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特許7529456非常停止スイッチおよび安全制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】非常停止スイッチおよび安全制御システム
(51)【国際特許分類】
   H01H 9/18 20060101AFI20240730BHJP
   H01H 13/62 20060101ALI20240730BHJP
   G05B 9/02 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H01H9/18 B
H01H13/62
G05B9/02 L
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020109427
(22)【出願日】2020-06-25
(65)【公開番号】P2022006874
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000309
【氏名又は名称】IDEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103241
【弁理士】
【氏名又は名称】高崎 健一
(72)【発明者】
【氏名】福井 孝男
(72)【発明者】
【氏名】吉井 英二
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0046102(US,A1)
【文献】特開2004-207036(JP,A)
【文献】特開2013-159270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/18
H01H 13/02
G05B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の制御対象を安全に制御するための安全制御システムであって、
前記複数の制御対象に対応して設けられ、無線操作により押込み可能な押しボタンをそれぞれ有する複数の非常停止スイッチと、
前記複数の非常停止スイッチのうちペアリングによる対応関係が構築された前記非常停止スイッチに対して前記無線操作を行うための無線端末と、
前記複数の非常停止スイッチにそれぞれ設けられ、対応する前記制御対象を識別可能な識別部と、
前記無線端末による前記無線操作によって前記非常停止スイッチの前記押しボタンが押込み操作されることにより、前記非常停止スイッチから出力される非常停止信号に基づいて、前記ペアリングによる対応関係を有しかつ前記識別部が同一の前記非常停止スイッチに対応する前記制御対象を停止するよう制御信号を出力する制御部と、
を備えた安全制御システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記識別部が発光部を有するとともに、
前記制御部は、前記識別部が同一の前記非常停止スイッチに対して識別信号を出力しており、
前記識別信号により、前記識別部が発光するようになっている、
ことを特徴とする安全制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常停止スイッチおよびこれを含む安全制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、非常停止スイッチは、操作者が押込み操作可能な押しボタンと、押しボタンの押込み操作により接断される接点とを備えている(特開2001-35302号公報の図1参照)。非常停止スイッチの操作時には、接点がON状態からOFF状態に切り替わることで装置の電気回路が遮断されて、装置が緊急停止するようになっている。
【0003】
図12は、従来の非常停止スイッチを備えた設備の一例を示している。同図中、(a)は設備の平面概略図、(b)は設備の正面概略図、(c)は非常停止スイッチの正面概略図である。同図(a)、(b)に示すように、装置A’、B’、C’には、それぞれ非常停止スイッチX’、Y’、Z’が取り付けられている。また、装置A’、B’には電源部E1’から電力が供給され、装置C’には電源部E2’から電力が供給されるようになっている。
【0004】
上記設備において、非常停止スイッチX’を操作すると、電源部E1’からの電力の供給が停止し、装置A’だけでなく、装置B’の運転も停止する。同様に、非常停止スイッチY’を操作すると、電源部E1’からの電力の供給が停止し、装置B’だけでなく、装置A’の運転も停止する。また、非常停止スイッチZ’を操作すると、電源部E2’からの電力の供給が停止し、装置C’の運転が停止する。これらの停止は、安全規格上、停止カテゴリー0または1による停止である。なお、停止カテゴリー0による停止とは、駆動部への動力即時遮断による停止であり、停止カテゴリー1による停止とは、駆動部を停止させた後に動力を遮断するものである。
【0005】
なお、非常停止スイッチX’、Y’、Z’は、図12(c)に示すように、操作者が押込み操作可能な押しボタン100と、その周囲に配設された背景領域101とをそれぞれ有している。背景領域101は、装置A’、B’、C’のパネル上において押しボタン100の周囲に配置された着色領域であって、安全規格上、押しボタン100および背景領域101の配色は、押しボタン100が赤色で、背景領域101が黄色と定められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した設備においては、非常停止スイッチX’、Y’が離れて配置されているため、非常停止スイッチX’またはY’の操作により、装置A’およびB’の双方が同時に停止することが分かり難い。また、非常停止スイッチY’、Z’が接近して配置されているため、非常停止スイッチY’またはZ’の操作により、装置B’およびC’の双方が同時に停止すると勘違いするおそれがある。
【0007】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、非常停止スイッチがいずれの制御対象に対応しているかを容易に識別できるようにすることにある。また、本発明は、このような非常停止スイッチを備えた安全制御システムを提供しようとしている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係る安全制御システムは、複数の制御対象を安全に制御するための安全制御システムであって、複数の制御対象に対応して設けられ、無線操作により押込み可能な押しボタンをそれぞれ有する複数の非常停止スイッチと、複数の非常停止スイッチのうちペアリングによる対応関係が構築された非常停止スイッチに対して無線操作を行うための無線端末と、複数の非常停止スイッチにそれぞれ設けられ、対応する制御対象を識別可能な識別部と、無線端末による無線操作によって非常停止スイッチの押しボタンが押込み操作されることにより、非常停止スイッチから出力される非常停止信号に基づいて、ペアリングによる対応関係を有しかつ識別部が同一の非常停止スイッチに対応する制御対象を停止するよう制御信号を出力する制御部とを備えている。
【0021】
本発明によれば、無線端末による無線操作によって非常停止スイッチの押しボタンが押込み操作されることにより、非常停止スイッチから出力された非常停止信号は、制御部に入力される。制御部は、入力された非常停止信号に基づいて、制御対象を制御する。このとき、制御部は、ペアリングによる対応関係を有しかつ識別部が同一の非常停止スイッチに対応する制御対象を停止するよう制御信号を出力する。
【0022】
この場合には、非常停止スイッチが複数の制御対象に対応してそれぞれ設けられるとともに、各非常停止スイッチが制御対象を識別可能な識別部を有しているので、識別部によって、非常停止スイッチがいずれの制御対象に対応しているかを容易に識別できるようになる。そのため、或る非常停止スイッチを操作したとき、当該非常停止スイッチの制御対象が制御されるだけでなく、当該非常停止スイッチの識別部と同一の識別部を有する他の非常停止スイッチの制御対象も同時に制御されるということが容易に分かるようになるとともに、当該非常停止スイッチの識別部と異なる識別部を有する別の非常停止スイッチの制御対象は制御されないということも容易に分かるようになる。
【0023】
本発明では、識別部が発光部を有するとともに、識別部が同一の非常停止スイッチに対して制御部が識別信号を出力しており、当該識別信号により、識別部が発光するようになっている。
【0024】
本発明によれば、非常停止スイッチが操作されると、当該非常停止スイッチの識別部と同一の識別部を有する非常停止スイッチの識別部が発光するので、操作者は、操作された非常停止スイッチがいずれの制御対象に対応しているかを一層容易に識別できるようになる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように本発明によれば、非常停止スイッチが複数の制御対象に対応してそれぞれ設けられるとともに、非常停止信号による制御対象を識別可能な識別部を有しているので、識別部によって、非常停止スイッチがいずれの制御対象に対応しているかを容易に識別できるようになる。したがって、或る非常停止スイッチを操作したとき、当該非常停止スイッチの制御対象が制御されるだけでなく、当該非常停止スイッチの識別部と同一の識別部を有する他の非常停止スイッチの制御対象も同時に制御されるということが容易に分かるようになるとともに、当該非常停止スイッチの識別部と異なる識別部を有する別の非常停止スイッチの制御対象は制御されないということも容易に分かるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施例による非常停止スイッチを備えた設備(安全制御システム)の一例を示しており、(a)は設備の平面概略図、(b)はその正面概略図、(c)は非常停止スイッチの正面概略図である。
図2】前記非常停止スイッチ(図1)において識別部の詳細を示す正面概略図であって、それぞれ図1(c)に対応している。
図3】前記非常停止スイッチ(図1)の全体斜視図であって、(a)は図2(a)、(b)の非常停止スイッチに対応しており、(b)は図2(c)の非常停止スイッチに対応している。
図4】(a)ないし(c)は、前記非常停止スイッチ(図1)において識別部の変形例を示す正面概略図であって、図2(a)、(b)に対応している。
図5】前記非常停止スイッチ(図1)の変形例の全体斜視図であって、(a)は図3(a)の非常停止スイッチに対応しており、(b)は図3(b)の非常停止スイッチに対応している。
図6】第1ないし第3の非常停止スイッチを含む安全制御システムの概略ブロック構成図である。
図7】前記非常停止スイッチ(図1)の他の変形例の縦断面概略図であって、非常停止スイッチの非操作時の状態を示している。
図8】前記非常停止スイッチ(図7)の操作時の状態を示している。
図9】前記非常停止スイッチ(図7)と通信可能な携帯型無線端末の全体斜視図である。
図10A】前記安全制御システム(図6)および前記無線端末(図9)の概略ブロック構成の一例を示す図である。
図10B】前記安全制御システム(図6)および前記無線端末(図9)の概略ブロック構成の他の例を示す図である。
図11】前記非常停止スイッチ(図1)のさらに他の変形例の側面図であって、筐体を具備しない非常停止スイッチのパネル取付例を示しており、(a)はガード部が取り付けられていない状態を、(b)はガード部が取り付けられた状態をそれぞれ示している。
図12】従来の非常停止スイッチを備えた設備の一例を示しており、(a)は設備の平面概略図、(b)はその正面概略図、(c)は非常停止スイッチの正面概略図であり、図1に相当している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
図1ないし図11は、本発明による非常停止スイッチおよびこれを含む安全制御システムを説明するための図である。図1(a)および(b)は、非常停止スイッチを備えた設備(安全制御システム)の一例を示し、図1(c)ないし図5(b)は非常停止スイッチの詳細を示し、図6は安全制御システムの概略ブロック構成を示し、図7および図8は通信可能な非常停止スイッチの内部構造を示し、図9は通信可能な非常停止スイッチとともに用いられる携帯型無線端末を示し、図10A図10Bは携帯型無線端末および非常停止スイッチの概略ブロック構成を示し、図11は、筐体を具備しない非常停止スイッチを示している。なお、図7および図8では、図示の便宜上、ハッチングを省略して示している。
【0028】
図1(a)の平面図および同図(b)の正面図に示すように、この設備(安全制御システム)は、制御対象として複数の装置A、B、Cを備えており、これらの装置A、B、Cを安全に制御するためのものである。装置A、B、Cには、当該各装置A、B、Cにそれぞれ対応する非常停止スイッチX、Y、Zが取り付けられている。また、装置A、Bには電源部E1から電力が供給され、装置Cには電源部E2から電力が供給されるように構成されている。
【0029】
非常停止スイッチX、Y、Zは、図1(c)の正面図に示すように、操作者が押込み操作可能な押しボタン10と、その周囲(外周側)に配設された円環状の背景領域11と、背景領域11の外側に配設された円環状の識別部12とを有している。背景領域11は、装置A、B、Cのパネル上に円環状に設けられた着色領域であって、安全規格上、押しボタン10および背景領域11の配色は、押しボタン10が赤色で、背景領域11が黄色と定められている。
【0030】
識別部12は、非常停止スイッチX、Y、Zの制御対象である各装置A、B、Cを識別するためのものであって、各制御対象を識別可能に構成されている。識別部12は、背景領域11と異なる色に着色されており、操作者が背景領域11を視認するのを妨げないようになっている。図2(a)および(b)と同図(c)とを比較対照すると分かるように、非常停止スイッチXおよびYの各識別部12xおよび12yの色は同一であるが、非常停止スイッチZの識別部12zの色とは異なっている。
【0031】
したがって、非常停止スイッチXおよびY(したがって、これらの制御対象である装置AおよびB)は、同一色の識別部12x、12yによって識別可能にグループ化されている。一方、非常停止スイッチZ(したがって、その制御対象である装置C)については、識別部12x、12yとは異なる色の識別部12zによって、制御対象は一つの装置Cではあるが、同様に識別可能にグループ化されているといえる。このように、各識別部12x、12y、12zによって装置ごとにグループ化(またはグループ分け/グルーピング)されており、いずれかの非常停止スイッチが操作された際には、同じグループ内のすべての装置が非常停止するようになっている。
【0032】
非常停止スイッチXおよびYの識別部12xおよび12yの色は、具体的には、背景領域11の色と異なる、例えば青系統の色(例:青色、青紫色等)にされ、非常停止スイッチZの識別部12zの色は、具体的には、背景領域11の色と異なりかつ非常停止スイッチX、Yの識別部12x、12yの色と異なる、例えば緑系統の色(例:緑色、青緑色)にされている。
【0033】
青系統の色は、背景領域11の黄色と補色またはそれに近い関係にあるため、背景領域11の外側に配置される識別部12x、12yとして青系統の色を採用することにより、識別部12x、12yを際立たせて目立たせることができる。また、緑系統の色は、色相環において、背景領域11の黄色と、識別部12x、12yの青系統の色との間の略中間に位置しているので、非常停止スイッチZの緑系統色の識別部12zは、背景領域11との見分けがつきやすいとともに、非常停止スイッチX、Yの青系統色の識別部12x、12yに対しても見分けがつきやすくなっている。なお、各装置の識別性をより高めるために、対応する各非常停止スイッチの識別部の色と同一色の識別表示を装置自体に設けるようにしてもよい。
【0034】
上述した設備においては、非常停止スイッチX、Yが離れて配置されているが、これらの非常停止スイッチX、Yに対応する各装置A、Bが各非常停止スイッチX、Yの同一色の各識別部12x、12yによってグループ化されているので、非常停止スイッチXまたはYの操作により、装置AおよびBの双方が同時に非常停止するということが分かりやすい。また、非常停止スイッチY、Zが接近して配置されているが、これらの非常停止スイッチY、Zに対応する各装置B、Cは、各非常停止スイッチY、Zの各識別部12y、12zの色が異なっていてグループ化されていないので、非常停止スイッチYまたはZの操作により、装置BおよびCの双方が同時に停止するといった勘違いすることがなくなる。
【0035】
このようにして、本実施例によれば、非常停止スイッチがいずれの装置(制御対象)に対応しているかを容易に識別できるようになる。
【0036】
図3(a)に示すように、非常停止スイッチX、Yは、押しボタン10を保持する筐体15を有している。背景領域11および識別部12x,12yは、筐体15の表面上に設けられている。同様に、同図(b)に示すように、非常停止スイッチZは、押しボタン10を保持する筐体15を有しており、背景領域11および識別部12zは、筐体15の表面上に設けられている。
【0037】
識別部12x、12y、12zの形状は円環状でなくてもよく、図4(a)に示すような正方形状(または矩形状)でもよく、同図(b)に示すような正三角形状(または三角形状)でもよく、同図(c)に示すような正六角形状(または正五角形状あるいはその他の多角形状)でもよい。なお、図4では、識別部12x、12yについてのみ例示しているが、識別部12zについても同様である。
【0038】
識別部12x、12y、12zは、筐体15の表面上に直接設けられていなくてもよい。図5(a)、(b)は、非常停止スイッチX、Y、Zが押しボタン10の周囲にガード部17を有し、ガード部17の端面に識別部12x、12y、12zが設けられた例を示している。同図(a)は非常停止スイッチX、Yを、同図(b)は非常停止スイッチZをそれぞれ示している。ガード部17は、人や物が不注意で押しボタン10に接触することで押しボタン10が誤動作しないように、押しボタン10をガードするためのものであって、筐体15の表面から立ち上がる立壁部から構成されている。この例では、立壁部は押しボタン10を挟んで対向配置された一対の立壁部から構成されている。各立壁部は、押しボタン10の外周に沿って円弧状に延びている。なお、各識別部12x、12y、12zは、ガード部17の側面つまり立壁部の壁面に設けるようにしてもよい。
【0039】
上述した各識別部12x、12y、12z(図2ないし図5)は、たとえば、塗装による着色やシールの貼付け等によって構成されるが、2色成形(ダブルモールド)により構成してもよく、あるいは、筐体15やガード部17内に別部材として着色部材を嵌め込むようにしてもよい。
【0040】
図6は、非常停止スイッチX、Y、Zを含む安全制御システムの概略ブロック構成を示している。
【0041】
同図に示すように、安全制御システムSは、安全コントローラ(制御部)SCを備えている。安全コントローラSCには、非常停止スイッチX、Y、Zおよびそれぞれの識別部12x、12y、12zが接続されている。この例では、識別部12x、12y、12zは、上述したような単なる着色領域ではなく、たとえばLED等から構成された発光部を有している。識別部12x、12yを構成する発光部の発光色は同一色である。識別部12zを構成する発光部の発光色は、識別部12x、12yを構成する発光部の発光色と異なる色である。なお、発光部の構成としては、たとえば点灯型のLED群の中に点滅型のLED群を配置するようにしてもよい。
【0042】
非常停止スイッチX、Y、Zは安全コントローラSCの入力側(入力部)に接続され、識別部12x、12y、12zは安全コントローラSCの出力側(出力部)に接続されている。
【0043】
安全コントローラSCの出力側には、非常停止スイッチX、Yに対応するコンタクタ(電磁接触器)Cが接続されており、コンタクタCには、電源部E1を介して装置A、Bが接続されている。コンタクタCは、一般に、電磁コイル、固定鉄心、可動鉄心および接点を有しており、電磁コイルに電流が流れたときに可動鉄心が固定鉄心に吸引されることで接点が開閉するように構成されている。
【0044】
安全コントローラSCの出力側には、非常停止スイッチZに対応するコンタクタ(電磁接触器)Cが接続されており、コンタクタCには、電源部E2を介して装置Cが接続されている。コンタクタCの構成は、コンタクタCの構成と同様である。
【0045】
装置A、B、Cの稼働中においては、電源部E1から装置A、Bに電力が供給され、電源部E2から装置Cに電力が供給されている。また、装置A、B、Cの稼働時には、安全コントローラSCの出力部から非常停止スイッチX、Y、Zの各識別部12x、12y、12zに対してそれぞれ識別信号x、y、zが常時出力されており、各識別部12x、12y、12zは点灯状態にある。これにより、操作者は、各識別部12x、12y、12zの発光色により、いずれの装置がグループ化(またはグループ分け/グルーピング)されているのかを容易に識別できるようになっている。
【0046】
この状態から、操作者(図示せず)により非常停止スイッチXが操作される、すなわち、非常停止スイッチXの押しボタン10(図1)が押込み操作されると、非常停止スイッチXから非常停止信号xが出力されて(図6参照)、これが安全コントローラSCの入力部に入力される。このとき、非常停止スイッチXの識別部12xおよび非常停止スイッチYの識別部12y(すなわち、操作された非常停止スイッチXの識別部12xおよびこれと同一の識別部12y)が、たとえば点滅するようにしてもよい。
【0047】
安全コントローラSCに非常停止信号xが入力されると、安全コントローラSCの出力部は、コンタクタCに対して制御信号xを出力する。すると、コンタクタCは、入力された制御信号xに基づいて電源部E1を制御することにより、装置Aのみならず装置Bに対しても電力の供給を停止し、その結果、装置AおよびBの双方が非常停止する。
【0048】
一方、装置A、B、Cの稼働中に非常停止スイッチYが操作される、すなわち、非常停止スイッチYの押しボタン10(図1)が押込み操作されると、非常停止スイッチYから非常停止信号yが出力されて(図6参照)、これが安全コントローラSCの入力部に入力される。このとき、非常停止スイッチYの識別部12yおよび非常停止スイッチXの識別部12x(すなわち、操作された非常停止スイッチYの識別部12yおよびこれと同一の識別部12x)が、たとえば点滅するようにしてもよい。
【0049】
安全コントローラSCに非常停止信号yが入力されると、安全コントローラSCの出力部は、コンタクタCに対して制御信号xを出力する。すると、コンタクタCは、入力された制御信号xに基づいて電源部E1を制御することにより、装置Bのみならず装置Aに対しても電力の供給を停止し、その結果、装置BおよびAの双方が非常停止する。
【0050】
また、装置A、B、Cの稼働中に非常停止スイッチZが操作される、すなわち、非常停止スイッチZの押しボタン10(図1)が押込み操作されると、非常停止スイッチZから非常停止信号zが出力されて(図6参照)、これが安全コントローラSCの入力部に入力される。このとき、非常停止スイッチZの識別部12z(すなわち、操作された非常停止スイッチZの識別部12z)が、たとえば点滅するようにしてもよい。
【0051】
安全コントローラSCに非常停止信号zが入力されると、安全コントローラSCの出力部は、コンタクタCに対して制御信号zを出力する。すると、コンタクタCは、入力された制御信号zに基づいて電源部E2を制御することにより、装置Cに対する電力の供給を停止し、その結果、装置Cが非常停止する。
【0052】
このように、装置の稼働中にいずれかの非常停止スイッチが操作されると、操作された非常停止スイッチに対応する装置のみならず、当該非常停止スイッチの識別部と同一の識別部を有する他の非常停止スイッチに対応する装置も非常停止する。すなわち、同一の識別部によりグループ化されたすべての装置が非常停止する。この場合の停止は、安全規格上の停止カテゴリー0による停止(図6参照)でも、停止カテゴリー1による停止でもよい。
【0053】
安全制御システムSにおいては、識別部が発光部を有しているので、識別効果を一層高めることができる。なお、非常停止スイッチの操作時に識別部を点滅させる際には、グループ毎に点滅周期を変えるようにしてもよい。また、非常停止スイッチの操作時に識別部の点灯状態を持続させる場合には、グラデーション発光させるようにしてもよい。さらに、識別部は発光色を変更可能に構成されていてもよい。この場合、設備の組替えや増設等の設備変更に対して識別部が柔軟に対応できるようになる。
【0054】
以上説明したように、非常停止スイッチの識別部は、複数の制御対象の中から非常停止信号により制御される任意の制御対象を選択的に識別可能になっているといえる。
【0055】
次に、非常停止スイッチの変形例について、図7および図8の内部構造図(縦断面概略図)を用いて説明する。
ここでは、非常停止スイッチとして、押しボタンによる手動操作のみならず、無線操作可能なものを例にとる。図7は非常停止スイッチの非操作時の状態を、図8は非常停止スイッチの操作時(手動操作時/無線操作時)の状態をそれぞれ示している。これらの図では、図示の便宜上ハッチングを省略している。
【0056】
図7および図8に示すように、非常停止スイッチ1は、筐体15と、筐体15の一端側に設けられ、筐体15に軸方向スライド可能に支持されるとともに、操作者が押込み操作(手動操作)するための押圧面(手動操作面)10aを有する押しボタン10と、押しボタン10の押圧面10aと逆側の裏面に連結され、筐体15の内部において軸方向に延びる軸部13と、軸部13の略中央に取り付けられ、軸部13とともに移動する可動接点14と、筐体15の内壁面に固定され、可動接点14に対向配置された固定接点16と、筐体15の内部において筐体15の他端側に設けられた電磁ソレノイド3と、筐体15の外壁面に取り付けられ、無線信号を受信する受信部(通信部)32と、受信部32で受信された無線信号に基づいてソレノイド3の駆動を制御する制御回路33とを備えている。制御回路33は、リード線34によりソレノイド3に接続されている。
【0057】
軸部13は、その略中央において外周側に張り出すフランジ部13aを有しており、フランジ部13aには圧縮コイルばね20の一端が圧接している。コイルばね20の他端は筐体15の内壁面から内周側に張り出す張出し部15aに圧接している。また軸部13は、押しボタン10の近傍において外周側に突出する突部13bを有している。突部13bは縦断面が台形形状をしており、一対の傾斜面を有している。一方、筐体15の内部には、一対の係合部材18が設けられている。各係合部材18は、突部13bの各傾斜面と係合し得る一対の傾斜面を有している。各係合部材18は、筐体15の内部に配設されたばね19の弾性反発力により、対応する各突部13bの側に付勢されている。図7に示す非操作時の状態では、突部13bの図示右側の傾斜面に係合部材18の図示左側の傾斜面が係合しており、図8に示す操作時の状態では、突部13bの図示左側の傾斜面に係合部材18の図示右側の傾斜面が係合している。
【0058】
軸部13の先端には、被係合部13Aが設けられている。被係合部13Aは、この例では、軸部13よりも大径の円柱形状を有している。ソレノイド3のソレノイド本体(電磁コイル部)30の内部には、プランジャ31がスライド自在に挿通しており、プランジャ31は軸部13と同心に配置されている。プランジャ31の一端には、軸部13の被係合部13Aに係合し得る係合部31Aが設けられている。係合部31Aは、この例では、プランジャ31よりも大径の円筒形状を有している。軸部13の先端の被係合部13Aは、プランジャ31の係合部31Aの内部の穴に挿入されて係合している。この構成により、軸部13およびプランジャ31は連結されており、両者が一体となって移動するようになっている。
【0059】
筐体15の前方側(押しボタン10側)端面には、背景領域11と、その外側に配置された識別部12とが設けられている。識別部12は、発光部を有している。
【0060】
次に、非常停止スイッチ1を無線操作可能な携帯型無線端末について、図9の斜視図を用いて説明する。
無線端末4は、操作者の手首に装着可能なウェアラブル端末である。無線端末4は、図9に示すように、操作者が指や手で押込み操作可能な押しボタン40と、押しボタン40を支持するベース41と、ベース41から左右側方に延び、操作者の手首の周りに巻回されて装着される左右一対のバンド42と、押しボタン40の外周側に配設され、操作者が不注意で押しボタン40を操作しないようにガードするための一対のガード部43とを備えている。
【0061】
無線端末4のバンド42は、腕時計のバンドと同様に、一方のバンド42に複数の貫通孔42aが形成されるとともに、他方のバンド42には、貫通孔42aに挿入される、腕時計バンドのつく棒に相当する棒状部材(図示せず)が設けられている。なお、面ファスナやその他の係脱手段により双方のバンド42を係脱自在に構成するようにしてもよい。
【0062】
次に、図10Aおよび図10Bは、非常停止スイッチ1(図7図8)を含む安全制御システムおよび携帯型無線端末4(図9)の概略ブロック構成を示しており、図10Aは概略ブロック構成の一例を、図10Bは概略ブロック構成の他の例を示している。
【0063】
各図においては、図6に示した安全制御システムの非常停止スイッチX、Y、Zの代わりに、非常停止スイッチ1(1x)、1(1y)、1(1z)がそれぞれ設けられている。また、図10Aに示す例では、無線端末が3つの無線端末4、4、4から構成され、図10Bに示す例では、無線端末が2つの無線端末4、4から構成されている。無線端末の数は、図示したものより多くても少なくてもよい。
【0064】
図10Aおよび図10Bに示すように、非常停止スイッチ1(1x)、1(1y)は、同様の構成を有しており、それぞれの制御回路33には、押しボタン10と、識別部12と、無線端末からの信号を受信する受信部32と、非常停止スイッチ1(1x)、1(1y)を作動させるソレノイド3とが接続されている。各非常停止スイッチ1(1x)、1(1y)は、同一の識別部12を有しており、よって、各非常停止スイッチ1(1x)、1(1y)の制御対象である各装置A、Bは、識別部12によってグループ化されている。
【0065】
図10Aおよび図10Bに示すように、非常停止スイッチ1(1z)は、非常停止スイッチ1(1x)、1(1y)とほぼ同様の構成を有しており、制御回路33には、押しボタン10と、識別部12’と、無線端末からの信号を受信する受信部32と、非常停止スイッチ1(1z)を作動させるソレノイド3とが接続されている。非常停止スイッチ1(1z)の識別部12’は、非常停止スイッチ1(1x)、1(1y)の識別部12と異なっており、よって、各非常停止スイッチ1(1z)の制御対象である装置Cは、識別部12’によってグループ化されている。
【0066】
図10Aおよび図10Bに示すように、無線端末4(携帯型無線端末1)は、CPUを含む制御回路45を有しており、制御回路45には、押しボタン40と、無線信号を送信する送信部46と、無線信号を受信する受信部47と、各種表示を行う表示部48とが接続されている。同様に、無線端末4(携帯型無線端末3)は、CPUを含む制御回路45を有しており、制御回路45には、押しボタン40と、無線信号を送信する送信部46と、無線信号を受信する受信部47と、各種表示を行う表示部48とが接続されている。また、図10Aに示すように、無線端末4(携帯型無線端末2)は、CPUを含む制御回路45を有しており、制御回路45には、押しボタン40と、無線信号を送信する送信部46と、無線信号を受信する受信部47と、各種表示を行う表示部48とが接続されている。
【0067】
図10Aに示す例では、無線端末4、4、4は非常停止スイッチ1(1x)、1(1y)、1(1z)にそれぞれ対応(つまり1対1に対応)しており、無線端末4の送信部46から送信された無線信号は非常停止スイッチ1(1x)の受信部32で受信され、無線端末4の送信部46から送信された無線信号は非常停止スイッチ1(1y)の受信部32で受信され、無線端末4の送信部46から送信された無線信号は非常停止スイッチ1(1z)の受信部32で受信されるようになっている。このような対応関係の構築は、たとえば、無線端末4、4、4と各々対応する非常停止スイッチ1(1x)、1(1y)、1(1z)との間で予め相互認証を行って接続可能な状態にしておく、いわゆる「ペアリング」によって可能である。
【0068】
図10Bに示す例では、無線端末4は非常停止スイッチ1(1x)、1(1y)に対応(つまり1対2に対応)し、無線端末4は非常停止スイッチ1(1z)に対応(つまり1対1に対応)している。すなわち、無線端末4の送信部46から送信された無線信号は非常停止スイッチ1(1x)、1(1y)の各受信部32で受信され、無線端末4の送信部46から送信された無線信号は非常停止スイッチ1(1z)の受信部32で受信されるようになっている。このような対応関係の構築は、同様に、無線端末4、4と各々対応する非常停止スイッチ1(1x)および1(1y)、1(1z)との間で予め相互認証を行って接続可能な状態にしておく、いわゆる「ペアリング」によって可能である。
【0069】
無線端末4、4、4の各表示部48、48、48は、たとえば、押しボタン40、40、40を押した際の照光(たとえば点灯)表示や、他者が先に押しボタンを押し込んだ際の照光(たとえば点滅)表示、電波強度のレベルの表示、バッテリー切れの際や無線通信不可時のアラーム表示等を行うためのものである。
【0070】
無線端末4、4、4は、いずれも装置の近くで作業する各操作者によりそれぞれ所持されるか、または、無線端末4、4が装置の近くで作業する操作者により所持され、無線端末4が装置から離れた位置で操作者を監督する監督者により所持されるが、その他のアプリケーションでもよい。無線端末4、4、4は、それぞれの送受信部46、47;46、47;46、47を介して相互に通信可能になっている。なお、用いられる無線の種類としては、たとえば、BLUETOOTH(登録商標)通信、WiMAX(登録商標)通信、Wi-Fi(登録商標)通信、ZIGBEE(登録商標)通信、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)通信、赤外線通信等がある。
【0071】
次に、非常停止スイッチ1(1x、1y、1z)の操作について、図7ないし図10A、10Bを用いて説明する。
図10A図10Bに示す例では、装置A、B、Cの稼働時には、非常停止スイッチ1(1x、1y、1z)は、図7に示すように、押しボタン10が押し込まれていない非操作時の状態にあって、各非常停止スイッチ1(1x、1y、1z)の可動接点14および固定接点16は接触している。また、このとき、非常停止スイッチ1(1x、1y、1z)の各識別部12、12’は点灯状態にある。
【0072】
装置A、B、Cの稼働中に操作者が非常停止スイッチ1xの押しボタン10を押込み操作(手動操作)すると、押しボタン10とともに軸部13が押し込まれる。軸部13の移動にともない、軸部13の突部13bの傾斜面がこれと係合する係合部材18の傾斜面をばね19の弾性反発力に抗して乗り越え、図7に示す状態から図8に示す状態に移行する。このとき、軸部13の突部13bの他方の傾斜面が係合部材18の他方の傾斜面と係合している。また、軸部13とともに可動接点14が移動することにより、可動接点14が固定接点16から開離する。
【0073】
すると、非常停止スイッチ1xから非常停止信号が出力されて、これが安全コントローラSCに入力され、安全コントローラSCからコンタクタCに制御信号xが出力される。その結果、コンタクタCは入力された制御信号xに基づいて電源部E1を制御することにより、装置Aのみならず、装置Aと同グループの装置Bに対しても電力の供給を停止し、その結果、装置AおよびBが非常停止する。
【0074】
非常停止スイッチ1xの操作時には、非常停止スイッチ1xの識別部12がたとえば点滅するようにしてもよい。これにより、非常停止スイッチ1xが操作された状態にあることが容易に識別でき、装置A、Bの停止が非常停止スイッチ1xの操作に起因したものであることが容易に判別できるようになる。また、手動操作された非常停止スイッチ1xと同一の識別部を有する(つまり、識別部12によりグループ化された)非常停止スイッチ1yの識別部12についても同様に点滅するようにしてもよい。この場合、装置A、Bが識別部12によりグループ化されていることで、操作者は、手動操作された非常停止スイッチ1xがいずれの装置に対応しているかを容易に識別できる。
【0075】
装置A、B、Cの稼働中に操作者が非常停止スイッチ1yの押しボタン10を押込み操作(手動操作)すると、同様に、押しボタン10とともに軸部13が押し込まれて、軸部13の突部13bの傾斜面がこれと係合する係合部材18の傾斜面をばね19の弾性反発力に抗して乗り越え、図7に示す状態から図8に示す状態に移行する。このとき、軸部13とともに可動接点14が移動することにより、可動接点14が固定接点16から開離する。
【0076】
すると、非常停止スイッチ1yから非常停止信号が出力されて、これが安全コントローラSCに入力され、安全コントローラSCからコンタクタCに制御信号xが出力される。その結果、コンタクタCは入力された制御信号xに基づいて電源部E1を制御することにより、装置Bのみならず、装置Bと同グループの装置Aに対しても電力の供給を停止し、その結果、装置BおよびAの双方が非常停止する。
【0077】
非常停止スイッチ1yの操作時には、非常停止スイッチ1yの識別部12がたとえば点滅するようにしてもよい。これにより、非常停止スイッチ1yが操作された状態にあることが容易に識別でき、装置A、Bの停止が非常停止スイッチ1yの操作に起因したものであることが容易に判別できるようになる。また、手動操作された非常停止スイッチ1yと同一の識別部を有する(つまり、識別部12によりグループ化された)非常停止スイッチ1xの識別部12についても同様に点滅するようにしてもよい。この場合、装置A、Bが識別部12によりグループ化されていることで、操作者は、手動操作された非常停止スイッチ1yがいずれの装置に対応しているかを容易に識別できる。
【0078】
装置A、B、Cの稼働中に操作者が非常停止スイッチ1zの押しボタン10を押込み操作(手動操作)すると、同様に、押しボタン10とともに軸部13が押し込まれて、軸部13の突部13bの傾斜面がこれと係合する係合部材18の傾斜面をばね19の弾性反発力に抗して乗り越え、図7に示す状態から図8に示す状態に移行する。このとき、軸部13とともに可動接点14が移動することにより、可動接点14が固定接点16から開離する。
【0079】
すると、非常停止スイッチ1zから非常停止信号が出力されて、これが安全コントローラSCに入力され、安全コントローラSCからコンタクタCに制御信号zが出力される。その結果、コンタクタCは入力された制御信号zに基づいて電源部E2を制御することにより、装置Cに対して電力の供給を停止し、その結果、装置Cが非常停止する。
【0080】
非常停止スイッチ1zの操作時には、非常停止スイッチ1zの識別部12’がたとえば点滅するようにしてもよい。これにより、非常停止スイッチ1zが操作された状態にあることが容易に識別でき、装置Cの停止が非常停止スイッチ1zの操作に起因したものであることが容易に判別できるようになる。このとき、手動操作された非常停止スイッチ1zの識別部12’と異なる(つまり、識別部12’によりグループ化されていない)非常停止スイッチ1x、1yの各識別部12は点滅しない。この場合、装置Cが識別部12’によりグループ化されていることで、操作者は、手動操作された非常停止スイッチ1zがいずれの装置に対応しているかを容易に識別できる。
【0081】
なお、押しボタン10の押込み操作の際には、軸部13に連結されたプランジャ31も押し込まれるが、このとき、ソレノイド本体30には電流が供給されておらず、そのため、プランジャ31の移動の際の摺動抵抗はなく、プランジャ31の移動はスムーズに(すなわち、負荷なく)行われる。したがって、操作者による非常停止スイッチ1の押込み操作の際には、ソレノイド3を備えていない非常停止スイッチの操作と全く同様にして行うことが可能である。また、図8に示す状態から図7に示す状態に戻す復帰動作の際には、操作者が押しボタン10を掴んで手前側に引っ張ることにより行う。なお、復帰動作に関しては、たとえばプッシュロック・ターンリセット機構のようなロック機構を採用することにより、押しボタン10の押込み操作時に内部のロック機構により保持されたロック状態が押しボタン10をたとえばひねる(つまり回転させる)ことにより解除されるようにしてよい。
【0082】
図10Aに示す例において、装置A、B、Cの稼動中に操作者が無線端末4の押しボタン40を押込み操作すると、無線端末4の送信部46から操作信号が送信される(図10A参照)。無線端末4から送信された操作信号は、非常停止スイッチ1xの受信部32により受信され、制御回路33に入力される。すると、非常停止スイッチ1xにおいて、制御回路33からソレノイド3のソレノイド本体30に電流が供給され、これにより、図8に示すように、ソレノイド3のプランジャ31が引き込まれて図示右側に移動する。その結果、プランジャ31に連結された軸部13も同様に図示右側に移動して(このとき、突部13bの傾斜面と係合部材18の傾斜面との協働関係は非常停止ボタン10の押込み操作の場合と同様)、軸部13とともに移動する可動接点14が固定接点16から開離する。
【0083】
すると、非常停止スイッチ1xから非常停止信号が出力されて、これが安全コントローラSCに入力され、安全コントローラSCからコンタクタCに制御信号xが出力される。その結果、コンタクタCは入力された制御信号xに基づいて電源部E1を制御することにより、装置Aのみならず、装置Aと同グループの装置Bに対しても電力の供給を停止し、その結果、装置AおよびBの双方が無線により非常停止する。
【0084】
図10Aに示す例において、装置A、B、Cの稼動中に操作者が無線端末4の押しボタン40を押込み操作すると、無線端末4の送信部46から操作信号が送信される(図10A参照)。無線端末4から送信された操作信号は、非常停止スイッチ1yの受信部32により受信され、制御回路33に入力される。すると、非常停止スイッチ1yにおいて、制御回路33からソレノイド3のソレノイド本体30に電流が供給され、これにより、図8に示すように、ソレノイド3のプランジャ31が引き込まれて図示右側に移動する。その結果、プランジャ31に連結された軸部13も同様に図示右側に移動して、軸部13とともに移動する可動接点14が固定接点16から開離する。
【0085】
すると、非常停止スイッチ1yから非常停止信号が出力されて、これが安全コントローラSCに入力され、安全コントローラSCからコンタクタCに制御信号yが出力される。その結果、コンタクタCは入力された制御信号yに基づいて電源部E1を制御することにより、装置Bのみならず、装置Bと同グループの装置Aに対しても電力の供給を停止し、その結果、装置BおよびAの双方が無線により非常停止する。
【0086】
無線端末4、4の操作時には、非常停止スイッチ1x、1yの双方の識別部12がたとえば点滅するようにしてもよい。この場合、装置A、Bが識別部12によりグループ化されていることで、操作者は、無線操作された非常停止スイッチ1x、1yがいずれの装置に対応しているかを容易に識別できる。
【0087】
図10Aに示す例において、装置A、B、Cの稼動中に操作者が無線端末4の押しボタン40を押込み操作すると、無線端末4の送信部46から操作信号が送信される(図10A参照)。無線端末4から送信された操作信号は、非常停止スイッチ1zの受信部32により受信され、制御回路33に入力される。すると、非常停止スイッチ1zにおいて、制御回路33からソレノイド3のソレノイド本体30に電流が供給され、これにより、図8に示すように、ソレノイド3のプランジャ31が引き込まれて図示右側に移動する。その結果、プランジャ31に連結された軸部13も同様に図示右側に移動して、軸部13とともに移動する可動接点14が固定接点16から開離する。
【0088】
すると、非常停止スイッチ1zから非常停止信号が出力されて、これが安全コントローラSCに入力され、安全コントローラSCからコンタクタCに制御信号zが出力される。その結果、コンタクタCは入力された制御信号zに基づいて電源部E2を制御することにより、装置Cに対して電力の供給を停止し、その結果、装置Cが無線により非常停止する。
【0089】
無線端末4の操作時には、非常停止スイッチ1zの識別部12’がたとえば点滅するようにしてもよい。この場合、装置Cが識別部12’によりグループ化されていることで、操作者は、無線操作された非常停止スイッチ1zがいずれの装置に対応しているかを容易に識別できる。
【0090】
また、各無線端末4、4、4は、それぞれの送信部および受信部を介して相互に通信可能になっており、いずれかの無線端末が操作されたことは他の無線端末に通知されるようになっている。
【0091】
図10Bに示す例において、装置A、B、Cの稼動中に操作者が無線端末4の押しボタン40を押込み操作すると、無線端末4の送信部46から操作信号が送信される(図10B参照)。無線端末4から送信された操作信号は、非常停止スイッチ1x、1yの各受信部32により受信され、各制御回路33に入力される。すると、非常停止スイッチ1x、1yにおいて、制御回路33からソレノイド3のソレノイド本体30に電流が供給され、これにより、各非常停止スイッチ1x、1yにおいて、図8に示すように、ソレノイド3のプランジャ31が引き込まれて図示右側に移動する。その結果、プランジャ31に連結された軸部13も同様に図示右側に移動して、軸部13とともに移動する可動接点14が固定接点16から開離する。
【0092】
すると、非常停止スイッチ1x、1yからそれぞれ非常停止信号が出力されて、これらが安全コントローラSCに入力され、安全コントローラSCからコンタクタCに制御信号xが出力されて、コンタクタCに入力される。コンタクタCは、制御信号xに基づいて電源部E1を制御することにより、各装置A、Bに対して電力の供給を停止し、その結果、装置AおよびBの双方が非常停止する。
【0093】
無線端末4の操作時には、非常停止スイッチ1x、1yの双方の識別部12がたとえば点滅するようにしてもよい。この場合、装置A、Bが識別部12によりグループ化されていることで、操作者は、無線操作された非常停止スイッチ1x、1yがいずれの装置に対応しているかを容易に識別できる。
【0094】
図10Bに示す例において、装置A、B、Cの稼動中に操作者が無線端末4の押しボタン40を押込み操作した場合の作動は、図10Aを用いて説明した作動と同様である。また、この場合においても、無線端末4の操作時には、非常停止スイッチ1zの識別部12’がたとえば点滅するようにしてもよく、これにより、装置Cが識別部12’によりグループ化されていて、無線操作された非常停止スイッチ1zがいずれの装置に対応しているかを容易に識別できるようになる。
【0095】
また、各無線端末4、4は、それぞれの送信部および受信部を介して相互に通信可能になっており、いずれかの無線端末が操作されたことが他の無線端末に通知されるようになっている。
【0096】
なお、無線端末の操作時には、非常停止スイッチの押しボタン10は、軸部13とともに移動することで押し込まれた状態にあり、操作者が押しボタン10を押込み操作した場合と全く同じ状態におかれている。なお、図8に示す状態から図7に示す状態に戻す復帰動作の際には、ソレノイド3への電流供給を停止した後、押しボタン10の押込み操作の場合と同様に、操作者が押しボタン10を掴んで手前側に引っ張る(すなわち、手動で操作する)ことにより行う。あるいは、上述したように、プッシュロック・ターンリセット機構のようなロック機構を採用することにより、押しボタン10の押込み操作時に内部のロック機構により保持されたロック状態が押しボタン10をたとえばひねる(つまり回転させる)ことにより解除されるようにしてよい。
【0097】
無線端末4、4、4においては、無線端末4、4、4がいずれの非常停止スイッチ1x、1y、1zに対応しているかを明確にするために、非常停止スイッチ1x、1y、1zの識別部12、12’の発光色と同一の色で表示部48、48、48が発光するように構成したり、同一の色で発光する発光部を設けたりしてもよい。これにより、操作者は、装置から離れた場所において、操作すべき非常停止スイッチを確実に操作できるようになる。
【0098】
非常停止スイッチ1x、1y、1z(図10A図10B)においては、識別部12、12’自体に無線通信可能な通信部を設けるようにしてもよい。当該通信部は、無線端末4、4、4と通信可能になっており、これにより、無線端末4、4、4からの操作によって、識別部12、12’の発光時の色の変更や点滅周期の変更、グラデーションの変更等を行えるようになる。また、識別部12、12’は、タブレットやノートパソコン等とも通信可能に構成されていてもよい。
【0099】
次に、非常停止スイッチの他の変形例について、図11を用いて説明する。
同図(a)、(b)は、非常停止スイッチとして筐体を具備していないものを例示しており、非常停止スイッチが装置や制御盤のパネルに直接取り付けられる例を示している。
【0100】
図11(a)に示すように、非常停止スイッチ1は、先端に配置された押しボタン10と、軸方向に延びるとともに、ねじ部が形成された軸部13と、後端側に配置された接点部(コンタクトブロック)CBとを有している。接点部CBは、軸部13に対して着脱可能に設けられている。
【0101】
非常停止スイッチ1をパネルPに取り付ける際には、接点部CBを軸部13から取り外す。この状態から、パネルPに貫通形成された取付孔Paに軸部13を挿入する。挿入後、パネルPの背面側から軸部13のねじ部にロックナットLNを螺合させて締め付け、軸部13をパネルPに固定する。次に、軸部13の後端に接点部CBを取り付ける。このようにして、非常停止スイッチ1がパネルPに取り付けられる。
【0102】
このとき、パネルPの表面PA上において、非常停止スイッチ1の周囲には、たとえば円環状の背景領域11と、背景領域11の外側に配置された、たとえば円環状の識別部12とが配設されている。背景領域11および識別部12は、表面PA上に設けられた着色領域であるが、これらは、たとえばLED等からなる発光部から構成するようにしてもよい。
【0103】
図11(b)に示す非常停止スイッチ1は、同図(a)に示す非常停止スイッチ1と同様に、押しボタン10と、ねじ部が形成された軸部13と、軸部13に対して着脱可能な接点部(コンタクトブロック)CBとを有しており、パネルPへの取付けの仕方も同様であるが、この場合には、パネルPの表面PA上に上下一対のガード部17が取り付けられている。各ガード部17は、非常停止スイッチ1およびパネルPとは別個の部材であって、後付けでパネルPに取り付けられるようになっている。各ガード部17は、好ましくは、押しボタン10側から見て平面視円弧状に延びている。
【0104】
パネルPの表面PA上において、非常停止スイッチ1の周囲には、図11(a)の非常停止スイッチ1と同様に、たとえば円環状の背景領域11が配設されている。背景領域11は、上下方向において各ガード部17まで延びている。また、各ガード部17の前端面には、それぞれ識別部12が設けられている。したがって、この例では、各識別部12は、円弧状に延びている。背景領域11および識別部12は、いずれも着色領域であるが、たとえばLED等からなる発光部から構成するようにしてもよい。
【0105】
〔第1の変形例〕
前記実施例では、識別部12x、12yの形状と識別部12zの形状とが、いずれも同じ円環形状を有している例を示したが(図2参照)、本発明の適用はこれに限定されない。識別部12x、12yの形状を円環状にして、識別部12zの形状を円環状以外の形状、例えば図4(a)、(b)、(c)のいずれかまたはその他の形状にしてもよい。あるいは、識別部12x、12yの形状を実線の円環形状にして、識別部12zの形状を点線の円環形状にしてもよい。これらの場合、識別部12x、12yの色と識別部12zの色とは、異なる色にした方が好ましいが、同一の色でもよい。
【0106】
〔第2の変形例〕
前記実施例では、識別部12x、12yの形状と識別部12zの形状とが、いずれも同じ大きさで同じ形状の円環形状を有している例を示したが(図2参照)、本発明の適用はこれに限定されない。例えば、識別部12x、12yの形状を細い円環状にして、識別部12zの形状を太い円環状にしてもよい(またはその逆も可)。このとき、識別部12x、12yの色と識別部12zの色とは、異なる色にした方が好ましいが、同一の色でもよい。
【0107】
〔第3の変形例〕
前記実施例では、識別部12x、12y、12zがいずれも背景領域11の外側に配置された例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。これらの識別部12x、12y、12zは、背景領域11内の一部に、たとえば円弧状領域やドット状領域等として設けるようにしてもよい。
【0108】
〔第4の変形例〕
前記実施例および前記第1ないし第3の変形例では、識別部12x、12yと識別部12zとが色の違いや着色領域の形状の違いにより区別されるようにした例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。識別部の形状を異ならせることにより、両者を区別するようにしてもよい。
【0109】
例えば、ガード部17を非常停止スイッチX、Yまたは非常停止スイッチZのいずれか一方にのみ設けるようにして、識別部12x、12yまたは識別部12zのいずれか一方をガード部17に設け、他方を筐体15の表面に直接設けるようにしてもよい。この場合には、ガード部17が識別部としても機能することになる。また、この場合、識別部12x、12yの色と識別部12zの色とは、異なる色にした方が好ましいが、同一の色でもよい。
【0110】
識別部として用いるガード部17は、図5に示すものには限定されない。同図においては、押しボタン10を挟んで図示上下に相対する位置に一対のガード部17が配置された例を示したが、各ガード部17は、図5の図示左右に相対する位置に配置されるようにしてもよい。この場合、識別部X、Yは、上下に相対する各ガード部17に設け、識別部Zは、左右に相対する各ガード部17に設けるようにしてもよい。このとき、識別部12x、12yの色と識別部12zの色とは、異なる色にした方が好ましいが、同一の色でもよい。なお、識別部としては、ガード部17と異なる形状を採用するようにしてもよい。
【0111】
〔第5の変形例〕
前記実施例では、コンタクタC1、C2を用いた例を示したが(図6参照)、コンタクタC1、C2の代わりにリレーを用いてもよい。また、前記実施例では、制御部として安全コントローラSCを採用した例を示したが(図6参照)、本発明の適用はこれに限定されない。安全コントローラSCに代えて、汎用PLCを用いるようにしてもよい。この場合、PLCは一般に複数の入出力系統に対応可能なので、PLCを用いることで、非常停止スイッチ以外の様々な安全機器を接続でき、複数の安全出力を出力できる。さらには、安全コントローラSCに代えて安全リレーモジュールを用いるようにしてもよい。
【0112】
〔その他の変形例〕
上述した実施例および各変形例はあらゆる点で本発明の単なる例示としてのみみなされるべきものであって、限定的なものではない。本発明が関連する分野の当業者は、本明細書中に明示の記載はなくても、上述の教示内容を考慮するとき、本発明の精神および本質的な特徴部分から外れることなく、本発明の原理を採用する種々の変形例やその他の実施例を構築し得る。
【0113】
〔他の適用例〕
前記実施例および前記各変形例では、本発明が適用される分野として、製造業(つまりファクトリー・オートメーション(FA))の分野を例にとって説明したが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、本発明は、建設業や土木業、飲食業、食品業の他、医療および流通の分野にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、非常停止スイッチおよびこれを含む安全制御システムに有用である。
【符号の説明】
【0115】
1、1x、1y: 非常停止スイッチ

10: 押しボタン
11: 背景領域
12、12’、12x、12y、12z: 識別部
15: 筐体
17: ガード部

32: 受信部(通信部)

S: 安全制御システム
X、Y、Z: 非常停止スイッチ
SC: 安全コントローラ(制御部)
A、B、C: 装置(制御対象)
E1、E1’、E2: 電源部

、y、z: 非常停止信号
、y、z: 識別信号
、z、x、z: 制御信号
【先行技術文献】
【特許文献】
【0116】
【文献】特開2001-35302号公報(図1参照)
図1
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図10A
図10B
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図12