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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】床構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/43 20060101AFI20240730BHJP
   E04B 1/98 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
E04B5/43 H
E04B1/98 P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020136666
(22)【出願日】2020-08-13
(65)【公開番号】P2022032655
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】原 裕之郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 聡武
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 士毅
【審査官】齋藤 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-145627(JP,A)
【文献】特開平09-310473(JP,A)
【文献】特開2009-191584(JP,A)
【文献】特開平04-119231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/43
E04B 1/38 ー 1/99
E04H 5/02
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加振源が設置される第一エリアと該第一エリアに隣接する第二エリアとが隣り合って配置された免震建物の床構造であって、
前記第一エリアの床梁である第一床梁と前記第二エリアの床梁である第二床梁とは、互いに離間して配置され、
前記第一床梁に前記第二床梁側に延びるように設けられた第一延出部と、
前記第二床梁に前記第一床梁側に延びるように設けられた第二延出部と、
前記第一延出部と前記第二延出部とにまたがって配置された接合部と、
前記接合部を前記第一延出部及び前記第二延出部に接合する接合手段と、を備え
前記第一床梁及び前記第二床梁は、H形鋼であり、
前記第一延出部は、前記第一床梁の上下のフランジの間の高さに該上下のフランジと略平行に配置された板状部材であり、
前記第二延出部は、前記第二床梁の上下のフランジの間の高さに該上下のフランジと略平行に配置された板状部材であり、
前記第一延出部と前記第二延出部は、略同一の高さに配置されていることを特徴とする床構造。
【請求項2】
前記接合部は、板厚方向を鉛直方向に向けて配置された板状部材である請求項1に記載の床構造。
【請求項3】
前記第一延出部、前記第二延出部及び前記接合部における梁幅方向の長さは、前記第一床梁及び前記第二床梁の梁幅よりも長い請求項1または2に記載の床構造。
【請求項4】
前記第一延出部は、前記第一床梁の延在方向と直交する方向に延びる第一直交梁に接合され、
前記第二延出部は、前記第二床梁の延在方向と直交する方向に延びる第二直交梁に接合されている請求項1からのいずれか一項に記載の床構造。
【請求項5】
前記第一床梁に支持された第一床板と、
前記第二床梁に支持された第二床板と、を備え、
前記第一床板と前記第二床板とは、離間して配置されている請求項1からのいずれか一項に記載の床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、微振動制御が必要な機器を設置する階には、大きな振動を生じさせる振動源を設けないのが一般的である。用途上やむを得ない場合には、機器があるエリアか振動源となるエリアの一方を独立させる等の方法がある。例えば、下記の特許文献1には、クリーンルームの床を支持する高床式梁架構を、建屋の架構と分離して設けたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-318119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の架構構造を免震建物に適用すると、地震時に、クリーンルームの高床式梁架構と建屋の架構とが同一の振動をしないためにクリアランスを大きく確保する必要があるが、平面計画上等の理由等から困難な場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、免震建物において微振動を抑制することができる床構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る床構造は、加振源が設置される第一エリアと該第一エリアに隣接する第二エリアとが隣り合って配置された免震建物の床構造であって、前記第一エリアの床梁である第一床梁と前記第二エリアの床梁である第二床梁とは、互いに離間して配置され、前記第一床梁に前記第二床梁側に延びるように設けられた第一延出部と、前記第二床梁に前記第一床梁側に延びるように設けられた第二延出部と、前記第一延出部と前記第二延出部とにまたがって配置された接合部と、前記接合部を前記第一延出部及び前記第二延出部に接合する接合手段と、を備え、前記第一床梁及び前記第二床梁は、H形鋼であり、前記第一延出部は、前記第一床梁の上下のフランジの間の高さに該上下のフランジと略平行に配置された板状部材であり、前記第二延出部は、前記第二床梁の上下のフランジの間の高さに該上下のフランジと略平行に配置された板状部材であり、前記第一延出部と前記第二延出部は、略同一の高さに配置されていることを特徴とする。
【0007】
このように構成された床構造では、第一エリアの第一床梁と第二エリアの第二床梁とは離間して配置されている。よって、第一エリアの加振源で振動が生じても、鉛直方向の振動が第一床梁から第二床梁に伝達されることが抑制され、第二エリアで生じる鉛直方向の振動が抑制される。
一方、第一床梁に設けられた第一延出部と第二床梁に設けられた第二延出部とにまたがるように接合部が配置され、接合部は接合手段で第一延出部及び第二延出部に接合されている。よって、地震時に水平方向の力は第一床梁と第二床梁との間で伝達され、第一エリアの床の揺れと第二エリアの床の揺れとが同じになる。
【0009】
また、第一延出部は第一床梁の上下のフランジの間の高さに配置されているため、第一延出部は上下のフランジと離間して配置されている。第二延出部は第二床梁の上下のフランジの間の高さに配置されているため、第二延出部は第二床梁の上下のフランジと離間して配置されている。よって、第一床梁の上下のフランジから第一延出部への鉛直方向の振動の伝達が抑制され、第二床梁の上下のフランジから第二延出部への鉛直方向の振動の伝達が抑制される。
【0010】
また、本発明に係る床構造では、前記接合部は、板厚方向を鉛直方向に向けて配置された板状部材であってもよい。
【0011】
このように構成された床構造では、接合部の板厚方向は鉛直方向を向いているため、接合部が鉛直方向の振動が第一延出部及び第二延出部に伝達されることが抑制される。
【0012】
また、本発明に係る床構造では、前記第一延出部、前記第二延出部及び前記接合部における梁幅方向の長さは、前記第一床梁及び前記第二床梁の梁幅よりも長くてもよい。
【0013】
このように構成された床構造では、第一延出部、第二延出部及び接合部における梁幅方向の長さは第一床梁及び第二床梁の梁幅よりも長いため、接合手段を多く設けることができる。よって、接合部を第一延出部及び第二延出部に強固に接合することができる。
【0014】
また、本発明に係る床構造では、前記第一延出部は、前記第一床梁の延在方向と直交する方向に延びる第一直交梁に接合され、前記第二延出部は、前記第二床梁の延在方向と直交する方向に延びる第二直交梁に接合されていてもよい。
【0015】
このように構成された床構造では、第一延出部は第一床梁の延在方向と直交する方向に延びる第一直交梁に接合され、第二延出部は第二床梁の延在方向と直交する方向に延びる第二直交梁に接合されている。よって、地震時に、第一延出部の第一床梁の延在方向回りの回転が抑制され、第二延出部の第二床梁の延在方向回りの回転が抑制される。
【0016】
また、本発明に係る床構造は、前記第一床梁に支持された第一床板と、前記第二床梁に支持された第二床板と、を備え、前記第一床板と前記第二床板とは、離間して配置されていてもよい。
【0017】
このように構成された床構造では、第一床梁に支持された第一床板と第二床梁に支持された第二床板とは、離間して配置されている。よって、第一エリアの加振源で振動が生じても、鉛直方向の振動が第一床板から第二床板に伝達されることが抑制され、第二エリアで生じる鉛直方向の振動がより一層抑制される。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る床構造によれば、免震建物において微振動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る床構造を上から見た模式図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る床構造の一部破断斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係る床構造において、トラック入出庫時の床の振動測定結果を示し、(a)はNo.1位置であり、(b)はNo.2位置である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係る床構造について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る床構造を上から見た模式図である。なお、図1において、後述する第一床板51A及び第二床板51Bの図示を省略している。
図1に示すように、本実施形態の床構造100は、免震建物1に設置されている。免震建物1では、加振エリア(第一エリア)A1と嫌振エリア(第二エリア)A2とが、同一階に隣り合って配置されている。加振エリアA1では、トラックバースであり、加振源となるトラックTの入出庫がある。嫌振エリアA2は、作業場とされている。加振エリアA1と嫌振エリアA2との間は、縁切りラインBとされている。縁切りラインBは、詳細については後述する第一梁20Aと第二梁20Bとが離間して配置され(縁切りされ)るとともに、第一床板51Aと第二床板51Bとが離間して配置され(縁切りされ)た箇所である。
【0021】
免震建物1では、間隔を有して複数の柱11が立設されている。柱11間には、大梁12が架設されている。大梁12間等には、小梁13が架設されている。本実施形態の床構造100は、小梁13等梁どうしの接合箇所に設置されている。なお、床構造100は、大梁12どうしの接合箇所に設置されていてもよい。
【0022】
加振エリアA1の四隅には、1箇所に柱11が設置されるとともに、他の3箇所には梁支持部材16が設置されている。梁支持部材16どうしの間には、小梁17が架設されている。
【0023】
柱11の下部及び梁支持部材16の下部には、剛すべり支承等の周知の免震装置が設置されている。
【0024】
次に、床構造100の構成について詳細に説明する。
床構造100は、加振エリアA1の床梁と嫌振エリアA2の床梁とを接合している。本実施形態では、加振エリアA1と嫌振エリアA2との間には、縁切りラインBが形成されている。縁切りラインBは、直角となすようにL字状に形成されている。床構造100は、縁切りラインB上に4箇所に設けられている。なお、縁切りラインは、加振エリアと嫌振エリアとの区画によって適宜設定可能であり、L字状に限られず例えば一直線状等であってもよい。
【0025】
図2は、図1のII-II線断面図である。
ここで、図2に示すように、加振エリアA1に配置される小梁13を第一梁(第一床梁)20Aと称し、嫌振エリアA2に配置される小梁13を第二梁(第二床梁)20Bと称する。なお、第一梁20A及び第二梁20Bを総称して、梁20と称することがある。第一梁20Aに直交する小梁17を第一直交梁30Aと称し、第二梁20Bに直交する大梁12を第二直交梁30Bと称する。なお、第一直交梁30A及び第二直交梁30Bを総称して、直交梁30と称することがある。
【0026】
以下の説明において、第一梁20A及び第二梁20Bの延在方向をX方向と称することがある。第一直交梁30A及び第二直交梁30Bの延在方向をY方向と称することがある。鉛直方向をZ方向と称することがある。
【0027】
図3は、図2のIII-III線断面図である。
図3に示すように、第一梁20A及び第二梁20Bは、X方向に延在している。第一梁20Aと第二梁20Bとは、同軸上に配置されている。
【0028】
本実施形態では、梁20(第一梁20A及び第二梁20B)は、H形鋼である。梁20は、上部フランジ21(図2参照。以下同じ。)と、下部フランジ22と、ウェブ23と、を有している。
【0029】
上部フランジ21及び下部フランジ22は、板状に形成されている。上部フランジ21及び下部フランジ22の板厚方向は、Z方向を向いている。下部フランジ22は、上部フランジ21の直下に配置されている。
【0030】
ウェブ23は、板状に形成されている。ウェブ23の板厚方向は、Y方向を向いている。ウェブ23は、上部フランジ21と下部フランジ22とを連結している。ウェブ23は、上部フランジ21及び下部フランジ22の梁幅方向(Y方向)の略中央に接合されている。
【0031】
図2に示すように、第一梁20Aの端部と第二梁20Bの端部とは、離間して配置されている。具体的には、第一梁20Aのウェブ23の端部23aと第二梁20Bのウェブ23の端部23bとは、離間して配置されている。離間距離L1は、例えば300~400mm程度である。
【0032】
梁20には、リブプレート26が設けられている。リブプレート26は、板状に形成されている。リブプレート26の板厚方向は、X方向を向いている。本実施形態では、リブプレート26は鋼板である。リブプレート26は。ウェブ23に直交配置されている。リブプレート26の上端部は、上部フランジ21に接合されている。リブプレート26の下端部は、下部フランジ22に接合されている。
【0033】
図3に示すように、第一直交梁30A及び第二直交梁30Bは、共にY方向に延在している。第一直交梁30Aと第二直交梁30Bとは、X方向に間隔を有して配置されている。
【0034】
本実施形態では、直交梁30(第一直交梁30A及び第二直交梁30B)は、H形鋼である。直交梁30は、上部フランジ31(図2参照。以下同じ。)と、下部フランジ32と、ウェブ33と、を有している。
【0035】
第一直交梁30Aの梁せいは、第一梁20Aの梁せいと略同一である。第一直交梁30Aの上部フランジ31は、第一梁20Aの上部フランジ21と同一平面上に配置されている。第一直交梁30Aの下部フランジ32は、第一梁20Aの下部フランジ22と同一平面上に配置されている。
【0036】
第二直交梁30Bは、第一直交梁30Aよりも梁せいが高く、梁幅(X方向の幅)が長い。第二直交梁30Bの上部フランジ31は、第二梁20Bの上部フランジ21と同一平面上に配置されている。第二直交梁30Bの下部フランジ32は、第二梁20Bの下部フランジ22よりも低い高さ位置に配置されている。なお、第一直交梁30A及び第二直交梁30Bの梁せい、梁幅、設置高さ位置等は適宜設定可能である。
【0037】
上部フランジ31及び下部フランジ32は、板状に形成されている。上部フランジ31及び下部フランジ32の板厚方向は、Z方向を向いている。下部フランジ32は、上部フランジ31の直下に配置されている。
【0038】
ウェブ33は、板状に形成されている。ウェブ33の板厚方向は、X方向を向いている。ウェブ33は、上部フランジ31と下部フランジ32とを連結している。ウェブ33は、上部フランジ31及び下部フランジ32の梁幅方向(X方向)の略中央に接合されている。
【0039】
第一直交梁30Aの上部フランジ31は、第一梁20Aの上部フランジ21に接合されている。第一直交梁30Aの下部フランジ32は、第一梁20Aの下部フランジ22に接合されている。第一直交梁30Aのウェブ33は、第一梁20Aのウェブ23に接合されている。なお、第一直交梁30Aの下部フランジ32は、第一梁20Aの下部フランジ22に接合されていなくてもよい。
【0040】
第二直交梁30Bの上部フランジ31は、第二梁20Bの上部フランジ21に接合されている。第二直交梁30Bの下部フランジ32は、第二梁20Bの下部フランジ22に接合されている。第二直交梁30Bのウェブ33は、第二梁20Bのウェブ23に接合されている。なお、第二直交梁30Bの下部フランジ32は、第二梁20Bの下部フランジ22に接合されていなくてもよい。
【0041】
直交梁30には、一対のリブプレート36が設けられている。一対のリブプレート36は、梁20をY方向に挟むように両側に配置されている。リブプレート36は、板状に形成されている。リブプレート26の板厚方向は、Y方向を向いている。本実施形態では、リブプレート36は鋼板である。リブプレート36は、ウェブ33に直交配置されている。リブプレート36の上端部は、上部フランジ31に接合されている。リブプレート36の下端部は、下部フランジ32に接合されている。
【0042】
梁20には、中間プレート27が設けられている。中間プレート27は、板状に形成されている。中間プレート27の板厚方向は、Z方向を向いている。本実施形態では、中間プレート27は鋼板である。中間プレート27は、梁20のリブプレート26と直交梁30のウェブ33との間に配置されている。中間プレート37は、梁20のウェブ23、リブプレート26、直交梁30のウェブ33及びリブプレート36に直交配置されるとともに接合されている。
【0043】
中間プレート27は、梁20のリブプレート26側から直交梁30のウェブ33側に向かうにしたがって次第に梁20の梁幅方向(Y方向)の長さが長くなっている。リブプレート26との接合部27cでは、中間プレート27のY方向の長さは、梁20の梁幅と略同一である。直交梁30のウェブ33との接合部27dでは、中間プレート27のY方向の長さは、梁20の梁幅よりも長い。
【0044】
図2に示すように、中間プレート27は、梁20の上部フランジ21と下部フランジ22との略中央に配置されている。
【0045】
図4は、本発明の一実施形態に係る床構造の一部破断斜視図である。
図4に示すように、床構造100は、第一延出プレート(第一延出部)41Aと、第二延出プレート(第二延出部)41Bと、接合プレート(接合部)42,43と、複数のボルト(接合手段)46及び複数のナット(接合手段)47(図2参照。以下同じ。)と、第一床板51A(図2参照。以下同じ。)と、第二床板51B(図2参照。以下同じ。)と、を備えている。
【0046】
第一延出プレート41Aは、第一梁20Aから第二梁20B側に延びるように設けられている。
【0047】
第一延出プレート41Aは、板状に形成されている。第一延出プレート41Aの板厚方向は、Z方向を向いている。本実施形態では、第一延出プレート41Aは鋼板である。第一延出プレート41Aは、第一梁20Aのウェブ23、第一直交梁30Aのウェブ33及びリブプレート36に直交配置されるとともに接合されている。
【0048】
第一延出プレート41Aにおける第一梁20Aの梁幅方向(Y方向)の長さは、第一梁20Aの梁幅よりも長く、中間プレート27の接合部27dの長さと略同一である。第一延出プレート41Aは、平面視略矩形状をなしている。
【0049】
図2に示すように、第一延出プレート41Aは、第一梁20Aの上部フランジ21と下部フランジ22との略中央の高さに配置されている。
【0050】
図4に示すように、第二延出プレート41Bは、第二梁20Bから第一梁20A側に延びるように設けられている。
【0051】
第二延出プレート41Bは、板状に形成されている。第二延出プレート41Bの板厚方向は、Z方向を向いている。本実施形態では、第二延出プレート41Bは鋼板である。第二延出プレート41Bは、第二梁20Bのウェブ23、第二直交梁30Bのウェブ33及びリブプレート36に直交配置されるとともに接合されている。
【0052】
第二延出プレート41Bにおける第二梁20Bの梁幅方向(Y方向)の長さは、第二梁20Bの梁幅よりも長く、中間プレート27の接合部27dの長さと略同一である。第二延出プレート41Bは、平面視略矩形状をなしている。
【0053】
図2に示すように、第二延出プレート41Bは、第二梁20Bの上部フランジ21と下部フランジ22との略中央の高さに配置されている。
【0054】
第一延出プレート41Aと第二延出プレート41Bとは、わずかに間隔を有して配置されている。この間隔は、後述するボルト46を締結する際の寸法精度上のクリアランスである。
【0055】
接合プレート42は、第一梁20Aの第一延出プレート41A及び第二梁20Bの第二延出プレート41Bの上側に、第一延出プレート41A及び第二延出プレート41Bに当接配置されている。接合プレート43は、第一延出プレート41A及び第二延出プレート41Bの下側に、第一延出プレート41A及び第二延出プレート41Bに当接配置されている。
【0056】
接合プレート42,43は、第一延出プレート41Aと第二延出プレート41Bとにまたがって配置されている。上下の接合プレート42,43で、第一延出プレート41A及び第二延出プレート41Bを挟み込んでいる。
【0057】
図4に示すように、接合プレート42,43は、板状に形成されている。接合プレート42,43の板厚方向は、Z方向を向いている。本実施形態では、接合プレート42,43は鋼板である。接合プレート42,43における梁20の梁幅方向(Y方向)の長さは、梁20の梁幅よりも長く、第一延出プレート41Aと第二延出プレート41Bの長さと略同一である。接合プレート42,43は、平面視略矩形状をなしている。
【0058】
複数のボルト46は、接合プレート42、第一延出プレート41A(または第二延出プレート41B)及び接合プレート43の取付孔に挿通され、ナット47で締結されている。これによって、接合プレート42,43は、第一延出プレート41A及び第二延出プレート41Bに接合されている。
【0059】
図2に示すように、第一床板51Aは、第一梁20Aに支持されている。第二床板51Bは、第二梁20Bに支持されている。第一床板51Aと第二床板51Bとは、離間して配置されている。例えば、第一床板51Aと第二床板51Bとの離間距離L2は、20mm程度である。
【0060】
次に、上記に示す床構造100におけるトラック入出庫時の床の振動測定結果を示す。
10tトラックTが、図1で示す矢印の向きに入出庫した際に、Pで示すNo.1位置(加振エリアA1)及びQで示すNo.2位置(嫌振エリアA2)で振動測定を行った。
【0061】
図5は、トラック入出庫時の床の振動測定結果を示し、(a)はNo.1位置であり、(b)はNo.2位置である。
図5(a)のB1X線、B1Y線及び図5(b)のB3X線、B3Y線は、水平方向の振動を示している。図5(a)のB1Z線及び図5(b)のB3Z線は、鉛直方向の振動を示している。図5(b)のB3Z線は図5(a)のB1Z線よりも速度、加速度及び変位ともに低くなっていて、No.2位置(嫌振エリアA2)ではNo.1位置(加振エリアA1)よりも振動が抑制されていることが分かる。
【0062】
このように構成された床構造では、加振エリアA1の第一梁20Aと嫌動エリアA2の第二梁20Bとは離間して配置されている。よって、加振エリアA1の加振源で振動が生じても、鉛直方向の振動が第一梁20Aから第二梁20Bに伝達されることが抑制され、嫌動エリアA2で生じる鉛直方向の振動が抑制される。
【0063】
また、第一梁20Aに設けられた第一延出プレート41Aと第二梁20Bに設けられた第二延出プレート41Bとにまたがるように接合プレート42,43が配置され、接合プレート42,43はボルト46及びナット47で第一延出プレート41A及び第二延出プレート41Bに接合されている。よって、地震時に水平方向の力は第一梁20Aと第二梁20Bとの間で伝達され、加振エリアA1の床の揺れと嫌動エリアA2の床の揺れとが同じになる。
【0064】
また、第一延出プレート41Aは第一梁20Aの上下のフランジ21,22の間の高さに配置されているため、第一延出プレート41Aは上下のフランジ21,22と離間して配置されている。第二延出プレート41Bは第二梁20Bの上下のフランジ21,22の間の高さに配置されているため、第二延出プレート41Bは第二梁の上下のフランジ21,22と離間して配置されている。よって、第一梁20Aの上下のフランジ21,22から第一延出プレート41Aへの鉛直方向の振動の伝達が抑制され、第二梁20Bの上下のフランジ21,22から第二延出プレート41Bへの鉛直方向の振動の伝達が抑制される。
【0065】
また、接合プレート42,43の板厚方向は鉛直方向を向いているため、接合プレート42,43の鉛直方向の振動が第一延出プレート41A及び第二延出プレート41Bに伝達されることが抑制される。
【0066】
また、第一延出プレート41A、第二延出プレート41B及び接合プレート42,43における梁幅方向(Y方向)の長さは第一梁20A及び第二梁20Bの梁幅よりも長いため、ボルト46及びナット47を多く設けることができる。よって、接合プレート42,43を第一延出プレート41A及び第二延出プレート41Bに強固に接合することができる。
【0067】
また、第一延出プレート41Aは第一梁20Aの延在方向(X方向)と直交する方向(Y方向)に延びる第一直交梁30Aに接合され、第二延出プレート41Bは第二梁20Bの延在方向(X方向)と直交する方向(Y方向)に延びる第二直交梁30Bに接合されている。よって、地震時に、第一延出プレート41Aの第一梁20Aの延在方向(X方向)回りの回転が抑制され、第二延出プレート41Bの第二梁20Bの延在方向(X方向)回りの回転が抑制される。
【0068】
また、第一梁20Aに支持された第一床板51Aと第二梁20Bに支持された第二床板51Bとは、離間して配置されている。よって、加振エリアA1の加振源で振動が生じても、鉛直方向の振動が第一床板51Aから第二床板51Bに伝達されることが抑制され、嫌動エリアA2で生じる鉛直方向の振動がより一層抑制される。
【0069】
なお、上述した実施の形態において示した組立手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0070】
例えば、上記に示す実施形態では、接合プレート42,43を第一延出プレート41A及び第二延出プレート41Bに接合する接合手段は、ボルト46及びナット47であるが、本発明はこれに限られない。接合プレート42,43は第一延出プレート41A及び第二延出プレート41Bに溶接等の他の接合方法によって接合されていてもよい。
【0071】
また、第一梁20A、第二梁20B、第一直交梁30A及び第二直交梁30Bは、H形鋼であるが、本発明はこれに限られない。第一床梁、第二床梁、第一直交梁及び第二直交梁は、溝形鋼等他の形状の形鋼であってもよい。
【0072】
また、上記に示す実施形態では、第一延出プレート41Aは第一梁20Aの梁せいの略中央に配置され、第一直交梁30Aの上部フランジ31及び下部フランジ32と離間して配置されている。第二延出プレート41Bは第二梁20Bの梁せいの略中央に配置され、第二直交梁30Bの上部フランジ31及び下部フランジ32と離間して配置されている。本発明はこれに限られず、第一延出部が第一直交梁30Aの上部フランジ31または下部フランジ32に当接するように配置され、第二延出部が第二直交梁30Bの上部フランジ31及び下部フランジ32に当接するように配置されていてもよい。
【0073】
また、上記に示す実施形態では、接合プレート42,43は、鉛直方向に薄い板状部材であるが、本発明はこれに限られない。接合プレート42,43の形状は適宜設定可能である。
【0074】
また、上記に示す実施形態では、第一延出プレート41A、第二延出プレート41B及び接合プレート42,43における梁幅方向(Y方向)の長さは第一梁20A及び第二梁20Bの梁幅よりも長いが、本発明はこれに限られない。第一延出部、第二延出部及び接合部における梁幅方向の長さは、第一床梁及び第二床梁の梁幅と同一または第一床梁及び第二床梁の梁幅よりも短くてもよい。
【0075】
また、上記に示す実施形態では、第一梁20Aに直交するように第一直交梁30Aが設けられ、第二梁20Bに直交するように第二直交梁30Bが設けられているが、本発明はこれに限られない。第一直交梁30A及び第二直交梁30Bが設けられずに、第一延出プレート41Aが第一梁20Aの中間プレート27と連続するように設けられ、第二延出プレート41Bが第二梁20Bの中間プレート27と連続するように設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…免震建物
20…梁
20A…第一梁(第一床梁)
20B…第二梁(第二床梁)
30…直交梁
30A…第一直交梁
30B…第二直交梁
41A…第一延出プレート(第一延出部)
41B…第二延出プレート(第二延出部)
42,43…接合プレート(接合部)
46…ボルト(接合手段)
47…ナット(接合手段)
51A…第一床板
51B…第二床板
100…床構造
A1…加振エリア(第一エリア)
A2…嫌振エリア(第二エリア)
図1
図2
図3
図4
図5