(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】電動ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 27/00 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
F04C27/00 331
(21)【出願番号】P 2020208375
(22)【出願日】2020-12-16
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】森 達志
(72)【発明者】
【氏名】柏 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】正木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】吉村 健一
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-185519(JP,A)
【文献】特開2009-144822(JP,A)
【文献】特開2014-173566(JP,A)
【文献】特開2019-178666(JP,A)
【文献】特開2007-024015(JP,A)
【文献】特開2006-177299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 27/00
F04C 18/18
F16J 15/3268
F16J 15/16
F16J 15/48
F16J 15/3204
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸の回転によって駆動される駆動ロータ及び従動ロータと、
前記従動ロータを回転させる従動軸に前記駆動軸の回転を伝達する前記駆動軸に設けられる駆動ギア及び前記従動軸に設けられる従動ギアと、
前記駆動軸を回転させる電動モータと、
前記駆動ギア及び前記従動ギアを収容するとともに前記駆動ギア及び前記従動ギアに供給されるオイルが封入されたギア室、前記駆動ロータ及び前記従動ロータを収容するロータ室、及び前記電動モータを収容するモータ室を有するハウジングと、を備え、
前記モータ室、前記ギア室、及び前記ロータ室は、前記駆動軸の回転軸線方向においてこの順に並んで配置されており、
前記ハウジングは、前記ギア室と前記ロータ室とを隔てる第1隔壁と、前記ギア室と前記モータ室とを隔てる第2隔壁と、を有し、
前記第1隔壁には、前記駆動軸が通過する第1貫通孔及び前記従動軸が通過する第2貫通孔がそれぞれ形成され、前記第2隔壁には、前記駆動軸が通過する第3貫通孔が形成され、
前記第1貫通孔に設けられるとともに前記ギア室と前記ロータ室との間で前記ギア室から前記ロータ室への流体の漏れをシールする第1シール部材と、
前記第2貫通孔に設けられるとともに前記ギア室と前記ロータ室との間で前記ギア室から前記ロータ室への流体の漏れをシールする第2シール部材と、
前記第3貫通孔に設けられるとともに前記ギア室と前記モータ室との間で前記ギア室から前記モータ室への流体の漏れをシールする第3シール部材と、を備える電動ポンプであって、
前記第3シール部材による前記ギア室と前記モータ室との間の
前記ギア室から前記モータ室への流体の漏れに対するシール性は、前記ギア室と前記ロータ室との間の前記第1シール部材及び前記第2シール部材のいずれの
前記ギア室から前記ロータ室への流体の漏れに対するシール性よりも低いことを特徴とする電動ポンプ。
【請求項2】
前記第3シール部材における前記駆動軸とのシール面には、第1螺旋溝が形成され、
前記第1螺旋溝は、前記ギア室内と前記モータ室内とを連通していることを特徴とする請求項1に記載の電動ポンプ。
【請求項3】
前記第1螺旋溝は、断面三角形状であることを特徴とする請求項2に記載の電動ポンプ。
【請求項4】
前記駆動軸における前記第3シール部材との摺動面には、第2螺旋溝が形成され、
前記第2螺旋溝は、前記ギア室内と前記モータ室内とを連通していることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の電動ポンプ。
【請求項5】
前記第2螺旋溝は、断面三角形状であることを特徴とする請求項4に記載の電動ポンプ。
【請求項6】
前記第3シール部材における前記第3貫通孔に対する接触面積は、前記第1シール部材における前記第1貫通孔に対する接触面積及び前記第2シール部材における前記第2貫通孔に対する接触面積よりも小さいことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の電動ポンプ。
【請求項7】
前記第3シール部材における前記第3貫通孔に対する前記駆動軸の回転軸線方向の投影面積は、前記第1シール部材における前記第1貫通孔に対する前記回転軸線方向の投影面積及び前記第2シール部材における前記第2貫通孔に対する前記回転軸線方向の投影面積よりも大きく、且つ、前記第3シール部材の厚みは、前記第1シール部材の厚み及び前記第2シール部材の厚みよりも小さいことを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の電動ポンプ。
【請求項8】
前記第3シール部材の透過性が、前記第1シール部材の透過性及び前記第2シール部材の透過性よりも高いことを特徴とする請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の電動ポンプ。
【請求項9】
前記ハウジングには、前記モータ室内と外部とを繋ぐ放出通路が設けられており、
前記放出通路には、前記モータ室内から前記外部へ流体を排出する弁体が設けられていることを特徴とする請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の電動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1のような電動ポンプは、駆動軸の回転によって駆動される駆動ロータ及び従動ロータと、従動ロータを回転させる従動軸に駆動軸の回転を伝達する駆動軸に設けられる駆動ギア及び従動軸に設けられる従動ギアと、を備えている。また、電動ポンプは、駆動軸を回転させる電動モータと、ギア室、ロータ室、及びモータ室を有するハウジングと、を備えている。ギア室は、駆動ギア及び従動ギアを収容する。また、ギア室には、駆動ギア及び従動ギアに供給されるオイルが封入されている。ロータ室は、駆動ロータ及び従動ロータを収容する。モータ室は、電動モータを収容する。モータ室、ギア室、及びロータ室は、駆動軸の回転軸線方向においてこの順に並んで配置されている。
【0003】
ハウジングは、ギア室とロータ室とを隔てる第1隔壁と、ギア室とモータ室とを隔てる第2隔壁と、を有している。第1隔壁には、駆動軸が通過する第1貫通孔及び従動軸が通過する第2貫通孔がそれぞれ形成されている。第2隔壁には、駆動軸が通過する第3貫通孔が形成されている。そして、電動ポンプは、第1貫通孔に設けられるとともにギア室とロータ室との間をシールする第1シール部材と、第2貫通孔に設けられるとともにギア室とロータ室との間をシールする第2シール部材と、第3貫通孔に設けられるとともにギア室とモータ室との間をシールする第3シール部材と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電動ポンプの運転中、ロータ室内に吸入された流体がギア室内に侵入する場合がある。そして、ギア室内の圧力が上昇すると、ギア室内のオイルがロータ室内に洩れてしまう虞がある。また、ギア室内の圧力が上昇して、ギア室内とモータ室内との圧力差が大きくなると、第3シール部材における駆動軸に対する緊迫力が増大する。すると、第3シール部材と駆動軸との間で摩耗が生じ易くなり、第3シール部材の耐久性が悪化してしまうため、電動ポンプの信頼性が低下してしまう虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する電動ポンプは、駆動軸の回転によって駆動される駆動ロータ及び従動ロータと、前記従動ロータを回転させる従動軸に前記駆動軸の回転を伝達する前記駆動軸に設けられる駆動ギア及び前記従動軸に設けられる従動ギアと、前記駆動軸を回転させる電動モータと、前記駆動ギア及び前記従動ギアを収容するとともに前記駆動ギア及び前記従動ギアに供給されるオイルが封入されたギア室、前記駆動ロータ及び前記従動ロータを収容するロータ室、及び前記電動モータを収容するモータ室を有するハウジングと、を備え、前記モータ室、前記ギア室、及び前記ロータ室は、前記駆動軸の回転軸線方向においてこの順に並んで配置されており、前記ハウジングは、前記ギア室と前記ロータ室とを隔てる第1隔壁と、前記ギア室と前記モータ室とを隔てる第2隔壁と、を有し、前記第1隔壁には、前記駆動軸が通過する第1貫通孔及び前記従動軸が通過する第2貫通孔がそれぞれ形成され、前記第2隔壁には、前記駆動軸が通過する第3貫通孔が形成され、前記第1貫通孔に設けられるとともに前記ギア室と前記ロータ室との間をシールする第1シール部材と、前記第2貫通孔に設けられるとともに前記ギア室と前記ロータ室との間をシールする第2シール部材と、前記第3貫通孔に設けられるとともに前記ギア室と前記モータ室との間をシールする第3シール部材と、を備える電動ポンプであって、前記第3シール部材による前記ギア室と前記モータ室との間のシール性は、前記ギア室と前記ロータ室との間の前記第1シール部材及び前記第2シール部材のいずれのシール性よりも低い。
【0007】
これによれば、第3シール部材によるギア室とモータ室との間のシール性が、ギア室とロータ室との間の第1シール部材及び第2シール部材のいずれのシール性よりも低いため、ギア室内の圧力が上昇した場合に、ギア室内の流体が、ロータ室内よりもモータ室内に洩れ易くなる。そして、ギア室内の流体がモータ室内に洩れることにより、ギア室内の圧力の上昇を抑えることができる。よって、ギア室内とモータ室内との圧力差を小さくすることができ、第3シール部材における駆動軸に対する緊迫力が増大してしまうことを抑制することができる。その結果、第3シール部材と駆動軸との間で摩耗が生じ難くなり、第3シール部材の耐久性が向上する。そして、ギア室内の圧力の上昇を抑えることができるため、ギア室内のオイルがロータ室内に洩れてしまうことを抑制することができる。以上により、ギア室内のオイルがロータ室内に洩れてしまうことを抑制しつつも、電動ポンプの信頼性を向上させることができる。
【0008】
上記電動ポンプにおいて、前記第3シール部材における前記駆動軸とのシール面には、第1螺旋溝が形成され、前記第1螺旋溝は、前記ギア室内と前記モータ室内とを連通しているとよい。
【0009】
これによれば、ギア室内とモータ室内とが第1螺旋溝を介して連通しているため、第3シール部材によるギア室とモータ室との間のシール性が、ギア室とロータ室との間の第1シール部材及び第2シール部材のいずれのシール性よりも低くなる。そして、ギア室内の圧力が上昇した場合に、ギア室内の流体が、第1螺旋溝を通過してモータ室内に排出される。したがって、ギア室内の圧力が上昇した場合に、ギア室内の流体が、ロータ室内よりもモータ室内に洩れ易くなる。そして、ギア室内の流体が、第1螺旋溝を通過してモータ室内に排出されることにより、ギア室内の圧力の上昇を抑えることができる。よって、ギア室内とモータ室内との圧力差を小さくすることができ、第3シール部材における駆動軸に対する緊迫力が増大してしまうことを抑制することができる。その結果、第3シール部材と駆動軸との間で摩耗が生じ難くなり、第3シール部材の耐久性が向上する。そして、ギア室内の圧力の上昇を抑えることができるため、ギア室内のオイルがロータ室内に洩れてしまうことを抑制することができる。以上により、ギア室内のオイルがロータ室内に洩れてしまうことを抑制しつつも、電動ポンプの信頼性を向上させることができる。
【0010】
上記電動ポンプにおいて、前記第1螺旋溝は、断面三角形状であるとよい。
断面三角形状である第1螺旋溝は、第3シール部材における駆動軸とのシール面に形成され、ギア室内の圧力が上昇した場合に、ギア室内の流体をモータ室内に排出するための第1螺旋溝として好適である。
【0011】
上記電動ポンプにおいて、前記駆動軸における前記第3シール部材との摺動面には、第2螺旋溝が形成され、前記第2螺旋溝は、前記ギア室内と前記モータ室内とを連通しているとよい。
【0012】
これによれば、ギア室内とモータ室内とが第2螺旋溝を介して連通しているため、第3シール部材によるギア室とモータ室との間のシール性が、ギア室とロータ室との間の第1シール部材及び第2シール部材のいずれのシール性よりも低くなる。そして、ギア室内の圧力が上昇した場合に、ギア室内の流体が、第2螺旋溝を通過してモータ室内に排出される。したがって、ギア室内の圧力が上昇した場合に、ギア室内の流体が、ロータ室内よりもモータ室内に洩れ易くなる。そして、ギア室内の流体が、第2螺旋溝を通過してモータ室内に排出されることにより、ギア室内の圧力の上昇を抑えることができる。よって、ギア室内とモータ室内との圧力差を小さくすることができ、第3シール部材における駆動軸に対する緊迫力が増大してしまうことを抑制することができる。その結果、第3シール部材と駆動軸との間で摩耗が生じ難くなり、第3シール部材の耐久性が向上する。そして、ギア室内の圧力の上昇を抑えることができるため、ギア室内のオイルがロータ室内に洩れてしまうことを抑制することができる。以上により、ギア室内のオイルがロータ室内に洩れてしまうことを抑制しつつも、電動ポンプの信頼性を向上させることができる。
【0013】
上記電動ポンプにおいて、前記第2螺旋溝は、断面三角形状であるとよい。
断面三角形状である第2螺旋溝は、駆動軸における第3シール部材との摺動面に形成され、ギア室内の圧力が上昇した場合に、ギア室内の流体をモータ室内に排出するための第2螺旋溝として好適である。
【0014】
上記電動ポンプにおいて、前記第3シール部材における前記第3貫通孔に対する接触面積は、前記第1シール部材における前記第1貫通孔に対する接触面積及び前記第2シール部材における前記第2貫通孔に対する接触面積よりも小さいとよい。
【0015】
これによれば、第3シール部材における第3貫通孔に対する接触面積が、第1シール部材における第1貫通孔に対する接触面積及び第2シール部材における第2貫通孔に対する接触面積よりも小さいため、第3シール部材によるギア室とモータ室との間のシール性を、ギア室とロータ室との間の第1シール部材及び第2シール部材のいずれのシール性よりも低くすることができる。
【0016】
上記電動ポンプにおいて、前記第3シール部材における前記第3貫通孔に対する前記駆動軸の回転軸線方向の投影面積は、前記第1シール部材における前記第1貫通孔に対する前記回転軸線方向の投影面積及び前記第2シール部材における前記第2貫通孔に対する前記回転軸線方向の投影面積よりも大きく、且つ、前記第3シール部材の厚みは、前記第1シール部材の厚み及び前記第2シール部材の厚みよりも小さいとよい。
【0017】
これによれば、第3シール部材における第3貫通孔に対する駆動軸の回転軸線方向の投影面積が、第1シール部材における第1貫通孔に対する駆動軸の回転軸線方向の投影面積及び第2シール部材における第2貫通孔に対する駆動軸の回転軸線方向の投影面積よりも大きく、且つ、第3シール部材の厚みが、第1シール部材の厚み及び第2シール部材の厚みよりも小さいため、第3シール部材によるギア室とモータ室との間のシール性を、ギア室とロータ室との間の第1シール部材及び第2シール部材のいずれのシール性よりも低くすることができる。
【0018】
上記電動ポンプにおいて、前記第3シール部材の透過性が、前記第1シール部材の透過性及び前記第2シール部材の透過性よりも高いとよい。
これによれば、第3シール部材の透過性が、第1シール部材の透過性及び第2シール部材の透過性よりも高いため、第3シール部材によるギア室とモータ室との間のシール性を、ギア室とロータ室との間の第1シール部材及び第2シール部材のいずれのシール性よりも低くすることができる。
【0019】
上記電動ポンプにおいて、前記ハウジングには、前記モータ室内と外部とを繋ぐ放出通路が設けられており、前記放出通路には、前記モータ室内から前記外部へ流体を排出する弁体が設けられているとよい。
【0020】
これによれば、弁体によって、ギア室内からモータ室内に洩れた流体を、放出通路を介して外部へ排出することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、ギア室内のオイルがロータ室内に洩れてしまうことを抑制しつつも、電動ポンプの信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態における電動ポンプを示す平断面図。
【
図3】第1シール部材と駆動軸との関係を示す断面図。
【
図4】第3シール部材と駆動軸との関係を示す断面図。
【
図5】第3シール部材の主リップ部材と駆動軸との関係を示す断面図。
【
図7】別の実施形態における第3シール部材の主リップ部材と駆動軸との関係を示す断面図。
【
図8】別の実施形態における第1シール部材と駆動軸との関係を示す断面図。
【
図9】別の実施形態における第3シール部材と駆動軸との関係を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、電動ポンプを具体化した一実施形態を
図1~
図6にしたがって説明する。本実施形態の電動ポンプは、燃料電池車に搭載されている。燃料電池車には、酸素及び水素を供給して発電させる燃料電池システムが搭載されている。そして、電動ポンプは、燃料電池から排出される流体としての水素ガス(水素オフガス)を循環させて再び燃料電池に供給する燃料電池車用の水素ポンプとして用いられている。
【0024】
図1に示すように、電動ポンプ10のハウジング11は、モータハウジング12、ギアハウジング13、ロータハウジング14、及びカバー部材15を有する筒状である。モータハウジング12は、板状の端壁12aと、端壁12aの外周部から筒状に延びる周壁12bと、を有する有底筒状である。ギアハウジング13は、板状の端壁13aと、端壁13aの外周部から筒状に延びる周壁13bと、を有する有底筒状である。
【0025】
ギアハウジング13は、ギアハウジング13の端壁13aの外面13cとモータハウジング12の周壁12bの開口端面12cとが突き合わされた状態で、モータハウジング12の周壁12bの開口側の端部に連結されている。ギアハウジング13の端壁13aは、モータハウジング12の周壁12bの開口を閉塞している。モータハウジング12の周壁12bの軸心方向とギアハウジング13の周壁13bの軸心方向とはそれぞれ一致している。
【0026】
ロータハウジング14は、板状の端壁14aと、端壁14aの外周部から筒状に延びる周壁14bと、を有する有底筒状である。ロータハウジング14は、ロータハウジング14の端壁14aの外面14cとギアハウジング13の周壁13bの開口端面13dとが突き合わされた状態で、ギアハウジング13の周壁13bの開口側の端部に連結されている。ロータハウジング14の端壁14aは、ギアハウジング13の周壁13bの開口を閉塞している。ギアハウジング13の周壁13bの軸心方向とロータハウジング14の周壁14bの軸心方向とはそれぞれ一致している。
【0027】
カバー部材15は、板状である。カバー部材15は、カバー部材15の一端面15aとロータハウジング14の周壁14bの開口端面14dとが突き合わされた状態で、ロータハウジング14の周壁14bの開口側の端部に連結されている。カバー部材15は、ロータハウジング14の周壁14bの開口を閉塞している。
【0028】
電動ポンプ10は、ハウジング11に互いに平行に配置された状態で回転可能に支持される駆動軸16及び従動軸17を備えている。よって、従動軸17は、駆動軸16に平行に配置されている。駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向は、各周壁12b,13b,14bの軸心方向に一致している。また、電動ポンプ10は、駆動軸16に設けられる円板状の駆動ギア18、及び従動軸17に設けられる円板状の従動ギア19を備えている。従動ギア19は、駆動ギア18と噛合して回転する。電動ポンプ10は、駆動ギア18によって回転される駆動ロータ20、及び従動ギア19によって回転する従動ロータ21を備えている。駆動ロータ20は、駆動軸16の第1端部に設けられている。従動ロータ21は、従動軸17の第1端部に設けられている。従動ロータ21は、駆動ロータ20と共に回転する。駆動ロータ20及び従動ロータ21は、駆動軸16の回転によって駆動される。駆動ギア18及び従動ギア19は、従動ロータ21を回転させる従動軸17に駆動軸16の回転を伝達する。
【0029】
電動ポンプ10は、駆動軸16を回転させる電動モータ22を備えている。したがって、電動モータ22は、駆動軸16を回転させるために駆動する駆動源である。ハウジング11内には、電動モータ22を収容するモータ室23が形成されている。モータ室23は、モータハウジング12の端壁12a、モータハウジング12の周壁12b、及びギアハウジング13の端壁13aによって区画されている。
【0030】
電動モータ22は、モータロータ22aと、ステータ22bと、を有している。モータロータ22aは、駆動軸16に一体回転可能に止着されている。ステータ22bは、モータハウジング12の周壁12bの内周面に固定される円筒状のステータコア22cを有している。ステータコア22cは、モータロータ22aを取り囲んでいる。さらに、ステータ22bは、ステータコア22cに巻回されたコイル22dを有している。そして、電動モータ22は、コイル22dに電力が供給されることにより駆動して、モータロータ22aが駆動軸16と一体的に回転する。
【0031】
ハウジング11内には、駆動ギア18及び従動ギア19を収容するギア室24が形成されている。ギア室24は、ギアハウジング13の端壁13a、ギアハウジング13の周壁13b、及びロータハウジング14の端壁14aによって区画されている。駆動ギア18及び従動ギア19は、互いに噛合した状態でギア室24に収容されている。ギア室24には、駆動ギア18及び従動ギア19に供給されるオイルが封入されている。オイルは、駆動ギア18及び従動ギア19の潤滑及び温度上昇の抑制に寄与する。駆動ギア18及び従動ギア19は、オイルに浸されながら回転することにより、焼き付いたり磨耗したりすることなく高速回転が可能になっている。
【0032】
ハウジング11内には、駆動ロータ20及び従動ロータ21を収容するロータ室25が形成されている。したがって、ハウジング11は、ギア室24、ロータ室25、及びモータ室23を有している。ロータ室25は、ロータハウジング14の端壁14a、ロータハウジング14の周壁14b、及びカバー部材15によって区画されている。本実施形態において、モータ室23、ギア室24、及びロータ室25は、駆動軸16の回転軸線方向においてこの順に並んで配置されている。
【0033】
ロータハウジング14の端壁14aは、駆動軸16の回転軸線方向でギア室24とロータ室25とを隔てている。したがって、ロータハウジング14の端壁14aは、ギア室24とロータ室25とを隔てる第1隔壁である。ギアハウジング13の端壁13aは、駆動軸16の回転軸線方向でギア室24とモータ室23とを隔てている。したがって、ギアハウジング13の端壁13aは、ギア室24とモータ室23とを隔てる第2隔壁である。カバー部材15は、駆動軸16の回転軸線方向でロータ室25と外部とを隔てている。
【0034】
ロータハウジング14の端壁14aには、駆動軸16が通過する第1貫通孔30が形成されている。第1貫通孔30の第1端は、ロータ室25に開口し、第1貫通孔30の第2端は、ギア室24に開口している。第1貫通孔30には、駆動軸16を回転可能に支持する第1軸受31が設けられている。また、第1貫通孔30には、第1シール部材32が設けられている。第1シール部材32は、第1貫通孔30における第1軸受31よりもロータ室25寄りに配置されている。第1シール部材32は、第1貫通孔30と駆動軸16との間をシールしている。これにより、第1シール部材32は、ギア室24とロータ室25との間をシールしている。
【0035】
ロータハウジング14の端壁14aには、従動軸17が通過する第2貫通孔40が形成されている。第2貫通孔40の第1端は、ロータ室25に開口し、第2貫通孔40の第2端は、ギア室24に開口している。第2貫通孔40には、従動軸17を回転可能に支持する第2軸受41が設けられている。また、第2貫通孔40には、第2シール部材42が設けられている。第2シール部材42は、第2貫通孔40における第2軸受41よりもロータ室25寄りに配置されている。第2シール部材42は、第2貫通孔40と駆動軸16との間をシールしている。これにより、第2シール部材42は、ギア室24とロータ室25との間をシールしている。
【0036】
ギアハウジング13の端壁13aには、駆動軸16が通過する第3貫通孔50が形成されている。第3貫通孔50の第1端は、ギア室24に開口し、第3貫通孔50の第2端は、モータ室23に開口している。第3貫通孔50には、駆動軸16を回転可能に支持する第3軸受51が設けられている。また、第3貫通孔50には、第3シール部材52が設けられている。第3シール部材52は、第3貫通孔50における第3軸受51よりもモータ室23寄りに配置されている。第3シール部材52は、第3貫通孔50と駆動軸16との間をシールしている。これにより、第3シール部材52は、ギア室24とモータ室23との間をシールしている。
【0037】
駆動軸16は、ギアハウジング13の端壁13a及びロータハウジング14の端壁14aを貫通している。従動軸17は、ロータハウジング14の端壁14aを貫通している。したがって、ロータハウジング14の端壁14aには、駆動軸16及び従動軸17が貫通している。駆動軸16における第3貫通孔50を通過している部位の外径は、駆動軸16における第1貫通孔30を通過している部位の外径よりも大きい。駆動軸16における第1貫通孔30を通過している部位の外径は、従動軸17における第2貫通孔40を通過している部位の外径と同じである。
【0038】
ギアハウジング13の端壁13aの内底面13eには、軸受収容凹部60が形成されている。軸受収容凹部60には、従動軸17の第2端部を回転可能に支持する第4軸受61が設けられている。そして、従動軸17の第1端部は、第2貫通孔40を通過してロータ室25内に突出しており、従動軸17の第2端部は、軸受収容凹部60内に配置され、第4軸受61に回転可能に支持されている。よって、従動軸17は、ハウジング11に片持ち支持されている。
【0039】
モータハウジング12の端壁12aの内底面12eには、円筒状の軸受部62が形成されている。軸受部62には、駆動軸16におけるロータ室25とは反対側の端部を回転可能に支持する第5軸受63が設けられている。そして、駆動軸16の第1端部は、第1貫通孔30を通過してロータ室25内に突出しており、駆動軸16の第2端部は、軸受部62の内側に配置され、第5軸受63に回転可能に支持されている。よって、駆動軸16は、ハウジング11に片持ち支持されている。
【0040】
図2に示すように、駆動ロータ20及び従動ロータ21は、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向に直交する断面視が二葉状(瓢箪状)に形成されている。駆動ロータ20は、二条の山歯20aと、両山歯20aの間に形成された谷歯20bと、を有している。従動ロータ21は、二条の山歯21aと、両山歯21aの間に形成された谷歯21bと、を有している。
【0041】
そして、駆動ロータ20及び従動ロータ21は、駆動ロータ20の山歯20aが従動ロータ21の谷歯21bに入り込んだ後に、駆動ロータ20の谷歯20bに従動ロータ21の山歯21aが入り込むことを繰り返しながらロータ室25内を回転可能になっている。駆動ロータ20及び従動ロータ21は、ロータ室25内で互いに逆回転する。具体的には、駆動ロータ20は、
図2に示す矢印R1の方向に回転し、従動ロータ21は、
図2に示す矢印R2の方向へ回転する。
【0042】
ロータハウジング14は、ロータ室25内に水素ガスを吸入する吸入口26と、ロータ室25内の水素ガスを吐出する吐出口27と、を有している。吸入口26及び吐出口27は、ロータハウジング14の周壁14bの外周面におけるロータ室25を挟んで対向する位置にそれぞれ形成されている。吸入口26及び吐出口27は、ロータ室25と外部とを連通する。吸入口26と吐出口27とを結ぶ直線方向Z1は、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線r1,r2のそれぞれに対して垂直に交差する。
図2における直線方向Z1は重力方向に一致している。
【0043】
図3では、駆動軸16、第1貫通孔30、及び第1シール部材32それぞれの関係を図示している。なお、従動軸17、第2貫通孔40、及び第2シール部材42それぞれの関係は、駆動軸16、第1貫通孔30、及び第1シール部材32それぞれの関係と同じであるため、その詳細な説明を省略する。また、第1シール部材32及び第2シール部材42それぞれの構成は同じであるため、
図3では、第1シール部材32の構成を詳細に説明し、第2シール部材42の構成の詳細な説明を省略する。
【0044】
図3に示すように、第1シール部材32は、シール本体部71と、リップ部材72と、補強環73と、保持部材74と、を有している。シール本体部71は、筒状である。シール本体部71は、ゴム製である。シール本体部71は、メインリップ部71aと、外周シール部71bと、シール接続部71cと、を有している。メインリップ部71a、外周シール部71b、及びシール接続部71cは、シール本体部71の内周側から外周側に向けて、メインリップ部71a、シール接続部71c、及び外周シール部71bの順に配置されている。
【0045】
外周シール部71bは、筒状である。外周シール部71bは、第1貫通孔30の内周面に沿って延びている。外周シール部71bの外周面は、第1貫通孔30の内周面に密着している。シール接続部71cは、外周シール部71bの内周部からシール本体部71の径方向内側に延びる環状である。具体的には、シール接続部71cは、外周シール部71bの内周部におけるギア室24側の端部からシール本体部71の径方向内側に延びている。メインリップ部71aは、シール接続部71cの内周縁からシール本体部71の径方向内側に突出しつつ、且つ筒状に延びている。メインリップ部71aにおけるシール接続部71cからの延在方向は、外周シール部71bにおけるシール接続部71cからの延在方向とは反対方向である。メインリップ部71aの外周部には、環状のガータスプリング75が装着されている。そして、メインリップ部71aは、ガータスプリング75によって駆動軸16の外周面から離間し難くなっているとともに、駆動軸16の外周面に密着している。そして、外周シール部71bにおける第1貫通孔30の内周面に対する密着、及びメインリップ部71aにおける駆動軸16の外周面に対する密着それぞれによって、駆動軸16の外周面と第1貫通孔30の内周面との間が第1シール部材32によってシールされている。
【0046】
補強環73は、金属製である。補強環73は、シール本体部71に保持されている。補強環73は、延在部73a及びフランジ部73bを有している。延在部73aは、外周シール部71bの内周面に沿って延びる筒状である。フランジ部73bは、シール接続部71cに沿って延びる環状である。フランジ部73bは、延在部73aの軸線方向に対して直交する方向に延びている。フランジ部73bは、延在部73aの内周面から延びている。
【0047】
リップ部材72は、四弗化エチレン樹脂(PTFE)製である。リップ部材72は、被保持部72aと、ダストリップ部72bと、を有している。被保持部72aは、補強環73のフランジ部73bに沿って延びる環状である。ダストリップ部72bは、被保持部72aの内周縁から突出する円錐筒状である。ダストリップ部72bは、被保持部72aの内周縁から離間するにつれてメインリップ部71aに対して徐々に離間しながら延びている。ダストリップ部72bは、被保持部72aから駆動軸16の外周面に向けて延びている。そして、ダストリップ部72bは、ロータ室25からギア室24への異物の侵入を抑制する。
【0048】
保持部材74は、金属製である。保持部材74は、第1保持部74a及び第2保持部74bを有している。第1保持部74aは、補強環73の延在部73aの内周面に沿って延びる筒状である。第1保持部74aは、補強環73の延在部73aを外周シール部71bに向けて押し付けた状態で保持している。第2保持部74bは、リップ部材72の被保持部72aに沿って延びる環状である。第2保持部74bは、リップ部材72の被保持部72a、及び補強環73のフランジ部73bをシール接続部71cに向けて押し付けた状態で保持している。これにより、シール本体部71と、リップ部材72と、補強環73と、保持部材74とが一体化されている。
【0049】
図4に示すように、第3シール部材52は、取付環81と、ゴム部材82と、主リップ部材83と、を有している。取付環81は、金属製である、取付環81は、円筒部81aと、連結部81bと、フランジ部81cと、を有している。フランジ部81cは、円筒部81aの軸線方向に対して直交する方向に延びる環状である。フランジ部81cは、円筒部81aに対して円筒部81aの径方向内側に延びている。連結部81bは、円筒部81aとフランジ部81cとを連結する円錐筒状である。連結部81bは、円筒部81aの軸線方向の一端縁に連続している。連結部81bは、円筒部81aの一端縁から離間するにつれて円筒部81aの径方向内側に向けて徐々に延びている。連結部81bは、円筒部81aの軸線方向に対して斜めに延びている。
【0050】
ゴム部材82は、円環状である。ゴム部材82は、外周シール部82aと、ダストリップ部82bと、シール接続部82cと、を有している。外周シール部82a、ダストリップ部82b、及びシール接続部82cは、ゴム部材82の内周側から外周側に向けて、ダストリップ部82b、シール接続部82c、及び外周シール部82aの順に配置されている。
【0051】
外周シール部82aは、筒状である。外周シール部82aは、取付環81の連結部81bの外周面に沿って延びている。外周シール部82aは、取付環81の連結部81bの外周面に密着している。また、外周シール部82aの外周面は、第3貫通孔50の内周面に密着している。これにより、外周シール部82aは、取付環81とギアハウジング13との間をシールしている。
【0052】
シール接続部82cは、外周シール部82aの内周部からゴム部材82の径方向内側に延びる環状である。シール接続部82cは、取付環81のフランジ部81cに沿って延びている。シール接続部82cは、フランジ部81cにおける円筒部81a側に位置する面に密着する第1密着部821cと、フランジ部81cにおける円筒部81aとは反対側に位置する面に密着する第2密着部822cと、を有している。そして、シール接続部82cは、第1密着部821c及び第2密着部822cが取付環81のフランジ部81cにそれぞれ密着した状態で、フランジ部81cを保持している。したがって、取付環81とゴム部材82とは一体化されている。
【0053】
ダストリップ部82bは、シール接続部82cの内周縁からゴム部材82の径方向内側に突出する円錐筒状である。ダストリップ部82bは、シール接続部82cの内周縁から離間するにつれて第1密着部821cに対して徐々に離間しながら延びている。ダストリップ部82bは、シール接続部82cから駆動軸16の外周面に向けて延びている。そして、ダストリップ部82bは、モータ室23からギア室24への異物の侵入を抑制する。
【0054】
主リップ部材83は、筒状である。主リップ部材83は、四弗化エチレン樹脂(PTFE)製である。主リップ部材83は、内周シール部83aと、被保持部83bと、を有している。内周シール部83aは、円錐筒状である。被保持部83bは、内周シール部83aの軸線方向に対して直交する方向に延びる環状である。被保持部83bは、取付環81のフランジ部81cに平行に延びている。被保持部83bは、シール接続部82cの第1密着部821cにおけるフランジ部81cとは反対側の部位に密着している。そして、主リップ部材83は、被保持部83bがシール接続部82cの第1密着部821cに密着した状態で第1密着部821cに保持されることにより、ゴム部材82に取り付けられている。したがって、主リップ部材83とゴム部材82とは一体化されており、主リップ部材83と取付環81とはゴム部材82を介して一体化されている。
【0055】
内周シール部83aは、被保持部83bの内周縁から離間するにつれてダストリップ部82bから徐々に離間しながら延びている。内周シール部83aの軸線方向は、取付環81の円筒部81aの軸線方向に一致している。内周シール部83aは、被保持部83bの内周縁から離間するにつれて駆動軸16の外周面に徐々に接近していく。そして、内周シール部83aの内周面における内周シール部83aの先端側の部分は、駆動軸16の外周面に密着している。よって、内周シール部83aの内周面は、駆動軸16の外周面に密着する部分と、駆動軸16の外周面から離間している部分と、を有している。したがって、内周シール部83aの内周面における駆動軸16の外周面に密着する部分は、第3シール部材52における駆動軸16とのシール面52aである。そして、駆動軸16の外周面におけるシール面52aとの摺動部位は、駆動軸16における第3シール部材52との摺動面16aである。
【0056】
第3シール部材52は、取付環81の円筒部81aが第3貫通孔50に圧入されることにより、第3貫通孔50の内側でギアハウジング13の端壁13aに固定されている。第3シール部材52が第3貫通孔50の内側でギアハウジング13の端壁13aに固定された状態において、第3貫通孔50の内側における第3シール部材52のシール面52aよりもギア室24側に位置する第1空間K1は、ギア室24に連通している。したがって、第3シール部材52が第3貫通孔50の内側でギアハウジング13の端壁13aに固定された状態において、内周シール部83aの先端縁83eは、ギア室24に臨んでいる。第3シール部材52が第3貫通孔50の内側でギアハウジング13の端壁13aに固定された状態において、第3貫通孔50の内側における第3シール部材52のシール面52aよりもモータ室23側に位置する第2空間K2は、モータ室23に連通している。したがって、内周シール部83aの内周面における駆動軸16の外周面から離間している部分は、モータ室23に臨んでいる。
【0057】
図4及び
図5に示すように、第3シール部材52には、第1螺旋溝53が形成されている。第1螺旋溝53は、内周シール部83aの内周面に形成されている。第1螺旋溝53の第1端は、内周シール部83aの先端縁83eに開口している。第1螺旋溝53の第2端は、シール面52aを越えて、内周シール部83aの内周面における駆動軸16の外周面から離間している部分まで延びている。よって、第3シール部材52のシール面52aには、第1螺旋溝53が形成されている。第1螺旋溝53は、内周シール部83aの先端縁83eからシール面52aを越えて内周シール部83aの内周面における駆動軸16の外周面から離間している部分まで連続している。したがって、第1螺旋溝53は、ギア室24内とモータ室23内とを連通している。
【0058】
図6に示すように、第1螺旋溝53は、断面三角形状である。第1螺旋溝53は、内周シール部83aの内周面に対して交差した状態で斜めに延びる一対の溝内面53aを有している。各溝内面53aにおける内周シール部83aの内周面とは反対側に位置する縁部同士は交差している。一対の溝内面53aの交点は、第1螺旋溝53の最下部である。各溝内面53aのなす角度θ1は、例えば、20度である。また、第1螺旋溝53のピッチP1は、一定である。第1螺旋溝53の深さD1は、第1螺旋溝53の第1端から第2端にかけて一定である。第1螺旋溝53のピッチP1は、第1螺旋溝53の深さD1よりも大きい。
【0059】
図1に示すように、モータハウジング12には、放出通路90が設けられている。放出通路90の一端は、モータ室23内に連通している。放出通路90の他端は、外部に連通している。したがって、放出通路90は、モータ室23内と外部とを繋ぐ。放出通路90には、弁体91が設けられている。弁体91は、モータ室23内の圧力が所定の圧力よりも高くなると開弁するように構成されている。そして、弁体91は、開弁すると、モータ室23内の流体を外部へ排出可能に構成されている。したがって、弁体91は、モータ室23内から外部へ流体を排出する。
【0060】
次に、本実施形態の作用について説明する。
電動ポンプ10の運転が開始されて、電動モータ22の駆動によって駆動軸16が回転すると、互いに噛合された駆動ギア18及び従動ギア19のギア連結を介して従動軸17が駆動軸16に対して逆回転する。これにより、駆動ロータ20及び従動ロータ21が互いに逆回転し、電動ポンプ10は、駆動ロータ20及び従動ロータ21の回転によって、吸入口26を介したロータ室25への水素ガスの吸入、及び吐出口27を介したロータ室25からの水素ガスの吐出を行う。
【0061】
ところで、電動ポンプ10の運転中、ロータ室25内に吸入された水素ガスがギア室24に侵入する場合がある。例えば、電動ポンプ10の運転初期段階においては、ロータ室25内の圧力の方がギア室24内の圧力よりも大きいため、ロータ室25内に吸入された水素ガスがギア室24に侵入する。すると、ギア室24内の圧力が徐々に上昇していく。
【0062】
ここで、ギア室24内とモータ室23内とが第1螺旋溝53を介して連通しているため、第3シール部材52によるギア室24とモータ室23との間のシール性が、ギア室24とロータ室25との間の第1シール部材32及び第2シール部材42のいずれのシール性よりも低くなっている。そして、ギア室24内の圧力が上昇した場合に、ギア室24内の流体である水素ガスを含む流体が、第1螺旋溝53を通過してモータ室23内に排出される。したがって、ギア室24内の圧力が上昇した場合に、ギア室24内の流体が、ロータ室25内よりもモータ室23内に洩れ易くなる。そして、ギア室24内の流体が、第1螺旋溝53を通過してモータ室23内に排出されることにより、ギア室24内の圧力の上昇が抑えられる。そして、モータ室23内の圧力が所定の圧力よりも高くなると、弁体91が開弁し、ギア室24内からモータ室23内に洩れた流体が、弁体91によって、放出通路90を介して外部へ排出される。
【0063】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)第3シール部材52によるギア室24とモータ室23との間のシール性が、ギア室24とロータ室25との間の第1シール部材32及び第2シール部材42のいずれのシール性よりも低いため、ギア室24内の圧力が上昇した場合に、ギア室24内の流体が、ロータ室25内よりもモータ23室内に洩れ易くなる。そして、ギア室24内の流体がモータ室23内に洩れることにより、ギア室24内の圧力の上昇を抑えることができる。よって、ギア室24内とモータ室23内との圧力差を小さくすることができ、第3シール部材52における駆動軸16に対する緊迫力が増大してしまうことを抑制することができる。その結果、第3シール部材52と駆動軸16との間で摩耗が生じ難くなり、第3シール部材52の耐久性が向上する。そして、ギア室24内の圧力の上昇を抑えることができるため、ギア室24内のオイルがロータ室25内に洩れてしまうことを抑制することができる。以上により、ギア室24内のオイルがロータ室25内に洩れてしまうことを抑制しつつも、電動ポンプ10の信頼性を向上させることができる。
【0064】
(2)ギア室24内とモータ室23内とが第1螺旋溝53を介して連通しているため、第3シール部材52によるギア室24とモータ室23との間のシール性が、ギア室24とロータ室25との間の第1シール部材32及び第2シール部材42のいずれのシール性よりも低くなる。そして、ギア室24内の圧力が上昇した場合に、ギア室24内の流体を、第1螺旋溝53を通過してモータ室23内に排出することができる。そして、ギア室24内の流体が、第1螺旋溝53を通過してモータ室23内に排出されることにより、ギア室24内の圧力の上昇を抑えることができる。
【0065】
(3)第1螺旋溝53は、断面三角形状である。このように、断面三角形状である第1螺旋溝53は、第3シール部材52における駆動軸16とのシール面52aに形成され、ギア室24内の圧力が上昇した場合に、ギア室24内の流体をモータ室23内に排出するための第1螺旋溝53として好適である。
【0066】
(4)モータハウジング12には、モータ室23内と外部とを繋ぐ放出通路90が設けられている。そして、放出通路90には、モータ室23内から外部へ流体を排出する弁体91が設けられている。これによれば、弁体91によって、ギア室24内からモータ室23内に洩れた流体を、放出通路90を介して外部へ排出することができる。
【0067】
(5)駆動軸16における第3貫通孔50を通過している部位の外径は、駆動軸16における第1貫通孔30を通過している部位の外径よりも大きい。駆動軸16における第1貫通孔30を通過している部位の外径は、従動軸17における第2貫通孔40を通過している部位の外径と同じである。これによれば、例えば、駆動軸16における第3貫通孔50を通過している部位の外径が、駆動軸16における第1貫通孔30を通過している部位の外径よりも小さい場合に比べると、第3シール部材52における駆動軸16に対する接触部分の周方向の長さが長くなる。第3シール部材52における駆動軸16に対する接触部分の周方向の長さが長くなるほど、ギア室24内の流体がモータ室23内に洩れ易くなるため、ギア室24内の圧力が上昇した場合に、ギア室24内の流体が、ロータ室25内よりもモータ23室内に洩れ易くなり、ギア室24内の圧力の上昇を抑えることができる。
【0068】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0069】
○
図7に示すように、第3シール部材52に、第1螺旋溝53が形成されていなくてもよい。そして、駆動軸16の外周面に第2螺旋溝93が形成されていてもよい。第2螺旋溝93の第1端は、駆動軸16の外周面において、内周シール部83aの先端縁83eと対向する部位よりも僅かにギア室24寄りの部位に開口している。第1螺旋溝53の第2端は、摺動面16aを越えて、駆動軸16の外周面において、内周シール部83aの内周面における駆動軸16の外周面から離間している部分と対向する部位まで延びている。よって、駆動軸16における第3シール部材52との摺動面16aには、第2螺旋溝93が形成されている。そして、第2螺旋溝93は、ギア室24内とモータ室23内とを連通している。第2螺旋溝93は、断面三角形状である。
【0070】
これによれば、ギア室24内とモータ室23内とが第2螺旋溝93を介して連通しているため、第3シール部材52によるギア室24とモータ室23との間のシール性が、ギア室24とロータ室25との間の第1シール部材32及び第2シール部材42のいずれのシール性よりも低くなる。そして、ギア室24内の圧力が上昇した場合に、ギア室24内の流体が、第2螺旋溝93を通過してモータ室23内に排出される。したがって、ギア室24内の圧力が上昇した場合に、ギア室24内の流体が、ロータ室25内よりもモータ室23内に洩れ易くなる。そして、ギア室24内の流体が、第2螺旋溝93を通過してモータ室23内に排出されることにより、ギア室24内の圧力の上昇を抑えることができる。断面三角形状である第2螺旋溝93は、駆動軸16における第3シール部材52との摺動面16aに形成され、ギア室24内の圧力が上昇した場合に、ギア室24内の流体をモータ室23内に排出するための第2螺旋溝93として好適である。
【0071】
○
図7に示す実施形態において、第3シール部材52に第1螺旋溝53が形成されていてもよい。要は、第3シール部材52に、第1螺旋溝53が形成されており、さらに、駆動軸16の外周面に第2螺旋溝93が形成されていてもよい。
【0072】
○ 実施形態において、第3シール部材52における第3貫通孔50に対する接触面積が、第1シール部材32における第1貫通孔30に対する接触面積及び第2シール部材42における第2貫通孔40に対する接触面積よりも小さくなるように、第1シール部材32、第2シール部材42、及び第3シール部材52を構成してもよい。
【0073】
これによれば、第3シール部材52によるギア室24とモータ室23との間のシール性を、ギア室24とロータ室25との間の第1シール部材32及び第2シール部材42のいずれのシール性よりも低くすることができる。したがって、この場合であれば、例えば、第3シール部材52に第1螺旋溝53が形成されていなくてもよい。
【0074】
○ 実施形態において、第3シール部材52における第3貫通孔50に対する駆動軸16の回転軸線方向の投影面積が、第1シール部材32における第1貫通孔30に対する駆動軸16の回転軸線方向の投影面積及び第2シール部材42における第2貫通孔40に対する駆動軸16の回転軸線方向の投影面積よりも大きく、且つ、第3シール部材52の厚みが、第1シール部材32の厚み及び第2シール部材42の厚みよりも小さくなるように、第1シール部材32、第2シール部材42、及び第3シール部材52を構成してもよい。
【0075】
ここで、例えば、第3シール部材52における第3貫通孔50に対する駆動軸16の回転軸線方向の投影面積とは、駆動軸16の回転軸線r1から外周シール部82aの外周面に至る線分を半径として求められる面積から、駆動軸16の回転軸線r1からシール面52aに至る線分を半径として求められる面積を差し引いた面積である。また、第1シール部材32における第1貫通孔30に対する駆動軸16の回転軸線方向の投影面積とは、駆動軸16の回転軸線r1から外周シール部71bの外周面に至る線分を半径として求められる面積から、駆動軸16の回転軸線r1からメインリップ部71aに至る線分を半径として求められる面積を差し引いた面積である。さらに、第2シール部材42における第2貫通孔40に対する駆動軸16の回転軸線方向の投影面積とは、従動軸17の回転軸線r2から外周シール部71bの外周面に至る線分を半径として求められる面積から、従動軸17の回転軸線r2からメインリップ部71aに至る線分を半径として求められる面積を差し引いた面積である。第3シール部材52の厚みとは、第3シール部材52において、第1密着部821c、第2密着部822c、フランジ部81c、及び被保持部83bそれぞれの厚みを足し合わせた厚みである。第1シール部材32及び第2シール部材42の厚みとは、シール接続部71c、フランジ部73b、被保持部72a、及び第2保持部74bそれぞれの厚みを足し合わせた厚みである。
【0076】
これによれば、第3シール部材52によるギア室24とモータ室23との間のシール性を、ギア室24とロータ室25との間の第1シール部材32及び第2シール部材42のいずれのシール性よりも低くすることができる。したがって、この場合であれば、例えば、第3シール部材52に第1螺旋溝53が形成されていなくてもよい。
【0077】
○ 実施形態において、第3シール部材52の透過性が、第1シール部材32及び第2シール部材42の透過性よりも高くなるように、第1シール部材32、第2シール部材42、及び第3シール部材52を構成してもよい。例えば、第3シール部材52の透過性が、第1シール部材32及び第2シール部材42の透過性よりも高くなるように、第1シール部材32及び第2シール部材42のシール本体部71の材質、及び第3シール部材52のゴム部材82の材質を適宜変更してもよい。
【0078】
これによれば、第3シール部材52の透過性が、第1シール部材32及び第2シール部材42の透過性よりも高いため、第3シール部材52によるギア室24とモータ室23との間のシール性を、ギア室24とロータ室25との間の第1シール部材32及び第2シール部材42のいずれのシール性よりも低くすることができる。したがって、この場合であれば、例えば、第3シール部材52に第1螺旋溝53が形成されていなくてもよい。
【0079】
○ 実施形態において、第1螺旋溝53のピッチP1が一定でなくてもよい。
○ 実施形態において、第1螺旋溝53の深さD1が、第1螺旋溝53の第1端から第2端にかけて一定でなくてもよい。
【0080】
○ 実施形態において、第1螺旋溝53のピッチP1が、第1螺旋溝53の深さD1よりも小さくてもよい。
○ 実施形態において、第1螺旋溝53のピッチP1と第1螺旋溝53の深さD1とが同じ寸法であってもよい。
【0081】
○ 実施形態において、第1螺旋溝53は、断面三角形状でなくてもよく、例えば、断面円弧状であってもよい。要は、第1螺旋溝53は、ギア室24内とモータ室23内とを連通することができれば、形状は特に限定されるものではない。
【0082】
○
図7に示す実施形態において、第2螺旋溝93は、断面三角形状でなくてもよく、例えば、断面円弧状であってもよい。要は、第2螺旋溝93は、ギア室24内とモータ室23内とを連通することができれば、形状は特に限定されるものではない。
【0083】
○
図8に示すように、第1シール部材32及び第2シール部材42は、リップ部材72及び保持部材74が省略された構成であってもよい。なお、
図8に示すように、第1シール部材32及び第2シール部材42は、シール接続部71cが、外周シール部71bの内周部におけるロータ室25側の端部からシール本体部71の径方向内側に延びている構成であってもよい。したがって、外周シール部71bにおけるシール接続部71cからの延在方向が、メインリップ部71aにおけるシール接続部71cからの延在方向と同一方向であってもよい。
【0084】
○
図9に示すように、第3シール部材52は、主リップ部材83が、金属製である環状の保持部材84によって保持されている構成であってもよい。
○ 実施形態において、電動ポンプ10は、モータハウジング12に、放出通路90が設けられていない構成であってもよい。
【0085】
○ 実施形態において、駆動ロータ20及び従動ロータ21は、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向に直交する断面視が、例えば、三葉状であったり、四葉状であったりしてもよい。
【0086】
○ 実施形態において、駆動ロータ20及び従動ロータ21が、例えば、ヘリカル形状であってもよい。
○ 実施形態において、電動ポンプ10は、燃料電池に水素ガスを供給する燃料電池用水素ポンプでなくてもよく、その他の用途で用いられるものであってもよい。要は、ロータ室25に吸入される流体は水素ガスに限らない。
【符号の説明】
【0087】
10…電動ポンプ、11…ハウジング、13a…第2隔壁である端壁、14a…第1隔壁である端壁、16…駆動軸、16a…摺動面、17…従動軸、18…駆動ギア、19…従動ギア、20…駆動ロータ、21…従動ロータ、22…電動モータ、23…モータ室、24…ギア室、25…ロータ室、30…第1貫通孔、32…第1シール部材、40…第2貫通孔、42…第2シール部材、50…第3貫通孔、52…第3シール部材、52a…シール面、53…第1螺旋溝、90…放出通路、91…弁体、93…第2螺旋溝。