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特許7529527ナノファイバシート、その使用方法、及びナノファイバシートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ナノファイバシート、その使用方法、及びナノファイバシートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/02 20060101AFI20240730BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240730BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61L 15/22 20060101ALI20240730BHJP
   A61L 15/24 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B32B5/02 Z
A61K8/02
A61K8/81
A61Q1/00
A61L15/22 110
A61L15/24 110
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020175012
(22)【出願日】2020-10-16
(65)【公開番号】P2022066089
(43)【公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池山 卓
(72)【発明者】
【氏名】東城 武彦
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-005871(JP,A)
【文献】特開2013-255856(JP,A)
【文献】特開2014-152160(JP,A)
【文献】特開2005-185391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
A61K8/00-8/99
A61L15/00-33/18
A61Q1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、該基材層の一方の面側に配された、高分子化合物のナノファイバを含むナノファイバ層とを備えるナノファイバシートであって、
平面視における相異なる部位に、対象物の表面に貼付される貼付部と、使用時に手で把持される把持部とを有しており、
前記基材層及び前記ナノファイバ層は、前記貼付部及び前記把持部の両方に存在しており、前記ナノファイバ層は、前記貼付部に存する部分と前記把持部に存する部分とが連続的又は非連続的な分断線によって分断されており、
前記分断線が前記ナノファイバ層に形成された切れ込みからなる、ナノファイバシート。
【請求項2】
平面視において、前記分断線が目視可能である、請求項1に記載のナノファイバシート。
【請求項3】
厚み方向において前記切れ込みが前記基材層の一部まで達している、請求項1又は2に記載のナノファイバシート。
【請求項4】
平面視において、前記把持部が前記貼付部の周縁の一部から突出している、請求項1~3の何れか1項に記載のナノファイバシート。
【請求項5】
厚み方向において、前記ナノファイバ層が前記基材層に隣接して配置されており、該基材層は通気性を有している、請求項1~4の何れか1項に記載のナノファイバシート。
【請求項6】
基材層と、該基材層の一方の面側に配された高分子化合物のナノファイバを含むナノファイバ層とを備えるナノファイバシートであって、
平面視における相異なる部位に、対象物の表面に貼付される貼付部と、使用時に手で把持される把持部とを有しており、
前記基材層は前記貼付部及び前記把持部の両方に存在する一方、前記ナノファイバ層は前記貼付部のみに存在しており、
前記ナノファイバ層は、平面方向において厚みが一定であるか、又は該ナノファイバ層の周縁端から内方に向かって漸次厚みが増加している、ナノファイバシート。
【請求項7】
平面視において、前記貼付部と前記把持部との境界線が目視可能である、請求項6に記載のナノファイバシート。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載のナノファイバシートの使用方法であって、
使用者が前記把持部を一方の手で把持しながら、前記貼付部における前記ナノファイバ層の前記対象物の表面への貼り付け及び貼り付けた該ナノファイバ層からの前記基材層の剥離を行う、ナノファイバシートの使用方法。
【請求項9】
基材層と、該基材層の一方の面側に配された高分子化合物のナノファイバを含むナノファイバ層とを備え、平面視における相異なる部位に、対象物の表面に貼付される貼付部と、使用時に手で把持される把持部とを有するナノファイバシートの製造方法であって、
前記ナノファイバ層を前記貼付部の部分と前記把持部の部分とに分断する分断線を形成する工程を含み、
前記工程では、切断手段によって、前記ナノファイバ層に対し前記分断線として切れ込みを形成する、ナノファイバシートの製造方法。
【請求項10】
前記切断手段がレーザー装置である、請求項9に記載のナノファイバシートの製造方法。
【請求項11】
前記把持部における前記ナノファイバ層を除去する工程を含む、請求項9又は10に記載のナノファイバシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノファイバシート、その使用方法、及びナノファイバシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノファイバ層及びこれと積層される基材層を具備するナノファイバシートが知られている。例えば、特許文献1には、皮膚に貼付するためのナノファイバ層及びこれと積層される支持体層を具備し、該支持体層が、表面が平滑な多孔質支持体層と、手指で掴みうる厚み又は毛羽を持つ嵩高短繊維不織布層とからなる化粧用シートが記載されている。
特許文献2には、不織布層及びこれと結合され且つ親水性ポリマーを含むナノ繊維層を備えるとともに、液体化粧用調製物を含浸させたマスクパックが記載されている。
【0003】
本出願人は、先に、ナノファイバ層及び基材層を備えた積層体であって、第1領域と、該第1領域よりも積層厚みが小さい第2領域を有し、該第1領域が、前記基材層を前記ナノファイバ層から剥がし始める位置を含む縁に沿って幅を有するように存在しており、平面視において第1領域が占める面積の割合が所定の範囲内である、積層体を提案している(特許文献3)。また、剥離操作を容易にする観点から、前記積層体における前記基材層を前記ナノファイバ層から剥がし始める位置に摘まみ部を設けることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-119676号公報
【文献】特表2014-0534040号公報
【文献】特開2016-005871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~3に記載のシートは、ナノファイバ層側を肌に貼り付けることで使用されるので、使用時に基材層をナノファイバ層から剥離する操作を要する。特に特許文献1及び2に記載のシートのように、摘まみ部が存在せず、基材層のほぼ全域にナノファイバ層が存在していると、前記剥離する際の操作性が低く、ナノファイバ層の貼付不良が生じる虞がある。
【0006】
したがって本発明の課題は、基材層をナノファイバ層から剥離する操作が容易であり、ナノファイバ層の貼付不良を効果的に抑制し得るナノファイバシート、その使用方法及びナノファイバシートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基材層と、該基材層の一方の面側に積層された高分子化合物のナノファイバを含むナノファイバ層とを備えるナノファイバシートに関する。
前記ナノファイバシートは、平面視における相異なる部位に、対象物の表面に貼付される貼付部と、使用時に手で把持される把持部とを有していることが好ましい。
前記基材層及び前記ナノファイバ層は、前記貼付部及び前記把持部の両方に存在していることが好ましい。
前記ナノファイバ層は、前記貼付部に存する部分と前記把持部に存する部分とが連続的又は非連続的な分断線によって分断されていることが好ましい。
【0008】
また、本発明は、基材層と、該基材層の一方の面側に配された高分子化合物のナノファイバを含むナノファイバ層とを備えるナノファイバシートに関する。
前記ナノファイバシートは、平面視における相異なる部位に、対象物の表面に貼付される貼付部と、使用時に手で把持される把持部とを有していることが好ましい。
前記基材層は前記貼付部及び前記把持部の両方に存在する一方、前記ナノファイバ層は前記貼付部のみに存在していることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、前記ナノファイバシートの使用方法に関する。
前記使用方法は、使用者が前記把持部を一方の手で把持しながら、前記貼付部における前記ナノファイバ層の前記対象物の表面への貼り付け及び貼り付けた該ナノファイバ層からの前記基材層の剥離を行うことが好ましい。
【0010】
また、本発明は、基材層と、該基材層の一方の面側に配された高分子化合物のナノファイバを含むナノファイバ層とを備えたナノファイバシートの製造方法に関する。
前記ナノファイバシートは、平面視における相異なる部位に、対象物の表面に貼付される貼付部と、使用時に手で把持される把持部とを有していることが好ましい。
前記製造方法は、前記ナノファイバ層を前記貼付部の部分と前記把持部の部分とに分断する分断線を、切断手段によって形成する工程を含む。
本発明の他の特徴は、請求の範囲及び以下の説明から明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基材層をナノファイバ層から剥離する操作が容易であり、ナノファイバ層の貼付不良を効果的に抑制し得るナノファイバシート及びその使用方法を提供することができる。
本発明のナノファイバシートの製造方法によれば、基材層をナノファイバ層から剥離する操作が容易であり、ナノファイバ層の貼付不良を効果的に抑制し得るナノファイバシートを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明に係るナノファイバシートの第1実施形態を模式的に示す平面図である。
図2図2は、図1のII-II線断面模式図である。
図3図3(a)及び(b)は、図1に示すナノファイバシートの作用効果を説明するための模式図である。
図4図4(a)及び(b)は、基材層の一方の面全域にナノファイバ層が存在し、且つ分断線を有しないナノファイバシートの図3相当図である。
図5図5(a)及び(b)は、本発明に係るナノファイバシートの別の実施形態を示す斜視図である。
図6図6は、本発明に係るナノファイバシートのさらに別の実施形態を示す図2相当図である。
図7図7は、本発明に係るナノファイバシートの第5実施形態を模式的に示す平面図である。
図8図8は、図7のIII―III線断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1図3に、本発明に係るナノファイバシートの第1実施形態を示す。
本実施形態のナノファイバシート10は、肌等の対象物の表面に貼付されて使用されるシートである。
斯かるナノファイバシート10は、図1に示すように、平面視における相異なる部位に、対象物の表面に貼付される貼付部Aと、使用時に手で把持される把持部Bとを有している。貼付部Aと把持部Bとは、平面視において重なっておらず、ナノファイバシート10における異なる位置に配されている。また、平面視において貼付部Aと把持部Bとが隣り合った状態で配されている。
【0014】
本実施形態のナノファイバシート10は、図2に示すように、基材層12と、高分子化合物のナノファイバを含むナノファイバ層11とを備えている。ナノファイバ層11の一方の面側には基材層12が配置されている。
本実施形態のナノファイバシート10は、基材層12とナノファイバ層11とが積層された積層構造となっている。
【0015】
本明細書においてナノファイバとは、その太さを円相当直径で表した場合、一般に10nm以上3000nm以下、特に10nm以上1000nm以下のものである。ナノファイバの太さは、走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって、繊維を10000倍に拡大して観察し、その二次元画像から欠陥(繊維の塊、繊維の交差部分、ポリマー液滴)を除いた繊維について、繊維の長手方向に直交する線を引き繊維径を直接読み取って測定することができる。
なお、ナノファイバ層11は非常に薄いものであるが、説明の便宜上、各図に図示されたナノファイバ層11は非常に大きく描かれている。
【0016】
ナノファイバ層11が皮膚に貼付されて用いられる場合、貼付したナノファイバ層を視認し難くする観点から、ナノファイバ層11の厚みD1(図2参照)は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは5.1μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。
また、ナノファイバ層11が皮膚に貼付されて用いられる場合、肌のシミや皺を効果的に隠蔽する観点から、ナノファイバ層11の厚みD1は、好ましくは500μm以下、より好ましくは400μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。
また、ナノファイバ層11の厚みD1は、好ましくは5.1μm以上500μm以下、より好ましくは10μm以上400μm以下、さらに好ましくは10μm以上100μm以下である。
ナノファイバ層11の厚みD1は、ナノファイバシートからナノファイバ層のみを剥離し、接触式の膜厚計〔ミツトヨ社製ライトマチックVL-50A(R5mm超硬球面測定子)〕を使用することによって測定される最大厚みである。測定時に測定対象に加える荷重は0.01Paとする。
【0017】
ナノファイバ層11は、平面方向において厚みが一定であってもよく、厚みが変化していてもよい。後者の場合、ナノファイバ層11は、例えば、周縁端から内方に向かって漸次厚みが増加するものであってもよい。
【0018】
本実施形態において基材層12及びナノファイバ層11は、貼付部A及び把持部Bの両方に存在している。より具体的には、基材層12は、貼付部A及び把持部Bに連続して存在しており、ナノファイバ層11は、該基材層12の一方の面全域に存在している。したがって、本実施形態の基材層12及びナノファイバ層11それぞれは、貼付部Aに存する部分と把持部Bに存する部分とを有している。
以下、ナノファイバ層11のうち貼付部Aに存する部分を「貼付領域11a」ともいい、ナノファイバ層11のうち把持部Bに存する部分を「把持領域11b」ともいう。
また、本実施形態のナノファイバシート10は、平面視において基材層12及びナノファイバ層11それぞれの周縁端の位置が一致している。即ち、本実施形態の基材層12及びナノファイバ層11は、同一の平面視形状を有し且つ同じ面積である。
【0019】
本実施形態のナノファイバ層11は、貼付部Aに存する部分(貼付領域11a)と把持部Bに存する部分(把持領域11b)とが分断線15によって分断されている。分断線15は、ナノファイバ層11を貼付領域11aと把持領域11bとに分離し得る、これら2領域11a,11b間の境界線である。
分断線15は、ナノファイバシート10の厚み方向Zにおいて、ナノファイバ層11を貫通する切れ込みであってもよく、ナノファイバ層11を貫通しない切れ込みであってもよい。後者の切れ込みの場合、分断線15はナノファイバ層11の表面側に形成された開口となる。さらに分断線15は、ナノファイバ層11を貫通又は非貫通の複数の開孔が線状に並んでなる点線状のものであってもよい。
分断線15が、ナノファイバ層11を貫通する切れ込みであると、貼付部Aと把持部Bとに存在するナノファイバ層11どうしを力を加えずに分断できる。斯かる観点から、分断線15は、ナノファイバ層11を貫通する切れ込みであることが好ましい。
分断線15によって分断されている形態としては、非連続のナノファイバ層11において貼付領域11aと把持領域11bとが、これら2領域11a,11bの端縁どうしが互いに接した状態で存在する形態や、これら2領域11a,11bの端縁間の隙間を介して隣り合った状態で存在する形態等が挙げられる。
【0020】
本実施形態の分断線15は、図1に示すように、平面視においてナノファイバ層11を2つの領域11a,11bに区分する連続した直線である。
分断線15は、平面視において連続的な線であってもよく、平面視において連続部分と非連続部分とを交互に有するミシン目のような非連続的な線であってもよい。即ち、貼付領域11aと把持領域11bとは、平面方向において部分的に連続していてもよく、平面方向に連続していなくともよい。
【0021】
本実施形態のナノファイバシート10は、対象物の表面に付着、即ち貼付させて使用される。ナノファイバシート10の対象物は、ナノファイバ層11の貼付対象物である。
前記対象物は、主としてヒトの皮膚(肌)であるがその他に、歯、歯茎、毛髪等の体表面、非ヒト哺乳類の皮膚(肌)、歯、歯茎等の体表面、枝や葉等の植物表面等が挙げられる。
【0022】
図3(a)及び(b)を参照しながら、第1実施形態のナノファイバシート10の使用方法を説明する。
ナノファイバシート10はその使用時において、ナノファイバ層11が対象物Sの表面と対向するように、該ナノファイバ層11を該表面に当接させ、付着させる。
本使用方法では、図3(a)に示すように、対象物Sの表面にナノファイバ層11を付着させた後、図3(b)に示すように、該ナノファイバ層11から基材層12を剥離して除去する。これにより、対象物の表面にはナノファイバ層11のみが貼付される。
斯かる貼付の操作において、使用者は、ナノファイバシート10の把持部Bを一方の手Hで把持しながら、対象物Sの表面に、貼付部Aにおけるナノファイバ層11、即ち貼付領域11aを当接させて該貼付領域11aを貼付する〔図3(a)参照〕。そして、前記一方の手Hで該把持部Bを把持した状態で該貼付領域11aから基材層12を剥離する〔図3(b)参照〕。即ち、本使用方法では、使用者が把持部Bを一方の手Hで把持しながら、貼付領域11aの対象物Sの表面への貼り付け及び貼り付けた該貼付領域11aからの基材層12の剥離を行う。剥離の際、分断線15を起点にナノファイバシート10が屈曲するので、貼付領域11aから基材層12及び把持領域11bを効果的に分離することができる。
【0023】
貼付部A及び把持部Bを有する第1実施形態のナノファイバシート10は、分断線15によって貼付領域11aと把持領域11bとが分断されているので、分断線15に沿って貼付領域11aを対象物Sの表面に残しつつ、把持領域11bとともに基材層12を容易に除去することができる。換言すると、手Hで把持する把持部Bを設けることで、片手で操作可能なほどに操作性が高くなる上、手指に把持部Bのナノファイバ層11が貼り付いたとしても、分断線15によって把持領域11b及び基材層12を貼付領域11aから分離して、該貼付領域11aを良好に対象物Sの表面に貼付することができる〔図3(a)及び(b)参照〕。したがって、第1実施形態のナノファイバシート10は、基材層12をナノファイバ層11から剥離する操作が容易であり、ナノファイバ層の貼付不良を効果的に抑制することができる。肌は、使用者自身の肌又は他人の肌であり得る。
【0024】
一方、分断線15によって貼付領域11aと把持領域11bとが分断されていないナノファイバシート10´は、ナノファイバ層11´を対象物Sの表面に付着させた後〔図4(a)参照〕、該ナノファイバ層11´から基材層12´を剥離させる際に、手Hで把持されたナノファイバ層11´が部分的に手指に貼り付き易い〔図4(b)参照〕。このナノファイバ層11´を対象物Sの表面に貼付した状態で、貼り付いた手指から除去しようとすると、該ナノファイバ層11´全体が引っ張られて、該ナノファイバ層11´が部分的に捩れたり、ナノファイバ層11´どうしが付着したりする。これにより、ナノファイバ層11´に意図しない皺が発生し、貼付不良が生じる虞がある。
【0025】
本実施形態のように、把持部Bにナノファイバ層11が存在する利点としては、例えば、基材層12の片面に電界紡糸法で紡糸したナノファイバを堆積させる際に、堆積させる範囲の制御が容易となる点や、分断線が非連続的な場合に、貼付領域11aを対象部Sの表面に貼り付けて基材層から剥離する際、把持領域11bからの貼付領域11aの切り離しに伴う抵抗感(触感)により、目視せずとも貼付領域の剥離を把握できる点等がある。
【0026】
第1実施形態のナノファイバシート10は、ナノファイバ層11を対象物の表面に貼り付けて、該対象物の外観、又は表面状態を改善する目的で使用される。対象物が肌である場合、以下のように、ナノファイバシート10をヒトの肌に貼り付けて使用する化粧方法として使用できる。
例えば、ナノファイバ層11を、シミのある部位や皺のある部位に貼り付ける方法が挙げられる。これにより、シミや皺を隠蔽して、肌の外観を改善することができる。また、ファンデーションを施した肌にナノファイバ層11を貼り付ける方法が挙げられる。これにより、ファンデーションののり、即ちファンデーションの塗布具合が良好となり、肌の表面状態を改善することができる。
これらの方法は、美容目的でナノファイバシート10を使用する方法であるが、該ナノファイバシート10は、非美容目的で、肌に貼り付けて使用されてもよい。
例えば、ナノファイバ層11を、擦過傷、切創、裂創及び刺創等の各種の創傷の保護等に適用することができる。これにより、前記創傷を保護するとともに、該創傷を隠蔽して、肌の外観を改善することができる。
【0027】
上述したナノファイバシート10を美容目的や非美容目的等で肌に貼付して使用する場合、該ナノファイバシート10は、ナノファイバ層11を液状物で湿潤させた状態で使用されることがある。前記「湿潤させた状態」とは、ナノファイバ層11に液状物を含ませることで、該ナノファイバ層11を湿らせた状態を意味する。
液状物は、20℃において液状の物質のことを意味する。液状物としては、例えば水、水溶液及び水分散液等の液体、増粘剤で増粘されたジェル状物、20℃で液体又は固体の油、該油を10質量%以上含有する油剤、及び、該油とノニオン性界面活性剤等の界面活性剤とを含む乳化物(O/Wエマルジョン、W/Oエマルジョン)などが挙げられる。
【0028】
上述の液状物が20℃で液体のポリオールを含む場合、該ポリオールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ジプロピレングリコール、重量平均分子量が2000以下のポリエチレングリコール、グリセリン及びジグリセリンから選ばれる一種又は二種以上が挙げられる。
【0029】
上述の液状物が20℃において液体の油を含む場合、該油としては、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、n-オクタン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、軽質イソパラフィン、及び流動イソパラフィンから選ばれる一種又は二種以上の炭化水素油;ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、セテアリルイソノナノエート、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジ2-エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸(炭素数12~15)アルキル等の直鎖又は分岐鎖の脂肪酸と、直鎖又は分岐鎖のアルコール又は多価アルコールからなるエステル、及びトリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリンなどのトリグリセリン脂肪酸エステル(トリグリセライド)から選ばれる一種又は二種以上のエステル油;ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン及び高級アルコール変性オルガノポリシロキサンから選ばれる一種又は二種以上のシリコーン油等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく二種以上を複数組み合わせて用いてもよい。
【0030】
上述の液状物が20℃において固体の油を含む場合、該油としては、ワセリン、セタノール、ステアリルアルコール、及びセラミド等から選ばれる一種又は二種以上が挙げられる。
【0031】
ナノファイバ層11を前述の液状物で湿潤させた状態で使用する方法としては、対象物Sの表面を液状物で湿潤させた状態で、該表面にナノファイバ層11を付着させる方法(1)や、対象物Sの表面にナノファイバ層11を付着させた状態で、該ナノファイバ層11を液状物で湿潤させる方法(2)、ナノファイバ層11を液状物で湿潤させた状態で、対象物Sの表面にナノファイバ層を付着させる方法(3)等が挙げられる。
前記(1)~(3)の方法では、対象物の表面とナノファイバ層11の表面とを接触させる前後で、これら表面の何れかに液状物を適用させて湿潤させることができる。
前記方法(1)において、液状物を適用して湿潤させた対象物の表面に、ナノファイバ層11を接触させると、ナノファイバ層11の毛管力によって、対象物の表面の液状物をナノファイバ層11に移行させることができる。
【0032】
前記方法(1)~(3)の何れかにおいて、対象物の表面又は対象物の表面に貼付されたナノファイバ層11を液状物で湿潤させた状態にするためには、液状物をこれら何れかの表面に塗布又は噴霧すればよい。塗布又は噴霧される液状物としては、ナノファイバシート10を付着させる温度において液体成分を含み、且つその温度における粘度(E型粘度計を用いて測定される粘度)が5000mPa・s程度以下の粘性を有する物質が用いられる。そのような液状物としては、例えば水、水溶液、20℃において液状のエステル油、炭化水素油、シリコーン油、グリセリンやプロピレングリコール等の20℃において液状のポリオール、及びこれらから選ばれる1種又は2種以上を含む水分散液等が挙げられる。また、O/Wエマルジョン等の乳化液、増粘性多糖類等をはじめとする各種の増粘剤で増粘された水性液等も液状物として用いることができる。
【0033】
以上の使用方法に関し、使用者には、ナノファイバシート10が貼付部Aと把持部Bとを有するという情報とともに、該ナノファイバシート10の使用方法を示す情報を与えておくことが好ましい。これら情報は、例えば「把持部Bを把持した状態で、貼付部Aを貼付してください」との文章であり、文章でも記号でもそれらの組み合わせ等であってもよい。そのような情報は、例えば、ナノファイバシート10のパッケージや、該ナノファイバシート10に関する広告やホームページにおいて提示される。
【0034】
第1実施形態のナノファイバシート10が具備する各構成について詳述する。
本実施形態のナノファイバシート10は、図1に示すように、平面視において分断線15が目視可能である。斯かる構成により、使用者に把持部Bをより確実に認識させられるので、貼付領域11aの貼付操作をより容易にすることができる。
分断線15の幅W1(図2参照)は、特に制限されず、0μm超であればよい。
分断線15の視認性をより向上させる観点から、分断線15の幅W1は、好ましくは50μm以上、より好ましくは200μm以上、さらに好ましくは300μm以上である。
また、貼付部Aのナノファイバ層11の面積をより確実に確保する観点から、分断線15の幅W1は、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1500μm以下である。
また、分断線15の視認性をより向上させ、貼付部Aのナノファイバ層11の面積を確保する観点から、分断線15の幅W1は、好ましくは50μm以上2000μm以下、より好ましくは200μm以上1500μm以下、さらに好ましくは300μm以上1500μm以下である。
分断線15の幅W1は、平面視における分断線15の延在方向と直交する方向の長さである。
【0035】
分断線15は、ナノファイバ層11側から目視可能であってもよく、基材層12側から目視可能であってもよい。使用者に対象物Sに貼付する面をより確実に認識させ、貼付領域11aを貼付する操作をより容易にする観点から、分断線15は、ナノファイバ層11側から目視可能であることが好ましい。
分断線15の視認性をより向上させる観点から、分断線15の位置が基材層12に表示されていることが好ましい。斯かる形態としては、平面視において分断線15と重なる表示線が基材層12に施されたもの等が挙げられる。表示線は、レーザー光照射等により、基材層12表面に施された焦げによる印字や開口部からなるものであってもよく、インク等により印刷されたものであってもよい。基材層12上に印刷を施して表示線を付与する場合であっても、ナノファイバ層11は透過性が高いものであるので、ナノファイバ層11側から該表示線を目視可能である。
【0036】
基材層12はナノファイバシートの保形性を維持可能な層であり、単一の層であってもよく、多層であってもよい。
基材層12としては、例えばポリオレフィン系の樹脂やポリエステル系の樹脂をはじめとする合成樹脂製のフィルムや、不織布等の繊維シートを用いることができる。
基材層12を、ナノファイバ層11に対して剥離可能に積層する場合には、基材層12におけるナノファイバ層11との対向面に、シリコーン樹脂の塗布やコロナ放電処理などの剥離処理を施しておくことが、剥離性を高める観点から好ましい。また、剥離性を高める観点から、合成樹脂製のフィルム等を基材層12として用いる場合、該フィルムの表面に、粉又は粒の剥離剤を散布させて形成される剥離剤の層を設けて、該フィルムの表面を該剥離剤でコーティングすることが好ましい。剥離剤としては、シリコーン系、フッ素系、アルキド系、オレフィン系、フッ素系、長鎖アルキル系等の剥離剤が挙げられる。
【0037】
本実施形態のナノファイバシート10は、厚み方向Zにおいて、ナノファイバ層11と基材層12とが隣接して配置されている。即ち、ナノファイバ層11と基材層12とは直接接触した状態に積層されている。
斯かるナノファイバシート10は、前述したように、使用時にナノファイバ層11と基材層12とを層間剥離させて、基材層12を取り除く〔図3(a)及び(b)参照〕。ナノファイバ層11と基材層12との剥離をより容易にする観点から、基材層12は通気性を有していることが好ましい。これにより、ナノファイバ層11と基材層12との間に空気が入り、ナノファイバ層11と基材層12とを剥離し易くすることができる。なお、基材層12が多層構造を有する場合、該基材層12においてナノファイバ層と隣接している層が通気性を有していればよい。すなわち、「基材層12が通気性を有する」形態には、基材層12の全体が通気性層である形態と、基材層12が通気性層と非通気性層とを有する多層構造である形態とが含まれる。
【0038】
通気性を有する基材層12としては、繊維シート、スポンジを用いることが好ましい。具体的には繊維シートは、各種の不織布、織布、編み地、紙、メッシュシート及びそれらの積層体などである。不織布としては、例えばメルトブローン不織布、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、スパンレース不織布及びレーヨン不織布などを用いることができるが、これらに限られない。これらの不織布やメッシュシートなどの繊維シートを構成する繊維ないしストランドは、その太さが、ナノファイバの範疇よりも太いものが好ましい。また、繊維としては、繊維形成性の合成樹脂からなる繊維や、コットン及びパルプなどのセルロース系の天然繊維を用いることができる。スポンジは、具体的には合成樹脂又は天然樹脂を発砲させた多孔性材料、例えば発泡樹脂からなるものである。合成樹脂又は天然樹脂としては、例えばウレタン、ポリエチレン、メラミン、天然ゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどを用いることができるが、これらに限られない。発泡樹脂は通気性を有する形態を形成し得るものであれば、種々の材料を用いることができる。
ナノファイバ層11を対象物Sの表面に容易に貼付する観点から、基材層12は不織布であることが好ましい。
【0039】
ナノファイバ層11に隣接して配置されている基材層12は、ナノファイバの繊維径よりも大きな幅の複数の凹部又は凸部をナノファイバ層11と対向する面に有していることが好ましい。斯かる構成は、基材層12が通気性を有していない場合に、ナノファイバ層11と基材層12とを剥離する作業性を向上させる点で有利である。
【0040】
ハンドリング性をより向上させる観点から、基材層12の厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上である。
またナノファイバ層11が皮膚に貼付されて用いられる場合、剛性を小さくして肌により追従させ易くする観点から、基材層12の厚さは、好ましくは20mm以下、より好ましくは15mm以下である。
また、基材層12の厚さは、好ましくは5μm以上20mm以下、より好ましくは10μm以上15mm以下である。
【0041】
ナノファイバシート10は、前述したように、美容液等の液状物をナノファイバ層11が含んだ状態(湿潤状態)で使用されることがある。この場合、美容液等の液状物によってナノファイバ層11が溶解することを防止する観点から、ナノファイバ層11は水不溶性であることが好ましい。
水不溶性とは、1気圧・23℃の環境下において、ナノファイバ層11を1g秤量したのちに、10gの脱イオン水に浸漬し、24時間経過後、浸漬したナノファイバ層11の0.5g超が溶解しない性質を有するものをいい、好ましくは0.8g超が溶解しない性質を有するものをいう。
【0042】
ナノファイバ層11は、繊維形成可能な高分子化合物を含むナノファイバが堆積することにより形成される。ナノファイバ層11を水不溶性にする観点から、ナノファイバ層11は、繊維形成可能な高分子化合物として、水不溶性高分子化合物のナノファイバを含むことが好ましい。斯かる構成により、ナノファイバ層に化粧料に用いられる水溶性成分を含ませても、該ナノファイバ層11の保形性を維持することができる。水不溶性高分子化合物としては、例えばナノファイバ形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することでナノファイバ形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリ(N-プロパノイルエチレンイミン)グラフト-ジメチルシロキサン/γ-アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ツエイン(とうもろこし蛋白質の主要成分)、あるいはポリ乳酸、ポリエチレンテフタレート樹脂、ポリブチレンテフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などが挙げられる。これらの水不溶性高分子化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
ナノファイバ層11は、水溶性高分子化合物のナノファイバを含んでいてもよい。水溶性高分子化合物としては、プルラン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ポリ-γ-グルタミン酸、変性コーンスターチ、β-グルカン、グルコオリゴ糖、ヘパリン、ケラト硫酸等のムコ多糖、セルロース、ペクチン、キシラン、リグニン、グルコマンナン、ガラクツロン、サイリウムシードガム、タマリンド種子ガム、アラビアガム、トラガントガム、大豆水溶性多糖、アルギン酸、カラギーナン、ラミナラン、寒天(アガロース)、フコイダン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の天然高分子、部分鹸化ポリビニルアルコール(架橋剤と併用しない場合)、低鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、水溶性ナイロン、水溶性ポリエステル、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成高分子などが挙げられる。これらの水溶性高分子化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
ナノファイバ層11は、上述した水不溶性高分子化合物及び水溶性高分子化合物以外の他の高分子化合物を含んでいてもよい。他の高分子化合物としては一般に、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ-m-フェニレンテレフタレート、ポリ-p-フェニレンイソフラテート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン-アクリレート共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル-メタクリレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ナイロン、アラミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニル、ポリペプチド等が挙げられる。これらの高分子化合物は単独で又は複数混合して用いることができる。
【0045】
ナノファイバ層11を水不溶性にする場合、ナノファイバ層11に含まれる水不溶性高分子化合物は該ナノファイバ層11の全質量に対して好ましくは50質量%超、より好ましくは80質量%以上であり、ナノファイバ層11に含まれる水溶性高分子化合物は該ナノファイバ層11の全質量に対して好ましくは50質量%未満、より好ましくは20質量%以下である。
【0046】
ナノファイバ層11は、ナノファイバのみから構成されていてもよく、あるいはナノファイバに加えて他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、ナノファイバ以外の物質であって、化粧料に用いられる成分を用いることができる。例えば、薬用成分、保湿成分、各種ビタミン、香料、紫外線防御剤、界面活性剤、着色顔料、体質顔料、染料、安定剤、防腐剤、及び酸化防止剤などが挙げられる。これらの成分は単独で使用することもでき、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
成分効果を高める観点から、ナノファイバ層11がナノファイバに加えて他の成分を含んでいる場合には、ナノファイバ層11に占めるナノファイバの含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。
また、ナノファイバ層11がナノファイバに加えて他の成分を含んでいる場合には、ナノファイバ層11に占めるナノファイバの含有量の上限値は、100質量%未満となるが、該上限値は特に制限されない。
【0047】
ナノファイバ層11が、他の成分を含むナノファイバによって形成されている場合、例えば、当該ナノファイバは、水溶性高分子化合物と他の成分とが水に完全に溶解した状態下で混合して調製することによって得られる。また、前記ナノファイバは、中空部を有するナノファイバを用いて、他の成分を乳化した乳化成分を該中空部に含有させることでも得られる。他の成分の反応の種類によっては、ナノファイバに単独で含有させてもよく、2種以上の成分を含有させてもよい。
【0048】
本実施形態のナノファイバシート10は、図1に示すように、平面視において把持部Bが貼付部Aの周縁の一部から突出している。より具体的には、平面視において貼付部Aが略円形であり、把持部Bが略三角形であり、該貼付部Aの略円形の輪郭線の一部から分断線15を介して、略三角形の該把持部Bが突出している。このように平面視において把持部Bが貼付部Aから突出していると、把持部Bがより把持し易くなる点で好ましい。
本実施形態のナノファイバシート10は、その平面視形状の図心又は該図心を通る中心軸に対して非対称の形状を有している。平面視形状の図心は、重心と同じ概念である。中心軸は、前記図心を通り且つナノファイバシート10の平面視形状の面積を二等分する仮想直線である。
【0049】
ナノファイバ層の肌への貼付性を向上させる観点から、ナノファイバ層11における貼付領域11aの平面視形状は、曲率が異なる複数の曲線部分を輪郭に含む形状、複数の直線部分を輪郭に含む形状、又は該曲線部分と該直線部分とを輪郭に含む形状であることが好ましい。例えば、曲率が異なる複数の曲線部分を輪郭に含む形状としては、平面視形状が、楕円形等の曲率が複数種類の曲線部分を含む形状や、曲率の異なる複数の曲線部分が凹凸を形成する形状等が挙げられる。また、複数の直線部分を輪郭に含む形状としては、平面視形状が矩形、三角形、四角形、六角形等の多角形状や、矢印形、星形等が挙げられる。さらに、曲線部分と直線部分とを輪郭に含む形状としては、扇形、涙形、半円形、ハート形等が挙げられる。このような形状のナノファイバ層11は、顔等のような複雑な形状に追従し易く、貼付し易い。
【0050】
本実施形態のナノファイバシート10は、ナノファイバ層11の表面を被覆するカバーシートを備えていてもよい。斯かるカバーシートは、ナノファイバ層11を保護するシートであり、使用時にナノファイバ層11から剥離される。
カバーシートには、前述した基材層12と同様の材料を用いることができるが、剥離操作をより向上させる観点から、基材層12及びカバーシートそれぞれが繊維材料からなる場合、カバーシートの繊維材料は、基材層12の繊維材料よりも平均繊維径が大きいことが好ましい。
カバーシートは、基材層12よりもナノファイバ層11を剥離し易い材料であることが好ましい。カバーシートとしては、紙やフィルム等が挙げられる。例えば、基材層12として不織布を、カバーシートとしてフィルムを用いた形態等が挙げられる。
また、剥離操作をより向上させる観点から、カバーシートには上述した剥離剤がコーティングされていることが好ましい。
【0051】
図5図8には、本発明に係るナノファイバシートの別の実施形態が示されている。後述する第2~第5実施形態については、図1図3に示す第1実施形態と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、第1実施形態についての説明が適宜適用される。
【0052】
前述した第1実施形態のナノファイバシート10は、把持部Bが貼付部Aの周縁の一部から突出していたが、ナノファイバシートは、把持部Bが貼付部Aの周縁の一部から突出していなくともよい。
例えば第2実施形態におけるナノファイバシート10aは、図5(a)に示すように、平面視形状が円形状であり、その平面視形状の図心又は該図心を通る中心軸に対して対称の形状を有している。斯かるナノファイバシート10aは、貼付部Aの周縁が部分的に前記図心に向かって凹んでおり、その凹み部分に嵌まるようにして把持部Bが存在している。
また、前述した第1実施形態のナノファイバシート10は、分断線15が直線状であったが、本実施形態の分断線15は曲線状である。
さらに、前述した第1実施形態のナノファイバシート10は、分断線15が連続的な線であったが、本実施形態の分断線15は非連続的な線である。
【0053】
前述した第1実施形態のナノファイバシート10は、貼付部A及び把持部Bのみを有するものであったが、斯かる形態に限定されない。
例えば、第3実施形態のナノファイバシート10bは、図5(b)に示すように、貼付部A及び把持部Bに加えて、基材延出部Cを有している。基材延出部Cは、ナノファイバ層11の端縁から基材層12が延出した部分である。
第1実施形態におけるナノファイバ層11は、基材層12の一方の面全域に存在していたが、本実施形態のナノファイバ層11は、基材層12の貼付部A及び把持部Bのみに存在しており、基材層12の面積がナノファイバ層11の面積よりも大きい。
本実施形態のナノファイバシート10bは、基材延出部Cとして、基材層12がナノファイバ層11の周縁端(外周)の一部から外方に向かって延出する領域を有しているが、基材層12がナノファイバ層11の周縁端の全体から外方に向かって延出する領域を有していてもよい。
【0054】
前述した第1実施形態のナノファイバシート10は、厚み方向Zにおいて、分断線15がナノファイバ層11を貫通する一方、基材層12には至らないものであったが、斯かる形態に限定されない。
例えば図6に示す第4実施形態のナノファイバシート10cは、分断線15が切れ込みからなり、ナノファイバシート10cの厚み方向Zにおいて該切れ込みが基材層12の一部まで達している。即ち、分断線15を形成する切れ込みは、基材層12表面の前記表示線(開口部16)もなしている。
ナノファイバ層11を貼付領域11aと把持領域11bとにより確実に分断する観点から、分断線15をなす切れ込みが基材層12の一部まで達している場合、基材層12における該切れ込みの深さ、即ち表示線をなす開口部16の開口深さD3は、基材層12の厚みD2に対して好ましくは1%以上、より好ましくは10%以上である。
また、基材層12をナノファイバ層11から剥離する操作をより容易にする観点から、前記開口部16の開口深さD3は、基材層12の厚みD2に対して好ましくは99%以下、より好ましくは90%以下である。
また、前記開口部16の開口深さD3は、基材層12の厚みD2に対して好ましくは1%以上99%以下、より好ましくは10%以上90%以下である。
切れ込みからなる分断線15が非連続的な線である場合、把持部Bと貼付部Aとで基材層12は分断されないので、基材層12における前記切れ込みの深さは、基材層12の厚みD2に対して100%であってもよい。すなわち前記切れ込みが基材層12を貫通するものであってもよい。
【0055】
図7及び図8には、本発明に係るナノファイバシートの第5実施形態が示されている。本実施形態のナノファイバシート10dは、基材層12は貼付部A及び把持部Bの両方に存在する一方、ナノファイバ層11は貼付部Aのみに存在している。即ち、本実施形態のナノファイバシート10dは、ナノファイバ層11が把持部Bに存在していないので、ナノファイバ層11を貼付領域11aと把持領域11bとに分断する分断線15を有していない。
本実施形態のナノファイバシート10dも、第1実施形態と同様に、把持部Bを一方の手で把持し、対象物Sの表面に貼付部Aにおけるナノファイバ層11を当接させた後、該一方の手で該把持部Bを把持した状態で該貼付領域11aを基材層12から剥離して使用することができる。斯かるナノファイバシート10dは、分断線15を有していないが、把持部Bにナノファイバ層11を有していないので、基材層12をナノファイバ層11から剥離する操作や貼付領域11aを対象物Sの表面に貼付する貼付操作を容易に行うことができる。また、把持部Bを把持しても手指にナノファイバ層11が貼り付かないので、ナノファイバ層の貼付不良を効果的に抑制することができる。
【0056】
本実施形態のナノファイバシート10dは、平面視において、貼付部Aと把持部Bとの境界線17が目視可能である。境界線17は、基材層12上に形成された貼付部Aと把持部Bとを区分する線であり、平面視において貼付領域11aの端縁に沿っている。境界線17は、前述した表示線と同様に、レーザー光照射等により、基材層12表面に施された焦げによる印字や開口部からなるものであってもよく、インク等により印刷されたものであってもよい。
本実施形態のように境界線17が目視可能であると、基材層12をナノファイバ層11から剥離する操作や貼付領域11aを対象物Sの表面に貼付する貼付操作をより容易に行うことができる。使用者に対象物Sに貼付する面をより確実に認識させ、ナノファイバ層11を貼付する操作をより容易にする観点から、境界線17は、ナノファイバ層11側から目視可能であることが好ましい。
【0057】
次に本発明のナノファイバシートの製造方法を、その好ましい実施形態に基づき説明する。
分断線15を有するナノファイバシートの製造方法の一例としては、積層シート形成工程と分断線形成工程とを含む態様が挙げられる。
積層シート形成工程では、基材層12の連続シートとナノファイバ層11の連続シートとが積層した連続積層シートに対し、ロータリーダイカッター等の切断手段を用いてナノファイバシート10の輪郭形状を有する積層シートを形成する。
分断線形成工程は、積層シートにおけるナノファイバ層11を、貼付部Aに存する部分と把持部Bに存する部分とに分断する分断線を形成する工程である。
分断線形成工程では、分断線を形成する手段として、レーザー装置等の切断手段を用いることができる。レーザー装置を用いる場合、積層シートのナノファイバ層11にレーザーを照射して、該ナノファイバ層11を貫通する切れ込み又は貫通しない切れ込みを形成することで、分断線15を形成する。照射するレーザー光としては、COレーザー、エキシマレーザー、アルゴンレーザー、半導体レーザー、YAGレーザー等が挙げられる。
さらに、他の切断手段として、ロールの周面に、周方向に延びる切断刃が形成されたカッターロールと、該カッターロールの刃を受けるアンビルロールとを備えた切断装置や、超音波カッター等の公知の切断装置等を用いることができる。
より精度よく分断線15を形成する観点から、分断線15を形成する手段として、レーザー装置を用いることが好ましい。
【0058】
また、前記製造方法の他の一例として、ナノファイバ層形成工程と前記分断線形成工程とを含む態様が挙げられる。
ナノファイバ層形成工程は、基材層12上にナノファイバ層11の原料を吐出してナノファイバ層11を形成する。斯かる工程は、例えば公知の電界紡糸装置を用いることができる。即ち、ナノファイバ層形成工程は、電界紡糸法により、ナノファイバ層11の原料を含む原料液から生じたナノファイバを基材層12上に堆積させることで、ナノファイバ層11を形成する。これにより、積層シートが得られる。ナノファイバ層形成工程では、前記原料液を吐出させる吐出ノズルの移動や、原料液の吐出量、吐出ノズルと基材層の連続シートとの間の距離等を制御して、ナノファイバ層11の厚みや形状を調整してもよい。
ナノファイバ層形成工程が、基材層12の連続シート上にナノファイバ層11を形成する工程である場合、前記製造方法は、該ナノファイバ層11の輪郭に沿って該連続シートをカットする切断工程を含んでいてもよい。
【0059】
ナノファイバ層形成工程で用いられる原料液としては、上述した繊維形成可能な高分子化合物が溶媒に溶解又は分散した溶液を用いることができる。
原料液には前記高分子化合物以外に、無機物粒子、有機物粒子、植物エキス、界面活性剤、油剤、イオン濃度を調整するための電解質等を適宜配合することができる。
原料液の溶媒としては、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、1-ブタノール、イソブチルアルコール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、メチル-n-プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o-クロロトルエン、p-クロロトルエン、四塩化炭素、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o-キシレン、p-キシレン、m-キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、ピリジン等が挙げられる。これらの溶媒は単独で又は複数混合して用いることができる。
【0060】
前述した第5実施形態のように、ナノファイバ層11が貼付部Aのみに存在するナノファイバシートを製造する場合、その製造方法は、積層シートのナノファイバ層に分断線15を形成する分断線形成工程に加えて、把持部Bにおけるナノファイバ層11を除去する除去工程を含む。
除去工程では、積層シートに対し、分断線15に沿ってナノファイバ層11の把持領域11bを基材層12から剥離して除去する。
【0061】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。また、上述した実施形態を組み合わせてもよい。
例えば、分断線15を有するナノファイバシートであって、該分断線15が、平面視において非連続的な線であり且つ基材層12の一部まで達する切れ込みであってもよい。
【0062】
本明細書において数値の上限値若しくは下限値又は上下限値が規定されている場合、上限値及び下限値そのものの値も含まれる。また特に明示がなくても数値の上限値以下若しくは下限値以上又は上下限値の範囲内におけるすべての数値又は数値範囲が記載されているものと解釈される。
本明細書において、”a”及び”an”等は、一又はそれ以上の意味に解釈される。
本明細書における上述の開示に照らせば、本発明の様々な変更形態や改変形態が可能であることが理解される。したがって、特許請求の範囲の記載に基づく技術的範囲内において、本明細書に明記されていない実施形態についても本発明の実施が可能であると理解すべきである。
上述した特許文献の記載内容は、それらのすべてが本明細書の内容の一部として本明細書に組み入れられる。
【0063】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下のナノファイバシート、その使用方法、及びナノファイバシートの製造方法を開示する。
<1>
基材層と、該基材層の一方の面側に配された、高分子化合物のナノファイバを含むナノファイバ層とを備えるナノファイバシートであって、
平面視における相異なる部位に、対象物の表面に貼付される貼付部と、使用時に手で把持される把持部とを有しており、
下記構成(1)又は構成(2)の構成を具備している、ナノファイバシート。
構成(1):前記基材層及び前記ナノファイバ層は、前記貼付部及び前記把持部の両方に存在しており、前記ナノファイバ層は、前記貼付部に存する部分と前記把持部に存する部分とが連続的又は非連続的な分断線によって分断されている。
構成(2):前記基材層は前記貼付部及び前記把持部の両方に存在する一方、前記ナノファイバ層は前記貼付部のみに存在している。
【0064】
<2>
平面視において、前記構成(1)における前記分断線が目視可能である、前記<1>に記載のナノファイバシート。
<3>
前記構成(1)における前記分断線が、厚み方向において前記基材層を貫通しない切れ込みである、前記<1>又は<2>に記載のナノファイバシート。
<4>
前記構成(1)における前記分断線が切れ込みからなり、厚み方向において該切れ込みが前記基材層の一部まで達している、前記<1>~<3>の何れか1に記載のナノファイバシート。
<5>
前記基材層における前記切れ込みの深さが、基材層12部分の基材層12の厚みD2に対して1%以上、好ましくは10%以上である、前記<4>に記載のナノファイバシート。
<6>
前記基材層における前記切れ込みの深さが、基材層12部分の基材層12の厚みD2に対して99%以下、好ましくは90%以下である、前記<4>又は<5>に記載のナノファイバシート。
<7>
平面視において、前記構成(1)における前記把持部が前記貼付部の周縁の一部から突出している、前記<1>~<6>の何れか1に記載のナノファイバシート。
<8>
厚み方向において、前記構成(1)における前記ナノファイバ層が前記基材層に隣接して配置されており、該基材層は通気性を有している、前記<1>~<4>の何れか1に記載のナノファイバシート。
<9>
前記構成(1)における前記ナノファイバ層は、前記基材層の一方の面全域に存在している、前記<1>~<8>の何れか1に記載のナノファイバシート。
<10>
平面視において、前記構成(1)における前記基材層及び前記ナノファイバ層それぞれの周縁端の位置が一致している、前記<1>~<9>の何れか1に記載のナノファイバシート。
【0065】
<11>
前記構成(1)における前記ナノファイバ層は、前記貼付部に存する部分と前記把持部に存する部分とが、これら部分の端縁間の隙間を介して隣り合った状態で存在している、前記<1>~<9>の何れか1に記載のナノファイバシート。
<12>
前記構成(1)における前記分断線の幅W1は、0μm超であり、好ましくは50μm以上、より好ましくは200μm以上、さらに好ましくは300μm以上である、前記<11>に記載のナノファイバシート。
<13>
前記構成(1)における前記分断線の幅W1は、2000μm以下、好ましくは1500μm以下である、前記<11>又は<12>に記載のナノファイバシート。
<14>
前記構成(1)における前記分断線は、前記ナノファイバ層側から目視可能である、前記<1>~<13>の何れか1に記載のナノファイバシート。
<15>
平面視において、前記構成(2)における前記貼付部と前記把持部との境界線が目視可能である、前記<1>に記載のナノファイバシート。
<16>
前記ナノファイバの太さは、これを円相当直径で表した場合、10nm以上3000nm以下、好ましくは10nm以上1000nm以下である、前記<1>~<15>の何れか1に記載のナノファイバシート。
<17>
前記ナノファイバ層の厚みD1が、0.1μm以上、好ましくは5.1μm以上、より好ましくは10μm以上である、前記<1>~<16>の何れか1に記載のナノファイバシート。
<18>
前記ナノファイバ層の厚みD1が、500μm以下、より好ましくは400μm以下、さらに好ましくは100μm以下である、前記<1>~<17>の何れか1に記載のナノファイバシート。
<19>
前記基材層が、合成樹脂製のフィルム又は繊維シートを含む、前記<1>~<18>の何れか1に記載のナノファイバシート。
<20>
前記繊維シートが、不織布、織布、編み地、紙、メッシュシート、又はそれらの積層体を含む、前記<19>に記載のナノファイバシート。
【0066】
<21>
前記不織布が、メルトブローン不織布、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、スパンレース不織布又はレーヨン不織布を含む、前記<20>に記載のナノファイバシート。
<22>
前記繊維シートは、これを構成する繊維ないしストランドの太さが、前記ナノファイバよりも太い、前記<20>又は<21>に記載のナノファイバシート。
<23>
前記基材層は、前記ナノファイバ層に対して剥離可能に積層されており、該ナノファイバ層との対向面に、剥離処理が施されており、
前記剥離処理が、シリコーン樹脂の塗布又はコロナ放電処理である、前記<1>~<22>の何れか1に記載のナノファイバシート。
<24>
前記基材層の厚さが5μm以上、好ましくは10μm以上である、前記<1>~<23>の何れか1に記載のナノファイバシート。
<25>
前記基材層の厚さが20mm以下、好ましくは15mm以下である、前記<1>~<24>の何れか1に記載のナノファイバシート。
<26>
前記ナノファイバ層の表面を被覆するカバーシートを備えている、前記<1>~<25>の何れか1に記載のナノファイバシート。
<27>
前記基材層及び前記カバーシートそれぞれが繊維材料からなり、
前記カバーシートの繊維材料は、前記基材層の繊維材料よりも平均繊維径が大きい、前記<26>に記載のナノファイバシート。
<28>
前記<1>~<27>の何れか1に記載のナノファイバシートの使用方法であって、
使用者が前記把持部を一方の手で把持しながら、前記貼付部における前記ナノファイバ層の前記対象物の表面への貼り付け及び貼り付けた該ナノファイバ層からの前記基材層の剥離を行う、ナノファイバシートの使用方法。
<29>
前記対象物は、ヒト若しくは非ヒト哺乳類の体表面又は植物表面であり、
前記体表面が肌、歯、歯茎、又は毛髪であり、
前記植物表面が枝又は葉である、前記<28>に記載のナノファイバシートの使用方法。
<30>
前記使用方法が、前記ナノファイバシートをヒトの肌に貼り付けて使用する化粧方法である、前記<28>又は<29>に記載のナノファイバシートの使用方法。
【0067】
<31>
前記ナノファイバ層を液状物で湿潤させた状態で使用する、前記<30>に記載のナノファイバシートの使用方法。
<32>
基材層と、該基材層の一方の面側に配された高分子化合物のナノファイバを含むナノファイバ層とを備え、平面視における相異なる部位に、対象物の表面に貼付される貼付部と、使用時に手で把持される把持部とを有するナノファイバシートの製造方法であって、
前記ナノファイバ層を前記貼付部の部分と前記把持部の部分とに分断する分断線を、切断手段によって形成する工程を含む、ナノファイバシートの製造方法。
<33>
前記切断手段がレーザー装置である、前記<32>に記載のナノファイバシートの製造方法。
<34>
前記把持部における前記ナノファイバ層を除去する工程を含む、前記<32>又は<33>に記載のナノファイバシートの製造方法。
<35>
前記基材層上に前記ナノファイバ層の原料を吐出して該ナノファイバ層を形成する工程を含む、前記<32>~<34>の何れか1に記載のナノファイバシートの製造方法。
【実施例
【0068】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0069】
〔実施例1〕
図1に示す平面視形状を有するナノファイバシートを作製した。先ず、ポリビニルブチラール(PVB;積水化学工業株式会社製、S-LEC B BM-1)のナノファイバからなるナノファイバ層を基材層上に形成し、ナノファイバ層と基材層とからなる積層シートを作製した。基材層には、レーヨン不織布(オーミケンシ株式会社製、商品名「紅椿」、厚さ200μm)を用いた。ナノファイバ層は、PVBを12%、エタノールを81.2%、及び1,3-ブタンジオールを6.8%含む原料液を用いて、エレクトロスピニング法によって形成した。ナノファイバの繊維径は、全てが10nm以上1000nm以下であり、平均が700nmであった。次いで、得られた積層シートを、半導体レーザーによって、図1に示す平面視形状に切り出すとともに、ナノファイバ層に対し分断線を形成した。分断線は、ナノファイバ層を貫通する切れ込みであり、且つ基材層の一部に達すものであった。また、形成した分断線は、ナノファイバシートの周縁上の2点間を通る連続的な直線状であった。分断線をなす切れ込みの基材層における深さが、該基材層の厚みに対して10%であった。この分断線の幅を表1に示す。
【0070】
〔実施例2~5〕
実施例2~4では、基材層の厚みに対する基材層における切れ込みの深さの割合(%)と、分断線の幅を表1に示すように変更した点以外は、実施例1と同様の方法でナノファイバシートを作製した。
実施例5では、分断線を非連続な直線状に且つ基材層を貫通するように形成した点以外は、実施例1と同様の方法でナノファイバシートを作製した。
【0071】
〔比較例1及び2〕
比較例1では、分断線を形成しなかった点以外は、実施例1と同様の方法でナノファイバシートを作製した。
比較例2では、分断線を連続的な直線状に変更した点以外は、実施例5と同様の方法でナノファイバシートを作製した。把持部と貼付部とで基材層は完全に分断され、把持部を把持して貼り付けることが出来なくなった。
【0072】
〔貼付状態の評価〕
実施例及び比較例の各ナノファイバシートについて、ナノファイバ層を対象物の表面に貼り付ける際の操作性を以下の方法で評価した。
被験者の上腕内側部に、5mL/cmの美容液(商品名:ライズ ローション II(さっぱり)、花王株式会社製)を付与して湿潤状態にし、その部位に、把持部を手で把持したナノファイバシートのナノファイバ層を当接させた。次いで、把持部を把持した状態でナノファイバ層の貼付領域を基材層から剥離して、該貼付領域を肌に貼付した。そして、貼付領域の貼付状態を以下の評価基準で評価した。評価結果を表1に示す。
A:基材層からの剥離の際にナノファイバ層が縒れず、肌に良好に貼付できた。
B:基材層からの剥離の際にナノファイバ層が縒れて、貼付不良が生じた。
比較例2のナノファイバシートは、上述した貼付操作を実施できなかったため、貼付状態の評価を行わなかった。
【0073】
【表1】
【0074】
表1に示すように、実施例1~5におけるナノファイバシートは、比較例1と異なり、貼付部におけるナノファイバ層が縒れることなく、肌に良好に貼付することができた。また、実施例1~5のナノファイバシートの基材層からナノファイバ層を剥離する際の操作も容易であった。また分断線の幅が大きいほど視認性が向上し、剥離する際の操作が容易であった。
【符号の説明】
【0075】
10 ナノファイバシート
11 ナノファイバ層
11a 貼付領域
11b 把持領域
12 基材層
15 分断線
17 境界線
A 貼付部
B 把持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8