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特許7529567生体高分子足場移植片およびその生成のための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】生体高分子足場移植片およびその生成のための方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/24 20060101AFI20240730BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20240730BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20240730BHJP
   A61L 27/26 20060101ALI20240730BHJP
   A61L 27/56 20060101ALI20240730BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20240730BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20240730BHJP
   A61F 2/08 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
A61L27/24
A61L27/58
A61L27/18
A61L27/26
A61L27/56
A61L27/50
A61L27/38 110
A61F2/08
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2020522936
(86)(22)【出願日】2018-10-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 US2018057412
(87)【国際公開番号】W WO2019084209
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】62/707,159
(32)【優先日】2017-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/714,367
(32)【優先日】2018-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/718,694
(32)【優先日】2018-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519408227
【氏名又は名称】エムボディ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】フランシス、マイケル、ピー.
(72)【発明者】
【氏名】マッゴーリ - ホワイト、イアス
(72)【発明者】
【氏名】リッガーズ、ヒラリー
(72)【発明者】
【氏名】ソリ、ナルドス
(72)【発明者】
【氏名】ペトロワ、ステラ
(72)【発明者】
【氏名】ポルク、セス
(72)【発明者】
【氏名】タイヤー、ニコラス
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-120527(JP,A)
【文献】特表2009-524507(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0017284(US,A1)
【文献】特表2008-532654(JP,A)
【文献】特表2008-532653(JP,A)
【文献】特表2014-510550(JP,A)
【文献】Development of meniscus substitutes using a mixture of biocompatible polymers and extra cellular matrix components by electrospinning,Materials Science and Engineering C,2016年,61,893-905
【文献】Wet-spinnability and crosslinked fibre properties of two collagen polypeptides with varied molecular weight,International Journal of Biological Macromolecules,2015年,81,112-120
【文献】ALBERTO SENSINI,BIOFABRICATION OF BUNDLES OF POLY(LACTIC ACID)-COLLAGEN BLENDS MIMICKING THE FASCICLES OF THE HUMAN ACHILLE TENDON,BIOFABRICATION,2017年03月08日,V9 N1,P1-28,http://doi.org/10.1088/1758-5090/aa6204
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植可能な生体高分子足場を生成するための方法であって、
コラーゲン、およびジメチルスルホキシド(DMSO)溶解性の生体容認性高分子を、
10:90~50:50の重量比で、DMSOを含む溶媒系中に溶解して、生体高分子溶液を形成するステップと、
前記生体高分子溶液から、電界紡糸および空気紡糸からなる群から選択される技法によって化学的に架橋されていない生体高分子繊維を生成するステップと、
前記生体高分子繊維を、熱アニーリングして整列させて、実質的に整列された生体高分子繊維を有する生体高分子足場を形成するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記溶媒系は、40~100容量%のジメチルスルホキシド(DMSO)と、エタノール、テトラヒドロフラン、および酢酸からなる群から選択される、0~60容量%の溶媒と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生体高分子繊維が、
10~50重量%のコラーゲンと、
PDLA、PDLLA、PLGA、ポリ(グリコール酸)、およびそれらの混合物からなる群から選択される、50~90重量%の生体容認性高分子と、を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記コラーゲンが、アテロコラーゲン、テロコラーゲン、組換えヒトコラーゲン、およびそれらの混合物からなるI型コラーゲンの群から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
実質的に整列された生体高分子繊維を含む少なくとも1つの生体高分子シートを含む、
軟組織傷害の修復を支持するための移植可能な生体高分子足場であって、
前記生体高分子繊維は、10~50重量%のコラーゲンと、PDLA、PDLLA、PLGA、ポリ(グリコール酸)、およびそれらの混合物からなる群から選択される、50~90重量%の生体容認性高分子とを含み、
前記生体高分子繊維は、化学的に架橋されていない、移植可能な生体高分子足場。
【請求項6】
前記生体高分子足場が、以下の特徴:
(i)水銀圧入法によって決定される場合、50~150マイクロメートルの平均気孔径、
(ii)試験管内で測定される場合に、5分間に血液中でほぼ前記足場の重量の吸収、および20分間に血液中でその重量の2倍の吸収、
(iii)150~4500nmの範囲の平均繊維直径、
(iv)移植後約2週間以内に前記足場への実質的な生体内細胞浸潤、ならびに
(v)細孔の平均構成が、実質的にスリットの形状であること、のうちの1つ以上を有する、請求項5に記載の移植可能な生体高分子足場。
【請求項7】
前記移植可能な生体高分子足場の前記生体高分子シートは、
(i)5MPaを超える引張強度、
(ii)35~200MPaの弾性率、および
(iii)2.5~10MPaのピーク応力強度、
からなる群から選択される特徴のうちの1つ以上を有する、請求項5または6に記載の移植可能な生体高分子足場。
【請求項8】
前記生体高分子シートは、
(i)水銀圧入法によって測定される場合、80~120マイクロメートルの平均気孔径、
(ii)試験管内で測定される場合に、5分間に血液中でほぼ前記足場の重量の吸収、および約20分間に血液中でその重量の2倍の吸収、ならびに
(iii)移植後約2週間以内に前記足場への実質的な生体内細胞浸潤からなる群から選択される特徴のうちの1つ以上を有する、請求項5~7のいずれか1項に記載の移植可能な生体高分子足場。
【請求項9】
前記コラーゲンが、アテロコラーゲン、テロコラーゲン、組換えヒトコラーゲン、およびそれらの混合物からなるI型コラーゲンの群から選択される、請求項5~8のいずれか1項に記載の移植可能な生体高分子足場。
【請求項10】
前記生体高分子繊維が、20~35重量%のI型コラーゲンおよび65~80重量%の生体容認性高分子を含む、請求項5~9のいずれか1項に記載の移植可能な生体高分子足場。
【請求項11】
前記生体高分子繊維が、27.5~32.5重量%のI型コラーゲンおよび67.5~72.5重量%の生体容認性高分子を含む、請求項10に記載の移植可能な生体高分子足場。
【請求項12】
前記足場が、前記軟組織に隣接して置かれる内面に実質的に整列されている生体高分子繊維と、前記軟組織に隣接して置かれない外面に実質的に整列されていない繊維と、を有する、請求項5~11のいずれか1項に記載の移植可能な生体高分子足場。
【請求項13】
前記少なくとも1つの生体高分子シートが、熱アニーリングされた生体高分子シートである、請求項5~12のいずれか1項に記載の移植可能な生体高分子足場。
【請求項14】
前記生体高分子繊維が、700~1,500nmの範囲の平均直径を有する、請求項5~13のいずれか1項に記載の移植可能な生体高分子足場。
【請求項15】
前記生体容認性高分子が、PDLAである、請求項5~14のいずれか1項に記載の移植可能な生体高分子足場。
【請求項16】
前記PDLAが、高粘度PDLAである、請求項15に記載の移植可能な生体高分子足場。
【請求項17】
前記生体容認性高分子が、PDLLAである、請求項5~14のいずれか1項に記載の移植可能な生体高分子足場。
【請求項18】
前記生体容認性高分子が、PLGAである、請求項5~14のいずれか1項に記載の移植可能な生体高分子足場。
【請求項19】
前記生体容認性高分子が、ポリ(グリコール酸)ある、請求項5~14のいずれか1項に記載の移植可能な生体高分子足場。
【請求項20】
前記少なくとも1つの生体高分子シートが、実質的に整列された生体高分子繊維を有する第一の側と、実質的に整列されていない生体高分子繊維を有する第二の側とを含む、請求項5~19のいずれか1項に記載の移植可能な生体高分子足場。
【請求項21】
少なくとも1つの生体高分子シートにおける前記生体高分子繊維が、ランダムに整列された繊維に向かって、実質的に整列された生体高分子繊維から、繊維の整列の勾配を有する、請求項5~2のいずれか1項に記載の移植可能な生体高分子足場。
【請求項22】
前記整列の勾配は、前記少なくとも1つの生体高分子シートの1つにおいて有する、請求項2に記載の移植可能な生体高分子足場。
【請求項23】
前記生体高分子シートが、0.5mm~6.0mmの範囲の平均厚さを有する、請求項5~2のいずれか1項に記載の移植可能な生体高分子足場。
【請求項24】
移植の際に、前記足場の内面を外面と区別できるように認識可能な印をさらに含む、請求項5~2のいずれか1項に記載の移植可能な生体高分子足場。
【請求項25】
移植可能な靭帯および腱修復装置である、請求項5~2のいずれか1項に記載の移植可能な生体高分子足場。
【請求項26】
軟組織を支持するための移植可能な装置である、請求項5~2のいずれか1項に記載の移植可能な生体高分子足場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
米国政府支援の陳述
本発明は、米国国防高等研究計画局(DARPA)契約HR0011-15-9-0006の下で政府支援によりなされた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年10月24日に出願された米国特許出願62/707,159号、2018年8月3日に出願された米国特許出願62/714,367号、および2018年8月14日に出願された米国特許出願62/718,694号の優先権を主張する。これらの出願の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、靭帯および腱などの軟組織傷害に対する傷害の管理、保護、および修復のための生体高分子足場および移植片に関する。移植片は、強化された生体適合性を含む物理化学的および生物学的特性が改善している。本発明はまた、低負荷型溶媒系を使用するそのような移植片の生成のための処理にも関する。
【背景技術】
【0004】
外科的修復の数は、足および足首(例えば、アキレス腱)、肩(例えば、回旋腱板)、および膝(例えば、前十字靭帯)の靭帯および腱のために、米国だけでも年間およそ800,000に上るが、依然として、置換要素および支持要素の移植を伴う現在の治療基準は、概して開業医によって最適とは言えないと考えられている。
【0005】
生体適合性の軟組織支持足場を提供することを意図した主要な靭帯および腱修復移植片製品は、場合によっては死体組織または侵襲的自家移植に依存する、しばしば、20年前の技術を伴う。同種移植片は、供給が限られ、瘢痕形成を促進し、免疫反応を引き起こす場合があり、かつターンオーバー率が十分に画定されておらず、そのすべてが治癒を阻害する。自家移植はまた、手術時間および関連する精神的外傷を延長し、多くの場合、自己組織を回復するための2番目の費用のかかる手技を追加する。
【0006】
例えば、GRAFTJACKET(登録商標)Regenerative Tissue Matrixは、提供された同種ヒト真皮移植片から形成されたシート様の製品であり、無菌で処理され、細胞を除去し、その後凍結乾燥される(http://www.wright.com/footandankleproducts/graftjacket)。ArthroFLEX(登録商標)Decellularized Dermal Allograftは、同様の無細胞皮膚細胞外マトリックスである(https://www.arthrex.com/orthobiologics/arthroflex)。
【0007】
損傷した軟部組織(腱および靭帯など)の修復を容易にする、またはこれを支持もしくは置換するための足場として有用な、移植可能なデバイス用の合成または半合成構成成分を開発するために、さまざまな他の手法が採用されている。そのような製品は、数ある中でも、例えば、適合性、強度、柔軟性、生分解性など、複数の機能パラメーターに対処する必要がある、さまざまな困難な生体力学的環境で機能しなければならない。
【0008】
そのような手法および製品の中に、例えば、Ratcliffeらによる、「Synthetic Structure for Soft Tissue Repair」と題された、米国特許第9,597,430号(2017)、に開示されたものがある。この特許は、編んだメッシュおよび単層または多層の平面繊維状形態などの、さまざまな合成繊維構造を説明する。Ratcliffeによれば、これらの構造は、生体吸収性であろうとなかろうと、適切な機械的特性を提供できる任意の生体適合性高分子材料から作ることができる。コラーゲンおよびラクチドは、適切であると述べられている。Synthasomeの「X-Repair」医療デバイスは、この特許に関連しているようであり、米国食品医薬品局(FDA)からFDA510(k)承認を受けている(http://www.synthasome.com/xRepair.php)。
【0009】
別の手法は、Qiao et al.,“Compositional and in Vitro Evaluation of Nonwoven Type I Collagen/Poly-dl-lactic Acid Scaffolds for Bone Regeneration,”Journal of Functional Biomaterials 2015,6,667-686;doi:10.3390/jfb6030667によって説明される。この文献は、ポリ-d,l-乳酸(PDLLA)とI型コラーゲンとの電界紡糸ブレンドを説明する。さまざまなブレンドが、40/60、60/40、80/20の重量比(PDLLA/コラーゲン)の高分子ブレンドで説明される。Qiaoは、共溶媒系を説明し、また化学的架橋が細胞培養におけるこの材料の長期安定性を確保するために不可欠であることを報告した。Qiaoによると、重量比60:40でPDLLA/コラーゲンの足場は、5週間の培養期間にわたって最大の安定性を提供する。
【0010】
筋肉移植片のための構造体の使用は、Leeらの、米国特許第9,421,305号(2016)、「Aligned Scaffolding System for Skeletal Muscle Regeneration」によっても説明されている。この特許は、縦軸に沿って配向され、かつ架橋されて、足場を形成する電界紡糸繊維で作られた異方性筋移植片について考察している。細胞は、繊維上に播種され、筋管を形成する。繊維は、天然高分子および/または合成高分子から形成されてもよい。天然高分子は、例えば、コラーゲン、エラスチン、プロテオグリカン、およびヒアルロナンを含む。合成高分子としては、例えば、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(D-L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリラクチド(PLA)、およびポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン)(PLCL)が挙げられる。繊維はまた、ヒドロゲル、微粒子、リポソームまたは小胞を含んでもよい。ブレンドされる場合、天然高分子と合成高分子の比率は、重量比で2:1~1:2である。
【0011】
軟組織の代替品を生成するための電界紡糸された足場は、Sensini et al.,“Biofabrication of Bundles of Poly(lactic acid)-collagen Blends Mimicking the Fascicles of the Human Achilles Tendon”,Biofabrication 9(2017)015025,doi.org/10.1088/1758-5090/aa6204によって説明される。PLLAおよびコラーゲンの2つの異なるブレンドは、純粋なコラーゲンの束と比較されている。
【0012】
Yangらの米国公開特許出願2014/0011416号(2014)、「Three Dimensionally and Randomly Oriented Fibrous Structures」は、電界紡糸を介してランダムに、かつ均一に配向された三次元繊維構造を生成するための方法を説明する。これは、コラーゲン、ポリ乳酸(PLA)およびその他のものなどの1つ以上の高分子、溶媒、ならびに界面活性剤を含むドープを電界紡糸することを説明する。界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、および両性イオン性界面活性剤を含む多様な群のうちの1つ以上とすることができる。紡糸ドープはまた、酢酸、クロロホルム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノール、メタノール、およびリン酸緩衝生理食塩水を含むさまざまな溶媒のうちの1つ以上も含む。
【0013】
そして、Dongらの米国特許8,318,903号(2012)、「Benign Solvents for Forming Protein Structures」は、水、アルコール、および塩を含む低負荷型溶媒中にコラーゲンなどのタンパク質を溶解することによってさまざまなタンパク質構造物を形成するための方法を説明する。これはまた、従来の電界紡糸技法についても説明する。
【0014】
Elamparithiらのインド公開特許出願IN640CHE2013号(2013)、「A Method for Preparing a Three-Dimensional CollageN Fiber Mat Using Benign Solvent and Products Thereof」は、環境低負荷型溶媒系として、酢酸とDMSOの組み合わせで調製された3次元の電界紡糸コラーゲンマットを説明する。Elamparithiと同僚による別の文献は、電界紡糸されたゼラチンを形成する処理で溶剤系を使用する。例えば、“Gelatin Electrospun Nanofibrous Matrices for Cardiac Tissue Engineering Applications,”International Journal of Polymeric Materials and Polymeric Biomaterials 66(1):20-27(2017)を参照されたい。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、腱および靭帯の損傷ならびに傷害などの、生物学的および機械的の両方の軟組織傷害の修復に寄与し、これを助長し、容易にし、かつ支持するように使用するための移植可能な生体高分子足場を生成するための方法に関する。
【0016】
修復され得ることが意図される腱としては、アキレス腱、回旋腱板腱、膝蓋腱、二頭筋腱、および四頭筋腱が挙げられ得る。修復され得ることが意図される靭帯としては、前距腓靱帯、内側側副靭帯、後十字靭帯、脊椎、および顎関節の靭帯が挙げられ得る。
【0017】
本発明による生体高分子足場は、生体高分子、および任意選択的に生体容認性高分子をDMSO溶媒系中に溶解することによって生成されている。好ましい溶媒系は、約40~100容量%のジメチルスルホキシド(DMSO)と約0~60容量%のエタノール、テトラヒドロフラン、および酢酸からなる群から選択される、溶媒との混合物である。溶媒系中の生体高分子の溶液を調製した後、生体高分子が生成され、そして収集される。
【0018】
方法の特定の実施形態および生体高分子足場の特定の実施形態では、生体高分子繊維は、全体的に、または約10~100重量%の範囲のいずれかで、コラーゲンから形成される。生体高分子中の100%のコラーゲンの使用が好ましい。これに応じて、100%のコラーゲンが利用されない場合、約0~90重量%の生体容認性高分子もまた、繊維を生成するために使用される。意図される生体容認性高分子は、PDLA、PDLLA、PLGA、およびそれらの混合物である。意図されるコラーゲンの型としては、I型コラーゲン、アテロコラーゲン、テロコラーゲン、組換えヒトコラーゲン、およびそれらの混合物が挙げられる。そして、高分子量PDLLAも、好ましく、例えば、約1.6~2.4dl/gの固有粘度を有するPDLLAである。
【0019】
本発明のさまざまな実施形態では、生体高分子繊維は、電界紡糸および空気紡糸を含む、さまざまな技法によって生成される。
【0020】
本発明の他の態様は、軟組織傷害の修復を助長し、容易にし、かつ支持するように、そのような移植可能な生体高分子足場の使用を含む。そのような足場は、上述の生体高分子繊維の1枚のシートで、または複数のシートから形成され得る。繊維は、上記のような組成内で変動する。
【0021】
本発明の好ましい実施形態は、これらの化学構成成分、生体高分子繊維を生成するための技法、および、残留溶媒を除去するために真空乾燥することと、シートおよび足場の収縮を拘束しながら、またはそれらの整列の軸に沿って機械的に引きながら、シートおよび足場をアニーリングすることとを含む、足場のための後処理ステップを反映する。
【0022】
したがって、開示されるように処理される足場の実施形態は、水銀圧入法によって測定される場合、約50~150マイクロメートル、および他の実施形態では約80~120マイクロメートルまたは100マイクロメートルの平均気孔率を有する。これらの実施形態はまた、試験管内で測定される場合に、約5分間に血液中でほぼ足場の重量の吸収、および約20分間に血液中でその重量のほぼ2倍の吸収を有してもよく、約150~4,500nm、好ましくは約300~3,000nm、より好ましくは約500~2,000nm、および最も好ましくは約700~1,200nmの範囲の平均繊維直径を有してもよく、対象への移植後約2週間以内に足場の中への実質的な生体内細胞浸潤を有してもよく、そしていくつかの実施形態において、移植された足場のほぼ全厚に達する細胞浸潤の量を有してもよく、ここで足場内の細孔および空隙の平均構成は、楕円形、円筒形またはランダムな細孔構成などの他の構成に対して、実質的にスリットの形状である。
【0023】
移植可能な生体高分子足場の他の実施形態は、実質的に整列された生体高分子繊維で形成される内面と、実質的に整列されていない、またはランダムに配向された繊維を有する外面と、を有する。
【0024】
本発明のさらに他の実施形態は、さまざまな型の細胞が播種される、移植可能な生体高分子足場である。意図される細胞としては、腱細胞、筋芽細胞、筋細胞、衛星細胞、線維芽細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、ならびに内皮細胞および幹細胞などの血管細胞が挙げられる。
【0025】
本発明のさらなる実施形態は、有用な寸法および構成での、ならびに無菌容器内に包装される生体高分子移植片の生成を含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A-1D】シートの形状の生体高分子足場が移植され、外科的縫合修復後に部分的に裂けた腱の周りに巻き付けられ、その後足場自体が所定の場所に縫合されている、本発明の好ましい実施形態を示す。図1Aは、部分的に裂けた腱を示す。図1Bは、縫合修復を示す。図1Cは、修復部に巻き付けられた移植片を示す。図1Dは、所定の場所に縫合された移植片を示す。
図2】本明細書に説明される電界紡糸技法の一般的な図示を示す。
図3A-3D】特許請求される発明の空気紡糸デバイスの好ましい実施形態を示す。
図4A-4B】それぞれ、アルミフレームでアニールされる生体高分子足場と、同時に処理される複数の足場を示す。
図5】アニーリング前後の足場の厚さおよび密度を示す。
図6A-6C】図6Aは、低細胞浸潤で8週間後のヘキサフルオロイソプロパノール(HFP)から電界紡糸されたコラーゲン/生体高分子の皮下移植片のH&E組織像を示し、図6Bは、2週間後のDMSOから電界紡糸されたコラーゲン/生体高分子の皮下移植片のH&E組織像を示し、図6Cは、図6Aおよび6Bをグラフで図示する。図6Aおよび6Bの*および破線は、10倍の倍率で、電界紡糸された組織片を表し、かつ境界を示す。
図7】電界紡糸コラーゲン:PDLLA足場の7日間の培地安定性試験の結果を示す。図7Aおよび7Bは、それぞれ、電界紡糸された足場の媒体中での収縮および電界紡糸された足場の媒体中での容量膨張を示す。DMSO:EtOH組成:150mg/mLの30:70テロコラーゲン:PDLLAを65:35のDMSO:EtOH中に溶解した。DMSO:THF組成:150mg/mLの30:70テロコラーゲン:PDLLAを75:25のDMSO:THF中に溶解した。HFP組成:100mg/mLの30:70のテロコラーゲン:PDLLAをHFP中に溶解した。足場領域および容量は、0日目(37℃にて5%COを用いたDMEMでのインキュベーション前)、1日目、4日目、7日目に評価した。
図8A-8D】30倍(図8A)、500倍(図8B)、3,000倍(図8C)、および10,000倍(図8D)倍率での整列された空気紡糸コラーゲンの走査型電子顕微鏡(SEM)を示す。
図9A-9E】図9A~9Cは、整列したコラーゲン繊維の比較を示す。走査型電子顕微鏡は、電界紡糸(図9C)を使用して生成された整列された電界紡糸コラーゲンと比較して、空気紡糸(図9A図9B)によって等方性および異方性コラーゲン繊維を生成する可能性を明らかにした。より広い範囲の繊維サイズは、空気紡糸によって生成されるが、空気紡糸および電界紡糸の両方が、平均直径200nmの繊維を生成した(図9D)。ImageJを使用して定量化された繊維整列は、空気紡糸繊維と比較して電界紡糸でより高度な整列を示した。
図10】空気紡糸および電界紡糸コラーゲンの材料特性を示す。電界紡糸法および空気紡糸法によって製造されたゲニピン架橋コラーゲンは、機械的に試験され、比較された(n=6)。空気紡糸コラーゲンは、驚くべきことに、電界紡糸群と比較して、有意により高い平均引張強度およびピーク負荷を有し(*はp<0.05を表す)、2つの試験群間で弾性率または破断時のひずみに統計的差異は見出されなかった。
図11】経時的なASC代謝活性を示す(AlamarBlue)。ゲニピン-架橋電界紡糸および空気紡糸足場上に5×10細胞/cmで播種したASCを、37℃の細胞培養培地で2週間インキュベートした。時間の経過とともに増加する代謝活性は、両方のマトリックスの細胞容認性を示す。
図12】アニールまたは拘束されていない生体高分子シートの収縮を示す。
図13】培養14日後の、アニーリングされ、かつ紡糸されたままの(把持され、緩んだ)足場の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図14】生体高分子足場の0日目および14日目のアニーリングを有する、もしくは有しない、または抑制を有する、もしくは有しない、繊維整列を示す。
図15】生体高分子足場の0日目および14日目のアニーリングを有する、もしくは有しない、または抑制を有する、もしくは有しない、繊維径を示す。
図16】さまざまな時点での細胞浸潤を分析するために、さまざまな溶媒から出した電界紡糸された足場の皮下移植片の比較を示す。
図17】気孔率の高い移植片と低い移植片を比較する、2~16週間にわたる細胞浸潤に関するラット皮下移植片を示す。
図18A-18C】コラーゲンベースのマイクロ繊維に沿った腱細胞の細胞整列および細胞伸長を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、移植可能な生体高分子足場、および軟組織傷害の管理、保護、および修復におけるそれらの使用方法に関する。傷害は、好ましくは、傷害の結果として組織の実質的な損失を提示しない、靭帯および腱に関与する。移植片は、傷害の領域での治癒反応を助長し、かつ容易にする。これは、細胞浸潤および組織内部成長を通して移植片のリモデリング、コラーゲン繊維の堆積、ならびに治療対象による血管新生と移植片の吸収を含む。図1は、シート状の生体高分子足場が移植され、そして外科的縫合修復後に部分的に裂けた腱の周りに巻き付けられ、そしてその後足場自体が所定の場所に縫合される、本発明の好ましい実施形態を示す。
【0028】
本発明はまた、すなわち生体高分子および生体容認性高分子から形成される構築物を意味する、生体高分子足場を生成する方法にも関する。そのような構造物は、好ましくは実質的に、層、マット、シート、および管へと形成される整列された繊維であり、靭帯および腱などの軟組織傷害に対する傷害の管理、保護、および修復のための移植片として使用されてもよい。
【0029】
本発明の方法は、生体高分子および任意選択的に生体容認性高分子を、約40~100容量%のジメチルスルホキシド(DMSO)と、エタノールおよびテトラヒドロフラン(THF)からなる群から選択される、約0~60容量%の溶媒と、を含む、DMSO溶媒系中に溶解して、生体高分子溶液を形成し、生体高分子溶液から生体高分子繊維を生成し、そして生体高分子繊維を収集して、生体高分子足場を形成する。
【0030】
生体高分子
生体高分子足場を生成するために本発明の方法で使用され得る生体高分子は、天然組織の生物学的構造および細胞外マトリックスの構成成分である、タンパク質である。意図される生体高分子は、天然に存在している、結合組織およびその他の軟組織内、ならびに細胞外マトリックス内に天然に見出されるタンパク質ベースの巨大分子(コラーゲン、エラスチン、細胞外基質タンパク質、フィブリン、フィブリノーゲン、ゼラチン、およびラミニン、ならびにそれらの組み合わせなど)である。また、前述のタンパク質ベースの巨大分子の組換え型および化学修飾型、ならびにクラゲ、ナマコ、およびイカなどの海洋起源のコラーゲンの使用も意図される。
【0031】
好ましい生体高分子は、コラーゲンである。本発明による生物的容認可能な足場用に使用されるI型コラーゲンは、概して哺乳動物の組織、特にウシおよびブタの腱から抽出されるが、組換えコラーゲンも使用され得る。時として無細胞のヒト真皮がコラーゲンの供給源として使用される。
【0032】
I型コラーゲンは、2つの一般的な形成で研究製品および臨床グレードの製品の両方で利用され、かつ商品化されている。ペプシンによる組織の酸および酵素消化で生成される、より一般的なコラーゲン変異体は、「アテロコラーゲン」と呼ばれるコラーゲンの形態であり、コラーゲンタンパク質の終止末端領域を欠いているので(「DEKSTGISVP vs.pQLSYGYDEKSTGISVP」の末端ペプチド配列)、これにより、テロペプチドが切断され、親組織からのコラーゲンの回復を助ける。あまり一般的ではないが、コラーゲンは、緩酸中で可溶化されて、溶液中のコラーゲンを収集し、「テロコラーゲン」として知られる、コラーゲンのモノマー中にテロペプチドを維持する。
【0033】
酸可溶性(テロコラーゲン)およびペプシン可溶性(アテロコラーゲン)凍結乾燥コラーゲンは、本発明の方法で使用するための適切な出発物質である。ウシ真皮からの好ましいGMPグレードのI型コラーゲンは、Collagen Solutionsからその天然型で入手可能である(http://www.collagensolutions.com/products/medical-grade-collagen)。コラーゲンは、他の供給業者から、またさまざまな種からも入手可能である(例えば、Sigma-Aldrich、http://www.sigmaaldrich.com/life-science/metabolomics/enzyme-explorer/learning-center/structural-proteins/collagen.html)。
【0034】
本発明による好ましい足場は、生体容認性高分子を含まない、100%生体高分子から成る。他の好ましい実施形態は、生体高分子を1つ以上の生体容認性高分子と一緒にした混合物またはブレンドである、足場を生成する。
【0035】
生体容認性高分子
生体高分子足場は、生体高分子と生体容認性高分子との混合物を使用して、本発明に従って生成され得る。生体容認性高分子を組み込むことは、強度、繊維サイズ、安定性、分解特性などの全体的な移植材料特性を調整する一方で、細胞容認性をほとんど失うことなく全体的な移植片コストを削減する手段を提示する。多種多様な生体容認性、例えば、生分解性および生物活性の高分子が、軟組織修復における単独または他の高分子とのブレンドでの使用について考慮され、また時として上記のタンパク質などの天然組織の構成成分を含む。有用かつ改善された生体力学的特性および生分解性特性は、そのようなタンパク質とさまざまな生体容認性高分子とのブレンドされる組み合わせから、例えば、コラーゲンとポリ乳酸を組み合わせることで、そのL-アイソフォームとD-アイソフォームの両方を含み、特に、ポリ-DL-ラクチドまたはPDLLAと呼ばれるラセミ混合物で、生じる。
【0036】
単独のPLLAアイソフォームは、比較的強いが、弾性的ではなく脆い。これは、生体内で約36~48か月存在し続ける。傷害を受けた軟組織を支持するいくつかの用途用に好ましいPLLAは、Sigma Aldrichから入手可能である(http://www.sigmaaldrich.com/content/dam/sigma-aldrich/articles/material-matters/pdf/resomer-biodegradeable-polymers.pdf)。しかしながら、PLLAはDMSOに不溶であるため、この生体容認性高分子およびベース溶剤の使用はケースバイケースで評価するべきであり、一般的にDMSO以外の適切な溶剤が使用されるべきである。PDLAアイソフォームは、より弾力性があり、それほど脆くなく、通常、生体内で12~18か月間存続する。好ましいPDLAは、Sigma Aldrichから入手可能である(http://www.sigmaaldrich.com/catalog/product/SIGMA/67122?lang=en&region=US)。PDLLAは、強度と安定性の点では一般的にPLLAとPDLAの間にあり、生体内での寿命の点では、約18~36か月の範囲内であり、これは一般的に、吸収されるためには十分な長さであり、かつカプセル化を回避するのに十分な短さである。PDLLAは、L-ラクチドとD-ラクチドのラセミ混合物の重合によって形成されるアモルファス高分子である。高分子の正確な組成は、その機械的特性および加水分解特性を決定する。
【0037】
約0.5~5dL/gの範囲の固有粘度を有するPDLLAは、本発明による生体高分子足場を生成するために使用されてもよい。約1.5~6dL/gの、比較的より高い平均固有粘度を有するPDLLAは、好ましい生体容認性高分子であり、より好ましくは約4~5dL/g、5の平均固有粘度を有するが、より低い固有粘度、0.5~1.3dL/gを有するPDLLAは、より低いピーク応力が適切な場合に使用することができる。1.6~2.4dL/gの固有粘度を有する好ましいPDLLAは、Polysciences、http://www.polysciences.com/default/polydl-lactic-acid-iv-20-28dlg、から入手可能である。より低い固有粘度のPDLLA(1.3~1.7dL/gの固有粘度)は、Evonik、http://healthcare.evonik.com/product/health-care/en/products/biomaterials/resomer/pages/medical-devices.aspxから入手可能である。0.55~0.75dL/gの、さらにより低い平均固有粘度を有するPDLLAは、Sigma-Aldrich、http://www.sigmaaldrich.com/catalog/product/sigma/p1691?lang=en&region=USから入手可能であり、他の供給元からのPDLLAも利用可能である。また、GMPレベルの純度を有する好ましいPDLLAは、Corbion(「PURASORB PDL45」)から入手可能であり、4.5dL/gの比較的高い固有粘度を有する(http://www.corbion.com/static/downloads/datasheets/31d/PURASORB%20PDL%2045.pdf)。
【0038】
所与の製品もしくはデバイス用にも、または、例えば、コラーゲンと組み合わせた場合にも有用であり得る生体容認性高分子としては、ポリラクチド、ポリカプロラクトン(PCL)、およびポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)が挙げられる。他の有用な生体容認性高分子は、当業者に既知であり、例えば、ポリ(グリコール酸)、ポリエステル、トリメチレンカーボネート、ポリジオキサノン、カプロラクトン、アルキレンオキシド、オルトエステル、ヒアルロン酸、アルギン酸塩、天然脂肪からの合成高分子および油、ならびにそれらの組み合わせである。
【0039】
生体高分子と共に使用される生体容認性高分子は、生体高分子溶液から生体高分子/生体容認性高分子繊維を生成する際に架橋する生体容認性高分子を調製するために、1つ以上の官能化試薬で前処理され得る。例えば、PDLLAは、アミノ基を追加するようにアミノ分解を通して官能化することができる。例えば、http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adem.200980031/abstractにおいて、Min et al.,「Functionalized Poly(D,L-lactide)for Pulmonary Epithelial Cell Culture」,Advanced Engineering Materials 12(4):B101-B112(2010)を参照されたい。代替的に、PDLLAを、プラズマ処置によって官能化して、マトリックス内にカルボキシル基およびアミノ基を導入することができる。
【0040】
一般的な手法として、例として、PDLLAを、電界紡糸の前にOH基を用いて官能化することができる。PDLLAペレットは、milliQ(超精製)水中の10~20%エタノール中に溶解された10mM~1M水酸化ナトリウムの混合溶液に浸漬される。ペレットを、室温または37℃で10~60分間浸漬する。インキュベーション後、ペレットは、ミリリットルの蒸留水またはより高度に精製された水ですすがれ、バイオセーフティーフード内で風乾される。その後、官能化されたPDLLAチップは、以下に説明する、DMSO/エタノールなどの、DMSO溶媒系中で溶解できる。
【0041】
生体高分子と生体容認性高分子の混合物が使用される場合、混合物は、約10~50重量%の生体高分子、好ましくは約15~40重量%の生体高分子、より好ましくは約20~35重量%の生体高分子、より好ましくは約27.5~32.5重量%の生体高分子、および最も好ましくは約30重量%の生体高分子と、生体容認性高分子である残部とを含有してもよい。2つ以上の生体高分子および/または2つ以上の生体容認性高分子の混合物を、生体高分子および/または生体容認性高分子構成成分として使用されてもよい。
【0042】
好ましい生体高分子の生体容認性高分子への混合物は、約10~50重量%のコラーゲンと約50~90重量%の生体容認性高分子と、好ましくは約25~35重量%のコラーゲン、より好ましくは約27.5~32.5重量%のコラーゲン、および最も好ましくは約30重量%のコラーゲンと70重量%の生体容認性高分子とを含有する。生体容認性高分子としては、I型コラーゲンが好ましく、ラクチド高分子、特にPDLLAが好ましい。そのような混合物では、テロコラーゲンおよびアテロコラーゲンも好ましい。好ましい組成物は、生成後の処理中に化学的に架橋されていない、約30%のI型ウシ皮膚コラーゲンおよび約70%のPDLLAである。そのような組成物は、所望の生体力学的性能および生体安定性パラメーターを提示する。
【0043】
低負荷型溶媒系
本発明の方法は、生体高分子および任意選択的に生体容認性高分子を、溶媒系、好ましくはジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解して、生体高分子溶液を形成する。好ましいDMSO溶媒系は、約100容量%のDMSOを含有する。他の実施形態は、約40~100容量%のジメチルスルホキシド(DMSO)と、一価アルコール、環状エーテル、分岐鎖エーテル、ならびにそれらの塩素化物誘導体およびフッ素化誘導体、ならびにそれらのエステル、ならびにそれらの組み合わせなどの約0~60容量%の溶媒と、を含有する。意図される溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパン-2-オール、ブタン-1-オール、ペンタン-1-オール、ヘキサデカン-1-オール、および他の飽和直鎖、ならびに単一のヒドロキシル官能基を含有する分岐鎖炭化水素、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。好ましい環状エーテルとしては、シュウ酸塩(別名「テトラヒドロフラン」または「THF」として知られている)、オキセタン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。電界紡糸が生体高分子足場を生成するために使用される技法である場合、好ましい溶媒は、エタノールおよびテトラヒドロフラン(THF)、ならびにそれらの混合物である。DMSOおよび酢酸、ならびにそれらの混合物は、空気紡糸が生体高分子足場の生成に使用される技法である場合に好ましい。
【0044】
本発明の方法で使用されるDMSO溶媒系は、「低負荷型」溶媒系である。それらは、生体高分子の足場を作製する生体高分子および生体容認性高分子を溶解することができる溶媒であり、かつ一般的に米国食品医薬品局によって安全であると認められているか、または別の方法で、例えば、1,1,1,3,3,3ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFP)などの、関連する移植可能な足場を生成するために電界紡糸技法で使用される他の従来の溶媒と比較して、ヒト対象または他の哺乳類対象の健康へのリスクを最小限に抑える。
【0045】
DMSOは、タンパク質および核酸などのさまざまな生体分子を容易に溶解する、極性化学物質である。一般的に、DMSOは、膜透過、膜輸送、抗炎症、血管拡張、およびさらに多数のもののような生物学的機能を強化する、多用途の化学物質であることが示されている。さらに、DMSOは、エタノールおよびTHFとの溶剤システムまたは溶剤ブレンドで使用することができる、溶剤である。これは比較的低い毒性を提示し、また、例えば、コラーゲンおよび他の高分子を電界紡糸するために使用される一般的な溶媒であるHFPと比較して、より安全な選択肢であると考えられている。HFPは比較的毒性が強いため、電界紡糸された材料または移植片にHFPが存在すると、移植後の生物的適合性に悪影響を及ぼす。当業者に知られているように、DMSOは吸湿性であるため、水への曝露を最小限にすることは、重要である。DMSO溶液はまた、好ましい溶媒系のためには比較的低い含水量も有する。
【0046】
本発明による生体高分子足場を生成するためのDMSO溶媒系は、好ましくは約100%のDMSOを含有する。DMSOおよび溶媒を含有する他の好ましい実施形態は、約40~100容量%、より好ましくは約50~99容量%、55~95容量%または約60~90容量%、および最も好ましくは約70~85容量%、75~85容量%または約80容量%のDMSO、ならびにエタノールおよびテトラヒドロフラン(THF)から選択される、約0~60容量%、より好ましくは約1~50容量%、5~45容量%または約10~40容量%、および最も好ましくは約15~30容量%、15~25容量%または約20容量%の溶媒、を含有する。エタノールは吸湿性があり、典型的には水分を最小限に抑えるために密閉されている。THFは、可燃性で揮発性が高い。空気(すなわち、酸素)への暴露は、過酸化物の蓄積の可能性を減らすために、避けるべきである。絶対エタノールは、エタノールの好ましい形成である。THFを使用する場合、最も好ましいのは、25%であり、エタノールを使用する場合、最も好ましいのは、35%である。
【0047】
本発明の方法で使用されるDMSO溶媒系は、単純な混合または当技術分野で知られている他の手段によって調製されてもよい。例えば、適切な量のDMSOとTHFまたはエタノールのいずれかを20mLシンチレーションガラスバイアル内で混ぜ合わせ、そして穏やかにかき混ぜるか、または混合溶液を上下にピペッティングして、溶媒がブレンドされるまで混合する。混合溶液は、気密バイアルに入れ、ドラフトまたは他の同様のデバイス内で保管するべきである。長期保存は、蒸発により溶液の濃度が変化する可能性があるので、推奨されない。当業者は、これらおよび他の低負荷型溶媒系を利用することができるであろう。
【0048】
生体高分子溶液
本発明の方法において、生体高分子溶液は、生体高分子または生体高分子/生体容認性高分子混合物をDMSO溶媒系、例えば30重量%(w/w)(300g/mL)コラーゲンおよび70重量%(w/w)(700g/mL)PDLLA中に溶解することによって調製される。生体高分子または生体高分子/生体容認性高分子の混合物は、当技術分野で知られている手段を使用して、DMSO溶媒系中に溶解されてもよい。例えば、DMSOとエタノールとの溶液、またはDMSOとTHFとの溶液は、事前に混合され、DMSO溶媒系を作成してから、生体高分子および生体容認性高分子(存在する場合)を追加する。次に、コラーゲンなどの生体高分子は、任意の生体容認性高分子と同時に追加され、これは、室温でボルテックス(vortex)するか、または室温で静置して、手動で反転させた後、例えば、電界紡糸により、生体高分子繊維を生成することができる。一般的に、生体容認性高分子は、溶解するためにボルテックスまたは攪拌が必要とされるが、コラーゲン単独では必要とされない。代替的に、コラーゲンなどの生体高分子および生体容認性高分子を、別々に溶解し、そして一緒にするか、または一緒にブレンドして一度に溶解することができる。
【0049】
生体高分子繊維および生体高分子足場の生成
溶液から生成された後の生体高分子繊維は、その後収集されて生体高分子足場を形成する。生体高分子繊維および生体高分子足場は、単一の生体高分子、生体高分子の混合物、生体高分子と生体容認性高分子の混合物、または2つ以上の生体高分子と1つ以上の生体容認性高分子の混合物から構成され得る。生体高分子および生体容認性高分子は、それらの好ましい実施形態と共に、上記で考察されている。生体高分子繊維と足場はそれぞれ、本発明の別個の実施形態を表し、従来の溶媒技法で調製される足場と比較して、低減した、または同等の収縮量を提示するだけでなく、生成後にさまざまな液体、例えば、医療目的で対象に埋め込まれた後に足場が曝露される血液および他の生体液で湿潤したときに改善された膨潤特性を提示する。
【0050】
本発明の生体高分子繊維および足場は、さまざまな技法によって生成され得る。電界紡糸および空気紡糸が好ましい。電界紡糸は、コラーゲンマイクロ繊維の直径、および二次元での繊維の順序を制御するための両方の比較的より多くの制御を提供する。しかしながら、電界紡糸は、コレクターの電気絶縁に起因して厚い三次元材料を生成する能力に制限があり、典型的には単一層で約1ミリメートル以下の生体高分子シートを生成する。この制限は、理論的に無制限の厚さを有する空気紡糸では存在しない。発明者らは、生体高分子混合物中の酢酸ナトリウムなどの塩を使用して電界紡糸してもよく、またDMSOのpHは、当業者によって決定され得るように、得られる足場の強度または架橋を調整または改善するために、DMSOにHClまたは酢酸を追加するなど、さまざまな方法を通して下げることができる。
【0051】
電界紡糸
電界紡糸は、生体高分子溶液から生体高分子繊維を生成するための好ましい処理技法である。図2は、本明細書に説明される電界紡糸装置の一般的な図を示す。ブレンドを溶媒系から分離する他の手法、例えば、空気紡糸、押出成形、冷間引き抜きまたはキャスティングは、当業者に知られているであろう。
【0052】
電界紡糸は、高分子溶液または高分子溶融物の帯電した糸をさまざまな直径と長さの繊維へと引っ張る繊維生成技法である。電界紡糸は、電界スプレー、従来の溶液乾式紡糸および押出成形、または繊維の引き出し成形の両方の特徴を共有する。コラーゲンの電界紡糸は、天然組織構造を模倣する繊維性材料の形成のための一ステップ処理として広く説明される。シートの形状である生体高分子足場は、生体高分子繊維を高速ドラム(およそ1~20m/sの表面速度になっている)上へと電界紡糸することにより生成されてもよい。後述するように、生体高分子足場は、残留溶媒を除去するために電界紡糸後に真空乾燥することができる。例えば、足場は、残留溶媒を除去するために約30~37℃の温度で乾燥させることができる。電界紡糸装置は、従来のものであり、容易に入手可能である。概して、繊維シートは、大きなシートとしてドラムから容易に剥離または取り外され、その後、冷間引張または切断または折り畳みされて、さまざまな寸法の足場を生成することができる。
【0053】
空気紡糸
空気紡糸は、本発明による生体高分子および移植片を生成するのに有用な別の好ましい繊維および足場生成技法である。本発明のこの実施形態は、異方性空気および等方性足場を生成するために高速空気(空気紡糸)を使用する、または他のデバイス上のコラーゲンコーティングに有用な、コラーゲンマイクロ繊維の生成および組み立ての独自の方法を提供する。添付の図3A~3Dに示されるように、足場は、内部支柱繊維コレクター706がインジェクター702のノズル704の位置に対して回転するのに伴い、インジェクター702(エアブラシ)を通して生体高分子溶液を内部支柱ファイバーコレクター706に排出することにより、生成される。
【0054】
A.内部支柱繊維コレクター
本発明の1つの例示的な実施態様では、コレクター706は、コレクター壁716によってその周囲上で境界付けられた中空内部部分709を有する形状の実質的に開いたシリンダーである。本発明の他の実施例では、コレクターは、他の曲線平面を有することができ、かつ/またはインジェクターの反対側の端部で閉じることができる。
【0055】
図3A~3Dに示されるように、繊維コレクター706は、内部スポーク710がコレクター706の内部部分709内に軸方向に位置付けられた形状の実質的に開いたシリンダーとすることができる。スポーク710は、コレクター706内の同じX-Y平面において同軸にすることができ、または図3Aおよび3Cに示すように、コレクター706の長さ全体にわたって互い違いにされた螺旋のアレイ状に配設することができ、ここで、スポークホルダー708は、コレクター706の長さ(Z方向)に沿って異なるポイントに位置付けられる。スポーク710は、コレクター706に取り外し可能に取り付けることができる。本発明の1つの例示的な実装形態では、スポーク710は、スポークホルダー708を使用して、コレクター壁716の外側でコレクター706に取り付け/固定することができる。スポーク710は、収集処理の終わりに、生体高分子足場(複数可)にアクセスするためにコレクター706から取り外すことができる。他の例示的な実装形態では、スポーク710をコレクター壁716にコレクター706の内部部分709上で固定することができ、また収集処理の終わりに生体高分子足場(複数可)へのアクセスを容易にするために取り外すこともできる。スポーク710は、コレクター706の内径を横切って延在する。スポーク710は、長方形、円形、および楕円形を含む、多数の異なる断面形状を有することができ、またブレード付き断面を有することもできる。スポークの相対的なサイズ(例えば、直径、断面積など)は、使用する生体高分子、収集する足場または移植組織のサイズおよび形状、ならびにその他の考慮事項に基づいて選択することができる。
【0056】
B.インジェクター
図3Aに示すように、インジェクター702は、例えば、酢酸中のコラーゲンなどの生体高分子を受け入れる生体高分子ポート703を含む。インジェクター702は、圧縮ガス入力705を介してインジェクター702の中へと導入される調整される圧縮ガスを用いて生体高分子を駆動する。インジェクター702は、ノズル704を通して、生体高分子足場(複数可)を収集するために使用される回転繊維コレクター706の中へと生体高分子を駆動する。
【0057】
C.回転構成成分
図3A~3Dでは、装置700は、駆動モーター714、駆動ホイール712、第1のローラー軸734、第1のローラーホイール724、第2のローラー軸736、および第2のローラーホイール726を含む回転構成要素720を使用して、繊維コレクター706を回転させる。インジェクター702が生体高分子溶液をコレクター706に放出するのとともに、インジェクター702は、図3Aおよび3Bに示されるように、コレクター706の断面A-Aに対して移動することができる。例えば、インジェクター702は、コレクターの円形断面に対してX方向に、コレクター706の円形断面に対してY方向に、およびコレクター706の円形断面に関してZ方向に移動することができる。インジェクター702は、X、Y、およびZ方向の任意の組み合わせでも移動し得る。
【0058】
回転構成成分720は、コレクター706をその(長手方向の)中心軸(Z方向)の周りで回転させる。駆動モーター714は、駆動シャフト713に沿って同軸に位置させることができる駆動ホイール712を、回転および係合する。駆動モーター714は、本発明の特定の実施において必要に応じて、継続速度モーターとすることができ、または可変速度モーターとすることができる。駆動モーター714および駆動ホイール712が回転する(例えば、図3Dでは時計回り、CW)際、駆動ホイール712は、第1のローラー軸734に取り付けられた第1のローラーホイール724と係合し、これは次にコレクター706を回転させ、これは次に第2のローラーホイール726を回転させる。
【0059】
第1のローラー軸734および第2のローラー軸736は、長手方向に延在し、かつコレクター706の長さ(Z方向)に実質的に平行である。第1のローラー軸734および第2のローラー軸736は、それぞれの軸734、736の中心軸に沿って同軸に取り付けられた第1のローラーホイール724および第2のローラーホイール726をそれぞれ有する。第1のローラー軸734および第2のローラー軸736は、図に示すように、第1のローラーホイール724および第2のローラーホイール726がコレクター706を支持するように、互いに(X方向に)間隔を置いている。複数の第1のローラーホイール724および第2のローラーホイール726を使用されることができる。図3Cに示すように、第1のローラーホイール724および第2のローラーホイール726は、それらが、コレクター706の壁716を通して延在することができるスポークホルダー708の回転に当たったり、または回転を損なったりしないように、それらのそれぞれの軸734、736に沿って位置される。スポークホルダー708は、スポーク710をコレクター706上(および内部)の所定の位置に保持する。
【0060】
D.構成要素の位置決め
図3A~3Dに示されるように、インジェクター702は、コレクター706の一端に位置される。インジェクター702がノズル704を通して生体高分子を駆動する際に、駆動モーター714は、駆動ホイール712、第1のローラー軸およびホイール(734および724)、ならびに最終的にはコレクター706を回転させる。コレクター706およびコレクター706内のスポーク710に対するX、Y、およびZ方向でのインジェクター702(およびノズル704)の位置は、インジェクター702を、コレクター706およびコレクター706内のスポーク710に対して、X、Y、およびZ方向に移動させる、プロッター位置コントローラー(別個には不図示)によって制御および変更することができる。同様に、生体高分子がインジェクター702のノズル704から排出されるコレクター入口707に関する角度(符号番号Θ)もまた、プロッター位置コントローラーによって制御および変更することができる。プロッター位置コントローラーは、生体高分子溶液がインジェクター702のノズル704を通してコレクター706に放出/排出される位置および角度を決定する。
【0061】
コレクター706の回転速度は、駆動ホイール712、ローラー軸734、736、ローラーホイール724、726、およびコレクター706の相対直径、ならびに駆動モーター714自体の回転速度に基づいて、スピードコントローラー(個別には図示せず)を使用して、制御および変更することができる。この様式で、本発明の空気紡糸生体高分子足場製造装置700は、インジェクター702から生体高分子繊維を受け取り、かつ収集するために空間内の最適点(複数可)にコレクター706のスポーク710を位置付けすることができる。
【0062】
本発明による空気紡糸生体高分子足場製造装置700を使用して、異方性または等方性繊維移植組織を、電界紡糸と比較してより高い出力、より低いコスト、およびより少ない複雑さで収集することができる。この様式でのコラーゲンマイクロ繊維の合成は、靭帯、腱、神経の修復などの医療デバイスの製造での用途だけでなく、マイクロ繊維コラーゲンベースのコーティングおよび他の生体高分子を他の材料に適用するための、多くの用途を有する。
【0063】
空気紡糸の実施形態では、生体高分子溶液は、DMSO溶媒系中に溶解される、または酢酸中に溶解された生体高分子および/または生体容認性高分子であってもよい。欠陥のない生成速度は、酢酸に溶解された際、コラーゲンの電界紡糸を使用した場合の0.0625g/時に対して約2g/時であることが好ましく、この手法をより高効率の繊維収集デバイスエンジニアリングとともに使用すると、少なくとも8g/時に増加する可能性を有する。したがって、空気紡糸は、生体高分子繊維生成への著しく拡大可能な手法である一方で、それほど特化した機器を必要とせず、かつより高価な機器を必要としない。
【0064】
繊維および足場の処理
本発明の方法は、生体高分子足場の後処理のためのさまざまな任意選択的なステップを利用する。後処理の1つのステップは、生体高分子足場を乾燥して、少なくとも米国食品医薬品局の要件に一致するレベルまで残留溶媒を除去することである。乾燥は、例えば、風乾、真空乾燥、デシケーター内での乾燥、凍結乾燥、不活性ガス下での乾燥などの手法によって行われてもよい。好ましくは、DMSOのレベルは、足場の約1.5重量%未満に減少されることになる。
【0065】
生体高分子足場の後処理は、化学的、機械的、物理的、または熱的後処理も伴う場合がある。例えば、本発明の方法によって生成される生体高分子足場は、機械的引っ張りを有する、もしくは有しない熱アニーリングによって、またはアニーリング、引張、および緩和サイクルの混合によってなど、物理的に後処理することができる。そのような物理的後処理ステップは、繊維径、繊維整列、および結果として得られる生体高分子足場の空隙率または気孔率を変更することなどによって、結果として得られる生体高分子足場の材料特性を調整または別の方法で変更するために適用されることができる。例えば、図4Aおよび4Bに示すように、生体高分子足場は、例えばアルミニウムで作製されたフレーム内でアニールされ、かつ任意選択的に張力下に維持されて、繊維整列および機械的安定性の向上を促進する。足場は、真空を用いて、また真空を用いずに、特に45、55、65℃で最大24時間、3種類のフレーム型でアニールされた。張力の量は、足場の収縮を回避または最小化するのに十分であるべきである。このようなアニーリングはまた、驚くべきことに、そして有利にも、足場の厚さを3倍または4倍も増加させ、これは、単層足場移植片の臨床使用を容易にする。
【0066】
一実施形態では、電界紡糸された足場は、テロコラーゲン(30mg/ml)およびPDL45(70mg/ml)の総濃度100mg/mlのブレンドを100%DMSO中に溶解することによって調製される。足場は、最大24時間(最小2~最大24時間)真空下に定置される。
【0067】
その後、そのような足場を、約45、55、および65℃の温度で、約18~24時間、固定または非固定フレーム内でアニールしてもよい。結果として得られる足場の機械的安定性は、65℃で18時間アニールした場合、著しくより良好である。当業者は、経時的に、減少する、足場長さの変化、および増加する、足場厚さの変化を評価するであろう。好ましくは、約1~48時間のアニーリング時間が最適であり、より好ましくは約2~24時間であることになる。
【0068】
図5は、アニーリング前後の足場の厚さおよび密度を示す。表面積が360cmのコレクタードラムの上へと電界紡糸した20mLの溶液は、以下の厚さの足場を生じることになる。アニールされていない足場は、0.3±0.1mmの平均厚さを有する。アニールされた足場は、5.6±1.2mmの平均厚さを有する。アニーリングのセットアップ、初期の足場の厚さ(アニールされていない)、および所与の足場の使用のための好みに応じて、足場の厚さを実質的に増やすことができる。
【0069】
本発明の生体高分子足場は、任意選択的に、化学的にも後処理され得る。例えば、上述のように、溶媒系の中に溶解される前にアミノ基を提供するように官能化される足場内の繊維は、一般にはアルデヒド、より具体的には小鎖アルデヒド、および好ましくはグリオキサール、または足場へのその抽出後に他の従来の架橋試薬で架橋され得る。例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、ゲニピン、グリセルアルデヒド、グルタルアルデヒドなどの架橋剤が使用されてもよい。生体容認性高分子がカルボキシル基で官能化されている場合、その後EDCおよび他のカルボジイミドが架橋のために使用されてもよい。イソシアネートは、OH基およびアミンの両方と反応する。したがって、イソシアネートベースの架橋剤は、例えば、(OH基を別のOH基にリンクする)官能化PDLLA内でOH基を相互に架橋して、媒体の安定性、強度を向上させるために使用されてもよい。イソシアネートはまた、コラーゲンからのNH基(すなわち、アミン基)を介して、官能化PDLLAのOH基にコラーゲンを連結するために使用され得る。追加的に、光架橋剤を使用されることができる。
【0070】
生体高分子繊維および生体高分子足場の物理的特徴
本発明によるDMSO溶媒系から生成され、本明細書に説明されるように処理される場合、生体高分子繊維およびそれらが形成する生体高分子足場は、他の手段および方法によって調製された他の生体高分子繊維および足場では見られない、新規かつ予期しなかった特性および特徴を有する。
【0071】
本発明によるDMSO溶媒系から生成される生体高分子繊維は、直径が約150~4500nm、好ましくは約300nm~3000nm、より好ましくは約500nm~2000nm、および最も好ましくは約700nm~1200nmの範囲である。
【0072】
本発明に従って生成される生体高分子足場は、溶媒系、生体容認性高分子の選択、および本明細書で考察されるようなさまざまな後処理ステップを含む、いくつかの要因に基づく有利な強度プロファイルを有する。例えば、溶媒系の選択を検討するとき、異なるDMSO:THFの比率は、大きく異なる機械強度プロファイルを生成し、75:25のDMSO:THFの比率では、他の比率よりも著しく強力になる。下記の実施例7中の表2を参照されたい。同様の結果は、DMSO:EtOHの比率を増やしても見られ、相対的なDMSO濃度の増加は、強度の増加と相関し、DMSO:EtOHの比率が約80:20では、他の比率よりも著しく強力になる。下記の実施例7中の表3を参照されたい。追加的に、100%DMSOから紡糸された生体高分子足場は、DMSO:EtOHまたはDMSO:THFのブレンドした溶媒から紡糸されたいずれの足場よりも強力である。下記の実施例7中の表1および3を参照されたい。
【0073】
本発明に従って生成される生体高分子足場は、約2.5~10MPaのピーク応力強度を有する。生体高分子は、ヒトの腱、特にアキレス腱の弾性率と実質的に同様の弾性率を有し、これは約35~750MPaである。その範囲内で、繊維については、約35~200MPaの弾性率が好ましい。また、水和状態で1mm/秒で試験したときの引張強度として、50~100%(0.5~1.0mm/mm)の破壊に至るひずみが好ましい。
【0074】
移植可能な足場は、好ましくは、約5MPaを超える引張強度、約6MPaを超える弾性率、および0.64Nを超える縫合引き抜き強度を有する。
【0075】
説明されたアニーリングによる後処理は、有利なことに、生体高分子移植片内の繊維間の平均空隙容量を、HFPなどの従来の溶媒を用いた電界紡糸によって生成される移植片の、約5~10倍に増加させる。例えば、本発明によるDMSO溶媒系を使用して生成されたアニールされた足場は、アニールされていない足場の約7マイクロメートルの平均細孔径と比較して、水銀圧入法によって決定される、最大約80~120マイクロメートル、より好ましくは約90~110マイクロメートル、およびより好ましくは約100マイクロメートルの平均孔径を有する。当業者は、この測定技術が、水銀中に浸漬される試料に制御された圧力を加えることによって気孔率を測定することを理解するであろう。水銀を細孔の中へと押し込むのに必要な力の量は、細孔のサイズに反比例し、そのため、細孔が大きいほど、細孔の中へと浸透するのに必要な圧力は小さくなる。好ましい移植片の気孔率は、生体内での細胞浸潤を著しく改善し、医療機器用の電界紡糸製品の分野における長年の重要な課題を克服する。
【0076】
追加的に、移植片は、自家細胞、同種細胞、または異種細胞を含む1つ以上複数の細胞型を播種されてもよい。意図される細胞型としては、脂肪、骨髄、または他の場所からの間葉系幹細胞などの幹細胞または前駆細胞、ならびに臍帯血細胞および羊膜細胞などの胎盤由来細胞、人工多能性幹細胞および胚幹細胞が挙げられる。腱細胞、筋芽細胞または筋細胞または衛星細胞などの筋骨格細胞、線維芽細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、および内皮細胞などの血管細胞も、使用され得る。追加的に、他の細胞型は、皮膚、硬膜、脂肪、乳腺および他の組織特異的細胞型など、筋骨格組織以外の他の組織型の修復に適宜利用され得る。
【0077】
繊維および足場の整列
移植片の好ましい実施形態では、生体高分子繊維の配向は、傷害を受けた組織に隣接する移植片の内面および移植片の外面で異なり、内面と外面の間に勾配または他の移行ゾーンを有する。例えば、生体高分子繊維は、移植片の内面に実質的に整列される場合があり、これは、足場内の基準から15~20度以内にある繊維の少なくとも約半分が共通の軸に沿って配向されることを意味する。この移植片は、好ましくは、繊維がランダムに整列されるか、そうでなければ実質的に配置されない外面に向かって、移植片の厚さを通してあまり整列されていない繊維の勾配を有する。他の実施形態では、多層移植片の1つ以上の内向き層は、実質的に整列される繊維を含有し、移植片の1つ以上の外層は、ランダムに配向した、または実質的に整列していない繊維を含有する。
【0078】
概して図1を参照すると、前述の繊維構成は、足場または移植片が対象に外科的に移植されている間に縫合を容易にし、また改善された縫合保持を付与する。この構成はまた、外面に癒着防止バリアを提供し、かつ軸外の移植片の機械的特性を改善し、これは、傷害を受けた組織の軸から外れ、組織自体の長手方向の繊維構成要素の配向の軸から外れることを意味する。
【0079】
足場内の繊維の実質的な整列は、例えば、上述のようにドラム上に繊維を収集することによって生成される場合があり、一方で比較的遅い速度で回転していると、繊維のランダムな堆積が結果として生じる。実質的に整列して堆積した繊維を収集するために、回転速度を比較的徐々に、もしくは比較的急に、高速または完全な回転速度まで増加することができる。一実施形態では、ランダムに配向される繊維が約6時間の間収集され、その後ドラムの速度は、次の6時間にわたって、約15m/秒などのその最終的な最高速度まで増加される。繊維は、さらに12時間収集され続けてもよい。堆積された繊維の配向におけるこの種の勾配は、縫合に対する優れた、かつ好ましい付着を提供する。ランダムから実質的に整列された繊維までの約25~33%の勾配が好ましい。
【0080】
移植のための生体適合性足場の機能的特徴
上述のように、本発明は、特に損傷した腱および靭帯の修復に有用な軟組織支持体として、組織工学のための合成繊維ならびに関連するシート様および束ねられた繊維製品を提供するための低負荷型溶媒系の使用に関する。例えば、本発明によれば、コラーゲンおよびDMSO中に溶解された生分解性高分子で形成される、組織工学による靭帯および腱の足場は、損傷したアキレス腱の修復に使用され得る。
【0081】
繊維から調製された足場に関して、足場の湿潤性は、5%CO中での37℃にて湿度100%で7日間にわたるインキュベーションで、培地中で安定性を示す。概して、播種された細胞は、播種される細胞の半分以上が足場に付着し、好ましくは強い細胞付着を示す。
【0082】
本発明による移植片はまた、例えば、従来の電界紡糸技法によって生成される移植片と比較して、比較的迅速に凝固血液および非凝固血液の両方を吸収する。吸収は、Rodriguez et al.,“Demineralized bone matrix fibers formable as general and custom 3D printed mold-based implants for promoting bone regeneration”in Biofabrication 8(3):035007.doi:10.1088/1758-5090/8/3/035007(July 2016)で開示されているように、当技術分野で既知の技法によって決定され得る。アニールされた足場は、血液吸収動態を評価するためにヒトの血液に沈降される。例えば、ヘパリン添加血液中に沈降された足場は、その重量の13倍のACD血液(凝固する血液)を吸収し、同等の足場は、その7倍の重量のヘパリン添加血液を約30分間で吸収した。好ましい移植片は、試験管内で約5~30分で血液中のその重量の約1~約4倍を吸収するであろう。
【0083】
図6A~Cに示すように、本発明による低負荷型溶媒系および移植片の後処理により、従来の電界紡糸溶媒であるHFPから電界紡糸された同様の移植組織と比較して実質的に改善された、細胞の内部成長を促進する足場の生成が可能になる。図17に示されるように、本発明による足場の気孔率の向上は、移植された足場の細胞浸潤を著しく改善する。細胞整列および細胞伸長もまた、実質的に改善される(図18A~18C)。また、以下でさらに詳しく説明するように、成長因子の初期保持は、それらが移植片上に存在する場合、または移植片に埋め込まれている場合、ヒトの腱、特にアキレス腱などに天然に提示されているものと実質的により同様である。
【0084】
臨床使用のための生体高分子移植片
生体高分子足場のシートは、任意選択的に、溶接または縫合または縫製を通して積層されてもよい。一般に、生体高分子足場のシートは、層状に共に積み重ねられる。それらを結合させるために、約30~100℃の範囲内の熱の短時間の印加が局所的に適用されてもよい。移植片材料を補強して縫合保持を助けるために、溶接部に追加の材料が任意選択的に追加されてもよい。追加的に、癒着バリアが移植片に組み込まれてもよい。そのようなバリアは、外因性細胞の浸潤を防ぐために、(例えば、生体高分子足場が取り付けられるべき腱から離れる側に面する)純粋な高分子裏材から構成され得る。癒着バリア層は、電界紡糸、キャスト、発泡、押出成形、または他の従来の技法によって生成されてもよい。
【0085】
好ましい実施形態として、本発明は、上述のように調製され、かつ単層または多層シート様足場の形態で対象(好ましくは哺乳動物、ならびにより好ましくはウマ、イヌ、ネコおよびヒト対象)への移植のために調製される、生体高分子足場に関する。一実施形態では、この足場は、整列された生体高分子足場のおよそ1、2、3、4、5、6、7、8、9または10以上の層から構成される。本発明の単層足場は、およそ4cm×4cm、5cm×7cm、または約10cm×10cm×約1mmの厚さであってもよい。移植片の全体の厚さは、約0.5mm~約6.0mm、好ましくは約0.6mm~約3mm、より好ましくは約0.7mm~約1.0mm、および最も好ましくは約0.8mmの範囲であることになる。代替の実施形態は、おおよそ同様の寸法の多層足場である。
【0086】
上述のように、移植片は、その外向きの表面上にランダムに配向された繊維層を有して生成されてもよい。任意選択的に、移植片はまた、縫合保持のための追加の二軸支持を提供するために、縁の周りの横断面に置かれた繊維の小さなセクションを有する。また、任意選択的に、移植片の内面または外面は、矢印または他の認識可能な形状の印を付けて、内層と外層を区別することができる。
【0087】
外科的使用のための移植片は、任意選択的に、高いバリアの二重ホイルポーチ内に乾燥状態で包装されてもよく、また移植前に解凍されるまで凍結されてもよい。
【実施例
【0088】
実施例1:DMSO/エタノール溶媒ならびにコラーゲンおよびPDLLAの電界紡糸繊維の調製。
20mLのシンチレーションガラスバイアル中で、45mg/mLのテロコラーゲンおよび105mg/mLのPDLLAを、6mLの65:35の比率のDMSO:EtOH中で、シェーカー上で20時間溶解した。(代替的に、これらの成分を一緒に混合する前に、別々の分割量で溶解してもよい。)コラーゲンは、Collagen Solutions(米国カリフォルニア州、San Jose)から入手し、PDLLAは、Polysciences Inc.(米国ペンシルベニア州、Warrington、カタログ番号23976)から入手した。バイアルは、おおよそ20時間後、試薬が溶解されるまで、レベル7でVWR Heavy Duty Vortex Mixer(カタログ番号97043-562)上に定置された。溶液は、その後、11.65mmの直径を有するプラスチックルアーが付いている6mLのプラスチックシリンジ、および3.9cm、25ゲージのステンレス鋼針から、電気モーターを使用する、互いに5cm離れた6本のスポークを有するドラム(直径10cm×幅15.8cm)の上へと電界紡糸された。ドラムは、電界紡糸ボックスの床から36cm上昇され、溶液針は、ボックスの床の上方19.5cmに上昇された。
【0089】
針の先端からドラム面までの水平距離は、16.02cmであった。針の先端からドラムの中線までの傾斜距離は、23cmであった。ファンからの方向性のある気流が、針の先端に沿って向けられ、ドラムの方向に角度付けされる。5mLの溶液が、一度に紡糸された。第1のシリンジは、0.8mL/時の流量で紡糸され、針に+15kVが印加され、ドラムに-3kVが印加された。ドラム速度は、350rpmであった。第1のシリンジが空になった後、このシリンジは廃棄され、溶液で満たされた5mLシリンジが、ルアーに取り付けられ、紡糸が再開された。第2の5mLは、0.6mL/時の流量で紡糸され、針に+8kVが印加され、ドラムに-8kVが印加され、ドラム速度350rpmであった。合計10mLが、紡糸された。ドラムは、繊維の乾燥を容易にするために、一晩回転しているままにされた。足場は、スポークから除去され、硫酸カルシウム乾燥剤を有するデシケーターの中へと配置された。
【0090】
実施例2:DMSO/THF溶媒ならびにコラーゲン/PDLLAの電界紡糸繊維の調製。
20mLのシンチレーションバイアル中で、45mg/mLのテロコラーゲンおよび105mg/mLのPDLLAを、75:25の比率の5mLDMSO:THF中で、シェーカー上で16時間溶解した。コラーゲンは、Collagen Solutions(米国カリフォルニア州San Jose)から入手し、PDLLAは、Polysciences Inc.(米国ペンシルベニア州Warrington、カタログ番号23976)から入手した。バイアルは、おおよそ16時間後、試薬が溶解されるまで、レベル7でVWR Heavy Duty Vortex Mixer(カタログ番号97043-562)上に定置された。溶液は、その後、11.65mmの直径を有するプラスチックルアーが付いている6mLのプラスチックシリンジ、および3.9cm、25ゲージのステンレス鋼針から、電気モーターを使用して、電気モーターで回転され、かつ互いに5cm離れた6本のスポークを有するドラム(直径10cm×幅15.8cm)の上へと電界紡糸された。
【0091】
針の先端とドラムとの間の距離は、16cmであった。流量は、0.9mL/時であり、針に+18kVが印加された。ドラムは、接地され、1000rpmの速度で運転された。第1のシリンジが空になった後、このシリンジは廃棄され、5mLの溶液を有する6mLのシリンジがルアーに取り付けられ、そして紡糸が再開された。8時間の紡糸時間は、23.5℃の温度と51%の相対湿度で利用された。ドラムは、繊維の乾燥を容易にするために、一晩回転しているままにされた。足場は、ドラムから取り外され、真空オーブンに加熱せずに3時間定置され、そしてその後デシケーターの中へと定置された。
【0092】
実施例3:足場の抽出後の処置。
抽出後、足場は、真空下に定置され、残留溶媒のさらなる乾燥および除去を援助した。その後、それらは、デシケーターの内部に保管された。概して、抽出後、足場は、最長24時間、真空下に定置され、そしてその後ホイル内に包まれるか、または保管前にペトリ皿の内部に定置された。
【0093】
実施例4:多層コラーゲン-高分子足場の調製。
それぞれ約0.2mmの厚さの2枚のシートは、はんだごてを使用して100℃で、またはインパルスシーラーからの短い熱パルスで溶接によって積層された。直角に配向される追加の繊維は、溶接部の中へと密封され、縫合保持のための補強が提供される。当業者は、追加のシート(例えば、3、4、5、および6枚のシート)が、同様の方法で溶接によってどのように積層され得るかを理解するであろう。
【0094】
実施例5:電界紡糸繊維の足場上のヒト腱細胞の播種。
ヒト腱細胞(5×10細胞/ウェル)が、無血清培地内に懸濁され、その後上記の実施例3に従って調製された足場上に播種された。培養15、30、および60分後、プレートは、穏やかに振とうされ、そして付着していない細胞は、除去された。各ウェル内に懸濁している付着していない細胞の数が数えられ、そして各足場ディスク上に付着している細胞の割合が播種した細胞の総数に基づいて決定された。より好ましい細胞付着は、従来のHFP溶媒系で調製された足場と比較して、見出される。
【0095】
実施例6:生体適合性シートの収縮および安定性分析。
テロコラーゲン/PDLLA電界紡糸シート(DMSO:THFのさまざまな比率、100:0~75:25v/vで溶解された)は、約5日後に37℃での培地内の安定性のために試験された。結果は、試験されたすべての足場内で70%~80%の総面積の収縮があったことを実証した(図7A)。また、これらの足場が元のサイズの99%から142%まで膨潤したことも示された(図7B)。これらの足場の機械的強度は、著しく低下した。下記の表1を参照されたい。
【0096】
以下の実施例で使用される分析方法
実施例7~14のコラーゲン繊維足場を試験および特徴付けするために、以下の方法が使用された。
【0097】
機械的試験:水和された電界紡糸および空気紡糸した(直径約1.5cmX長さ4cm)足場の材料特性は、MTS Criterion、Model 42(米国ミネソタ州Eden Prairie)を使用した単軸引張試験を通して試験された。すべての機械的試験は、室温で実施された。足場の直径および厚さは、高精度デジタルキャリパーで測定され、断面積を計算するために記録された。試料は、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Fisher Scientific、米国ニューハンプシャー州Hampton)で1時間水和され、その後MTSマシンに装填されて、各群で6つの試料(n=6)が引き出された。
【0098】
走査型電子顕微鏡:架橋されていない空気紡糸および電界紡糸足場の構造は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって分析された。ゲニピン架橋空気紡糸足場はまた、37℃のDMEM内で30日後にも緩んだまま(張力がかかっていない)で評価された。繊維形成、寸法、およびマトリックス整列は、ImageJソフトウェア(アメリカ国立衛生研究所(NIH)、米国メリーランド州Bethesda)のOrientation J機能を用いて評価された。SEM撮像は、Jefferson Labs(米国バージニア州Newport News)において、JEOL JSM-6060 LV顕微鏡(日本電子(JEOL)株式会社、日本、東京)を20kVのビーム強度で使用して実施された。
【0099】
ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動:コラーゲン供給原料(Collagen Solutions)、空気紡糸、および電界紡糸コラーゲン移植組織(非架橋、どちらも酢酸に溶解)を比較するために、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)が使用された。Gradientゲル(3~8%)(Invitrogen、米国カリフォルニア州Carlsbad)は、Xcell SureLock(Invitrogen)ゲル装置上で150kVで行われた。ゲルは、SimplyBlue(商標)ゲル染色剤(Invitrogen)で染色され、その後脱イオン水ですすがれた。ゲルは、その後、タンパク質の結合を見るために白色光の下で画像化された。
【0100】
フーリエ変換赤外分光法:1235、1560、および1650cm-1波長での特徴的な3つの主要なアミド結合によって測定される際、I型コラーゲンの存在を評価するために、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)(Platinum ATR、Bruker、米国マサチューセッツ州Billerica)が使用された。電界紡糸および空気紡糸足場は、Essential FTIRバイオインフォマティクスソフトウェア(Operant、米国ウィスコンシン州Madison)を使用してピーク変位および試料純度を評価することにより、出発物質と比較された。
【0101】
円偏光二色性:空気紡糸足場のCDスペクトルを電界紡糸出発物質と比較するために、遠紫外線CD(J-815、JASCO)が使用された。CDスペクトルは、0.1cmのキュベット光路長を使用して取得された。試料は、分析のために、50mMの酢酸中に0.5mg/mlの濃度で溶解された。
【0102】
統計分析:群間の繊維整列の違いを評価するために、一元配置分散分析(ANOVA)とそれに続く事後的なTukeyの多重比較検定が使用された。群間および経時的な細胞生存率の違いを評価するために、双方向分散分析とそれに続く事後的なTukeyの多重比較検定が使用された。電界紡糸されたコラーゲン足場と空気紡糸されたコラーゲン足場との間の機械的強度の違いを評価するために、対応のないt検定が使用された。先験的に、p値<0.05は、有意として画定された。すべての試験は、GraphPad Prism 7を使用して実施され、すべてのパラメーターは、平均±平均の標準誤差(S.E.M.)として表現される。
【0103】
実施例7:生体容認性高分子の固有粘度。
PDLLAの固有粘度(IV)は、開示された低負荷型溶媒系を使用して調製される場合、電界紡糸足場の全体的な強度と相関される。下記の表1で考察するように、比較的より高いIVのPDLLAを選択すると、天然靭帯の特徴を維持しながら、構造のピーク応力および弾性率の増加につながる。
【表1】
【0104】
DMSO:THFの異なる比率で紡糸された足場は、著しく異なる機械的強度プロファイルを生成し、75:25のDMSO:THFの比率では、他の比率よりも著しく強力になる。表2を参照されたい。
【表2】
【0105】
同様の結果は、DMSO:EtOHの比率の増加でも見られ、これにより相対的なDMSO濃度の増加は、強度の増加と相関し、約75:25の比率のDMSO:EtOHは、他の比率よりも著しく強く、100%DMSOは、最も強い足場を生じる。表3を参照されたい。
【表3】
【0106】
実施例8:純粋なコラーゲン繊維の電界紡糸。
電界紡糸コラーゲン足場は、10m/秒の表面速度を有する高速ドラムを使用して収集され、整列された繊維が生成される。I型アテロコラーゲン(Collagen Solutions、米国カリフォルニア州San Jose)は、40%の酢酸水溶液中に250mg/mlで2~4時間穏やかに揺り動かしながら溶解される。コラーゲン溶液は、シリンジポンプ(NE-4000 Programmable、New Era Pump Systems、米国ニューヨーク州Farmingdale)を使用して、長さ2インチの20Gのブラントチップ針を通して、1時間あたり0.2~0.5mLで送液される。針の先端からコレクターまでの距離(「エアギャップ」電界紡糸のために接地ワイヤーが25mm離間される)は、10cmであり、針は、+18kVへと荷電される。
【0107】
実施例9:純粋なコラーゲン繊維の空気紡糸。
Iwata重力送りエアブラシ(岩田、日本)は、空気紡糸コラーゲン繊維を生成するように改造された(図3A)。60psi(ポンド/平方インチ)の空気圧が使用され、粘性のあるコラーゲン溶液による詰まりを防ぐために、エアブラシの内針が溶液エミッターの端からおおよそ1mm引き出された。最大500mg/mlの臨床グレードI型アテロコラーゲン(Collagen Solutions、米国カリフォルニア州San Jose)は、20~50体積%の40%酢酸(Sigma-Aldrich、ミズーリ州、セントルイス)水溶液中に振とうによって2~4時間の間溶解された。溶液は、その後、空気紡糸によって繊維を形成する能力のために試験された。
【0108】
コラーゲン繊維は、静的グリッド(2.5cm角の一般的な50mlのEppendorf試験管ラック)に収集するか、またはカスタム仕様の回転管の中へとスプレーして、整列された足場を収集した。カスタム設計された回転管設計では、垂直なロッドのいくつかの対が、気流が通過するファイバーを流れの方向に整列するのと同時に、通過するファイバーを捕らえるために管を通して挿入された(図3Cに示す)。回転コレクター管は、内径が2インチのPVC管の中心を通して配置された、2.5インチ離間した外径が2と1/16インチの平行ステンレス鋼ロッドを有する。これらの平行なロッドは、30度の増分で30インチ管の長さにわたって螺旋状のパターンで配置される。ロッドは、繊維が管を通過するときに繊維を捕らえ、かつ繊維を流れの方向に整列するように作用する。平行なロッドは、管の側面から除去されることができるようにする薄いナイロン片で互いに接続されている。管は、単純なDCモーターおよびいくつかのアイドラーローラーを用いて毎秒10~20度で回転される。エアブラシを管の入口に関しておおよそ45℃に保ち、管を回転させると、繊維を均一に収集できる。繊維は、5分間の空気紡糸で収集され、確実に乾燥させるために、Bel-Art Sciencewareの再利用可能なカートリッジを含有するデシケーター内で保管した後、後続の実施例で使用される。
【0109】
20~25重量%(例えば、450mg/mlまたは500mg/mlのような)のI型アテロコラーゲンの酢酸溶液からの空気紡糸は、繊維をほとんど産しない。45~50%コラーゲンの溶液は繊維を生成したが、溶液は溶解性が低く、非常に粘稠であり、空気紡糸中に不連続な繊維生成の結果をもたらした(表4)。40%酢酸(水溶液)中の40%コラーゲンは、コラーゲン繊維の連続スプレーを最適に生成し、5分間のスプレーによって繊維で密にコーティングされた、静的コレクター(図3B)でコラーゲンの堅牢なシートを生成することが見出され、それ故にこれらのパラメーターが実施例3~5の後続のすべての実験に使用された。結果として得られた収集された足場は、出発物質(空気紡糸前に溶解したコラーゲンの総ミリグラム)の45~50%の重量であった。空気紡糸された足場は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許仮出願第62/707,159号に説明されているように、酢酸からの電界紡糸(表5)と比較しておよそ32倍増加した速度で収集される。空気紡糸繊維のより速い堆積速度は、より高い圧縮機圧力で達成可能であったが、収集効率は低下した。
【表4】

【表5】
【0110】
収集される繊維により高度な異方性を付与するように設計された回転管収集装置(図3C)で空気紡糸されたコラーゲン繊維(40%酢酸(水溶液)、300mg/mlアテロコラーゲン)は、SEM下で概して整列された繊維のアレイを示した(図8)。Orientation J(NIHシェアウェアのImageJプラグイン、米国メリーランド州Bethesda)は、静的グリッド上で収集している空気紡糸コラーゲンと比較して、回転収集管での空気紡糸における繊維整列での全体的な有意な改善を定量化した(図9Aおよび9B)。しかしながら、電界紡糸されたコラーゲン微小繊維足場は、空気紡糸された足場のものよりも著しく高い程度の整列(p<0.05)を一貫して実証した(図9C)。酢酸から電界紡糸されたコラーゲンに関する空気紡糸の平均繊維径は、0.224±0.051μmであったが、電界紡糸されたコラーゲンの平均繊維径は、0.201±0.047μmであった(図9D)。繊維整列は、図9Eに示される。
【0111】
実施例10:空気紡糸コラーゲンの安定性および機械的特性。
空気紡糸アテロコラーゲンは、水性媒体中に入れられた非架橋電界紡糸繊維の完全な溶解とは対照的に、架橋なしでは水性媒体中で安定せず、水和すると粘着性のあるゲル様のフィルムを形成する。他の方法では水和する(電界紡糸)、または水和するとゲルになる(空気紡糸)、電界紡糸および空気紡糸コラーゲンマトリックス(上記の実施例8および9)を水性媒体で使用するために安定させるために、ゲニピンが架橋剤として使用される。ゲニピンは、その確立された低毒性および臨床的に承認された医療デバイスにおける既存の使用のために選択される。
【0112】
Mekhailらによるプロトコルが、例えば、“Genipin-cross-linked electrospun collagen fibers”,J Biomater Sci Polym Ed.2011;22(17):2241-59.doi:10.1163/092050610X538209に説明されるように、電界紡糸された、および空気紡糸された整列されたI型コラーゲンの両方の架橋に続いて行われる。97%エタノール(Sigma-Aldrich)中の0.03Mのゲニピン(Sigma-Aldrich)の溶液が、空気紡糸された足場および電界紡糸された足場を架橋するために使用された。空気紡糸された試料は、架橋のための繊維充填を改善するために、短い均等なねじれが与えられた。架橋中、試料は、37℃にて、7日間およびインキュベーション期間中、繊維の張力を保持し、かつ収縮および折れ曲がるのを防ぐためにクランプされる。ゲニピン-エタノール浴は、移植組織が架橋溶液で覆われたままであることを確認するために毎日点検された。ゲニピン架橋された足場は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Cellgro、米国バージニア州Manassas)で20回洗浄して、残存する未反応のゲニピンを洗い流し、深い青色の足場を生成した。
【0113】
電界紡糸されたコラーゲン足場と比較して繊維の整列が少ないにもかかわらず(図9E)、酢酸溶媒から空気紡糸され、その後ゲニピンで架橋されたコラーゲン(DMEMで1時間水和試験された)は、電界紡糸された足場と比較して、1.23MPa±0.11と著しくより強かった(図10A、C)。
【0114】
群間で弾性率またはひずみに有意な差はなかった(1.45MPa±0.34の空気紡糸コラーゲン)(図10B、D)。ゲニピンと架橋する空気紡糸コラーゲン足場は、37℃のDMEM中に緩んだままで(拘束されずに)沈降されて少なくとも30日間手付かずで保持されたものは、以前の繊維性移植組織から球状へと繊維の明らかな収縮および巻きを有して形態学的に変化した。
【0115】
実施例11:電界紡糸および空気紡糸コラーゲンの化学的および構造的特徴。
コラーゲン供給原料(未処理、凍結乾燥)、電界紡糸コラーゲンおよび空気紡糸コラーゲン(上記の実施例1および2)の間のFTIR分析は、I型コラーゲンに特徴的なカルボキシルおよび3つのアミド結合に変化はなく、一次的および二次的構造の整合性を表している。円偏光二色性分析は、空気紡糸コラーゲンが供給原料コラーゲンと比較して比較的小さい変化しか示さず、空気紡糸処理がタンパク質を変性させず、天然三重らせん構造を維持していることを示唆している。SDS-PAGEはさらに、未処理の空気紡糸および電界紡糸コラーゲン繊維内に存在するコラーゲンのアルファ、ベータおよびガンマ鎖の存在を確認した。
【0116】
実施例12:電界紡糸および空気紡糸コラーゲン足場上で成長したASCの細胞生存率。
組織培養96ウェルプレートは、細胞の細胞培養容器への付着を防止するために、200μLの7%ポリ(メタクリル酸2-ヒドロキシエチル)(PHEMA)(Sigma-Aldrich)でコーティングされた。ゲニピン架橋された空気紡糸および電界紡糸コラーゲン(上記の実施例7および8)からの直径6ミリメートルの足場ディスクは、組織生検パンチを使用して足場シートから切り出された。その後、70%イソプロパノールに30分間浸漬し、その後PBS中で10分間3回洗浄して、試料を消毒した。ウェル1つにつき1つの足場ディスクが使用された。ヒト脂肪由来幹細胞(ASC)(ZenBio、米国ノースカロライナ州Research Triangle Park)は、DMEM中に混合され、かつ懸濁された。これらの細胞は、電界紡糸された足場と空気紡糸された足場の両方の上に5×10細胞/ウェルの密度で播種された。96-ウェルプレートのコラーゲンコーティングウェル上の細胞生存率は、陽性対象として使用された。ウェルは、alamarBlue(商標)(BioRad、米国カリフォルニア州Hercules)生存率アッセイを使用して、1、4、および7日後に評価された。
【0117】
7日間の培養後、細胞播種された電界紡糸および空気紡糸の足場は、固定および染色されて、細胞形態および付着が評価された。1セットの試料(n=2)を4%パラホルムアルデヒド(Thermo Fischer Scientific、米国ニューハンプシャー州Hampton)で固定し、そしてDAPI(Vector Laboratories、米国カリフォルニア州Burlingame)およびAlexa Fluor(登録商標)594ファロイジン(Thermo Fischer Scientific)をそれぞれ使用して、核およびアクチンフィラメントを染色した。これらの染色した試料は、共焦点顕微鏡(ZEISS Axio Observer Z1倒立電動顕微鏡、ドイツOberkochen)を使用して画像化された。
【0118】
試料の第2のセット(n=2)は、2%グルタルアルデヒド(Electron Microscopy Sciences、米国ペンシルベニア州Hatfield)で固定され、四酸化オスミウム(Electron Microscopy Sciences、米国ペンシルベニア州Hatfield)で染色して、コラーゲン足場の細胞形態が画像化された。
【0119】
alamarBlue(商標)アッセイが、経時的に増加する定量化された代謝活性を用いて(図11)、酢酸を使用して空気紡糸された足場およびDMSOを使用して電界紡糸された足場で成長したASCの代謝活性を評価するために実施され、14日間にわたる培養における細胞増殖および生存率を表した。ゲニピンで架橋された空気紡糸されたコラーゲンおよび電界紡糸されたコラーゲンで2週間成長したASCの共焦点撮像は、細胞がマトリックス全体に存在していたことを明らかにする。細胞の融合性層が、SEMによって両方の群の上部で見出され、空気紡糸コラーゲンに対する強い細胞付着および細胞適合性を集合的に表している。
【0120】
空気紡糸生体高分子は、培養状態において1か月の間安定していることが示されているが、それでも繊維形態および全体的な移植組織のトポグラフィーに凝縮した、またコイル状の外観への、明らかな変化を有している。これは、この明らかな繊維の収縮および巻きを駆動する架橋とともに、移植組織が張力下に保持されなかったので、経時的な材料の収縮に部分的に関連し得る。グリセルアルデヒドおよびグルタルアルデヒドなどの、他の架橋剤は、この形態の変化を提示せず、空気紡糸コラーゲンに対するゲニピン関連の影響が示唆される。材料に対する形態学的変化にもかかわらず、少なくとも2週間の培養を経ても、細胞の代謝活性および関連する細胞の生存率は、空気紡糸繊維で高かった。
【0121】
実施例13:DMSOからの空気紡糸コラーゲンおよびPDLLAブレンド足場。
コラーゲンを生体高分子と組み合わせて、空気紡糸によってブレンドした生体材料を生成することが可能かどうかを評価するために、コラーゲンは、最適な繊維生成に対して経験的に決定されたように、30:70の比率でPDLLAと共にDMSOベースの溶媒系中に溶解された。テロコラーゲン(Collagen Solutions、米国カリフォルニア州San Jose)は、ポリ-d,l-ラクチド(Polysciences、米国ペンシルべニア州Warrington)とともに、ジメチルスルホキシド(DMSO、Sigma-Aldrich、米国ミズーリ州St. Louis)またはDMSOおよび絶対エタノール(Sigma-Aldrich)中に150mg/mLで溶解され、上記の実施例9に説明されているように、静的グリッド上で収集された。DMSOからのコラーゲン単独の空気紡糸は、試験された濃度では達成されなかったが、PDLLA単独およびコラーゲン:PDLLAブレンドは、DMSO単独から、およびDMSO:エタノール共溶媒系から空気紡糸によって生成足場を形成することができた(表6)。本発明による空気紡糸繊維を調製するために、約10:90~50:50の範囲のコラーゲン:PDLA比が、使用され得る。空気紡糸されたコラーゲン:PDLLAのFTIR分析は、収集された足場内の両方の生体材料の存在を確認した。ここでコラーゲンをポリ-d,l-乳酸などの生体高分子とブレンドする能力は、本発明による空気紡糸方法のさらなる潜在的な用途を提示する。
【表6】
【0122】
実施例14:pH3バッファー中に溶解したテロコラーゲンを使用する空気紡糸繊維。
空気紡糸テレコラーゲン繊維は、以下の手順を使用して生成された。
【0123】
pH3バッファーの調製:
i.1.2グラムの酢酸ナトリウム(最終的に292mM)を22.5mlの酢酸(47%)および27.5mlのMilliQ水中に溶解する。酢酸を使用してpHを3に調整する。
【0124】
エアブラッシングの24時間前に、シンチレーションバイアル内のpH3バッファー中で300mg/mlテロコラーゲン(細かく切ったもの)を10ml調製した。室温にて1時間400rpmで短時間ボルテックスした後、ロッカー(速度5;傾斜10)上で一晩放置した。24時間後、テロコラーゲン溶液は、粘稠になったが、テロコラーゲンは、完全に溶解した。
【0125】
空気紡糸の当日に、以下のセットアップが行われた。
ii.エアブラシは、使用前に水、酢酸、水、そしてその後エタノールを使用して洗浄された。
iii.エアブラシの針は、引き出され、そのためエアブラシの端に針の6cmが曝露される。
iv.ドラムを中速に、かつ空気圧縮機を60psiに設定する。
v.エアブラシは、ボックスの設置で、ドラムから24インチ離して保持される。ボール紙の傾斜路は、液体が傾斜路上に定着するように、そしてそのために繊維が傾斜路を離れて回転ドラムに集まるように、設置された。
vi.繊維は、最初はドラムに収集されたが、その後ドラムを避けて周囲に形成され、大きな損失につながった。
vii.その後、圧力は、40psiに下げられ、ドラム速度は、より低速に変更された。
viii.繊維は、再びドラム上に形成され始めたが、ボックス内のドラムの周りに長い繊維がかなり蓄積された。
【0126】
およそ9mlの溶液は、1.5時間でエアブラシされた。しかしながら、ボックス内の繊維を乾燥させる気流がかなりの量の繊維を吸い上げていたため、繊維の40%以上(ドラム上の蓄積に基づく概算見積もり)は、失われた。
【0127】
ドラム上の繊維は、24時間風乾され、続いて24時間化学ドラフト内で乾燥された。
【0128】
繊維を画像化する際、それらは湿っているように見えたため、ドラム上にあるときに3時間真空乾燥した。
【0129】
実施例15:細胞付着、増殖および浸潤。
整列された電界紡糸足場は、テロコラーゲンとPDL45をそれぞれ30:70の比率でブレンドし、100mg/mlの最終濃度で100%DMSO中に溶解することによって生成された。この高分子ブレンドは、垂直電界紡糸セットアップでワイヤーホイールコレクターの上へと電界紡糸された。
【0130】
1セットの足場は、アルミニウムフレーム内に拘束され、65℃で18時間アニールされて、繊維整列をさらに促進し、そして機械的安定性を向上させた。すべての足場は、細胞実験の前に、10×30mmのストリップへと切断され、かつ電子ビーム(Eビーム)滅菌された。
【0131】
ヒト腱細胞付着を評価するために、紡糸されたまま、またはアニールされた足場の各1セット(n=3)が把持部に定置され、静的張力下で保持されて収縮が防止され、かつさらに繊維整列が促進された(これらの足場は、「把持された」足場と呼ばれる)。把持部内のこれらの足場の利用可能な細胞播種面積は、10×10mmである。紡糸されたまま、またはアニールされた足場の各第2のセット(n=3)は、把持された足場の利用可能な播種領域に一致するように、10×10mmの小片へと切断された。これらの試料は、張力のない超低細胞結合培養プレートに定置された(これらの足場は「緩んだ」足場と呼ばれる)。ヒト腱細胞は、無血清培地中に懸濁され、1×10細胞/足場の密度で播種され、30および60分間培養が維持された。コラーゲンでコーティングされたウェルへの細胞付着は、陽性対照として使用された。各時点で足場は、ウェルから除去され、別個に媒体含有しているウェル内に浸漬して4回洗浄され、付着していない細胞が除去された。各ウェル内に懸濁された非付着細胞の数が数えられ、そして各足場上の付着細胞の割合が、播種された細胞の総数に基づいて決定された。
【0132】
ヒト腱細胞の増殖を評価するために、紡糸されたまま、およびアニールされた把持された足場の各1セット(n=6)、ならびに紡糸された、およびアニールされた緩んだ足場の各1セット(n=3)は、25×10細胞/足場で播種された。細胞増殖は、培養1、7および14日後に評価された。alamarBlue(商標)代謝活性アッセイは、意図される細胞型とデバイスの互換性を試験するための標準的な方法である。健康でかつ代謝活性のある細胞は、alamarBlueからのレサズリンを代謝する。レサズリン(青色)の代謝は、レゾルフィン(赤色)に還元され、細胞培地での代謝活性の経時的な蛍光モニタリングが可能になる。代謝物および副産物の両方は、無毒である。alamarBlueの蛍光レベルは、生細胞の代謝活性を測定するため、生存細胞の数に正比例する。
【0133】
細胞浸潤は、14日間にわたる時間枠で評価された。紡糸されたまま、およびアニールされた把持された足場の各1セット(n=3)、ならびに紡糸されたまま、およびアニールされた緩んだ足場の各1セット(n=3)は、1×10細胞/足場で播種された。細胞浸潤は、培養1、7および14日後に評価された。細胞は、DAPI核染色で染色され、細胞浸潤は共焦点顕微鏡によって測定された。各足場ごとに5つの視野が、調査された。各視野で、厚さ5μmの複数のz走査スライスが、キャプチャされ、キャプチャされるセルを含有するスライスの数に基づいて、細胞浸潤の合計深度が計算された。合計深度は、5つの視野間で平均化された。
【0134】
統計:すべてのパラメーターは、平均±平均の標準誤差(S.E.M)として表現された。細胞付着、増殖、および浸潤の違いを評価するために、二元配置分散分析(ANOVA)とそれに続く事後のTukeyの多重比較検定が使用された。先験的に、0.05未満のp値は、有意として画定された。
【0135】
アニールされ、かつ紡糸されたままの足場(把持され、緩んだ)は、これらの足場が細胞付着を支持する能力を評価するために、ヒト腱細胞で播種された。培養30および60分後、すべての足場は、それぞれ50%および90%を超える細胞付着が示された。60分後に試験されたすべての状態間で細胞付着に有意差はなかった(p>0.05)。追加的に、ヒト腱細胞の増殖は、培養の1、7、および14日後に、把持された、および緩んだ、アニールされた、および紡糸されたままの足場で評価された。試験されたすべての足場は、細胞生存率および増殖を裏付けた。培養7および14日後、すべての足場上に著しくより多数の代謝活性細胞が存在することが示された(p<0.05)。緩んだ足場内の細胞の数がより少ないのは、細胞播種中に足場から少量の細胞懸濁液がこぼれたこと、および主に足場の収縮の結果として利用可能な成長領域が減少したことに起因する。
【0136】
細胞浸潤の評価は、14日間の期間にわたって有意な細胞浸潤を促進する足場はなかったことを決定した。しかしながら、培養7日後、紡糸されたままの把持された足場は、緩んだ紡糸されたままの足場と比較して著しくより深い細胞浸潤を示した(p<0.05)。追加的に、培養14日後、把持されたアニールされた足場は、緩んだ紡糸されままの足場よりも著しくより深い細胞浸潤を裏づけた(p<0.05)。
【0137】
実施例16:培養におけるテロコラーゲン-PDL45足場の物理的特性。
アニールされ、かつ紡糸されたままのテロコラーゲン-PDL45電界紡糸足場は、上述のように生成され、かつ把持される。図12は、アニールまたは拘束されていない生体高分子シートの収縮を示す。培養14日後、アニールされた、および紡糸されたままの(把持された、および緩んだ)足場は、走査型電子顕微鏡(SEM)を通して画像化された(図13)。繊維整列および繊維直径は、ImageJソフトウェア(imagej.nih.gov/ij/で入手可能)を使用して測定された。これらの測定値は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に30分間浸漬した後、0日目に繊維整列および緩んだ足場の直径と比較された(図14および15)。繊維整列は、ImageJの「方向性」機能を使用して測定された。この関数は、繊維の方向をキャプチャし、繊維が特定の角度内に置かれた、発生回数を示すヒストグラムをプロットする。したがって、ヒストグラムがより狭く、かつより高くなるほど、特定の方向内の繊維がより多くなる。
【0138】
統計学:すべてのパラメーターは、平均±S.E.M.として表現される。繊維整列の頻度分布の違いを評価するために、対応のないノンパラメトリックなコルモゴロフ-スミルノフt検定が使用された。繊維径の違いを評価するために、一元配置分散分析(ANOVA)とそれに続く事後のTukeyの多重比較検定が使用された。先験的に、0.05未満のp値は、有意として画定された。
【0139】
静的張力下でのアニーリングは、足場が収縮する傾向の結果として、さらなる繊維整列および繊維径の減少をもたらすことが示された。これらの物理的変化は、0日目のアニールされた足場と、紡糸されたままの足場との間の繊維整列および直径の有意差によって実証された(図14および15)。テロコラーゲン-PDL45足場は、37℃にて培地中で収縮する。しかしながら、培養中の静的張力下でこれらの足場のアニーリングまたは把持を通して、足場の収縮および繊維整列の損失は、実質的に減少した。図12に示されるように、培養14日後、把持された足場は当初のサイズを保持するが、アニールされた緩んだ足場は、当初のサイズの約60%のみを保持し、緩んだ紡糸されたままの足場は、それらの当初のサイズの25%未満へと収縮することが明白である。追加的に、図13に描画されたSEM画像は、アニールされた、および紡糸されたままの把持された足場の両方は高度に整列されたままであるが、一方でアニールされた、および紡糸されたままの緩んだ足場の両方が培養でその繊維整列を失うことを実証する。SEM画像のImageJ繊維整列分析により、0日目のアニールされた足場が、試験された他のすべての足場よりも著しく高い繊維整列の程度を示すことが明らかになった(p<0.05)。把持された足場が、その繊維の整列を保持し、一方で緩んだ足場内で繊維整列の損失があることが示された。紡糸されたままの緩んだ足場内の繊維整列の程度は、試験された他のすべての足場と比較して著しく減少した(p<0.0001)。この繊維整列の損失は、緩んだ紡糸されたままの足場内で観察された収縮に起因することが明らかである。
【0140】
繊維径の分析は、0日目のアニールされた足場が、把持された紡糸されたままの14日目の足場を除いて、試験された他のすべての足場よりも著しく小さい繊維径を呈したことを示唆する(p<0.05)。この繊維径の低下は、拘束された足場が熱処理の下で収縮する傾向があることに起因する。把持された、および緩んだアニールされた足場の両方は、それらの繊維径の著しい増加によって示される繊維膨張を経験した(p<0.0001)。紡糸されたままの0日目と比較して、把持された紡糸されたままの足場の繊維径における著しい低下は、培養中の拘束された紡糸されたままの足場がアニーリングと同じ物理的な効果を誘発し得ることを示唆している。培養14日後では、緩んだ紡糸されたままの繊維の繊維径には著しい違いはなかった(図15)。
【0141】
例17:テロコラーゲン-PDL45電界紡糸された足場の細胞の形態および伸長。
アニールされた足場および紡糸されたままの足場を、上記に説明されるように調製した。把持された足場および緩んだ足場の両方に、足場あたり1×10個のヒト腱細胞を播種し、最長14日間、培養を保持した。細胞形態および伸長を視覚化するために、ヒト腱細胞で培養したすべての足場を、4%パラホルムアルデヒド中で固定し、そしてDAPIおよびAlexa Fluor(登録商標)594ファロイジンをそれぞれ使用して、核およびアクチンフィラメントを染色した。染色した試料を、共焦点顕微鏡を使用して画像化した。細胞伸長の割合を、20個の細胞核の長さおよび幅を測定することによって、平均の計算された核アスペクト比に基づいて決定した。さらに、細胞整列の角度を、180°にわたる伸長の方向における20個の細長い細胞の角度を測定することによって決定し、頻度分布を2°ごとに提示した。両方の測定を、40倍の倍率で撮影された共焦点画像を使用して実施した。
【0142】
結果は、ヒト腱細胞が、緩んだ足場と比較して、把持された足場内でより高い割合の伸長を有したことを実証する。これは、把持された足場内では、その形状が保たれるので、繊維整列の程度がより高いが、一方で緩んだ足場は、収縮および膨張により繊維整列を失うためである。アクチンフィラメントの方向(赤)は、把持されたアニールされた足場および把持された紡糸されたままの足場での繊維の方向に沿った細胞伸長を実証している。緩んだ足場における細胞中のアクチンフィラメントのランダムな形態は、これらの足場内の繊維整列の損失を実証している。このランダムな形態は、図13の例16に示される繊維のSEM画像によって確認される。細胞の広がりおよび伸長割合を、細胞アスペクト比の測定によって評価した。アニールされた、および紡糸されたままの把持された足場の両方は、それらの緩んだ足場と比較した際、著しくより高い割合の細胞伸長を裏づけた(p<0.0001およびp<0.01)。さらに、細胞の方向性の頻度分布は、把持された足場内の細胞の整列の程度がより高いことを明らかにした。
【0143】
例18:熱処理されたテルロコラーゲン(Tellocollagen)-PDL45電界紡糸された足場の評価。
電界紡糸された繊維の安定性および構造を強化するための熱の適用は次のとおりである。
1.100mg/mlの100%DMSO中にテロコラーゲン-PDL45(30:70)を溶解することによって、整列した電界紡糸された供給原料のシートを生成した。
2.足場を以下によって後処理した。
a.65℃にて18時間のアニーリング
b.65℃にて真空下で18時間のアニーリング
c.85℃にて30%のひずみまで引張
3.足場を以下について評価した。
a.電界紡糸された足場に対する温度および真空の影響
b.XRD、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)、DSC、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)、SEM、および一軸引張試験を使用した熱処理の結果としての生化学的および機械的特性の変化。
【0144】
統計学:すべてのパラメーターは、平均±S.E.M.として表現される。対応のないノンパラメトリックコルモゴロフ-スミルノフt検定を使用して、繊維整列の頻度分布の違いを評価した。通常の一元配置分散分析(ANOVA)に続いて事後のTukeyの多重比較検定を使用して、ピーク応力、弾性率、破断時のひずみ%、およびピーク負荷の違いを評価した。先験的に、p値<0.05を有意と定義した。
【0145】
紡糸されたままの足場および熱処理した足場の機械的特性を評価して、繊維に対する温度および真空の影響を評価した。機械的試験は、すべての処理が紡糸されたままの対照群と比較して、足場のピーク応力を著しく増加させたことを表す(p<0.05)。処理された群の中でも、85℃で引っ張られた足場は、65℃でアニールされた足場よりも著しくより高いピーク応力を示した(p<0.05)。熱処理された群は、紡糸されたままの対照群よりも著しく高い弾性率を呈したが、しかしながら85℃で引っ張られた足場は、両方のアニールされた群より低い弾性率を呈した(p<0.01)。ピーク応力および弾性率は熱処理による影響を受けたが、それらのピーク負荷には有意な違いは観察されなかった。どちらのアニーリング条件も、破断時のひずみを有意に改善した(p<0.05)。真空を用いずに65℃でアニールされた足場は、最高の破断時のひずみ%を呈した(p<0.05)。これらの結果は、熱処理が繊維の構造に影響を与え、ピーク応力、弾性率、および破断時のひずみ%の増加を促進することを表す。これは、繊維および分子整列の程度の変化によるものである可能性がある。
【0146】
拘束されたまたは引っ張られた足場に対する熱処理の影響を決定するために、例16に説明されるように、SEM画像を撮影し、ImageJの「方向性」機能を使用して繊維整列を分析した。結果は、繊維整列が、85℃で引っ張られた、または65℃でアニールされた足場内で著しく改善したことを示している(p<0.05)。85℃で引っ張られた電界紡糸された足場は高い程度の繊維整列を呈するが、対応するSEM画像は、繊維の一部が破断したことを示しており、したがって、この方法は、組織再生のためには理想的ではない場合がある。
【0147】
さらに、ポリマーの結晶化度に対する後処理の影響を評価した。XRDを使用して、テロコラーゲンおよびPDL45繊維の結晶化度を評価した。結果は、すべての群が同様の強度を有し、ピークが重複していることを表し、熱処理がポリマーの結晶化度に影響を与えなかったことを示している。真空下、65℃で処理した足場は、ピーク強度がより低くなり、2θ軸の右側にわずかにシフトした。
【0148】
これらの足場に対する熱の効果もFTIRによって分析した。これらの結果は、アミドI(約1650cm-1)、アミドII(約1560cm-1)、アミドA(約3285cm-1)、およびアミドB(約2917cm-1)結合の存在によって、熱処理された群内のコラーゲンの存在を確認した。PDL45がこの区域内でコラーゲンと同じFTIRフィンガープリントを有するため、アミドIII(約1245cm-1)結合を容易に区別することはできない。ピークが純粋なコラーゲンからわずかにシフトしているため、このピークがコラーゲンからのものか、またはPDL45からのピークによるものかを完全に決定することはできない。コラーゲンからのアミドIIIは存在するが、ピークがシフトしている場合、結合の状態が変化したことを表す。しかしながら、FTIRは、アミドI、II、A、およびB結合の存在を示し、すべての熱処理された群内でコラーゲンの存在を確認する。
【0149】
アニールされた試料のコラーゲン変性を分析し、コラーゲン出発物質および紡糸されたままの対照群と比較した。DSCグラフは、コラーゲン出発物質の2つのピーク、約90℃における幅広いピークと、約200℃における鋭いピークと、を示している。グラフは、紡糸されたままの対照群およびアニールされた群が、コラーゲン出発物質と比較したときに、より低い温度にシフトしたことを示している。電界紡糸後にコラーゲンの熱変性温度は低下したが、DSCデータは、アニールされた試料に対するピークが約58℃であり、一方で紡糸されたままの対照に対するピークは約55℃であるため、アニーリングが変性温度を増加させることを示唆している。
【0150】
コラーゲン鎖に対する電界紡糸、熱アニーリング、および真空乾燥の影響を調査するために使用される別の方法は、SDS-PAGEである。紡糸されたままの足場および熱処理された足場を、酢酸またはDMSO中で溶解し、SDS-PAGEで実行した。238および117kDaで視認可能な別個のバンドは、それぞれ、電界紡糸された繊維内のアルファ鎖およびベータ鎖の存在を確認する。さらに、117kDaを下回るスメアリングの欠如は、電界紡糸または任意の後加工処理によりコラーゲンが破断しなかったことを示している。
【0151】
例19:皮下移植片細胞定量化。
異なる時点での細胞浸潤を分析するために、さまざまな溶媒から電界紡糸された足場の皮下移植片を比較した。結果は、移植後2週間および8週間の時点でのHFP足場と比較すると、DMSOから電界紡糸された足場が著しくより大きい数の細胞を有することを表している(図16)。
【0152】
例20:残留DMSOの決定。
GC/MSを使用して、電界紡糸された足場中の残留DMSOを決定した。2、4、6、および24時間の間真空にされた移植組織を、真空にされなかった移植組織と比較した。Agilent 7890A GCを使用して、試料のGC/MS分析をMass Spec Lab、米国カリフォルニア州によって実施し、ChemStationソフトウェアを使用してデータを分析した。
【0153】
ジメチルアセトアミド(DMAC)を抽出溶媒として使用して、足場からDMSOを回復した。簡潔に、約20mgの試験試料を、3mLのDMAC溶媒中に懸濁させた(抽出1)。これらを攪拌しながら60℃で24時間加熱した後、上澄みをGC/MS分析に使用した。試料の各々に対して複製抽出物を調製(1および2とラベル付けされた複製、表7を参照)し、ならびに、複製ごとに2回の注入を行った(表7の注入1および注入2)。第2の抽出ステップ(抽出2)(同じ試料の残留物を使用)を行って、残留DMSOの完全な回復を確認した。両方の抽出した上澄み(抽出1および抽出2)の実行時に、第1の抽出でDMSOの95%より多くを抽出することができたことを観察した。DMAC中のDMSOの標準曲線を、DMSOの最も強いイオンピークの積分面積をDMSO濃度の関数として使用して生成した。次いで、この標準曲線を使用して、未知の試料中のDMSOの範囲を決定した。
【0154】
表7は、足場のGC/MS研究から得た結果の概要を示す。表7のデータは、試料から抽出されたDMSOの量が、FDAのガイドラインによる50mg/用量/日の許容可能範囲よりも著しく低い(>1000倍少ない)ことを明確に表している。
【表7】
【0155】
参照文献
以下の文献を含む、本明細書において特定されるすべての書類は、それらの全体が参照により組み込まれる。
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