(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】流路形成部材及び流路形成部材付きディスペンサ
(51)【国際特許分類】
B05C 5/00 20060101AFI20240730BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20240730BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B05C5/00 A
B65D83/00 K
B05C11/10
(21)【出願番号】P 2020146417
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100113169
【氏名又は名称】今岡 憲
(72)【発明者】
【氏名】當麻 徹
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-069885(JP,U)
【文献】特開2001-314785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00
B65D 83/00
B05C 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収縮変形又は曲がり変形が可能な柔軟な薄肉容器内の液体を吸い上げて吐出口(48)から吐出するディスペンサに用いられ、前記薄肉容器内に装備される流路形成部材(2)であって、
仮想筒面(C)の上に在るように配置され、この仮想筒面(C)内に開通する流路(P)の一部として液体を通過させるための導通孔(5)を有する導通部材(4)と、
前記導通部材(4)から前記仮想筒面(C)に沿って延び、収縮変形又は曲がり変形した薄肉容器(20)を内側から支えて流路(P)を確保するための流路保持材(6)と、
を具備し、
前記流路保持材(6)は、前記仮想筒面(C)の一部で薄肉容器を支える複数の支持部(8)を、相互に隣接させて連設することで形成されており、かつ全体として可撓性を有
しており、
前記導通部材(4)はリング状又は筒状に形成されており、この導通部材(4)の周方向に異なる箇所から、前記仮想筒面(C)に沿って延びる複数の流路保持材(6)が突設されており、
各流路保持材(6)は、前記仮想筒面(C)の筒軸(A1)の方向に前記複数の支持部(8)がジョイント部(10)を介して連設されてなり、
各支持部(8)は、前記仮想筒面(C)の周方向に長い長円形のリング体(8A)であることを特徴とする、流路形成部材。
【請求項2】
収縮変形又は曲がり変形が可能な柔軟な薄肉容器内の液体を吸い上げて吐出口(48)から吐出するディスペンサに用いられ、前記薄肉容器内に装備される流路形成部材(2)であって、
仮想筒面(C)の上に在るように配置され、この仮想筒面(C)内に開通する流路(P)の一部として液体を通過させるための導通孔(5)を有する導通部材(4)と、
前記導通部材(4)から前記仮想筒面(C)に沿って延び、収縮変形又は曲がり変形した薄肉容器(20)を内側から支えて流路(P)を確保するための流路保持材(6)と、
を具備し、
前記流路保持材(6)は、前記仮想筒面(C)の一部で薄肉容器を支える複数の支持部(8)を、相互に隣接させて連設することで形成されており、かつ全体として可撓性を有しており、
前記流路保持材(6)は、前記仮想筒面(C)の筒軸(A1)の方向に前記複数の支持部(8)が連設されてなり、
各支持部(8)は、前記筒軸(A1)に対して傾斜した軸線(A2)を有する傾斜リング(8B)であり、これら傾斜リング(8B)を、側方から見てジグザグ状に配置するとともに、隣り合う傾斜リング(8B)の端部同士を連結させたことを特徴とする、流路形成部材。
【請求項3】
前記支持部(8)は、前記仮想筒面(C)に沿って曲がった形状に成形されており、かつ撓み変形可能に形成されていることを特徴とする、請求項1
又は請求項2に記載の流路形成部材。
【請求項4】
前記導通部材(4)として、前記仮想筒面(C)の筒軸(A1)方向の2箇所に配置された一対の導通部材(4)を設け、これら一対の導通部材(4)を、
前記仮想筒面(C)に沿って延びる流路保持材(6)の両端側に連結したことを特徴とする、請求項1
から請求項3のいずれかに記載の流路形成部材。
【請求項5】
液体を収納させるための薄肉容器(20)と、
前記薄肉容器(20)内から液体を吸い上げて外部へ吐出するディスペンサ本体(30)と、
このディスペンサ本体(30)に取り付けられて、前記薄肉容器(20)内に装備された、請求項1から請求項4のいずれかに記載の流路形成部材(2)と
を具備し、これら流路形成部材(2)を介して前記薄肉容器(20)内の液体を前記ディスペンサ本体(30)の側へ吸引するように設けた流路形成部材付きディスペンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路形成部材及び流路形成部材付きディスペンサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なディスペンサとして、収縮変形が可能な容器体の口部に、ポンプ機構を内蔵するディスペンサ本体の下部を装着させ、このディスペンサ本体から容器体の底部へ可撓性吸上げパイプを垂設させたものが知られている(特許文献1)。
また前記可撓性吸上げパイプに代えて、剛性を有し断面十字状である縦長の流路形成部材を、前記ディスペンサ本体から下方へ垂下したものも知られている(特許文献2の段落0037及び
図17参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-184197
【文献】特開2004-275726
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構造では、薄肉容器体の変形に伴って、可撓性吸上げパイプが屈曲し、この屈曲箇所で液体の流路が塞がってしまう可能性があった。
特許文献2の構造では、剛性を有する断面十字形の流路形成部材を薄肉容器に内蔵させているので、柔軟性に欠け、使用感がよくないという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、薄肉容器の収縮変形や曲がり変形(折れ曲がりなど)に応じて撓ませることができ、かつ流路が塞がりにくい流路形成部材並びに流路形成部材付きディスペンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
まず本発明の基本的構成について説明する。
この基本的構成は、収縮変形又は曲がり変形が可能な柔軟な薄肉容器内の液体を吸い上げて吐出口48から吐出するディスペンサに用いられ、前記薄肉容器内に装備される流路形成部材2であって、
仮想筒面Cの上に在るように配置され、この仮想筒面C内に開通する流路Pの一部として液体を通過させるための導通孔5を有する導通部材4と、
前記導通部材4から前記仮想筒面Cに沿って延び、収縮変形又は曲がり変形した薄肉容器20を内側から支えて流路Pを確保するための流路保持材6と、
を具備し、
前記流路保持材6は、前記仮想筒面Cの一部で薄肉容器を支える複数の支持部8を、相
互に隣接させて連設することで形成されており、かつ全体として可撓性を有する。
前記基本的構成においては、図3(A)に示す如く、仮想筒面Cの上に在るように配置され、仮想筒面Cを開通する液体の流路の一部として液体を通過させるための導通孔5を有する導通部材4と、導通部材4から前記仮想筒面Cに沿って延び、収縮変形又は曲がり変形した薄肉容器20を内側から支えて流路Pを確保するための流路保持材6とを具備している。こうすることにより、薄肉容器内の液体の残量が少なくなったときに、図5(B)に示す如く、導通部材4及び流路保持材6の内側に、流路Pを確保することができる。
そして、前記流路保持材6は、前記仮想筒面Cの一部で薄肉容器を支える複数の支持部8を相互に隣接させて連設することで形成している。
この構造によれば、吸上げパイプのように屈曲して流路が塞がってしまう不都合が生じにくく、流路形成部材2によって薄肉容器が持ち上げられることがないので使用性がよい。
【0007】
第1の手段は、前記基本的構成を有し、かつ
前記導通部材4はリング状又は筒状に形成されており、この導通部材4の周方向に異なる箇所から、前記仮想筒面Cに沿って延びる複数の流路保持材6が突設されており、
各流路保持材6は、前記前記仮想筒面Cの筒軸A1の方向に前記複数の支持部8がジョイント部10を介して連設されてなり、
各支持部8は、前記仮想筒面Cの周方向に長い長円形のリング体8Aである。
本手段では、図3(B)に示す如く、流路保持材6は、前記筒軸A1の方向に複数の支持部8がジョイント部10を介して連設されてなり、各支持部8は、前記仮想筒面Cの周方向に長い長円形のリング体8Aである。
この構造によれば、十分な可撓性を発揮でき、確実に液体の流路を維持できる。
第2の手段は、前記基本的構成を有し、かつ
前記流路保持材6は、前記仮想筒面Cの筒軸A1の方向に前記複数の支持部8が連設されてなり、
各支持部8は、前記筒軸A1に対して傾斜した軸線A2を有する傾斜リング8Bであり、これら傾斜リング8Bを、側方から見てジグザグ状に配置するとともに、隣り合う傾斜リング8Bの端部同士を連結させた。
本手段では、図7(A)に示す如く、各支持部8は、前記筒軸A1に対して傾斜した軸線A2を有する傾斜リング8Bであり、これら傾斜リング8Bを、側方から見てジグザグ状に配置するとともに、隣り合う傾斜リング8Bの端部同士を連結させている。
この構造によれば、簡単な構成でありながら、的確に液体の流路を形成できる。
【0008】
第3の手段は、第1の手段又は第2の手段を有し、かつ
前記支持部8は、前記仮想筒面Cに沿って曲がった形状に成形されており、かつ撓み変形可能に形成されている。
【0009】
本手段では、前記支持部8は、
図4(B)及び
図4(C)に示す如く、前記仮想筒面Cに沿って曲がった形状に成形されている。
この構造によれば、流路保持材6の内部に流路Pを的確に確保することができ、各支持部8が撓み変形可能である。
【0010】
第4の手段は、第1の手段又は第2の手段を有し、かつ
前記導通部材4として、前記仮想筒面Cの筒軸A1方向の2箇所に配置された一対の導通部材4を設け、これら一対の導通部材4を、前記仮想筒面Cに沿って延びる流路保持材6の両端側に連結した。
【0011】
本手段では、前記導通部材4として、
図3(A)に示す仮想筒面Cの筒軸A1方向の2箇所に配置された一対の導通部材4を、仮想筒面Cに沿って延びる流路保持材6の両端側に連結している。
この構造によれば、薄肉容器が収縮変形又は曲がり変形したときでも、より確実に流路の確保を行うことができる
【0016】
第5の手段は、流路形成部材付きディスペンサであり、
液体を収納させるための薄肉容器20と、
前記薄肉容器20内から液体を吸い上げて外部へ吐出するディスペンサ本体30と、
このディスペンサ本体30に取り付けられて、前記薄肉容器20内に装備された、第1の手段から第4の手段のいずれかに記載の流路形成部材2と
を具備し、これら流路形成部材2を介して前記薄肉容器20内の液体を前記ディスペンサ本体30の側へ吸引するように設けた。
【0017】
本手段では、
図1に示すように、第1の手段から第5の手段のいずれかで述べた流路形成部材を有するディスペンサを提供している。
この構造によれば、流路形成部材の変形により流路が閉塞されることを回避できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の基本的構成に係る発明によれば、導通部材4から仮想筒面Cに沿って延びる流路保持材6によって、収縮変形又は曲がり変形した薄肉容器20を内側から支えて、仮想筒面C内に開通する流路Pを確保するように設け、かつ前記流路保持材6は、仮想筒面の一部で薄肉容器を支える複数の支持部8を相互に隣接させて連設したから、流路が塞がる不都合が生じにくい。
第1の手段に係る発明によれば、流路保持材6は、前記筒軸A1の方向に複数の支持部8がジョイント部10を介して連設されてなり、各支持部8は、仮想筒面Cの周方向に長い長円形のリング体8Aであるから、十分な可撓性を発揮して確実に流路を維持できる。
第2の手段に係る発明によれば、各支持部8である傾斜リング8Bを側方から見てジグザグ状に配置して、その端部同士を連結させたから、簡易な構造で的確に流路を形成できる。
第3の手段に係る発明によれば、前記支持部8は、仮想筒面Cに沿って曲がった形状であるから、流路保持材6の内部に流路Pを的確に確保することができ、各支持部8が撓み変形可能だから、全体としての可撓性も向上する。
第4の手段に係る発明によれば、前記導通部材4として、前記仮想筒面Cの筒軸A1方向の2箇所に配置された一対の導通部材4を設け、これら一対の導通部材4を、仮想筒面Cに沿って延びる流路保持材6の両端側に連結したから、薄肉容器が収縮変形又は曲がり変形したときでも、より確実に流路の確保を行うことができる。
第5の手段に係る発明によれば、流路形成部材の変形により流路が閉塞されてしまうことを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る流路形成部材付きディスペンサの主要部を正面方向から見た図である。
【
図2】
図1のディスペンサの主要部の構造を示す図であり、同図(A)は当該主要部の斜視図、同図(B)は、流路形成部材付近の構造の斜視図である。
【
図3】
図1のディスペンサの流路形成部材の構造を横から見た図であり、同図(A)は、流路形成部材の側面図、同図(B)は、流路形成部材の正面図である。
【
図4】
図3の流路形成部材の構造を上方から見た図であり、同図(A)は、流路形成部材の平面図、同図(B)は、
図3(A)のIV(B)- IV(B)から見た断面図、同図(C)は、
図3(A)のIV(C)- IV(C)から見た断面図である。
【
図5】
図1のディスペンサの作用説明図であり、同図(A)は、薄肉容器内の液体の残量が十分にあるときの液体の吸上げ作用の状況を、同図(B)は、薄肉容器内の液体の残量が僅かであるときの液体の吸上げ作用の状況をそれぞれ示している。
【
図6】
図3の流路形成部材が変形したときの形態を示す図であり、同図(A)は、流路形成部材が矢示の方向に変形したときの形態を示す側面図、同図(B)は、同図(A)に示す形態をVI(B)-VI(B)方向から見た図、同図(C)は、同図(A)に示す形態をVI(C)-VI(C)方向から見た図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係るディスペンサの流路形成部材の構造を示す図であり、同図(A)は、流路形成部材の側面図、同図(B)は、流路形成部材の正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1から
図6は、本発明の第1実施形態に係る流路形成部材付きディスペンサを示している。
このディスペンサは、薄肉容器20と、ディスペンサ本体30と、流路形成部材2とで形成されている。
説明の都合上、本発明の特徴的な事柄に関しては、後述するものとし、まず発明の基本的構造を説明する。
【0021】
薄肉容器20は、軟材質で柔軟な容器であり、本実施形態では、パウチとして形成されている。このパウチは、柔軟な袋体22の口部に口栓24を装着してなる。
この口栓24は、袋体22内に取り付けられた基部24aから栓筒24bを起立してなる。前記口栓24は溶着などの方法で袋体22に取り付けることができる。
もっとも薄肉容器20の構造は適宜変更することができ、例えば負圧化により圧壊可能な薄肉ボトルを含む。
前記薄肉容器20は、収縮変形、或いは曲がり変形(折れ曲がりなどを含む)を生ずるように形成されている。
【0022】
ディスペンサ本体30は、前記口栓24に装着されている。
ディスペンサ本体30は、薄肉容器から液体を吸い上げて外部へ突出することができればどのようなものでも構わない。例えば縦型のポンプ式ディスペンサ、トリガー式のディスペンサであってもよい。
図示例のディスペンサ本体30は、前記栓筒24bの内部から、縦筒部34を介して水平方向に延びる横向きのシリンダ36を有し、このシリンダ36内に前記水平方向への進退が可能に作動部材40の一端側を嵌挿させている。
前記縦筒部34は、栓筒24bの外面に嵌合された装着筒部32に連設されている。
作動部材40は、シリンダ36の内面を摺動するピストン42を有し、このピストン42から水平方向外側へ延びるノズル46の先端に吐出口48を開口している。また作動部材40は、水平方向外側へ付勢されている。
ディスペンサ本体30は、
図1に示す第1逆止弁V1及び第2逆止弁V2を有し、シリンダ36に対する進退操作により、薄肉容器20内の液体が第1逆止弁V1を介してシリンダ36内へ入り、かつシリンダ36内の液体が第2逆止弁V2を介して吐出口48から吐出されるように構成されている。
図示例では、前記シリンダ36の上面からは、上方に延びる第1指掛け部38が、また作動部材40の外面からは、上下方向に延びる一対の第2指掛け部44がそれぞれ突設されている。そして、第1指掛け部38に親指を、また第2指掛け部44に人差し指をかけ、人差し指を引くことで、作動部材40が後退するように設けている。
【0023】
流路形成部材2は、ディスペンサ本体側の吸込み口(図示例では縦筒部34の下部)に嵌合されて、前記薄肉容器20内に垂設されている。この流路形成部材2は、前述の液体の吸上げにより、薄肉容器20が収縮変形又は曲がり変形しても、前記吸込み口の下方において、縦向きの流路を確保するという機能を有する。
【0024】
本発明において、前記流路形成部材2は、
図3に示す如く、導通部材4と、流路保持材6とを備えている。
これら各部材は、例えば合成樹脂材で形成することができる。
図示例では、導通部材4と流路保持材6とは一体成形されているが、これら部材を別体に成形して、導通部材4に流路保持材6を組み付けることが可能に形成しても構わない。
流路形成部材2の長さは薄肉容器20の高さ・横幅、収納する内容液などの要素を勘案して設計すると良い。好適な一実施例として、流路形成部材2の長さを15mmとすることができる。
ここで、
図3(A)は、流路形成部材2の側面図を示しており、また
図3(B)は流路形成部材2の正面図を示している。
なお、本明細書では、流路形成部材2の構造を説明するために、便宜的に、
図3(A)の左側を“前”と、
図3(A)の右側を“後”と、これらに直交する方向を“左右”と表現する。
【0025】
導通部材4は、薄肉容器20内の液体をディスペンサ本体30の吸込み口まで液体を導くために、流路の要所(図示例では流路の両端及び中間部)に配置された部材である。
本明細書では、説明の便宜上、導通部材4及び流路保持材6の構造及び位置関係を特定するために、“仮想筒面”という抽象観念を導入する。
すなわち、導通部材4は、仮想筒面Cの上に在るように配置され、液体を通過させるための導通孔5を有する。
そして、この導通孔5は、この仮想筒面C内に開通する流路Pの一部となるものである。
本実施形態では、前記導通部材4は、導通筒4として形成されている。
図示の導通筒4は、
図3(A)及び
図3(B)に示す円筒形の筒体であり、その中心軸方向に延びる筒壁を有する。そして、この筒壁が前記仮想筒面Cに配置されている。また導通筒4の平面形状は、
図4(A)に示すように真円状の環である。
もっともこの形状は、適宜変更することができる。
【0026】
本実施形態では、
図3(A)に示す如く、仮想筒面Cに沿って3つの導通部材4を設け、隣り合う導通部材4同士を、後述の流路保持材6で連結している。この明細書では、それら3つの導通部材のうちの上側のものを上側導通部材4Aと、中間のものを中間導通部材4Bと、下側のものを下側導通部材4Cとそれぞれ称する。
図示例ではこれら導通部材をいずれも筒状(或いはリング状)に形成しているが、その構造は適宜変更することができる。例えば上側導通部材4Aを、前記ディスペンサ本体の吸込み口である縦筒部34へ嵌合させるために筒状に形成し、中間導通部材4B及び下側導通部材4Cを筒状以外の任意の形状とすることができる。
図示例では、上側導通部材4Aを、中間導通部材4B及び下側導通部材4Cより長い筒体に形成している。こうすることにより、縦筒部34との嵌合代を長くとっている。また上側導通部材4Aの外面には、前記縦筒部34の下端に突き当てるための当接用リブrが周設されている。
もっとも、これらの構造は適宜変更することができる。例えば上側導通部材4Aと中間導通部材4Bと下側導通部材4Cとは同じ筒長とすることができる。
なお、図示例の流路形成部材2の構造は、適宜変更することができる。
図3に示す構造のうち、上から2段目及び3段目の導通部材4と上から2段目及び3段目の流路保持材6を省略して、一つの導通部材4から仮想筒面Cに沿って流路保持材6を延出した構造が、本発明の必須の構成(基本ユニット)である。
従って、流路形成部材2は、前記基本ユニットのみで形成してもよく、また基本ユニットの流路保持材に2段目の導通部材のみを付加した構造としても構わない。さらに3つ以上の基本ユニットを仮想筒面Cの筒軸A1の方向へ連ねて連続形成しても良い。
【0027】
流路保持材6は、導通部材4から前記仮想筒面Cに沿って延びており、収縮変形又は曲がり変形した薄肉容器20を内側から支えて流路Pを確保する役割を有する。
すなわち、液体を吸い出すことで薄肉容器20の内部が負圧化したときに、当該薄肉容器20が仮想筒面Cを超えて収縮することを流路保持材6で規制している。
従って、流路保持材6によって支えられた薄肉容器20の内面で、仮想筒面Cに沿って流路Pが形成されるから、所要の流路面積を有する流路Pを確保することができる。
なお、流路保持材6が“仮想筒面に沿って延びている”とは、仮想筒面Cとの間に近い距離を保って離れずにいるという意味であり、流路の確保という機能が担保される限り、例えば流路保持材6の一部(支持部8など)が仮想筒面Cから出っ張っていてもよく、また仮想筒面より凹んでいても構わない。
本実施形態では、導通部材4の周方向の反対側から、前後一対の流路保持材6(前側流路保持材6F及び後側流路保持材6B)が延出されており、各流路保持材6が薄肉容器20の内面の半分を支えている。なお、導通部材4から延出される流路保持材6の数は、適宜変更することができる。
前記一対の流路保持材6は、別体として形成し、それぞれ導通部材4に組み付けてもよい。
【0028】
前記支持部8は、前記仮想筒面Cに沿って曲がった形状に成形されており、かつ撓み変形可能に形成されていることが望ましい。
“仮想筒面Cに沿った形状”の支持部8の一例として、筒軸A1の方向から見て断面円弧状の板状体を挙げることができる。こうした板状体は、仮想筒面Cに沿って配置した円筒体を周方向に適数(例えば2つ)に分割することにより得ることができる。
さらに、当該板状体に対して一定の方向(例えば仮想筒面Cの周方向)の多数のスリットを均等に穿設しても良い。
多数のスリットを均等に穿設することにより、隙間の多い構造となるので、板状体同士が接触しても、流路Pの閉塞を回避し易くなるとともに、板状体の可撓性を向上させることができる。
【0029】
前記流路保持材6は、前記仮想筒面Cの一部で薄肉容器を支える複数の支持部8を、相互に隣接させて連設することで形成されており、全体として可撓性を有する。
既述の特許文献1の可撓性吸上げパイプは、一本の管壁の内部に流路を確保するように形成しているが、この構造では、過剰な屈曲(屈折を含む)により、屈曲箇所で向かい合う壁部分同士が圧接し、流路が塞がってしまう。
そこで、薄肉容器を支える役割を、仮想筒面Cの一部をカバーする複数の支持部8に分担させ、これらの支持部8を相互に隣接させて連設している。こうすることにより、流路形成部材2が曲げ変形しても、流路Pが塞がらないようにしている。
【0030】
本実施形態では、各流路保持材6は、
図3(B)に示す如く、前記仮想筒面Cの筒軸A1の方向に複数の支持部8がジョイント部10を介して連設されてなる。
すなわち、流路保持材6は、支持部8とジョイント部10とが交互に繰り返すようにして構成され、その上下両側に配置されたジョイント部10の先部は、連結部14として、円筒状の導通筒4の端部に連結されている。
各支持部8は、前記仮想筒面Cの周方向に長い長円形のリング体8Aである。
正面方向から見ると、
図3(B)に示すように、前記リング体8Aは、スリット状に細長い孔(スリット孔S)を有し、またリング体8A同士の間には、側方よりスリット状に食い込むくびれWが形成されている。
図示例では、スリット孔Sの上下幅d1と、くびれWの上下幅d2の上下幅とは同程度であるが、その形状は適宜変更することができる。
側面方向から見ると、
図3(A)に示すように、流路保持材6は、上下方向に波状に連続している。このように波状に見えるのは、
図3(B)に示すように、ジョイント部10を中心として、リング体8Aが仮想筒面Cに沿って周方向に横長に延びているからである。
図4(B)及び
図4(C)は、
図3(A)のIV(A)- IV(A)線方向、及びIV(B)- IV(B)線方向から見た、流路形成部材2の断面形状を示している。流路保持材6の断面形状を分かり易くするために、導通筒4の形状を破線で表している。
各流路保持材6のリング体8Aは、ジョイント部10を中心として、周方向に180°近くまで延びており、
図3(A)に示す如く、2個の流路保持材6のリング体8Aの周方向の端部12を、相互に接近させている。こうすることで、収縮変形又は曲がり変形したときの薄肉容器20の内面のほぼ全周を2つの流路保持材6で支えることができるように設けている。
3個以上の流路保持材6を導通筒4の周方向に配置するときにも、リング体8Aの形態は同様に設計する。すなわち、各流路保持材6のリング体8Aは、360°を流路保持材6の個数で割った角度に近い範囲をカバーするようにする。
【0031】
前記構成において、作動部材40を操作すると、吐出口48から液体が吐出された後に、
図5(A)に示すように、薄肉容器20内の液体21が流路形成部材2内の流路Pを通ってディスペンサ本体30側へ吸い込まれる。
液体の吸い込みに伴い、薄肉容器20は収縮するが、
図5(B)に示されているように、流路形成部材2の輪郭を超えて収縮することはない。
その結果、流路保持材6で支持された薄肉容器20の内面により、所要の断面積を有する流路Pが確保される。
従って、薄肉容器20内に収納された液体の殆ど全てを使い切ることができる。
【0032】
図6は、流路形成部材2が変形する様子を示している。
図6(A)は、前記流路形成部材2が前後方向に撓む様子を描いている。流路形成部材が全体として前後方向に撓むため、黒い矢印で示す如く、前側流路保持材6Fが伸び、後側流路保持材6Bが縮んでいる。
図6(B)は、撓んだ状態の流路形成部材2の前面形状を、また
図6(C)は、撓んだ状態の流路形成部材2の後面形状を、それぞれ描いている。
流路形成部材2が撓み変形を生ずることにより、後側流路保持材6Bのスリット孔Sの上下幅d1は、前側流路保持材6Fのスリット孔Sの上下幅d1よりも小さくなっており、かつ、後側流路保持材6BのくびれWの上下幅d2は、前側流路保持材6FのくびれWの上下幅d2よりも小さくなっている。
本実施形態のスリット孔Sとスリット状のくびれWとが前後方向から見た流路保持材6の全面に均等に配置されているため、次の作用が得られる。
・スリット孔S及びくびれWが変形代として拡大・縮小するために、屈曲箇所での管壁の変形の具合をコントロールすることができ、従来の可撓性チューブのように屈曲箇所で流路Pが塞がってしまうことがない。
・流路保持材6は断面円弧状の板状板にスリット孔S及びくびれWを均等に穿設してなるから、変形しても板状体(支持板)としての機能が損なわれず、薄肉容器の内面を的確に支えることができる。
【0033】
なお、流路形成部材2が左右方向に撓んだときには、
図3(B)に矢示する如く、スリット孔Sは、その左右方向の両端e1、e2の一方e1側で広がるとともに他方e1側で縮む。
これとともに、
図3(B)に示す一対のくびれW1、W2のうちの一方W1が広がるともに他方W2が縮む。
従って、この場合にも、従来の可撓性チューブのように屈曲箇所で流路Pが塞がってしまうことがない。
以上の考察から、流路形成部材2の任意の方向に変形に対して流路Pの閉塞を回避できることが導かれる。
【0034】
以下、本発明の他の実施形態に係る流路形成部材を説明する。これらの説明において第1実施形態と同じ構成に関しては解説を省略する。
【0035】
図7は、本発明の第2実施形態に係る流路形成部材2を示している。
本実施形態では、流路保持材6は、前記仮想筒面Cの筒軸A1の方向に複数の支持部8が連設されてなる。
本実施形態では、一つの導通部材4に一つの流路保持材6を連設させており、これらで一つの基本ユニットとしている。
各支持部8は、前記筒軸A1に対して傾斜した軸線A2を有する傾斜リング8Bであり、これら傾斜リング8Bを、
図7(A)に示すように、側方から見てジグザグ状に配置するとともに、隣り合う傾斜リング8Bの端部同士を連結させている。
この実施形態では、
図7(B)に示すように、傾斜リング8Bのリング孔は、液体を通す透孔Qとして、仮想筒面Cの筒軸A1の上に配列されており、流路Pの一部を形成している。
本実施形態の構造でも、ジグザグ状に配置された傾斜リング8B同士の間には、空隙が十分に取れているので、流路Pの閉塞を回避することができる。
【符号の説明】
【0036】
2…流路形成部材 4…導通部材(導通筒)
4A…上端導通部材 4B…中間導通部材 4C…下側導通部材
5…導通孔 6…流路保持材 6B…後側流路保持材 6F…前側流路保持材
8…支持部 8A…リング体 8B…傾斜リング
10…ジョイント部 12…端部 14…連結部
20…薄肉容器 21…内容液 22…袋体
24…口栓 24a…基部 24b…栓筒
30…ディスペンサ本体 32…装着筒部 34…縦筒部
36…シリンダ
38…第1指掛け部 40…作動部材 42…ピストン 44…第2指掛け部
46…ノズル 48…吐出口
A1…筒軸 A2…軸線 C…仮想筒面 P…流路 Q…透孔 r…当接用リブ
S…スリット孔 V1…第1逆止弁 V2…第2逆止弁 W…くびれ