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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】車両用フロアボード及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 5/04 20060101AFI20240730BHJP
   B32B 5/20 20060101ALI20240730BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B60R5/04 Z
B32B5/20
B32B15/08 E
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020167917
(22)【出願日】2020-10-02
(65)【公開番号】P2022059976
(43)【公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100142550
【弁理士】
【氏名又は名称】重泉 達志
(74)【代理人】
【識別番号】100180758
【弁理士】
【氏名又は名称】荒木 利之
(72)【発明者】
【氏名】菅原 守
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0154461(US,A1)
【文献】特開2001-277944(JP,A)
【文献】特表2014-511291(JP,A)
【文献】特開2008-222208(JP,A)
【文献】特開平02-127140(JP,A)
【文献】中国実用新案第202130389(CN,U)
【文献】独国特許出願公開第102015012668(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B60R 3/00- 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をおいて略平行に配置される略平坦な第1の板材及び第2の板材と、
前記第1の板材及び前記第2の板材の間に満たされる本体材料部と、
前記第1の板材に形成され前記第2の板材と反対側へ突出する凸部と、
前記第1の板材の前記第2の板材と反対側の面に設けられ、前記凸部の少なくとも一部を覆う滑り止め材と、を備え
前記本体材料部は、発泡プラスチックからなる車両用フロアボードを製造するにあたり、
前記第1の板材の前記凸部を、前記発泡プラスチックを発泡させた際の圧力により形成する車両用フロアボードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後席後方の荷室等で使用される車両用フロアボード及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車両等において、後席の後方に形成される荷室の床面をなす車両用フロアボードが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の車両用フロアボードは、植物繊維ボードからなる繊維層と、この繊維層の両方の表面に積層される表皮層と、を備えている。
【0003】
また、第1の板材と第2の板材との間にコア層が置かれた複合材が知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2では、各板材として金属板が用いられ、コア層としてポリマーが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-1253号公報
【文献】特表2014-511291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の複合材を車両用フロアボードとして用いた場合、フロアボードの剛性を向上させる際に、各板材を厚くすると板材の重量及びコストが嵩んでしまうという問題点がある。
【0006】
また、車両用フロアボードの上面には、荷物等の積載物の移動を防止するための滑り止め材が設けられる場合がある。この場合、フロアボードの平坦な上面に滑り止め材を設けることとなり、フロアボード上で荷物等を移動させる際や車両走行中に、積載物から滑り止め材に側方から過度の負荷が加わると、滑り止め材がボード上面から剥がれるおそれがある。さらに、平坦な板材側に滑り止め材を設ける構成では、フロアボードの製造時に、滑り止め材を板材側に固定する際の位置決めが難しい。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、各板材を厚くすることなく剛性を向上させることができるとともに、滑り止め材が板材側から剥がれ難く、かつ、滑り止め材の板材側に対する位置決めが容易な車両用フロアボード及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明によれば、
間隔をおいて略平行に配置される略平坦な第1の板材及び第2の板材と、
前記第1の板材及び前記第2の板材の間に満たされる本体材料部と、
前記第1の板材に形成され前記第2の板材と反対側へ突出する凸部と、
前記第1の板材の前記第2の板材と反対側の面に設けられ、前記凸部の少なくとも一部を覆う滑り止め材と、を備えた車両用フロアボードが提供される。
【0009】
この車両用フロアボードによれば、第1の板材に凸部が形成されるため、第1及び第2の板材を厚くすることなく剛性を向上させることができる。また、滑り止め材が第1の板材に凸部と係わった状態で固定されるため、従来のような滑り止め材を平坦な板材側に設けた場合と比べ、滑り止め材を第1の板材側から剥がれ難くすることができる。さらに、車両用フロアボードの製造時に、凸部を利用して第1の板材側に対する滑り止め材の位置決めを行うことができる。
【0010】
上記車両用フロアボードにおいて、前記第1の板材及び前記第2の板材は、金属からなってもよい。
【0011】
上記車両用フロアボードにおいて、前記第1の板材及び前記第2の板材は、アルミニウムからなってもよい。
【0012】
上記車両用フロアボードにおいて、前記本体材料部は、発泡プラスチックからなってもよい。
【0013】
また、本発明では、上記車両用フロアボードを製造するにあたり、
前記第1の板材の前記凸部を、前記発泡プラスチックを発泡させた際の圧力により形成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、各板材を厚くすることなく剛性を向上させることができるとともに、滑り止め材が板材側から剥がれ難く、かつ、滑り止め材の板材側に対する位置決めを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態を示す車両の荷室をバックドア側から見た説明図である。
図2】車両用フロアボードの一部模式断面図である。
図3】車両用フロアボードの一部拡大断面図である。
図4】製造時における上側板材の加工プロセスを示す説明図であって、(a)は変形前の状態を示し、(b)は変形後の状態を示す。
図5】基体に滑り止め材を取り付ける様子を示す説明図である。
図6】積載物から滑り止め材が設けられる凸部に側方への負荷が加わる状態を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1から図6は本発明の一実施形態を示すものであり、図1は車両の荷室をバックドア側から見た説明図、図2は車両用フロアボードの一部模式断面図、図3は車両用フロアボードの一部拡大断面図、図4は製造時における上側板材の加工プロセスを示す説明図であり、図5は基体に滑り止め材を取り付ける様子を示す説明図であり、図6は積載物から滑り止め材が設けられる凸部に側方への負荷が加わる状態を示した説明図である。
【0017】
図1に示すように、車両の運転席1及び助手席2の後方に後席3が設けられ、後席3の後方に荷室4が形成される。荷室4は、車両の後部開口5を閉塞するバックドア(図示せず)を開くことにより、後部開口5を通じて荷物等の出し入れが可能となる。本実施形態の車両用フロアボード10は、略平坦に形成され、荷室4の床面をなしている。車両用フロアボード10の上面には、車両走行時における荷物等の積載物の滑りを防止するための滑り止め材20が設けられている。本実施形態においては、複数の前後へ延びる滑り止め材20が、左右方向に一定の間隔をおいて配置されている。
【0018】
図2に示すように、車両用フロアボード10は、第1の板材としての略平坦な上側板材30と、上側板材30と略平行で上下に間隔をおいて配置される第2の板材としての略平坦な下側板材40と、上側板材30及び下側板材40の間に満たされる本体材料部50と、を備えている。また、図3に示すように、車両用フロアボード10は、上側板材30の上面及び下側板材40の下面に設けられる表皮材60,70を備えている。各表皮材60,70は、接着剤11,12により、上側板材30及び下側板材40に接着されている。滑り止め材20は、上側板材30の上面の表皮材60に、接着剤13により接着されている。
【0019】
上側板材30は、例えば金属からなり、本実施形態ではアルミニウムからなる。図2に示すように、上側板材30は、全体的に略平坦に形成され、水平方向へ延びる平坦部31と、滑り止め材20の設置個所に対応して形成される凸部32と、を有している。本実施形態においては、前後方向に延びる凸部32が、左右方向に所定の間隔をおいて配置される。
【0020】
各凸部32は、左右一端側の第1傾斜部32aと、左右他端側の第2傾斜部32bと、第1傾斜部32aの左右他端及び第2傾斜部32bの左右一端を接続する水平部32cと、を有する。本実施形態においては、第1傾斜部32aは、平坦部31から左右他方へ向かって斜め上方へ延び、第2傾斜部32bは、平坦部31から左右一方へ向かって斜め上方へ延びる。水平部32cは、下側板材40と平行で、水平に延びる。
【0021】
下側板材40は、例えば金属からなり、本実施形態ではアルミニウムからなる。下側板材40は、全体的に略平坦に形成される。本実施形態においては、下側板材40は、上側板材30と同じ厚さに形成される。
【0022】
本体材料部50は、例えば発泡プラスチックからなり、本実施形態では発泡ウレタンからなる。本体材料部50は、上側板材30及び下側板材40よりも厚く、上側板材30及び下側板材40と一体に成形され、各板材30,40と密着している。
【0023】
各表皮材60,70は、例えば樹脂からなり、本実施形態ではポリ塩化ビニルからなる。各表皮材60,70は、各板材30,40を全面的に覆っている。各表皮材60,70の厚さは任意であるが、本実施形態では、各板材30,40よりも厚く、本体材料部50よりも薄く形成される。
【0024】
滑り止め材20は、例えば樹脂からなり、本実施形態ではポリプロピレンからなる。図2に示すように、滑り止め材20は、上側板材30の各凸部32ごとに設けられ、表皮材60を介して各凸部32を部分的に覆っている。本実施形態においては、滑り止め材20は、凸部32の水平部32cを覆う本体部21と、本体部21の左右一端に設けられ凸部32の第1傾斜部32aの左右他端側を覆う一端部22と、本体部21の左右他端に設けられ凸部32の第2傾斜部32bの左右一端側を覆う他端部23と、を有する。本体部21は、水平に形成され、一端部22及び他端部23は、左右外側へ向かって下るよう傾斜して形成される。滑り止め材20の厚さは任意であるが、本実施形態では、上側板材30よりも厚く形成される。
【0025】
以上のように構成された車両用フロアボードの製造方法について説明する。
図4(a)に示すように、まず、上側板材30及び下側板材40を成型するための金型100を準備する。金型100は、上側板材30を成型するための第1成型面110と、下側板材40を成形するための第2成形面120と、を有する。第1成形面110は、上側板材30の平坦部31に対応する平坦面111と、凸部32に対応する凹面112と、を有する。第2成形面120は、平坦な下側板材40に対応して平坦に形成される。
【0026】
図4(a)に示すように、第1成型面110と第2成型面120を対向させた状態で、加工前の平坦な上側板材30及び下側板材40を金型100にセットする。この状態で、上側板材30は第1成形面110の平坦面111と接触し、下側板材40は第2成形面120と接触している、
【0027】
次に、上側板材30と下側板材40の間に本体材料部50の原料と発泡剤を注入して発泡させ、上側板材30と下側板材40の間が発泡プラスチックで満たされたサンドイッチ状の基体を作成する。図4(b)に示すように、発泡プラスチックの発泡時の圧力により、上側板材30における平坦面111と接触していない部分が凹面112に押し付けられ、上側板材30に凸部32が形成される。
【0028】
この後、金型100から基体を取り出し、上側板材30及び下側板材40に表皮材60,70を接着する。さらに、図5に示すように、滑り止め材20を、上側板材30の凸部32に、表皮材60を介して接着剤13を用いて接着する。このとき、凸部32を利用して上側板材30に対する滑り止め材20の位置決めを行うことができる。
【0029】
以上のように構成された車両用フロアボード10によれば、上側板材30に凸部32が形成されるため、各板材30,40を厚くすることなく剛性を向上させることができる。また、滑り止め材20が上側板材30側に凸部32と係わった状態で固定されるため、従来のような滑り止め材を平坦な板材に設けた場合と比べ、滑り止め材20を上側板材30側から剥がれ難くすることができる。さらに、滑り止め材20が凸部32の基端側に設けられていないので、図6に示すように、車両用フロアボード10上で荷物等の積載物200を移動させる際や車両走行中に、積載物200が凸部32の基端側に接触したとしても、滑り止め材20に負荷が加わることはない。
【0030】
尚、前記実施形態においては、滑り止め材20が凸部32の一部を覆うものを示したが、滑り止め材20の凸部32を全体的に覆うものであってもよい。さらに、滑り止め材20は、凸部32を含めて上側板材30を全面的に覆うものであってもよい。
【0031】
また、前記実施形態においては、上側板材30の凸部32が、第1傾斜部32a、第2傾斜部32b及び水平部32cにより構成されるものを示したが、凸部32の形状は任意に変更することができる。例えば、第1傾斜部32a及び第2傾斜部32bに代えて、平坦部31と直角な第1垂直部及び第2垂直部とすることもできる。さらに、例えば、凸部32を半円状や半楕円状のような断面形状としてもよい。
【0032】
また、前記実施形態においては、各板材30,40が金属からなるものを示したが、例えば炭素繊維強化プラスチックのような、他の材料からなるものであってもよい。さらに、本体材料部50が発泡プラスチックからなるものを示したが、非発泡のプラスチックのような、他の材料からなるものであってもよい。
【0033】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0034】
1 運転席
2 助手席
3 後席
4 荷室
5 後部開口
10 車両用フロアボード
11 接着剤
12 接着剤
13 接着剤
20 滑り止め材
21 本体部
22 一端部
23 他端部
30 上側板材
31 平坦部
32 凸部
32a 第1傾斜部
32b 第2傾斜部
32c 水平部
40 下側板材
50 本体材料部
60 表皮材
70 表皮材
100 金型
110 第1成型面
111 平坦面
112 凹面
120 第2成型面
200 積載物
図1
図2
図3
図4
図5
図6