(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】シリコーン粘着剤組成物およびこれを用いた粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 183/07 20060101AFI20240730BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240730BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240730BHJP
【FI】
C09J183/07
C09J11/06
C09J7/38
(21)【出願番号】P 2020132924
(22)【出願日】2020-08-05
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 匡志
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 怜
(72)【発明者】
【氏名】坂本 賢太郎
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-156496(JP,A)
【文献】特表2004-506778(JP,A)
【文献】特開2019-137741(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102300888(CN,A)
【文献】特開2014-198787(JP,A)
【文献】特表2015-532311(JP,A)
【文献】特開平3-88815(JP,A)
【文献】登録実用新案第3166396(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00ー 77/62
C09J 1/00ー 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、アルケニル基含有量が0.002~0.06モル/100gである、ポリオルガノシロキサン(A)、熱分解ラジカル重合開始剤(B)から少なくともなり、R
3SiO
1/2単位(Rは炭素数1~10の置換又は非置換の1価の炭化水素基で
あり、但しポリオルガノシロキサン(A)は除く)及びSiO
4/2単位を有するオルガノポリシロキサンレジンを含まず、膜厚10μmとなるよう基材上に硬化させた後、ガラスに張り付けた際、180°剥離試 験において、25mm幅にて5mN超過、98mN以下の剥離強度を示す、シリコーン粘着剤組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のシリコーン粘着剤組成物に、更にシランカップリング剤(C)、チタン、アルミニウム、ジルコニウムより選ばれる1種を含む有機化合物(D)を添加したシリコーン粘着剤組成物。
【請求項3】
ポリオルガノシロキサン(A)100部重量部に対し、シランカップリング剤(C)を0 ~5.0重量部、チタン、アルミニウム、ジルコニウムより選ばれる1種を含む有機化合 物(D)を0~1.0部含む、請求項1もしくは2に記載のシリコーン粘着剤組成物
【請求項4】
請求項1~3いずれかに記載のシリコーン粘着剤組成物を用いた粘着テープ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温では容易に剥離することができる様に微粘着性を有し、300℃等の高温処理を行った場合でも剥離後、被着体上にシリコーン成分が認められない、いわゆる糊残りを起こさない、超低移行性の感圧接着層を形成できるシリコーン粘着剤組成物およびこれを用いた粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン粘着剤を使用した粘着テープや粘着ラベルは、シリコーン粘着剤層が耐熱性、耐寒性、耐候性、電気絶縁性及び耐薬品性に優れることから、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、などの有機系粘着剤では変質・劣化してしまうような厳しい環境下で使用されている。
特許文献1は、相互の分離を容易に可能とし、しかも、ハンダ付け時、電子部品と実装用基板の電子部品取付部との間の位置合わせを容易に行い得る電子部品実装基板に関する公報である。この公報は、シリコーンゴムから成る微粘着層を用いた例が示してあるが、この公報に示してあるように、実装時には部品が動かず、実装後は簡単に剥離することができ、しかも、300℃等の高温処理を行った場合でも剥離後、糊残りしないようなシリコーン粘着剤組成物、およびこれを用いた粘着テープが求められる場合がある。
【0003】
たとえば、部品製造時や加工の際に加熱処理を行う場合、全面もしくは部分的に基材を保護するマスキングや仮固定が必要になることがある。このような用途に用いられる粘着テープには、耐熱性を有するシリコーン粘着剤を用いたものが好適である。しかし、近年、従来よりも高温での加熱処理が行われるようになり、さらに高温での耐熱性が必要とされるようになった。一例をあげると、電子部品実装における鉛フリーハンダの実用化に伴い、電子部品を基板にハンダ付けするリフロー温度などが従来よりも高温となり、ピーク温度が280℃に達することもある。さらに最近では300℃といった高温を伴う工程もある。
【0004】
したがって、このような高温下においても粘着剤が劣化せず、さらに処理が終了すれば被着体に糊残りすることなく、剥離させられる必要がある。また、昨今の電子材料業界においては、これまで提案されてきた高温環境で対象物を貼り付けることを目的とする強粘着性を示す耐熱テープだけでなく、工程保護用途として優れた耐熱性を持ちながら剥離が容易な、いわゆる微粘着性を示す粘着剤についてのニーズが高まってきている。
【0005】
従来のシリコーン粘着剤を用いた粘着テープを被着体に貼りマスキングし、300℃等の高温の熱処理を行った場合、粘着テープを剥離するとき、被着体に糊残りする場合があった。
シリコーン樹脂の中でも、熱分解ラジカル重合開始剤を用いて硬化するタイプは一般的に付加硬化型のものよりも耐熱性が優れるということが知られている。付加硬化型は硬化後の皮膜に白金触媒や余剰のヒドロシリル基が残存しており、熱による粘着剤層の破壊が促進されるためである。
【0006】
特許文献2は、150℃を超える高温中でも、粘着力を維持できる接着剤層を与え、なお
かつ、湿熱条件下で粘着テープを保管、放置しても粘着テープの保持力が低下しない有機過酸化物硬化型シリコーン粘着剤組成物及び粘着テープに関する公報であるが、容易に剥離することができる様な微粘着性に関しては改善の余地があった。
【0007】
特許文献3には、 金属,特にステンレス鋼などの被着体に貼りつけたりマスキングし、300℃等の高温の熱処理を行った場合でも、糊残りを起こさず、きれいに剥離することが可能なシリコーン粘着剤組成物および粘着テープを提供するとあるが、特許文献2同様、容易に剥離することができる様な微粘着性に関しては改善の余地があった。
【0008】
特許文献4には、250℃以上の高温処理を行った場合にも、再剥離時に目視で被着体上にシリコーン成分が認められない超低移行性の感圧接着層を形成する過酸化物硬化型シリコーン粘着剤組成物、およびこれを用いた粘着テープを提供するとあるが、300℃等の高温の熱処理を行った後の剥離において、糊残りには改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2016-167544号公報
【文献】特開2010-006918号公報
【文献】特開2004-190013号公報
【文献】特開2008-156496号公報
【文献】特開2018-119153号公報
【0010】
特許文献5には、粘着性及び耐熱性に優れ、また、250℃~290℃での糊残り性試験において糊残りがないシリコーン粘着剤組成物を提供するとあるが、特許文献4同様、300℃等の高温の熱処理を行った後の剥離において、糊残りには改善の余地があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、微粘着性を有し、300℃等の高温処理を行った場合でも剥離後、被着体上にシリコーン成分が認められない超低移行性の感圧接着層を形成できるシリコーン粘着剤組成物を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、アルケニル基含有量が0.002~0.06モル/100gである、ポリオルガノシロキサン(A)、熱分解ラジカル重合開始剤(B)から少なくともなり、R3SiO1/2単位(Rは炭素数1~10の置換又は非置換の1価の炭化水素基である)及びSiO4/2単位を有するオルガノポリシロキサンレジンを含まず、膜厚10μmとなるよう基材上に硬化させた後、ガラスに張り付けた際、180°剥離試験において、25mm幅にて5mN超過、98mN以下の剥離強度を示す、シリコーン粘着剤組成物、およびこれを用いた粘着テープを提供することである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、300℃等の高温処理を行った場合でも剥離後、被着体上にシリコーン成分が認められない超低移行性の感圧接着層を形成できるシリコーン粘着剤組成物およびこれを用いた粘着テープであるので、特には熱処理用マスキングテープを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る、熱分解ラジカル重合開始剤を用いて硬化させるシリコーン樹脂組物物について具体的に説明する。
【0015】
<ポリオルガノシロキサン(A)>
ポリオルガノシロキサン(A)の一部は、十分な皮膜強度を達成するために25℃における粘度が500,000mPa・s以上のガム状のものを用いることが望ましい。この成分は粘度の低い同様の成分で希釈するか、あるいは溶剤に希釈することで流動性を調整することが可能である。
【0016】
ポリオルガノシロキサン(A)は複数種を併用しても良い。この場合には、上記2種以上に含まれるアルケニル基の合計量が0.002~0.06モル/100gとなるようにすればよく、より好適には、0.002~0.04モルである。
ポリオルガノシロキサン(A)中でのアルケニル基の量が前記下限値未満では、糊残りを生じ易くなり、前記上限値を超えると皮膜が硬くなりすぎて貼り合せが困難となる場合がある。
【0017】
<熱分解ラジカル重合開始剤(B)>
熱分解ラジカル重合開始剤(B)として、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カーボニトリル)、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メトキシプロピオンアミド]、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、[1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)]、などのアゾ系化合物、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、エチルメチルケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジクミルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノイルパーオキサイド等の有機化酸化物系化合物等を使用することができる。また、過酸化物系化合物はN,N-ジメチルトルイジン、N,N-ジエチルトルイジン等の還元剤を併用することによりレドックス重合を行うことも可能である。
【0018】
アゾ系化合物は発泡する関係で、過酸化物系を使用する方がより好適である。過酸化物系の熱分解ラジカル重合開始剤の中でも、ベンゾイルパーオキサイドがより好適である。
過酸化物は防爆の為、溶剤等にて希釈した状態で販売されるのが一般的である。
日本油脂社より、ベンゾイルパーオキサイドをキシレンで60%希釈した、商品名:ナイパーBMT-K40が販売されており、これらを使用することができる。
【0019】
熱分解ラジカル重合開始剤(B)の量は、ポリオルガノシロキサン(A)100重量部に対し、0.5~15重量部の範囲であり、より好適には2~12重量部である。
上記下限未満の場合には硬化性が低下して保持力が低下したり、糊残りが発生しやすくなる。上記上限を超えると、粘着剤層に着色が生じたり、皮膜が硬くなりすぎて貼り合せが困難となる。
【0020】
<シランカップリング剤(C)>
本願のシリコーン粘着剤組成物は、基材フィルムとの密着性を向上させるため、シランカップリング剤(C)を添加することができる。シランカップリング剤(C)はビニルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン等を使用することができる。より好適なシランカップリング剤は3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで、添加量としてはポリオルガノシロキサン(A)100部重量部に対し、シランカップリング剤(C)を0~5.0重量部、より好適には0~4重量部である。
【0021】
<チタン、アルミニウム、ジルコニウムより選ばれる1種を含む有機化合物(D)>
チタン、アルミニウム、ジルコニウムより選ばれる1種を含む有機化合物(D)は、シランカップリング剤(C)のアルコキシ基の加水分解を促進する材料である。
アルミニウムについて具体的に化合物名を挙げると、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムエチレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムsec-ブチレート、アルミニウムジイソプロピレートモノsec-ブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレートが挙げられる。より好適な材料はアルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)である。尚、溶解性の観点から、90wt-%トルエン希釈品等を使用することが望ましい。
添加量としては、ポリオルガノシロキサン(A)100重量部に対し、固形分として0~1重量部の範囲であり、より好適には0~0.5重量部である。
【0022】
<溶剤>
ポリオルガノシロキサン(A)、熱分解ラジカル重合開始剤(B)、シランカップリング剤(C)、チタン、アルミニウム、ジルコニウムより選ばれる1種を含む有機化合物(D)を全て添加したときに、粘度が高い場合は、溶剤を添加して希釈することができる。使用できる溶剤は、シリコーン成分が相溶する溶剤で、具体的にはトルエン、キシレン、n-ヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサノン等が挙げられる。より好適にはトルエンで、添加量としては、ポリオルガノシロキサン(A)100重量部に対し、10~1000重量部の範囲であり、より好適には50~800重量部である。
【0023】
各種成分をセパラブルフラスコ等に秤取り、撹拌バネ付きモーター等にて撹拌することによって、熱分解ラジカル重合前の液を得ることができる。
【0024】
熱分解ラジカル重合および粘着テープを作製する方法としては、熱分解ラジカル重合前液をフィルムに薄く塗工して、一旦溶剤を揮発させて、そこから更に加温して熱分解ラジカル重合を行い、室温に戻して粘着テープを得る方法が簡便である。
【0025】
粘着テープの具体的な作製方法としては、熱分解ラジカル重合前液を、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミド(PI)フィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム等の基材フィルムに、硬化後の厚みが一定値になる様に塗工し、80℃にて数分間、溶剤を揮発させ、その後180℃にて数分~数十分保管し熱分解ラジカル重合を行い、粘着テープを得ることができる。尚、基材フィルムは、耐熱性の観点からPIフィルムを用いると都合がよい。
【0026】
常態強度は、前述の粘着テープを、ガラス板、金属板、金属箔、フィルム等に一定圧で圧着し、その後180°ピール強度を測定することで得ることができる。
【0027】
糊残り試験は、前述の常態強度試験片と同様の試験片を300℃のオーブンに一定時間投入し、室温に冷却した後剥離して、金属箔側の状態を目視にて確認することができる。
【実施例】
【0028】
次に、本発明である微粘着性を有し、耐熱性に優れるシリコーン粘着剤組成物およびこれを用いた粘着テープ、実施例及び比較例により詳細に説明する。
【0029】
<実施例1の重合前の液作製>
Vi1Me2SiO1/2単位、Me2SiO2/2単位、ViMeSiO2/2単位からなり、0.0026mol/100gのVi(ビニル)基を持つガム状のポリシロキサン(A1)を14.4g、Vi1Me2SiO1/2単位、Me2SiO2/2単位、ViMeSiO2/2単位からなり、0.038mol/100gのVi(ビニル)基を持つガム状のポリシロキサン(A2) を14.4g、Vi1Me2SiO1/2単位、Me2SiO2/2単位からなり、0.025mol/100gのVi(ビニル)基を持つ液状のポリシロキサン(A3)を 1.5g、ナイパーBMT-K40を7.5g、トルエンを69.6g、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを0.6g、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)の90wt-%トルエン希釈溶液0.6gをセパラブルフラスコに秤取り、撹拌羽を装着した新東科学社製、商品名:スリーワンモーターBL600にて1時間撹拌を行い、実施例1の重合前の液を得た。尚、Meはメチル基を表し、オルガノポリシロキサン(A)は、約30wt-%である。
【0030】
<実施例2、実施例3の重合前の液作製>
実施例1におけるポリオルガノシロキサン(A)の内訳を表1に記載した配合に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリオルガノシロキサン(A)分、約30wt-%の実施例2、実施例3の重合前の液を得た。
【0031】
<比較例1の重合前の液作製>
実施例1におけるポリオルガノシロキサン(A)を、Vi1Me2SiO1/2単位、Me2SiO2/2単位からなり、0.0004mol/100gのVi(ビニル)基を持つガム状のポリシロキサン(A4)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリオルガノシロキサン(A)分、約30wt-%の比較例1の重合前の液を得た。
【0032】
<比較例2の重合前の液作製>
実施例1におけるポリオルガノシロキサン(A)の一部を、Me3SiO1/2単位、SiO4/2単位からなり、Me3SiO1/2単位とSiO4/2単位の比が0.75である、いわゆるMQレジンに変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリオルガノシロキサン(A)分、約30wt-%の比較例2の重合前の液を得た。
【0033】
<比較例3の付加反応前の液作製>
先述のVi1Me2SiO1/2単位、Me2SiO2/2単位、ViMeSiO2/2単位からなり、0.0026mol/100gのVi(ビニル)基を持つガム状のポリシロキサン(A1)を28.3g、Vi1Me2SiO1/2単位、Me2SiO2/2単位からなり、0.025mol/100gのVi(ビニル)基を持つ液状のポリシロキサン(A3)を1.5g、トルエンを69.6g、Me3SiO1/2単位とMeHSiO2/2単位からなり、ヒドロキシシリル基を100gあたりに1.4モルもつオルガノ水素ポリシロキサンを0.4g、白金分を0.24重量%含有する白金-ビニル基含有シロキサン錯体のトルエン溶液を 0.6g、1-エチニルシクロヘキサノールを0.1g秤取り、実施例1と同様の手順で、シロキサン分約30wt-%の付加硬化型シリコーン粘着剤組成物を調製した。
【0034】
<常態強度測定用試験片作製方法、常態強度測定方法>
実施例1~3、比較例1~2の重合前の液、および比較例3の付加反応前の液を、厚み50μm 、25mm幅のPIフィルムに硬化後の厚みが10μmとなるようにアプリケータを用いて塗工した後、80℃にて2分間加熱することで溶媒を除去し、その後180℃にて20分、熱分解ラジカル重合反応を進行させ粘着テープを得た。尚、比較例3は、130℃、2分にて、溶剤除去および付加反応を同時に行った。
こうして得られた粘着テープを、3mm厚の青板ガラスに貼りつけ、重さ2kgのゴム層で被覆されたローラーを2往復させ常態強度測定用試験片を作製した。
この試験片を、インストロン社製の材料試験機、製品名:5966型を用いて、180°ピール試験を行った。尚、測定温度は23℃、引っ張り速度は、300mm/分である。
判定基準は、25mm幅にて5mN超過、98mN以下は合格、25mm幅にて5mN以下、もしくは98mN超過は不合格である。結果を表2に示す。
【0035】
<糊残り試験>
常態強度測定用試験片作製方法、常態強度測定方法にて得られたテープを100mm×25mm幅に裁断し、銅箔を重ね合わせ、重さ2kgのゴム層で被覆されたローラーを2往復させることにより圧着した後、窒素で置換された300℃のオーブンに1時間投入した。
室温(23±1℃)まで冷却した後、粘着テープを剥がして、粘着剤層が凝集破壊し
銅箔の表面に粘着剤が残留するかどうかを観察した。
糊残りなく剥離できるものを○、糊残り発生するものを×とした。
【0036】
1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、アルケニル基含有量が0.002~0.06モル/100gである、ポリオルガノシロキサン(A)、熱分解ラジカル重合開始剤(B)から少なくともなり、R3SiO1/2単位(Rは炭素数1~10の置換又は非置換の1価の炭化水素基である)及びSiO4/2単位を有するオルガノポリシロキサンレジンを含まない実施例1~3は、膜厚10μmとなるよう基材上に硬化させた後、ガラスに張り付けた際、180°剥離試験において、25mm幅にて5mN超過、98mN以下の接着強度を示し、糊残り試験にて何れも合格となった。
【0037】
1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、アルケニル基含有量が0.0016モル/100gである、ポリオルガノシロキサン(A)、熱分解ラジカル重合開始剤(B)からなる比較例1、および熱分解ラジカル重合開始剤(B)が添加されず、熱分解ラジカル重合でなく付加反応の比較例3は、糊残り試験が不合格となった。
1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、アルケニル基含有量が0.002~0.06モル/100gである、ポリオルガノシロキサン(A)、熱分解ラジカル重合開始剤(B)からなりながらも、MQレジンを添加した比較例2は、25mm幅にて98mN超過と、常態強度が不合格となった。
【0038】
【0039】