(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】CFT柱とRC柱との接合構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/30 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
E04B1/30 Z
(21)【出願番号】P 2020105929
(22)【出願日】2020-06-19
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】金本 清臣
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 一輝
(72)【発明者】
【氏名】小前 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】櫻木 健司
(72)【発明者】
【氏名】山野辺 宏治
(72)【発明者】
【氏名】清水 善規
(72)【発明者】
【氏名】木村 匠
(72)【発明者】
【氏名】淵本 正樹
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-138137(JP,A)
【文献】特開2000-034780(JP,A)
【文献】特開2018-035637(JP,A)
【文献】特開2000-154592(JP,A)
【文献】特開2008-013973(JP,A)
【文献】特開2020-169442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/16
E04B 1/18
E04B 1/30
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CFT柱と該CFT柱の上方に配置されたRC柱とを接合するCFT柱とRC柱との接合構造であって、
前記CFT柱の上端部に、鋼管を上方に延出させるように形成された
応力切替柱となる接合鋼管が設けられ、
前記RC柱の主筋が前記接合鋼管の内部に挿入されるとともに、前記接合鋼管の内部にコンクリートが充填され、
前記接合鋼管の上端部には、
該接合鋼管の内
周面から
前記コンクリートが充填される内側
方向に突出する補剛部が設けられ、
前記主筋の下端部には、定着板が設けられ、
前記接合鋼管脚部に作用するコンクリート支圧力N
BS及び前記接合鋼管脚部のコンクリート部分に作用する曲げ戻し応力M
BSが、下記の条件式(1),(2)で表されていることを特徴とするCFT柱とRC柱との接合構造。
【数1】
【数2】
【請求項2】
接合鋼管の設計用曲げモーメント
s
M
d
、接合鋼管の設計用軸力
s
N
d
及び接合鋼管の設計用せん断力
s
Q
d
が、下記の条件式(3)~(7)で表されていることを特徴とする請求項1に記載のCFT柱とRC柱との接合構造。
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CFT柱とRC柱との接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、重層物流施設では、低層階に階高10mを超える階を設け、その中に重層且つ複雑なマテハン架台を備えて倉庫設備を構成したものが提案、実用化されている。
【0003】
一方で、階高10mを超える高階高RC柱を計画することは、コンクリート打設方法やPC化とした場合には重量などの技術的困難さにより事実上適用が難しい。また、マテハン架台のための複雑な鉄骨取合い、マテハン乗り入れ時期の前倒し・工程確保に伴う高階高の層の短工期化の要請などの技術的困難さによってもやはり適用が難しい。
【0004】
これに対し、高階高の低層部をCFT柱で構成し、低層部のCFT柱(コンクリート充填鋼管柱)と上層部のRC柱(鉄筋コンクリート柱)とを接合することにより、上記課題を解決することができ得る。
【0005】
また、RC柱とCFT柱とを接合する構造(工法)としては、CFT柱からRC柱への切替えを層単位で行うものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この構造では、CFT柱を備える下層部とRC柱を備える上層部との間に境界層が形成され、CFT柱とRC柱との接合部であるこの境界層に上下の梁間にわたって延在する鋼管が配設される。そして、鋼管内にコンクリートが充填されるとともに上層部のRC柱から延在する柱主筋が挿入され、さらに、境界層の柱のうちの柱頭部には、複数の柱主筋を囲う帯筋が配筋されるとともに境界層の柱のうちの柱頭部よりも下方の部分の鋼管の内周面にスタッドが突設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の境界層に鋼管を配設する構造においては、境界層の柱全体、すなわち層単位でCFT柱からRC柱への切替えを行うため、使用鋼材量が非常に多くなるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、使用鋼材量を削減できるCFT柱とRC柱との接合構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係るCFT柱とRC柱との接合構造は、CFT柱と該CFT柱の上方に配置されたRC柱とを接合するCFT柱とRC柱との接合構造であって、前記CFT柱の上端部に、鋼管を上方に延出させるように形成された
応力切替柱となる接合鋼管が設けられ、前記RC柱の主筋が前記接合鋼管の内部に挿入されるとともに、前記接合鋼管の内部にコンクリートが充填され、前記接合鋼管の上端部には、
該接合鋼管の内
周面から
前記コンクリートが充填される内側
方向に突出する補剛部が設けられ、前記主筋の下端部には、定着板が設けられ、前記接合鋼管脚部に作用するコンクリート支圧力N
BS及び前記接合鋼管脚部のコンクリート部分に作用する曲げ戻し応力M
BSが、下記の条件式(1),(2)で表されていることを特徴とする。
【数1】
【数2】
【0011】
このように構成されたCFT柱とRC柱との接合構造では、接合鋼管脚部に作用するコンクリート支圧力NBS及び接合鋼管脚部のコンクリート部分に作用する曲げ戻し応力MBSを条件式(1),(2)で表すように設計することで、層単位でCFT柱からRC柱へ切替える必要がなく、部分的に切替えることができ、使用鋼材量を削減することができる。例えば、マテハン(マテリアルハンドリングの略称で、原材料から完成品の全ての移動にかかわる取扱いのこと)工期の確保が可能となる。
【0012】
また、本発明に係るCFT柱とRC柱との接合構造は、接合鋼管の設計用曲げモーメント
s
M
d
、接合鋼管の設計用軸力
s
N
d
及び接合鋼管の設計用せん断力
s
Q
d
が、下記の条件式(3)~(7)で表されていることを特徴とする。
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【0013】
このように構成されたCFT柱とRC柱との接合構造では、接合鋼管の設計用曲げモーメントSMD、接合鋼管の設計用軸力SND及び接合鋼管の設計用せん断力SQDを条件式(3)~(7)で表すように設計することで、層単位でCFT柱からRC柱への切替える必要がなく、部分的に引替えることができ、使用鋼材量を削減することができる。例えば、マテハン工期の確保が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るCFT柱とRC柱との接合構造によれば、使用鋼材量を削減できる。例えば、マテハン(マテリアルハンドリングの略称で、原材料から完成品の全ての移動にかかわる取扱いのこと)工期の確保が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るCFT柱とRC柱との接合構造を示す図である。
【
図2】(a)
図1のA-A線断面図であり、(b)
図1のB-B線断面図であり、(c)C-C線断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るCFT柱とRC柱との接合構造の応力伝達機構を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るCFT柱とRC柱との接合構造におうて、接合鋼管脚部におけるコンクリートの応力度を示す図である。
【
図5】回帰分析評価結果と実験結果との比較を示す。
【
図6】全体変形角R(0~1.0%)と接合鋼管の変形角R
Sとの関係を示し、(a)は試験体No.2であり、(b)は試験体No.4であり、(c)は試験体No.5であり、(d)は試験体No.6であり、(e)は試験体No.7である。
【
図7】試験体No.1において、実験結果から算出した曲げモーメントと(解13)式で算出した曲げモーメントとの比較を示し、(a)はR=0.5%のときであり、(b)はR=1.0%のときである。
【
図8】試験体No.2において、実験結果から算出した曲げモーメントと(解13)式で算出した曲げモーメントとの比較を示し、(a)はR=0.5%のときであり、(b)はR=1.0%のときである。
【
図9】試験体No.3において、実験結果から算出した曲げモーメントと(解13)式で算出した曲げモーメントとの比較を示し、(a)はR=0.5%のときであり、(b)はR=1.0%のときである。
【
図10】試験体No.4において、実験結果から算出した曲げモーメントと(解13)式で算出した曲げモーメントとの比較を示し、(a)はR=0.5%のときであり、(b)はR=1.0%のときである。
【
図11】試験体No.5において、実験結果から算出した曲げモーメントと(解13)式で算出した曲げモーメントとの比較を示し、(a)はR=0.5%のときであり、(b)はR=1.0%のときである。
【
図12】試験体No.6において、実験結果から算出した曲げモーメントと(解13)式で算出した曲げモーメントとの比較を示し、(a)はR=0.5%のときであり、(b)はR=1.0%のときである。
【
図13】試験体No.7において、実験結果から算出した曲げモーメントと(解13)式で算出した曲げモーメントとの比較を示し、(a)はR=0.5%のときであり、(b)はR=1.0%のときである。
【
図14】R
Sと設計式/実験式(接合鋼管内コンクリートのせん断応力度τ
c)を示す。
【
図15】R
Sと設計式/実験式(接合鋼管のせん断応力度τ
s)を示す。
【
図16】R
Sと設計式/実験式(接合鋼管の曲げ応力度σ
s)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態によるCFT柱とRC柱との接合構造について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るCFT柱とRC柱との接合構造を示す図である。
図2は、(a)
図1のA-A線断面図であり、(b)
図1のB-B線断面図であり、(c)C-C線断面図である。
【0017】
図1及び
図2に示す本実施形態のCFT柱とRC柱との接合構造20は、例えば、重層物流施設の倉庫の架構等に適用される。倉庫は、例えば、低層階に階高10mを超える階を設け、その中に重層且つ複雑なマテハン架台を備えて構成されている。さらに、高階高の下層部1aをCFT柱2を備えたCFT構造、上層部1bをRC柱3と鉄骨梁4を組み合わせたハイブリッド架構を備えたRCS(柱RC梁鉄骨)構造として構成されている。
【0018】
なお、CFT柱とRC柱との接合構造20は、重層物流施設への適用だけでなく、例えば、CFT構造の低層部(下層部1a)をオフィスや商業施設、RCS構造やRC構造の高層部(上層部1b)を住宅・ホテルを有する複合施設とする施設に採用してもよく、下層部1aにCFT柱2を備え、上層部1bにRC柱3を備えていれば、特にその適用対象を限定する必要はない。
【0019】
本実施形態のCFT柱とRC柱との接合構造20では、下層部1aのCFT柱2の鋼管5をCFT柱2の頂部2aから根巻きレベル程度(約1.5m程度)上方に延出させている。鋼管5の延出部分である接合鋼管(根巻鋼管)6の内部に、上層部1bのRC柱3の主筋7を挿入するとともにコンクリート8を打設充填され、主筋7がコンクリート8に定着している。
【0020】
図2(c)に示すように、接合鋼管6は、角筒状をなしている。接合鋼管6の頂部6a(
図1参照)側は、接合鋼管6の上端部の内面から内側に突出し周方向に延びて繋がる環状のリブプレートが補剛部9として設けられている。補剛部9は、接合鋼管6の4辺に設けられている。補剛部9によって接合鋼管6を補剛し、面外変形を抑制するようにしている。
【0021】
図1に示すように、接合鋼管6に挿入される部分のRC柱3の主筋7の下端部7dには、定着板10が取り付けられている。定着板10によって、主筋7と接合鋼管6内部のコンクリート8とが一体化するため、変形の漸増に伴って接合鋼管6内部のコンクリート8から主筋7が抜け出すのを防ぐ。
【0022】
次に、本実施形態のCFT柱とRC柱との接合構造20における応力切替柱の設計方法を説明する。
図3は、CFT柱とRC柱との接合構造20の応力伝達機構を示す図である。
ここで、反曲点でのせん断力をQ
dとし、接合鋼管上端部のてこ反力をR
1とし、接合鋼管脚部のてこ反力をR
BSとする。応力切替柱(接合鋼管6及びその内部とRC柱との一体柱)の設計用軸力をN
dとし、接合鋼管内面と接合鋼管内コンクリートとの摩擦および付着抵抗力をΔNとし、接合鋼管脚部のコンクリート支圧力をN
BSとする。切り替え高さ(接合鋼管上端部)から反曲点までの距離をaとし、接合鋼管の高さをHsとし、N
BSによる曲げ戻し応力をM
BSとする。応力切替柱の設計用せん断力をQ
dとし、接合鋼管上端部でのせん断力をR
1とする。
RC柱の最大曲げモーメント(終局曲げ強度)
rcM
dは、接合鋼管天端レベルに塑性ヒンジが形成されることで発揮され、接合鋼管の設計用曲げモーメント
sM
dは接合鋼管脚部で最大になる。
【0023】
RCに関する外力および反力のつり合いから、式(8)~(10)が成り立つ。
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
接合鋼管脚部に作用するコンクリート支圧力NBSが、式(11)で表されるものとする。
【0028】
【0029】
接合鋼管脚部に作用するコンクリート支圧力NBSによって接合鋼管脚部のコンクリート部分に作用する曲げ戻し応力MBSが、式(12)で表されるものとする。
【0030】
【0031】
接合鋼管上端部のてこ反力R1は、式(10)より式(13)となる。接合鋼管脚部のてこ反力RBSは、式(8),(13)より式(14)となる。
【0032】
【0033】
【0034】
接合鋼管の各設計用応力を式(15)~(19)で定義する。
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
次に、接合鋼管脚部に作用するコンクリート支圧力NBS及びNBSによって接合鋼管脚部のコンクリート部分に作用する曲げ戻し応力MBSの算定方法について説明する。
【0041】
接合鋼管脚部のコンクリート部分に作用する曲げモーメントM
BS(m
BS)から接合鋼管脚部軸力N
BS(η
BS)への誘導を行う。
始めに断面が一体であると仮定し、M
BSが作用した応力状態を考える(
図4参照)。その後、引張応力を解放した場合における応力状態および軸力増分について検討する。なお、評価に際しては、曲げモーメントの増分はないものとする。
【0042】
断面が一体であると仮定した応力状態における関係式は、式(20)~(23)(解1~4)に示すとおりである。
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
σtが解放されても曲げモーメントの変化はないものと仮定し、α,βの関係を求めると、式(24),(25)(解5,6)となる。
【0048】
【0049】
【0050】
軸力は式(26)(解7)式で表され、これに(解6)式を代入してαを消去すると、軸力増分を表す式(27)(解8)式が得られる。
【0051】
【0052】
【0053】
軸力増分ΔNBS(ΔηBS)の評価を行う。
【0054】
【0055】
βも係数の一つとして回帰分析を行うために、便宜上の目的関数を(-η0’)とすると、式(28)(解9)式は式(29)(解10)式で書き表される。
【0056】
【0057】
mBSの評価を行う。
mBSは、(解8)式より式(30)(解11)式で書き表される。
【0058】
【0059】
回帰分析に用いたパラメータと観測一覧を表1、回帰分析結果を表2、回帰分析評価結果と実験結果との比較を
図5に示す。
【0060】
【0061】
【0062】
回帰分析による評価結果は概ね実験結果と整合している。設計式としては、ばらつきを考慮してMBS(mBS)の評価式に係数γ(0.85)を乗じ、安全側の評価とする。
回帰分析結果から得れた値を(解9)式、(解11)式に代入すると、ηBS、mBSはそれぞれ式(31),(32)(解12,13)式となる。
【0063】
【0064】
【0065】
全体変形角R(0~1.0%)と接合鋼管の変形角R
Sとの関係を
図6に示す。各試験体とも、R=0~1.0%におけるR
Sは最大1/220で、ほぼ線形関係にある。なお、接合鋼管の応力度が許容応力度以内であることを実験により確認している。
【0066】
(解12)式、(解13)式の妥当性をR=0.5%,1.0%について回帰分析を行い、検討した。その結果、
図6と併せて接合鋼管の非線形化による影響は微小であることが分かる。
実験から得られた接合鋼管のせん断力負担面に貼付した3軸ひずみゲージの値を用いて算定した接合鋼管脚部のコンクリート部分に作用する曲げモーメントと(解13)式で算定した接合鋼管脚部のコンクリート部分に作用する曲げモーメントとの比較を
図7~
図13に示す。
図7~
図13において、横軸の「M」は「曲げモーメントM」を示し、図中の「M
RC」は「接合鋼管内コンクリートの負担曲げモーメント」を示し、「∫Q
s・dx」は「接合鋼管の負担曲げモーメント」を示している。
(解13)式で算定される曲げモーメントは実験から得られた曲げモーメントを安全側に評価できることが分かる。
【0067】
k=1.07の根拠は以下の式(33),(34)のとおりである。設計式の式(33)は式(11)より導いたものであり、実験式の式(34)は(解12)式より導いたものである。
【0068】
【0069】
【0070】
式(33)は、式(34)からRsに関する項(Rs/Rs0)を除外し、右辺第5項の1.07を定数項kとする簡略化を行っている。
ここでは、下記の表3に(1)~(7)示す7変数の組み合わせ全216,000ケースについて検討を行い、設計式と実験式の関係について比較した。
【0071】
【0072】
設計式および実験式を用いて下記の表4~6に示す3つの応力度比を算定した。
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
その結果をR
Sと設計式/実験式の関係として
図14~16に示す。
【0077】
検討結果を以下にまとめて列記する。
(1)接合鋼管内コンクリートのせん断応力度τ
cおよび接合鋼管のせん断応力度τ
sの設計式/実験式が常に1.0以上であることから、提案式によって部材の応力状態を安全側に評価することができる(
図14,15)。
(2)接合鋼管の曲げ応力度σ
sの設計式/実験式が常に1.0以下であることから、接合鋼管の設計用曲げモーメント、接合鋼管の設計用軸力を5%大きく評価する(式(15)~(17))ことにより、部材の応力状態を安全側に評価することができる。
【0078】
このように構成されたCFT柱とRC柱との接合構造では、接合鋼管脚部に作用するコンクリート支圧力NBS及び接合鋼管脚部のコンクリート部分に作用する曲げ戻し応力MBSを条件式(11),(12)で表し、接合鋼管の設計用曲げモーメントSMD、接合鋼管の設計用軸力SND及び接合鋼管の設計用せん断力SQDを条件式(15)~(19)で表すように設計することで、層単位でCFT柱2からRC柱3へ切替える必要がなく、部分的に切替えることができ、使用鋼材量を削減することができる。
【0079】
また、RCS構法にしたエリアの分だけ、躯体費用(鉄骨数量)を削減することが可能になる。例えば、CFT構造の高階高の層だけを先行して建方が行えるため、下層エリアのマテハン(マテリアルハンドリングの略称で、原材料から完成品の全ての移動にかかわる取扱いのこと)工期の確保が可能となる。
【0080】
以上、本発明に係るCFT柱とRC柱との接合構造の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0081】
1a 下層部
1b 上層部
2 CFT柱
3 RC柱
4 鉄骨梁
5 鋼管
6 接合鋼管
7 主筋
8 コンクリート
9 補剛部
10 定着板
20 CFT柱とRC柱との接合構造