(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20240730BHJP
B62D 37/02 20060101ALI20240730BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20240730BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20240730BHJP
H05H 1/24 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
B60R16/02 650Z
B62D37/02 Z
H05K9/00 Z
B60R11/02 B
B60R11/02 W
H05H1/24
(21)【出願番号】P 2020157388
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 恒
(72)【発明者】
【氏名】戸野塚 徹
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-001354(JP,A)
【文献】特開平06-087464(JP,A)
【文献】特開2014-103094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/00-99/00
H05K 9/00
H05H 1/00- 1/54
B62D 37/02
F15D 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号が用いられる車載機器と、
前記車載機器に対応して車体に取り付けられ、前記車体の周囲の気流を整流するプラズマアクチュエータと、
前記プラズマアクチュエータに対応して前記車体に取り付けられ、前記車載機器から発生して車両を介して放出される電磁的な高周波ノイズを検出するセンサーと、
前記プラズマアクチュエータを駆
動する
駆動信号を生成する制御装置と、
を備え
、
前記制御装置は、前記センサーにより前記高周波ノイズを検出した場合に、前記駆動信号の波形を、前記検出した前記高周波ノイズを抑制可能なものとする、車両。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記駆動信号の振動が、前記センサーにより検出した前記高周波ノイズ
の振動と逆位相
となるように前記駆動信号を生成する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記制御装置は、予め記憶したノイズ形態に基づいて前記センサーから受信した信号を解析することにより前記高周波ノイズを検出する、請求項
1又は2に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載ノイズリダクション技術に関し、より具体的には車両を介して周囲へ放出される高周波ノイズをプラズマアクチュエータにより低減可能な車両に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会において車両は不可欠であり、日常における重要な移動手段となっている。近年における車両には様々な通信機器が搭載されるようになっており、これらの通信機器は電磁波に各種情報を重畳させて情報通信を行っている。
【0003】
ところで、例えば特許文献1が指摘するとおり、インバータなどの高周波制御器は、例えばバッテリーからの直流電力をトランジスタなどのスイッチング素子により電流の向きを変えながらモータ内における各相の界磁コイルに順次供給するため、高周波ノイズを発生することが知られている。
【0004】
そしてこの特許文献1によれば、マイナス側摺接接点をモータ出力軸に電気接続させることで、モータ駆動系が高周波ノイズのアンテナとして機能しなくなり、モータ駆動系を介して高周波ノイズが外界へ放射されるのを防止することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した各特許文献に限らず既存の技術では市場のニーズを適切に満たしているとは言えず以下に述べる課題が存在する。すなわち、特許文献1でも言及されているとおり、この種の問題を解決するためには車体と接地させて電磁的にシールドすることが一般的に行われているが、高周波ノイズのシールドとしては充分といえずなお解消し切れていない。
【0007】
他方で特許文献1のように高周波ノイズの発生源における接地点を工夫してアンテナとしての作用を発現させないことも有用ではあるが、そのために設計の自由度を犠牲にせねばならずコストアップにもつながりかねない。
【0008】
本発明は、上記した課題を一例に鑑みて為されたものであり、車両の設計自由度を確保しつつ車両を介して放出される高周波ノイズを低減可能な車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態における車両は、(1)高周波信号が用いられる車載機器と、前記車載機器に対応して車体に取り付けられ、前記車体の周囲の気流を整流するプラズマアクチュエータと、前記プラズマアクチュエータに対応して前記車体に取り付けられ、前記車載機器から発生して車両を介して放出される電磁的な高周波ノイズを検出するセンサーと、前記プラズマアクチュエータを駆動する駆動信号を生成する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記センサーにより前記高周波ノイズを検出した場合に、前記駆動信号の波形を、前記検出した前記高周波ノイズを抑制可能なものとする。
【0010】
なお、上記した(1)に記載の車両においては、(2)前記制御装置は、前記駆動信号の振動が、前記センサーにより検出した前記高周波ノイズの振動と逆位相となるように前記駆動信号を生成することが好ましい。
【0011】
また、上記した(1)又は(2)に記載の車両においては、(3)前記制御装置は、予め記憶したノイズ形態に基づいて前記センサーから受信した信号を解析することにより前記高周波ノイズを検出することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車両の設計自由度を確保しつつ車両を介して放出される高周波ノイズを低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】整流機能と高周波ノイズ抑制機能を兼備する車両を前方から見た正面図である。
【
図2】整流機能と高周波ノイズ抑制機能を兼備する車両の側面図である。
【
図3】整流機能と高周波ノイズ抑制機能を兼備する車両の後方斜視図である。
【
図4】本実施形態における車両の機能ブロック図である。
【
図5】実施形態に係るプラズマアクチュエータを用いた車両挙動の制御方法を示すフローチャートである。
【
図6】高周波ノイズを放出し得る車載機器と対応するPA及び振動センサーの関係を規定したデータテーブルを示す模式図である。
【
図7】他の例における、高周波ノイズを放出し得る車載機器と対応するPA及び振動センサーの関係を規定したデータテーブルを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本発明を実施するための好適な実施形態について説明する。なお、例えばプラズマアクチュエータの駆動機構のうち本実施形態で説明する以外の部分については、例えば米国特許9821862号明細書や特開2019-167006号公報などを含む公知のプラズマアクチュエータの機構を援用してもよい。その他、本実施形態で詳述する以外の車両の構成については、公知の車両に関する要素技術や機構を補完してもよい。
【0017】
[車両100]
まず本実施形態における車両100について、
図1~
図4を参照しながら説明する。なお本実施形態の車両100は、図示のとおり四輪自動車が好適ではあるが、例えば二輪自動車など他の公知の車両に適用してもよい。また、四輪自動車としては、例えばガソリン自動車のほか、各種の二次電池を搭載したハイブリッド車や電気自動車が適用できる。
【0018】
本実施形態の車両100は、これらの図から理解されるように、例えば横風など受けた際に乱れた車両周りの気流を整流する整流機能と、後述する車載機器から車体へと伝播する高周波ノイズを抑制するノイズリダクション機能を有しており、プラズマアクチュエータ10、センサー類20および制御装置30を少なくとも含んで構成されている。
【0019】
≪プラズマアクチュエータ10≫
本実施形態におけるプラズマアクチュエータ10は、車両100に搭載されて当該車両100を介して外界(車両の周囲)に放出される高周波ノイズを抑制するノイズリダクション機能を有している。さらに本実施形態におけるプラズマアクチュエータ10は、車両100の周囲における気流を整流する機能を有していてもよい。
【0020】
より具体的に本実施形態のプラズマアクチュエータ10は、車両100の所定部位に発生した渦流を剥離させて整流する機能と、車体を伝播する上記高周波ノイズを低減する機能を兼備することが好ましい。なお、車両において渦流が生ずる部位は、当該車両の形状などによって種々の形態が想定でき、公知の風洞実験やシミュレーションなどによってその部位は特定できる。
【0021】
かようなプラズマアクチュエータ10の具体的な構造としては、例えば上記した米国特許9821862号明細書や特開2019-167006号公報にも開示されている公知のプラズマアクチュエータであり、本実施形態でも一例として誘電体バリア放電(DBD)方式のプラズマアクチュエータを適用できる。なお、本実施形態のプラズマアクチュエータ10は、上記したDBDプラズマアクチュエータに限られず、例えばプラズマ発生領域が大きくなるように改良されたSliding Discharge(SD)方式プラズマアクチュエータなど他の公知のPAを適用してもよい。
【0022】
具体的に本実施形態のプラズマアクチュエータ10は、高周波信号が用いられる車載機器(「高周波制御器」とも称する)と対応してそれぞれ設置されている(
図6及び7も適宜参照されたい)。
より具体的な高周波制御器としては、例えば車両のパワーユニット、LiDAR、アイサイト、スマートキーシステムなどの電子機器を制御するECUや、モータ駆動用のインバータなどが例示できる。なお、車両に配備される電源供給や信号通信に用いられるハーネスも高周波ノイズの漏れ源となり得ることから、当該ハーネスも本実施形態においては「高周波制御器」に属するものとして取り扱う。
【0023】
本実施形態の車両100においては、
図1~3から理解されるとおり、プラズマアクチュエータ10として、次のとおりプラズマアクチュエータPA1~PA18がそれぞれ所定の部位に設置されている。しかしながら本例は一例であって、車体の形状や高周波制御器の設置場所に応じてプラズマアクチュエータの個数や位置は適宜調整することができる。
【0024】
(a)第1プラズマアクチュエータPA1:車両100の右前方下部(例えばフロントバンパーの右側)
(b)第2プラズマアクチュエータPA2:車両100の左前方下部(例えばフロントバンパーの左側)
(c)第3プラズマアクチュエータPA3:車両100の前方のうち前側(例えばボンネットの前側)
(d)第4プラズマアクチュエータPA4:車両100の前方のうち後ろ側(例えばボンネットの後ろ側)
(e)第5プラズマアクチュエータPA5:車両100の右側Aピラー
(f)第6プラズマアクチュエータPA6:車両100の左側Aピラー
【0025】
(g)第7プラズマアクチュエータPA7:車両100の上面前方(例えばルーフのうち前側)
(h)第8プラズマアクチュエータPA8:車両100の上面後方(例えばルーフのうち後ろ側)
(i)第9プラズマアクチュエータPA9:車両100の右側方前部(例えば右側フロントフェンダー)
(j)第10プラズマアクチュエータPA10:車両100の左側方前部(例えば左側フロントフェンダー)
(k)第11プラズマアクチュエータPA11:車両100の右側Cピラー
(l)第12プラズマアクチュエータPA12:車両100の左側Cピラー
【0026】
(m)第13プラズマアクチュエータPA13:車両100の右側方後部(例えば右側リアフェンダー)
(n)第14プラズマアクチュエータPA14:車両100の左側方後部(例えば左側リアフェンダー)
(о)第15プラズマアクチュエータPA15:車両100の右後方下部(例えばリアバンパーの右側)
(p)第16プラズマアクチュエータPA16:車両100の左後方下部(例えばリアバンパーの左側)
(q)第17プラズマアクチュエータPA17:車両100の後方中央部(例えばリアゲート)
【0027】
なお上記したプラズマアクチュエータPA1~PA18は、それぞれの設置場所で複数設置されていてもよい。また、上記したプラズマアクチュエータPA1~PA18は、車種や車格に応じてその位置を微調整してもよい。
【0028】
また、上記したプラズマアクチュエータ10(PA1~PA18)は、車体の中心に対して対となるように組み合わせることで、これら一対のプラズマアクチュエータ組を用いて車両100に生ずるローリング挙動、ピッチング挙動およびヨーイング挙動を制御してもよい。
【0029】
例えば後述する制御装置30は、上記した第1プラズマアクチュエータPA1と第2プラズマアクチュエータPA2の組を選択して、これらの出力を制御することで車両100に生ずるヨーイング挙動を制御することができる。同様に、制御装置30は、車両100のうち制御したい挙動に応じて対となるようにプラズマアクチュエータ10の組を選択できる。
【0030】
≪センサー類20≫
図4に示すとおり、本実施形態のセンサー類20は、車速センサーV、振動センサーSなどを含んで構成されている。
このうち車速センサーVは、走行中における車両100の速度を計測可能な公知のセンサーが例示できる。これにより制御装置30は、例えばこの車速センサーVから取得した車速に応じてプラズマアクチュエータ10の駆動を制御することが可能となっている。
【0031】
振動センサーSは、例えば静電容量式、渦電流式あるいは圧電素子を用いた公知の振動検出センサーが適用できる。かような振動センサーSは、車両100(車体)を伝播する高周波ノイズを検出する機能を有して構成されている。
この振動センサーS(第1振動センサーS1~第18振動センサーS18)は、それぞれ上記したプラズマアクチュエータ10(PA1~PA18)に対応して車両100に設けられる。より具体的には
図1~3に示すとおり、例えば本実施形態の第1振動センサーS1は、上記した第1プラズマアクチュエータPA1に対応して車両100に設置されている。
【0032】
また、上述したとおり、本実施形態では、車体に伝播し得る高周波ノイズを発生し得る高周波制御器に対応してプラズマアクチュエータPA1~PA18および振動センサーS1~S18がそれぞれ配設されていることが好ましい。このとき、プラズマアクチュエータPAおよび振動センサーSはそれぞれ一対一で上記した高周波制御器に対応して配置されていてもよいし、複数の1つのプラズマアクチュエータPA又は複数の振動センサーSが1つの高周波制御器に対応していてもよい。
【0033】
≪制御装置30≫
制御装置30は、前記したプラズマアクチュエータ10(PA1~PA18)を駆動して、上記した車載機器(高周波制御器)から発生して車体を伝播する高周波ノイズを抑制する機能を有している。
【0034】
この制御装置30の具体例としては、車両100に搭載された公知のリチウムイオン二次電池やニッケル水素電池などのバッテリー(不図示)から電力の供給を受けて駆動する公知の集積回路(制御用IC)が例示できる。また、本実施形態の制御装置30は、後述する整流方法など実行可能な制御プログラムが格納された不図示のメモリ等を備えていてもよい。
【0035】
かような制御装置30は、上記したプラズマアクチュエータ10(プラズマアクチュエータPA1~PA18)をそれぞれ駆動する高周波信号を生成する機能を有している。より具体的に、本実施形態の制御装置30は、例えば上記したバッテリーの直流電圧を交流電圧に変換する公知のインバータ素子を含んで構成されている。
【0036】
なお上記したバッテリーは、プラズマアクチュエータ10やセンサー類20に必要な電力を供給する機能を有している。本実施形態のバッテリーは、プラズマアクチュエータの駆動電圧まで昇圧可能なものであれば例えば鉛蓄電池やニッケル水素電池など他の公知の電池を適用してもよい。
【0037】
また、本実施形態の制御装置30には、前記したバッテリーからの電圧をプラズマアクチュエータが駆動可能な電圧まで昇圧する昇圧回路を含んでいることが好ましい。より具体的に本実施形態の昇圧回路は、24Vの電圧を数十kV(一例として9kV~20kV)まで昇圧する公知のトランスが例示できる。なお、本実施形態のプラズマアクチュエータ10は数十キロV程度の電圧で駆動が可能な公知のプラズマアクチュエータであるが、昇圧回路による昇圧割合は当該プラズマアクチュエータの駆動電圧の値に応じて適宜変更することができる。
【0038】
より具体的には、
図4に示すとおり、本実施形態の制御装置30は、振動検出部31、演算部32、PA駆動制御部33および提示部34を含んで構成されている。
このうち、振動検出部31は、上記した振動センサーSから車両100の各設置部位における微振動(高周波ノイズ)を受信する機能を有している。
【0039】
演算部32は、後述するとおり、例えば振動センサーSから受信した高周波ノイズに基づいて、当該高周波ノイズを抑制可能な駆動信号を演算する機能を有している。より具体的には、演算部32は、前記した高周波ノイズと逆位相の振動を車体に発生させるようにプラズマアクチュエータ10の駆動信号を生成するように構成されていることが望ましい。ただし上記した高周波ノイズの受信から、逆位相の駆動信号を生成するまでの時間を考慮して、演算部32は位相をシフトさせた駆動信号を生成するようにしてもよい。
【0040】
なお本実施形態では、演算部32は、上記した高周波ノイズと逆位相の振動を発生させる駆動信号を生成したが、この形態に限られず車体を伝播する高周波ノイズを低減可能であれば必ずしも完全な逆位相とせずともよい。
【0041】
PA駆動制御部33は、上記した演算部32の演算結果に基づいて、昇圧回路などを介してプラズマアクチュエータ10(PA1~PA18)の駆動を制御する機能を有している。なおプラズマアクチュエータの駆動制御については、本実施形態のほか、公知のプラズマアクチュエータの制御機構を援用してもよい。
【0042】
提示部34は、後述する提示装置DSを介して、車両100に搭載された各種装備の設定画面を提示するほか、上記したプラズマアクチュエータ10の駆動状況や挙動制御の状況などを乗員に提示する機能を有している。
【0043】
外部通信装置CSは、例えば上記スマートフォンを利用したパケット通信や、コネクテッドのサービスに代表される次世代の自動車無線通信技術を利用して外部との各種の情報通信を行うことができる公知の通信装置が例示できる。
【0044】
保存装置MRは、例えば公知のハードディスクドライブや不揮発性メモリなどの記録装置/記憶装置が例示でき、後述するデータテーブルを含む各種の情報を記録することが可能な手段である。
【0045】
ナビゲーション装置NSは、GPS機能を備えた公知のナビゲーションシステムが例示でき、上記した制御装置30と協働して車両100の位置情報を検出可能となっている。また、ナビゲーション装置NSには不図示の地図情報が格納されており、制御装置30は上記地図情報を参照して自車の絶対位置などを検出することができる。
【0046】
提示装置DSは、本実施形態では車載される公知のスピーカSPとディスプレイDPを含んで構成されている。このうちディスプレイDPは、上記したナビゲーション装置NSのモニターと兼用されていてもよい。また、本実施形態の提示装置DSは、乗員の有するスマートフォンなどの携帯機器と近距離無線通信が可能なように構成されていてもよい。
【0047】
[プラズマアクチュエータを用いた車両の高周波ノイズリダクション方法]
次に
図5~7もさらに参照しつつ、本実施形態における制御装置30によって実行されるプラズマアクチュエータを用いた車両の高周波ノイズリダクション方法について説明する。
【0048】
図5に示すとおり、ステップ1では、車両100の振動センサーSによって車両100における車体(ボディー)から高周波ノイズが検出されたか否かが判定される。具体的には車両100に設置された複数の振動センサーSの少なくとも1つから、高周波ノイズと特定できる波形が検出されたか否かが判定される。
【0049】
このとき走行中の車両100には、例えばタイヤを介したロードノイズなど様々な雑音がボディーに伝播され得る。一方で車両100に搭載される高周波制御器は、その種類やノイズ形態(レベルや位相など)も予めシミュレーションや実験などで特定しておくことが可能である。よって、制御装置30は、例えば保存装置MRや外部通信装置CSを介して上記したノイズ形態を保持しておき、ステップ1ではこの保持したノイズ形態に基づいて、振動センサーSからの得た信号を解析することで高周波ノイズを検出してもよい。
【0050】
また、上記に代えて、制御装置30は、例えば車両100に搭載された高周波制御器が駆動されているかを検出し、当該高周波制御器が駆動しているときに車両100における車体中を高周波ノイズが伝播していると判定する制御を行ってもよい。
【0051】
ステップ1で車体から高周波ノイズが検出されたとき(ステップ1でYes)、続くステップ2では、制御装置30によって車両100内における高周波ノイズの発生源(ノイズ起源)が特定される。
上述したとおり、車両100には、車両100の車体へ伝播可能な高周波ノイズを発生し得る高周波制御器が複数搭載されている。また、これに合わせて本実施形態では、複数の高周波制御器それぞれに対応して振動センサーSとプラズマアクチュエータPAが配設されている。
【0052】
したがって、このステップ2では、上記複数の高周波制御器のうちいずれが要因で高周波ノイズが検出されたかを特定する。これにより、後述のとおり車体を伝播する高周波ノイズの要因となった高周波制御器に近接したプラズマアクチュエータPAを駆動することで、効率的にノイズリダクションを実行することが可能となる。
【0053】
なお上記のステップ2は必ずしも必要ではなく適宜省略してもよい。すなわち、車外に対して悪影響のないレベルに高周波ノイズを抑制できれば、必ずしもノイズ発生の要因となった高周波制御器に隣接するプラズマアクチュエータPAを駆動する必要はない。この場合には、車両100に搭載された複数のプラズマアクチュエータPAのうち上記高周波ノイズを抑制可能な少なくとも1つのプラズマアクチュエータPAを駆動してもよい。
【0054】
必要に応じてステップ2で上記ノイズ起源を特定した後は、次いでステップ3では、制御装置30は、上記車体を伝播する高周波ノイズの強さ(振幅)が規定値以上か否かを判定する。上述のとおり、車両100中で発生した高周波ノイズが車外の電子機器に対して悪影響を及ぼさなければ必ずしも当該高周波ノイズを抑制する必要はなく、この状況ではプラズマアクチュエータPAを駆動せずステップ1へ戻る。
上記した「規定値」としては、例えば車両100の周囲数m以内に対象物を設置して実験するなどして予め設定することができる。
【0055】
なお本実施形態では車外の電子機器に対して悪影響を及ぼすか否かを規定値の基準としたが、この形態に限られず車両100内の電子機器に対して悪影響を及ぼすか否かを基準として上記の規定値を設定してもよい。
【0056】
ステップ3で上記高周波ノイズが規定値以上となったとき、すなわち車体を伝播する高周波ノイズを抑制する必要が生じたときは、続くステップ4で当該高周波ノイズに対応してプラズマアクチュエータPAが駆動される。より具体的に制御装置30は、当該高周波ノイズの要因となった高周波制御器(上記したECUやハーネスなど)と対応したプラズマアクチュエータPAを駆動する。
【0057】
図6に、一例として、高周波制御器(上記したECUやハーネスなど)と対応したプラズマアクチュエータPAのデータテーブル例を示す。車両100には、例えばカメラユニットやナビゲーションユニットなど電気的に一纏まりとなった電気ユニットが多数配備される。これら電気ユニットはそれぞれ制御基板(ECU)が搭載されることもあり、それぞれが高周波ノイズの発生源となり得る。
【0058】
したがって本実施形態では、例えば車両100のパワーユニットを制御するECU-10に対してプラズマアクチュエータPA10が近接して配備し、高周波ノイズを発生し得る車載機器(高周波制御器)とプラズマアクチュエータPAとを対応させてデータテーブルとして保存装置MRや車外のデータベースなどで保持する構成としている。
【0059】
このとき、制御装置30は、前記した振動センサーSを用いて既に測定した上記高周波ノイズのパターンに基づいて逆位相の振動をプラズマアクチュエータPAが起こす制御を行ってもよい。より具体的に制御装置30は、上記した逆位相の高周波信号の波形を生成し、この高周波信号に基づいて対応するプラズマアクチュエータPAを駆動させる。
これにより、プラズマアクチュエータPAを駆動することで、上記駆動したプラズマアクチュエータPAの付近で発生した渦流を剥離して車両100における周囲の気流を整流しつつ高周波ノイズを抑制することが可能となっている。
【0060】
制御装置30はこの振動センサーSを用いて測定した高周波ノイズのパターンに基づいて逆位相の振動を生成するように構成されていることが好ましい。
【0061】
なお、上述したとおり、このとき制御装置30は、ノイズの発生から上記逆位相の信号生成までのタイムラグを考慮し、上記逆位相の高周波信号の位相をタイムラグの分だけ予め進めた(すなわち位相の進みを考慮した)制御信号を生成しても良い。
【0062】
また、制御装置30は、車体を伝播する高周波ノイズの振幅(強度)に応じてプラズマアクチュエータPAの出力を調整してもよい。より具体的に制御装置30は、上記した整流機能に必要なプラズマアクチュエータPAの振幅を超えて、高周波ノイズを抑制可能な振幅なるように出力調整を行ってもよい。さらに制御装置30は、上記した整流機能が発揮できなくなるレベルの振幅でプラズマアクチュエータPAの出力を調整してもよい。
【0063】
なお、本実施形態では、車両100における車体を伝播する高周波ノイズを検出してリアルタイムでノイズリダクション信号(例えば上記した逆位相の高周波信号)を生成していたが、この形態に限られない。
すなわち上記に代えて、本実施形態の車両100は、上記した車載機器に応じて発生する高周波ノイズのパターンを予め保持する記憶手段をさらに含み、制御装置30は予め計測された車載機器に応じて発生する高周波ノイズのパターンに基づいて逆位相の振動を生成するように構成されていてもよい。
【0064】
図7に、車載機器に応じて発生する高周波ノイズのパターンと、これを抑制可能なプラズマアクチュエータPAの駆動信号との対応を規定したデータテーブルの一例を示す。上述のとおり、高周波ノイズを発生し得る車載機器は既知であることから、実験やシミュレーションなどで当該高周波ノイズを抑制可能な信号波形を予め生成して保持することができる。このとき、上記した車載機器と対応するプラズマアクチュエータPAの設置位置も考慮して信号波形を生成することが好ましい。
【0065】
そして同図から理解されるとおり、例えばLiDARシステムを制御するECU-7で発生する高周波ノイズは「Z」であり、この「Z」と逆位相の信号波形「-Z」をプラズマアクチュエータPAの駆動信号として保持しておく。そして当該ECU-7からの高周波ノイズが検出されたと判定されたときに、制御装置30は、このデータテーブルを参照して「-Z」の波形を有する駆動信号を生成してプラズマアクチュエータPA7を駆動することができる。これにより、上記したリアルタイムに比してさらにタイムラグを短縮することが可能となっている。
【0066】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、これら実施形態や変形例に対して更なる修正を試みることは明らかであり、これらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0067】
一例として、本実施形態では、
図1~3に示すとおり、車両100では高周波ノイズを発生し得る車載機器にそれぞれ1つのプラズマアクチュエータが設置されていた。しかしながら本発明は、この形態に限られず、各設置場所に少なくとも1つのプラズマアクチュエータが設置されていてもよい。
【0068】
換言すれば、車両100において複数のプラズマアクチュエータが上記車載機器の設置位置に対応して取り付けられ、制御装置30は車体における高周波ノイズの発生箇所に応じて複数のプラズマアクチュエータのうち発生箇所に近い側の1又は複数のプラズマアクチュエータを選択するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 プラズマアクチュエータ
20 センサー類
30 制御装置
100 車両