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特許7529581水質制御方法、水質制御装置及び蒸気タービンプラント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】水質制御方法、水質制御装置及び蒸気タービンプラント
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/66 20230101AFI20240730BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20240730BHJP
   F22B 37/38 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C02F1/66 521E
C02F1/00 K
C02F1/00 T
C02F1/00 V
C02F1/66 510H
C02F1/66 530K
C02F1/66 530L
C02F1/66 530P
F22B37/38 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021011648
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2022115162
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 彰弘
(72)【発明者】
【氏名】木戸 遥
(72)【発明者】
【氏名】市原 太郎
(72)【発明者】
【氏名】澤津橋 徹哉
(72)【発明者】
【氏名】中土 雄太
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-243972(JP,A)
【文献】特開2007-268397(JP,A)
【文献】特開昭61-268905(JP,A)
【文献】特開2007-224820(JP,A)
【文献】特開2002-180804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/00、1/66-1/68
F01D13/00-15/12、23/00-25/36
F22B37/00-37/78
G21D1/00-9/00
G21C17/00-17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンプラントの水質制御方法であって、
前記蒸気タービンプラントの給水の酸電気伝導率の計測値を取得する酸電気伝導率計測ステップと、
前記給水の炭酸濃度と酸電気伝導率との相関関係に基づいて、前記酸電気伝導率の計測値に対応する前記給水における炭酸濃度CAを取得する炭酸濃度取得ステップと、
前記炭酸濃度CAの炭酸を含む前記給水の電気伝導率とpHとの相関関係に基づいて、前記給水の目標pHに対応する電気伝導率である前記給水の目標電気伝導率を取得する目標値取得ステップと、
前記目標電気伝導率又は前記目標電気伝導率から導出される値に基づいて、前記給水へのアンモニア注入量を調節する調節ステップと、
を備える水質制御方法。
【請求項2】
前記給水の電気伝導率の計測値を取得する電気伝導率計測ステップを備え、
前記調節ステップでは、前記電気伝導率の計測値と、前記目標電気伝導率との偏差に基づいて、前記給水へのアンモニア注入量を調節する
請求項1に記載の水質制御方法。
【請求項3】
規定時間毎に、前記酸電気伝導率計測ステップ、前記炭酸濃度取得ステップ、及び、前記目標値取得ステップを実行して、前記目標電気伝導率を更新する目標値更新ステップを備え、
前記調節ステップでは、前記目標値更新ステップで更新された前記目標電気伝導率に基づいて、前記給水へのアンモニア注入量を調節する
請求項1又は2に記載の水質制御方法。
【請求項4】
前記給水のアンモニア濃度と電気伝導率との相関関係に基づいて、前記目標電気伝導率に対応する目標アンモニア濃度を取得するステップを備え、
前記調節ステップでは、前記目標アンモニア濃度に基づいて、前記給水へのアンモニア注入量を調節する
請求項1に記載の水質制御方法。
【請求項5】
前記給水のアンモニア濃度の計測値を取得するアンモニア濃度計測ステップを備え、
前記調節ステップでは、前記アンモニア濃度の計測値と、前記目標アンモニア濃度との偏差に基づき、前記給水へのアンモニア注入量を調節する
請求項4に記載の水質制御方法。
【請求項6】
規定時間毎に、前記酸電気伝導率計測ステップ、前記炭酸濃度取得ステップ、及び、前記目標アンモニア濃度を取得するステップを実行して、前記目標アンモニア濃度を更新する目標値更新ステップを備え、
前記調節ステップでは、前記目標値更新ステップで更新された前記目標アンモニア濃度に基づいて、前記給水へのアンモニア注入量を調節する
請求項4又は5に記載の水質制御方法。
【請求項7】
蒸気タービンプラントの水質制御装置であって、
前記蒸気タービンプラントの給水の酸電気伝導率の計測値を取得するように構成された酸電気伝導率計測部と、
前記給水の炭酸濃度と酸電気伝導率との相関関係に基づいて、前記酸電気伝導率の計測値に対応する炭酸濃度CAを取得するように構成された炭酸濃度取得部と、
前記炭酸濃度CAの炭酸を含む前記給水の電気伝導率とpHとの相関関係に基づいて、前記給水の目標pHに対応する電気伝導率である前記給水の目標電気伝導率を取得するように構成された目標値取得部と、
前記目標電気伝導率又は前記目標電気伝導率から導出される値に基づいて、前記給水へのアンモニア注入量を調節するように構成された調節部と、
を備える水質制御装置。
【請求項8】
蒸気タービンと、
前記蒸気タービンの給水の水質を制御するように構成された請求項7に記載の水質制御装置と、
を備える蒸気タービンプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水質制御方法、水質制御装置及び蒸気タービンプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンプラントでは、給水と接触する機器の腐食を抑制するために、アンモニア等の水質調整剤を用いて給水の水質制御が行われる。機器の腐食を適切に抑制するため、給水への水質調整剤の注入量を適切に調節する必要がある。
【0003】
特許文献1には、火力発電プラント等におけるアンモニアの注入制御において、給水のアンモニア濃度を取得し、このアンモニア濃度から算出される電気伝導率と、給水の目標pHに対応する目標電気伝導率との偏差に基づいて、アンモニア注入ポンプを制御することが記載されている。また、特許文献1には、給水のpHと電気伝導率との関係を示す特性図を用いて、給水のpH及び電気伝導率の計測値から給水のアンモニア濃度を求めることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭61-268905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、蒸気タービンプラントの運転中は給水への炭酸混入はほとんどないことから、従来は、給水への炭酸混入を考慮せず、目標pHに対応するアンモニア濃度又は電気伝導率等の目標値を設定し、この目標値に基づいてアンモニア注入制御をしていた。しかしながら、プラントの運転状態によっては給水に炭酸が混入していることがあり、このため、従来の方法では、狙いどおりの制御をすることができず、機器の腐食を確実に抑制することができない場合があった。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、機器の腐食をより確実に抑制することが可能な水質制御方法、水質制御装置及び蒸気タービンプラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態に係る水質制御方法は、
蒸気タービンプラントの水質制御方法であって、
前記蒸気タービンプラントの給水の酸電気伝導率の計測値を取得する酸電気伝導率計測ステップと、
前記給水の炭酸濃度と酸電気伝導率との相関関係に基づいて、前記酸電気伝導率の計測値に対応する前記給水における炭酸濃度CAを取得する炭酸濃度取得ステップと、
前記炭酸濃度CAの炭酸を含む前記給水の電気伝導率とpHとの相関関係に基づいて、前記給水の目標pHに対応する電気伝導率である前記給水の目標電気伝導率を取得する目標値取得ステップと、
前記目標電気伝導率又は前記目標電気伝導率から導出される値に基づいて、前記給水へのアンモニア注入量を調節する調節ステップと、
を備える。
【0008】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係る水質制御装置は、
蒸気タービンプラントの水質制御装置であって、
前記蒸気タービンプラントの給水の酸電気伝導率の計測値を取得するように構成された酸電気伝導率計測部と、
前記給水の炭酸濃度と酸電気伝導率との相関関係に基づいて、前記酸電気伝導率の計測値に対応する炭酸濃度CAを取得する炭酸濃度取得部と、
前記炭酸濃度CAの炭酸を含む前記給水の電気伝導率とpHとの相関関係に基づいて、前記給水の目標pHに対応する電気伝導率である前記給水の目標電気伝導率を取得する目標値取得部と、
前記目標電気伝導率又は前記目標電気伝導率から導出される値に基づいて、前記給水へのアンモニア注入量を調節する調節部と、
を備える。
【0009】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係る蒸気タービンプラントは
蒸気タービンと、
前記蒸気タービンの給水の水質を制御するように構成された上述の水質制御装置と、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の少なくとも一実施形態によれば機器の腐食をより確実に抑制することが可能な水質制御方法、水質制御装置及び蒸気タービンプラントが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る蒸気タービンプラントの概略構成図である。
図2】一実施形態に係る水質制御装置の概略構成図である。
図3】給水の炭酸濃度と酸電気伝導率との相関関係を示すグラフの一例である。
図4】給水の電気伝導率とpHとの相関関係を示すグラフの一例である。
図5】給水のアンモニア濃度と電気伝導率との相関関係を示すグラフの一例である。
図6】一実施形態に係る水質制御方法のフローチャートである。
図7】一実施形態に係る水質制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0013】
(蒸気タービンプラントの構成)
図1は、一実施形態に係る蒸気タービンプラントの概略構成図である。図1に示すように、蒸気タービンプラント1は、蒸気を発生するためのボイラ2と、ボイラ2からの蒸気によって駆動されるように構成された蒸気タービン8と、を備えている。蒸気タービン8は、発電機を駆動するように構成されていてもよい。ボイラ2は、ガスタービンからの排ガスが供給されるように構成された排熱回収ボイラ(Heat Recovery Steam Generator)であってもよい。
【0014】
ボイラ2は、高圧ドラム14、中圧ドラム22及び低圧ドラム28を含む蒸気ドラム(14,22,28)と、各蒸気ドラム(14,22,28)に対応して設けられる節炭器(高圧節炭器13、中圧節炭器20及び低圧節炭器26)、蒸発器(不図示)、及び、過熱器(高圧過熱器16、中圧過熱器24及び低圧過熱器30)と、再熱器18と、を含む。なお、蒸気タービンプラント1の運転時における蒸気ドラムの内部圧力は、高圧ドラム14が最も高く、中圧ドラム22が次に高く、低圧ドラム28が最も低い。
【0015】
節炭器(13,20,26)は、給水ライン3からの給水を排ガス等との熱交換により加熱するように構成されている。節炭器(13,20,26)で加熱された給水は、各節炭器に対応する蒸気ドラム(14,22,28)にそれぞれ導かれるようになっている。
【0016】
蒸気ドラム(14,22,28)には、各蒸気ドラムに対応する蒸発器が降水管(不図示)及び蒸発管(不図示)を介してそれぞれ接続されている。蒸気ドラム(14,22,28)内の給水は、降水管を介して蒸発器に導かれる。
【0017】
蒸発器は、排ガス等との熱交換により給水を蒸発させて蒸気を発生させるように構成される。蒸発器で生じた蒸気は、給水とともに(すなわち二相流の形態で)蒸発管を介して蒸気ドラム(14,22,28)に流入する。蒸気ドラム(14,22,28)では、気液分離器(不図示)により蒸気と給水とが分離され、このように分離された蒸気が、飽和蒸気として、蒸気ドラム(14,22,28)に一時的に収容されるようになっている。蒸気ドラム(14,22,28)内の飽和蒸気は、各蒸気ドラム(14,22,28)に対応する過熱器(16,24,30)にそれぞれ導かれるようになっている。
【0018】
過熱器(16,24,30)及び再熱器18は、排ガス等との熱交換により、蒸気ドラム(14,22,28)からの蒸気を加熱するように構成される。過熱器(16,24,30)及び再熱器18で加熱された蒸気は蒸気タービン8に導かれ、蒸気タービン8を回転駆動するようになっている。
【0019】
蒸気ドラム(14,22,28)からの蒸気は、各蒸気ドラムに対応する過熱器(16,24,30)で加熱された後、蒸気タービン8の高圧タービン部、中圧タービン部、及び、低圧タービン部にそれぞれ導入される。高圧タービン部を通過した蒸気は、中圧過熱器24からの蒸気と合流して再熱器18に導かれ、再熱器18で再熱された後、蒸気タービン8の中圧タービン部に導入される。中圧タービン部を通過した蒸気は、低圧過熱器30からの蒸気に合流して、蒸気タービン8の低圧タービン部に導入される。
【0020】
蒸気タービン8の低圧タービン部を通過した蒸気は、低圧タービン部に接続された復水器12に導かれ、復水器12にて凝縮され、この凝縮水が給水として給水ライン3及び給水ポンプ4を介して各蒸気ドラム(14,22,28)に供給される。
【0021】
なお、図1に示す例示的な実施形態では、給水ライン3において低圧節炭器26の下流側に高中圧給水ポンプ10が設けられており、高中圧給水ポンプ10で昇圧された給水が中圧ドラム22及び高圧ドラム14に供給されるようになっている。
【0022】
また、図1に示す例示的な実施形態では、給水ライン3において給水ポンプ4の下流側かつ低圧節炭器26の上流側に、グランド蒸気を凝縮するためのグランド蒸気復水器6が設けられている。
【0023】
図1に示す蒸気タービンプラント1は、給水ライン3の給水に水質調整剤(薬剤)としてのアンモニアを供給するための薬剤供給部40を備えている。薬剤供給部40は、薬剤タンク42と、薬剤タンク42と給水ライン3との間に設けられる薬剤ライン44と、薬剤ライン44に設けられる薬剤ポンプ46と、を含む。
【0024】
薬剤ライン44は、復水器12よりも下流側、かつ、低圧節炭器26よりも上流側の位置にて、給水ライン3に接続されている。したがって、薬剤タンク42及び薬剤ライン44からの水質調整剤が混合された給水が、給水ライン3を介して、低圧ドラム28、中圧ドラム22及び高圧ドラム14に供給されるようになっている。なお、図1に示す例示的な実施形態では、薬剤ライン44は、復水器12よりも下流側、かつ、グランド蒸気復水器6よりも上流側の位置にて、給水ライン3に接続されている。
【0025】
水質調整剤としてのアンモニアは、給水等の循環水又は蒸気と接触する機器(例えば、節炭器(13,20,26)や蒸気ドラム(14,22,28)等)の腐食を抑制する目的で給水に供給される。水質調整剤は、例えば、給水のpHが所定範囲内であるときに生じやすい腐食を抑制するように、給水のpHを調節可能なpH調整剤としての機能を有してもよい。
【0026】
なお、本発明の実施形態に係る水質制御方法が適用される蒸気タービンプラントは、排熱回収ボイラを備える蒸気タービンプラント1に限定されず、例えば、石炭、石油、液化天然ガス、重質油等の燃料を燃焼させるボイラで生成した蒸気によって蒸気タービンを駆動するように構成された蒸気タービンプラントであってもよい。
【0027】
蒸気タービンプラント1は、さらに、蒸気タービン8の給水の水質を制御するための水質制御装置50を備える。ここで、図2は、一実施形態に係る水質制御装置50の概略構成図である。図1及び図2に示すように、水質制御装置50は、蒸気タービンプラント1の給水の水質パラメータ(酸電気伝導率、電気伝導率及び/又はアンモニア濃度)を計測するための計測部60と、水質パラメータの計測値に基づいて薬剤ポンプ46を制御するための制御部70と、を含む。
【0028】
図2に示すように、計測部60は、給水の酸電気伝導率を計測するように構成された酸電気伝導率計測部62と、給水の電気伝導率を計測するように構成された電気伝導率計測部64と、を含む。計測部60は、給水のアンモニア濃度を計測するように構成されたアンモニア濃度計測部66をさらに備えてもよい。
【0029】
ここで、酸電気伝導率とは、試料(給水)中の陽イオンを水素イオンに交換したものについて計測される電気伝導率である。酸電気伝導率計測部62は、試料(給水)中の陽イオンを水素イオンに交換するためのイオン交換部(不図示)と、イオン交換部を通過後の試料の電気伝導率を計測するための電気伝導率計(不図示)と、を含む。イオン交換部は、イオン交換樹脂、又は、電気式のイオン交換器を含んでもよい。
【0030】
計測部60は、例えば給水ライン3から採取される給水の試料について、各水質パラメータ(酸電気伝導率、電気伝導率及び/又はアンモニア濃度)を計測するように構成される。図1に示す例示的な実施形態では、給水ライン3において復水器12よりも下流側、かつ、薬剤ライン44との接続位置よりも上流側の位置に設けられる採取ポイントP1から採取される給水が試料として計測部60に導かれ、酸電気伝導率計測部62、電気伝導率計測部64及びアンモニア濃度計測部66の各々に供給されるようになっている。
【0031】
図2に示すように、制御部70は、炭酸濃度取得部72と、目標値取得部74と、調節部76と、記憶部78と、を含む。
【0032】
制御部70は、プロセッサ(CPU等)、記憶装置(メモリデバイス;RAM等)、補助記憶部及びインターフェース等を備えた計算機を含む。制御部70は、インターフェースを介して、上述の計測部60から、各水質パラメータの計測値を示す信号を受け取るようになっている。プロセッサは、このようにして受け取った信号を処理するように構成される。また、プロセッサは、記憶装置に展開されるプログラムを処理するように構成される。これにより、以下に説明する炭酸濃度取得部72、目標値取得部74及び調節部76の機能が実現される。
【0033】
制御部70での処理内容は、プロセッサにより実行されるプログラムとして実装される。プログラムは、補助記憶部に記憶されていてもよい。プログラム実行時には、これらのプログラムは記憶装置に展開される。プロセッサは、記憶装置からプログラムを読み出し、プログラムに含まれる命令を実行するようになっている。
【0034】
記憶部78は、制御部70を構成する計算機の主記憶部又は補助記憶部を含んでもよい。あるいは、記憶部78は、該計算機とネットワークを介して接続される遠隔記憶装置を含んでもよい。
【0035】
炭酸濃度取得部72は、酸電気伝導率計測部62からの酸電気伝導率の計測値ACを示す信号を受け取り、給水の炭酸濃度と酸電気伝導率との相関関係に基づいて、酸電気伝導率の計測値ACに対応する炭酸濃度CAを取得するように構成される。
【0036】
本明細書において炭酸濃度とは、水(給水等)に溶解している炭酸(HCO)、炭酸水素イオン(HCO )、炭酸イオン(CO 2-)又は、これらの合計濃度(即ち総炭酸濃度)の何れであってもよい。なお、定常状態では、水中に溶解する炭酸(HCO)、炭酸水素イオン(HCO )及び炭酸イオン(CO 2-)の比率は、pHに応じた規定の比率になる。したがって、給水中の炭酸(HCO)、炭酸水素イオン(HCO )又は炭酸イオン(CO 2-)の何れかの濃度又は総炭酸濃度、及び、pHがわかれば、給水の炭酸(HCO)の濃度、炭酸水素イオン(HCO )の濃度、炭酸イオン(CO 2-)の濃度、及び総炭酸濃度を算出することができる。
【0037】
ここで、図3は、給水の炭酸濃度と酸電気伝導率との相関関係を示すグラフの一例である。なお、図3のグラフの横軸は給水の炭酸イオン(CO 2-)濃度(炭酸濃度)を表し、縦軸は給水の酸電気伝導率を表す。図3のグラフからわかるように、給水の炭酸イオン濃度(炭酸濃度)と酸電気伝導率とは所定の相関関係を有する。したがって、給水の酸電気伝導率の計測値ACを取得すれば、この相関関係に基づいて、酸電気伝導率の計測値ACに対応する炭酸濃度CAを取得することができる。
【0038】
なお、給水の炭酸濃度と酸電気伝導率との相関関係(例えば図3のグラフで示す相関関係)は、記憶部78に予め記憶されていてもよい。炭酸濃度取得部72は、記憶部78から該相関関係を取得するようになっていてもよい。
【0039】
目標値取得部74は、炭酸濃度取得部72で取得された炭酸濃度CAの炭酸を含む給水の電気伝導率とpHとの相関関係に基づいて、前記給水の目標pH(pH_tgt)に対応する電気伝導率である前記給水の目標電気伝導率EC_tgtを取得するように構成される。
【0040】
ここで、図4は、給水の電気伝導率とpHとの相関関係を示すグラフの一例である。図4に示すグラフにおいて、曲線C1~C4は、それぞれ、アンモニアを含む試料水中の炭酸濃度に応じた電気伝導率(横軸)とpH(縦軸)との相関関係を示す。具体的には、曲線C1~C4は、それぞれ、試料水中の炭酸イオン(CO 2-)濃度が0ppm(図4において「アンモニア理論値」と記載)、2ppm、4ppm、6ppmの場合における電気伝導率とpHの相関関係を示す。
【0041】
図4のグラフに示されるように、給水における電気伝導率とpHとは所定の相関関係を有し、その相関関係は、給水の炭酸濃度に応じて異なる。したがって、給水の炭酸濃度が既知であれば、この相関関係に基づいて、給水の目標pHに対応する電気伝導率である目標電気伝導率を取得することができる。例えば、炭酸濃度取得部72で取得された炭酸濃度CAが4ppmである場合、炭酸濃度が4ppmの場合における電気伝導率とpHとの相関関係を示す曲線C3上における、目標pH(pH_tgt)に対応する電気伝導率が目標電気伝導率EC_tgtとして取得される(図4参照)。
【0042】
なお、炭酸濃度に応じた電気伝導率とpHとの相関関係(例えば図4中の曲線C1~C4で示される関係)は、実験的な手法又は計算によって予め求められるものである。実験的な手法による場合には、水質が正常である場合の循環水を用いて、様々なアンモニア濃度及び炭酸濃度にて電気伝導率及びpHを計測することにより上述の相関関係を求めることができる。計算による場合には、化学平衡計算により、酸の解離平衡、アルカリの解離平衡、水の解離平衡、正負電荷のバランス、及び、酸及びアルカリのマスバランスに基づいて、アンモニア濃度及び炭酸イオン濃度を算出し、算出した各濃度から、pH及び電気伝導率を算出することができる。
【0043】
一実施形態では、目標値取得部74は、給水のアンモニア濃度と電気伝導率との相関関係に基づいて、目標電気伝導率EC_tgtに対応する目標アンモニア濃度CB_tgtを取得するように構成されていてもよい。
【0044】
ここで、図5は、給水のアンモニア濃度と電気伝導率との相関関係を示すグラフの一例である。なお、図5のグラフの横軸は給水のアンモニア濃度を表し、縦軸は給水の電気伝導率を表す。図5のグラフからわかるように、給水のアンモニア濃度と電気伝導率とは所定の相関関係を有する。したがって、給水の電気伝導率を取得すれば、この相関関係に基づいて、電気伝導率に対応するアンモニア濃度を取得することができる。例えば、上述の目標電気伝導率EC_tgtが既知であれば、上述の相関関係に基づいて、目標電気伝導率EC_tgtに対応する目標アンモニア濃度CB_tgtを取得することができる(図5参照)。なお、目標電気伝導率EC_tgtは目標pH(pH_tgt)に対応する電気伝導率であるから、上述の目標アンモニア濃度CB_tgtは、給水の目標pHに対応するアンモニア濃度である。
【0045】
給水の電気伝導率とpHとの相関関係(例えば図4のグラフで示す相関関係)、及び/又は、給水のアンモニア濃度と電気伝導率との相関関係(例えば図5のグラフで示す相関関係)は、記憶部78に予め記憶されていてもよい。目標値取得部74は、記憶部78からこれらの相関関係を取得するようになっていてもよい。
【0046】
調節部76は、目標値取得部74で取得される目標電気伝導率EC_tgt、又は、該目標電気伝導率EC_tgtから導出される値に基づいて、給水へのアンモニア注入量を調節するように構成される。調節部76は、アンモニア注入量が所望の量となるように、薬剤ポンプ46の回転数等を調節するように構成されていてもよい。
【0047】
調節部76は、目標電気伝導率EC_tgtに基づいて給水へのアンモニア注入量を調節するように構成されてもよい。この場合、調節部76は、電気伝導率計測部64で取得される電気伝導率の計測値と、目標電気伝導率EC_tgtとの偏差に基づいて、例えばこの偏差がゼロに近づくように、給水へのアンモニア注入量を調節するように構成されてもよい。
【0048】
あるいは、調節部76は、目標電気伝導率EC_tgtから導出される値に基づいて、給水へのアンモニア注入量を調節するように構成されてもよい。
【0049】
例えば、調節部76は、目標電気伝導率EC_tgtに基づき取得される上述の目標アンモニア濃度CB_tgtに基づいて、給水へのアンモニア注入量を調節するように構成されてもよい。この場合、調節部76は、アンモニア濃度計測部66で取得されるアンモニア濃度の計測値と、目標アンモニア濃度CB_tgtとの偏差に基づいて、例えばこの偏差がゼロに近づくように、給水へのアンモニア注入量を調節するように構成されてもよい。
【0050】
給水における電気伝導率とpHとの相関関係は、給水中の炭酸濃度の影響を受ける。また、給水における炭酸濃度は、大気中の二酸化炭素の給水への溶け込み量に対応し、したがって、プラントの運転状態等によって変化し得る。例えば、蒸気タービンプラントの運転中は、復水器の真空度が高いため、給水中及び試料水中の炭酸濃度が低くなる。一方、蒸気タービンプラントの停止時等に復水器の真空破壊が起きる場合には、大気中の二酸化炭素が給水に溶解するため、給水中及び試料水中の炭酸濃度は高くなる。
【0051】
この点、上述の水質制御装置によれば、給水の酸電気伝導率の計測値に基づいて給水の炭酸濃度CAを取得し、該炭酸濃度CAにおける給水の電気伝導率とpHとの相関関係に基づいて、目標pHに対応する目標電気伝導率EC_tgtを取得する。あるいは、給水のアンモニア濃度と電気伝導率との相関関係に基づいて、目標電気伝導率EC_tgtに対応する目標アンモニア濃度CB_tgtを取得する。したがって、給水に炭酸が混入している場合であっても、給水のpHが目標pHとなるように、アンモニア注入量を適切に調節することができる。これにより、蒸気タービンプラント1を構成する機器の腐食をより確実に抑制することができる。
【0052】
(水質制御のフロー)
以下、幾つかの実施形態に係る水質制御方法について説明する。以下においては、上述の水質制御装置50を用いて蒸気タービンプラント1の水質制御を行う場合について説明するが、幾つかの実施形態では、他の装置を用いて蒸気タービンプラント1の水質制御を行ってもよい。また、以下に説明する手順のうち一部又は全部を手動で行ってもよい。
【0053】
図6は、一実施形態に係る水質制御方法のフローチャートである。本実施形態では、まず、酸電気伝導率計測部62により、蒸気タービンプラント1の給水の酸電気伝導率の計測値ACを取得する(S102)。
【0054】
次に、給水の炭酸濃度と酸電気伝導率との相関関係(例えば図3に示すグラフ)に基づいて、ステップS102で取得した酸電気伝導率の計測値ACに対応する、給水における炭酸濃度CAを取得する(S104)。
【0055】
次に、ステップS104で算出された炭酸濃度CAの炭酸を含む給水の電気伝導率とpHとの相関関係(例えば図4のグラフにおける曲線C3)に基づいて、給水の目標pH(pH_tgt)に対応する電気伝導率である給水の目標電気伝導率EC_tgtを取得する(S106)。
【0056】
そして、ステップS106で取得した目標電気伝導率EC_tgtに基づいて、調節部76により、給水へのアンモニア注入量を調節する(S108)。ステップS108では、電気伝導率計測部64にて給水の電気伝導率の計測値を取得し、該計測値と、目標電気伝導率EC_tgtとの偏差がゼロになるように、給水へのアンモニア注入量を調節するようにしてもよい。
【0057】
このように、給水の酸電気伝導率の計測値に基づいて給水の炭酸濃度CAを取得し、該炭酸濃度CAにおける給水の電気伝導率とpHとの相関関係に基づいて、目標pHに対応する目標電気伝導率EC_tgtを取得するようにしたので、給水に炭酸が混入している場合であっても、給水のpHが目標pHとなるように、アンモニア注入量を適切に調節することができる。これにより、蒸気タービンプラント1を構成する機器の腐食をより確実に抑制することができる。
【0058】
上述のステップS102~S108は、規定時間毎に繰り返し行ってもよい。すなわち、ステップS108終了後、規定時間が経過したら(ステップS110でYes)、ステップS102及びS104を再度実行し、これにより得られる給水の炭酸濃度CAの炭酸を含む給水の電気伝導率とpHとの相関関係に基づいて、給水の目標電気伝導率EC_tgtを再度取得する。すなわち、目標電気伝導率EC_tgtを更新する(S106)。ステップS108では、更新された目標電気伝導率EC_tgtに基づいて、調節部76により、給水へのアンモニア注入量を調節する。
【0059】
このように、規定時間毎に、酸電気伝導率の計測値を取得して、該計測値に対応する炭酸濃度及び目標電気伝導率を取得して、目標電気伝導率を更新するようにしたので、給水中の炭酸濃度が時間に応じて変化する場合であっても、給水のpHが目標pHとなるように、アンモニア注入量を適切に調節することができる。これにより、プラント機器の腐食をより確実に抑制することができる。
【0060】
図7は、一実施形態に係る水質制御方法のフローチャートである。図7におけるステップS202~S206は、図6におけるステップS102~S106と同様であるので、説明を省略する。
【0061】
ステップS208では、給水のアンモニア濃度と電気伝導率との相関関係(例えば図5に示すグラフ)に基づいて、ステップS206で取得した目標電気伝導率EC_tgtに対応するアンモニア濃度である目標アンモニア濃度CB_tgtを取得する。
【0062】
そして、ステップS210では、ステップS208で取得した目標アンモニア濃度CB_tgtに基づいて、調節部76により、給水へのアンモニア注入量を調節する。ステップS210では、アンモニア濃度計測部66にて給水の電アンモニア濃度の計測値を取得し、該計測値と、目標アンモニア濃度CB_tgtとの偏差がゼロになるように、給水へのアンモニア注入量を調節するようにしてもよい。
【0063】
このように、給水の酸電気伝導率の計測値に基づいて給水の炭酸濃度CAを取得し、該炭酸濃度CAにおける給水の電気伝導率とpHとの相関関係に基づいて、目標pHに対応する目標電気伝導率EC_tgtを取得するようにしたので、給水に炭酸が混入している場合であっても、給水のpHが目標pHとなるように、アンモニア注入量を適切に調節することができる。これにより、蒸気タービンプラント1を構成する機器の腐食をより確実に抑制することができる。
【0064】
本実施形態では、給水の酸電気伝導率の計測値に基づいて給水の炭酸濃度CAを取得し、該炭酸濃度CAにおける給水の電気伝導率とpHとの相関関係に基づいて、目標pHに対応する目標電気伝導率EC_tgtを取得するとともに、給水のアンモニア濃度と電気伝導率との相関関係に基づいて、目標電気伝導率EC_tgtに対応する目標アンモニア濃度CB_tgtを取得する。したがって、給水に炭酸が混入している場合であっても、給水のpHが目標pHとなるように、アンモニア注入量を適切に調節することができる。これにより、蒸気タービンプラント1を構成する機器の腐食をより確実に抑制することができる。
【0065】
上述のステップS202~S210は、規定時間毎に繰り返し行ってもよい。すなわち、ステップS210終了後、規定時間が経過したら(ステップS212でYes)、ステップS202及びS204を再度実行し、これにより得られる給水の炭酸濃度CAの炭酸を含む給水の電気伝導率とpHとの相関関係に基づいて、給水の目標電気伝導率EC_tgtを再度取得する(S206)。また、給水のアンモニア濃度と電気伝導率との相関関係に基づいて、直前のステップS206で取得した目標電気伝導率EC_tgtに対応するアンモニア濃度である目標アンモニア濃度CB_tgtを取得する。すなわち、目標アンモニア濃度CB_tgtを更新する(S208)。ステップS210では、更新された目標アンモニア濃度CB_tgtに基づいて、調節部76により、給水へのアンモニア注入量を調節する。
【0066】
このように、規定時間毎に、酸電気伝導率の計測値を取得して、該計測値に対応する炭酸濃度及び目標電気伝導率を取得して、目標電気伝導率及び目標アンモニア濃度を更新するようにしたので、給水中の炭酸濃度が時間に応じて変化する場合であっても、給水のpHが目標pHとなるように、アンモニア注入量を適切に調節することができる。これにより、プラント機器の腐食をより確実に抑制することができる。
【0067】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0068】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る水質制御方法は、
蒸気タービンプラント(1)の水質制御方法であって、
前記蒸気タービンプラントの給水の酸電気伝導率の計測値を取得する酸電気伝導率計測ステップ(例えば上述のS102,S202)と、
前記給水の炭酸濃度と酸電気伝導率との相関関係に基づいて、前記酸電気伝導率の計測値に対応する前記給水における炭酸濃度CAを取得する炭酸濃度取得ステップ(例えば上述のS104,S204)と、
前記炭酸濃度CAの炭酸を含む前記給水の電気伝導率とpHとの相関関係に基づいて、前記給水の目標pHに対応する電気伝導率である前記給水の目標電気伝導率を取得する目標値取得ステップ(例えば上述のS106,S206)と、
前記目標電気伝導率又は前記目標電気伝導率から導出される値に基づいて、前記給水へのアンモニア注入量を調節する調節ステップ(例えば上述のS108,S210)と、
を備える。
【0069】
給水における電気伝導率とpHとの相関関係は、給水中の炭酸濃度の影響を受ける。また、給水における炭酸濃度は、大気中の二酸化炭素の給水への溶け込み量に対応し、したがって、プラントの運転状態等によって変化し得る。この点、上記(1)の方法では、給水の酸電気伝導率の計測値に基づいて給水の炭酸濃度を取得し、該炭酸濃度における給水の電気伝導率とpHとの相関関係に基づいて、目標pHに対応する目標電気伝導率を取得する。したがって、給水に炭酸が混入している場合であっても、給水のpHが目標pHとなるように、アンモニア注入量を適切に調節することができる。これにより、プラント機器の腐食をより確実に抑制することができる。
【0070】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の方法において、
前記給水の電気伝導率の計測値を取得する電気伝導率計測ステップを備え、
前記調節ステップでは、前記電気伝導率の計測値と、前記目標電気伝導率との偏差に基づいて、前記給水へのアンモニア注入量を調節する。
【0071】
上記(2)の方法によれば、上記(1)の方法で取得される目標電気伝導率と、給水の電気伝導率の計測値との偏差に基づいて、給水へのアンモニア注入量を調節する。したがって、給水に炭酸が混入している場合であっても、給水のpHが目標pHとなるように、アンモニア注入量を適切に調節することができる。これにより、プラント機器の腐食をより確実に抑制することができる。
【0072】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の方法において、
規定時間毎に、前記酸電気伝導率計測ステップ、前記炭酸濃度取得ステップ、及び、前記目標値取得ステップを実行して、前記目標電気伝導率を更新する目標値更新ステップ(例えば上述のS110)を備え、
前記調節ステップでは、前記目標値更新ステップで更新された前記目標電気伝導率に基づいて、前記給水へのアンモニア注入量を調節する。
【0073】
上記(3)の方法によれば、規定時間毎に、酸電気伝導率の計測値を取得して、該計測値に対応する炭酸濃度及び目標電気伝導率を取得して、目標電気伝導率を更新する。したがって、給水中の炭酸濃度が時間に応じて変化する場合であっても、給水のpHが目標pHとなるように、アンモニア注入量を適切に調節することができる。これにより、プラント機器の腐食をより確実に抑制することができる。
【0074】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)の方法において、
前記給水のアンモニア濃度と電気伝導率との相関関係に基づいて、前記目標電気伝導率に対応する目標アンモニア濃度を取得するステップ(例えば上述のS208)を備え、
前記調節ステップでは、前記目標アンモニア濃度に基づいて、前記給水へのアンモニア注入量を調節する。
【0075】
給水のアンモニア濃度と電気伝導率とは所定の相関関係を有する。上記(4)の方法によれば、この相関関係に基づいて、目標電気伝導率に対応する目標アンモニア濃度を取得するようにしたので、給水に炭酸が混入している場合であっても、給水のpHが目標pHとなるように、アンモニア注入量を適切に調節することができる。これにより、プラント機器の腐食をより確実に抑制することができる。
【0076】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)の方法において、
前記給水のアンモニア濃度の計測値を取得するアンモニア濃度計測ステップを備え、
前記調節ステップでは、前記アンモニア濃度の計測値と、前記目標アンモニア濃度との偏差に基づき、前記給水へのアンモニア注入量を調節する。
【0077】
上記(5)の方法によれば、上記(4)の方法で取得される目標アンモニア濃度と、給水のアンモニア濃度の計測値との偏差に基づいて、給水へのアンモニア注入量を調節する。したがって、給水に炭酸が混入している場合であっても、給水のpHが目標pHとなるように、アンモニア注入量を適切に調節することができる。これにより、プラント機器の腐食をより確実に抑制することができる。
【0078】
(6)幾つかの実施形態では、上記(4)又は(5)の方法において、
規定時間毎に、前記酸電気伝導率計測ステップ、前記炭酸濃度取得ステップ、及び、前記目標アンモニア濃度を取得するステップを実行して、前記目標アンモニア濃度を更新する目標値更新ステップ(例えば上述のS212)を備え、
前記調節ステップでは、前記目標値更新ステップで更新された前記目標アンモニア濃度に基づいて、前記給水へのアンモニア注入量を調節する。
【0079】
上記(6)の方法によれば、規定時間毎に、酸電気伝導率の計測値を取得して、該計測値に対応する炭酸濃度及び目標アンモニア濃度を取得して、目標アンモニア濃度を更新する。したがって、給水中の炭酸濃度が時間に応じて変化する場合であっても、給水のpHが目標pHとなるように、アンモニア注入量を適切に調節することができる。これにより、プラント機器の腐食をより確実に抑制することができる。
【0080】
(7)本発明の少なくとも一実施形態に係る水質制御装置は、
蒸気タービンプラント(1)の水質制御装置(50)であって、
前記蒸気タービンプラントの給水の酸電気伝導率の計測値を取得するように構成された酸電気伝導率計測部(62)と、
前記給水の炭酸濃度と酸電気伝導率との相関関係に基づいて、前記酸電気伝導率の計測値に対応する炭酸濃度CAを取得するように構成された炭酸濃度取得部(72)と、
前記炭酸濃度CAの炭酸を含む前記給水の電気伝導率とpHとの相関関係に基づいて、前記給水の目標pHに対応する電気伝導率である前記給水の目標電気伝導率を取得するように構成された目標値取得部(74)と、
前記目標電気伝導率又は前記目標電気伝導率から導出される値に基づいて、前記給水へのアンモニア注入量を調節するように構成された調節部(76)と、
を備える。
【0081】
給水における電気伝導率とpHとの相関関係は、給水中の炭酸濃度の影響を受ける。また、給水における炭酸濃度は、大気中の二酸化炭素の給水への溶け込み量に対応し、したがって、プラントの運転状態等によって変化し得る。この点、上記(7)の構成では、給水の酸電気伝導率の計測値に基づいて給水の炭酸濃度を取得し、該炭酸濃度における給水の電気伝導率とpHとの相関関係に基づいて、目標pHに対応する目標電気伝導率を取得する。したがって、給水に炭酸が混入している場合であっても、給水のpHが目標pHとなるように、アンモニア注入量を適切に調節することができる。これにより、プラント機器の腐食をより確実に抑制することができる。
【0082】
(8)本発明の少なくとも一実施形態に係る蒸気タービンプラントは、
蒸気タービン(8)と、
前記蒸気タービンの給水の水質を制御するように構成された上記(7)に記載の水質制御装置(50)と、
を備える。
【0083】
上記(8)の構成によれば、給水の酸電気伝導率の計測値に基づいて給水の炭酸濃度を取得し、該炭酸濃度における給水の電気伝導率とpHとの相関関係に基づいて、目標pHに対応する目標電気伝導率を取得する。したがって、給水に炭酸が混入している場合であっても、給水のpHが目標pHとなるように、アンモニア注入量を適切に調節することができる。これにより、プラント機器の腐食をより確実に抑制することができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0085】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0086】
1 蒸気タービンプラント
2 ボイラ
3 給水ライン
4 給水ポンプ
6 グランド蒸気復水器
8 蒸気タービン
10 高中圧給水ポンプ
12 復水器
13 高圧節炭器
14 高圧ドラム
16 高圧過熱器
18 再熱器
20 中圧節炭器
22 中圧ドラム
24 中圧過熱器
26 低圧節炭器
28 低圧ドラム
30 低圧過熱器
40 薬剤供給部
42 薬剤タンク
44 薬剤ライン
46 薬剤ポンプ
50 水質制御装置
60 計測部
62 酸電気伝導率計測部
64 電気伝導率計測部
66 アンモニア濃度計測部
70 制御部
72 炭酸濃度取得部
74 目標値取得部
76 調節部
78 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7