(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】消毒システム
(51)【国際特許分類】
A61L 2/20 20060101AFI20240730BHJP
A61L 2/24 20060101ALI20240730BHJP
F24F 9/00 20060101ALI20240730BHJP
A61L 101/10 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
A61L2/20
A61L2/24
F24F9/00 A
A61L101:10
(21)【出願番号】P 2020132299
(22)【出願日】2020-08-04
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】冨田 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】田中 勲
(72)【発明者】
【氏名】栗原 隆
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-169765(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044254(WO,A1)
【文献】特開2009-264638(JP,A)
【文献】特開2011-254970(JP,A)
【文献】特開2018-175121(JP,A)
【文献】特開2019-157683(JP,A)
【文献】特開2019-039592(JP,A)
【文献】特開2019-187653(JP,A)
【文献】特表2012-531979(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0069827(US,A1)
【文献】米国特許第10071177(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00- 2/28
A61L 9/00- 9/22
A61L101/10
F24F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部屋内において送風してエアカーテンを生成し、前記エアカーテンにより仕切られた領域を形成する送風部と、
消毒ガスを発生し前記領域内に前記消毒ガスを含む空気を放出する発生部と、
前記領域内の前記消毒ガスの濃度を検出するセンサ部と、
前記センサ部により検出された検出値に基づいて、前記発生部を制御して前記領域内の前記消毒ガスの濃度を調整する制御部と、を備え
、
前記センサ部は、前記領域外の前記消毒ガスの濃度を検出し、
前記制御部は、前記領域内の前記消毒ガスの濃度を前記領域外の濃度に比して高くなるように調整することを特徴とする、
消毒システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記発生部を制御して、前記領域内の温度を前記領域外の温度に比して低くなるように調整する、
請求項1に記載の消毒システム。
【請求項3】
前記送風部は、下方から取り込んだ前記領域内の空気を上方に向かって送風し、前記エアカーテンを生成する、
請求項1
または2に記載の消毒システム。
【請求項4】
前記領域を照射する光源を備え、
前記制御部は、前記発生部が稼働中に前記光源を点灯する、
請求項1から
3のうちいずれか1項に記載の消毒システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内を消毒するための消毒システムに関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウイルスによる感染症が世界的に拡大している。室内における感染要因となるウイルスを除去するためには頻回な室内消毒作業が求められる。しかしながら、消毒剤を用いて室内を清拭する方法は手間を要すると共に、拭き残しが発生する虞がある。
【0003】
室内全体の接触面を消毒する方法として室内にオゾンガスを放出して室内をオゾンガスにより暴露させるオゾン燻蒸に関する技術が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2012-531979号公報
【文献】特開2019-162046号公報
【文献】特開2019-187653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記技術によれば、室内をオゾンにより燻蒸すると、室内全体にオゾンガスが充満するため、オゾンガスの濃度が低下するまでに室内に人が立ち入りできない場合がある。特許文献3には、人体に影響を与えないように低濃度において室内を消毒する消毒装置が提案されている。しかしながら、人体に影響を与えない濃度では十分な消毒効果は期待できないという課題がある。
【0006】
本発明は、消毒中であっても人が室内に入室することができる消毒システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達するために、本発明は、部屋内において送風してエアカーテンを生成し、前記エアカーテンにより仕切られた領域を形成する送風部と、消毒ガスを発生し前記領域内に前記消毒ガスを含む空気を放出する発生部と、前記領域内の前記消毒ガスの濃度を検出するセンサ部と、前記センサ部により検出された検出値に基づいて、前記発生部を制御して前記領域内の前記消毒ガスの濃度を調整する制御部と、を備え、前記センサ部は、前記領域外の前記消毒ガスの濃度を検出し、前記制御部は、前記領域内の前記消毒ガスの濃度を前記領域外の濃度に比して高くなるように調整することを特徴とする、消毒システムである。
【0008】
本発明によれば、送風部により部屋内にエアカーテンにより仕切られた領域内に発生部が消毒ガスを含む空気を放出することにより、部屋内に消毒する領域とそれ以外の領域を形成することができる。
また、領域内においては消毒ガスにより局所的に消毒することができ、領域外においては人が入室可能とすることができる。
【0009】
また、本発明の制御部は、発生部を制御して、領域内の温度を領域外の温度に比して低くなるように調整するように構成されていてもよい。
【0010】
本発明によれば、領域内の温度を領域外の温度に比して低くすることにより、領域内に放出された消毒ガスを含む空気が周囲へ発散することを抑制することができる。
【0013】
また、本発明の送風部は、下方から取り込んだ領域内の空気を上方に向かって送風し、エアカーテンを生成するように構成されていてもよい。
【0014】
本発明によれば、領域内において下方に流れた消毒ガスを含む空気を下方から取り込んで上方に送風してエアカーテンを生成することにより、上方において生成部が消毒ガスを含む空気を取り込むことにより領域内において消毒ガスを含む空気を循環させることができる。
【0015】
また、本発明は、領域を照射する光源を備え、制御部は、発生部が稼働中に光源を点灯するように構成されていてもよい。
【0016】
本発明によれば、室内において消毒中の領域を光源により照射することにより、人が領域に近づかないようにすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、局所的に室内を消毒することで消毒中に人が入室することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る消毒システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る消毒システムの実施形態について説明する。消毒システムは、室内をオゾンガスにより消毒するものである。消毒システムは、例えば、ウイルス感染者利用室、休憩室、トイレ、レストランなど消毒が必要な場所に適用される。消毒システムは、エアカーテンにより室内、空間を仕切った領域を消毒する。
【0020】
図1及び
図2に示されるように、消毒システム1は、消毒ガスを発生させる発生部10と、エアカーテンAを生成する送風部12と、消毒ガスの濃度を検出するセンサ部14と、発生部10及び送風部12を制御する制御部16と、制御に関するデータを記憶する記憶部18とを備える。
【0021】
発生部10は、例えば、消毒ガスとしてオゾンガスを発生しオゾンガスを含む空気を放出する。発生部10は、例えば、部屋Hにおいて室内の天井内に設けられている。発生部10は、室内の温度を調整する空調装置に設けられていてもよい。発生部10は、温度が調整されたオゾンガスを含む空気を室内に放出する。発生部10は、オゾンガスを発生させるオゾン発生器10Aと、空気を流通させるブロワ10Bとを備える。
【0022】
オゾン発生器10Aは、例えば、平行電極と、電極間に設けられた誘電体とを有する。電極間には、酸素ガス、乾燥空気等が供給され、電極間に交流高電圧を加えると誘電体から放電が発生し、酸素からオゾンが生成される。ブロワ10Bは、例えば、モータにより駆動されたファンを有し、ファンの回転により空気を流通させる。ブロワ10Bは、吸気口10Cに接続されている。
【0023】
発生部10は、吸気口10Cから吸引した室内の空気をオゾン発生器10Aに流通させ、生成したオゾンを含んだ空気を送風口10Dから室内に放出する。送風口10Dからは、例えば、風速が0.3m/s以上でオゾンを含んだ空気が放出される。発生部10には、空気中の塵を捕獲するフィルタが設けられていてもよい。発生部10は、例えば、空調装置に設けられている。発生部10は、空調装置と別体に設けられていてもよい。送風口10Dは、領域Rが1つ以上形成されている場合には、領域Rの位置に応じて複数個形成されていてもよい。
【0024】
吸気口10Cは、送風部12から送風された空気を取り込むように配置されている。送風口10Dは、後述のように送風部12により生成されたエアカーテンAにより仕切られた領域にオゾンガスを含む空気を送風するように配置されている。
【0025】
送風部12は、部屋H内において送風してエアカーテンAを生成し、エアカーテンAにより仕切られた領域Rを形成する。送風部12は、下方から取り込んだ領域R内の空気を上方に向かって送風し、エアカーテンAを生成する。送風部12は、空気を流通させるブロワ12Aを有する。ブロワ12Aは、例えば、モータにより駆動されたファンを有し、ファンの回転により空気を流通させる。
【0026】
送風部12は、下方に開口12Bが設けられている。ブロワ12Aは、開口12Bに配管を通じて接続されている。開口12Bからは、発生部10が生成したオゾンガスを含む空気が取り込まれる。開口12Bには、塵を捕獲するフィルタが設けられていてもよい。送風部12の上部には、送風口12Cが設けられている。ブロワ12Aは、送風口12Cに配管を通じて接続されている。送風口12Cからは、開口12Bから取り込まれた空気がブロワ12Aを介して上方に送風される。送風口12Cからは、上方に向かった気流が生じ、エアカーテンAが生成される。
【0027】
エアカーテンAが生成されることにより、オゾンガスを含む空気が領域R外に漏れることが防止される。部屋H内において、壁等が設けられていなくてもエアカーテンAにより仕切られた領域Rが形成される。領域R内は、発生部10から生成されたオゾンガスを含む空気が流通する。エアカーテンAに対向する壁B内には、他の送風部12が設けられていてもよい。
【0028】
他の送風部12は、領域R内のオゾンガスを含む空気を取り込んで上方の発生部10に流通させる。他の送風部12が設けられていることにより、オゾンガスを含む空気が領域R内において全体的に拡散して流通する。送風部12は、エアカーテンAにより仕切られた領域Rを形成するように複数個設けられていてもよい。領域Rは、1つ以上形成されてもよい。領域Rが形成されることにより、部屋Hに人がいる場合でも室内をゾーン分けして消毒を行うことで効率的に感染リスクを低減することができる。
【0029】
領域R内には、オゾンガスの濃度を検出するセンサ部14が設けられている。センサ部14は、室内の複数の箇所に設置される複数のセンサを備える。複数のセンサは、人が多く触れる床面から50cm以上の位置に設置される。センサは、検出限界が0.01ppmであり、0.01ppm以上の濃度のオゾンガスを検出する。センサは部屋H内において領域R外に設けられていてもよい。
【0030】
記憶部18は、制御プログラム、オゾン濃度の設定条件等のデータを記憶している。記憶部18は、HDD、フラッシュメモリ等の記憶媒体である。記憶部18は、ネットワークを通じて接続されていてもよい。
【0031】
制御部16は、センサ部14により検出された検出値に基づいて、発生部10を制御して領域R内のオゾンガスの濃度を調整する。制御部16は、領域R内のオゾンガスの濃度を領域R外の濃度に比して高くなるように調整する。制御部16は、例えば、領域R内のオゾンガスの濃度が1から5ppmの範囲となるように調整し、領域R外のオゾンガスの濃度が0.1ppm以下となるように調整する。
【0032】
制御部16は、発生部10を制御して、領域R内の温度を領域R外の温度に比して3℃から4℃程度低くなるように調整する。これにより、オゾンガスを含む空気の気流が周囲へ発散することが抑制される。ただし、オゾンガスを含んだ空気の到達する領域が縮小してしまう縮流現象の発生を防止するため、制御部16は、発生部10を制御して、領域R内と領域R外との温度差を縮流が発生しないように適切に調節する。制御部16は、発生部10と空調装置とが別体に設けられている場合、空調装置を制御して領域R内の温度を調整してもよい。
【0033】
制御部16は、領域Rが複数個形成されている場合、領域Rの位置に応じて設けられた送風口10Dのフラップ(不図示)等を制御して複数の領域R毎にオゾンガスの濃度を調整してもよい。制御部16及び記憶部18は、パーソナルコンピュータ、タブレット型端末、スマートフォン等の端末装置により実現されてもよい。これらの端末装置は、ネットワークを通じて遠隔操作するものであってもよい。
【0034】
部屋Hには、領域Rを照射する光源が備えられていてもよい。制御部16は、発生部10が稼働中に光源を点灯するように制御してもよい。光源は、部屋内の照明を用いてもよく、領域Rの消毒中に照明の色や照度を変更するものであってもよい。これにより、室内にいる人に対して領域Rが消毒中であることが視覚的に注意喚起され、安全性を確保することができる。この他、部屋Hの室内外には、領域Rが消毒中であることを表示する表示部や、音声を流すスピーカが設けられていてもよい。
【0035】
発生部10、送風部12、空調装置の内部には、オゾンガスを分解、除去する分解触媒やケミカルフィルタが設けられていてもよい。領域R内のオゾンガスによる消毒が終了した後、制御部16は、発生部10、送風部12、空調装置を流通するオゾンガスを含む空気を分解触媒やケミカルフィルタに流通させ、領域R内のオゾンガスの濃度を低下させてもよい。この時、制御部16は、領域R内のオゾンガスを含む空気を外気に放出して領域R内のオゾンガスの濃度を低下させてもよい。
【0036】
上述したように消毒システム1によれば、局所的に室内を消毒することで消毒中に人が入室することができる。消毒システム1によれば、患者ベッドや会議エリアなど感染リスクの高い場所や人が密になりやすい領域Rに対して、室内を無人にせずに消毒することができる。消毒システム1によれば、室内を消毒作業する消毒者が作業前に感染リスクの高い危険な領域Rに対してオゾンガスを供給して消毒することにより、感染リスクを低減することができる。消毒システム1によれば、部屋H内に壁等が設けられていなくてもエアカーテンAを形成することにより、エアカーテンAにより仕切られた領域Rを形成することができ、領域R内のみを消毒することができる。
【0037】
上述した制御部16は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。
【0038】
プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0039】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、消毒システム1は、オゾンガス以外の消毒ガス、例えば、過酸化水素、過酢酸、次亜塩素酸等を含む消毒ガスを用いた消毒に適用してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 消毒システム
10 発生部
10A オゾン発生器
10B ブロワ
10C 吸気口
10D 送風口
12 送風部
12A ブロワ
12B 開口
12C 送風口
14 センサ部
16 制御部
18 記憶部
A エアカーテン
B 壁
H 部屋
R 領域