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特許7529449ダクト側ガスケット、排煙筒付き建築物、排煙構造及び排煙筒取付方法
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  • 特許-ダクト側ガスケット、排煙筒付き建築物、排煙構造及び排煙筒取付方法 図1
  • 特許-ダクト側ガスケット、排煙筒付き建築物、排煙構造及び排煙筒取付方法 図2
  • 特許-ダクト側ガスケット、排煙筒付き建築物、排煙構造及び排煙筒取付方法 図3
  • 特許-ダクト側ガスケット、排煙筒付き建築物、排煙構造及び排煙筒取付方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ダクト側ガスケット、排煙筒付き建築物、排煙構造及び排煙筒取付方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/06 20060101AFI20240730BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20240730BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20240730BHJP
   F24F 7/10 20060101ALI20240730BHJP
   A62C 2/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
F16J15/06 N
F24F13/02 F
F24F7/06 D
F24F13/02 Z
F24F13/02 A
F24F7/10 101Z
A62C2/00 S
F16J15/06 A
F16J15/06 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020101325
(22)【出願日】2020-06-11
(65)【公開番号】P2021195975
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000222956
【氏名又は名称】東洋熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】早田 格
(72)【発明者】
【氏名】石野 貴広
(72)【発明者】
【氏名】秋山 龍生
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-037939(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0006610(US,A1)
【文献】実公昭48-025950(JP,Y1)
【文献】特開2004-173877(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0123062(KR,A)
【文献】独国特許出願公開第102015105651(DE,A1)
【文献】実開昭58-159430(JP,U)
【文献】特開2021-133002(JP,A)
【文献】実開平7-22341(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/06-15/14
F24F 13/02-13/078
F24F 7/00- 7/10
A62C 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排煙口が下端に形成された筒状の排煙筒と、該排煙筒が接続される開口を有する筒状のダクトと、の間に取り付けられるガスケットであって、
前記ダクトに対する固定部と、
柔軟に形成され、前記ダクトと前記排煙筒との間の少なくとも一部の空間を塞ぐシール部と、
折返し部と、を備え、
前記シール部は、前記排煙筒が取り付けられたときに、前記排煙筒の側面に対向する前記ダクトの側面に当接して、圧縮された状態で前記空間を塞ぎ、
前記折返し部は、前記ダクトの前記開口の縁を挟み込むように配置されて、前記縁に係合可能であることを特徴とするダクト側ガスケット。
【請求項2】
前記開口に前記排煙筒が挿入される前記ダクトに取付けられる前記ガスケットであって、
前記ガスケットが前記ダクトに取付けられたとき、前記シール部は、前記ダクトの内側かつ前記折返し部の内側に配置されている、請求項1に記載のダクト側ガスケット。
【請求項3】
前記シール部に設けられたクッション材と、
該クッション材の少なくとも一部を覆う外皮と、を備え、
該外皮は、前記折返し部を含み、前記ダクトの開口の外部に配設される外側部と、該外側部に前記折返し部を介して接続されて、前記ダクトの開口の内部に配設される内側部と、を備え
前記折返し部は、前記ダクトの前記開口よりも下方において折り返されて横方向に重なっている部位を有し、当該部位は互いに縫い合わせられている、請求項1または2に記載のダクト側ガスケット。
【請求項4】
前記シール部に設けられたクッション材と、
該クッション材の少なくとも一部を覆う外皮と、を備え、
該外皮は、前記折返し部を含み、前記ダクトの開口の外部に配設される外側部と、該外側部に前記折返し部を介して接続されて、前記ダクトの開口の内部に配設される内側部と、を備え、
前記内側部は、前記折返し部から前記クッション材に向けて延在する延在部と、該延在部に連続して前記クッション材を覆う被覆部と、該被覆部に連続して前記延在部に固定される内側末端部と、を備え、
該内側末端部は、前記ガスケットが前記ダクトに取り付けられたときに、前記延在部における前記ダクトの内面に対向する表面に対して逆側にある表面に重ねられて固定されている請求項2に記載のダクト側ガスケット。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に記載のダクト側ガスケットと、
前記ダクトと、
前記排煙筒と、を備える排煙筒付き建築物。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載のダクト側ガスケットと、
前記ダクトと、
前記排煙筒と、を備える排煙構造。
【請求項7】
開口を有する筒状のダクトと、排煙筒との間にダクト側ガスケットを配設する排煙筒取付方法であって、
前記ダクトの前記開口の内部に、折返し部を備えた前記ダクト側ガスケットを取り付けるガスケット取付工程と、
該ガスケット取付工程の後に、前記排煙筒を前記ダクトに取り付ける排煙筒取付工程と、を備え、
前記ガスケット取付工程において、前記折返し部を、前記ダクトの前記開口の縁を挟み込むように配置して、前記縁に係合させることを特徴とする排煙筒取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクト側ガスケット、排煙筒付き建築物及び排煙構造及び排煙筒取付方法に係る。特に、排煙筒とダクトの間においてダクト側に取り付けられるダクト側ガスケット、ダクト側ガスケットとダクトと排煙筒とを備える排煙筒付き建築物及び排煙構造、並びに排煙筒取付工程よりも先にダクト側ガスケットをダクトに取り付ける排煙筒取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物には、火事が生じたときに煙を室内から屋外に排出するため、排煙設備(排煙構造)を備えるものがある。
排煙設備は、屋外に接続されるファンと、ファンに接続される流路を形成するダクトと、ダクトに接続されて室内に連通する排煙筒と、によって構成される。
【0003】
ダクトと排煙筒との間の空間(隙間)は、排煙システムで最も漏気が多い箇所である。
この空間が封止されていなければ、火及び煙が生じていない部屋の空気をファンで吸ってしまうことになるため、設計された排煙量や吸引圧力を確保するために吸引能力の大きいファンを用意しなければならなかった。
【0004】
また、シリコンシール又はアルミテープ等の封止材(ガスケット)でダクトと排煙筒との間の空間を封止することにより、ファンの能力を高めずに設計された排煙量や吸引圧力を確保する方法も採り得る。
この空間を封止する従来の工法においては、排煙口から排煙筒の中に頭と手を入れて排煙筒の取付部のシールをするので、特に排煙口が小さい場合に作業が困難となり、手しか入らない状態で目視せずにシールをすることもあった。
【0005】
このような困難性に鑑みて、特許文献1には、排煙筒(同文献には、排煙口本体と記載。)をダクトに取り付ける前に、排煙筒側に、ダクトとの間の隙間を埋めるガスケット(同文献には、シートと記載。)を取り付ける技術が開示されている。
より具体的には、ガスケットは、排煙筒の側面に穴を開け、押さえ板で排煙筒の外側面に押さえつけられた状態で、押さえ板及びガスケットをネジに貫通させて、ネジを穴に螺合させることによって、排煙筒の四周に取り付けられている。
【0006】
また、特許文献2には、吊り上げ用ボルトの平面部と排煙筒(同文献には、排煙口と記載。)との間にガスケット(同文献には、漏洩防止部と記載。)を配設する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-173877号公報
【文献】実開平7-22341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のようにガスケットを取り付けるようにするためには、製造メーカーごとに形状及び構造の異なる排煙筒に穴を開ける必要があり、その形状又は構造によってはその加工が困難であり施工者の作業負担となっていた。
また、初期状態において排煙筒にボルト穴が設けられていたとしても、排煙筒のサイズによってボルト穴のサイズ、位置が異なるので、ガスケットを排煙筒に取り付けるのは難しい。
【0009】
また、特許文献2に記載のようにガスケットを取り付ける際には、排煙筒の下面と一致する天井高さが決まっていないうちに、ガスケットのサイズを決めなくてはならない。また、上記のように製造メーカーごとに形状の異なる排煙筒に適した厚さを有するガスケットを配設することは困難であり、施工者の負担となっていた。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、施工者の作業負担を抑えることが可能なダクト側ガスケット、排煙筒付き建築物、排煙構造及び排煙筒取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のダクト側ガスケットは、排煙口が下端に形成された筒状の排煙筒と、該排煙筒が接続される開口を有する筒状のダクトと、の間に取り付けられるガスケットであって、
前記ダクトに対する固定部と、
柔軟に形成され、前記ダクトと前記排煙筒との間の少なくとも一部の空間を塞ぐシール部と、を備え、
該シール部は、前記排煙筒が取り付けられたときに、前記排煙筒の側面に対向する前記ダクトの側面に当接して、圧縮された状態で前記空間を塞ぐことを特徴とする。
【0012】
本発明の排煙筒付き建築物及び排煙構造は、前記ダクト側ガスケットと、
前記ダクトと、
前記排煙筒と、をそれぞれ備える。
【0013】
本発明の排煙筒取付方法は、開口を有する筒状のダクトと、排煙筒との間にダクト側ガスケットを配設する排煙筒取付方法であって、
前記ダクトの前記開口の内部に、前記ダクト側ガスケットを取り付けるガスケット取付工程と、
該ガスケット取付工程の後に、前記排煙筒を前記ダクトに取り付ける排煙筒取付工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のダクト側ガスケット、排煙筒付き建築物、排煙構造及び排煙筒取付方法によれば、排煙筒をダクトに取り付ける際に施工者の作業負担を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係るダクト及びダクトに取り付けられたガスケットを示す斜視図である。
図2】排煙構造及び排煙筒付き建築物を模式的に示して説明する説明図である。
図3】(a)は、ダクトに排煙筒を取り付ける前の状態を模式的に示す部分断面図、(b)は、ダクトに排煙筒を取り付けた後の状態を模式的に示す部分断面図である。
図4】第2実施形態に係るガスケット及びダクトのそれぞれの一部を示す断面図である
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する設備、機器の種類、個数等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。なお、図面は、本発明を説明するためのものであり、図面に示された各部材の寸法、比率、形状等は、本発明の趣旨の範囲で適宜変更可能である。
【0017】
<<本発明の概要>>
まず、図1から図3を参照して、本発明の概要について説明する。
図1は、第1実施形態に係るダクト2及びダクト2に取り付けられたガスケット3を示す斜視図、図2は、排煙構造Y及び排煙筒付き建築物Xを模式的に示して説明する説明図である。図3(a)は、ダクト2に排煙筒1を取り付ける前の状態を模式的に示す部分断面図、(b)は、ダクト2に排煙筒1を取り付けた後の状態を模式的に示す部分断面図である。
【0018】
本実施形態に係るダクト側ガスケット3は、図2に示す、排煙口1aが下端に形成された筒状の排煙筒1と、排煙筒1が接続される開口2cを有する図1に示す筒状のダクト2と、の間に取り付けられるものである。
ダクト側ガスケット3は、図3に示すように、ダクト2に対する固定部(外側面3a)と、柔軟に形成され、ダクト2と排煙筒1との間の少なくとも一部の空間を塞ぐシール部(内側部3b)と、を備える。
内側部3bは、排煙筒1が取り付けられたときに、排煙筒1の側面1bに対向するダクト2の側面2dに当接して、圧縮された状態で空間4を塞ぐ。
つまり、「シール部」としての内側部3bは、ダクト2の外側面に当接する部位を内側面に含む。
【0019】
本実施形態に係る排煙筒1は、ダクト2に対して室内側に設けられるものである。また、「筒状の排煙筒1」は、径の長さよりも長手方向に長いものの他、長手方向に短いものを含む。
また、本実施形態における「固定部」は、固定する部位の意味であり、不図示の接着剤でダクト2に固定する外側面3aが相当する。この「固定部」は、接着剤等によって間接的に固定されるものの他、ダクト2の縁に係止することによってガスケット3を固定する部位であってもよい。
【0020】
上記のように、ダクト側ガスケット3は、メーカーや商品毎に構成の異なることの多い排煙筒1側ではなく、共通する構成であることの多いダクト2側に固定部(外側面3a)を取り付け可能である。このため、排煙筒1を取り付ける施工者の作業負担を抑えて、ダクト2に排煙筒1を容易に取り付けることが可能となる。
なお、ダクト2の製造者又は販売者が、ダクト2にダクト側ガスケット3を取り付けた状態で、これを流通させるようにしてもよい。この場合、現場の施工者の作業負担をさらに抑えることができる。
そして、シール部(内側部3b)により排煙口1aからの吸気ではない、排煙筒1とダクト2との間の空間4からの漏気を抑制することが可能となることで、ファンを省力化することができる。
【0021】
<<第1実施形態>>
次に、第1実施形態に係るダクト側ガスケット3、排煙筒付き建築物X及び排煙構造Yの各部の構成について、図1から図3を参照して詳細に説明する。
【0022】
[排煙筒及びダクト]
排煙筒1は、四角筒状に形成されており、開閉可能な排煙口1aを下面に有する。排煙筒1は、排煙口1a部分が図2に示す天井10の表面と高さが一致するように、ダクト2に取り付けられる。
ダクト2は、ファン5側に延在する四角筒状の横架材2aと、横架材2aの内部空間に連通して、上下方向に延在する四角筒状の縦材2bと、を備える。縦材2bの下端部の開口2cに排煙筒1が挿入されて、縦材2b(ダクト2)に取り付けられる。
なお、横架材2aとしては、煙を通すことができればその形状は限定されず、四角筒状のものに限定されず、例えば丸筒状のものであってもよい。
【0023】
排煙筒1は、天井10が設置された後に、ダクト2に取り付けられる。排煙筒1は、天井10の位置に応じて、全ねじボルト7でその高さ位置を調整できるように構成されている。
図3に示すように、全ねじボルト7は、ダクト2の内側面にL型鋼8を介して取り付けられている。
【0024】
[ガスケット]
ガスケット3は、難燃材料(不燃材料を含む。)で形成され、柔軟性を有して弾性変形可能な材料(本実施形態においては岩綿)によって形成されている。
排煙筒1とダクト2との間の隙間(空間4)が大きくても、ダクト2に取り付けられたガスケット3が自然状態において排煙筒1に触れることが可能な大きさ及び配置にあれば、ガスケット3により空間4を封止することができる。
つまり、ガスケット3が岩綿等の柔軟性を有して弾性変形可能な材料によって形成されていることによって、各種排煙筒1とダクト2との間の隙間が異なる広さであっても、広い範囲で当該隙間を封止することができる。
【0025】
上記実施形態に係るガスケット3は、接着剤によりダクト2に取り付けられるものとして説明したが、ダクト2に取り付けるのであれば、その取付方法は任意に選択できる。例えば、不図示のテープやボルト・ナットによってダクト2に取り付けるようにしてもよい。
なお、ガスケット3は、テープによってダクト2に取り付ける場合と比較して、接着剤によって接合する場合は、その接着面を確保するために、必然的にガスケット3は上下方向の長さが長くなる。なお、取付手段が不図示のボルト・ナットである場合には、ガスケットの封止部よりも奥(上方)又は手前(下方)で、ボルト・ナットを取り付ける必要があるため、必然的にガスケット3は上下方向の長さが長くなる。
【0026】
図2に示すように、排煙筒付き建築物X(排煙構造Y)は、ダクト側ガスケット3と、ダクト2と、排煙筒1と、を備える。
なお、排煙筒付き建築物Xは、排煙構造Yを備える建築物ともいえる。
【0027】
本実施形態に係る排煙筒付き建築物X(排煙構造Y)は、ダクト2を含む流路6に接続されるファン5を屋上に備える。なお、ファン5は、屋上に設けられているものに限定されず、排煙口1aよりも上方であればその設置位置は任意である。
上記構成に係る排煙筒付き建築物X(排煙構造Y)は、ダクト側ガスケット3に係る発明の効果を享受できる。
【0028】
本実施形態に係る排煙筒取付方法は、開口2cを有する筒状のダクト2と、排煙筒1との間にダクト側ガスケット3を配設する排煙筒取付方法である。
ダクト2の開口2cの内部に、ダクト側ガスケット3を取り付けるガスケット取付工程と、ガスケット取付工程の後に、排煙筒1をダクト2に取り付ける排煙筒取付工程と、を備える。
【0029】
より具体的には、排煙筒取付工程において、排煙筒1をダクト2の開口2cに挿入する際に、作業者は、排煙筒1の上側にある四角筒の側面1bでガスケット3を圧縮させつつ、側面1bをガスケット3に摺接させるようにして、排煙筒1をダクト2に取り付ける。
【0030】
例えば、ダクト2が小さく、ダクト2の開口2cが小さいときには、ダクト2に排煙筒1を取り付けた後に、両者の間の空間4をアルミテープ等により密閉することは、開口2c内に作業者がアクセスしづらく、目視による確認も困難であるため難しい。
上記構成によれば、排煙筒1を取り付ける前に、排煙筒1のダクト2への取り付けよりも先に、ダクト2にガスケット3を取り付けることで、ガスケット3の取付状態の目視が容易にでき、取付施工が容易となり、施工者の作業負担を軽減することができる。
【0031】
<<第2実施形態>>
次に、図4を主に参照して、第2実施形態に係るダクト側ガスケット13について説明する。図4は、第2実施形態に係るガスケット13及びダクト2のそれぞれの一部を示す断面図である。
【0032】
本実施形態に係るダクト側ガスケット13は、折返し部13cを備える。
折返し部13cは、ダクト2の開口2cの縁2eを挟み込むように配置されて、縁2eに係合可能である。
より具体的には、折返し部13cがダクト2の縁2eを挟み込みこんだ状態において、後述するガスケット13の外側部13fがダクト2において縁2eよりも外側に位置し、内側部13g及びその他の部位が縁2eよりも内側に位置している。
【0033】
従来のガスケットのうちネジで固定されずにテープや接着剤によって固定されているものは、テープが剥がれる又は接着剤の接着能力が低下することにより、ファン5によって吸い込まれる虞があった。
本実施形態に係るガスケット13においては、折返し部13cがダクト2の下端部にある開口2cの縁2eを挟み込んで係合可能であることにより、ガスケット13がダクト2から離脱することを抑制できる。より具体的には、排煙の際にファン5が動作することによりガスケット13に屋外向き(上方)への圧力が加わったとしても、ガスケット13がダクト2から離脱することを抑制できる。
【0034】
なお、折返し部13cがダクト2の縁2eに係合していることで、排煙筒1をダクト2に挿し込むことで、接着剤を用いずに、排煙筒1とダクト2の間にガスケット13を配置することが可能である。
また、ガスケット13とダクト2とをテープや接着剤で追加的に接続してもよい。この場合でも同様に、上記構成に係るガスケット13は、仮にテープが剥がれたり、接着剤の接着能力が低下したとしても、ファン5に吸い込まれにくい。
【0035】
ダクト側ガスケット13は、シール部に設けられたクッション材13dと、クッション材13dの少なくとも一部を覆う外皮13eと、を備える。
外皮13eは、折返し部13cを含み、ダクト2の開口2cの外部に配設される外側部13fと、外側部13fに折返し部13cを介して接続されて、ダクト2の開口2cの内部に配設される内側部13gと、を備える。
【0036】
上記構成によれば、クッション材13dと、これを覆う外皮13eとによって、ダクト側ガスケット13が一体的に形成されていることで、取付強度を高めつつ、クッション性を高めることができる。
【0037】
より具体的には、クッション材13dは、例えば、岩綿等によって形成されており、外皮13eよりも低い剛性を有している。
外皮13eの折返し部13cにおける折返されて重なる部位は、互いに縫い合わせられていることにより、折返し部13cが開かない構成となっている。このような構成は、経年劣化による剥離することがある接着剤による接着する構成と比較して好適である。
【0038】
外側部13fの上端は、クッション材13dに至る高さ、又はそれ以上の高さに位置していると好適である。
このような構成によれば、排煙筒1を押し込む際に、ガスケット13が排煙筒1からの摩擦力が付加されることで回動しようとしたときに、外側部13fの上端がダクト2の下端を越えて、ガスケット13が開口2cに入り込むことを抑制することができる。
【0039】
本実施形態に係る外皮13eは、平織りで織成された約0.2mmの厚みを有するガラスクロスと、これを挟み込む両面塩化ビニル樹脂と、によって積層された、難燃材料(不燃材料を含む。)の部材である。
【0040】
図4に示すように、内側部13gは、折返し部13cからクッション材13dに向けて(上方に)延在する延在部13hと、延在部13hに連続してクッション材13dを覆う被覆部13iと、被覆部13iに連続して延在部13hに固定される内側末端部13jと、を備える。
内側末端部13jは、ガスケット13がダクト2に取り付けられたときに、延在部13hにおけるダクト2の内面に対向する表面に対して逆側にある表面に重ねられて固定(具体的には、縫合)されている。
つまり、ダクト2の縦材2bよりも内側に位置する内側末端部13jは、上方に延在する延在部13hよりも内側(ダクト2の軸線側)に位置し、縦材2bに接する外側に位置していない。
【0041】
上記構成によれば、内側末端部13jが延在部13hにおけるダクト2の内面側の表面に重ねられて固定されている構成と比較して、折返し部13cの折返し角度の増大(折返し部13cの膨らみ)を抑制できる。
このため、折返し部13cとダクト2の開口2cの縁2eとの接触面積を大きくすることができ、折返し部13cのぐらつきを抑制でき、折返し部13cによるダクト2の開口2cの縁2eへの係合状態を安定させることができる。
【0042】
本実施形態に係る内側末端部13jと延在部13hとは、互いに縫い合わせられた(縫合)構成となっている。このような構成は、経年劣化による剥離することがある接着剤による接着する構成と比較して好適である。
特に、内側末端部13jは、クッション材13dを巻き込むように上方に折り返されるように配設されるのではなく、下方に(折返し部13c側に)延在するように配設された状態で、延在部13hに縫合されている。
【0043】
このような構成によれば、ガスケット13のうち、内側末端部13jよりも内側(軸線側)の部位が、内側末端部13jよりも下方(折返し部13c側)に迫り出すことがない。また、内側末端部13jよりも内側の部位の下面が上下方向に対して直交するのではなく、緩い傾斜面となっている。
【0044】
このため、ガスケット13の内側に挿入される排煙筒1から加わる摩擦力の上方向きの成分を小さく抑えることができ、ガスケット13が上方に移動することを抑制することができる。また、排煙筒1から加わる摩擦力の水平方向の成分により、ガスケット13(クッション材13d)を押し潰すことが促進され、ガスケット13に復元力が生じる状態(弾性変形状態)に移行しやすくできる。
【0045】
なお、上記実施形態に係るガスケット3、13は、同一断面形状を有して、長尺方向に連続して形成されている。このため、販売時に長尺に形成されているものから、ハサミやカッター等によって切断することによって、ダクト2の縁2eの形状に合う任意の長さにすることが可能である。
したがって、ガスケット3、13は、ダクト2の縁2eの大きさにガスケット3、13のサイズを現場で調整することができるため現場施工性に優れ、汎用性に優れるため多くの現場で使用することができる。
【0046】
また、上記実施形態に係るガスケット3及びガスケット13は、ダクト2の開口2cを構成する縁2eの四周部分に取り付けられているが、排煙筒1のダクト2への取り付けの妨げになることを回避するために、四隅部分に設けられていない。このような構成であっても、全体として十分に漏気を防止することができる。
しかしながら、ダクト2の開口2cにおける四隅部分のそれぞれに合う形状を有する別個の底面視L字状のガスケットを追加的に取り付けるようにしてもよい。
【0047】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)
排煙口が下端に形成された筒状の排煙筒と、該排煙筒が接続される開口を有する筒状のダクトと、の間に取り付けられるガスケットであって、
前記ダクトに対する固定部と、
柔軟に形成され、前記ダクトと前記排煙筒との間の少なくとも一部の空間を塞ぐシール部と、を備え、
該シール部は、前記排煙筒が取り付けられたときに、前記排煙筒の側面に対向する前記ダクトの側面に当接して、圧縮された状態で前記空間を塞ぐことを特徴とするダクト側ガスケット。
(2)
折返し部を更に備え、
該折返し部は、前記ダクトの前記開口の縁を挟み込むように配置されて、前記縁に係合可能である(1)に記載のダクト側ガスケット。
(3)
前記シール部に設けられたクッション材と、
該クッション材の少なくとも一部を覆う外皮と、を備え、
該外皮は、前記折返し部を含み、前記ダクトの開口の外部に配設される外側部と、該外側部に前記折返し部を介して接続されて、前記ダクトの開口の内部に配設される内側部と、を備える(2)に記載のダクト側ガスケット。
(4)
前記内側部は、前記折返し部から前記クッション材に向けて延在する延在部と、該延在部に連続して前記クッション材を覆う被覆部と、該被覆部に連続して前記延在部に固定される内側末端部と、を備え、
該内側末端部は、前記ガスケットが前記ダクトに取り付けられたときに、前記延在部における前記ダクトの内面に対向する表面に対して逆側にある表面に重ねられて固定されている(3)に記載のダクト側ガスケット。
(5)
(1)から(4)のいずれか一項に記載のダクト側ガスケットと、
前記ダクトと、
前記排煙筒と、を備える排煙筒付き建築物。
(6)
(1)から(4)のいずれか一項に記載のダクト側ガスケットと、
前記ダクトと、
前記排煙筒と、を備える排煙構造。
(7)
開口を有する筒状のダクトと、排煙筒との間にダクト側ガスケットを配設する排煙筒取付方法であって、
前記ダクトの前記開口の内部に、前記ダクト側ガスケットを取り付けるガスケット取付工程と、
該ガスケット取付工程の後に、前記排煙筒を前記ダクトに取り付ける排煙筒取付工程と、を備えることを特徴とする排煙筒取付方法。
【符号の説明】
【0048】
X 排煙筒付き建築物
Y 排煙構造
1 排煙筒
1a 排煙口
1b 側面
2 ダクト
2a 横架材
2b 縦材
2c 開口
2d 側面(内面)
2e 縁
3 ガスケット(ダクト側ガスケット、第1実施形態)
3a 外側面(固定部)
3b 内側部(シール部)
4 空間
5 ファン
6 流路
7 全ねじボルト
8 L型鋼
10 天井
13 ガスケット(ダクト側ガスケット、第2実施形態)
13c 折返し部
13d クッション材(シール部)
13e 外皮
13f 外側部
13g 内側部
13h 延在部
13i 被覆部
13j 内側末端部
図1
図2
図3
図4