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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】車両点検装置
(51)【国際特許分類】
   B60S 5/00 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
B60S5/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020201067
(22)【出願日】2020-12-03
(65)【公開番号】P2022088927
(43)【公開日】2022-06-15
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】石坂 俊
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-188243(JP,A)
【文献】特開2000-064962(JP,A)
【文献】特開2001-294136(JP,A)
【文献】特開平10-194095(JP,A)
【文献】特開2009-149214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両とは異なる位置に設置され、エアタンクを有する前記車両の点検を行う車両点検装置であって、
前記車両との間で通信を確立する通信部と、
前記通信部を介して、前記車両に対して前記エアタンクをパージする旨の指令を送信する指令部と、を備え、
前記指令部は、前記車両が予め定められた点検エリア内にてパージを行うような指令を送信する、車両点検装置。
【請求項2】
前記指令部は、前記車両が前記点検エリア内に存在し、且つ、前記車両が所定の条件を満たす場合にパージを行うような指令を送信する、請求項1に記載の車両点検装置。
【請求項3】
前記所定の条件は、前記車両が停車状態であり、且つ、車両電源が投入されており、且つ、前記エアタンクが所定のエア圧以上となっていることである、請求項2に記載の車両点検装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の車両点検装置と、前記車両と、を備える車両点検システムであって、
前記車両は、前記エアタンクのエア圧の測定結果に基づいて異常を検知する異常検知部を備える、車両点検システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両点検装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の車両に搭載されたエアタンクの点検について記載されている。圧縮エアを貯留する車両用エアタンクには、タンク内のドレンを排出するためのドレンバルブと、タンク内の圧力が所定圧以上のときオン状態に切り替わるプレッシャスイッチとが配設される。ドレンバルブは、イグニッションスイッチと運転席に設けられたドレンスイッチとプレッシャスイッチとがそれぞれオン状態のとき開放するように構成される。また、エアタンクは、タンク内のドレンを排出するためのドレンバルブと、ドレンバルブをタンクに貯留された圧縮エアのエア圧により開放させる駆動手段と、エアタンクに溜まったドレンの水位を検知する水位センサと、水位センサの検出出力により駆動手段を制御するコントローラと、を備えることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-188243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のエアタンクでは、電磁弁の制御を遠隔地からの指令で行うことができない。このため車両の基地での車両点検を考慮した場合、各車両ごとに操作する必要あるため工数が増加するという問題がある。また、車両の基地から離れた箇所でドレンの排水が行われることによる問題が生じた場合に、すぐ修理対応できない可能性がある。従って、車両ダウンタイムの増加につながるうえ、車両安全性を担保できていないという問題がある。これらの問題は、電磁弁の制御が運転席の操作、あるいはエアタンクの水位によって排水が行われるようになっていることによるものである。
【0005】
本発明は、エアタンクの点検を効率的に行うことができる車両点検装置、及び車両点検システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両点検装置は、車両とは異なる位置に設置され、エアタンクを有する車両の点検を行う車両点検装置であって、車両との間で通信を確立する通信部と、通信部を介して、車両に対してエアタンクをパージする旨の指令を送信する指令部と、を備え、指令部は、車両が予め定められた点検エリア内にてパージを行うような指令を送信する。
【0007】
本発明に係る車両点検装置は、車両とは異なる位置に設置され、車両との間で通信を確立する通信部を有している。また、車両点検装置は、通信部を介して、車両に対してエアタンクをパージする旨の指令を送信する指令部を有している。すなわち、車両点検装置は、点検対象となる車両とは離れた位置にて、複数の車両に対してパージの実行を指令することができる。そのため、点検者が車両ごとに電磁弁の操作を行う手間がなくなるため、パージ作業の工数を低減することができる。更に、指令部は、車両が予め定められた点検エリア内にてパージを行うような指令を送信する。これにより、例えばエアタンクに故障があった場合でも、予め定められた場所での修理対応に限定できるため、修理対応に要する時間を短縮することができる。以上より、エアタンクの点検を効率的に行うことができる。
【0008】
指令部は、車両が点検エリア内に存在し、且つ、車両が所定の条件を満たす場合にパージを行うような指令を送信してよい。これにより、指令部は、車両側のパージの準備が整った適切なタイミングで、パージの指令を行うことができる。
【0009】
所定の条件は、車両が停車状態であり、且つ、電源が投入されており、且つ、エアタンクが所定のエア圧以上となっていることであってよい。この場合、指令部は、より適切なタイミングで、パージの指令を行うことができる。
【0010】
本発明に係る車両点検システムは、上述の車両点検装置と、車両と、を備える車両点検システムであって、車両は、エアタンクのエア圧の測定結果に基づいて異常を検知する異常検知部を備える。
【0011】
この車両点検システムによれば、異常検知部は、パージ後にエア充填を行う際に、エア圧の上昇具合などに基づいて車両側でエアタンクの故障を把握することができる。この場合、異常検知部が車両点検装置に当該異常を伝達できるようになるため、点検者が当該故障に対する適切な対応を取ることができるようになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エアタンクの点検を効率的に行うことができる車両点検装置、及び車両点検システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る車両点検装置及び車両点検システムを備える敷地を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る車両点検装置及び車両点検システムを示すブロック構成図である。
図3】車両点検装置の処理内容を示すフローチャートである。
図4】車両の車両制御部の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る車両点検装置1を備える車両点検システム50を示す模式図である。図1に示すように、車両点検システム50は、敷地BE内に地上装置として設置された車両点検装置1と、車両100によって構成される。敷地BEは、複数の車両100が集まる場所であり、例えば車両100の基地などが挙げられる。敷地BEは、車両100のエアタンクの点検を行ってパージ作業を行う点検エリアDEが予め設定されている。車両点検装置1は、複数の車両100と通信することにより、点検エリアDEにてパージを行うように各車両に指令を送信する装置である。点検対象となる車両100として、エアタンクを有する車両が挙げられ、例えば、バスなどの大型車両、トラックなどの搬送車両が採用される。本実施形態では、車両点検装置1は、通信部を有しているため、敷地BE内の各車両100と通信を行うことができる。
【0016】
次に、図2を参照して、車両点検システム50の詳細な構成について説明する。図2は、本実施形態に係る車両点検システム50の車両点検装置1及び車両100を示すブロック構成図である。図2に示すように、車両100は、エアタンク2と、車両制御部10と、を備える。
【0017】
エアタンク2は、トラック、バス等の大型車両などにおいて、ブレーキ、エアサスペンション等の車両用エア機器に圧縮空気を供給するための機器である。エアタンク2は中空に空間を有する容器である。エアタンク2には、エアコンプレッサ3が接続されており、当該エアコンプレッサ3から圧縮空気が充填される。エアコンプレッサ3で湿分を含む空気を圧縮して、この圧縮空気がエアタンク2で冷却されると、過飽和の水分は凝縮水となってエアタンク2の内壁に付着し、付着した凝縮水はエアタンク2の底部に流れ落ち、ドレンDRとして溜まる。この溜まったドレンDRは潤滑の阻害、腐食の促進、凍結などによる弁の異常作動の発生など有害な作用をするので、排出部4によりエアタンク2の外部に放出される。この排出部4は、エアタンク2に溜まったドレンDRを排出するため、エアタンク2の最下端に取付けられている。また、排出部4には排出を切り替え可能な電磁弁6が設けられている。また、エアタンク2には、内部のエア圧を測定するため圧力センサ7が設けられている。
【0018】
車両制御部10は、車両100を統括的に管理するECU[Electronic Control Unit]を備えている。ECUは、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]、CAN[Controller Area Network]通信回路等を有する電子制御ユニットである。ECUでは、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。車両制御部10は、通信部11と、車両情報取得部12と、機器制御部13と、異常検知部14と、を備える。
【0019】
通信部11は、車両点検装置1との間で通信を確立する。この通信部11は、無線通信によって車両点検装置1との間で各種情報の送受信を行うことができる。すなわち、通信部11は、車両点検装置1に対して車両情報や車両位置情報などを送信すると共に、車両点検装置1から各種指令を受信することができる。
【0020】
車両情報取得部12は、車両100の各種情報を取得することができる。例えば、車両情報取得部12は、車両100の停車状態、車両電源の投入状態、及びエアタンク2のエア圧などの車両状態に関する情報を取得することができる。また、車両情報取得部12は、車両100の位置情報を取得することができる。このように、車両情報には、車両状態に関する情報と、車両位置情報が含まれる。機器制御部13は、車両100内の各種機器を制御することができる。機器制御部13は、少なくともエアコンプレッサ3、及び電磁弁6を制御することができる。
【0021】
異常検知部14は、エアタンク2のエア圧の測定結果に基づいて、エアタンク2に対するエア系統の異常を検知することができる。異常検知部14は、圧力センサ7で検知されるエア圧に基づいて異常を検知することができる。異常検知部14は、エアコンプレッサ3によるエア充填を開始して、一定時間が経過してもエア圧が上がらずに閾値以下の場合は、電磁弁6が不良であるとみなし、異常を検知する。異常検知部14は、異常の有無を車両点検装置1へ送信する。異常検知部14は、異常がある場合、異常が発生した車両の情報及び症状を車両点検装置1へ送信する。
【0022】
車両点検装置1は、当該車両点検装置1を統括的に管理するECUを備えている。ECUの説明は、車両制御部10と同趣旨であるため省略する。車両点検装置1は、通信部21と、車両情報取得部22と、条件判定部23と、位置判定部24と、指令部25と、を備える。
【0023】
通信部21は、車両100との間で通信を確立する。この通信部21は、無線通信によって車両100と各種情報の送受信を行うことができる。すなわち、通信部21は、通信を確立した車両100から、上述の車両情報、及びその他必要な情報を受信することができる。また、通信部21は、通信を確立した車両100に対して、後述の指令情報などを送信することができる。通信部21は、少なくとも敷地BE内に存在する複数の車両100と通信を確立することができる。なお、通信部21は、敷地BE外の車両100とは通信を確立しなくてよい(例えば、図1に示す敷地BE外の車両100)。
【0024】
車両情報取得部22は、通信部21を介して、車両100から上述の車両情報を取得する。これにより、車両情報取得部22は、通信を確立した車両100から、車両状態に関する情報、及び車両位置情報を取得できる。
【0025】
条件判定部23は、車両100が、パージを行うための所定の条件を満たしているか否かを判定する。所定の条件は、車両が停車状態であり、且つ、車両電源が投入されており、且つ、エアタンクが所定のエア圧以上となっていることである。条件判定部23は、車両情報取得部22で取得された車両状態に関する情報を参照して、所定の条件が満たされているか否かを判定する。
【0026】
位置判定部24は、車両100がパージを行うための位置に存在しているかを判定する。ここでは、位置判定部24は、車両100が点検エリアDEに存在しているか否かを判定する。位置判定部24は、車両情報取得部22で取得された車両位置情報を用いてジオフェンスを行うことで、車両100が点検エリアDEの範囲内にいるかどうかを判定する。
【0027】
指令部27は、通信部21を介して、車両100へ各種指令を送信する。本実施形態では、指令部27は、車両100に対してエアタンク2をパージする旨の指令を送信する。指令部27は、車両100が予め定められた点検エリアDE内にてパージを行うような指令を送信する。指令部27は、車両100が点検エリアDE内に存在し、且つ、車両100が所定の条件を満たす場合にパージを行うような指令を送信する。本実施形態では、指令部27は、条件判定部23によって車両100が上述の所定の条件を満たしていると判定され、且つ、位置判定部24によって車両100が点検エリアDEに存在していると判定された場合に、車両100へパージを行う旨の指令を送信する。本実施形態では、指令部27は、車両100に対して、電磁弁6を開とする旨の電磁弁操作指令を送信する。
【0028】
次に、図3及び図4を参照して、車両点検システム50の処理内容について説明する。図3は、車両点検装置1の処理内容を示すフローチャートである。図3に示す処理は、車両点検装置1が一台あたりの点検作業を行う際に実行される。なお、一台の車両点検装置1は、複数の車両100に対して同時に点検作業を行うことができる。この場合、図3に示す処理は、複数の車両100に対して並列で実行される。図4は、点検の対象となる一台あたりの車両100での処理内容を示すフローチャートである。図4の処理は、車両制御部10にて実行される。
【0029】
図3の処理は、通信部21が、点検対象候補となる敷地BE内の車両100と通信が確立したタイミングで開始される。ことのき、車両100側でも、通信部11が車両点検装置1の通信部21と通信可能な状態になっている。以降の説明において、単に「車両100」と言った場合は通信が確立して点検作業の処理対象となった一台の車両100のことを意味するものとする。まず、車両情報取得部22は、通信部21を介して、車両100から車両状態に関する情報を取得する(ステップS10)。ここでは、車両情報取得部22が、車両状態に関する情報を車両100に要求する。これにより、車両100の車両情報取得部12が、現時点における車両状態に関する情報を取得して、通信部11を介して車両点検装置1へ送信する。
【0030】
次に、条件判定部23は、現在の車両100の車両状態が、パージ可能な状態であるか否かを判定する(ステップS20)。条件判定部23は、現在の車両100の車両状態が、所定の条件、すなわち車両100が停車状態であり、且つ、車両電源が投入されており、且つ、エアタンク2が所定のエア圧以上となっているという条件を満たしている場合、パージ可能であると判定する。ステップS20において、パージ可能ではないと判定された場合、図3に示す処理は終了する。車両点検装置1は、他の車両100に対して図3の処理を行っている場合は、当該処理を継続する。
【0031】
一方、ステップS20において、パージ可能と判定された場合、車両情報取得部22は、通信部21を介して、車両100から車両位置情報を取得する(ステップS30)。ここでは、車両情報取得部22が、車両位置情報を車両100に要求する。これにより、車両100の車両情報取得部12が、現時点における車両状態に関する情報を取得して、通信部11を介して車両点検装置1へ送信する。
【0032】
次に、位置判定部24は、現在の車両100が、点検エリアDEに存在するか否かを判定する(ステップS40)。位置判定部24は、取得された車両位置情報を用いてジオフェンスを行うことで、車両100が点検エリアDEの範囲内であることを把握できたら、点検エリアDEに存在すると判定する。ステップS20において、車両100が点検エリアDEに存在しないと判定された場合、図3に示す処理は終了する。車両点検装置1は、他の車両100に対して図3の処理を行っている場合は、当該処理を継続する。
【0033】
一方、ステップS40において、車両100が点検エリアDEに存在すると判定された場合、指令部25は、通信部21を介して、車両100へ電磁弁6を開くように操作して、パージを行う旨の指令を送信すると共に、車両100からの点検結果を受信するための待機を行う(ステップS50)。その後、指令部25は、車両100からの点検結果を受信したか否かの判定を行う(ステップS60)。指令部25は、結果を受信していないと判定したら、当該判定を繰り返し行う。一方、指令部25は、結果を受信したと判定したら、結果に応じた指令を車両100へ送信し、点検者による走行承認の受信を待機する(ステップS70)。その後、指令部25は、車両100から点検者による走行承認があった旨を受信したか否かの判定を行う(ステップS80)。指令部25は、走行承認を受信していないと判定したら、当該判定を繰り返し行う。一方、指令部25が走行承認を受信したと判定したら、図3に示す処理が終了する。なお、ステップS70の処理の詳細については、車両100側の処理の説明と合わせて行う。
【0034】
図3のステップS50の電磁弁操作指令が行われると、車両100の車両制御部10が図4に示す処理を開始する。まず、機器制御部13は、車両点検装置1からの指令に基づいて、電磁弁6を開とする操作を行うことで、パージ作業を開始する(ステップS110)。これにより、電磁弁6が開き、排出部4からドレンDRが排出される。機器制御部13は、パージ作業が終了すると、電磁弁6を閉じて、エアコンプレッサ3を制御してエアタンク2のエア充填を行う(ステップS120)。次に、異常検知部14は、圧力センサ7によってエア圧を確認する(ステップS130)。一定時間が経過したら、異常検知部14は、エアタンク2のエア漏れがあるか否かの判定を行う(ステップS140)。このとき、一定時間が経過した段階でエア圧が閾値以上に上昇していれば、故障はないものと判断できる。
【0035】
ステップS140において、エア漏れがあると判定された場合、通信部11は、エアタンク2に故障がある旨の結果を車両点検装置1へ送信する(ステップS150)。この場合、車両点検装置1は、ステップS70の処理において、点検者へ、車両100の修理を行う旨の通知を行う。あるいは、車両点検装置1は、車両100に修理の指令を出して、車両100が点検者に修理の通知を行ってもよい。あるいは、車両100は、車両点検装置1へ、結果の送信だけ行い、車両100自身が点検者に修理の通知を行ってもよい。そして、車両制御部10は、修理の待機を行う(ステップS160)。その後、車両制御部10は、修理が完了したか否かの判定を行う(ステップS170)。車両制御部10は、例えば、点検者が修理終了の入力を行うなどによって、作業の完了を把握してよい。車両制御部10は、作業が完了していないと判定したら、当該判定を繰り返し行う。一方、車両制御部10は、作業の完了を把握したら、車両制御部10は、点検者の走行承認を待機する(ステップS180)。その後、車両制御部10は、走行承認があったか否かの判定を行う(ステップS190)。車両制御部10は、例えば、点検者が走行承認の入力を行うなどによって、走行承認を把握してよい。車両制御部10は、走行承認が完了していないと判定したら、当該判定を繰り返し行う。一方、車両制御部10は、走行承認を把握したら、走行承認を車両点検装置1へ送信し(ステップS200)、図4に示す処理を終了する。
【0036】
一方、ステップS140において、エア漏れがないと判定された場合、通信部11は、エアタンク2に故障はなく、パージも完了した旨の結果を車両点検装置1へ送信し(ステップS210)、ステップS180へ移行する。その後の処理は、上述と同様である。
【0037】
次に、本実施形態に係る車両点検装置1、及び車両点検システム50の作用・効果について説明する。
【0038】
本実施形態に係る車両点検装置1は、車両100とは異なる位置に設置され、車両100との間で通信を確立する通信部21を有している。また、車両点検装置1は、通信部21を介して、車両100に対してエアタンク2をパージする旨の指令を送信する指令部25を有している。すなわち、車両点検装置1は、点検対象となる車両100とは離れた位置にて、複数の車両100に対してパージの実行を指令することができる。そのため、点検者が車両100ごとに電磁弁6の操作を行う手間がなくなるため、パージ作業の工数を低減することができる。更に、指令部25は、車両100が予め定められた点検エリアDE内にてパージを行うような指令を送信する。これにより、例えばエアタンク2に故障があった場合でも、予め定められた場所での修理対応に限定できるため、修理対応に要する時間を短縮することができる。以上より、エアタンク2の点検を効率的に行うことができる。
【0039】
指令部25は、車両100が点検エリアDE内に存在し、且つ、車両100が所定の条件を満たす場合にパージを行うような指令を送信してよい。これにより、指令部25は、車両100側のパージの準備が整った適切なタイミングで、パージの指令を行うことができる。
【0040】
所定の条件は、車両100が停車状態であり、且つ、電源が投入されており、且つ、エアタンク2が所定のエア圧以上となっていることであってよい。この場合、指令部25は、より適切なタイミングで、パージの指令を行うことができる。
【0041】
本実施形態に係る車両点検システム50は、上述の車両点検装置1と、車両100と、を備える車両点検システム50であって、車両100は、エアタンク2エア圧の測定結果に基づいて異常を検知する異常検知部14を備える。
【0042】
この車両点検システム50によれば、異常検知部14は、パージ後にエア充填を行う際に、エア圧の上昇具合などに基づいて車両側でエアタンク2の故障を把握することができる。この場合、異常検知部14が車両点検装置1に当該異常を伝達できるようになるため、点検者が当該故障に対する適切な対応を取ることができるようになる。また、車両点検システム50は、修理が完了し、点検者の走行承認があるまで、停車を保持するように、車両に指令を出すことができる。以上により、車両ダウンタイムの短縮が可能となると共に、車両100の安全性も向上することができる。
【0043】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0044】
例えば、敷地における車両点検装置の位置や、敷地内の様子は、図1に示すものに限定されない。また、図2に示す構造も適宜変更可能である。条件判定部や異常検知部などは適宜省略してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…車両点検装置、2…エアタンク、21…通信部、23…条件判定部、24…位置判定部、25…指令部、14…異常検知部、50…車両点検システム、100…車両。
図1
図2
図3
図4