(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】光走査装置
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20240730BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
G02B27/02 Z
G02B26/10 C
(21)【出願番号】P 2021026244
(22)【出願日】2021-02-22
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 誠
(72)【発明者】
【氏名】高尾 義史
(72)【発明者】
【氏名】中澤 克紀
(72)【発明者】
【氏名】松丸 直也
(72)【発明者】
【氏名】山本 篤
(72)【発明者】
【氏名】ナズィルル アファム イドリス
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-648929(KR,B1)
【文献】米国特許第6002507(US,A)
【文献】中国特許出願公開第109437088(CN,A)
【文献】米国特許第7428995(US,B1)
【文献】特表2006-502421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10
G02B 27/01-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
出射方向を前記基板に対して上向きにして前記基板上に実装された面発光レーザ素子と、
回動ミラーを前記基板に対して上向きにして前記基板上に実装されたMEMS光偏向器と、
前記基板に固定された少なくとも1つの板状支持部材と、
前記基板上の前記面発光レーザ素子及び前記MEMS光偏向器の並び方向としての第1軸方向とより
前記基板上の前記面発光レーザ素子及び前記MEMS光偏向器の並び方向としての第1軸方向に対して垂直でかつ前記基板に対して平行な第2軸方向に延在し、前記第2軸方向の一端部が少なくとも1つの前記板状支持部材に形成された第1支持部に支持され、前記面発光レーザ素子からの出射光を前記第1軸方向に反射する第1ミラーと、
前記第2軸方向の一端部が少なくとも1つの前記板状支持部材に形成された第2支持部に支持され、前記第2軸方向に延在し、前記第1ミラーからの光を前記MEMS光偏向器の前記回動ミラーに向けて反射する第2ミラーと、
を備え、
前記第1支持部及び前記第2支持部のうちの少なくとも一方の支持部は、前記第1ミラーの前記一端部又は前記第2ミラーの前記一端部が挿入されて支持された貫通孔を有し、
前記貫通孔は、前記第2軸方向の軸線を中心線とする回転体の形状を有することを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
請求項1記載の光走査装置において、
前記貫通孔の形状は、円柱、又は前記貫通孔への前記一端部の挿入方向の先に向かってつぼまる円錐台であり、
前記一方の支持部と、前記一方の支持部に支持される前記一端部とは、相互に接着されていることを特徴とする光走査装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の光走査装置において、
前記一方の支持部は前記第2支持部であり、
前記第1支持部は、前記板状支持部材に形成された斜面を有し、
前記第1ミラーの前記一端部は、前記第1ミラーが前記面発光レーザ素子からの入射光を前記第1軸方向に対して平行に反射するように、前記斜面に接着されていることを特徴とする光走査装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の光走査装置において、
前記回動ミラーは、前記第1軸方向に前記第2ミラーに対して前記第1ミラーとは反対側に配置され、前記第2ミラーからの光を、前記基板に対して傾斜する傾斜角で前記第1軸方向に前記第2ミラーとは反対側に反射することを特徴とする光走査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの基板上にレーザ光源とMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)光偏向器とが配備された光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光走査装置では、レーザ光源及びMEMS光偏向器は、小型化のためには、同一基板上に実装することが好ましい。しかしながら、レーザ光源からの光の出射方向及びMEMS光偏向器の回動ミラーが共に基板に対して垂直方向の上向きになってしまい、レーザ素子からの光をMEMS光偏向器の回動ミラーに入射させることが困難になる。
【0003】
このため、従来の光走査装置では、レーザ光源とMEMS光偏向器とは、対向して配置された別々の基板に実装されたり、レーザ光源の出射光を光ファイバでMEMS光偏向器へ導いている(例:特許文献1)。
【0004】
一方、特許文献2は、カメラのファインダに文字情報を表示する光走査装置を開示する。この光走査装置では、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)及びマイクロミラーを同一基板上に配置するとともに、VCSEL及びマイクロミラーの直上にそれぞれ進行方向の向きを90°変更するきミラーが設けられ、VCSELから基板に対して垂直方向の上向きに出射した光をミラーで反射させて同一基板上のマイクロミラーに入射させている。なお、マイクロミラーの直上のミラーはハーフミラーであり、マイクロミラーからの出射光は、ハーフミラーで反射されることなく直進して、外部に出射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-244869号公報
【文献】特開2010-175677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
MEMS光偏向器の回動ミラーの径は小さい。したがって、特許文献2のような光走査装置では、レーザ光源から出射した光をMEMS光偏向器の回動ミラーに正確に入射させるために、基板の上に配設するミラーの向きを製造時に正確に調整する必要がある。しかしながら、特許文献2には、そのような構成についてはなんら言及していない。
【0007】
本発明の目的は、同一基板上にレーザ光源とMEMS光偏向器とを実装して、基板より上方のミラーによりレーザ光源からの出射光を反射してMEMS光偏向器の回動ミラーに入射させる場合に、ミラーの向きを正確に調整可能となる構造を有する光走査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光走査装置は、
基板と、
出射方向を前記基板に対して上向きにして前記基板上に実装された面発光レーザ素子と、
回動ミラーを前記基板に対して上向きにして前記基板上に実装されたMEMS光偏向器と、
前記基板に固定された少なくとも1つの板状支持部材と、
前記基板上の前記面発光レーザ素子及び前記MEMS光偏向器の並び方向としての第1軸方向とより
前記基板上の前記面発光レーザ素子及び前記MEMS光偏向器の並び方向としての第1軸方向に対して垂直でかつ前記基板に対して平行な第2軸方向に延在し、前記第2軸方向の一端部が少なくとも1つの前記板状支持部材に形成された第1支持部に支持され、前記面発光レーザ素子からの出射光を前記第1軸方向に反射する第1ミラーと、
前記第2軸方向の一端部が少なくとも1つの前記板状支持部材に形成された第2支持部に支持され、前記第2軸方向に延在し、前記第1ミラーからの光を前記MEMS光偏向器の前記回動ミラーに向けて反射する第2ミラーと、
を備え、
前記第1支持部及び前記第2支持部のうちの少なくとも一方の支持部は、前記第1ミラーの前記一端部又は前記第2ミラーの前記一端部が挿入されて支持された貫通孔を有し、
前記貫通孔は、前記第2軸方向の軸線を中心線とする回転体の形状を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、支持部材の第1支持部及び第2支持部のうちの少なくとも一方の支持部は、第2軸の軸線を中心とする回転体の形状の貫通孔を有し、第1ミラー又は第2ミラーの一端部は、該貫通孔に挿入されて、支持されている。したがって、第1ミラー及び第2のミラーの少なくとも一方は、製造時に第2軸の軸線の回りに回転角に係る向きを正確に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3A】角度調整用の治具を用いて板状ミラーの位置調整を行っているときの側面図である。
【
図3C】
図3Aにおいて光走査装置を上方から見たときの状態で示す図である。
【
図4A】治具を用いて回転型ミラーの位置調整を行っているときの側面図である。
【
図5】透明部の内面側に補正プリズムを取り付けた構成を示す図である。
【
図6】光走査装置の適用例としての眼鏡型映像表示装置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して、本発明の好適な複数の実施形態を詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されないことは言うまでもない。本発明は、以下の実施形態以外にも、本発明の技術的思想の範囲内で種々の構成態様を包含する。
【0012】
【0013】
光走査装置10は、支持枠体12を備える。支持枠体12は、L字型の横断面輪郭を有し、垂直に結合する底板部13aと起立板部13bとを有する。基板15は、矩形であり、底板部13aの上面に載置され、固定される。
【0014】
説明の便宜上、3軸の直交座標系を定義する。X軸及びY軸は、それぞれ基板15の長手方向(長辺に平行な方向)及び短手方向(短辺に平行な方向)に平行な方向の軸として定義する。Z軸は、基板15からの起立板部13bの起立方向に平行な軸として定義する。
【0015】
光走査装置10では、走査光は、
図1Bの左側、すなわち、X軸方向に光走査装置10の負側の端から出射されるので、X軸において負側及び正側をそれぞれ適宜、光走査装置10の前方及び後方と呼ぶことにする。また、基板15において、Z軸方向の正側及び負側がそれぞれ上面及び下面になるので、Z軸方向の正側及び負側をそれぞれ適宜、光走査装置10の上方及び下方と定義する。
【0016】
VCSEL17及びMEMS光偏向器20は、X軸方向を並び方向にして、基板15の上面に実装される。VCSEL17は、出射部18を上面に有し、出射部18からレーザ光をZ軸方向に平行に上向きに出射する。MEMS光偏向器20は、回動ミラー21のミラー面をZ軸方向の上方に向けている。
【0017】
なお、MEMS光偏向器20は、この実施形態では2次元走査型のMEMS光偏向器であるが、1次元走査型のMEMS光偏向器であってもよい。MEMS光偏向器の構成自体は、種々、知られており、例えば、特開2017-207630号公報(2次元走査型MEMS光偏向器)や特開2014-056020号公報(1次元走査型MEMS光偏向器)に記載されているMEMS光偏向器が選択される。
【0018】
図2は、支持枠体12の側面図である。
図1A-
図1D及び
図2とを参照して、支持枠体12、板状ミラー23及び回転型ミラー25について説明する。
【0019】
支持枠体12の起立板部13bは、傾斜溝30及び貫通孔31を有する。傾斜溝30は、矩形の横断面を有し、起立板部13bの側面輪郭に上方に向かって斜め後方に開口している。傾斜溝30の底面は、基板15に対して45°で傾斜する傾斜面で形成されている。貫通孔31は、起立板部13bをY軸方向に貫通する円柱孔として形成されている。
【0020】
X軸方向において、傾斜溝30の傾斜面(底面)の幅(
図1Bにおける側面視の長さ)の中心は、VCSEL17の出射部18と同一位置に位置する。X軸方向において、貫通孔31の円柱孔の中心線Cは、X軸方向にVCSEL17とMEMS光偏向器20の回動ミラー21との間に位置する。Z軸方向において、傾斜溝30の傾斜面の長さの中心と、貫通孔31の円柱孔の中心線とは、同一位置に、すなわち基板15から同一高さに位置する。
【0021】
板状ミラー23は、矩形の板状の部材から成り、下側の板面をミラー面として、片持ち状態で一端部を傾斜溝30の斜面部に樹脂などの接着部材によって接着される。板状ミラー23の板厚は、傾斜溝30の深さにほぼ等しく設定されている。
【0022】
板状ミラー23の板幅(
図1Bにおける側面視の長さ)は、傾斜溝30の幅(
図1Bにおける側面視の長さ)より少し短くなっている。したがって、傾斜溝30への板状ミラー23の一端部の接着前、すなわち該一端部の固定前の状態では、板状ミラー23は、傾斜溝30内で底面の斜面方向にわずかながら変位可能であるとともに、Y軸に平行な軸線の回りの回転角を変更可能になっている。このような変更は、光走査装置10の製造時において板状ミラー23のミラー面に向きの調整を可能するものである。
【0023】
回転型ミラー25は、平板状のミラー部26と、ミラー部26の一端部に結合して貫通孔31に嵌合する円柱の嵌合端部27とを有する。嵌合端部27の径は、貫通孔31の径よりわずかに小さい。したがって、貫通孔31への嵌合端部27の接着前、すなわち固定前の状態では、回転型ミラー25は、嵌合端部27を貫通孔31に嵌合しつつ、貫通孔31の中心線の回りを回動自在であるとともに、貫通孔31の中心線に対して回転型ミラー25の中心線を一致させた状態から所定の傾斜角範囲で傾斜可能にしている。そのため、板状ミラー23に比べ大きな角度範囲で回転変位可能となっている。このような回動可能及び傾斜可能な構成は、光走査装置10の製造時においてミラー部26のミラー面に向きの調整を可能にする。調整後は嵌合端部27を樹脂等の接着部材で接着させ固定する。
【0024】
MEMS光偏向器20の回動ミラー21は、回転型ミラー25に対して回転型ミラー25の直下の位置ではなく、前側、すなわちX軸方向に回転型ミラー25に対して負側に位置している。この構成は、後述するように、光走査装置10からの光Lpの出射方向を基板15に対して垂直方向ではなく、斜め前方に出射させることに寄与する。この構成は、また、光走査装置10をスマートグラスの映像走査装置として眼鏡本体のつるに装着するときに、光走査装置10からの出射光が、映像装置とユーザの顔面とのわずかの間隙からユーザの顔面に干渉されることなく、眼鏡本体のレンズ内面に到達することを保証する(
図6)。
【0025】
図6は、光走査装置10の適用例としての眼鏡型映像表示装置155を示した図である。眼鏡型映像表示装置155について簡単に説明する。眼鏡型映像表示装置155は、眼鏡本体160と、クリップ170により眼鏡本体160に着脱自在に装着された映像生成装置110とを備える。眼鏡本体160は、左右のつる161a,161bと、左右の両端において左右のつる161a,161bの前端に結合する前枠163とを備える。前枠163は、さらに、左右のレンズ枠部164a,164bと、左右のレンズ枠部164a,164bを連結するブリッジ165とを備える。
【0026】
光走査装置10は、映像生成装置110内に眼鏡本体160のつる161bの延在方向に沿って他の素子(例:MEMSセンサ用バッファアンプ及びLDD(レーザドライバ))と共に一列配置で内蔵されている。なお、この一列配置では、光走査装置10は、最前、すなわち最もレンズ167側に配置されている。こうして、光走査装置10から出射する光Lp(
図2B)は、レンズ67の内面側に照射して走査領域172に映像を生成する。
【0027】
カバー33(
図1B)は、基板15より上の起立板部13bの輪郭に沿って延在し、起立板部13bの上からかぶさって、下端の周縁を底板部13aの周縁に固着される。カバー33は、少なくとも後述の光Lpが走査光となって光走査装置10から出射する部分において透明部34を有する。
【0028】
(補正プリズム)
図5は、透明部34の内面側に補正プリズム54を取り付けた構成を示している。なお、56は、補正プリズム54の無しの場合に、光走査装置10の透明部34から走査光として出射した光Lpが照射先において生成する走査領域を示している。58は、補正プリズム54の有りの場合に、光走査装置10の透明部34から走査光として出射した光Lpが照射先において生成する走査領域を示している。
【0029】
MEMS光偏向器20の回動ミラー21は、X軸の回りとY軸の回りとにそれぞれ共振及び非共振で回動している。この結果、回動ミラー21から出射される光Lpは、2次元走査の走査光となる。なお、共振周波数及び非共振周波数は、例えば、それぞれ14kHz以上及び60Hzである。また、X軸回りの回動ミラー21の往復回動角は、Y軸回りの回動ミラー21の往復回動角より大きい。
【0030】
光走査装置10におけるX軸回りの回動ミラー21の往復回動により、光Lpは、補正前走査領域56又は補正後走査領域58においてSx軸方向に往復走査する。光走査装置10におけるY軸回りの回動ミラー21の往復回動により、光Lpは、補正前走査領域56又は補正後走査領域58においてSy軸方向に往復走査する。
【0031】
補正プリズム54が装備されていないときは、光Lpは、走査先に補正前走査領域56を生成する。補正前走査領域56は、矩形に対して歪んだ形状となる。これに対し、補正前走査領域56が装備されているときは、光Lpは、歪みを矯正した矩形の補正後走査領域58を生成する。補正後走査領域58は、補正前走査領域56の内接矩形に相当する。
【0032】
(作用)
図1Bにおいて、光Lpが引き出されている破線は、光Lpの光路を示している。なお、VCSEL17の出射部18から出射する光Lpは、人の目に害を与えない程度に十分に弱めたレーザ光である。
【0033】
光Lpは、VCSEL17の出射部18から基板15に対して垂直で上向き(Z軸方向の正の向き)に出射する。光Lpは、板状ミラー23に入射すると、板状ミラー23で反射して、向きを、基板15の上面におけるVCSEL17及び出射部18の並び方向としてのX軸に対して平行でかつX軸の負側にし、変更する。そして、X軸に平行に前方(X軸の負側)に進んだ後、回転型ミラー25のミラー部26の斜め下向きのミラー面に入射する。
【0034】
基板15に対するミラー部26の傾斜角は、45°より小さい。したがって、ミラー部26で反射した光Lpは、Z軸方向に平行に、すなわち基板15に対して垂直方向に基板15へ下降することなく、斜め前方に向かって下降し、MEMS光偏向器20の回動ミラー21の中心に入射する。
【0035】
回動ミラー21は、2次元で回動している。したがって、回動ミラー21に入射した光Lpは、2次元走査の走査光となって、回動ミラー21から斜め前方の上方に向かって進む。
【0036】
(製造時のミラーの取付方法)
図3A-
図3D及び
図4A-
図4Bを参照して、光走査装置10の製造時における板状ミラー23及び回転型ミラー25の取付方法について説明する。
【0037】
図3A-
図3Dは、斜面部としての傾斜溝30の底面への板状ミラー23の一端部の取付時の説明図である。
図3Aは、板状ミラー23の角度調整用の治具40を用いて板状ミラー23の位置調整を行っているときの側面図、
図3Bは、
図3Aにおいて治具40を透視して示す図、
図3Cは、
図3Aにおいて光走査装置10を上方から見たときの状態で示す図、
図3Dは、
図3Cにおいて治具40を透視して示す図である。
【0038】
傾斜溝30への板状ミラー23の取付は、板状ミラー23の3軸(X軸、Y軸及びZ軸)方向の角度が適正になるように、すなわち板状ミラー23の向きが適正となるように、作業者がスクリーン44における光スポットSpの位置を見ながら、実施される。
【0039】
光走査装置10は、板状ミラー23の取付前の状態で所定の取付作業装置に搭載される。搭載状態では、支持枠体12は、基板15と共に該取付作業装置に固定される。
【0040】
次に、板状ミラー23の一端部が傾斜溝30に挿入されるとともに、治具40が、板状ミラー23の他端側から板状ミラー23の他端部の下面側、すなわちミラー面側に挿入される。
【0041】
治具40は、斜面41と上面42とを有する。治具40は、斜面41を板状ミラー23のミラー面の他端部に当てられて、Y軸に平行な軸線の回りに他端部を回動するとともに、X軸方向(光走査装置10の前後方向)及びZ軸方向(光走査装置10の高さ方向)に他端部を変位させる。
【0042】
治具40による板状ミラー23の位置調整中、VCSEL17は点灯状態になっている。したがって、光スポットSpがスクリーン44上に生成されるとともに、治具40の動作に伴い、スクリーン44上の光スポットSpの位置は、2次元で移動する。
【0043】
作業者は、スクリーン44上の光スポットSpの位置を見つつ、治具40を操作して、板状ミラー23の一端部を傾斜溝30内で動かす。そして、光スポットSpがスクリーン44上の設定位置となると、治具40を操作して、板状ミラー23をその時の向き(姿勢及び位置)で保持する。
【0044】
次に、作業者は、板状ミラー23をその時の向きに保持しつつ、接着剤の滴を、板状ミラー23の一端部と傾斜溝30との間をまたがるように、複数個所、付着する。これにより、板状ミラー23は、光スポットSpがスクリーン44上の設定位置となった時の向きで傾斜溝30の底壁の傾斜面に固定される。この時、板状ミラー23のミラー面は、VCSEL17の出射部18から出射した光LpをX軸に平行に回転型ミラー25の方へ反射する。
【0045】
すなわち、板状ミラー23は、一端部を傾斜溝30の底壁の傾斜面に当てつつ、任意の向きで静止させて、接着剤の滴を、板状ミラー23の一端部と傾斜溝30との間をまたがるように、複数個所、付着すれば、付着剤の乾燥後は、その任意の向きに固定される。
【0046】
図4A及び
図4Bは、貫通孔31への回転型ミラー25の一端部の取付時の説明図である。
図4Aは、回転型ミラー25の向き調整用の治具47を用いて回転型ミラー25の位置調整を行っているときの側面図、
図4Bは、
図4Aにおいて治具47を透視して示す図である。
【0047】
治具47は、ミラー部26の他端部を把持し、Y軸方向の正側に進んで、嵌合端部27を貫通孔31に嵌合させる。
【0048】
次に、VCSEL17を再点灯させる。MEMS光偏向器20のアクチュエータには駆動電圧が供給されておらず、回動ミラー21は、静止状態であり、回動ミラー21の反射面の法線は、Z軸に対して平行に向いている。スクリーン51は、光走査装置10の斜め前方でかつZ軸方向にMEMS光偏向器20より上方の位置に存在する。回転型ミラー25から出射した光Lpは、スクリーン51に当たって、光スポットSpを生成する。
【0049】
治具47は、回転型ミラー25を貫通孔31の中心線の回りに回動させ、光スポットSpがスクリーン51において設定位置に来るように、該中心線の回りの回転型ミラー25の回動角を調整する。光スポットSpが設定位置に来たら、治具47による回転型ミラー25の回転は、停止する。
【0050】
作業者は、光スポットSpがスクリーン51において設定位置に来た時、回転型ミラー25を動かすのを止めて、傾斜溝30の底面の傾斜面における板状ミラー23の一端部の接着の時と同様に、貫通孔31と嵌合端部27との間をまたがる接着剤の滴を複数個所付着させる。これにより、回転型ミラー25の向きは、MEMS光偏向器20の回動ミラー21から出射する光Lpが適切な方向へ出射することを保証する向きに調整される。
【0051】
(実施形態の効果)
回転型ミラー25の一端部としての嵌合端部27を第2支持部としての起立板部13bの貫通孔31は、貫通孔31の中心線を中心線とする回転体としての円柱孔を有する。この結果、光走査装置10の製造時に、回転型ミラー25の位置決めの1つとしての貫通孔31の中心の回りの回転型ミラー25の回転位置を正確に設定することができる。
【0052】
貫通孔31の形状は、円柱となっている。また、回転型ミラー25の一端部としての嵌合端部27は、接着により貫通孔31に固定されている。接着は、接着部における接着剤の付着位置の調整や付着量の分布を変更可能である。したがって、製造時では、回転型ミラー25のミラー部26を貫通孔31の軸線の回りの回転位置だけでなく、他の種々の位置も調整して、回転型ミラー25の向きを適正化して、起立板部13bに固定することができる。
【0053】
なお、貫通孔31が、貫通孔31への嵌合端部27の挿入方向の先に向かってつぼまる円錐台であるときには、製造時に貫通孔31の中心方向の位置決めを簡単化することができる。
【0054】
光走査装置10によれば、VCSEL17からの基板15に対して垂直に出射してきた光Lpを基板15におけるVCSEL17及びMEMS光偏向器20の並び方向に平行な方向に反射する板状ミラー23の一端部は、傾斜溝30の底部である傾斜面に接着されている。接着は、付着位置及び該付着位置の付着量(隆起量)の調整で傾斜面の傾斜角だけでなく、わずかの範囲ながら板状ミラー23の向きを種々の向きに容易に変更することができる。これにより、板状ミラー23の向きを所望の向きに正確に合わせることができる。
【0055】
MEMS光偏向器20の回動ミラー21は、回転型ミラー25の直下ではなく、X軸方向に回転型ミラー25から離れて配置されているので、走査光としての光Lpを基板15に対して垂直ではなく、斜めに出射することができる。このような出射方向は、光走査装置10をめがねのつるに取り付けてスマートグラスとして利用するときに、ユーザの顔面とめがねのつるとの間の狭い隙間を介して走査光の走査領域をめがねのレンズの内面に形成することができ、有利である。
【0056】
(変形例)
光走査装置10は、VCSEL17を備える。VCSEL17は、面発光レーザ素子の一例である。本発明は、面発光レーザ素子であれば、垂直共振器面発光型レーザ(VCSEL : Vertical Cavity Surface Emitting Laser)以外のレーザ光源を採用することができる。
【0057】
支持枠体12の起立板部13bは、基板15に固定されている板状支持部材の一例である。起立板部13bは、底板部13aを介して基板15に固定されているが、本発明の板状支持部材は、基板に直接固定することもできる。
【0058】
光走査装置10では、第1ミラー及び第2ミラーとしての板状ミラー23及び回転型ミラー25は、第2軸方向としてのY軸方向に一端部は、起立板部13bに支持されているが、他端部は自由端部となっており、片持ち支持の状態で固定されている。本発明の第1ミラー及び第2ミラーは、光走査装置10の完成時には両持ち支持されていてもよい。
【0059】
光走査装置10では、第2支持部としての貫通孔31のみが回転体の形状を有している。本発明では、第1支持部としての底面を有する傾斜溝30も、回転体の形状の貫通孔にしてもよい。また、逆に、第1支持部を回転体形状の貫通孔とし、第2支持部を傾斜面部とすることも可能である。
【0060】
図面では、X軸、Y軸及びZ軸は、それぞれ本発明の第1軸、第2軸及び第3軸に相当するものとして定義しているが、これは、あくまでも、実施形態の光走査装置10の説明の便宜上、そのように定義しただけである。
【0061】
光走査装置10は、スマートグラスにおける映像生成装置として適用されるほか、超小型プロジェクタやインターラクティブプロジェクタにおける映像生成装置としても適用することができる。
【0062】
光走査装置10は、VCSEL17から出射する光Lpの強度を制御して、映像を走査領域に生成することができる。しかしながら、実施例の光走査装置10は、VCSEL17を1つしか装備しないため、モノクロの映像しか生成できない。カラーの映像を生成する場合には、光走査装置10は、3原色に対応する光を出力する計3つのVCSEL17を装備する必要がある。3つの色別のVCSEL17は、MEMS光偏向器20と共にX軸方向に一列に並ぶように基板15上に実装されるとともに、3つのVCSEL17の直上に同一高さで3つの板状ミラー23をX軸方向に一列に配列する。そして、それら3つの板状ミラー23のうち、回転型ミラー25から近い方から1番目と2番目の板状ミラー23は、ハーフミラーとして、2番目と3番目の板状ミラー23から入射してくる光Lpをそのまま直進させて回転型ミラー25の方へ進ませるようにする。
【0063】
なお、上記の実施形態では1枚の起立板部13bに対し回動ミラー21及び板状ミラー23がそれぞれ片持ちに支持されているがこれに限られない。対向する2枚の起立板部13bに対し回動ミラー21および板状ミラー23が両持ちに支持されていてもよいし、回動ミラー21および板状ミラー23がそれぞれ対向する起立板部13bの各々に支持されていてもかまわない。また起立板部13bは独立した板部ではなく光走査装置10の筐体の壁面であってもかまわない。
【符号の説明】
【0064】
10・・・光走査装置、13b、・・・起立板部(板状支持部材)、15・・・基板、17・・・VCSEL(面発光レーザ素子)、20・・・MEMS光偏向器、21・・・回動ミラー、23・・・板状ミラー、25・・・回転型ミラー、26・・・ミラー部、27・・・嵌合端部(一端部)、30・・・傾斜溝(斜面)、31・・・貫通孔。