(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】蓄熱式温度差蓄電池、熱電併給システム及び熱電併給システム群
(51)【国際特許分類】
H02J 3/28 20060101AFI20240730BHJP
F25B 11/02 20060101ALI20240730BHJP
F02C 6/16 20060101ALI20240730BHJP
F02C 6/00 20060101ALI20240730BHJP
F02C 1/02 20060101ALI20240730BHJP
F02C 6/06 20060101ALI20240730BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20240730BHJP
F02C 9/00 20060101ALI20240730BHJP
H02N 11/00 20060101ALI20240730BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20240730BHJP
H02J 15/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H02J3/28
F25B11/02 A
F02C6/16
F02C6/00 B
F02C1/02
F02C6/06
F02C7/00 A
F02C9/00 A
H02N11/00 A
H02K7/14 B
H02J15/00 H
(21)【出願番号】P 2020172863
(22)【出願日】2020-10-13
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】516047175
【氏名又は名称】三菱重工パワーインダストリー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000105567
【氏名又は名称】コスモ石油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 学
(72)【発明者】
【氏名】新海 哲也
【審査官】山口 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-142272(JP,A)
【文献】特開昭63-253102(JP,A)
【文献】特開2020-089049(JP,A)
【文献】特表2013-503444(JP,A)
【文献】特表2014-505453(JP,A)
【文献】特開2017-155975(JP,A)
【文献】特開2006-347506(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0298498(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/28
F25B 11/02
F02C 6/16
F02C 6/00
F02C 1/02
F02C 6/06
F02C 7/00
F02C 9/00
H02N 11/00
H02K 7/14
H02J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体を圧縮するための圧縮機と、
前記圧縮機に接続され、前記圧縮機で圧縮された前記熱媒体を流すための第1流路と、
前記第1流路に接続され、前記第1流路から供給された前記熱媒体を貯蔵するための蓄圧断熱高温貯槽と、
前記蓄圧断熱高温貯槽に接続され、前記蓄圧断熱高温貯槽を出た前記熱媒体を流すための第2流路と、
前記第2流路に設けられ、前記第2流路を流れる前記熱媒体を減圧するように構成された膨張装置と、
前記第2流路における前記膨張装置の上流側又は下流側に設けられ、前記第2流路の前記熱媒体を貯蔵するための蓄圧断熱低温貯槽と、
前記第2流路の下流側に接続され、前記膨張装置及び前記蓄圧断熱低温貯槽の各々を通った前記熱媒体を前記圧縮機に供給するように構成された第3流路と、
前記第2流路における前記膨張装置の上流側を流れる前記熱媒体と前記第3流路を流れる前記熱媒体との温度差を利用して発電するように構成された温度差発電機と、
を備える、蓄熱式温度差蓄電池。
【請求項2】
前記第2流路における前記温度差発電機と前記膨張装置との間から分岐し、前記第2流路から供給された前記熱媒体を流すための第1分岐流路と、
前記第1分岐流路に接続し、前記第1分岐流路から供給された前記熱媒体を
地中熱、工場排熱又はごみ焼却場の排熱との熱交換により加熱するように構成された第1熱交換部と、
前記第1熱交換部に接続し、前記第1熱交換部を通過した前記熱媒体を前記第2流路における前記蓄圧断熱高温貯槽と前記温度差発電機との間に供給するように構成された第1戻り流路と、
を更に備える、請求項1に記載の蓄熱式温度差蓄電池。
【請求項3】
前記第3流路における前記温度差発電機と前記圧縮機との間から分岐し、前記第3流路から供給された前記熱媒体を流すための第2分岐流路と、
前記第2分岐流路に接続し、前記第2分岐流路から供給された前記熱媒体を
地中熱、河川の熱、海水の熱、下水熱又は雪氷熱との熱交換により冷却するように構成された第2熱交換部と、
前記第2熱交換部に接続し、前記第2熱交換部を通過した前記熱媒体を前記第3流路における前記蓄圧断熱低温貯槽と前記温度差発電機との間に供給するように構成された第2戻り流路と、
を更に備える、請求項1又は2に記載の蓄熱式温度差蓄電池。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の蓄熱式温度差蓄電池と、
前記蓄圧断熱高温貯槽に接続され、前記蓄圧断熱高温貯槽から対象サイトの需要体に前記熱媒体を供給するように構成された第4流路と、
を備える、熱電併給システム。
【請求項5】
前記第4流路を介して前記需要体に供給された前記熱媒体を前記需要体から回収するための第5流路を更に備え、
前記第5流路は、前記需要体から回収した前記熱媒体を前記第2流路における前記温度差発電機と前記膨張装置との間の位置に供給するように構成された、請求項4に記載の熱電併給システム。
【請求項6】
前記蓄圧断熱低温貯槽に接続された第6流路を更に備え、
前記第6流路は、前記蓄圧断熱低温貯槽から対象サイトの需要体に前記熱媒体を供給するように構成された、請求項4又は5に記載の熱電併給システム。
【請求項7】
前記第6流路を介して前記需要体に供給された前記熱媒体を回収するための第7流路を更に備え、
前記第7流路は、前記需要体から回収した前記熱媒体を前記第3流路における前記温度差発電機と前記圧縮機との間の位置に供給するように構成された、請求項6に記載の熱電併給システム。
【請求項8】
前記蓄圧断熱低温貯槽は、前記第2流路において前記膨張装置の上流側に設けられた、請求項1に記載の蓄熱式温度差蓄電池。
【請求項9】
前記圧縮機を駆動する電気モータと、
前記蓄圧断熱高温貯槽の熱媒体の残量を検出するための残量センサと、
前記電気モータを制御するモータ制御部と、
を備え、
前記モータ制御部は、前記残量センサによって検出した前記蓄圧断熱高温貯槽の前記熱媒体の残量が閾値以下である場合に、前記電気モータを駆動するように構成された、請求項1乃至8の何れか1項に記載の熱電併給システム。
【請求項10】
前記圧縮機を駆動する電気モータと、
前記蓄圧断熱低温貯槽の熱媒体の残量を検出するための残量センサと、
前記電気モータを制御するモータ制御部と、
を備え、
前記モータ制御部は、前記残量センサによって検出した前記蓄圧断熱低温貯槽の前記熱媒体の残量が閾値以下である場合に、前記電気モータを駆動するように構成された、請求項1乃至9の何れか1項に記載の熱電併給システム。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の熱電併給システムを複数備える熱電併給システム群であって、
前記複数の熱電併給システムは、複数の対象サイトにそれぞれ対応して設けられており、
前記熱電併給システム群は、前記複数の熱電併給システム全体における電力と熱の需給最適化を行うように構成された統括熱電需給システムを更に備える、熱電併給システム群。
【請求項12】
前記複数の対象サイトの各々における電力及び熱の需給傾向を学習する機械学習装置を更に備え、
前記統括熱電需給システムは、前記機械学習装置が学習した前記複数の対象サイトの各々における電力及び熱の需給傾向に基づいて、前記複数の熱電併給システム全体における電力と熱の需給最適化を行うように構成された、請求項11に記載の熱電併給システム群。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄熱式温度差蓄電池、熱電併給システム及び熱電併給システム群に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、我が国では、原子力発電所に代表されるような大規模集中型の発電所から電力を供給するエネルギー供給システムが採用されてきた。これに対し、近年、エネルギーの安定供給や省エネルギー等の観点から、比較的小規模なエネルギー変換機器をエネルギー消費地に近い場所に設置してエネルギー供給を行う分散型のエネルギー供給システムが注目されている。
【0003】
特許文献1には、分散型のエネルギー供給システムの一形態である地域熱電併給システムが記載されている。特許文献1に記載の地域熱電併給システムでは、熱媒体を供給する側に少なくとも圧縮機と放熱装置とを設けるとともに熱媒体を供給される需要体側(対象地域の複数の需要体)に熱交換器を設けて、熱媒体を供給する側と供給される側とで熱媒体の流路を形成し、対象地域の複数の需要体を対象とした大規模なヒートポンプサイクルを構築している。これにより、少ない投入エネルギーで効率的に対象地域の冷暖房及び給湯需要を満たすことができる。
【0004】
この構成では、少なくとも圧縮機と放熱装置とを複数の需要体に対する共用設備として熱媒体の共用流路に設けることにより、これらの設備を各需要体側に設置する場合と比較して、各需要体側の設備構成を簡素化することができる。これにより、各需要体側における熱電併給用の設備の設置スペース及び騒音の問題を軽減又は解消することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、ヒートポンプサイクル内で貯蔵した互いに温度の異なる熱媒体を利用して発電する新規な方式の電池である蓄熱式温度差蓄電池、並びにこれを備える熱電併給システム及び相互に熱電のやり取りが可能な熱電併給システム群を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係る蓄熱式温度差蓄電池は、
熱媒体を圧縮するための圧縮機と、
圧縮機に接続され、前記圧縮機で圧縮された前記熱媒体を流すための第1流路と、
前記第1流路に接続され、前記第1流路から供給された前記熱媒体を貯蔵するための蓄圧断熱高温貯槽と、
前記蓄圧断熱高温貯槽に接続され、前記蓄圧断熱高温貯槽を出た前記熱媒体を流すための第2流路と、
前記第2流路に設けられ、前記第2流路を流れる前記熱媒体を減圧するように構成された膨張装置と、
前記第2流路における前記膨張装置の上流側又は下流側に設けられ、前記第2流路の前記熱媒体を貯蔵するための蓄圧断熱低温貯槽と、
前記第2流路の下流側に接続され、前記膨張装置及び前記蓄圧断熱低温貯槽の各々を通った前記熱媒体を前記圧縮機に供給するように構成された第3流路と、
前記第2流路における前記膨張装置の上流側を流れる前記熱媒体と前記第3流路を流れる前記熱媒体との温度差を利用して発電するように構成された温度差発電機と、
を備える。
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係る熱電併給システムは、
上記蓄熱式温度差蓄電池と、
前記蓄圧断熱高温貯槽に接続され、前記蓄圧断熱高温貯槽から対象サイトの需要体に前記熱媒体を供給するように構成された第4流路と、
を備える。
【0009】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係る熱電併給システム群は、
上記熱電併給システムを複数備える熱電併給システム群であって、
前記複数の熱電併給システムは、複数の対象サイトにそれぞれ対応して設けられており、
前記熱電併給システム群は、前記複数の熱電併給システム全体における電力と熱の需給最適化を行うように構成された統括熱電需給システムを更に備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ヒートポンプサイクル内で貯蔵した互いに温度の異なる熱媒体を利用して発電する新規な方式の電池である蓄熱式温度差蓄電池、並びにこれを備える熱電併給システム及び熱電併給システム群が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る地域熱電併給システム2(2A)の概略構成を示す模式図である。
【
図2】地域熱電併給システム群4の概略構成を示す模式図である。
【
図3】一実施形態に係る地域熱電併給システム2(2B)の概略構成を示す模式図である。
【
図4】
図3に示した地域熱電併給システム2(2B)における循環流路74及び循環流路76を太線で示す模式図である。
【
図5】一実施形態に係る地域熱電併給システム2(2C)の概略構成を示す模式図である。
【
図6】地域熱電併給システム2(2B)の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0013】
(地域熱電併給システムの概略構成)
図1は、一実施形態に係る地域熱電併給システム2(2A)の概略構成を示す模式図である。
図1に示す地域熱電併給システム2は、発電と、対象サイトにおける需要体100への熱供給とを併行して実行可能に構築されるシステムである。対象サイトの規模は、例えば直径300~500m程度の地域であってもよいし、それより広くとも狭くともよい。需要体100は、例えば戸建住宅、マンション等の集合住宅、ショッピング施設、工場及び病院等の各種施設のうち少なくとも1種を含む。
【0014】
図1に示すように、地域熱電併給システム2は、電気モータ5、圧縮機6、第1流路8、蓄圧断熱高温貯槽10、第2流路12、膨張タービン14(膨張装置)、蓄圧断熱低温貯槽18、第3流路20及び温度差発電機22、第4流路24、第5流路26、第6流路28、第7流路30、送電ライン32~38及びサイト熱電需給システム50、温度センサ82、温度センサ84及びモータ制御部86を備える。なお、
図1では、熱及び電力の伝達経路がそれぞれ実線及び一点鎖線で記載されている。
【0015】
電気モータ5は、圧縮機6に連結されており、サイト熱電需給システム50から送電ライン32を介して供給された電力を用いて圧縮機6を駆動する。サイト熱電需給システム50から電気モータ5に供給される電力は、系統電力であってもよいし、温度差発電機22から供給された電力であってもよいし、膨張タービン14に連結された後述の発電機や、送電ライン36を通じて需要体100に設置されたEVやNAS電池、太陽光などの各種電気設備から供給された電力であってもよい。サイト熱電需給システム50から電気モータ5に供給する電力として系統電力を用いる場合は、安価な夜間電力を使用することが望ましい。
【0016】
圧縮機6は、電気モータ5により駆動されることにより、第3流路20から供給された中温低圧の熱媒体を圧縮して高温高圧の熱媒体を生成するよう構成されている。なお、他の実施形態では、電気モータ5に代えて、風車や水車等によって直接(電力に変換せずに)圧縮機6を駆動してもよい。また、第3流路20から圧縮機6に供給される熱媒体は、ヒートポンプサイクルに使用可能な熱媒体であれば特に限定されず、例えばCO2、アンモニア、プロパン、ブタン、代替フロン等を用いることができる。なお、本明細書では、相対的な温度として、温度の高い方から順に、高温、中温、低温との表現を使用する。また、相対的な圧力として、圧力の高い方から順に、高圧、中圧、低圧との表現を使用する。
【0017】
第1流路8は、圧縮機6の下流側に接続されており、圧縮機6で圧縮された高温高圧の熱媒体を流すように構成されている。
【0018】
蓄圧断熱高温貯槽10は、第1流路8の下流側に接続されており、第1流路8から供給された高温高圧の熱媒体を貯蔵するように構成されている。
【0019】
第2流路12は、蓄圧断熱高温貯槽10の下流側に接続されており、蓄圧断熱高温貯槽10を出た熱媒体を温度差発電機22の高温側、膨張タービン14及び蓄圧断熱低温貯槽18に供給するように構成されている。幾つかの実施形態では、需要体100の温熱・電力の需要や消費量に基づくサイト熱電需給システム50からの指令に従い、蓄圧断熱高温貯槽10に貯蔵された高温高圧の熱媒体の一部を後述の第4流路24によって需要体100へ供給し、また一部を第2流路12によって温度差発電機22の高温側に導入し、温度差発電機22の低温側との温度差により発電し、送電ライン34及び送電ライン35を介して需要体100へ電力を供給してもよい。第2流路12を流れる熱媒体は、温度差発電機22の高温側で放熱して減温する。一実施形態では、温度差発電機22の高温側は凝縮器として機能する。
【0020】
膨張タービン14は、第2流路12における温度差発電機22の下流側に設けられており、第2流路12を流れる中温高圧の熱媒体(温度差発電機22の高温側で仕事をした後の中温高圧の熱媒体)を減圧するように構成されている。
図1に示す例では、第2流路12を流れる中温高圧の熱媒体によって膨張タービン14が駆動され、膨張タービン14に接続された不図示の発電機が発電を行う。膨張タービン14に接続された発電機から得られる電力は、送電ライン33を介してサイト熱電需給システム50に送電される。
【0021】
蓄圧断熱低温貯槽18は、第2流路12において膨張タービン14の下流側に設けられており、第2流路12の低温低圧の熱媒体を貯蔵するように構成されている。
【0022】
第3流路20は、第2流路12の下流側に接続されており、膨張タービン14及び蓄圧断熱低温貯槽18の各々を通った熱媒体を温度差発電機22の低温側を介して圧縮機6に供給するように構成されている。幾つかの実施形態では、需要体100の冷熱・電力の需要や消費量に基づくサイト熱電需給システム50からの指令に従い、蓄圧断熱低温貯槽18に貯蔵された低温低圧の熱媒体の一部を後述の第6流路28によって需要体100へ供給し、また一部を第3流路20によって温度差発電機22の低温側に導入し、温度差発電機22の高温側との温度差により発電し、送電ライン34及び送電ライン35を介して需要体100へ電力を供給してもよい。
【0023】
温度差発電機22は、ゼーベック素子(熱電素子)を含み、第2流路12における膨張タービン14の上流側を流れる高温高圧の熱媒体と第3流路20を流れる低温低圧の熱媒体との温度差を利用して、ゼーベック効果により発電するように構成されている。温度差発電機22で発電した電力は送電ライン34を介してサイト熱電需給システム50に供給される。第3流路20を流れる熱媒体は、温度差発電機22の低温側で吸熱して加温する。一実施形態では、温度差発電機22の低温側は蒸発器として機能する。第3流路20において温度差発電機22で仕事をした後の中温低圧の熱媒体は、圧縮機6に戻されて、圧縮機6で再び圧縮されて高温高圧の熱媒体となる。
【0024】
第4流路24は、蓄圧断熱高温貯槽10の下流側に接続されており、蓄圧断熱高温貯槽10から地域熱電併給システム2の対象サイトの需要体100に高温高圧の熱媒体を供給(温熱供給)するように構成されている。この温熱は、需要体100に備えられた貯湯槽へお湯等の形にて改めて熱として蓄えられても良い。
【0025】
第5流路26は、第4流路24を介して需要体100に供給されて需要体100側で仕事を行うことで温度が下がった中温高圧の熱媒体を需要体100から回収するように構成されている。第5流路26は、第2流路12における温度差発電機22と膨張タービン14との間の位置に接続しており、需要体100から回収した中温高圧の熱媒体を第2流路12における温度差発電機22と膨張タービン14との間の位置に供給するように構成されている。
【0026】
第6流路28は、蓄圧断熱低温貯槽18の下流側に接続されており、蓄圧断熱低温貯槽18を出た低温低圧の熱媒体を蓄圧断熱低温貯槽18から需要体100に供給(冷熱供給)するように構成されている。なお、より低温の熱媒体を供給する場合には、第6流路28を膨張タービン14の下流側に接続し、膨張タービン14を通過後のより低温となった熱媒体を需要体100に供給するように構成してもよい。
【0027】
第7流路30は、第6流路28を介して需要体100に供給された低温低圧の熱媒体を需要体100から回収するように構成されている。第7流路30は、第3流路20における温度差発電機22と圧縮機6との間の位置に接続しており、需要体100から回収した低温低圧の熱媒体を第3流路20における温度差発電機22と圧縮機6との間の位置に供給するように構成されている。
【0028】
サイト熱電需給システム50は、電気モータ5を駆動するための電力を送電ライン32を介して電気モータ5に直流電力で送電する。サイト熱電需給システム50は、膨張タービン14に接続された不図示の発電機で発電した電力を送電ライン33を介して直流電力で受電し、温度差発電機22で発電した電力を送電ライン34を介して直流電力で受電する。
【0029】
サイト熱電需給システム50は、膨張タービン14に接続された発電機から送電ライン33を介して受電した直流電力と、温度差発電機22から送電ライン34を介して受電した直流電力とを、送電ライン35を介して対象サイトの需要体100に供給可能に構成されている。サイト熱電需給システム50は、対象サイトの需要体側で発電した電力(例えば対象サイトに設置された太陽光発電設備、燃料電池、NAS電池、対象サイトで使用される電気自動車に設置されたリチウムイオン電池等から出力される電力)を送電ライン36を介して直流電力で受電可能に構成されている。
【0030】
サイト熱電需給システム50は、送電ライン37を介して統括熱電需給システム52に直流電力を供給可能に構成されており、送電ライン38を介して統括熱電需給システム52から直流電力を受電可能に構成されている。
【0031】
統括熱電需給システム52は、
図2に示すように、複数の地域熱電併給システム2全体における電力と熱の需給最適化を行うように構成されている。統括熱電需給システム52とサイト熱電需給システム50とは直流電力を授受可能に構成されており、地域熱電併給システム2間では、直流電力、高温高圧の熱媒体及び低温低圧の熱媒体を授受可能に構成されている。
図2において、複数の地域熱電併給システム2は、複数の対象サイトにそれぞれ対応して設けられており、複数の地域熱電併給システム2と、統括熱電需給システム52とが、地域熱電併給システム群4を構成する。
【0032】
温度センサ82は、蓄圧断熱高温貯槽10に設けられており、蓄圧断熱高温貯槽10に貯蔵された熱媒体の温度を検出可能に構成されている。温度センサ84は、蓄圧断熱低温貯槽18に設けられており、蓄圧断熱低温貯槽18に貯蔵された熱媒体の温度を検出可能に構成されている。
【0033】
モータ制御部86は、温度センサ82の出力が閾値以下である場合に、電気モータ5を駆動して圧縮機6を作動させることにより、蓄圧断熱高温貯槽10に高温高圧の熱媒体を補充するように構成されてもよい。また、蓄圧断熱高温貯槽10には、蓄圧断熱高温貯槽10に貯蔵された熱媒体の残量を検出可能な残量センサ(容量センサ)が設けられていてもよい。また、当該残量センサが設けられている場合には、モータ制御部86は、残量センサによって検出された蓄圧断熱高温貯槽10の熱媒体の残量が閾値を下回った場合に電気モータ5を駆動して圧縮機6を作動させることにより、蓄圧断熱高温貯槽10に高温高圧の熱媒体を補充するように構成されていてもよい。
【0034】
また、モータ制御部86は、温度センサ84の出力が閾値以上である場合に、電気モータ5を駆動して圧縮機6を作動させることにより、蓄圧断熱高温貯槽10に高温高圧の熱媒体を補充するとともに蓄圧断熱高温貯槽10から高温高圧の熱媒体を第2流路12に放出し、温度差発電機22で発電を行ってもよい。また、蓄圧断熱低温貯槽18には、蓄圧断熱低温貯槽18に貯蔵された熱媒体の残量を検出可能な残量センサ(容量センサ)が設けられていてもよい。また、当該残量センサが設けられている場合には、モータ制御部86は、残量センサによって検出された蓄圧断熱低温貯槽18の熱媒体の残量が閾値を下回った場合に、電気モータ5を駆動して圧縮機6を作動させることにより、蓄圧断熱高温貯槽10に高温高圧の熱媒体を補充するとともに蓄圧断熱高温貯槽10から高温高圧の熱媒体を第2流路12に放出し、温度差発電機22で発電を行ってもよい。
【0035】
この際、温度差発電機22の高温側で単に放熱するのではなく、蓄圧断熱低温貯槽18から第3流路20を介して温度差発電機22に低温低圧の熱媒体を供給することにより温度差発電機22で発電を行ってエネルギーを回収する。そして、第2流路12において温度差発電機22の高温側で発電に利用された後の中温高圧の熱媒体は、膨張タービン14に供給されて膨張タービン14を駆動し、膨張タービン14に連結された不図示の発電機が行われる。膨張タービン14を通過して低温低圧となった熱媒体は蓄圧断熱低温貯槽18に補充される。
【0036】
図1に示した構成によれば、圧縮機6、第1流路8、蓄圧断熱高温貯槽10、第2流路12、膨張タービン14、蓄圧断熱低温貯槽18、第3流路20及び温度差発電機22によって構成される熱媒体の循環流路25によって、ヒートポンプサイクルを構築することができる。ヒートポンプは、COPが3(=300%)を超えるのが通常であり、効率が90%程度の燃焼式機器を利用する給湯に比べ、効率は何百%の向上となり極めて効率的である。このため、少ない投入エネルギーで効率的に高温高圧の熱媒体と低温低圧の熱媒体とを生成することができる。
【0037】
また、生成した高温高圧の熱媒体と低温低圧の熱媒体とをそれぞれ蓄圧断熱高温貯槽10と蓄圧断熱低温貯槽18に貯蔵することで電力を熱として蓄積し、電力需要に応じて蓄圧断熱高温貯槽10と蓄圧断熱低温貯槽18から高温高圧の熱媒体と低温低圧の熱媒体と温度差発電機22に供給して発電を行うことができるため、ヒートポンプサイクル内で貯蔵した互いに温度の異なる熱媒体を利用して発電する新規な方式の電池である蓄熱式温度差蓄電池3を提供することができる。
図1に示す構成では、圧縮機6、第1流路8、蓄圧断熱高温貯槽10、第2流路12、膨張タービン14、蓄圧断熱低温貯槽18、第3流路20及び温度差発電機22が蓄熱式温度差蓄電池3を構成する。
【0038】
この蓄熱式温度差蓄電池3によれば、例えば特許文献1に記載される構成(ヒートポンプサイクルを流れる高温高圧の熱媒体で膨張タービンを駆動して膨張タービンに接続された発電機により発電を行う構成)と比較して、ヒートポンプサイクル内の熱媒体を利用して簡素な構成で発電を行うことができる。
【0039】
また、地域熱電併給システム2のヒートポンプサイクルによって生成される熱媒体は、給湯、暖房、冷房、氷温保存等をはじめとした、一般的な生活に十分な温度(例えば-30℃程度~60℃程度)で需要体100に供給可能であることから、地域への熱供給源として活用できる。
特にコンパクトシティやスマートシティなど、インフラが集中する地域では、熱の移動距離に伴う制約を受けずにより効率的な運用が可能となる。
【0040】
比較的小規模なエネルギー変換機器である圧縮機6や温度差発電機22等をエネルギー消費地に近い場所に設置してエネルギー供給を行う分散型のエネルギー供給システムを実現することができ、エネルギーの安定供給や省エネルギー等の観点でもメリットがある。
【0041】
また、一般に、夏は冷熱需要が多く、冬は温熱需要が多い。多量の熱を使う家もあれば、日中は不在で熱をそれほど使わない家もある。環境やライフスタイルほか、多様な因子により熱の需要量に変動が発生するが、その変動の結果、余った熱を大気に放出するのは省エネの観点から望ましくない。電気も熱と同様、需要者単位での変動は大きいが、複数の需要者を纏めて管理することで平準化が可能である。上記地域熱電併給システム2は、このような熱や電気の需要量や再生可能エネルギーの発電量等の変動のバッファーとして、余剰熱/電気を熱状態で蓄え、必要に応じ温度差発電機22を用いて電気として取り出すことを可能とするものである。
【0042】
また、例えばNAS電池やリチウムイオン電池は、蓄電容量を上げるためには、リチウムや硫黄を増やすなどにより高コスト化を招きやすいが、この蓄熱式温度差蓄電池3では、蓄圧断熱高温貯槽10及び蓄圧断熱低温貯槽18を新設又は増設することにより蓄電容量を容易に増大することができる。
【0043】
また、温度差発電機22(熱電素子)は、可動部がないため、長寿命で信頼性が高く、振動や雑音が発生しない。温度差発電機22(熱電素子)は、素子の形状を自由設計できる。温度差発電機22は、単位面積当たりの発電量が太陽光発電の数倍から数十倍である。温度差発電機22は、使用材料の多くが金属又は半導体なので高温環境下や、酸素、水蒸気等により酸化劣化する場合があるが、この酸化劣化を抑制する観点からは、地域熱電併給システム2で使用する熱媒体は代替フロン類が望ましい。
【0044】
また、温度差発電機22において、蓄圧断熱高温貯槽10に貯蔵された熱媒体が保有する温熱量と、蓄圧断熱低温貯槽18に貯蔵された熱媒体の保有する冷熱量がバランスしない場合、温度差発電機22による発電を効率的に行うことができない。
【0045】
この点、上記温度センサ82及びモータ制御部86を備える地域熱電併給システム2によれば、蓄圧断熱高温貯槽10に設けられた温度センサ82の出力が閾値以下である場合に電気モータ5で圧縮機6を駆動して蓄圧断熱高温貯槽10に貯蔵された熱媒体が保有する温熱量を補充する(蓄圧断熱高温貯槽10に貯蔵された熱媒体の温度を上昇させる)ことができるため、温度差発電機22で効率的に発電することができる。
【0046】
また、上記温度センサ84及びモータ制御部86を備える地域熱電併給システム2によれば、蓄圧断熱低温貯槽18に設けられた温度センサ84の出力が閾値以上である場合に電気モータ5で圧縮機6を駆動して高温高圧の熱媒体を生成し、温度差発電機22で減温後に膨張タービン14で膨張させて蓄圧断熱低温貯槽18に貯蔵された熱媒体が保有する冷熱量を補充する(蓄圧断熱低温貯槽18に貯蔵された熱媒体の温度を低下させる)ことができるため、温度差発電機22で効率的に発電することができる。
【0047】
(機械学習装置)
幾つかの実施形態では、
図1に示すように、複数の対象サイトの各々における電力及び熱の需給傾向を学習するように構成された機械学習装置88を更に備えていてもよい。この場合、統括熱電需給システム52は、機械学習装置88が学習した複数の対象サイトの各々における電力及び熱の需給傾向(以下、単に「機械学習装置88の学習結果」と記載する。)に基づいて、複数の熱電併給システム2全体における電力と熱の需給最適化を行うように構成される。機械学習装置88は、コンピュータで構成されており、図示しないCPU(プロセッサ)や、ROMやRAMといったメモリや外部記憶装置などからなる記憶装置を備えている。また、機械学習装置88や統括熱電需給システム、および100需要体の各種設備間においては、データや指示命令信号の授受のために必要な相互通信手段(有線、無線を問わない)を含む。
図1に示す例では、機械学習装置88は、統括熱電需給システム52に設けられているが、機械学習装置88はサイト熱電需給システム50毎に設けられていてもよいし、その他の箇所に設けられていてもよい。
【0048】
統括熱電需給システム52は、機械学習装置88の学習結果に基づいて、例えば複数の地域熱電併給システム2に対応する複数の対象サイトのうち特に高温の熱媒体の需要が多いサイトには、圧縮機6での圧縮直後の極高温の熱媒体を第1流路8から抽出して積極的に供給するように熱の需給最適化を行ってもよい。また、統括熱電需給システム52は、機械学習装置88の学習結果に基づいて、例えば複数の地域熱電併給システム2に対応する複数の対象サイトのうち特に低温の熱媒体の需要が多いサイト(例えば食品工場が多い地域等)には、膨張タービン14での膨張直後の極低温の熱媒体を第2流路における膨張タービン14の下流側から抽出して積極的に供給するように熱の需給最適化を行ってもよい。また、統括熱電需給システム52は、機械学習装置88の学習結果に基づいて、例えば複数の地域熱電併給システム2に対応する複数の対象サイトのうちそれほど高温や低温の熱媒体を必要としないサイトには、各サイトで仕事をした後の熱媒体(リターン熱媒体)を供給するように熱の需給最適化を行ってもよい。
【0049】
統括熱電需給システム52は、機械学習装置88の学習結果に基づいて、例えば複数の地域熱電併給システム2に対応する複数の対象サイトの各々において、サイト内の人口の過疎化や過密化に合わせて、温度差発電機22の発電量、膨張タービン14に接続された不図示の発電機の発電量、電気モータ5の駆動、蓄圧断熱高温貯槽10及び蓄圧断熱低温貯槽18の各々の蓄熱量並びに蓄熱のタイミングを制御して電力及び熱の供給不足や供給過多を回避してもよい。また、統括熱電需給システム52は、例えば複数の地域熱電併給システム2に対応する複数の対象サイトの各々において、サイト内の人の年齢構成や就労状況などのライフスタイルによる電力及び熱の需要の変動量(例えば自宅におけるエネルギー使用時間や使用量)についての機械学習装置88の学習結果に基づいて、温度差発電機22の発電量、膨張タービン14に接続された不図示の発電機の発電量、電気モータ5の駆動、蓄圧断熱高温貯槽10及び蓄圧断熱低温貯槽18の各々の蓄熱量並びに蓄熱のタイミングを制御して電力及び熱の供給不足や供給過多を回避してもよい。
【0050】
図3は、一実施形態に係る地域熱電併給システム2(2B)の概略構成を示す模式図である。
図3に示す地域熱電併給システム2(2B)において、
図1に示した地域熱電併給システム2(2A)の各構成と共通の符号は、特記しない限り
図1に示した地域熱電併給システム2(2A)の各構成と同様の構成を示すものとし、説明を省略する。
【0051】
図3に示す地域熱電併給システム2(2B)は、第1分岐流路60、地中熱熱交換装置62、第1戻り流路64、第2分岐流路66、第2戻り流路68を備える点が
図1に示す地域熱電併給システム2(2A)と異なる。
【0052】
第1分岐流路60は、第2流路12における温度差発電機22と膨張タービン14との間から分岐し、第2流路12から供給された熱媒体を地中熱熱交換装置62の第1熱交換部70あるいは第2熱交換部72に流すように構成されている。
【0053】
第1熱交換部70は、第1分岐流路60に接続し、第1分岐流路60から供給された高温高圧の熱媒体を未利用エネルギーとしての地中熱との熱交換により加熱するように構成されている。なお、第1熱交換部70は、地中熱に代えて、工場排熱やごみ焼却場の排熱等の未利用エネルギーとの熱交換により熱媒体を加熱するように構成されていてもよい。
【0054】
第1戻り流路64は、第1熱交換部70に接続し、第1熱交換部70を通過した高温高圧の熱媒体を第2流路12における蓄圧断熱高温貯槽10と温度差発電機22との間に供給するように構成されている。
【0055】
このように、地域熱電併給システム2(2B)では、第2流路12の一部、第1分岐流路60、第1熱交換部70及び第1戻り流路64によって循環流路74(
図4の2か所の太線部のうち上側の太線部と第1熱交換部70とからなる循環流路)を構成可能となっている。
【0056】
第2分岐流路66は、第3流路20における温度差発電機22と圧縮機6との間から分岐し、第3流路20から供給された低温低圧の熱媒体を地中熱熱交換装置62の第1熱交換部70あるいは第2熱交換部72に流すように構成されている。
【0057】
第2熱交換部72は、第2分岐流路66に接続し、第2分岐流路66から供給された低温低圧の熱媒体を未利用エネルギーとしての地中熱との熱交換により冷却するように構成されている。なお、第2熱交換部72は、地中熱に代えて、河川、海水、下水又は雪氷熱等の未利用エネルギーとの熱交換により熱媒体を冷却するように構成されていてもよい。
【0058】
第2戻り流路68は、第2熱交換部72に接続し、第2熱交換部72を通過した低温低圧の熱媒体を第3流路20における蓄圧断熱低温貯槽18と温度差発電機22との間に供給するように構成されている。
【0059】
このように、地域熱電併給システム2(2B)では、第3流路20の一部、第2分岐流路66、第2熱交換部72及び第2戻り流路68によって循環流路76(
図4の2か所の太線部のうち下側の太線部と第2熱交換部72とからなる循環流路)を構成可能となっている。
【0060】
温度差発電機22において、第2流路12を流れる熱媒体が保有する温熱量と、第3流路20を流れる熱媒体の保有する冷熱量がバランスしない場合、温度差発電機22による発電を効率的に行うことができない。この点、上記地域熱電併給システム2(2B)の蓄熱式温度差蓄電池によれば、第2流路12における温度差発電機22と膨張タービン14との間を流れる熱媒体を第1分岐流路60を介して第1熱交換部70に供給し、第1熱交換部70で地中熱との熱交換により加熱してから第1戻り流路64で第2流路12における蓄圧断熱高温貯槽10と温度差発電機22との間に供給することができる。このため、第2流路12を流れる熱媒体が保有する温熱量が第3流路20を流れる熱媒体の保有する冷熱量に対して不足している場合(温媒不足の場合)に、第2流路12を流れる熱媒体の温熱量を地中熱を利用して補充し、温度差発電機22で効率的に発電することができる。
【0061】
また、第3流路20を流れる熱媒体を第2分岐流路66を介して第2熱交換部72に供給し、第2熱交換部72で地中熱との熱交換により冷却してから第2戻り流路68で第3流路20における蓄圧断熱低温貯槽18と温度差発電機22との間に供給することができる。このため、第3流路20を流れる熱媒体が保有する冷熱量が第2流路12を流れる熱媒体の保有する温熱量に対して不足している場合(冷媒不足の場合)に、第3流路20を流れる熱媒体の冷熱量を未利用エネルギーを利用して補充し、温度差発電機22で効率的に発電することができる。
【0062】
なお、
図3及び
図4に示す構成では、圧縮機6、第1流路8、蓄圧断熱高温貯槽10、第2流路12、膨張タービン14、蓄圧断熱低温貯槽18、第3流路20及び温度差発電機22、第1分岐流路60、第1熱交換部70、第1戻り流路64、第2分岐流路66、第2熱交換部72及び第2戻り流路68が蓄熱式温度差蓄電池3を構成する。
【0063】
図5は、一実施形態に係る地域熱電併給システム2(2C)の概略構成を示す模式図である。
図5に示す地域熱電併給システム2(2C)において、上述した地域熱電併給システム2(2A)及び地域熱電併給システム2(2B)の各構成と共通の符号は、特記しない限り上述した地域熱電併給システム2(2A)及び地域熱電併給システム2(2B)の各構成と同様の構成を示すものとし、説明を省略する。
【0064】
図5に示す地域熱電併給システム2(2C)は、温度調整流路78,80を備える点が
図3に示す地域熱電併給システム2(2B)と異なる。温度調整流路78は第2熱交換部72に、温度調整流路80は第1熱交換部70にそれぞれ接続されているのが基本である。ただし、システムを効率的に稼働させるため、切替バルブなどを設置し、温度調整流路78を第1熱交換部70に、温度調整流路80を第2熱交換部72に接続してもよい。ただし、第1分岐流路60から供給された熱媒体と第2分岐流路66から供給された熱媒体とが地中熱交換装置62内で混ざらないように各流路が切り替えられる。第1分岐流路60が第1熱交換部70に対する熱媒体の入口側の流路となる場合に温度調整流路78が第1熱交換部70に対する熱媒体の出口側の流路となり、第2分岐流路66が第2熱交換部72に対する熱媒体の入口側の流路となる場合に温度調整流路80が第2熱交換部72に対する熱媒体の出口側の流路となる。第1分岐流路60が第2熱交換部72に対する熱媒体の入口側の流路となる場合に温度調整流路78が第2熱交換部72に対する熱媒体の出口側の流路となり、第2分岐流路66が第1熱交換部70に対する熱媒体の入口側の流路となる場合に温度調整流路80が第1熱交換部70に対する熱媒体の出口側の流路となる。
【0065】
温度調整流路78は、第2流路12を流れる高温高圧の熱媒体の温度調整が必要な時に使用される。具体的には、温度差発電機22にて十分に温度が下がらない場合などに使用される。
温度調整流路80は、第3流路20を流れる低温高圧の熱媒体の温度調整が必要な時に使用される。具体的には、温度差発電機22にて十分に温度が上がらない場合などに使用される。
【0066】
なお、
図5に示す構成では、圧縮機6、第1流路8、蓄圧断熱高温貯槽10、第2流路12、膨張タービン14、蓄圧断熱低温貯槽18、第3流路20及び温度差発電機22、第1分岐流路60、第1熱交換部70、第1戻り流路64、第2分岐流路66、第2熱交換部72及び第2戻り流路68及び温度調整流路78,80が蓄熱式温度差蓄電池3を構成する。
【0067】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0068】
例えば上述の地域熱電併給システム2(2A~2C)の各々において、膨張タービン14の代わりに膨張弁等の他の膨張装置(減圧弁等の蒸発器)を設けてもよい。
【0069】
また、上述した実施形態では、温度差発電機22で発電した電力及び膨張タービン14に連結された発電機で発電した電力が対象サイトの需要体100へ供給される場合等を例示したが、温度差発電機22で発電した電力及び膨張タービン14に連結された発電機で発電した電力を例えば電気モータ5の駆動に利用してもよいし、統括熱電需給システム52を介して電力会社に売電してもよい。
【0070】
また、例えば上述の地域熱電併給システム2(2A~2C)の各々において、第1流路8、第2流路12、第3流路20等の各流路に熱媒体を貯蔵するためのバッファタンクを必要に応じて設置してもよい。また、このバッファタンクにバッファタンクの熱媒体の残量を検出するための残量センサ(容量センサ)を設けてもよい。
【0071】
また、上述した幾つかの実施形態では、送電ライン32,33,34,35,36,37,38が設けられていたが、各送電ラインは地域熱電併給システム2に必須の構成ではない。例えば、温度差発電機22で発電した電力で水を電気分解して水素を製造し、水素を需要体100に輸送して需要体100側で燃料電池により発電してもよい。
【0072】
また、例えば上述の地域熱電併給システム2(2A~2C)の各々において、蓄圧断熱低温貯槽18は、第2流路12における膨張タービン14の下流側に設けられていたが、蓄圧断熱低温貯槽18は、第2流路12における膨張タービン14の上流側に設けられていてもよい。この場合、上述した地域熱電併給システム2(2A~2C)の各々において、膨張タービン14の位置と蓄圧断熱低温貯槽18の位置とを入れ替えればよい(例えば
図6参照)。これにより、膨張タービン14で気化する前の液体の熱媒体を蓄圧断熱低温貯槽18に貯蔵することができる。このため、膨張タービン14で気化した後の気体の熱媒体を蓄圧断熱低温貯槽18に貯蔵する場合と比較して、蓄圧断熱低温貯槽18を小型化することができる。
【0073】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0074】
(1)本開示の一実施形態に係る蓄熱式温度差蓄電池(例えば上述の蓄熱式温度差蓄電池3)は、
熱媒体を圧縮するための圧縮機(例えば上述の圧縮機6)と、
前記圧縮機に接続され、前記圧縮機で圧縮された前記熱媒体を流すための第1流路(例えば上述の第1流路8)と、
前記第1流路に接続され、前記第1流路から供給された前記熱媒体を貯蔵するための蓄圧断熱高温貯槽(例えば上述の蓄圧断熱高温貯槽10)と、
前記蓄圧断熱高温貯槽に接続され、前記蓄圧断熱高温貯槽を出た前記熱媒体を流すための第2流路(例えば上述の第2流路12)と、
前記第2流路に設けられ、前記第2流路を流れる前記熱媒体を減圧するように構成された膨張装置(例えば上述の膨張タービン14)と、
前記第2流路における前記膨張装置の上流側又は下流側に設けられ、前記第2流路の前記熱媒体を貯蔵するための蓄圧断熱低温貯槽(例えば上述の蓄圧断熱低温貯槽18)と、
前記第2流路の下流側に接続され、前記膨張装置及び前記蓄圧断熱低温貯槽の各々を通った前記熱媒体を前記圧縮機に供給するように構成された第3流路(例えば上述の第3流路20)と、
前記第2流路における前記膨張装置の上流側を流れる前記熱媒体と前記第3流路を流れる前記熱媒体との温度差を利用して発電するように構成された温度差発電機(例えば上述の温度差発電機22)と、
を備える。
【0075】
上記(1)に記載の蓄熱式温度差蓄電池によれば、圧縮機で圧縮されて高温高圧状態となった熱媒体は、第1流路を介して蓄圧断熱高温貯槽に送られて貯蔵される。
蓄圧断熱高温貯槽を出た高温高圧の熱媒体は、第2流路を通って温度差発電機に供給され、温度差発電機で放熱して膨張装置に供給される。膨張装置に供給された熱媒体は膨張装置で減圧されて低温低圧の熱媒体となる。膨張装置及び蓄圧断熱低温貯槽の各々を通った低温低圧の熱媒体は、第3流路を介して温度差発電機に供給され、温度差発電機に冷熱を供給してから圧縮機に戻される。
このように、圧縮機、第1流路、蓄圧断熱高温貯槽、膨張装置、蓄圧断熱低温貯槽、第3流路及び温度差発電機が設けられた熱媒体の循環流路によって、ヒートポンプサイクルを構築することができるため、少ない投入エネルギーで効率的に高温高圧の熱媒体と低温低圧の熱媒体とを生成することができる。
また、生成した高温高圧の熱媒体と低温低圧の熱媒体とをそれぞれ蓄圧断熱高温貯槽と蓄圧断熱低温貯槽に貯蔵することで電力を蓄積し、電力需要に応じて蓄圧断熱高温貯槽と蓄圧断熱低温貯槽から高温高圧の熱媒体と低温低圧の熱媒体と温度差発電機に供給して発電を行うことができるため、ヒートポンプサイクル内で貯蔵した互いに温度の異なる熱媒体を利用して発電する新規な方式の電池である蓄熱式温度差蓄電池を提供することができる。
この蓄熱式温度差蓄電池によれば、例えば特許文献1に記載される構成(ヒートポンプサイクルを流れる高温高圧の熱媒体で膨張タービンを駆動して膨張タービンに接続された発電機により発電を行う構成)と比較して、ヒートポンプサイクル内の熱媒体を利用して簡素な構成で発電を行うことができる。
【0076】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の蓄熱式温度差蓄電池において、
前記第2流路における前記温度差発電機と前記膨張装置との間から分岐し、前記第2流路から供給された前記熱媒体を流すための第1分岐流路(例えば上述の第1分岐流路60)と、
前記第1分岐流路に接続し、前記第1分岐流路から供給された前記熱媒体を未利用エネルギーとの熱交換により加熱するように構成された第1熱交換部(例えば上述の第1熱交換部70)と、
前記第1熱交換部に接続し、前記第1熱交換部を通過した前記熱媒体を前記第2流路における前記蓄圧断熱高温貯槽と前記温度差発電機との間に供給するように構成された第1戻り流路(例えば上述の第1戻り流路64)と、
を更に備える。
【0077】
温度差発電機において、第2流路を流れる熱媒体が保有する温熱量と、第3流路を流れる熱媒体の保有する冷熱量がバランスしない場合、温度差発電機による発電を効率的に行うことができない。この点、上記(2)に記載の蓄熱式温度差蓄電池によれば、第2流路を流れる熱媒体を第1分岐流路を介して第1熱交換部に供給し、第1熱交換部で未利用エネルギーとの熱交換により加熱してから第1戻り流路で第2流路における蓄圧断熱高温貯槽と温度差発電機との間に供給することができる。このため、第2流路を流れる熱媒体が保有する温熱量が第3流路を流れる熱媒体の保有する冷熱量に対して不足している場合(温媒不足の場合)に、第2流路を流れる熱媒体の温熱量を未利用エネルギー等を利用して補充し、温度差発電機で効率的に発電することができる。
【0078】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載の蓄熱式温度差蓄電池において、
前記第3流路における前記温度差発電機と前記圧縮機との間から分岐し、前記第3流路から供給された前記熱媒体を流すための第2分岐流路(例えば上述の第2分岐流路66)と、
前記第2分岐流路に接続し、前記第2分岐流路から供給された前記熱媒体を未利用エネルギーとの熱交換により冷却するように構成された第2熱交換部(例えば上述の第2熱交換部72)と、
前記第2熱交換部に接続し、前記第2熱交換部を通過した前記熱媒体を前記第3流路における前記蓄圧断熱低温貯槽と前記温度差発電機との間に供給するように構成された第2戻り流路(例えば上述の第2戻り流路68)と、
を更に備える。
【0079】
温度差発電機において、第2流路を流れる熱媒体が保有する温熱量と、第3流路を流れる熱媒体の保有する冷熱量がバランスしない場合、温度差発電機による発電を効率的に行うことができない。この点、上記(3)に記載の蓄熱式温度差蓄電池によれば、第3流路を流れる熱媒体を第2分岐流路を介して第2熱交換部に供給し、第2熱交換部で未利用エネルギーとの熱交換により冷却してから第2戻り流路で第3流路における蓄圧断熱低温貯槽と温度差発電機との間に供給することができる。このため、第3流路を流れる熱媒体が保有する冷熱量が第2流路を流れる熱媒体の保有する温熱量に対して不足している場合(冷媒不足の場合)に、第3流路を流れる熱媒体の冷熱量を未利用エネルギー等を利用して補充し、温度差発電機で効率的に発電することができる。
【0080】
(4)本開示の一実施形態に係る熱電併給システムは、
上記(1)乃至(3)の何れかに記載の蓄熱式温度差蓄電池と、
前記蓄圧断熱高温貯槽に接続され、前記蓄圧断熱高温貯槽から対象サイトの需要体(例えば上述の需要体100)に前記熱媒体を供給するように構成された第4流路(例えば上述の第4流路24)と、
を備える。
【0081】
上記(4)に記載の熱電併給システムによれば、上記蓄熱式温度差蓄電池で蓄圧断熱高温貯槽に貯蔵された熱媒体を用いて需要体の温熱需要(例えば暖房需要や給湯需要)を満たすことができる。
【0082】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)に記載の熱電併給システムにおいて、
前記第4流路を介して前記需要体に供給された前記熱媒体を前記需要体から回収するための第5流路(例えば上述の第65流路26)を更に備え、
前記第5流路は、前記需要体から回収した前記熱媒体を前記第2流路における前記温度差発電機と前記膨張装置との間の位置に供給するように構成される。
【0083】
上記(5)に記載の熱電併給システムによれば、第1流路、蓄圧断熱高温貯槽、第4流路、第5流路、膨張装置、蓄圧断熱低温貯槽及び第3流路が設けられた熱媒体の循環流路によって、ヒートポンプサイクルを構築することができるため、少ない投入エネルギーで効率的に高温高圧の熱媒体を需要体に供給することができる。
【0084】
(6)幾つかの実施形態では、上記(4)又は(5)に記載の熱電併給システムにおいて、
前記蓄圧断熱低温貯槽に接続された第6流路(例えば上述の第6流路28)を更に備え、
前記第6流路は、前記蓄圧断熱低温貯槽から対象サイトの需要体に前記熱媒体を供給するように構成される。
【0085】
上記(6)に記載の熱電併給システムによれば、上記蓄熱式温度差蓄電池で蓄圧断熱低温貯槽に貯蔵された熱媒体を用いて需要体の冷熱需要(例えば冷房需要)を満たすことができる。
【0086】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)に記載の熱電併給システムにおいて、
前記第6流路を介して前記需要体に供給された前記熱媒体を回収するための第7流路(例えば上述の第7流路30)を更に備え、
前記第7流路は、前記需要体から回収した前記熱媒体を前記第3流路における前記温度差発電機と前記圧縮機との間の位置に供給するように構成される。
【0087】
上記(7)に記載の熱電併給システムによれば、第1流路、蓄圧断熱高温貯槽、第2流路、膨張装置、蓄圧断熱低温貯槽、第6流路及び第7流路が設けられた熱媒体の循環流路によって、ヒートポンプサイクルを構築することができるため、少ない投入エネルギーで効率的に低温低圧の熱媒体を需要体に供給することができる。
【0088】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の熱電併給システムにおいて、
前記蓄圧断熱低温貯槽は、前記第2流路において前記膨張装置の上流側に設けられる。
【0089】
上記(8)に記載の熱電併給システムによれば、膨張装置で気化する前の液体の熱媒体を蓄圧断熱低温貯槽に貯蔵することができる。このため、膨張装置で気化した後の気体の熱媒体を蓄圧断熱低温貯槽に貯蔵する場合と比較して、蓄圧断熱低温貯槽を小型化することができる。
【0090】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れかに記載の熱電併給システムにおいて、
前記圧縮機を駆動する電気モータ(例えば上述の電気モータ5)と、
前記蓄圧断熱高温貯槽の熱媒体の残量を検出するための残量センサ(例えば上述の残量センサ)と、
前記電気モータを制御するモータ制御部(例えば上述のモータ制御部86)と、
を備え、
前記モータ制御部は、前記残量センサによって検出した前記蓄圧断熱高温貯槽の前記熱媒体の残量が閾値以下である場合に、前記電気モータを駆動するように構成される。
【0091】
温度差発電機において、蓄圧断熱高温貯槽に貯蔵された熱媒体が保有する温熱量と、蓄圧断熱低温貯槽に貯蔵された熱媒体の保有する冷熱量がバランスしない場合、温度差発電機による発電を効率的に行うことができない。この点、上記(9)に記載の蓄熱式温度差蓄電池によれば、残量センサによって検出した蓄圧断熱高温貯槽の熱媒体の残量が閾値以下である場合に電気モータで圧縮機を駆動して蓄圧断熱高温貯槽に貯蔵された熱媒体が保有する温熱量を補充することができるため、温度差発電機で効率的に発電することができる。
【0092】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(9)の何れかに記載の熱電併給システムにおいて、
前記圧縮機を駆動する電気モータ(例えば上述の電気モータ5)と、
前記蓄圧断熱低温貯槽の熱媒体の残量を検出するための残量センサ(例えば上述の残量センサ)と、
前記電気モータを制御するモータ制御部(例えば上述のモータ制御部86)と、
を備え、
前記モータ制御部は、残量センサによって検出した蓄圧断熱低温貯槽の熱媒体の残量が閾値以下である場合に、前記電気モータを駆動するように構成される。
【0093】
温度差発電機において、蓄圧断熱高温貯槽に貯蔵された熱媒体が保有する温熱量と、蓄圧断熱低温貯槽に貯蔵された熱媒体の保有する冷熱量がバランスしない場合、温度差発電機による発電を効率的に行うことができない。この点、上記(10)に記載の蓄熱式温度差蓄電池によれば、残量センサによって検出した蓄圧断熱低温貯槽の熱媒体の残量が閾値以下である場合に電気モータで圧縮機を駆動して蓄圧断熱低温貯槽に貯蔵された熱媒体が保有する冷熱量を補充することができるため、温度差発電機で効率的に発電することができる。
【0094】
(11)本開示の一実施形態に係る熱電併給システム群は、
上記(1)乃至(10)の何れかに記載の熱電併給システムを複数備える熱電併給システム群(例えば上述の地域熱電併給システム群4)であって、
前記複数の熱電併給システムは、複数の対象サイトにそれぞれ対応して設けられており、
前記熱電併給システム群は、前記複数の熱電併給システム全体における電力と熱の需給最適化を行うように構成された統括熱電需給システム(例えば上述の統括熱電需給システム52)を更に備える。
【0095】
上記(11)に記載の熱電併給システムによれば、統括熱電需給システムによって複数の熱電併給システム全体における電力と熱の需給最適化を行うことで、電力及び熱の負荷を平準化し、少ない投入エネルギーで効率的に電力需要と熱需要を満たすことができる。
【0096】
(12)幾つかの実施形態では、上記(11)に記載の熱電併給システム群において、
前記複数の対象サイトの各々における電力及び熱の需給傾向を学習する機械学習装置(例えば上述の機械学習装置88)を更に備え、
前記統括熱電需給システムは、前記機械学習装置が学習した前記複数の対象サイトの各々における電力及び熱の需給傾向および電力市場価格等に基づいて、前記複数の熱電併給システム全体における電力と熱の需給最適化を行うように構成される。
【0097】
上記(12)に記載の熱電併給システム群によれば、複数の対象サイトの各々における電力及び熱の需給傾向を学習して前記複数の熱電併給システム全体で電力と熱の需給最適化を行うことで、電力及び熱の負荷を平準化し、少ない投入エネルギーで効率的に電力需要と熱需要を満たすことができる。
【符号の説明】
【0098】
2 地域熱電併給システム
3 蓄熱式温度差蓄電池
4 地域熱電併給システム群
5 電気モータ
6 圧縮機
8 第1流路
10 蓄圧断熱高温貯槽
12 第2流路
14 膨張装置
18 蓄圧断熱低温貯槽
20 第3流路
22 温度差発電機
24 第4流路
26 第5流路
25 循環流路
28 第6流路
30 第7流路
32,33,34,35,36,37,38 送電ライン
50 サイト熱電需給システム
52 統括熱電需給システム
60 第1分岐流路
62 地中熱熱交換装置
64 第1戻り流路
66 第2分岐流路
68 第2戻り流路
70 第1熱交換部
72 第2熱交換部
74,76 循環流路
78,80 温度調整流路
82,84 温度センサ
86 モータ制御部
88 機械学習装置
100 需要体