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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】蒸気筒、容器蓋、および蒸気調理器具
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/04 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
A47J27/04 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020106612
(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公開番号】P2022001153
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-02-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103138
【氏名又は名称】エムケー精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】市川 智
(72)【発明者】
【氏名】北村 祐規
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 優梨
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-166410(JP,A)
【文献】特開2016-209566(JP,A)
【文献】特開2016-106873(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0216265(US,A1)
【文献】米国特許第6840159(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器を含む蒸気調理器具に用いられ、前記容器の容器底に設けられる蒸気筒であって、
筒内面において、筒下端側で末広がるような下側曲面と、前記筒下端側から筒上端側へかけて延びている1または複数の隆起部と、を備え、
前記隆起部は、前記下側曲面において前記筒下端側に向かって徐々に低くなる隆起端曲面を有し、
前記下側曲面のアールが、前記隆起端曲面のアールよりも大きい、
ことを特徴とする蒸気筒。
【請求項2】
前記筒内面において、前記筒上端側が窄まるような上側曲面を備える、
請求項1記載の蒸気筒。
【請求項3】
容器と、前記容器の容器底に設けられる蒸気筒と、を含む蒸気調理器具に用いられ、前記容器を塞ぐ容器蓋であって、
前記蒸気筒の上端と対向する中央部と、
前記中央部の周囲で、前記容器の内部に入り込む周溝部と、
前記中央部と前記周溝部との境界に形成された貫通部と、
前記中央部から前記周溝部へ前記貫通部を跨ぎ、前記中央部の上面縁の手前から下るスライダ面を有するスライダ部と、
前記中央部の上面縁から前記貫通部上の前記スライダ面の縁にかかる壁部と、を備える、
ことを特徴とする容器蓋。
【請求項4】
請求項1もしくは2記載の蒸気筒、または請求項3記載の容器蓋を備える、
ことを特徴とする蒸気調理器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気調理器具に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平9-75212号公報(以下、特許文献1という)には、卓上用蒸籠が記載されている。この卓上蒸籠は、蒸気発生部と、その上に配置される内蓋部とを備えている。その蒸気発生部は、鍋部と、この内部に配置される円筒状蒸気整流部とを備えている。また、内蓋部は、円筒状蒸気整流部の上に配置された蒸気通過孔と、この外側にストッパ部とを備えている。このストッパ部は、水(液体)が外部に漏れないように設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-75212号公報(請求項1、段落0012-0016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、卓上蒸籠は、鍋部(容器)の内部に円筒状の蒸気整流部(蒸気筒)を配置することで、蒸気発生部分が蒸気整流部に限られ、効率よく蒸気を発生することができる。しかしながら、鍋部に適量の水を入れることができたとしても、円筒状の蒸気整流部が大きすぎる(半径が大きくなる)と蒸気を発生する時間がかかり過ぎてしまう。他方、円筒状の蒸気整流部が小さすぎる(半径が小さくなる)と蒸気を発生しすぎるため、内蓋部(容器蓋)の蒸気通過孔(貫通部)から熱湯が噴きこぼれるおそれがある。噴きこぼれてしまった分は、蒸気として食材に作用せず、調理途中で鍋部に注ぎ足さなければならない、といった事態も生じうる。
【0005】
本発明の一目的は、適切に蒸気を発生させることのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一解決手段に係る蒸気調理器具は、容器底に設けられる蒸気筒を備える。前記蒸気筒は、内面に下端側から上端側へ延びる1または複数の隆起部を有する。
【発明の効果】
【0007】
一解決手段によれば、適切に蒸気を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る蒸気調理器具の断面図である。
図2図1に示す蒸気調理器具の部品組み立て図である。
図3図1に示す蒸気筒の正面図である。
図4図1に示す蒸気筒の底面図である。
図5図1に示す蒸気筒の斜視図である。
図6図4に示すVI-O-VI線における断面図である。
図7図1に示す容器蓋の中央要部平面図である。
図8図7に示すVIII-Oa-VIII線における断面図である。
図9図1に示す蒸気調理器具の使用方法のフローチャートである。
図10】本発明の他の実施形態に係る蒸気調理器具の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下の本発明における実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらはお互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
【0010】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態では、蒸気調理器具として電気式の蒸し器10に適用させた場合について図1図9を参照して説明する。
【0011】
(蒸し器の全体構成)
蒸し器10の全体構成について説明する。図1は蒸し器10の断面図、図2は部品組み立て図である。
【0012】
蒸し器10は、蒸籠身11と、蒸籠蓋12とを備える。蒸籠身11は、調理対象の食材が入れられる機能を有する。また、蒸籠蓋12は、蒸籠身11の開口を塞ぐように、蒸籠身11に被せられる機能を有する。蒸籠身11および蒸籠蓋12は、例えば、所定の枠に杉などの木や竹を編み込んで形成されている。
【0013】
また、蒸し器10は、蒸気発生器13を備える。蒸気発生器13は、食材を蒸す(調理する)ための蒸気を発生する機能を有する。蒸し器10では、食材の入った蒸籠身11を蒸気蓋12で蓋をした状態で蒸籠身11を蒸気発生器13上にのせ、蒸気発生器13から発生する蒸気によって食材が蒸される。
【0014】
蒸気発生器13は、発生器本体20と、蒸気筒50と、容器蓋80(受け皿)とを備える。発生器本体20は、蒸気筒50および容器蓋80が組み付けられる機能を有する。蒸気筒50は、蒸気を整流する機能を有する。蒸気筒50は、発生器本体20が有する容器21の容器底22(底面)に設けられる。蒸気筒50の下端に設けられた取付部51(突起片)を容器底22に設けられた筒取付部23の挿入口に入るように合わせ、蒸気筒50を押しつけながら回すことで、容器21(発生器本体20)に蒸気筒50を取り付けることができる。また、蒸気筒50は、下端に形成された切り欠き部52(連通路)を有する。蒸気筒50が容器21に取り付けられた状態では、切り欠き部52によって蒸気筒50の内部と容器21の内部(蒸気筒50の外部)とが連通する。このため、容器21に水が入れられると、蒸気筒50の内部にも水が入り込むこととなる。
【0015】
容器蓋80は、容器21を塞ぐ(蓋をする)機能を有する。蓋をすることで容器21内の温度を保ちやすくなる。ユーザが容器蓋80の取手部81をもち、容器蓋80に設けられた窪み部82を容器21(発生器本体20)に設けられた蓋位置決め部24に合わせ、容器21を容器蓋80で覆うことで、容器21の開口を容器蓋80で塞ぐことができる。容器21に容器蓋80が位置決めして取り付けられることで、蒸気が外部へ逃げるのを防止し、蒸気筒50からの蒸気が容器蓋80の貫通部83を通って蒸籠身11まで到達させることができる。後述するが、容器蓋80は、この中央部84や縁部85よりも低い周溝部86で構成され、受け皿としての機能も有する。
【0016】
発生器本体20は、容器21(タンク)を有する筐体25と、ヒータ26と、通電ランプ27と、タイマー28とを備える。筐体25は、ヒータ26、通電ランプ27およびタイマー28などが組み付けられる機能を有する。ヒータ26は、容器21に入れられた水を加熱する機能を有する。ヒータ26としては、例えば、容器21の底で円形状に露出して設けられる面状ヒータを用いることができる。蒸気筒50は、露出しているヒータ26に被さるように容器21に取り付けられる。このため、ヒータ26で加熱された蒸気筒50内の水が蒸発して蒸気となる。通電ランプ27は、蒸し器10が電力を得られている場合に発光する機能を有する。タイマー28は、ヒータ26を加熱する時間(調理時間)を調整する機能を有する。
【0017】
また、筐体25は、上体部30および下体部31を有し、これらが組み合わさって構成される。上体部30は、蒸気となる水が入れられる容器21としての機能を有する。容器21は、内面32(内壁面)に目盛り33を有する。目盛り33は、例えば、2つの水位33H、33Lを有する。例えば2つの水位のいずれかに合わせるように容器21内に水を入れることで、容器21内に調理に適した量の水を入れることができる。例えば、目盛り33の上限33Hと下限33Lの範囲内に水位を合わせるように水が容器21に入れられる。水位が上限33Hを上回る場合は噴きこぼれのおそれが生じ、他方、水位が下限33Lを下回る場合は空だきのおそれが生じる。目盛り33によれば、適切に蒸気を発生させることができる。
【0018】
また、容器21は、容器の開口縁34の一部に形成され、外側に傾く斜面35を有している。斜面35を設けることで、例えば、水量調整の際や、調理後において、斜面35から容器21の水を捨てやすくなる。また、容器21は、内面32に形成され、斜面35に向かって容器底22(底面)から延びる排水ガイド36を有する。斜面35から水を捨てる際に斜面35を下に向けて容器21(発生器本体20)を傾けることで、排水ガイド36を伝わって斜面35から水を捨てやすくすることができる。このため、調理21内に調理に適した量の水を入れることができ、適切に蒸気を発生させることができる。なお、目盛り33の一つに排水ガイド36を兼用させることで、部品点数を低減させることができる。
【0019】
容器21の底22にはヒータ26が露出して設けられている。露出しているヒータ26の周りには、水漏れを防止するために、シール部37(例えば、シリコーンパッキン)が設けられている。また、ヒータ26下には、ヒータ26を支持するために、下体部31に固定された押さえ部38が設けられている。また、下体部31下には、卓上に載置される蒸し器10を安定させるために、複数の脚部39が均等に配置されている。
【0020】
(蒸気筒)
蒸気筒50について説明する。図3図4図5および図6のそれぞれは蒸気筒50の正面図、底面図、底面側からの斜視図および図4のVI-VI線の断面図である。本発明の実施形態における蒸気筒50は、下端54(一端)および反対側の上端55(他端)が開口し、中空内部を開放するよう構成され、下端54の開口よりも上端55の開口が小さい。例えば、ラッパ口状、ベル状、円錐台状の外形となるように、蒸気筒50は構成されてもよい。
【0021】
蒸気筒50は、内部で蒸気を整流する機能を有する。蒸し器10では、蒸気筒50の下端54側で加熱された水が沸騰し、そして発生した蒸気(水蒸気)が蒸気筒50の上端55側へ移動し、上端55の開口から放出される。蒸気筒50は、内面53に形成された1または複数の隆起部56(畝状部)を有する。隆起部56は、蒸気筒50の内面53から盛り上がり、蒸気筒50の下端54側から上端55側へ延びるように形成されている。蒸気筒50では、隆起部56が蒸気筒50の外部から内部へ押し出されるように形成されている。
【0022】
例えば、特許文献1のような円筒状の蒸気整流部には、隆起部(畝状部)が形成されていない。このような円筒状の蒸気整流部では、蒸気の発生は内半径の大きさのみによって調整する必要があった。しかしながら、蒸気筒50では、隆起部56を設けることで蒸気筒50の内部の大きさを調整することができる。このような蒸気筒50であれば適切に蒸気を発生させることができる。
【0023】
また、蒸気筒50は、下端54の開口よりも上端55の開口が小さくなるよう形成されている。具体的には、蒸気筒50は、内部がテーパ状となるような内面53を有するよう構成されている。すなわち、蒸気筒50の内部が、下端54から上端55に向かって狭くなっている(窄まっている)。蒸気筒50では、下端54の開口および上端55の開口が、例えば、平面視(底面視)において円形状に構成されている。このため、蒸気筒50では、下端54から上端55に向かって内半径が小さくなっている。このような構成によれば、下端54側で発生した蒸気が上端55側に向かうに従い集められるので、蒸気筒50から適切に蒸気を発生させることができることとなる。
【0024】
また、蒸気筒50内で効率よく水を沸騰させるには、下端54の開口はヒータ26を覆う大きさであることが好ましい。仮に、下端開口がその大きさのままで内面が上端開口まで続いてしまう(円柱状となる)と、内部の体積も大きいままで、蒸気筒で沸騰させる水量が多くなってしまう。このため、蒸気筒50では、内部をテーパ状として体積による影響も抑え、水を沸騰させる効率を高めることで、適切に蒸気を発生させることができる。
【0025】
また、蒸気筒50の内面53は、蒸気筒50の上端55側がドーム状に窄まるような上側曲面57を有する。この上側曲面57で囲まれた蒸気筒50の内部空間は、下端54側で発生した蒸気が上端55の開口から放出される際のバッファ(エア溜まり)としての機能を有する。すなわち、蒸気筒50内の湯面から蒸気が放出される際に熱湯が噴き出したとしても上側曲面57に衝突するため、上端55の開口から熱湯が噴き出すことを防止することができる。したがって、蒸気筒50からは適切に蒸気を発生させることができる。
【0026】
また、蒸気筒50の内面53は、蒸気筒50の下端54側で末広がるような下側曲面60を有する。また、隆起部56は、下側曲面60において蒸気筒50の下端54側に向かって徐々に低くなる隆起端曲面61を有する。蒸気筒50では、蒸気を発生させる容量(時間)、蒸気の整流のしかたなどを、内面53において隆起部56がある箇所と、ない箇所とによる内部の大きさで調整している。そして、蒸気筒50では、下側曲面60のアールが、隆起端曲面61のアールよりも大きくなるように構成されている。このため、下端54側で発生した蒸気によっては、隆起端曲面61よりも下側曲面60から上昇しやすくなる。このように蒸気の整流のしかたを調整することで、蒸気筒50から適切に蒸気を発生させることができる。
【0027】
また、蒸気筒50は、平面視(底面視)中心Oに対して周方向に等間隔で複数の隆起部56を設けている。このため、下端54側で発生した蒸気を上端55側にバランスよく整流させることができ、蒸気筒50から適切に蒸気を発生させることができる。例えば、図4に示すように、蒸気筒50では、中心Oに対して周方向に等間隔(等分)で六つの隆起部56が離れて設けられている。また、蒸気筒50では、内面53から盛り上がる隆起部56のため、その隣り合う隆起部56の間の空間は、蒸気が通りやすい路62として構成される。このように蒸気の整流のしかたを調整することで、蒸気筒50から適切に蒸気を発生させることができる。
【0028】
また、蒸気筒50では、上端55の開口が、中央孔部63から放射状に延びるランナー部64によって複数の孔部65に分割して構成されている。このため、孔部65は平面視において中央側から開口縁側(外側)に向かって拡がっている。このような平面視における上端55は、例えば、グレープフルーツなどの柑橘類の横断面のように構成されているといえる。このような構成によれば、上端55の開口全体(中央孔部63および複数の孔部65)から適切に蒸気を発生させることができる。
【0029】
(容器蓋)
容器蓋80について説明する。図7および図8のそれぞれは容器蓋80の中央要部平面図および図7のVIII-Oa-VIII線の断面図である。
【0030】
容器蓋80は、中央部84と、周溝部86と、中央部84と周溝部86との境界に形成された貫通部83とを有する。貫通部83は、平面視でリング状に構成されている。容器21(発生器本体20)を容器蓋80で覆うと、中央部84は、蒸気筒50の上端55と対向する。また、周溝部86は、中央部84の周囲で、容器21の内部に入り込むように中央部84よりも低くなっている。これにより、蒸気筒50から放出された蒸気は、中央部84の裏面に衝突してその周りの空間で溜められた後、貫通部83を通って容器蓋80の表面(中央部84の表面)側まで上昇する。このような構成によれば、貫通部83から適切に蒸気を発生させることができる。
【0031】
また、容器蓋80は、中央部84から周溝部86へ貫通部83を跨ぐスライダ部90を有する。スライダ部90は、中央部84の上面縁91の手前から下るスライダ面92を有する。具体的には、スライダ部90は、上面縁91より中心側まで凹部となるようなスライダ面92(図8では、段付きとなっている)を有する。これにより、蒸籠身11から落ちてきた液体が中央部84に長く留まるのではなく、より早くにスライダ部90に流れ込みやすくなる。
【0032】
また、容器蓋80は、中央部84の上面縁91から貫通部83上のスライダ面92のスライダ縁93にかかる壁部94を有する。この容器蓋80では、調理に作用した蒸気が液体(食材から排出されたものも含む。例えば肉であれば、排出された肉油を含む液体)となって中央部84の表面に落ちたとしても、スライダ部90を伝わって周溝部86に溜まる。このため、使用済みの液体が、貫通部83を通って容器20にまで到達するのを防止することができる。したがって、容器蓋80によれば、使用済みの液体が容器20内の熱湯に含まれるのを防止して、適切に蒸気を発生させることができる。
【0033】
また、容器蓋80では、中央部84が中心Oaを頂部とするドーム状に形成されているため、中央部84の表面に落ちた使用済みの液体を上面縁91の壁部94に到達させることができる。そして、スライダ部90を伝って使用済みの液体が周溝部86に溜まる。また、容器蓋80では、スライダ面92における壁部94の高さh1が、中央部84の上面における壁部94の高さh2よりも高くなるよう構成されている。このため、スライダ面92を液体が流れても貫通部83に落ちることを防止することができる。したがって、容器蓋80によれば、使用済みの液体が容器20内の熱湯に含まれるのを防止して、適切に蒸気を発生させることができる。
【0034】
(蒸し器の使用方法、蒸し器を用いた食品の製造方法)
本発明の実施形態に係る蒸し器10の使用方法(食品の製造方法)について説明する。図9は蒸し器10の使用方法のフローチャートである。
【0035】
まず、発生器本体20に蒸気筒50をセットする(工程S10)。具体的には、蒸気筒50の取付部51を下にして発生器本体20(容器21)の筒取付部23に取り付ける。
【0036】
次いで、容器21に水を入れる(工程S20)。具体的には、調理に適した量となるように目盛り33に合わせて容器21に水を入れる。水の量が少ないと空だきの原因になり、水の量が多いと熱湯が溢れる原因にもなるため、適量の水を容器21に入れる。
【0037】
次いで、発生器本体20(容器21)に容器蓋80をセットする(工程S30)。具体的には、窪み部82を手前(発生器本体20の正面側)にして本体20の蓋位置決め部24に合わせて容器21に容器蓋80でふたをする。容器蓋80で容器21の開口を塞がれていないと蒸気が逃げる原因となる。また、容器蓋80が容器21にはまっていないと蒸籠身11が倒れる原因となる。
【0038】
また、蒸籠身11に食材を入れておく(工程S40)。具体的には、食材と食材との間に適度な隙間を作って蒸籠身11に食材を配置する。これにより、食材と食材の間に蒸気が通りやすくなり、うまく食材を蒸すことができる。なお、蒸籠身11にクッキングシートなどを敷いておくことで、食材のにおい移りやくっつき、肉汁などの染み込みを防止することができる。その後、蒸籠身11に蒸籠蓋12をセットする(工程S50)。
【0039】
次いで、発生器本体20に蒸籠身11をセットする(工程S60)。具体的には、容器蓋80の上に蒸籠蓋12でふたをした蒸籠身11を載せる。本実施形態では、蒸籠身11を一段分セットする場合を説明しているが、多段としてセットしてもよい。次いで、発生器本体20(蒸し器10)に電源を入れる(工程S70)。具体的には、電源プラグ(不図示)をコンセントに差し込む。これにより、通電ランプ27が点灯する。
【0040】
次いで、タイマーを設定する(工程S80)。具体的には、食材やレシピに合わせた時間を設定するためタイマー28を回す。これにより、ヒータ26によって容器21内の水が加熱され、タイマーが終了するまで(工程S82)、蒸気が発生して食材を蒸して調理する(工程S84)。なお、タイマーが終了するとブザーが鳴ってユーザに向けて発報するとともに、ヒータ26による加熱が停止される。
【0041】
次いで、蒸し器10(発生器本体20)の電源を切る(工程S90)。具体的には、電源プラグをコンセントから抜く。また、タイマー28による設定時間が終了後であれば、蒸籠身11を発生器本体20から下ろし、蒸籠蓋12を外して蒸籠身11から調理された食材を取り出して食器皿に盛り付けることができる。蒸し器10によれば適切に蒸気を発生させることができるので、簡単な方法であっても満足のいく食品を製造することができる。
【0042】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態では、蒸気調理器具として電気式ではない蒸し器10Aに適用させた場合について図10を参照して説明する。図10は蒸し器10Aの断面図である。
【0043】
蒸し器10Aは、容器21Aを備える。この容器21Aの底22に蒸気筒50が設けられる。容器21Aは、高周波電磁力により加熱される材料(例えば、ステンレススチール製)から形成されている。加熱源100(例えば、高周波電磁加熱器のトッププレート)の上方に蒸気筒50が位置するよう容器21Aがセットされる。
【0044】
蒸し器10Aでは、蒸気筒50の下端54側で加熱された水が沸騰し、そして発生した蒸気が蒸気筒50の上端55側へ移動し、上端55の開口から放出される。蒸気筒50は、内面53に形成された1または複数の隆起部56(畝状部)を有する。隆起部56は、蒸気筒50の内面53から盛り上がり、蒸気筒50の下端54側から上端55側へ延びるように形成されている。容器21Aにセットされた蒸気筒50では、隆起部56を設けることで蒸気筒50の内部の大きさを調整することができる。このような蒸し器10Aの蒸気筒50であっても適切に蒸気を発生させることができる。
【0045】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0046】
前記実施形態では、容器の底部で露出するように設けられた面状ヒータを用いた場合について説明した。これに限らず、容器の内部にまで突き出るように設けられた突状ヒータを用いた場合であってもよい。この際、突状ヒータは、蒸気筒の下端の開口から挿入して配置される。突状ヒータによれば、蒸気筒内の水から効率よく蒸気を発生させることができる。
【0047】
また、前記実施形態では、容器に着脱可能な蒸気筒を用いた場合について説明した。これに限らず、容器と一体(固定)とされた蒸気筒を用いた場合であってもよい。
【0048】
また、前記実施形態では、平面視において蒸籠蓋、蒸籠身、容器蓋および発生器本体が円形状の場合について説明した。これに限らず、平面視方形状の場合であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 蒸気調理器具; 22 容器底; 50 蒸気筒; 53 内面; 54 下端; 55 上端; 56 隆起部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10