(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
F16L 23/028 20060101AFI20240730BHJP
F16L 21/08 20060101ALI20240730BHJP
F16L 33/28 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
F16L23/028
F16L21/08 A
F16L33/28
(21)【出願番号】P 2020191199
(22)【出願日】2020-11-17
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】508321823
【氏名又は名称】株式会社イノアック住環境
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】西 佳彦
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-019895(JP,A)
【文献】実開平06-080992(JP,U)
【文献】特開2010-038266(JP,A)
【文献】特開2003-120878(JP,A)
【文献】実公昭37-009447(JP,Y1)
【文献】米国特許第06237968(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 23/028
F16L 21/08
F16L 33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプの内側に挿入されるインコアと、
前記パイプの外側に嵌められるフランジと、を備え、
前記インコアは、
前記パイプの奥側から入口側へ向かうにつれて外径が拡径する拡径部と、
前記拡径部よりも前記パイプの入口側に嵌まるように設けられ、外径が前記拡径部の最大外径
と同じに形成された抜止部と、を有している
ことを特徴とする管継手。
【請求項2】
パイプの内側に挿入されるインコアと、
前記パイプの外側に嵌められるフランジと、を備え、
前記インコアは、
前記パイプの奥側から入口側へ向かうにつれて外径が拡径する拡径部と、
前記拡径部よりも前記パイプの入口側に嵌まるように設けられ、外径が前記拡径部の最大外径以下に形成された抜止部と、を有し、
前記拡径部は、
第1テーパ部と、
前記第1テーパ部よりも前記パイプの入口側に嵌まるように該第1テーパ部に連ねて設けられ、前記第1テーパ部と傾斜角度を変えた第2テーパ部と、を有している
ことを特徴とする管継手。
【請求項3】
パイプの内側に挿入されるインコアと、
前記パイプの外側に嵌められるフランジと、を備え、
前記インコアは、
前記パイプの奥側から入口側へ向かうにつれて外径が拡径する拡径部を有し、
前記拡径部は、
第1テーパ部と、
前記第1テーパ部に連ねて該第1テーパ部よりも前記パイプの入口側に嵌まるように設けられ、前記第1テーパ部と傾斜角度を変えた第2テーパ部と、を有している
ことを特徴とする管継手。
【請求項4】
パイプの内側に挿入されるインコアと、
前記パイプの外側に嵌められるフランジと、
前記インコアの端に取り付けられるパッキンと、を備え、
前記インコアは、
前記パイプの奥側から入口側へ向かうにつれて外径が拡径する拡径部と、
前記拡径部よりも前記パイプの入口側に嵌まるように設けられ、外径が前記拡径部の最大外径以下に形成された抜止部と、
前記インコアの接続端において前記インコアの径方向外側に突出し、前記パッキンの外周縁に設けられた嵌合部に嵌まる鍔部と、
前記インコアの接続端に設けられ、前記パッキンに設けられた凸部が嵌まる凹部と、を有していることを特徴とする管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、樹脂管などのパイプの接続に用いられる管継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂管などのパイプの接続に用いられる管継手として、例えば特許文献1のように、パイプの外側に嵌めるコアとフランジとを組み合わせたものがある。また、別の管継手50としては、
図7に示すように、テーパ面52aを有するインコア52をパイプPの内側に嵌め込むことで、パイプPの端部を内側から押し広げて、パイプPの外側に嵌めたフランジ54とインコア52のテーパ面52aとの間でパイプPの端部を挟んで止水するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パイプには、例えば使用する圧力などが異なる複数の管種が設定されている。パイプは、管種が異なると、内径が相違することから、管種に合わせた管継手が用いられている。このため、管継手としては、管種の種類数分のバリエーションが必要になってしまう。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、異なる管種のパイプに共通して用いることができる管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係る管継手は、
パイプの内側に挿入されるインコアと、
前記パイプの外側に嵌められるフランジと、を備え、
前記インコアは、
前記パイプの奥側から入口側へ向かうにつれて外径が拡径する拡径部と、
前記拡径部よりも前記パイプの入口側に嵌まるように設けられ、外径が前記拡径部の最大外径以下に形成された抜止部と、を有していることを要旨とする。
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、別の本発明に係る管継手は、
パイプの内側に挿入されるインコアと、
前記パイプの外側に嵌められるフランジと、を備え、
前記インコアは、
前記パイプの奥側から入口側へ向かうにつれて外径が拡径する拡径部を有し、
前記拡径部は、
第1テーパ部と、
前記第1テーパ部に連ねて該第1テーパ部よりも前記パイプの入口側に嵌まるように設けられ、前記第1テーパ部と傾斜角度を変えた第2テーパ部と、を有していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る管継手によれば、異なる管種のパイプに共通して用いることができる。
別の本発明に係る管継手によれば、異なる管種のパイプに共通して用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の好適な実施例に係る管継手を示す側面図である。
【
図3】実施例の管継手を分解して示す側面図である。
【
図4】実施例の管継手を分解して示す断面図である。
【
図5】実施例の管継手において、インコアとフランジとの関係を示す要部断面図である。(a)は内径が比較的大きい(肉厚が薄い)管種の場合であり、(b)は(a)よりも内径が小さい(肉厚が厚い)管種の場合である。
【
図6】実施例の管継手の接続工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明に係る管継手につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【実施例】
【0011】
図1~
図4に示すように、実施例に係る管継手10は、第1パイプ(パイプ)P1の内側に挿入されるインコア12と、第1パイプP1の外側に嵌められる第1フランジ14とを備えている。また、管継手10は、インコア12の端に取り付けられるパッキン16と、インコア12との間にパッキン16を挟むように配置される第2フランジ18とを備えている。管継手10は、第1パイプP1の軸方向に並んで対向配置される第1フランジ14と第2フランジ18とを、ボルト20およびナット22で締結して組み付けられている。そして、管継手10には、第1パイプP1と別の第2パイプP2が、第2フランジ18に接続される。管継手10は、例えばポリエチレン管などの樹脂管である第1パイプP1の接続に適している。管継手10を介して第1パイプP1と接続される第2パイプP2としては、例えばポリエチレン管などの樹脂管や金属管などに適用可能である。なお、実施例において、インコア12、第1フランジ14および第2フランジ18は、鋳鉄等の金属製であり、パッキン16がゴム製である。
【0012】
図2~
図4に示すように、インコア12は、第1パイプP1の奥側から入口側へ向かうにつれて外径が拡径する拡径部24を有している。拡径部24は、第1テーパ部24aと、第1テーパ部24aよりも第1パイプP1の入口側に嵌まるように第1テーパ部24aに連ねて設けられ、第1テーパ部24aと傾斜角度を変えた第2テーパ部24bとを有している。また、拡径部24は、第1テーパ部24aよりも第1パイプP1の奥側に位置するように第1テーパ部24aに連ねて設けられ、第1テーパ部24aと傾斜角度を変えた第3テーパ部24cを有している。このように、実施例の拡径部24は、3段のテーパ形状になっている。第1テーパ部24aは、インコア12の軸方向に対する傾斜角度が、例えば2°~5°程度に設定されている。第2テーパ部24bは、インコア12の軸方向に対する傾斜角度が、例えば25°~35°程度に設定されており、第1テーパ部24aよりも傾斜角度が急に設定されている。第3テーパ部24cは、インコア12の軸方向に対する傾斜角度が、例えば20°~30°程度に設定されており、第1テーパ部24aよりも傾斜角度が急に設定されている。
【0013】
図4に示すように、インコア12は、第1パイプP1への挿入端の外径が、接続対象の第1パイプP1の内径よりも小さくなるように形成されている。実施例のインコア12は、第1パイプP1への挿入端が第3テーパ部24cで構成されて、第3テーパ部24cの最小外径が第1パイプP1の内径よりも小さくなっている。なお、第3テーパ部24cを省略する場合は、第1パイプP1への挿入端が第1テーパ部24aで構成されることになるので、第1テーパ部24aの最小外径を第1パイプP1の内径よりも小さくすればよい。複数種類数の管種の第1パイプP1を接続対象とする場合、管種が異なっていても外径が同じであるが、使用する圧力が高い管種ほど肉厚が厚くなって内径が小さくなる。例えば高圧用10Kのポリエチレン管は、一般用や高圧用7Kのポリエチレン管よりも肉厚が厚く、内径が小さくなる。また、一般用1種のポリエチレン管は、一般用2種のポリエチレン管よりも肉厚が厚く、内径が小さくなる。従って、インコア12における第1パイプP1への挿入端の外径は、複数種類数の管種の中で最も内径が小さい第1パイプP1の内径よりも小さくするとよい。
【0014】
図2~
図4に示すように、インコア12は、拡径部24よりも第1パイプP1の入口側に嵌まるように設けられ、外径が拡径部24の最大外径以下に形成された抜止部26を有している。実施例の抜止部26は、拡径部24に連ねて設けられている。抜止部26は、周面がインコア12の軸方向に沿って直線的に延びる形状であっても(実施例)、第1パイプP1の奥側から入口側へ向かうにつれて外径が縮径する形状であってもよい。
【0015】
図2~
図4に示すように、インコア12は、第1パイプP1への挿入端と反対の接続端に、径方向外側へ延びる鍔部27を有している。鍔部27は、抜止部26よりも半径方向外側へ張り出すように形成されている。実施例の鍔部27は、拡径部24と反対側に、抜止部26に連ねて設けられている。
【0016】
図4に示すように、第1フランジ14は、第1フランジ14の中央部に貫通するように設けられ、第1パイプP1が通る開口部28を有している。また、第1フランジ14には、ボルト20を通す第1通孔30が、周方向に互いに離して複数(実施例では3カ所)設けられている。開口部28の内面は、第1パイプP1の奥側となる開口縁(一方の開口縁)から第1パイプP1の入口側となる開口縁(他方の開口縁)に向かうにつれて拡径するように傾斜している。開口部28の内面は、第1フランジ14の軸方向に対する傾斜角度が、例えば3°~6°程度に設定されている。開口部28の内面の傾斜角度は、第1テーパ部24aの傾斜角度と同じまたは第1テーパ部24aの傾斜角度よりも急であることが好ましい。なお、実施例では、開口部28の内面の傾斜角度が、第1テーパ部24aの傾斜角度よりも大きく設定されている。また、開口部28の内面の傾斜角度は、第2テーパ部24bの傾斜角度よりも緩いことが好ましい。第1フランジ14は、開口部28における第1パイプP1の奥側となる開口縁が第1テーパ部24aの外側に位置して、開口部28における第1パイプP1の入口側の開口縁が第2テーパ部24bの外側に位置するように配置される。
【0017】
図2および
図4に示すように、パッキン16は、インコア12の接続端に設けられた第1凹部12aに嵌まる第1凸部16aと、第1凸部16aと反対側へ突出し、第2フランジ18に設けられた第2凹部18aに嵌まる第2凸部16bとを備えている。また、パッキン16は、インコア12の鍔部27に嵌まる嵌合部16cを備えている。実施例の嵌合部16cは、半径方向外側へ延びる延出片の先端から第1凸部16aの突出方向と同じ方向へ延びる嵌合片を有する鉤状に形成されている。
【0018】
図2および
図4に示すように、第2フランジ18は、ボルト20を通す第2通孔32が、周方向に互いに離して複数(実施例では3カ所)設けられている。また、実施例の第2フランジ18には、第2パイプP2と接続可能な雄ねじ部34が設けられている。
【0019】
図6を参照して、実施例の管継手10を用いたパイプP1,P2の接続について説明する。まず、開口部28に第1パイプP1を通して、第1フランジ14を第1パイプP1に取り付ける(
図6(a))。当て木をインコア12に当てて、ハンマー等によって当て木を介してインコア12を、第3テーパ部24c側から第1パイプP1の内側に打ち込む(
図6(b))。これにより、拡径部24の傾斜によって、第1パイプP1の接続端部が押し広げられる(
図6(c))。インコア12を第1パイプP1の端面が鍔部27に当たるまで打ち込むことで、拡径部24および抜止部26が第1パイプP1の内側に嵌まる。
【0020】
次に、第1凸部16aをインコア12の第1凹部12aに嵌め込むと共に、嵌合部16cをインコア12の鍔部27に被せることで、パッキン16をインコア12に取り付ける(
図6(d))。第2フランジ18の第2凹部18aとパッキン16の第2凸部16bとを嵌め合わせて、第2フランジ18を第1フランジ14と向かい合わせて配置する。第1フランジ14をインコア12に寄せ合わせて、第1フランジ14の第1通孔30と第2フランジ18の第2通孔32とを通したボルト20にナット22を嵌めて締め付ける(
図6(e))。これにより、第1パイプP1が、第1フランジ14における開口部28の奥側開口縁と第1テーパ部24aとの間に挟まれると共に、開口部28における第1パイプP1の入口側開口縁が第2テーパ部24bとの間に挟まれる(
図6(f))。このように、管継手10は、インコア12の拡径部24と第1フランジ14の開口部28との間に第1パイプP1を挟んで止水している。
【0021】
図5(a)に示すように、管継手10は、比較的肉厚が薄い管種であっても、比較的急な傾斜角度の第2テーパ部24bと第1フランジ14の開口部28との間で、第1パイプP1を狙いの圧縮率まで圧縮することができる。また、管継手10は、比較的肉厚が薄い管種であっても、比較的緩い傾斜角度の第1テーパ部24aの外側位置で第1フランジ14の開口部28が第1パイプP1に当てることができる。このように、管継手10によれば、比較的肉厚が薄い管種であっても、拡径部24(第1テーパ部24aおよび第2テーパ部24b)と第1フランジ14の開口部28との間で第1パイプP1を面圧縮することができ、長期的な止水性能を確保できる。
図5(b)に示すように、管継手10は、比較的肉厚が厚い管種の場合、第1テーパ部24aおよび第2テーパ部24bに亘って、第1フランジ14の開口部28との間で、第1パイプP1を圧縮した状態で挟むことができる。このように、管継手10によれば、比較的肉厚が厚い管種の場合であっても、拡径部24(第1テーパ部24aおよび第2テーパ部24b)と第1フランジ14の開口部28との間で第1パイプP1を面圧縮することができ、長期的な止水性能を確保できる。比較的肉厚が厚い管種であるほど使用圧力が高く、要求される止水性能が高くなる。管継手10は、肉厚が厚くなるほど第1テーパ部24aおよび第2テーパ部24bに亘って第1フランジ14の開口部28との間で、第1パイプP1を高圧縮することから、使用圧力が高い管種であっても要求される止水性能を確保することができる。このように、管継手10によれば、第1パイプP1の肉厚が異なっても止水性能を確保することができることから、異なる管種に共通して使用することができる。
【0022】
図7に示す1段テーパの管継手50の場合、この管継手50が適合する管種よりも肉厚が薄い管種に用いると、フランジ54の開口縁の一部だけしかパイプPに当たらず、フランジ54の内面全体で面圧縮することができない。このため、従来では、管継手50が管種毎に設定されている。
【0023】
実施例の管継手10では、インコア12によって内側から押し広げられた第1パイプP1において、元に戻ろうとする反発力が働く。例えば
図7のインコア52のようにパイプPの入口にテーパ面52aが嵌まっていると、反発力がテーパ面52aに沿ってパイプPを押し出すように働き、インコア52がパイプPから抜け出してしまうことがある。肉厚が厚い管種であるほど反発力が強く働き、インコア52がパイプPから抜け出し易くなってしまう。
【0024】
実施例の管継手10によれば、インコア12における第1パイプP1の入口側に嵌まる位置に、外径が拡径部24の最大外径以下に形成された抜止部26を備えているので、抜止部26での反発力が、第1パイプP1からインコア12が抜け出す方向へ働くことを防ぐことができる。このように、管継手10は、比較的肉厚が厚い管種であっても、比較的肉厚の薄い管種と同様に、インコア12が第1パイプP1から抜け出し難くすることができる。従って、管継手10によれば、第1パイプP1の肉厚が異なってもインコア12を適切に抜け止めできることから、異なる管種に共通して使用することができる。
【0025】
(変更例)
前述した事項に限らず、例えば以下のように変更してもよい。なお、本発明は、実施例および以下の変更例の具体的な記載のみに限定されるものではない。
(1)実施例では、第2フランジとして雄ねじ付きのフランジを例示したが、これに限らず、例えば、雌ねじ付きのフランジであってもよい。また、インコアを嵌め込んだ第1パイプと、同じくインコアを嵌め込んだ第2パイプとを、第1フランジ同士で接続してもよい。
(2)拡径部に第3テーパ部を設けることで、拡径部の軸方向長さを短くすることができるメリットがあるが、場合によっては第3テーパ部を省略してもよい。
【符号の説明】
【0026】
12 インコア,14 第1フランジ(フランジ),24 拡径部,
24a 第1テーパ部,24b 第2テーパ部,26 抜止部,28 開口部,
P1 第1パイプ(パイプ)