献】特開平08-259721(JP,A)
【文献】特開平04-191043(JP,A)
【文献】特開平11-034251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
B65D65/00-65/46
81/32-81/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品容器の内層を形成する食品容器内貼りフィルムにおいて、
表面層(A)がポリプロピレン系樹脂から成り、該表面層と接する層(B)が密度940kg/m
3未満のポリエチレン系樹脂から成
り、
収容させた食品を冷凍保存した後、電子レンジで加熱調理する為の食品容器に用いることを特徴とする食品容器内貼りフィルム。
【請求項2】
前記表面層と接する層(B)を成すポリエチレン系樹脂が密度918kg/m
3未満の直鎖状低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1記載の食品容器内貼りフィルム。
【請求項3】
前記表面層と接する層(B)を成すポリエチレン系樹脂が密度910kg/m
3未満の直鎖状低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1または2記載の食品容器内貼りフィルム。
【請求項4】
前記表面層と接する層(B)が、前記表面層(A)とは反対側の面にラミネート層(C)を備え、
前記ラミネート層(C)が、表面層と接する層(B)を成すポリエチレン系樹脂よりも、密度が高い直鎖状低密度ポリエチレンから成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の食品容器内貼りフィルム。
【請求項5】
前記食品容器内貼りフィルムの厚さをT、前記表面層と接する層(B)の厚さをTbとするとき、Tb≧0.7T、であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の食品容器内貼りフィルム。
【請求項6】
前記ポリプロピレン系樹脂が、プロピレンのホモポリマー及び/又はプロピレン・エチレンブロック共重合体であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の食品容器内貼りフィルム。
【請求項7】
Tダイ共押出法により、延伸処理することなく製膜することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の食品容器内貼りフィルムの製造方法。
【請求項8】
少なくとも、発泡シートと、請求項1乃至6のいずれかに記載の食品容器内貼りフィルムとからなる食品容器であって、ポリプロピレン系樹脂から成る前記表面層(A)が最内層であることを特徴とする食品容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品容器の内層を形成する食品容器内貼りフィルムに関する。詳しくは発泡シートからなる層を備える食品トレー等の食品容器において、内層となる内貼りフィルムに関する。また該フィルムの製造方法、用途、該フィルムを用いた食品容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、調理された総菜等を冷凍した冷凍食品の普及が目覚ましい。当該冷凍食品は、冷凍時に使用された食品容器に入れられた状態で、そのまま電子レンジにかけられ、加熱調理されるものが多い。よって、当該食品容器には、(1)冷凍保存に割れ等が発生しない耐寒性、(2)電子レンジ調理に耐えうる耐熱性、(3)電子レンジ調理直後の容器を持っても、手指に熱さが伝わらない断熱性、が求められている。
【0003】
特許文献1は、冷凍保存する為の保存容器としても用いられるレンジアップ容器に関する発明で、冷凍時及び加熱時における取り扱いが容易なレンジアップ容器の提供を課題とする(特許文献1[0001][0008])。特許文献1では、容器本体に断熱性を発揮させる層(発泡層)を設け、更に最外層を、高密度ポリエチレン樹脂を主成分とする樹脂組成物で形成することによって落下時の割れの発生を抑制させる(特許文献1[0009])。
【0004】
特許文献2は、熱可塑性ポリエスエル系樹脂発泡シート及び熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器に関する発明である(特許文献2[0001])。特許文献2の目的は、高い断熱性の容器が得られ、容器の生産性を高められる熱可塑性ポリエステル系発泡シート(特許文献2[0005])の提供である。特許文献2に開示される熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートは、熱可塑性ポリエステル系樹脂と結晶化促進剤とを含有し、結晶化時間が14分以下であることを特徴とする(特許文献2[請求項1])。尚、特許文献2には、該熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートから得られる容器を冷凍レンジアップ容器とすることが開示されている(特許文献1[請求項13])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-173649号公報
【文献】特開2018-90761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
収容させた食品を冷凍保存した後、電子レンジで加熱調理する為の食品容器には、上述した通り、(1)耐寒性、(2)耐熱性、(3)断熱性、が求められている。特許文献1、2に開示されているように、発泡シート(発泡層)の採用により、(3)断熱性については概ね解決することができるが、(1)耐寒性や(2)耐熱性についても満足できる容器は、未だ提案されていない。
本発明は、(1)耐寒性、(2)耐熱性の双方に優れる食品容器内貼りフィルムの提供を課題とする。更に、該内貼りフィルムを、(3)断熱性に優れる発泡シートと貼り合わせることにより、(1)耐寒性、(2)耐熱性、(3)断熱性、の全てに優れる食品容器を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると上記課題を解決する為の手段として、
(1) 食品容器の内層を形成する食品容器内貼りフィルムにおいて、表面層(A)がポリプロピレン系樹脂から成り、該表面層と接する層(B)が密度940kg/m3未満のポリエチレン系樹脂から成ることを特徴とする食品容器内貼りフィルムが提供される。
(2) 前記表面層と接する層(B)を成すポリエチレン系樹脂が密度918kg/m3未満の直鎖状低密度ポリエチレンであることを特徴とする(1)記載の食品容器内貼りフィルムが提供される。
(3) 前記表面層と接する層(B)を成すポリエチレン系樹脂が密度910kg/m3未満の直鎖状低密度ポリエチレンであることを特徴とする(1)または(2)記載の食品容器内貼りフィルムが提供される。
【0008】
(4) 前記表面層と接する層(B)が、前記表面層(A)とは反対側の面にラミネート層(C)を備え、前記ラミネート層(C)が、表面層と接する層(B)を成すポリエチレン系樹脂よりも、密度が高い直鎖状低密度ポリエチレンから成ることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の食品容器内貼りフィルムが提供される。
(5) 前記食品容器内貼りフィルムの厚さをT、前記表面層と接する層(B)の厚さをTbとするとき、Tb≧0.7T、であることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の食品容器内貼りフィルムが提供される。
(6) 前記ポリプロピレン系樹脂が、プロピレンのホモポリマー及び/又はプロピレン・エチレンブロック共重合体であることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載の食品容器内貼りフィルムが提供される。
【0009】
(7) Tダイ共押出法により、延伸処理することなく製膜することを特徴とする(1)乃至(6)のいずれかに記載の食品容器内貼りフィルムの製造方法が提供される。
(8) 収容させた食品を冷凍保存した後、電子レンジで加熱調理する為の食品容器に用いることを特徴とする(1)乃至(6)のいずれかに記載の食品容器内貼りフィルムの用途が提供される。
(9) 少なくとも、発泡シートと、請求項1乃至6のいずれかに記載の食品容器内貼りフィルムとからなる食品容器であって、ポリプロピレン系樹脂から成る前記表面層(A)が最内層であることを特徴とする食品容器が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の食品容器内貼りフィルムは、表面層(A)がポリプロピレン系樹脂からなる為、耐熱性に優れる。食品と接する層が、該表面層(A)からなる食品容器は、食品が電子レンジで高温に加熱されても、容器表面が溶融し難い。また該表面層と接する層(B)が密度940kg/m3未満のポリエチレン系樹脂から成る為、耐寒性に優れる。該表面層と接する層(B)により、-30℃~-20℃という低温環境下においても、容器の割れが抑制される。
特に、該層(B)が密度918kg/m3未満、更には密度910kg/m3未満の直鎖状低密度ポリエチレンから成ると、耐寒性は非常に優れたものとなる。
【0011】
また、上述した層(B)が、一方において表面層(A)と接するとともに、他方にラミネート層(C)を備え、該ラミネート層(C)が層(B)よりも密度の高い直鎖状低密度ポリエチレンから成ると、フィルムのハンドリング性が向上する。
更に、食品容器内貼りフィルムの厚さをT、表面層と接する層(B)の厚さをTbとするとき、Tb≧0.7Tであると、フィルムの耐寒性はさらに優れたものとなる。
更にまた、一方の表面層(A)を成す樹脂がプロピレンのホモポリマー及び/又はプロピレン・エチレンブロック共重合体であると、耐熱性はより優れたものとなる。
【0012】
また、本発明の食品容器内貼りフィルムが、Tダイ共押出法により延伸処理されることなく製膜されたものであると、トレー等、食品容器への成型性が良好である。
また本発明の食品容器内貼りフィルムは、(1)耐寒性、(2)耐熱性、に優れるため、(3)断熱性、に優れる発泡シートと貼り合わせることにより、収容させた食品を冷凍保存した後、電子レンジで加熱調理する用途に適した食品容器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の食品容器内貼りフィルムの一実施形態を表す模式的断面図である。
【
図2】ポリプロピレンホモポリマーのDSCチャートである。
【
図3】プロピレン・エチレンブロック共重合体のDSCチャートである。
【
図4】プロピレン・エチレンランダム共重合体のDSCチャートである。
【
図5】本発明の食品容器内貼りフィルムの別の実施形態を表す模式的断面図である。
【
図6】本発明の食品容器の一実施形態を表す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく同様の効果を奏する範囲において種々の実施形態をとることができる。
[食品容器内貼りフィルム]
図1は本発明の食品容器内貼りフィルムの一実施形態を表す模式的断面図である。本発明の食品容器内貼りフィルム(以下、必要に応じ「内貼りフィルム」と略称する)1は、少なくとも一方の表面層(A)と、該表面層と接する層(B)とを備える。
【0015】
<表面層(A)>
表面層(A)は、
図1に示すように、内貼りフィルム1の一方の表面を形成する層であり、内貼りフィルムの耐熱性向上に寄与する。該表面層(A)は、ポリプロピレンホモポリマー、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・ブテン-1ランダム共重合体等、従来公知のポリプロピレン系樹脂から成る。しかしながら耐熱性を考慮すると該表面層(A)は、ポリプロピレンホモポリマー及び/又はプロピレン・エチレンブロック共重合体から成ることが望ましい。
【0016】
図2~4はポリプロピレン系樹脂のDSCチャートで、(株)日立ハイテクサイエンス製DSC6200にて測定したものである。測定温度は、
図2(ポリプロピレンホモポリマー)は、30℃で1分間保持した後、10℃/minで30℃から230℃まで昇温し、230℃で5分間保持した後、10℃/minで0℃まで降温し、再度10℃/minで0℃から230℃まで昇温した。
図3(プロピレン・エチレンブロック共重合体)、
図4(プロピレン・エチレンランダム共重合体)は、昇温を250℃まで行った以外は、
図2と同様にして測定した。
図2は、後述する実施例において使用したポリプロピレンホモポリマーのDSCチャートであるが、二度目の昇温における吸熱ピークは、167.1℃をピークトップとするシャープなものである。よって、表面層(A)がポリプロピレンホモポリマーからなる内貼りフィルムを用い、該表面層(A)が最内層となる食品容器を作成して、これに食品を入れて電子レンジ加熱すると、食品表面が120~130℃になるまで該表面層(A)が軟化することはなく、また食品表面が167.1℃に近づくまで、該表面層(A)が溶融することはない。
【0017】
図3は後述する実施例において使用したプロピレン・エチレンブロック共重合体のDSCチャートである。該チャートを見ると、二度目の昇温における吸熱ピークは、115.9℃にエチレン成分に起因するごく小さなピークが見られるものの、主なピークは164.6℃をピークトップとするシャープなものである。よって、食品表面が164.9℃に近づくまで表面層(A)はほとんど溶融しない。
図4はプロピレン・エチレンランダム共重合体のDSCチャートである。該チャートを見ると、二度目の昇温における吸熱ピークは、139.0℃をピークトップとするブロードなものである。よって、該樹脂から成る表面層(A)は、食品表面が139.0℃になるよりも前から溶融し始めるものと思われる。
【0018】
該表面層(A)の厚さは、特に限定されるものではないが、耐熱性の面から2μm以上、特に3μm以上であることが好ましい。また表面層(A)が厚くなりすぎると、内貼りフィルムがカールし、発泡シートと貼り合わせ難くなる。よって表面層(A)の厚さをTa、フィルムの厚さをTとするとき、Ta≦0.4Tであることが望ましく、特にTa≦0.3T、更にはTa≦0.2Tであることが望ましい。
【0019】
<表面層と接する層(B)>
本発明の内貼りフィルムは、表面層と接する層(B)が密度940kg/m3未満のポリエチレン系樹脂から成る為、耐寒性(低温環境下における耐衝撃性)に優れる。当該ポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等の従来公知のポリエチレン系樹脂を、必要に応じブレンドして用いることができる。中でも密度が918kg/m3未満の直鎖状低密度ポリエチレン、特に密度910kg/m3未満の直鎖状低密度ポリエチレンは、耐寒性に優れるため、該層(B)を成す樹脂として適する。
ポリエチレン系樹脂の密度が940kg/m3以上であると、内貼りフィルムは良好な耐寒性を発揮することができない。また該層(B)を成すポリエチレン系樹脂の密度の下限は特にないが、密度が低くなりすぎると常温環境下における衝撃強度が低下する恐れがある為、860kg/m3以上、特に880kg/m3以上であることが好ましい。
【0020】
また該層(B)には、30重量%を上限として、プロピレン系エラストマーを添加することができる。プロピレン系エラストマーを添加すると、内貼りフィルムの耐寒性が向上し、また表面層(A)と層(B)との密着性も高まる。
【0021】
該層(B)により、内貼りフィルムの耐寒性は向上するが、該層(B)が薄すぎるとその効果は乏しい。該層(B)の厚さをTb、フィルムの厚さをTとするとき、Tb≧1/2Tであることが望ましく、特にTb≧0.6T、更にはTb≧0.7Tであることが望ましい。
【0022】
<ラミネート層(C)>
図5は、本発明の内貼りフィルムの別の実施形態を表す模式的断面図である。上述した層(B)は耐寒性に優れる反面、ハンドリング性に劣る。特に該層(B)が、密度が918kg/m
3未満の直鎖状低密度ポリエチレン、中でも密度910kg/m
3未満の直鎖状低密度ポリエチレンから成る場合、内貼りフィルムが搬送ロールから剥がれ難くなったり、ロール巻き保管後の繰り出しがスムーズにできなかったりすること恐れがある。このような問題を解決する為には、
図5に示すように、該層(B)よりも密度の高い直鎖状低密度ポリエチレンから成るラミネート層(C)を設けることが有効である。
ラミネート層(C)の厚さは、確実な効果を得るために、1μm以上であることが好ましく、更には2μm以上であることが好ましい。但し、10μmを超えて存在しても、効果の向上は見られない。
【0023】
また表面層(A)やラミネート層(C)にも、上述した層(B)と同様に、耐寒性向上を目的としてプロピレン系エラストマーを添加することができる。但し、表面層(A)やラミネート層(C)におけるプロピレン系エラストマーの量は20重量%以下、特に10重量%以下であることが好ましい。20重量%を超えてエラストマーが添加されると、内貼りフィルムのハンドリング性が悪化する恐れがある。
【0024】
尚、上述した表面層(A)、該表面層と接する層(B)、ラミネート層(C)は、本発明の目的に支障をきたさない範囲において、滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、酸化防止剤などの各種添加剤や、極少量の上述した樹脂以外の樹脂を含むこともできる。また本発明は、表面層(A)、該表面層と接する層(B)、ラミネート層(C)の間に、フィルムの耐寒性や耐熱性に影響を与えない程度の、極薄い他の樹脂層を設けることを妨げない。
【0025】
[食品容器内貼りフィルムの製造方法]
本発明の食品容器内貼りフィルムの製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、上述した表面層(A)用の樹脂と、該表層と接する層(B)用の樹脂組と、必要に応じラミネート層(C)用の樹脂とを別々の押出機に供給し、1つのダイスから押出すインフレーション共押出法やTダイ共押出法等により製膜することができる。尚、後述するように、発泡シートと貼り合わされて食品容器に成型される際に、内貼りフィルムは金型に沿って引き伸ばされる。その際の成型性を考慮すると、内貼りフィルムはTダイ共押出法により延伸処理されることなく製膜されることが好ましい。内貼りフィルムが製膜時に延伸されていると、金型に合わせて成型される際に、内貼りフィルムが発泡シートから剥離しやすい。
【0026】
[食品容器]
図6は、本発明の食品容器の一実施形態を表す模式的断面図である。
図6に示す食品容器は、例えば本発明の内貼りフィルム1を、発泡シート2と積層し、金型を用いて加熱成型することにより得られる。
発泡シート2は、例えばポリプロピレンを発泡剤で発泡させた発泡ポリプロピレンシート、耐熱ポリスチレンを発泡剤で発泡させた耐熱ポリスチレンシート等、従来食品容器に使用されていた発泡シートを適宜使用することができる。中でも発泡ポリプロピレンシートは、ポリスチレン発泡シートと比べ耐熱性が高い為、電子レンジで過加熱となった際でも、容器変形を防ぐ効果が得られるのでより好ましい。
【0027】
内貼りフィルム1と発泡シート2は、オレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、若しくはエーテル系等の従来公知の接着剤により積層することができる。また熱ラミネート法により積層することもできる。
更に、積層に先立ち、内貼りフィルムには印刷を施すことができる。また
図6に示す食品容器は、内貼りフィルム1と発泡シート2のみからなるが、必要に応じ発泡シート2の外側に外貼りフィルムを積層したり、内貼りフィルム1と発泡シート2との間にガスバリア性フィルムを積層したり、更には内貼りフィルム1の表面層(A)にコート層を設けたりすることもできる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の効果を実施例により確認する。尚、フィルムの評価は以下の方法にて行う。
[衝撃強度]
テスター産業(株)製 振り子衝撃試験機(恒温槽有)を使用し、雰囲気温度23℃と、-30℃にて振子式衝撃強度(J)を測定する。測定に用いた振り子は先端針0.5インチで、フィルムの表面層(A)側から打ち抜いた。食品容器の破損を抑制する為には、衝撃強度は少なくとも0.8J必要で、1.5Jを超えることが望まれる。
[表面タック性]
フィルム表面を手で触り、べたつきが感じられたものは×、手で触ってもべたつきは感じられなかったがフィルムをロール巻きにして保管後、フィルムを繰り出す際に重さを感じたものは△、特に問題のなかったものは〇とする。フィルムに表面タック性が残っていると、フィルムの取り扱い(搬送、積層、保管等々)が難しい。
[カール状態]
フィルムを目視で確認し、使用に支障をきたす程のカールが発生したものは×、使用に支障をきたす程ではないがカールの発生が見られたものは△、カールの発生が見られなかったものは〇と評価する。内貼りフィルムがカールしていると、発泡シートとの貼り合わせが難しくなる。尚、カールはラミネート層(C)が内面となるように発生した。
【0029】
また実施例、比較例で使用した樹脂及びフィルムの詳細は以下のとおりである。
[使用樹脂]
LLDPE1:直鎖状低密度ポリエチレン(密度904kg/m
3、融点111℃)
LLDPE2:直鎖状低密度ポリエチレン(密度931kg/m
3、融点123℃)
LLDPE3:直鎖状低密度ポリエチレン(密度866kg/m
3、融点119℃)
LLDPE4:直鎖状低密度ポリエチレン(密度944kg/m
3、融点128℃)
PP1:ポリプロピレンホモポリマー(密度900kg/m
3、融点167.1℃(
図2のDSCチャートの二度目の昇温時のピークトップより))
PP2:プロピレン・エチレンブック共重合体(密度900kg/m
3、融点164.6℃(
図3のDSCチャートの二度目の昇温時のピークトップより))
TPO:プロピレン系エラストマー(エチレンコンテント16%、融点103℃)
[使用フィルム]
CPP:フタムラ化学(株)社製 ポリプロピレンフィルム(FAK#50)
PBT:大倉工業(株)社製 ポリブチレンテレフタレートフィルム(ESRM)
【0030】
[実施例1]
密度904kg/m3の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE1)と、密度931kg/m3の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE2)と、ポリプロピレンホモポリマー(PP1)とを、Tダイ共押出法により、50μmの三層シートに成形した。これを実施例1の内貼りフィルムとする。尚、各層の厚さ比率は、表面層(A)/表面層と接する層(B)/ラミネート層(C)=15:80:5である。該フィルムの衝撃強度、表面タック性、カール状態を測定し、結果を表1に記す。
【0031】
[実施例2~11、比較例1~4]
各層を成す樹脂や厚さ比率を表1に記すように変化した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~11の内貼りフィルム、比較例1、2の内貼りフィルムを得た。尚、実施例6~8、比較例1はラミネート層(C)を備えない2層のフィルムで、比較例2は単層フィルムである。また比較例3、比較例4は、市販の単層のフィルムである。各フィルムの衝撃強度、表面タック性、カール状態を測定し、表1~表4に併せて記す。
【0032】
【0033】
表層と接する層(B)に密度が918kg/m3を下回る直鎖状低密度ポリエチレンを使用し、ラミネート層(C)に該層(B)よりも密度の高い直鎖状低密度ポリエチレンを使用した実施例1~5のフィルムはいずれも-30℃の低温環境下でも、23℃の常温でも優れた衝撃強度を示した。また上述した通り、PP1、PP2はいずれもDSCチャートにおける二度目の昇温時のピークトップが160℃を超えており、実施例1~5のフィルムはいずれも耐熱性に優れる。尚、表面層の厚さ割合が30%である実施例2、5の内貼り用フィルムのうち、ポリプロピレンホモポリマーを使用した実施例2のフィルムは若干のカールが見られた。またPP1、PP2の厚さ割合が増えるに従い、常温での衝撃強度が低下する傾向が見られた。
【0034】
【0035】
実施例6~8、比較例1を見ると、表面層と接する層(B)の密度が高くになるにつれ、常温(23℃)における衝撃強度が高くなっている。また低温環境下(-30℃)における衝撃強度は、密度904kg/m3(実施例7)が最も高くなっている。
また、密度が比較的低い直鎖状低密度ポリエチレンがフィルム表面に現れる実施例6、実施例7のフィルムは、若干の表面タック性が見られた。
【0036】
【0037】
実施例8、9、10の比較より、TPOの配合量が増える従い、低温環境下(-30℃)における衝撃強度が改善されることが確認できた。また実施例9、11の比較より表面層(A)へのTPOの添加は低温衝撃強度向上の効果が著しいことが分かった。
【0038】
【0039】
比較例2のフィルムは衝撃強度に優れるものの、DSCピークトップが123℃と低く、耐熱性に問題がある。一方、比較例3、4のフィルムはいずれも衝撃強度が低かった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の内貼りフィルムは、低温衝撃性に優れ、電子レンジ使用にも耐えうる耐熱性を備えるため、収容させた食品を冷凍保存した後、電子レンジで加熱調理する為の食品容器の内層を形成するのに特に適する。