(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】枚葉式洗浄装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240730BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H01L21/304 648L
H01L21/304 643A
B08B3/02 D
(21)【出願番号】P 2020137584
(22)【出願日】2020-08-17
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】590002172
【氏名又は名称】株式会社プレテック
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】木下 哲男
(72)【発明者】
【氏名】青島 史哲
(72)【発明者】
【氏名】後藤 昭広
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-010555(JP,A)
【文献】特開平11-016875(JP,A)
【文献】特開平11-297652(JP,A)
【文献】特開2010-165966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B08B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と、
該底板上に配置され、被洗浄物である基板を支持して回転する回転テーブルと、
前記基板に洗浄液を供給する洗浄ノズルと、
前記回転テーブルを囲うように前記底板上に配置されており、前記基板に供給された前記洗浄液の飛散を防止する円筒状のカップと、
前記底板の前記カップの内側の位置に配設されており、前記基板の周囲にダウンフローの気流を形成する排気ダクトとを有する枚葉式洗浄装置であって、
前記カップの内側に配設されており、前記基板側から前記カップ側への貫通孔を有しており、該貫通孔を通して前記基板から飛散する洗浄液を前記カップ側へ通過させるとともに、前記カップ側へ通過して該カップから跳ね返った前記洗浄液が前記基板に到達するのを防止する円筒状の透過性板と、
前記底板よりも上方かつ前記カップの内側に配設された上げ底であり、前記基板側から前記排気ダクト側への複数の排気口を有しており、前記基板の周囲のダウンフローの前記気流が前記排気口を通して前記排気ダクトへ流れる排気分散板
のうち、いずれか1つ又は、これらの両方をさらに有するもので
あり、
前記貫通孔が前記透過性板の全体に均一分布していることを特徴とする枚葉式洗浄装置。
【請求項2】
前記透過性板は、前記カップからの距離が10mm以下の位置に配設されているものであることを特徴とする請求項1に記載の枚葉式洗浄装置。
【請求項3】
前記透過性板は、PEEK、PPS、PP、PE、PVC、PCTFE、PVDF、PTFEのうちのいずれかの材料からなるものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の枚葉式洗浄装置。
【請求項4】
前記透過性板は、前記回転テーブルに支持された前記基板の位置に対して、上下方向に100mm以内の幅を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の枚葉式洗浄装置。
【請求項5】
前記排気ダクトは2つ配設されており、
該2つの排気ダクトは、前記回転テーブルを挟んで互いに反対側に位置しており、
前記排気分散板は、平面視で円周方向に複数の領域に区分けされており、
該複数の領域は、前記排気ダクトの位置から離れている領域ほど、該領域における前記複数の排気口の占める面積の割合が大きいものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の枚葉式洗浄装置。
【請求項6】
前記基板は、角型基板または円形基板であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の枚葉式洗浄装置。
【請求項7】
前記角型基板は、フォトマスクまたはフラットパネルであり、
前記円形基板は、ガラスディスク、Siウエハ、Geウエハ、GaAsウエハ、SiCウエハのうちのいずれかであることを特徴とする
請求項6に記載の枚葉式洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を洗浄する枚葉式洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の基板を回転して洗浄する枚葉式洗浄装置では、洗浄や乾燥工程時に基板から飛散する洗浄液を遮蔽するために、常用的に基板の周囲に円筒状のカップを設置している(例えば、特許文献1)。また、カップ内の基板の周囲にダウンフローの気流を形成するための排気ダクトを設置している。
【0003】
図8は、このような従来の枚葉式洗浄装置の一例を示す上面図及び縦断面図である。上側が上面図を、下側が縦断面図を示している。枚葉式洗浄装置101は、洗浄を行う処理室の底板102の上にテーブルベース103を、その上に被洗浄物である基板Wを基板保持ピン104で保持して回転する回転テーブル105を有している。また、回転テーブル105を回転させるための回転モーター106を有している。
回転テーブル105上には基板Wの裏面に向けて洗浄液を供給する裏面洗浄ノズル107が設置されており、基板Wの上方には基板Wの表面に向けて洗浄液を供給する表面洗浄ノズル108が設置されている。表面洗浄ノズル108は旋回アーム109を介してアーム軸110に連結しており、アーム軸110が回転し旋回アーム109が旋回移動することで、表面洗浄ノズル108がカップ内で旋回移動し、待機時にはカップ外に移動可能となっている。
【0004】
基板Wの周囲には、回転テーブル105を囲うように円筒状のカップ111が設置されている。また、カップ111の内側の底板102には、基板Wの周囲にダウンフローの気流を形成する排気ダクト112が設置されている。
このような枚葉式洗浄装置101を用いて基板Wの洗浄や乾燥を行うと、基板Wから飛散した洗浄液はカップ111で遮蔽され、微細なミストとなり基板W方向に跳ね返る。このミストを排気ダクト112により形成されたダウンフローの気流で抑制し、基板Wに到達するのを防止している。
【0005】
このとき、排気ダクト112は回転モーター106の周りに設置されているが、多数の排気ダクト112を設置すると回転モーター106へのアクセスが出来なくなるため、メンテンナンス性を考慮してカップ111内に設置する排気ダクト112は2本とし、回転テーブル105を挟んで互いに反対側に配置している。しかしこの場合、カップ111内の排気ダクト112の近くではダウンフローが成立するが、例えば排気ダクト112から円周方向に90°離れた位置では、排気効果が薄れてダウンフローが極度に弱くなる傾向にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
基板Wが高速で回転して洗浄や乾燥処理する時には360°均等にカップ111へ洗浄液の液滴が飛ばされ、カップ111との干渉で微細なミストとなり基板W方向に跳ね返る症状がある。上記のようにダウンフローが弱い位置では、跳ね返りミストが制御できずに基板Wまで到達し、基板上で水シミ(ウォータマーク)として検出されることや、カップ111自体に付着していた異物や金属成分を付着させるなどの品質不良を起こしていた。
【0008】
そこで本発明は、基板をスピン洗浄及びスピン乾燥する枚葉式洗浄装置において、洗浄液の跳ね返りによるミストが基板に到達するのを抑制することができる枚葉式洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、底板と、
該底板上に配置され、被洗浄物である基板を支持して回転する回転テーブルと、
前記基板に洗浄液を供給する洗浄ノズルと、
前記回転テーブルを囲うように前記底板上に配置されており、前記基板に供給された前記洗浄液の飛散を防止する円筒状のカップと、
前記底板の前記カップの内側の位置に配設されており、前記基板の周囲にダウンフローの気流を形成する排気ダクトとを有する枚葉式洗浄装置であって、
前記カップの内側に配設されており、前記基板側から前記カップ側への貫通孔を有しており、該貫通孔を通して前記基板から飛散する洗浄液を前記カップ側へ通過させるとともに、前記カップ側へ通過して該カップから跳ね返った前記洗浄液が前記基板に到達するのを防止する円筒状の透過性板と、
前記底板よりも上方かつ前記カップの内側に配設された上げ底であり、前記基板側から前記排気ダクト側への複数の排気口を有しており、前記基板の周囲のダウンフローの前記気流が前記排気口を通して前記排気ダクトへ流れる排気分散板
のうち、いずれか1つ又は、これらの両方をさらに有するものであることを特徴とする枚葉式洗浄装置を提供する。
【0010】
このような本発明の枚葉式洗浄装置であれば、カップの内側に貫通孔を有する透過性板を有することで、貫通孔からカップ側へ通過して跳ね返った洗浄液のミストが基板に到達するのを防止することができる。また、底板の上方に複数の排気口を有する排気分散板を有することで、基板の周囲のダウンフローの気流が均一化され、従来装置ではダウンフローが弱くなる位置でも、本発明ではミストが基板に到達するのを防止することができる。その結果、基板のウォータマークの発生や、基板への異物等の付着を抑制することができる。
【0011】
また、前記透過性板は、前記カップからの距離が10mm以下の位置に配設されているものとすることができる。
【0012】
このようなものであれば、カップから跳ね返った洗浄液のミストが基板に到達するのをより確実に防止することができる。
【0013】
また、前記透過性板は、PEEK、PPS、PP、PE、PVC、PCTFE、PVDF、PTFEのうちのいずれかの材料からなるものとすることができる。
【0014】
このようなものであれば、洗浄液による腐食を効果的に防ぐことができる。
【0015】
また、前記透過性板は、前記回転テーブルに支持された前記基板の位置に対して、上下方向に100mm以内の幅を有することができる。
【0016】
このようなものであれば、洗浄液が上下方向にランダムに飛散する場合にも対応可能である。
【0017】
また、前記排気ダクトは2つ配設されており、
該2つの排気ダクトは、前記回転テーブルを挟んで互いに反対側に位置しており、
前記排気分散板は、平面視で円周方向に複数の領域に区分けされており、
該複数の領域は、前記排気ダクトの位置から離れている領域ほど、該領域における前記複数の排気口の占める面積の割合が大きいものとすることができる。
【0018】
このようなものであれば、基板の周囲のダウンフローの気流をより確実に均一化することができる。
【0019】
また、前記基板は、角型基板または円形基板であるものとすることができる。
【0020】
本発明の枚葉式洗浄装置は、このような基板に好適に用いることができる。
【0021】
また、前記角型基板は、フォトマスクまたはフラットパネルであり、
前記円形基板は、ガラスディスク、Siウエハ、Geウエハ、GaAsウエハ、SiCウエハのうちのいずれかであるものとすることができる。
【0022】
本発明の枚葉式洗浄装置は、これらの基板に特に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明の枚葉式洗浄装置であれば、洗浄液の跳ね返りによるミストが基板に到達するのを抑制し、基板上のウォータマークの発生、及び異物や金属成分の付着を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の枚葉式洗浄装置の一例を示す上面図及び縦断面図である。
【
図2】透過性板による、基板への洗浄液の跳ね返り防止の効果を示す説明図である。
【
図3】排気分散板における各領域の開口率とダウンフローの気流の風速の一例を示すグラフである。
【
図4】実施例1及び比較例1の基板上の平均ミスト速度を示す分布図である。
【
図5】実施例1及び比較例1の基板の流れ方向について断面プロファイルを行った結果を示すグラフである。
【
図6】実施例2及び比較例2のミスト量の測定位置を示す上面図及び縦断面図である。
【
図7】実施例3のミスト量の測定位置を示す上面図及び縦断面図である。
【
図8】従来の枚葉式洗浄装置の一例を示す上面図及び縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について図面を参照して実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(第一の実施態様)
図1は本発明の枚葉式洗浄装置の一例を示す上面図及び縦断面図である。上側が上面図を、下側が縦断面図を示している。本発明の枚葉式洗浄装置1は、処理室の底板2の上にテーブルベース3と基板保持ピン4と回転テーブル5とを有している。さらに、回転モーター6と、裏面洗浄ノズル7と、表面洗浄ノズル8が設置されており、表面洗浄ノズル8は旋回アーム9及びアーム軸10により移動可能となっている。なお、ここでは洗浄ノズルが表面用と裏面用の2つの洗浄ノズルを有するものについて説明するが、本発明はこれに限定されず、例えば、表面用か裏面用のいずれか1つの洗浄ノズルを具備するものであってもよい。
【0026】
基板Wの周囲には、回転テーブル5を囲うように円筒状のカップ11が、また、カップ11の内側の底板2には、基板Wの周囲にダウンフローの気流を形成する排気ダクト12が設置されている。なお、ここでは2つの排気ダクト12が回転テーブル5を挟んで互いに反対側に配設されているものについて説明するが、排気ダクト12の数や位置については特に限定されない。
以上の構成は、例えば、従来の枚葉式洗浄装置101と同様のものとすることができる。
本発明の枚葉式洗浄装置1の第一の実施態様ではさらに、透過性板13及び排気分散板14の両方を有している。以下、この2つの構成について詳細に説明する。
【0027】
まず、透過性板13について説明する。
図2は透過性板による、基板Wへの洗浄液の跳ね返り防止の効果を示す説明図である。透過性板13はカップ11の内側に配設されており、基板側からカップ側への貫通孔13aと、洗浄液遮蔽部13bとで構成されている。すなわち、板状の本体に貫通孔13aが形成されたものであり、貫通孔13a以外の部分が洗浄液遮蔽部13bである。枚葉式洗浄装置1により洗浄処理を行う際、回転テーブル5の回転により基板Wから飛散した洗浄液の液滴は、貫通孔13aを通してカップ11まで到達する。到達した液滴はカップ11との干渉によって微細なミストとして基板側へ向かって跳ね返るが、透過性板13が存在するため洗浄液遮蔽部13bにより遮蔽され、ミストが基板Wまで到達するのを防止することができる。その結果、基板におけるウォータマーク等の発生量を抑制することができる。
貫通孔13aの径サイズや分布密度等は特に限定されないが、例えば、直径5mmの貫通孔が透過性板全体に均一に分布したものとすることができる。
【0028】
なお、透過性板13の位置は特に限定されないが、例えば、カップ11からの距離が10mm以下の位置とすることができる。このようなものであれば、カップ11から跳ね返った洗浄液のミストが基板Wに到達するのをより確実に防止することができる。
【0029】
また、透過性板13の材質は特に限定されないが、例えば、PEEK、PPS、PP、PE、PVC、PCTFE、PVDF、PTFEのうちのいずれかの材料からなるものとすることができる。このようなものであれば、洗浄液による腐食を効果的に防ぐことができる。
【0030】
また、透過性板13の上下方向の幅は特に限定されないが、例えば、回転テーブル5に支持された基板Wの位置に対して、上下方向に100mm以内の幅を有するものとすることができる。
枚葉式洗浄装置では、例えば600rpm以上の高速回転時には基板とほぼ水平位置に洗浄液が飛散する傾向にあるが、例えば、厚みのある角型基板等を処理した場合には、内周から飛び出した外周部分が影響して洗浄液が基板の水平位置に対して上下方向の広範囲にランダムに飛散する傾向があるため、水平位置より上下方向に対して広角に透過性板を配置する方がよい。上下方向に100mm以内の幅を有する透過性板であれば、このように洗浄液が上下方向にランダムに飛散する場合にも対応可能である。
【0031】
次に、排気分散板14について説明する。
図1に示すように、排気分散板14は底板2よりも上方かつカップ11の内側に上げ底として、テーブルベース3に沿って円周状(リング状)に覆うように配設されている。気流が基板W側から排気ダクト12側へ向かうための複数の排気口16を有しており、基板Wの周囲のダウンフローの気流は気流遮蔽部15によって遮蔽され、排気口16を通して排気ダクト12へと流れる。このように、気流が複数の排気口16を通ることで基板の周囲のダウンフローの気流の均一化を図ることができ、その結果、従来ではダウンフローが弱かった位置(排気ダクト12から離れた位置)でも洗浄液のミストが基板に到達するのを防止することができる。
【0032】
なお、排気分散板14の構成については特に限定されないが、
図1のような2つの排気ダクト12が回転テーブル5を挟んで互いに反対側に配設されているものの場合、例えば、排気分散板14が平面視で円周方向に複数の領域17に区分けされており、排気ダクト12の位置から離れている領域ほど、領域17における複数の排気口16の占める面積の割合(開口率)が大きいものとすることができる。すなわち、
図1のように4種類の領域17a~17dに区分けされたものであれば、排気ダクト12の直上にある領域17aが最も開口率が小さく、17b、17c、17dの順に大きいものとすることができる。このようなものであれば、基板の周囲のダウンフローの気流をより確実に均一化することができ、カップ11や透過性板13から基板側へ跳ね返った洗浄液のミストが基板へ到達するのをより効率的に抑制する事が可能となる。なお、排気分散板14は1枚の板を区分けしたものだけでなく、例えば、領域ごとに開口率の異なる複数の板(分割板)を並べて構成したものとすることもできる。それらの分割板同士は隣接するもの同士で接着されていてもよい。
また、排気口16の大きさについては特に限定されないが、例えば、直径6mm以下とすることができる。
【0033】
図3は、排気分散板における各領域の開口率とダウンフローの気流の風速の一例を示すグラフである。
図3において下図に示すように、領域17a~17dは、それぞれ、排気ダクト12に近い領域から順に1~4の4種類のエリアとする。
図3の左側のグラフは各領域の開口率を示しており、排気ダクト12の位置からの距離が大きくなるに従い開口率も大きくなっている。なお、複数の排気口は格子状に並んで形成されており、開口率は下記式により求めることができる。
開口率[%]=(D
2/P
2)×78.5
(D:排気口の直径[mm]、P:隣り合う排気口同士の中心距離[mm])
すなわち、排気分散板14の単位面積当たりの排気口16の面積である。排気口16の面積であるπ・(D/2)
2を4つの隣り合う排気口で囲まれた面積であるP
2で割り、100を乗じた式である。
このような排気分散板14を用いた本発明の枚葉式洗浄装置1において、ダウンフローの気流の風速を測定した。その結果、
図3の右側のグラフに示すように、各エリアにおけるダウンフローの気流が均一化されていることがわかる。
【0034】
なお、基板Wとしては、例えば、角型基板または円形基板とすることができる。また、角型基板としてはフォトマスクまたはフラットパネルとすることができる。また、円形基板としてはガラスディスク、Siウエハ、Geウエハ、GaAsウエハ、SiCウエハのうちのいずれかとすることができる。本発明の枚葉式洗浄装置による洗浄は、これらの基板に特に好適に用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
(第二の実施態様)
図1の第一の実施態様では透過性板13及び排気分散板14の両方を有しているものを例に挙げて説明したが、これとは別の実施態様として、透過性板13のみを有しており、排気分散板14を有しないものとすることもできる。この場合も、カップ11から跳ね返った洗浄液のミストが透過性板13により遮蔽される効果が得られるため、洗浄液のミストが基板Wに到達するのを防止することができる。
【0036】
(第三の実施態様)
また、さらに別の実施態様として、排気分散板14のみを有しており、透過性板13を有しないものとすることもできる。この場合も、基板の周囲のダウンフローの気流が均一化される効果が得られるため、洗浄液のミストが基板Wに到達するのを防止することができる。
【0037】
第二、第三の実施態様のように、透過性板13と排気分散板14のうち、いずれか1つを有するものであっても、洗浄液のミストが基板Wに到達するのを従来より格段に防止することができるが、これらの両方を有する第一の実施態様であれば、より確実に防止することができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
前述した第三の実施態様、すなわち、
図1に示す本発明の枚葉式洗浄装置1において、排気分散板14のみを有しており、透過性板13を有しないものを用いて、以下に示す手順1~5で気流に関する測定を行った。なお、排気分散板14は
図3に示すような開口率を有する4種類の領域に区分けされたものを用いた。
1.基板上に気流可視化ミストを流し、基板を1,500rpmで回転した。
2.処理室外側からハイスピードカメラを設置して250fpsで撮影した。
3.撮影画像の画像処理を行い、ミスト流れ速度を算出した。
4.1,000フレームのデータを平均化して、基板上のミスト流れ方向について分布調査を行った。
5.また、基板の流れ方向について断面プロファイルを行い気流の変動状態を測定した。
【0039】
(比較例1)
図8に示す従来の枚葉式洗浄装置101を用いたこと以外は、実施例1と同様にして測定を行った。
【0040】
図4は、基板上の平均ミスト速度を示す分布図である。上側が実施例1、下側が比較例1を示す。平均ミスト速度分布は、流体解析ソフトウェア:Flownizer2D2C(DITECT社)を用い、撮影した画像の指定した範囲において、相関法によって各点での変位ベクトルを求め、あるタイミング(フレーム)での範囲内のベクトル群の平均値を算出して得た。外観的な平均ミスト速度分布では、比較例1では流れが発生しない部分(下図矢印部分)が確認でき、気流が不安定状態である事がわかる。一方、実施例1では均一的な流れ(上図矢印部分)を観測できた。
【0041】
図5は、基板の流れ方向について断面プロファイルを行った結果を示すグラフである。横軸がフレーム数を、縦軸がUV座標系から得られた接ベクトル方向の速度を示している。この速度は、上記のように算出した平均ミスト速度分布から、ある位置(実施例1、比較例1で同様の位置であり、
図4の矢印で示した位置)における経過時間(フレーム)別の平均速度を算出することで得られた。また、
図5から変動係数(σ/AVE)を算出した結果を表1に示す。
【0042】
【0043】
表1に示すように、変動係数(σ/AVE)を算出し比較すると、実施例1では変動係数が小さく、すなわち基板上の気流変動が少なくなることが確認できた。
【0044】
(実施例2)
前述した第二の実施態様、すなわち、
図1に示す本発明の枚葉式洗浄装置1において、透過性板13のみを有しており、排気分散板14を有しないものを用いて、基板中央に純水を供給して基板を回転しながら、ミスト量の測定を行った。透過性板13は直径5mmの貫通孔が透過性板全体に均一に分布したものを、カップ11からの距離が5mmの位置に配設した。材質はPTFEとし、上下方向の幅が100mmのものを用いた。回転数は一般的に乾燥処理で使用される、1,000rpm及び1,500rpmとした。ミスト量の測定位置は従来の枚葉式洗浄装置で基板上の気流が弱い位置で、基板から50mm上方位置とし、測定時間は3分間とした。
図6にミスト量測定位置18を示す。上側が縦断面図を、下側が上面図を示している。
【0045】
(比較例2)
図8に示す従来の枚葉式洗浄装置101を用いた以外は、実施例2と同様にしてミスト量の測定を行った。
表2に実施例2及び比較例2のミスト量の測定結果、及び、実施例2における、従来技術である比較例2からのミスト量の減少割合を示す。
【0046】
【0047】
表2に示すように、実施例2では、カップ近傍の透過性板によるミスト抑制効果を確認できた。
【0048】
(実施例3)
前述した第一の実施態様、すなわち、
図1に示す本発明の枚葉式洗浄装置1のように、透過性板13と排気分散板14の両方を有するものを用いて、基板中央に純水を供給して基板を回転しながら、ミスト量の測定を行った。排気分散板14は実施例1と同じものを用い、回転数は1,500rpmとした。ミスト量の測定位置は排気分散板14の4種類の領域1~4について、それぞれの領域の基板上で行った。測定時間は3分間とした。
図7にミスト量測定位置18を示す。上側が縦断面図を、下側が上面図を示している。
表3に実施例3及び比較例2のミスト量の測定結果、及び、実施例3における、従来技術である比較例2からのミスト量の減少割合を示す。
【0049】
【0050】
表3に示すように、実施例3では、透過性板によるカップから基板方向へ跳ね返るミスト抑制効果と、排気分散板によって基板周辺の気流が均一化された処理室でのミスト抑制効果の両方により、より高い抑制効果を確認できた。また、基板の周囲のダウンフローの気流が均一化されることにより、各領域でのミスト量がほぼ同等であることもわかった。
【0051】
以上の結果から、本発明の枚葉式洗浄装置において、洗浄液の跳ね返りによるミストが基板に到達するのを抑制でき、その結果、ミスト由来の異物の付着やウォータマークの発生を防止する事が可能となる。
【0052】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0053】
1…本発明の枚葉式洗浄装置、 2、102…底板、
3、103…テーブルベース、 4、104…基板保持ピン、
5、105…回転テーブル、 6、106…回転モーター、
7、107…裏面洗浄ノズル、 8、108…表面洗浄ノズル、
9、109…旋回アーム、 10、110…アーム軸、 11、111…カップ、
12、112…排気ダクト、 13…透過性板、 13a…貫通孔、
13b…洗浄液遮蔽部、 14…排気分散板、 15…気流遮蔽部、
16…排気口、 17、17a、17b、17c、17d…領域、
18…ミスト量測定位置、 101…従来の枚葉式洗浄装置、 W…基板。