(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】コンクリート函体の連結構造
(51)【国際特許分類】
E21D 11/04 20060101AFI20240730BHJP
E21D 13/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
E21D11/04 A
E21D13/00
(21)【出願番号】P 2020163699
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-02-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】天野 景一朗
(72)【発明者】
【氏名】勝川 藤太
(72)【発明者】
【氏名】小泉 恵介
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-145600(JP,U)
【文献】特開平09-235744(JP,A)
【文献】特開平09-292072(JP,A)
【文献】特開平09-004038(JP,A)
【文献】特開平08-333795(JP,A)
【文献】特開2001-336685(JP,A)
【文献】特開2004-270338(JP,A)
【文献】特開2004-076889(JP,A)
【文献】特開2013-227845(JP,A)
【文献】特開2002-188776(JP,A)
【文献】特開2004-255397(JP,A)
【文献】米国特許第04824289(US,A)
【文献】実開平03-111685(JP,U)
【文献】特開2008-075250(JP,A)
【文献】特開2012-172419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/04
E21D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1中空部を有する第1コンクリート函体と、第2中空部を有する第2コンクリート函体と、前記第1コンクリート函体と前記第2コンクリート函体とを連結する連結部と、を備えるコンクリート函体の連結構造であって、
前記第1コンクリート函体と前記第2コンクリート函体とは、前記第1中空部と前記第2中空部とが非同軸的となるように配置され、
前記連結部は、
前記第1コンクリート函体の前記第1中空部と前記第2コンクリート函体の前記第2中空部とを連通する連通孔を有する金属製の本体部と、
前記本体部の一端と前記第1コンクリート函体とを相対移動可能に連結する可撓性継手と、を備え、
前記本体部は、前記第1コンクリート函体の前記第1中空部と非同軸的であって前記第2コンクリート函体の前記第2中空部と同軸的に設けられる筒部を有し、
前記本体部の一端は、目地材を介して前記第1コンクリート函体と密着し、
前記本体部の他端は、前記第2コンクリート函体に埋め込まれる定着部によって前記第2コンクリート函体に対して相対移動不能に連結される、
コンクリート函体の連結構造。
【請求項2】
前記可撓性継手は、前記第1コンクリート函体の前記第1中空部の周方向全体にわたって設けられる、
請求項1に記載のコンクリート函体の連結構造。
【請求項3】
第3中空部を有し前記連結部によって前記第1コンクリート函体に連結される第3コンクリート函体をさらに備え、
前記連結部の前記本体部は、前記連通孔から分岐して設けられ前記第3コンクリート函体の前記第3中空部に連結される分岐連通孔を有する、
請求項1又は2に記載のコンクリート函体の連結構造。
【請求項4】
前記可撓性継手は、
前記第1コンクリート函体に固定される取付枠と、
前記連結部の前記本体部と前記取付枠とにわたって設けられ、前記本体部と前記第1コンクリート函体との相対移動を許容する弾性部材と、を有する、
請求項1から3のいずれか一つに記載のコンクリート函体の連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート函体の連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2個のトンネルブロックの対向端面の各々に固定される基板と、該基板に設けられる筒状ケーシングと、ケーシング内部に重合して配置される板ばね要素と、ケーシング開放端に設けられケーシングに対して摺動自在かつ密閉可能な蓋と、により相対向する2個の板ばね構成部材を形成し、両板ばね構成部材の対向端面に所定の隙間を形成して可撓継手構造を構成したコンクリート函体の連結構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された連結構造は、2つのコンクリート函体(トンネルブロック)の相対向する端面を、板ばね構成部材を有する可撓性継手構造によって連結することで、端面に垂直な方向へのコンクリート函体の相対移動を許容する。このような連結構造は、2つのコンクリート函体のトンネル軸が同軸に配置されて端面が相対向するような場合には有用であるが、例えば曲がり部などトンネル軸が非同軸に配置される2つのコンクリート函体の連結に適用することは困難である。
【0005】
本発明は、トンネル軸が非同軸に配置されたコンクリート函体同士を相対移動可能に連結する連結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1中空部を有する第1コンクリート函体と、第2中空部を有する第2コンクリート函体と、第1コンクリート函体と第2コンクリート函体とを連結する連結部と、を備えるコンクリート函体の連結構造であって、第1コンクリート函体と第2コンクリート函体とは、第1中空部と第2中空部とが非同軸的となるように配置され、連結部は、第1コンクリート函体の第1中空部と第2コンクリート函体の第2中空部とを連通する連通孔を有する金属製の本体部と、本体部の一端と第1コンクリート函体とを相対移動可能に連結する可撓性継手と、本体部の他端に設けられる定着部と、を備え、本体部は、第1コンクリート函体の第1中空部と非同軸的であって第2コンクリート函体の第2中空部と同軸的に設けられる筒部を有し、本体部の一端は、目地材を介して第1コンクリート函体と密着し、本体部の他端は、第2コンクリート函体に埋め込まれる定着部によって第2コンクリート函体に対して相対移動不能に連結される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、トンネル軸が非同軸に配置されたコンクリート函体同士を相対移動可能に連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る連結構造の断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る連結構造の部分拡大断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る連結構造の第1コンクリート函体の正面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る連結構造の第1変形例を示す部分拡大断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る連結構造の第2変形例を示す断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る連結構造の第2変形例における第1コンクリート函体を示す正面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る連結構造の第2変形例における第2コンクリート函体を示す正面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る連結構造の第3変形例を示す断面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る連結構造の第4変形例を示す断面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る連結構造の第5変形例を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係るコンクリート函体の連結構造100について、図面を参照して説明する。連結構造100は、例えば、地中に埋設されるトンネル構造体の一部として構成される。なお、これに限定されず、連結構造100は、水中に埋設されるトンネル構造体や、地上に露出するトンネル構造体に適用されてもよい。
【0010】
図1及び
図2に示すように、連結構造100は、第1中空部11を有する第1コンクリート函体10と第2中空部21を有する第2コンクリート函体20とが連結部30によって連結されたものである。
【0011】
第1コンクリート函体10及び第2コンクリート函体20は、それぞれ略直方体のボックス形状に予め成型(プレキャスト)される、いわゆるボックスカルバートである。図示は省略するが、第1コンクリート函体10及び第2コンクリート函体20の壁内には、それぞれ補強用の鉄筋が配置されている。
【0012】
第1コンクリート函体10には、
図1から
図3に示すように、矩形断面を有する第1中空部11が長手方向に沿って延びて形成される。
図1に示すように、第1中空部11は、第1コンクリート函体10の両端面10a,10bに開口する。第1コンクリート函体10の両端面10a,10bは、それぞれ第1コンクリート函体10の第1中空部11の中心軸O1(トンネル軸)に垂直な平坦面として形成される。
【0013】
同様に、第2コンクリート函体20には、矩形断面を有する第2中空部21が長手方向に沿って延びて形成される。第2中空部21は、第2コンクリート函体20の両端面20a,20bに開口する。第2コンクリート函体20の両端面は、それぞれ第2コンクリート函体20の第2中空部21の中心軸O2(トンネル軸)に垂直な平坦面として形成される。
【0014】
本実施形態では、後述する第1コンクリート函体10の切り欠き12(
図2参照)が形成される部分を除いて、第1中空部11の中心軸O1に垂直な第1コンクリート函体10の断面形状と第2中空部21の中心軸O2に垂直な第2コンクリート函体20の断面形状とが互いに同一に形成される。つまり、図示は省略するが、第1コンクリート函体10の第1中空部11の断面形状と第2コンクリート函体20の第2中空部21の断面形状とは、同一である。なお、第1中空部11及び第2中空部21の断面形状は、矩形に限定されるものではなく、円形やその他の多角形形状など、任意の形状とすることができる。
【0015】
図1及び
図2に示すように、第1コンクリート函体10と第2コンクリート函体20とは、第1中空部11の中心軸O1と第2中空部21の中心軸O2とが非同軸となるように配置される。具体的には、本実施形態では、第1コンクリート函体10の第1中空部11の中心軸O1と第2コンクリート函体20の第2中空部21の中心軸O2とは交差する。なお、第1中空部11の中心軸O1と第2中空部21の中心軸O2とが非同軸であるとは、両者が一致することを除く意味であり、両者が交差、平行、及びねじれの位置となることを含むものである。
【0016】
連結部30は、第1コンクリート函体10と第2コンクリート函体20の相対移動を許容するように、第1コンクリート函体10の一端面10aと第2コンクリート函体20の一端面20aとを連結する。連結部30は、鋼製(金属製)の本体部31と、本体部31の一端に設けられる可撓性継手40と、本体部31の他端に設けられる定着部60と、を有する。
【0017】
本体部31は、その一端に設けられる可撓性継手40によって第1コンクリート函体10の端面10aに連結される。また、本体部31は、その他端に設けられる定着部60によって第2コンクリート函体20の端面20aに連結される。
【0018】
本体部31は、第1コンクリート函体10の第1中空部11と第2コンクリート函体20の第2中空部21とを連通する連通孔31aを有する略四角筒形状である。連通孔31aは、第1コンクリート函体10の第1中空部11及び第2コンクリート函体20の第2中空部21に対応した矩形の断面形状に形成される。連通孔31aは、本体部31の両端に開口するように形成される。
【0019】
本体部31は、例えば、連通孔31aの周方向に分割された複数のパーツを溶接等の方法で周方向につなぎ合わせることで形成される。複数のパーツは、例えば、板材のプレス成型により形成される。また、本体部31は、周方向に分割したパーツをつなぎ合わせて構成するのに加えて、又は、これに代えて、連通孔31aの軸方向に分割した複数のパーツをつなぎ合わせて構成してもよい。なお、本体部31は、単一のパーツから構成されるものでもよい。
【0020】
本体部31は、四角筒形状に形成される筒部32と、筒部32の一端から径方向の外側に延びて設けられる環板状のフランジ部33と、フランジ部33からフランジ部33の軸方向に突出する筒状のボス部34と、ボス部34の一端から径方向の外側に延びて第1コンクリート函体10の端面10aに対向する環板状の第1対向部35と、筒部32の他端の外周から径方向の外側に延びて第2コンクリート函体20の端面20aに対向する環板状の第2対向部36と、を有する。
【0021】
第1対向部35は、外周が第1コンクリート函体10の外周と略一致するように形成される。第1コンクリート函体10の端面10aと第1対向部35との間には、伸縮性を有する目地材70(例えば、ゴム製)が設けられる。第1対向部35は、目地材70を介して第1コンクリート函体10の端面10aに面対向し密着している。目地材70を設けることで、第1コンクリート函体10と連結部30の本体部31とが相対移動した際に両者の間に隙間が生じることや第1コンクリート函体10及び第2コンクリート函体20同士の衝突が防止される。
【0022】
可撓性継手40は、
図2に示すように、第1コンクリート函体10の端部に固定される取付枠41と、本体部31と取付枠41とを相対移動可能に連結する伸縮ゴム50(弾性部材)と、を有する。取付枠41は、本体部31と同様の材質(鋼材)により形成される。
【0023】
第1コンクリート函体10の一端部の内周には、取付枠41を収容する環状の切り欠き12が形成される。取付枠41は、中央に貫通孔42aを有し、片側断面がL字形状に形成されるリング状の部材である。具体的には、取付枠41は、第1中空部11の中心軸O1に略垂直な板状に形成され貫通孔42aが形成される底壁部42と、底壁部42の外周縁から底壁部42の垂直方向に延びる筒状の側壁部43と、を有する。底壁部42の内周(貫通孔42aの内周)は、第1コンクリート函体10の第1中空部11の内周と略一致する。
【0024】
側壁部43の外周には、取付枠41を第1コンクリート函体10に取り付けるための定着用の鉄筋45が設けられる。詳細な図示は省略するが、鉄筋45は、第1コンクリート函体10の第1中空部11の周方向全体にわたって所定の間隔を空けて取付枠41の側壁部43に複数設けられる。鉄筋45は、屈曲した形状に形成されており、第1コンクリート函体10の切り欠き12から壁内に埋め込まれることで、第1コンクリート函体10からの取付枠41の脱落を防止する。
【0025】
伸縮ゴム50は、環状に形成され、第1コンクリート函体10の第1中空部11の外周に設けられる。伸縮ゴム50の一端は、固定具55aを通じて本体部31のボス部34の内周に取り付けられ、他端は固定具55bを通じて取付枠41の側壁部43の内周に取り付けられる。このように伸縮ゴム50は、本体部31と取付枠41とにわたって設けられる。詳細な図示は省略するが、伸縮ゴム50を本体部31に取り付ける固定具55a及び取付枠41に取り付ける固定具55bは、それぞれ所定の間隔を空けて周方向の全体にわたって複数設けられている。固定具55a,55bは、それぞれボルト及びナットで構成される。固定具55bでは、ボルトが鉄筋45と共にアンカーボルトを構成している。
【0026】
伸縮ゴム50は、本体部31に取り付けられる一端と取付枠41に取り付けられる他端との間が径方向の内側に向けて(第1中空部11の中心軸O1に向けて)凸となるように撓んで取り付けられる。これにより、本体部31と第1コンクリート函体10とは、伸縮ゴム50の弾性及び撓みによって、第1中空部11の軸方向(図中左右方向)と径方向(図中上下方向)とに相対移動が許容される。また、伸縮ゴム50によって第1コンクリート函体10と本体部31との間が封止される。
【0027】
本体部31の他端の一部は、第2コンクリート函体20の第2中空部21に挿入される。本体部31の他端と第2対向部36とによって形成される凹状の角部に第2コンクリート函体20の端部の内周側の角部が突き当てられる。本体部31の内径は、第2コンクリート函体20の第2中空部21の内径と略一致する。本体部31は、その内周面と第2中空部21の内周面とが段差なく面一となるように第2中空部21に挿入される。また、第2対向部36は、第2コンクリート函体20の端面20aとの間で段差が生じないように端面20aに埋没するように設けられる。
【0028】
定着部60は、定着用の複数の鉄筋61を有する。複数の鉄筋61は、連通孔31aの周方向全体にわたって所定の間隔を空けて、本体部31の他端と第2対向部36との間の凹状の角部に設けられる。鉄筋61は、本体部31の定着用の鉄筋45と同様、折り曲げられて屈曲した形状に形成される。鉄筋61が第2コンクリート函体20に埋め込まれることで、第2コンクリート函体20からの本体部31の脱落が防止される。このようにして、連結部30は、定着部60によって第2コンクリート函体20に取り付けられる。
【0029】
以上のように、第1コンクリート函体10と第2コンクリート函体20とは、連結部30によって互いに連結される。連結部30は、可撓性継手40によって第1コンクリート函体10とは相対移動可能に連結され、定着部60によって第2コンクリート函体20とは相対移動不能に連結される。よって、第1コンクリート函体10は、連結部30の可撓性継手40を介して第2コンクリート函体20と相対移動可能に連結される。
【0030】
このように可撓性継手40を備える連結部30を用いることで、非同軸に配置される第1コンクリート函体10と第2コンクリート函体20とを相対移動可能に連結することができる。また、第1コンクリート函体10と第2コンクリート函体20との変位を可撓性継手40によって吸収することができるため、連結構造100の耐震性を向上させることができる。
【0031】
なお、連結構造100が地中に埋設される場合には、連結部30の外周であって第1コンクリート函体10と第2コンクリート函体20との間の隙間には、土砂やモルタル等を充填してもよい。この場合には、本体部31の筒部32に形成される孔を通じて筒部32の内側から筒部32(連結部30)の外周の隙間に土砂等を充填し、充填が完了したらその孔を塞ぐようにすればよい。
【0032】
ここで、本発明の理解を容易にするために、
図11及び
図12を参照して、本発明の比較例について説明する。
【0033】
非同軸に配置される第1コンクリート函体10と第2コンクリート函体20とを連結するには、
図11に示す第1比較例のように、曲折した形状を有するコンクリートブロック(以下、「連結ブロック800」と称する。)を用いることが考えられる。連結ブロック800は、連通孔801aを有する筒状の第1ブロック801と連通孔802aを有する筒状の第2ブロック802とが接続されて構成される。第1ブロック801と第2ブロック802とは、第1コンクリート函体10と第2コンクリート函体20との位置関係に応じた形状に形成される。具体的には、第1比較例では、第1ブロック801の連通孔の801aの中心軸O3と第2ブロック802の連通孔802aの中心軸O4とは交差しており、交差角度が、第1コンクリート函体10の第1中空部11の中心軸O1と第2コンクリート函体20の第2中空部21の中心軸2との交差角度に対応している。
【0034】
連結ブロック800では、耐久性を向上させるために、壁内に複数の鉄筋803が設けられる。
図11では、鉄筋803を破線で模式的に図示している。
図11に示すように、曲折した形状の連結ブロック800では、第1ブロック801と第2ブロック802との境界部分、特に曲げの内側となる部分(
図11中A部)において、鉄筋803の重なりが生じ鉄筋803が過密になる。このため、連結ブロック800では、壁内への鉄筋803の配置や組み立てが困難になる。また、このような連結ブロック800は、プレキャストコンクリートとして形成されるため、連結構造の大型化や重量化を招く。
【0035】
また、
図12に示す第2比較例では、第1コンクリート函体10と第2コンクリート函体20とが地盤Gに埋設され、第1中空部11の中心軸O1と第2中空部21の中心軸O2とが平行に設けられる。このような第2比較例では、立坑Sによって第1中空部11と第2中空部21とが連通する。第2比較例では、曲折する連結ブロック800を用いないため、第1変形例のように、鉄筋の重なりによる問題は生じない。しかしながら、第2変形例では、地上から立坑Sを掘削する作業が必要となるため、作業負担が大きくなる。
【0036】
これに対して、本実施形態の連結構造100では、連結部30の本体部31は、鋼材によって形成されるため、第1コンクリート函体10と第2コンクリート函体20との相対的な位置関係に応じた形状にすることが容易である。このため、連結構造100では、第1比較例のように連結ブロック800によって第1コンクリート函体10と第2コンクリート函体20とを連結する場合と比較して、鉄筋803の重なりや大型化という問題が生じにくく、容易に第1コンクリート函体10と第2コンクリート函体20とを連結することができる。また、連結構造100では、第2変形例のように、立坑Sを掘削する必要もないため、作業負担を軽減することができる。
【0037】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0038】
連結構造100によれば、第1コンクリート函体10と第2コンクリート函体20との相対的な位置関係に応じた形状に本体部31を構成することで、非同軸的に配置される第1コンクリート函体10と第2コンクリート函体20とを連結部30よって容易に連結することができる。また、連結部30の本体部31と第1コンクリート函体10とが可撓性継手40により連結されるため、連結部30を介して第1コンクリート函体10と第2コンクリート函体20との相対移動が許容される。したがって、非同軸に配置されたコンクリート函体同士を相対移動可能に連結することができる。
【0039】
また、連結部30は、鋼製の本体部31を備えるため、第1比較例のような曲折した形状を有する連結ブロック800を用いる場合と比較して、連結構造100の構成を簡素化でき、軽量化を図ることができる。これにより、工期の短縮とコスト低減を図ることができる。また、鋼製の本体部31は、コンクリートブロックと比較して、様々な形状へと加工しやすく、これにより、連結構造100の設計の自由度が向上する。また、連結構造100によれば、立坑Sを掘削する必要もないため、作業負担を軽減することができる。
【0040】
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の各実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。また、上記実施形態と同様の構成については同様の符号を付して説明を適宜省略する。
【0041】
(第1変形例)
図4を参照して、第1変形例について説明する。上記実施形態では、連結部30は、可撓性継手40を介して相対移動可能に第1コンクリート函体10に連結される一方、定着部60を介して相対移動不能に第2コンクリート函体20に連結される。
【0042】
これに対し、第1変形例では、連結部130は、上記実施形態と同様に可撓性継手40を介して第1コンクリート函体10に相対移動可能に連結されると共に、第2可撓性継手140を介して第2コンクリート函体20に相対移動可能に連結される。第2可撓性継手140は、可撓性継手40と同様の構成を有しているため、詳細な説明は省略する。
【0043】
第2コンクリート函体20には、第1コンクリート函体10と同様に、第2可撓性継手140の取付枠41を収容する切り欠き22が形成される。また、本体部31の筒部32の他端側には、上記実施形態のフランジ部33及びボス部34と同様に、フランジ部133及びボス部134が設けられる。また、第2対向部135は、上記実施形態の第1対向部35と同様に、第2コンクリート函体20の外周と略一致するように形成され、第2対向部135と第2コンクリート函体20の端面20aとの間には、目地材70が設けられる。
【0044】
このような第1変形例によれば、可撓性継手40及び第2可撓性継手140の両方によって、第1コンクリート函体10と第2コンクリート函体20との相対移動を許容できるため、上記実施形態よりも許容できる移動量が向上し、連結構造100の耐震性をより一層向上させることができる。
【0045】
(第2変形例)
図5から
図7を参照して、第2変形例について説明する。上記実施形態では、第1コンクリート函体10の第1中空部11と第2コンクリート函体20の第2中空部21とは、同一の断面形状に形成される。本体部31の連通孔31aも、第1コンクリート函体10及び第2コンクリート函体20の第1中空部11及び第2中空部21に対応した断面形状に形成される。
【0046】
これに対し、第2変形例の連結部230では、
図5から
図7に示すように、第1コンクリート函体210の第1中空部211と第2コンクリート函体220の第2中空部221とは、異なる断面形状に形成される。より厳密には、第1コンクリート函体210の端面10aに開口する部分の第1中空部211の形状と、第2コンクリート函体220の端面20aに開口する部分の第2中空部221の形状とが異なる。具体的には、
図6及び
図7に示すように、第1中空部211の断面形状は、上記実施形態と同様に矩形であって第2中空部221の断面形状に相似しており、第1中空部211の内径(最大内側寸法)は第2中空部221の内径よりも大きく形成される。つまり、第1中空部211の断面の長辺及び短辺の長さが、それぞれ第2中空部221の断面の長辺及び短辺の長さと異なる。
【0047】
本体部231の連通孔231aは、第1コンクリート函体210の第1中空部211の断面形状に対応した形状で本体部231の一端に開口し、第2コンクリート函体220の第2中空部221の断面形状に対応した形状で本体部231の他端部に開口する。よって、第1変形例では、
図5に示すように、連通孔231a(本体部231の内周)は、第1コンクリート函体210に連結される一端から第2コンクリート函体220に連結される他端に向けて形状が変化するように形成される。さらに言えば、連通孔231aは、一端から他端に向けて内径が連続的に変化するテーパ形状に形成されている。なお、筒部32の外径も、内径に対応してテーパ形状に形成されており、筒部32の厚みは均一に形成されている。
【0048】
このような第2変形例では、連通孔231aが第1中空部211及び第2中空部221の断面形状に対応して本体部231の両端にそれぞれ開口しているため、断面形状が異なる第1中空部211と第2中空部221とを滑らかに接続することができる。よって、例えば、第1中空部211及び第2中空部221を流体が流れる場合であっても、圧力損失の発生を抑制し、流体の流れを阻害せずに第1コンクリート函体210と第2コンクリート函体220とを連結することができる。
【0049】
(第3変形例)
図8を参照して、第3変形例について説明する。上記実施形態では、連結構造100は、第1コンクリート函体10と第2コンクリート函体20とが連結部30によって連結されるものである。
【0050】
これに対し、
図8に示す第3変形例では、連結構造100は、第1コンクリート函体10、第2コンクリート函体20、及び第3コンクリート函体320が単一の連結部330によって連結される。
【0051】
第3変形例における第1コンクリート函体10及び第2コンクリート函体20は、上記実施形態と同様である。第3コンクリート函体320は、第1コンクリート函体10及び第2コンクリート函体20と同様に、略直方体のボックスカルバートであり、矩形断面を有する第3中空部321を有している。第1コンクリート函体10の第1中空部11の中心軸O1、第2コンクリート函体20の第2中空部21の中心軸O2、及び第3コンクリート函体320の第3中空部321の中心軸O3は、互いに非同軸に配置される。
【0052】
連結部330の本体部331は、第1コンクリート函体10に連結される第1本体部331aと、第1本体部331aから分岐して設けられ第2コンクリート函体20に連結される第2本体部331bと、第1本体部331aから分岐して設けられ第3コンクリート函体320に連結される第3本体部331cと、を有する。
【0053】
第1本体部331aには、第1コンクリート函体10の第1中空部11に連通する第1連通孔332aが形成される。第2本体部331bには、第1連通孔332aから分岐して形成され第2コンクリート函体20の第2中空部21に連通する第2連通孔332bが形成される。第3本体部331cには、第1連通孔332aから分岐して形成され第3コンクリート函体320の第3中空部321に連通する第3連通孔332cが形成される。このように、第1連通孔332a、第2連通孔332b、及び第3連通孔332cは、互いに連通している。第1連通孔332a及び第2連通孔332bによって「連通孔」が構成され、第3連通孔332cによって「分岐連通孔」が構成される。詳細な説明及び図示は省略するが、第1本体部331a、第2本体部331b、及び第3本体部331cは、それぞれ上記実施形態における筒部32、フランジ部33、ボス部34、及び第1対向部35と同様の構成を有している。
【0054】
連結構造100は、第1本体部331aと第1コンクリート函体10とを相対移動可能に連結する第1可撓性継手(可撓性継手)40と、第2本体部331bと第2コンクリート函体20とを相対移動可能に連結する第2可撓性継手140と、第3本体部331cと第3コンクリート函体320とを相対移動可能に連結する第3可撓性継手340と、を備える。これにより、第1コンクリート函体10、第2コンクリート函体20、及び第3コンクリート函体320は、連結部330によって互いに相対移動可能に連結される。なお、第3可撓性継手340は、第1可撓性継手40及び第2可撓性継手140と同様の構成であるため、詳細な説明及び図示は省略する。
【0055】
このような第3変形例によれば、連結部330が鋼製であるため、二股に分岐するような形状であっても比較的容易に形成することができる。よって、分岐するトンネル構造を有するコンクリート構造物を容易に形成することができる。
【0056】
(第4変形例)
図9を参照して、第4変形例について説明する。第4変形例では、第1コンクリート函体10の第1中空部11の中心軸O1と第2コンクリート函体20の第2中空部21の中心軸O2とは、互いに垂直となるように配置されている。また、第4変形例では、第1変形例と同様に、連結部430の本体部431と第2コンクリート函体20とは、第2可撓性継手140によって連結される。
【0057】
第4変形例では、本体部431は、略90°分だけ屈曲した四角筒形状に形成される。このように、連結部430の本体部431は、直線状だけでなく、屈曲した形状に形成されてもよい。これにより、第1コンクリート函体10と第2コンクリート函体20との間の曲がり部を様々な形状で構成することができる。なお、屈曲する角度は90°に限定されるものではなく45°など任意の角度とすることができる。
【0058】
また、連結部430は、
図9に示すように、本体部431の外周に設けられ、本体部431を補強する補強部435をさらに有していてもよい。補強部435は、例えば、板状の鋼材であって周方向に所定の間隔を空けて本体部431の外周に設けられる複数のリブ435aで構成される。リブ435aは、それぞれ矩形の本体部431の外周の各辺から垂直に形成される。このように補強部435が設けられることにより、連結部430の剛性、ひいては、連結構造100の耐久性を向上させることができる。
【0059】
地中や水中に埋設されるコンクリート構造物に対して連結構造100を適用する場合には、連結部430には所定の圧力が作用する。また、
図2に示す実施形態や
図5、
図9等で示す変形例のように、筒部32が一様な円筒面を有する円柱状ではない場合がある。このような場合であって、連結構造100が地中や水中に埋設されていたり、本体部31の連通孔31aを流体が通過したりする場合には、筒部32に作用する内圧又は外圧は、均一には作用せず不均一となる。このように、筒部32に外圧や内圧が作用する場合、特に不均一な圧力が作用する場合には、第4変形例のように連結部430を補強する補強部435を設けること構成とすることが有効である。
【0060】
(第5変形例)
図10を参照して、第5変形例について説明する。上記実施形態では、可撓性継手40の取付枠41は、底壁部42の外周縁から側壁部43が突出するようにして構成され、第1コンクリート函体10の切り欠き12に収容されて、第1コンクリート函体10に連結される。
【0061】
これに対し、第5変形例では、第1コンクリート函体10には、切り欠き12が形成されない。取付枠441は、貫通孔442aが形成される平板状の底壁部442と、底壁部442の内周縁から突出する側壁部443と、を有し、第1コンクリート函体10の内周側の端部の角部に突き当てられて、第1コンクリート函体10に取り付けられる。別の観点からいえば、上記実施形態では、取付枠41が形成する凸角部を、第1コンクリート函体10の切り欠き12が形成する凹角部に突き当てるのに対し、第5変形例では、その反対に、第1コンクリート函体10の内周側の端部に形成される凸角部が、取付枠441が形成する凹角部に突き当てられる。
【0062】
このような第5変形例では、第1コンクリート函体10に切り欠き12を形成する必要がないため、既存のコンクリート函体に対しても連結構造100を容易に適用することができる。この場合、鉄筋45は、コンクリート函体10の端面10aに削孔して、あと施工アンカーで固定することもできる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。上記実施形態では、第1コンクリート函体10、第2コンクリート函体20、第3コンクリート函体320は、予め所定の形状に成型される(プレキャストされる)ものとして説明したが、これに限定されず、作業現場で打設されたコンクリート函体が利用されてもよい。
【符号の説明】
【0064】
100 連結構造
10,210 第1コンクリート函体
11,211 第1中空部
20,220 第2コンクリート函体
21,221 第2中空部
30,130,230,330,430 連結部
31,231,331,431 本体部
31a,231a 連通孔
40 第1可撓性継手(可撓性継手)
41 取付枠
50 伸縮ゴム(弾性部材)
140 第2可撓性継手
231a 連通孔
320 第3コンクリート函体
321 第3中空部
332a 第1連通孔(連通孔)
332b 第2連通孔(連通孔)
332c 第3連通孔(分岐連通孔)