(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】るつぼ型誘導炉用炉頂カバー
(51)【国際特許分類】
F27B 14/12 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
F27B14/12
(21)【出願番号】P 2020192834
(22)【出願日】2020-11-19
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187791
【氏名又は名称】山口 晃志郎
(72)【発明者】
【氏名】古田倫靖
(72)【発明者】
【氏名】堀智洋
(72)【発明者】
【氏名】吉村彰記
(72)【発明者】
【氏名】岩元孝史
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-156003(JP,U)
【文献】特開2016-164300(JP,A)
【文献】実開昭49-27444(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 14/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
るつぼ型誘導炉の炉頂を覆うカバーであって、
カバー体と、
前記カバー体の内部に形成され、冷却媒体を循環可能にする流路を備え、
前記カバー体は、
平面視において、一部に切欠きを有し、中心に開口穴を有するC型形状であり、
前記炉頂に接触する底面と、前記底面に対向する面である天面と、
内周側を形成する内周側面と、外周側を形成する外周側面と、
前記切欠きを構成する側面であって、一方の端部を形成する第一端部と、他方の端部を形成する第二端部とによって所定の厚みを有する外殻が形成され、
前記流路は、少なくとも内周路を含み、
前記内周路は、前記外周側面よりも前記内周側面に近接し、前記内周側面に沿って管状に形成され、
前記流路は、前記第一端部に隣接する前記外周側面に形成される入口部と、前記第二端部に隣接する前記外周側面に形成される出口部とを繋いで連続して形成される、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー。
【請求項2】
前記流路は、
前記内周路の一部に連続し、外周側面に向かって突出する少なくとも一つの突出部が形成され、
前記内周路のみによって形成される部分と、前記内周路に前記突出部が形成される部分とからなる請求項1に記載のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー。
【請求項3】
前記カバー体は複数の分割カバー体からなり、
平面視において隣接する前記分割カバー体の間は、前記流路を連結する連結路が形成され、
前記流路は、前記連結路を介して前記入口部から前記出口部まで連続して形成される請求項1又は2に記載のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー。
【請求項4】
前記流路は、少なくとも、前記内周路と、管状の中間路と、管状の外周路を含み、
前記内周路は、前記入口部から前記第二端部に隣接する位置まで、前記カバー体の内周側面に沿って形成されて前記第二端部に隣接する位置において屈曲し、
前記中間路は、一方の端部が屈曲した前記内周路に連続し、前記内周路に対して前記外周側面の側に沿って少なくとも一つの列に形成され、他方の端部が前記第一端部に隣接する位置において屈曲し、
前記外周路は、屈曲した前記中間路に連続し、前記中間路に対して前記外周側面の側に沿って形成され、前記出口部に繋がる請求項1に記載のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー。
【請求項5】
前記流路は、平面視において第一流路と第二流路との二列に形成され、
前記入口部は、前記第一流路に繋がる第一入口部と、前記第二流路に繋がる第二入口部からなり、
前記出口部は、前記第一流路に繋がる第一出口部と、前記第二流路に繋がる第二出口部からなり、
前記第二流路は、前記第一流路に対して前記外周側面の側に形成され、
前記第一流路と前記第二流路とは独立して形成される請求項1から4のいずれかに記載のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー。
【請求項6】
前記流路は、厚み方向において第一流路と第三流路の二段に形成され、
前記入口部は、前記第一流路に繋がる第一入口部と、前記第三流路に繋がる第三入口部からなり、
前記出口部は、前記第一流路に繋がる第一出口部と、前記第三流路に繋がる第三出口部からなり、
前記第一流路と前記第三流路とは独立して形成される請求項1から4のいずれかに記載のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー。
【請求項7】
前記流路は、前記入口部と前記出口部を除いて前記カバー体の内部に形成され、
前記カバー体は前記流路を含めて一体で形成されるか、又は厚み方向において前記流路を挟んで複数の部材によって形成される請求項1から6のいずれかに記載のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー。
【請求項8】
前記カバー体の前記天面の一部にカバー体凹部が形成され、
前記流路は、前記カバー体とは別体の流路管によって形成され、
前記流路管は、前記カバー体凹部に対して着脱可能に固定される請求項1から6のいずれかに記載のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、るつぼ型誘導炉の頂部に取り付けられる炉頂カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、るつぼ型誘導炉は、るつぼに投入された金属を溶解する際に高熱となることに伴い発生する課題があった。るつぼ内の金属を溶解する際、るつぼが高温となり、炉頂部分も高温となるため、炉頂を覆う炉頂カバーも高温となる。すると、炉頂カバーに反りが発生する、或いは割れが生じることによって、炉頂部分を覆って保護するという機能を果たせなくなるという課題があった。すなわち、炉頂カバーが本来拘束すべきるつぼの炉頂に対して拘束力が不足することになり、るつぼを形成する耐火物に亀裂が発生するという課題があった。
【0003】
この課題を解決するために、るつぼ型誘導炉における炉頂部を冷却するための炉頂カバーが提案されている。例えば、特許文献1によれば、
図22に示すように、炉頂カバー820は、空洞820aを有する薄い鋼材からなるリング状体821の側部に装着された鋼材からなる筒体822とからなる。空洞820aは冷却水の樋水口として用いられるもので、冷却水の入口部823、出口部824を有し、しかも補強機能を有する仕切板825で所定間隔毎に仕切られる。この場合、仕切板825は底より所定の高さの位置に二個の樋水口826を有している。上記リング状体821は、出湯口を覆うごとく延在しており、この延在部の空洞は樋水口827を介してリング状体821の空洞と連通している。
【0004】
この構成によれば、空洞820aはリング状体821の内部全体に広がっており、冷却水は空洞820a全体に広がる。るつぼ型誘導炉に対し、冷却したい部分は高温になりやすい内周に近い部分であり、この場合耐火れんがも冷却対象に含まれる。なお、説明のため、
図22に記載する符号は特許文献1に記載されている図面の符号と異なっているが、構成要素とその機能は同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来例では空洞820aはるつぼ型誘導炉の内周から遠い外周部にまで広がっており、冷却水が外周部にまで広がる。よって、本来冷却したい部分以外にも冷却水が広がるため、冷却効果の低下が予測される。
【0007】
本発明の目的は、従来の課題を解決すべくなされたものであり、冷却効果を高めたるつぼ型誘導炉用炉頂カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様に係るるつぼ型誘導炉用炉頂カバーは、るつぼ型誘導炉の炉頂を覆うカバーであって、カバー体と、前記カバー体の内部に形成され、冷却媒体を循環可能にする流路を備え、前記カバー体は、平面視において、一部に切欠きを有し、中心に開口穴を有するC型形状であり、前記炉頂に接触する底面と、前記底面に対向する面である天面と、内周側を形成する内周側面と、外周側を形成する外周側面と、前記切欠きを構成する側面であって、一方の端部を形成する第一端部と、他方の端部を形成する第二端部とによって所定の厚みを有する外殻が形成され、前記流路は、少なくとも内周路を含み、前記内周路は、前記外周側面よりも前記内周側面に近接し、前記内周側面に沿って管状に形成され、前記流路は、前記第一端部に隣接する前記外周側面に形成される入口部と、前記第二端部に隣接する前記外周側面に形成される出口部とを繋いで連続して形成される。
【0009】
これによれば、流路は、少なくとも内周路を含み、内周路は、外周側面よりも内周側面に近接し、内周側面に沿って管状に形成される。よって、るつぼ型誘導炉用炉頂カバーは、るつぼ型誘導炉が高温となる部分に直接的又は間接的に接する内周側面に近接する部分において、冷却媒体を流すことができるので、冷却させたい部分に対して冷却効果を高め、効率的に冷却することができる。
【0010】
また、前記るつぼ型誘導炉用炉頂カバーは、前記流路が、前記内周路の一部に連続し、外周側面に向かって突出する少なくとも一つの突出部が形成され、前記内周路のみによって形成される部分と、前記内周路に前記突出部が形成される部分とからなものでもよい。
【0011】
この場合、流路は内周側面に近接する部分に加え、外周側面に向かって部分的に突出部が形成されるので、内周側面に近接する部分に加えて外周側面に向かう周辺の領域でも冷却媒体を流すことができる。すなわち、高温になりやすい内周側面に近接する部分は常時冷却媒体を循環させ、内周側面に近接する部分よりも温度が低い周辺部分では、突出部に冷却媒体を滞留させることで冷却させることができる。
【0012】
また、前記るつぼ型誘導炉用炉頂カバーは、前記カバー体が複数の分割カバー体からなり、平面視において隣接する前記分割カバー体の間は、前記流路を連結する連結路が形成され、前記流路は、前記連結路を介して前記入口部から前記出口部まで連続して形成されてもよい。
【0013】
この場合、るつぼ型誘導炉が大型であり、るつぼ型誘導炉用炉頂カバーが大型になった場合でも、複数個に分割することで、製造及び取扱を容易にすることができる。さらに、連結路によって流路を連結することで、カバー体が分割されても冷却媒体を供給するための装置を増加させる必要が無い。
【0014】
また、前記るつぼ型誘導炉用炉頂カバーは、前記流路が、少なくとも、前記内周路と、管状の中間路と、管状の外周路を含み、前記内周路は、前記入口部から前記第二端部に隣接する位置まで、前記カバー体の内周側面に沿って形成されて前記第二端部に隣接する位置において屈曲し、前記中間路は、一方の端部が屈曲した前記内周路に連続し、前記内周路に対して前記外周側面の側に沿って少なくとも一つの列に形成され、他方の端部が前記第一端部に隣接する位置において屈曲し、前記外周路は、屈曲した前記中間路に連続し、前記中間路に対して前記外周側面の側に沿って形成され、前記出口部に繋がってもよい。
【0015】
この場合、るつぼ型誘導炉用炉頂カバーの流路は、内周路と中間路と外周路を備えるので、冷却媒体を流すことで、カバー体全体を冷却することができる。内周路は入口部に繋がるので、冷却媒体は温度が低い状態で内周側面に近接する部分を冷却することができる。さらに、冷却媒体は、中間路から外周路へ流れることにより、温度が高くなりながらもカバー体全体を冷却する効果を発揮できる。冷却媒体を効率的に使用して、カバー体を冷却することができる。
【0016】
また、前記るつぼ型誘導炉用炉頂カバーは、前記流路が、平面視において第一流路と第二流路との二列に形成され、前記入口部は、前記第一流路に繋がる第一入口部と、前記第二流路に繋がる第二入口部からなり、前記出口部は、前記第一流路に繋がる第一出口部と、前記第二流路に繋がる第二出口部からなり、前記第二流路は、前記第一流路に対して前記外周側面の側に形成され、
前記第一流路と前記第二流路とは独立して形成されてもよい。
【0017】
この場合、カバー体は平面視において二列の流路が形成されるので、広い領域に対して冷却媒体を流すことができる。さらに、二列の流路は、それぞれ独立して入口部と出口部とに繋がるので、同時に冷却媒体を流すことができる。特に、二列の流路に対して入口部と出口部とを反対方向に設置すれば、冷却媒体が温度上昇することによって出口部の周辺での冷却効果が下がったとしても、反対側の流路に流される冷却媒体が温度上昇を相殺して冷却することができる。
【0018】
また、前記るつぼ型誘導炉用炉頂カバーは、前記流路が、厚み方向において第一流路と第三流路の二段に形成され、前記入口部は、前記第一流路に繋がる第一入口部と、前記第三流路に繋がる第三入口部からなり、前記出口部は、前記第一流路に繋がる第一出口部と、前記第三流路に繋がる第三出口部からなり、前記第一流路と前記第三流路とは独立して形成されてもよい。
【0019】
この場合、厚み方向において流路が独立して二段に形成されるので、同時に冷却媒体を流すことができる。平面方向における領域に制限がある場合であっても、流路を二段にすることができるので、より冷却効果を高めることができる。特に、二段の流路に対して、冷却媒体を流す方向を逆にすれば、第一端部の周辺と第二端部の周辺との温度差を小さくすることができる。
【0020】
また、前記るつぼ型誘導炉用炉頂カバーは、前記流路が、前記入口部と前記出口部を除いて前記カバー体の内部に形成され、前記カバー体は前記流路を含めて一体で形成されるか、又は厚み方向において前記流路を挟んで複数の部材によって形成されてもよい。
【0021】
この場合、流路を形成するために新たな部材を使用する必要が無いので、流路のための部材を準備する必要が無く、コスト低減に寄与することができる。
【0022】
また、前記るつぼ型誘導炉用炉頂カバーは、前記カバー体の前記天面の一部にカバー体凹部が形成され、前記流路は、前記カバー体とは別体の流路管によって形成され、前記流路管は、前記カバー体凹部に対して着脱可能に固定されてもよい。
【0023】
この場合、流路を形成する流路管が交換可能なので、流路に腐食等が発生したときに流路管を交換することでカバー体全体を交換する必要が無いので、製品寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー100等を装着した状態のるつぼ型誘導炉50を示した斜視図であり、一部を断面図にした図である。
【
図2】
図1における正面図に相当し、鉛直方向に対して中心軸Cにおいて切断した断面図である。
【
図4】本発明のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー100等を示した斜視図である。
【
図5】本発明のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー100(120)における平面図(
図2におけるA視図に相当)であり、一部は厚み方向における流路2の中心で切断した断面図である。
【
図6】本発明のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー100(120)を示した図であり、(a)、(d)は、
図4におけるD視図であり、(b)、(e)は、
図5における断面I-Iのうちカバー体1が流路2を含めて一体で形成される場合を示す断面図であり、(c)、(f)は
図5における断面I-Iのうちカバー体1が流路2を挟んで複数の部材によって形成される場合を示す断面図であり、(a)、(b)、(c)は流路2が厚み方向に一段の場合を示し、(d)、(e)、(f)は流路2が厚み方向に二段の場合を示す。
【
図7】本発明のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー200(220)における平面図(
図2におけるA視図に相当)であり、一部は厚み方向における流路2の中心で切断した断面図である。
【
図8】本発明のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー200(220)を示した図であり、(a)、(c)は、
図4におけるD視図であり、(b)、(d)は、
図7における断面II-IIを示す断面図であり、(a)、(b)は、流路2が厚み方向に一段の場合を示し、(c)、(d)は、流路2が厚み方向に二段の場合を示す。
【
図9】本発明のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー300(320)における平面図(
図2におけるA視図に相当)であり、一部は厚み方向における流路2の中心で切断した断面図である。
【
図10】本発明のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー300(320)を示した図であり、(a)、(c)は、
図4におけるD視図であり、(b)、(d)は、
図9における断面III-IIIを示す断面図であり、(a)、(b)は、流路2が厚み方向に一段の場合を示し、(c)、(d)は、流路2が厚み方向に二段の場合を示す。
【
図11】本発明のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー400における平面図(
図2におけるA視図に相当)であり、一部は厚み方向における流路2の中心で切断した断面図である。
【
図12】本発明のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー400を示した図であり、(a)は、
図4におけるD視図であり、(b)は、
図11における断面IV-IVを示す断面図である。
【
図13】本発明のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー110(130)における平面図(
図2におけるA視図に相当)であり、一部は厚み方向における流路2の中心で切断した断面図である。
【
図14】本発明のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー110(130)を示した図であり、(a)、(c)は、
図4におけるD視図であり、(b)、(d)は、
図13における断面VIII-VIIIを示す断面図であり、(a)、(b)は、流路2が厚み方向に一段の場合を示し、(c)、(d)は、流路2が厚み方向に二段の場合を示す。
【
図15】本発明のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー420を示した図であり、
図4におけるD視図である。
【
図16】本発明のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー420を示した図であり、(a)は
図15における断面V-Vを示す断面図であり、(b)は断面VI-VIを示す断面図である。
【
図17】本発明のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー420を示した図であり、
図16(a)における断面VII-VIIを示す断面図である。
【
図18】本発明のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー150(160)における平面図(
図2におけるA視図に相当)であり、一部は厚み方向における流路2の中心で切断した断面図である。
【
図19】本発明のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー150(160)を示した図であり、(a)、(c)は、
図4におけるD視図であり、(b)、(d)は、
図18における断面IX-IXを示す断面図であり、(a)、(b)は、流路2が厚み方向に一段の場合を示し、(c)、(d)は、流路2が厚み方向に二段の場合を示す。
【
図20】本発明のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー170における平面図(
図2におけるA視図に相当)であり、一部は厚み方向における流路2の中心で切断した断面図である。
【
図22】従来例の炉頂カバー820を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照し、本発明を具現化したるつぼ型誘導炉用炉頂カバー100等を説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。図面に記載されている装置の構成は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0026】
<るつぼ型誘導炉50の構成>
はじめに、
図1から
図4までを参照して、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー100等と、るつぼ型誘導炉50とを合わせて説明する。
図1及び
図2に示すように、るつぼ型誘導炉50は、鉛直方向に沿って設置される場合を想定し、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー100等は、るつぼ型誘導炉50の鉛直方向の上側に設置される。また、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー100等が広がる方向を平面方向とし、るつぼが形成される部分に対して、中心軸Cの側を内側、その反対側を外側とする。
【0027】
図1及び
図2に示すように、るつぼ型誘導炉50は、中心軸Cの周りにスリーブ材55が形成され、底の部分に内底材61が形成されて、材料を入れて溶かし保持するための容器(るつぼ)が形成される。材料は例えば鋳鉄材料等の金属材料である。スリーブ材55の周りは、バック材56によって覆われ、さらに外側にコイルセメント58によって固定されたコイル57が形成される。コイル57の周りは継鉄59に覆われ、さらに鋼板60によって外殻が形成される。スリーブ材55は定型材であり、バック材56は不定型材である。スリーブ材55の材料は、アルミナ、シリカ、マグネシア等の耐火物である。バック材56は、粉状のアルミナ、シリカ、マグネシア等であり、スリーブ材55とコイルセメント58との間に挿入して固められる。内底材61は、スリーブ材55と同等の成分を持つ不定型材であり、材質も同様である。
【0028】
コイルセメント58の上側はコイル押え54が形成される。スリーブ材55及びバック材56は、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー100等の底面5との間に封止材53を介して接触する。コイル押え54は、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー100等の底面5と直接接触する。
【0029】
るつぼ型誘導炉50は、上側に、るつぼにて溶解した金属を注ぐための出湯口51が形成される。
図3、
図4に示すように、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー100等は、出湯口51を避けて炉頂70に設置できるように、一部が切り欠かれたC型形状である。
【0030】
内底材61の下側は、バック材56と同様の不定形材である基底材62が形成され、さらに下側は底板レンガ63が形成される。鋼板60の上側寄りには、鉄板ステージ64が平面方向に広がる方向に形成される。
図3に示すように、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー100等は、鉄板ステージ64又は他の炉頂70にボルト65等によって締結される。締結方法は、ボルト65の他に、コッター等を用いても良い。いずれの場合も、締結される領域は、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー100等において、後述する流路2に干渉しない領域である。
【0031】
るつぼ型誘導炉50は、スリーブ材55と内底材61によって形成されたるつぼに、溶解するための金属材料を投入する。コイル57に交流電流を流すとるつぼ内に磁場が発生し、電磁誘導によって投入されている金属材料に電流が流れ、金属自体の電気抵抗によって発熱して溶解する。金属が溶解するときの温度は摂氏1500度程度となる。この発熱によってるつぼ内は高温となり、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー100等へも伝熱される。特に、るつぼに近い位置の温度上昇が激しく、スリーブ材55の温度上昇が最も激しい。従って、炉頂70のうち、スリーブ材55の上側に相当する領域の温度上昇が激しくなる。封止材53を介して接触するるつぼ型誘導炉用炉頂カバー100等は、後述する内周側面7の周辺の温度が上昇するため、内周側面7の周辺において反り、又は割れが発生する恐れがある。従って、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー100等は、内周側面7の周辺をより冷却することが求められる。
【0032】
<るつぼ型誘導炉用炉頂カバー100等に共通の構成>
次に、本発明の態様に係るるつぼ型誘導炉用炉頂カバー100等において、各実施形態に共通の構成を説明する。
図4から
図6までと他の図を参照して、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー100を例にした共通の構成を説明する。るつぼ型誘導炉用炉頂カバー100等は、るつぼ型誘導炉50の炉頂70を覆うカバーであって、カバー体1と、カバー体1の内部に形成され、冷却媒体20を循環可能にする流路2を備える。
【0033】
図4及び
図5に示すように、カバー体1は、平面視において、一部に切欠き4を有し、中心に開口穴3を有するC型形状である。カバー体1は、炉頂70に接触する底面5と、底面5に対向する面である天面6と、内周側を形成する内周側面7と、外周側を形成する外周側面8を有する。さらに、切欠き4を構成する側面であって、一方の端部を形成する第一端部9と、他方の端部を形成する第二端部10とによって所定の厚みを有する外殻が形成される。
【0034】
図5等に示すように、流路2は、少なくとも内周路21を含み、内周路21は、外周側面8よりも内周側面7に近接し、内周側面7に沿って管状に形成される。流路2は、第一端部9に隣接する外周側面8に形成される入口部11と、第二端部10に隣接する外周側面8に形成される出口部12とを繋いで連続して形成される。この構成は、詳細に後述する
図7、
図9、
図11、
図13、
図16、
図18、及び
図20に示す例の全てに共通する構成である。なお、
図5等において、第一端部9は図面における上側であり、第二端部10は下側に記載されているが、第一端部9と第二端部10とが逆の位置であってもよい。
【0035】
図4等に示す例では、流路2は断面形状が円形状であるが、円形状に限らず例えば多角形状でもよい。
図5等に示す例では、外周側面8は平面視において円形状であるが、円形状に限らず、多角形状でも良いし、楕円形状その他でもよい。切欠き4は、るつぼ型誘導炉50における出湯口51の形状に合わせて切り欠かれているが、
図5等に示す例の形状に限定されない。
【0036】
カバー体1を構成する材質は、鋳鉄、鋳鋼、その他の金属材料、或いはその他耐熱材の使用が可能である。
図5等に示す例では、カバー体1のうち、流路2が形成されていない領域は、構成材料によって占められているが、例えば空洞が形成されてもよい。或いは、カバー体1を構成する材料以外の材料によって構成される領域があってもよい。
【0037】
流路2を形成するための具体的な製造方法は後述する。流路2に流す冷却媒体20は、種々の使用が可能である。例として、空気、窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素等の不活性ガス、或いは冷却水その他の液体を使用可能である。流路2は、防腐及び防錆対策として、冷却媒体20が接する部分に硬質クロムメッキ処理を施してもよい。
【0038】
<るつぼ型誘導炉用炉頂カバー100の構成>
次に、
図5及び
図6(a)、(b)を参照して、本発明の態様に係る第一実施形態のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー100の構成を説明する。なお、すでに説明した共通部分は説明を省略する。流路2は、一列の内周路21のみが内周側面7に沿ってカバー体1の内の一部に偏って形成される。
図5に示すように、内周路21において冷却媒体20が矢印のように内部を移動してカバー体1を冷却する。
図6(b)に示すように、カバー体1のうち内周路21以外の領域は金属材料等の構成材料によって構成される。
【0039】
図5、及び
図6(a)に示す例では、入口部11、内周路21、及び出口部12は断面形状が略同一であるが、それぞれの断面形状が異なっていてもよいし、或いは断面積が異なってもよい。
図5及び
図6(a)において、図面上の上側が入口部11であり、下側が出口部12であるが、入口部11と出口部12の位置が逆であってもよい。また、
図6(b)に示すように、内周路21は厚み方向の略中心位置に形成されているが、上側或いは下側に偏ってもよい。
【0040】
<るつぼ型誘導炉用炉頂カバー100等に共通の構成による解決課題とその効果>
以上説明したように、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー100等に共通の構成(第一実施形態のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー100単独を含む)は種々の効果を奏する。従来の炉頂カバーは、
図22の例に示される。この構成によれば、空洞820aはリング状体821の内部全体に広がっており、冷却水は空洞820a全体に広がる。しかしながら、従来例では空洞820aはるつぼ型誘導炉50の内周部から遠い外周部にまで広がっており、冷却水が外周部にまで広がる。よって、本来冷却したい部分以外にも冷却水が広がるため、必要な冷却水の量が多くなり、冷却効果の低下が想定される。また、空洞820aは仕切板825によって区切られ、冷却水は小さな開口に過ぎない樋水口826を通って流れるため、冷却水の流速が遅くなり、冷却速度が遅くなるという課題が想定される。
【0041】
本発明に共通する構成はこれらの課題を解決するものである。
図5に示すように、流路2は、少なくとも内周路21を含み、内周路21は、外周側面8よりも内周側面7に近接し、内周側面7に沿って管状に形成される。よって、るつぼ型誘導炉50が高温となる部分に直接的又は間接的に接する内周側面7に近接する部分において、冷却媒体20を流すことができるので、冷却させたい部分に対して冷却効果を高め、効率的に冷却することができる。また、
図5に示すように、内周路21は内周側面7に沿って一定の流路断面積を維持して形成される。よって、入口部11から流入された一定量の冷却媒体20が、内周側面7に沿って流れるので冷却速度を高めることができる。
【0042】
<るつぼ型誘導炉用炉頂カバー200の構成>
次に、
図7及び
図8(a)、(b)を参照して、本発明の態様に係る第二実施形態のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー200の構成を説明する。なお、すでに説明した部分は説明を省略する。
図7に示すように、流路2は、内周路21の一部に連続し、外周側面8に向かって突出する少なくとも一つの突出部22が形成される。流路2は、内周路21のみによって形成される部分と、内周路21に突出部22が形成される部分とからなる。
【0043】
図7に示す例では、突出部22は中心軸Cを中心として円周方向に略等間隔で形成される。突出部22が隣接する間隔は角度θであり、例えば角度θは30度である。
図8(b)に示すように、突出部22は厚み方向において内周路21と略同一の幅であるが、内周路21と異なる幅であってもよい。また、
図7に示す例では、突出部22は円周方向において略等間隔で同一の形状で形成されるが、例えば突出部22の外周側面8との距離が異なってもよいし、間隔が異なってもよいし、さらに形状が異なってもよい。
【0044】
図7に示すように、流路2において冷却媒体20が矢印のように移動する。冷却媒体20の一部は、内周側面7に近い部分において、入口部11から出口部12に向かって直接的に流れるので、比較的低温状態を維持した状態で内周側面7の周辺を冷却する。また、冷却媒体20の他の一部は、突出部22に向かって流れ、突出部22内に滞留しながら出口部12に向かって流れていく。突出部22を経由する冷却媒体20は、内周側面7の周辺に比べて流れる速度が遅く、温度が高くなる。
【0045】
<るつぼ型誘導炉用炉頂カバー200等の構成による解決課題とその効果>
以上説明した、本発明に係る第二実施形態のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー200の構成は、以下の課題を解決し、効果を奏する。すでに説明したように、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー200は、内周側面7の周辺において特に冷却効果を発揮することが求められる。さらに、内周側面7に比べて温度上昇は緩やかではあるが、内周側面7から外周側面8に向かう領域においても冷却効果が求められる。その際に、合わせて効率的な冷却効果が求められ、より高温となる内周側面7をより冷却し、外周側面8に向かうに従って冷却効果を低減することで全体の冷却効率を高めることが課題となる。
【0046】
るつぼ型誘導炉用炉頂カバー200による構成は、この課題を解決するものである。
図7を参照して説明したように、流路2は内周路21のみの部分と、内周路21に突出部22が形成される部分とからなる。この構成により、内周側面7に沿って流れる冷却媒体20は入口部11から出口部12に向かって直接的に流れるので、比較的低温状態を維持した状態で内周側面7の周辺を冷却するため、冷却効果が高い。また、突出部22を経由して流れる冷却媒体20は、内周側面7の周辺の流れに比べて温度は高くなるが、外周側面8に向かう領域を冷却する。内周側面7から外周側面8に向かう領域は、内周側面7の周辺に比べて温度上昇が緩やかなので、冷却媒体20が流れる速度を遅くして冷却効率を高める効果を奏する。
【0047】
<るつぼ型誘導炉用炉頂カバー300の構成>
次に、
図9及び
図10(a)、(b)を参照して、本発明の態様に係る第三実施形態のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー300の構成を説明する。なお、すでに説明した部分は説明を省略する。るつぼ型誘導炉用炉頂カバー300のカバー体1は、複数の分割カバー体1a等からなる。例えば、平面視において隣接する分割カバー体1aと分割カバー体1bの間は、流路2を連結する連結路28が形成され、流路2は、連結路28を介して入口部11から出口部12まで連続して形成される。
【0048】
図9に示す例では、カバー体1は分割カバー体1a、1b、1c、1dまでの四つに分割される。流路2は、内周路21と、内周路21から連結路28に向かうために例えば隣接する分割カバー体1aと分割カバー体1bとが対向するそれぞれの側面に沿って形成される隣接路29からなり、流路管25によって形成される。
【0049】
<るつぼ型誘導炉用炉頂カバー300の構成による解決課題とその効果>
以上説明した、本発明に係る第三実施形態のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー300の構成は、以下の課題を解決し、効果を奏する。るつぼ型誘導炉50は、種々のサイズがあり、大型のものが存在する。その際、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー300のサイズも大きくなり、一体で形成されたものでは取扱が困難となり、合わせて製作上の困難さを有するという課題がある。
【0050】
るつぼ型誘導炉用炉頂カバー300の構成は、この課題を解決するものである。カバー体1は複数に分割されるので、全体のサイズが大きくても、個々に分割された分割カバー体1a等は取扱が容易となる。
【0051】
従来、炉頂カバーを複数個のセグメントに分割し、各セグメントに冷却媒体の入口部と出口部を設ける提案がなされている。しかしながら、この構成の場合、少なくともセグメントの数だけ冷却媒体を流入させる装置が必要となり、設備費用の高騰を招くという課題があった。
【0052】
この課題に対し、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー300は、隣接する例えば分割カバー体1aと分割カバー体1bとは、流路2が連結路28によって連結されている。すなわち、カバー体1が複数の分割カバー体1a等に分割されても、流路2は入口部11から出口部12まで連続して形成される。よって、カバー体1が分割されることに伴って冷却媒体20を流入させる流入装置(図示せず)を増やす必要が無い。
【0053】
また、冷却効果の点で以下のさらなる効果がある。それぞれの分割カバー体1a等において、内周側面7に沿って内周路21が形成されるので、他の実施形態に共通する効果である、内周側面7の周辺部を冷却する効果がある。さらに、流路2は、連結路28において一旦るつぼ型誘導炉用炉頂カバー300の外部に露出する状態となるので、冷却媒体20が外気によって冷却される効果がある。
【0054】
また、隣接路29は、例えば隣接する分割カバー体1aと1bとが対向する側面に沿って形成されるので、複数の流路2が近接して対向することになり、互いの流路2に流れる冷却媒体20によって温度上昇を防ぐ効果もある。
【0055】
また、
図9に示すように、それぞれの分割カバー体1a等は、例として平面視で略扇形であり、外周側面8を除く三方全ての側面に相当する部分に沿って流路2が形成される。よって、三方の流路2から外周側面8に向かって分割カバー体1a等の全体を冷却する効果がある。
【0056】
<るつぼ型誘導炉用炉頂カバー400の構成>
次に、
図11及び
図12(a)、(b)を参照して、本発明の態様に係る第四実施形態のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー400の構成を説明する。なお、すでに説明した部分は説明を省略する。
図11に示すように、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー400は、流路2が少なくとも、内周路21と、管状の中間路23と、管状の外周路24を含む。
【0057】
内周路21は、入口部11から第二端部10に隣接する位置まで、カバー体1の内周側面7に沿って形成されて第二端部10に隣接する位置において屈曲する。中間路23は、一方の端部が屈曲した内周路21に連続し、内周路21に対して外周側面8の側に沿って形成され、他方の端部が第一端部9に隣接する位置において屈曲する。外周路24は、屈曲した中間路23に連続し、中間路23に対して外周側面8の側に沿って形成され、出口部12に繋がる。
【0058】
図11に示す例では、中間路23は一列の流路2であるが、連続する複数の列が形成されてもよい。すなわち、内周路21と外周路24との間に連続する複数列の中間路23が形成されてもよい。また、流路2の断面積は、内周路21と中間路23と外周路24とが略同一でもよいし、或いは異なっていてもよい。なお、流路2が平面方向に並ぶ場合を列として二列等と称し、厚み方向に並ぶ場合を段として二段等と称することとする。
【0059】
入口部11から流入した冷却媒体20は、温度が低い状態でまず内周路21を流れ、内周側面7の周辺部を冷却する。次に、第二端部10に至った冷却媒体20は、中間路23に流入して内周路21の外側の領域を冷却する。冷却媒体20は、内周路21を流れるときに比べて温度が上昇しているが、中間路23が形成されるカバー体1の領域は、内周側面7の周辺に比べて温度上昇が緩やかなので、冷却効果を発揮する。さらに、中間路23から外周路24に流入する冷却媒体20は、中間路23の外周側面8の側に沿ってカバー体1を冷却する。冷却媒体20は、外周路24においてさらに温度上昇しているが、カバー体1における外周側面8の側はさらに温度上昇が緩やかなので、冷却効果を発揮する。
【0060】
<るつぼ型誘導炉用炉頂カバー400の構成による解決課題とその効果>
以上説明した、本発明に係る第四実施形態のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー400の構成は、以下の課題を解決し、効果を奏する。るつぼ型誘導炉用炉頂カバー400は、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー200において記載した課題と同様に、内周側面7の周辺部の冷却効果を高めつつ、カバー体1の外周側面8に向かう他の領域においても効率的に冷却したいという課題がある。
【0061】
るつぼ型誘導炉用炉頂カバー400の構成は、この課題を解決するものである。流路2は、少なくとも、内周路21と中間路23と外周路24を備えるので、流路2に冷却媒体20を流すことで、カバー体1全体を冷却することができる。内周路21は入口部11に繋がるので、冷却媒体20は温度が低い状態で内周側面7に近接する部分を冷却することができる。
【0062】
さらに、冷却媒体20は、中間路23から外周路24へ流れることにより、温度が高くなりながらもカバー体1全体を冷却する効果を発揮できる。流路2は、内周路21から中間路23、外周路24へと流れる冷却媒体20の温度が順に上昇するが、カバー体1の温度状況に合わせて適切な温度の冷却媒体20を流すよう構成される。よって、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー400は、効果的かつ効率的にカバー体1を冷却することができる。
【0063】
<るつぼ型誘導炉用炉頂カバー110の構成>
次に、
図13及び
図14(a)、(b)を参照して、本発明の態様に係る第五実施形態のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー110の構成を説明する。なお、すでに説明した部分は説明を省略する。
図13に示すように、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー110は、流路2が、平面視において第一流路2aと第二流路2bとの二列に形成される。入口部11は、第一流路2aに繋がる第一入口部11aと、第二流路2bに繋がる第二入口部11bからなる。出口部12は、第一流路2aに繋がる第一出口部12aと、第二流路2bに繋がる第二出口部12bからなる。第二流路2bは、第一流路2aに対して外周側面8の側に形成される。第一流路2aと第二流路2bとは独立して形成される。
【0064】
図14(a)に示すように、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー110は、第一端部9に近接する位置の外周側面8に第一入口部11aが形成され、第一端部9から離れる方向の位置に第二出口部12bが形成される。第二端部10に近接する位置の外周側面8には、第一出口部12aが形成され、第二端部10から離れる方向の位置に第二入口部11bが形成される。
【0065】
例えば、
図14(a)において、第一入口部11aと第二入口部11b、及び第一出口部12aと第二出口部12bとは、図面上で互いの位置が上下逆でもよい。すなわち、
図14(a)に示すように、平面方向において、第一入口部11aと第二出口部12bとが並んで配置され、第二入口部11bと第一出口部12aとが並んで配置されればよい。
図13に示すように、流路2を流れる冷却媒体20は、矢印で示すように第一流路2aと第二流路2bとでは、互いに逆方向に流れる。
【0066】
図14(a)、(b)に示す例では、第一流路2aと第二流路2bとは、厚み方向において同一の位置に形成されるが、必ずしも同一の位置でなくてもよい。また、第一流路2aと第二流路2bとは、断面積が略同一に記載されているが、異なっていてもよい。
【0067】
<るつぼ型誘導炉用炉頂カバー110の構成による解決課題とその効果>
以上説明した、本発明に係る第五実施形態のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー110の構成は、以下の課題を解決し、効果を奏する。流路2は、第一端部9に隣接して入口部11が形成され、第二端部10に隣接して出口部12が形成されると、冷却媒体20は入口部11の周辺で最も温度が低く、出口部12に近づくに従って温度が上昇する。この場合、カバー体1は平面視において冷却後の温度に偏りが生じることが課題となる場合がある。すなわち、入口部11の周辺では冷却効果が高いが、出口部周辺では冷却効果が低くなるという課題が発生する場合がある。
【0068】
るつぼ型誘導炉用炉頂カバー110の構成は、この課題を解決するものである。
図13に示すように、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー110は、流路2が、平面視において第一流路2aと第二流路2bとの二列に形成され、流路2を流れる冷却媒体20は、矢印で示すように第一流路2aと第二流路2bとでは、互いに逆方向に流れる。すなわち、第一端部9の周辺では、第一流路2aにおける冷却媒体20の温度が低く、第二端部10の周辺では、第二流路2bにおける冷却媒体20の温度が低くなる。
【0069】
よって、カバー体1は、平面方向において冷却後の温度の偏りを低減することができる。すなわち、第一端部9の周辺と、第二端部10の周辺とにおいて、冷却後のカバー体1の温度差を低減することができる。
【0070】
<るつぼ型誘導炉用炉頂カバー120等の構成>
次に、
図5、
図6(d)、(e)、(f)、
図7、
図8(c)、(d)、
図9、
図10(c)、(d)、
図13、
図14(c)、(d)、及び
図15から
図17までを参照して、本発明の態様に係る第六実施形態のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー120等の構成を説明する。るつぼ型誘導炉用炉頂カバー220、320、130、420、160も第六実施形態に含まれる。なお、すでに説明した部分は説明を省略する。るつぼ型誘導炉用炉頂カバー120等は、流路2が、厚み方向において第一流路2aと第三流路2cの二段に形成される。入口部11は、第一流路2aに繋がる第一入口部11aと、第三流路2cに繋がる第三入口部11cからなる。出口部12は、第一流路2aに繋がる第一出口部12aと、第三流路2cに繋がる第三出口部12cからなり、第一流路2aと第三流路2cとは独立して形成される。
【0071】
次に、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー120の構成を説明する。
図5、及び
図6(d)、(e)、(f)に示すように、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー120は、第一実施形態のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー100において、厚み方向に二段の流路2が形成される場合を示す。平面視においては、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー120は、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー100と同様である。なお、
図5において冷却媒体20の流れ方向を示す矢印は、厚み方向の上側の流路2における流れを示すので、下側の流路2では流れ方向が逆になる。以下説明するるつぼ型誘導炉用炉頂カバー220、320、130、420、160も同様である。
【0072】
図6(d)に示すように、第一端部9における厚み方向において、上側に第一入口部11a、下側に第三出口部12cが形成される。また、第二端部10における厚み方向において、上側に第一出口部12a、下側に第三入口部11cが形成される。すなわち、厚み方向において、上側と下側とでは入口部11と出口部12とが逆になるように形成される。なお、
図6(d)に示す配置に限定されず、第一入口部11aと第三出口部12cとが第二端部10の側にあり、第一出口部12aと第三入口部11cとが第一端部9の側にあってもよい。
【0073】
次に、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー220の構成を説明する。
図7、及び
図8(c)、(d)に示すように、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー220は、第二実施形態のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー200において、厚み方向に二段の流路2が形成される場合を示す。平面視においては、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー220は、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー200と同様である。また、
図8(c)に示すように、第一入口部11a、第一出口部12a、第三入口部11c、第三出口部12cの位置関係は、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー120と同様である。
【0074】
次に、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー320の構成を説明する。
図9、及び
図10(c)、(d)に示すように、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー320は、第三実施形態のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー300において、厚み方向に二段の流路2が形成される場合を示す。平面視においては、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー320は、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー300と同様である。また、
図10(c)に示すように、第一入口部11a、第一出口部12a、第三入口部11c、第三出口部12cの位置関係は、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー120と同様である。また、
図10(c)、(d)に示すように、連結路28は厚み方向に並んで二段に形成され、流路管25も二段に並んで形成される。
【0075】
次に、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー130の構成を説明する。
図13、及び
図14(c)、(d)に示すように、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー130は、第五実施形態のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー110において、厚み方向に二段の流路2が形成される場合を示す。平面視においては、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー130は、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー110と同様である。
【0076】
図14(c)、(d)に示すように、流路2は平面方向に二列と厚み方向に二段であり、第一流路2aから第四流路2dまで四つの流路2がそれぞれに並んで形成される。四つの流路2に対して、入口部11は、第一入口部11a、第二入口部11b、第三入口部11c、及び第四入口部11dが形成される。出口部12は、第一出口部12a、第二出口部12b、第三出口部12c、及び第四出口部12dが形成される。第一端部9における厚み方向において、上側は、内周側面7の側に第一入口部11a、外周側面8の側に第二出口部12bが形成され、下側は、内周側面7の側に第三出口部12c、外周側面8の側に第四入口部11dが形成される。第二端部10における厚み方向において、上側は、内周側面7の側に第一出口部12a、外周側面8の側に第二入口部11bが形成され、下側は、内周側面7の側に第三入口部11c、外周側面8の側に第四出口部12dが形成される。なお、第一端部9の側と第二端部10の側とで各入口部11と各出口部12の位置関係が逆でもよい。
【0077】
次に、
図15から
図17までを参照して、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー420の構成を説明する。るつぼ型誘導炉用炉頂カバー420は、第四実施形態のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー400において、厚み方向に二段の流路2が形成される場合を示す。第一入口部11a、第一出口部12a、第三入口部11c、第三出口部12cの位置関係は、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー120と同様であるが、特に以下のように形成されることが好ましい。
【0078】
図15に示すように、入口部11及び出口部12は、厚み方向における上段と下段とで位置が異なることが好ましい。すでに説明したように、内周側面7の周辺部は温度が高くなるため、優先して冷却させる必要がある。厚み方向において、特に炉頂70に直接的又は間接的に接触する底面5の側の内周側面7の周辺を冷却する必要がある。そのため、厚み方向の下側は、特に入口部11を内周側面7に近接させる必要があるため、第一端部9に近接した位置に第三入口部11cが形成される。また、厚み方向の上側においても、第一入口部11aが内周側面7に近接することが望ましいので、第二端部10に近接した位置に形成される。
【0079】
図16(a)は、第三流路2c(厚み方向の下側)の経路を示し、
図16(b)は、第一流路2a(厚み方向の上側)の経路を示す。第三流路2cと第一流路2aとは図面に対して上下対称の形態であり、入口部11と出口部12の位置関係も上下対称である。
図16(a)と
図16(b)に比較して示すように、冷却媒体20の流れ方向は、第三流路2cと第一流路2aとでは逆方向となる。
図17に示すように、第三流路2cと第一流路2aとは、断面形状及び断面積が略同様であり、厚み方向における位置関係も同様の位置である。
【0080】
なお、第一流路2aと第三流路2cとは図面に対して上下対称の形態であり、入口部11と出口部12の位置関係も上下対称である例を示したが、同様の形態でもよいし同様の位置関係でもよい。第一流路2aと第三流路2cとは必ずしも同様の断面形状、断面積である必要は無いし、厚み方向と平面方向における位置が異なっていてもよい。また、厚み方向において、第一入口部11aと第三入口部11c、及び第一出口部12aと第三出口部12cとは、異なる位置に形成される例を示したが、同様の位置に形成されてもよい。
【0081】
<るつぼ型誘導炉用炉頂カバー120等の構成による解決課題とその効果>
以上説明した、本発明に係る第六実施形態のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー120等の構成は、以下の課題を解決し、効果を奏する。第五実施形態における課題と同様に、入口部11の周辺では冷却効果が高いが、出口部周辺では冷却効果が低くなることが課題となる場合がある。第六実施形態のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー120等は、この同様の課題を解決するものであり、第五実施形態とは別の構成によって効果を奏するものである。
【0082】
図6(d)、(e)に示すように、厚み方向において流路2が独立して二段に形成されるので、同時に冷却媒体20を流すことができる。平面方向における領域に制限がある場合であっても、流路2を二段にすることで冷却媒体20の流量を増すことができるので、より冷却効果を高めることができる。特に、二段の流路2に対して、冷却媒体20を流す方向を逆にすれば、第一端部9の周辺と第二端部10の周辺との温度差を小さくすることができる。この構成は、以上説明した第一実施形態から第五実施形態のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー100等に対して適用されるもので、同様の効果を奏する。
【0083】
<流路2の第一の構成と効果>
次に、流路2の構成について複数説明する。第一の構成として、以上説明した第一実施形態から第六実施形態のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー100等は、流路2がカバー体1の内部に一体的に形成される例を示した。すなわち、流路2は、入口部11と出口部12を除いてカバー体1の内部に形成され、カバー体1は流路2を含めて一体で形成されるか、又は流路2を挟んで複数の部材によって形成される。この構成の場合、流路2を形成するために新たな部材を使用する必要が無いので、簡単に製造することができ、コスト低減に寄与することができる。例として、カバー体1を鋳造によって形成する場合、一度の成形によって流路2を形成することができる。
【0084】
また、
図6(c)、(f)は、カバー体1を複数の部材で構成する場合を示す。
図6(c)に示す例は、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー100において、厚み方向において流路2を挟んで上側と下側とでそれぞれ別の部材によってカバー体1を構成する。カバー体1を一体で構成する場合、流路2を形成するためには製造方法の一例として、鋳造等のロストワックス法を使用することが考えられる。これに対し、カバー体1が流路2を挟んで二つの部材で構成する場合、カバー体1は例えば単純に上下抜きによる成形で形成することが可能である。
【0085】
図6(f)は、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー120において、カバー体1を三つの部材で構成する例を示す。厚み方向において流路2が二段に形成されるので、カバー体1は第一流路2aと第三流路2cとをそれぞれ挟むよう三段構成である。この構成の場合、カバー体1は例えば単純な上下抜きによる成型によって形成可能である。よって、製造が容易であり、部品コストを安価にすることができる。
【0086】
<流路2の第二の構成>
次に、流路2の第二の構成について説明する。
図18、及び
図19(a)、(b)に示するつぼ型誘導炉用炉頂カバー150は、第一実施形態のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー100において、流路2が流路管25によって形成される例を示す。カバー体1は、天面6の一部にカバー体凹部13が形成され、流路2は、カバー体1とは別体の流路管25によって形成される。流路管25は、カバー体凹部13に対して着脱可能に固定される。
【0087】
カバー体凹部13は、例としてカバー体1を鋳造等によって成形する際に形成する。なお、切削等の加工によって形成してもよい。流路管25は、カバー体凹部13の形状に合わせた外形形状であり、カバー体凹部13に対して着脱可能に固定される。例として、流路管25は、ボルトによってカバー体1に固定される。また、流路管25の材質は、伝熱効果が高い銅等が使用される。
【0088】
図19(c)、(d)は、第六実施形態のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー120等と同様に、厚み方向において流路2が二段に形成される場合のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー160を示す。この場合、
図19(d)の例に示すように、流路管26は、二段の流路2が一体的に形成される。なお、流路管26は、
図19(b)に示す流路管25が厚み方向に二つ重ねられた構造でもよい。
【0089】
<流路2の第二の解決課題と効果>
流路2は、直接冷却媒体20に接するために腐食等が発生しやすい。るつぼ型誘導炉用炉頂カバー100等は、流路2が腐食すると流路2の清掃作業、修理作業が発生するため、作業が中断されて作業効率が低下するという課題が想定される。るつぼ型誘導炉用炉頂カバー150(160)の構成は、この課題を解決するものである。流路2を形成する流路管25(26)が交換可能なので、腐食等が発生したときにカバー体1全体を交換することなく流路管25を交換することで補修作業が済むため、作業効率がよい。また、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー150等の製品寿命を延ばすことができる。
【0090】
なお、流路管25(26)による構成は、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー100(120)を例に説明したが、この例に限らず本発明の実施形態として示した他の全てのるつぼ型誘導炉用炉頂カバー200等に適用可能である。
【0091】
<流路2の第三の構成と効果>
次に、流路2の第三の構成について説明する。
図20、
図21に示すように、るつぼ型誘導炉用炉頂カバー170は、第一実施形態のるつぼ型誘導炉用炉頂カバー100に対して、カバー体1の天面6にカバー体溝部14を形成し、カバー体溝部14の上側に流路蓋27を被せて流路2を形成する。カバー体溝部14は、カバー体1を鋳造等によって成形するときに一体的に形成してもよいし、機械加工によって形成してもよい。この場合、流路2の配置位置の制限が少なくなるというメリットがある。また、流路蓋27を着脱可能にすれば、流路2が腐食等したときのメンテナンスが容易である。
【符号の説明】
【0092】
1 カバー体
1a、1b、1c、1d 分割カバー体
2 流路
2a 第一流路
2b 第二流路
2c 第三流路
3 開口穴
4 切欠き
5 底面
6 天面
7 内周側面
8 外周側面
9 第一端部
10 第二端部
11 入口部
11a 第一入口部
11b 第二入口部
11c 第三入口部
12 出口部
12a 第一出口部
12b 第二出口部
12c 第三出口部
13 カバー体凹部
20 冷却媒体
21 内周路
22 突出部
23 中間路
24 外周路
25、26 流路管
28 連結路
100、110、120、130、150、160、170、200、220、300、320、400、420 るつぼ型誘導炉用炉頂カバー