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特許7529594ごみ焼却灰のセメント原料化方法及びセメント原料化装置
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  • 特許-ごみ焼却灰のセメント原料化方法及びセメント原料化装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ごみ焼却灰のセメント原料化方法及びセメント原料化装置
(51)【国際特許分類】
   C04B 7/38 20060101AFI20240730BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20240730BHJP
   B09B 3/70 20220101ALI20240730BHJP
【FI】
C04B7/38
B09B5/00 N ZAB
B09B3/70
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021036201
(22)【出願日】2021-03-08
(65)【公開番号】P2022136538
(43)【公開日】2022-09-21
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】平前 太基
(72)【発明者】
【氏名】辰巳 慶展
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-089864(JP,A)
【文献】特開2014-193456(JP,A)
【文献】特開2016-159210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
C04B 40/00-40/06
B09B 3/70
B09B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を添加したごみ焼却灰を粗粒子と微粒子を含むスラリーとに遠心分級する工程と、
前記遠心分級した前記微粒子を含むスラリーに含まれる微粒子の最大粒径を1.0mm以下に調整する工程と、
前記遠心分級した前記微粒子を含むスラリーに酸性ガス又は酸を添加する工程と、
前記酸性ガス又は酸を添加した前記微粒子を含むスラリーを固液分離する工程と、
記固液分離により分離した固体と前記遠心分級した前記粗粒子と前記調整する工程において最大粒径が1.0mmを超えた粒子とをセメント原料として利用する工程とを含むことを特徴とするごみ焼却灰のセメント原料化方法。
【請求項2】
前記遠心分級における遠心加速度が50G以上であることを特徴とする請求項1に記載のごみ焼却灰のセメント原料化方法。
【請求項3】
前記酸性ガスとして、セメントキルンの排ガス及び塩素バイパス設備の排ガスの少なくとも何れ一方を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載のごみ焼却灰のセメント原料化方法。
【請求項4】
水を添加したごみ焼却灰を粗粒子と微粒子を含むスラリーとに遠心分級する遠心分級機と、
前記遠心分級機により分級した前記微粒子を含むスラリーに含まれる微粒子の最大粒径を1.0mm以下に調整する副分級機と、
前記遠心分級機により分級した前記微粒子を含むスラリーに酸性ガス又は酸を添加する反応槽と、
前記反応槽から排出された前記微粒子を含むスラリーを固液分離する固液分離装置とを備えることを特徴とするごみ焼却灰のセメント原料化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ごみ焼却灰をセメント原料化する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般廃棄物等の都市ごみなどを焼却した際に発生する残渣であるごみ焼却灰は、最終処理場の枯渇に鑑み、セメント原料として有効に再利用されている。ごみ焼却灰は、塩素を含有しており、この塩素がセメント品質、セメント製造装置の正常運転の妨げとなるため、セメント原料として利用する際には脱塩処理を行っている。
【0003】
例えば特許文献1,2に開示されているように、まず、水を加えたごみ焼却灰を攪拌混合してスラリー化し、このスラリーを粗粒子と微粒子を含有するスラリーとに水篩を用いて分級し、微粒子を含有するスラリーに酸処理を行った後に脱水してケーキを得て、このケーキ及び前記粗粒子をセメント原料として利用している。これは、粗粒子は塩素含有率が低く、微粒子は塩素含有率が高いので、微粒子に対してのみ脱塩するために酸処理を行うからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6274875号公報
【文献】特許第6631293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1,2などに開示されている技術では、水篩を用いて分級した粗粒子は、含水率が高いので、セメント原料として使用した際に発生する熱ロスが大きいという課題がある。また、攪拌混合する際に、粗粒子が粉砕され、塩素含有率が低い微粒子が生じ、全体としての微粒子が増加するので、微粒子の酸処理に必要な設備の大型化、運転コストが増加するという課題がある。
【0006】
本発明は、粗粒子の含水率の低下を図るとともに、塩素含有率の低い微粒子の増加の抑制を図ることが可能な、ごみ焼却灰をセメント原料化する方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のごみ焼却灰のセメント原料化方法は、水を添加したごみ焼却灰を粗粒子と微粒子を含むスラリーとに遠心分級する工程と、前記遠心分級した前記微粒子を含むスラリーに含まれる微粒子の最大粒径を1.0mm以下に調整する工程と、前記遠心分級した前記微粒子を含むスラリーに酸性ガス又は酸を添加する工程と、前記酸性ガス又は酸を添加した前記微粒子を含むスラリーを固液分離する工程と、前記固液分離により分離した固体と前記遠心分級した前記粗粒子と前記調整する工程において最大粒径が1.0mmを超えた粒子とをセメント原料として利用する工程とを含むことを特徴とする
【0008】
本発明のごみ焼却灰のセメント原料化方法によれば、水を添加したごみ焼却灰を粗粒子と微粒子を含むスラリーとに遠心分級している。そのため、従来技術のように水篩を用いて分級する場合と比較して、分級後の粗粒子の含水率を低下させることが可能となる。また、従来技術のように分級する前に水を添加したごみ焼却灰を攪拌混合しないので、分級前に粗粒子が粉砕して微粒子になることを抑制することが可能となる。さらに、遠心分級して分級したスラリーに含まれる最大粒径が1.0mmを超える粗粒子をスラリーから除去して、セメント原料として利用することが可能となる。
【0009】
本発明のごみ焼却灰のセメント原料化方法において、前記遠心分級における遠心加速度が50G以上であることが好ましい。
【0010】
この場合、分級後の粗粒子の含水率をセメント原料添加に適している分級前のごみ焼却灰と同等以下まで低下させることが可能となる。
【0011】
また、本発明のごみ焼却灰のセメント原料化方法において、前記酸性ガスとして、セメントキルンの排ガス及び塩素バイパス設備の排ガスの少なくとも何れか一方を用いることが好ましい。
【0012】
この場合、新たに酸性ガス又は酸を用意する必要がなくなる。
【0015】
本発明のごみ焼却灰のセメント原料化装置は、水を添加したごみ焼却灰を粗粒子と微粒子を含むスラリーとに遠心分級する遠心分級機と、前記遠心分級機により分級した前記微粒子を含むスラリーに含まれる微粒子の最大粒径を1.0mm以下に調整する副分級機と、前記遠心分級機により分級した前記微粒子を含むスラリーに酸性ガス又は酸を添加する反応槽と、前記反応槽から排出された前記微粒子を含むスラリーを固液分離する固液分離装置とを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明のごみ焼却灰のセメント原料化装置によれば、水を添加したごみ焼却灰を粗粒子と微粒子を含むスラリーとに遠心分級機により遠心分級している。そのため、従来技術のように水篩を用いて分級する場合と比較して、分級後の粗粒子の含水率を低下させることが可能となる。また、従来技術のように分級する前に水を添加したごみ焼却灰を攪拌混合しないので、分級前に粗粒子が粉砕して微粒子になることを抑制することが可能となる。さらに、遠心分級して分級したスラリーに含まれる最大粒径が1.0mmを超える粗粒子をスラリーから除去して、セメント原料として利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るごみ焼却灰のセメント原料化装置を示す模式図。
図2】各区分における難溶性塩素量と可溶性塩素量との割合を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係るごみ焼却灰のセメント原料化装置100、及びこれを用いた本発明の実施形態に係るごみ焼却灰のセメント原料化方法について説明する。
【0019】
ごみ焼却灰のセメント原料化装置100は、廃棄プラスチック等の都市ごみなどを焼却した際に発生するごみ焼却灰、特に燃え殻である主灰を脱塩して、セメント原料としてセメントの製造工程で利用するための装置である。ごみ焼却灰のセメント原料化装置100は、図1を参照して、ごみ焼却灰タンク10、遠心分級機20、副分級機30、反応槽40、酸性ガス導入装置50、及び、固液分離装置60などを備えている。
【0020】
ごみ焼却灰タンク10は、ごみ焼却灰Aを貯蔵するタンクである。ごみ焼却灰タンク10からごみ焼却灰Aが水Bと共に遠心分離機20に供給される。
【0021】
なお、ごみ焼却灰Aには、空き缶や針金等の金属類、ガラス類、紙や木片などの未燃物が含まれている場合があるが、これらはごみ焼却灰タンク10にごみ焼却灰Aを供給する前に予め除去しておくことが好ましい。
【0022】
遠心分級機20は、材料中の微粒子及び液体が通過可能な複数の貫通孔が形成された円錐台状または円筒状のスクリーン21と、スクリーン21を回転させる電動モータなどの回転駆動手段22と、スクリーン21の内部へ材料を供給する材料供給部23とを備えている。
【0023】
貫通孔を通過可能な微粒子の最大粒径が0.5mm以上1.2mm以下、より好ましくは0.7mm以上1.0mm以下となるように、貫通孔の大きさを定めることが好ましい。遠心分級機20は、例えば、特許第4100577号公報に開示されている構造であり、市販のものを用いればよい。
【0024】
材料供給部23から材料としてのごみ焼却灰A及び水Bがスクリーン21の内部に供給される。ごみ焼却灰Aに対する水Bの量は、ごみ焼却灰A:水B(重量比)が3:1~1:1であることが好ましい。
【0025】
スクリーン21を回転駆動手段22が高速で回転させることにより、ごみ焼却灰Aと水Bとがスラリー化する。この際の遠心加速度Gは、50G以上1000G以下、より好ましくは200G以上500G以下であることが好ましい。遠心加速度Gが50G未満であると、分級後の粗粒子Dの含水率が分級前のごみ焼却灰Aよりも高くなるおそれがあり、遠心加速度Gが1000Gを超えると、粗粒子Dの粉砕による微粒子の発生量が大きく増加するおそれがあるからである。
【0026】
遠心加速度Gは、スクリーン21の半径r、及びスクリーン21の角速度ωを用いて、以下の式(1)から算出すればよい。
G=rω2 ・・・ (1)
【0027】
例えば、直径が800mm以上1500mm以下の円筒状のスクリーン21を、角速度ωを244回転/秒以上334回転/秒以上として回転させればよい。なお、スクリーン21が円錐台状の場合、円錐台の中央部の直径を有する円筒状のスクリーン21として遠心加速度Gを求めるものとする。
【0028】
遠心分級機20による遠心分級による遠心力により、スラリーのうち、微粒子及び液分、すなわち微粒子を含有するスラリーCが、篩として機能するスクリーン21に形成された貫通孔を通過して、スクリーン21の外に排出され、スクリーン21の内部に粗粒子Dが残る。これにより、ごみ焼却灰A中の微粒子を含有するスラリーCとごみ焼却灰A中の粗粒子Dとが分級される。
【0029】
遠心分級機20のスクリーン21の内部にて水Bが添加されること、及び、スラリー化して遠心分離機20で遠心力を作用して分級されることにより、ごみ焼却灰Aは、微粒子であっても粗粒子であっても、可溶性化物に含まれる塩素の多くは水に溶出する。一方、ごみ焼却灰Aのうち難溶性化合物に含まれる塩素は、微粒子又は粗粒子に残存している。
【0030】
なお、遠心分離機20に供給される前のごみ焼却灰Aを必ずしも粉砕する必要はないが、最大粒径が20mm以上40mm以下、より好ましくは30mm以上40mm以下となるように粉砕してしてもよい。最大粒径が20mm未満となるように粉砕すると、塩素濃度が低い粗粒子が粉砕されて微粒子となり、元来が塩素濃度の高い微粒子に加えて塩素濃度の低い微粒子が追加されることにより、以下に記載する微粒子に対する脱塩処理を多量の微粒子に対して行う必要が生じるので、脱塩効率が悪化するからである。
【0031】
また、同様に、ごみ焼却灰Aに水Bを添加して得られるスラリーに対しても粉砕、及び粉砕を誘発する攪拌などの処理は行わないことが好ましい。
【0032】
なお、副分級機30において、遠心分級機20により分級した微粒子を含有するスラリーCに対して、篩を用いて、最大粒径が1.0mm以上の粗粒子を除去する調整を行ってもよい。この最大粒径は、遠心分級機20で分級されると想定される最大粒径と同じ、又はこれよりも大きな粒径であり、スクリーン21の貫通孔の径と同じ、又はこれより大きな粒径である。この調整により、遠心分級機20で粗粒子Dとして分級されるべきものを粗粒子Dとして分級することができる。
【0033】
粗粒子Dとして分級されたものは脱水機70に供給される。また、遠心分級機20において粗粒子Dが十分に脱水されない場合は、遠心分級機20において分級した粗粒子Dも脱水機70に供給して脱水してもよい。
【0034】
そして、遠心分級機20で分級された、あるいは副分級機30で分級された粗粒子Dを脱水機70により脱水する。脱水した粗粒子Dは、ロータリーキルンのクリンカ焼成工程などのセメント製造工程80に供給され、セメント原料として再利用する。
【0035】
遠心分級機20又はさらには副分級機30で分級された微粒子を含有するスラリーCは、反応槽40に投入される。
【0036】
この反応槽40には、酸性ガス導入装置50により酸性ガスが導入され、pHが調整される。なお、酸性ガスの代わりに酸を導入してもよい。酸は、例えば、二酸化炭素、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸であり、酸性ガスはこれら酸のガスである。pHは、4以上10.5以下、より好ましくは、6以上9以下、さらに好ましくは7.0に調整される。これにより、塩素は溶解除去され、スラリーC中の微粒子の塩素含有率は前述した粗粒子Dと同程度まで低下する。
【0037】
酸性ガスとして、セメントキルンの排ガス及び塩素バイパス設備の排ガスの少なくとも何れか一方を利用することが好ましい。これにより、新たに酸性ガス又は酸を用意する必要がなくなる。
【0038】
pHが調整された微粒子を含有するスラリーCは、固液分離装置60に供給され、固液分離装置60によって脱水される。固液分離装置60は、微粒子を含有するスラリーCを固液分離することが可能なものであればよく、特に限定されないが、例えば、フィルタプレス、加圧ドラムフィルタ、ロールプレス、ベルトフィルタなどである。
【0039】
固液分離装置60によって脱水された固体部(ケーキ)Eは、例えば、ロータリーキルンのクリンカ焼成工程などのセメント製造工程80に供給され、セメント原料として再利用される。なお、固体部Eの固形分は、50重量%以上であることが好ましく、60質量% 以上であることがより好ましい。固形分が50重量%未満であると、溶出させた塩素の分離が不十分となり、セメント原料に含有される塩素量が十分に低減できないおそれがあるからである。
【0040】
一方、脱水された水(液体)Fには塩素が高濃度で含有されており、排出処理槽90において処理する。
【0041】
以上説明したように、本発明の実施形態に係るごみ焼却灰のセメント原料化装置100及びこれを用いたごみ焼却灰のセメント原料化方法によれば、水Bを添加したごみ焼却灰Aを粗粒子Dと微粒子を含むスラリーCとに遠心分級機20により遠心分級している。そのため、従来技術のように水篩を用いて分級する場合と比較して、分級後の粗粒子Dの含水率を低下させることが可能となる。また、従来技術のように分級する前に水Bを添加したごみ焼却灰Aを攪拌混合しないので、分級前に粗粒子Dが粉砕して微粒子になることを抑制することが可能となる。
【0042】
なお、本発明は、上述した実施形態に具体的に記載した塩素バイパスシステム100に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内であれば適宜変更することができる。
【実施例
【0043】
(予備試験)
1000gのごみ焼却灰を、篩を用いて、粒径が2.0mm以上、1.0mm以上2.0mm未満、1.0mm未満の3区分に分級した。そして、区分毎に乾燥させた後、蛍光X線分析(XRF)装置(リガク社製のZSX Primus II)を用いて塩素濃度を分析した。この塩素濃度から全体塩素量を求めた。なお、蛍光X線分析装置は、ファンダメンタルパラメータ(FP)法を用いて定量している。
【0044】
さらに、その後、各区分のごみ焼却灰にごみ焼却灰の4倍の重量の水を添加して、撹拌機(IKA社製のRW 20 デジタル)を用いて400rpmで攪拌した後、ブフナーロート(レオナ社製のブフナーロート磁性)を用いて脱水した。脱水後の各区分のごみ焼却灰を、乾燥機(いすゞ製作所社製の熱風循環式乾燥機 そよかぜ)を用いて105℃で12時間以上乾燥した後、蛍光X線分析装置を用いて塩素濃度を分析した。この塩素濃度から難溶性塩素濃度を求めた。そして、全体塩素量から難溶性塩素量を除去してものを、可溶性塩素量とした。
【0045】
3区分の合計した全体塩素量を100としたときの、各区分の難溶性塩素量及び可溶性塩素量の割合を図2のグラフに示した。
【0046】
図2から分かるように、ごみ焼却灰中の塩素、特に難溶性塩素は粒径が1.0mm未満の区分に多く偏在している。そのため、粒径が1.0mm以下の微粒子を回収し、難溶性塩を除去することにより、脱塩処理に使用する薬品量の減少を図ることができるとともに、脱塩処理設備の小型化を図ることが可能となることが分かる。
【0047】
(本試験)
実施例1~7においては、円錐台状のスクリーン21に直径0.7mmの貫通孔が多数形成されている遠心分級機20(コトブキ技研工業社製のウィットマン)を用意した。この遠心分級機20に8t/hのごみ焼却灰Aと共にごみ焼却灰Aの0.6倍の重量の水を投入した。そして、実施例1~7のそれぞれにおいて、遠心分級機20を、遠心加速度を25G、50G、100G、200G,300G,350G,400Gとして運転した。これにより、スクリーン21を通過した微粒子を含有するスラリーCと、スクリーン21を通過しなかった粗粒子Dとに分級した。なお、スクリーン21の半径rは400mmであり、スクリーン21の貫通孔の直径は0.7mmであった。
【0048】
分級された微粒子を含有するスラリーCは反応槽40にて二酸化炭素ガスにて曝気され、pHが7.0になるように調整された。pH調整後の微粒子を含有するスラリーCを回収し、固液分離装置60であるブフナーロート(レオナ社製のブフナーロート磁性)を用いて脱水して、ケーキEを得た。
【0049】
そして、粗粒子DとケーキEとをそれぞれ乾燥機内にいれて、105℃で12時間乾燥した。そして、乾燥後の粗粒子Dとケーキ(微粒子)Eとの含水率をそれぞれ測定した。測定結果を表1に示す。また、乾燥後の粗粒子Dの塩素濃度を、蛍光X線分析装置を用いて分析した。分析結果を表1に示す。
【0050】
さらに、比較対象として、直径0.7mmの貫通孔が多数形成されている篩を用いて、1000gのごみ焼却灰Aを分級した。そして、この篩を通過した微粒子に対する、実施例1~7のそれぞれにおける乾燥後の微粒子Eの増加率も表1に示す。
【0051】
比較例1においては、撹拌機(IKA社製のRW 20 デジタル)に1000gのごみ焼却灰Aと共にごみ焼却灰Aの0.6倍の重量の水Bを投入した。そして、攪拌機の攪拌翼を400rpmで30分間攪拌させた。攪拌完了後、水を散水しつつ、直径0.7mmの貫通孔が多数形成されている篩を用いて分級を行った。これにより、篩の貫通孔を通過した微粒子を含有するスラリーと、スクリーンを通過しなかった粗粒子とに分級した。
【0052】
そして、分級された微粒子を含有するスラリーは、実施例1~7と同様に、pH調整、脱水、乾燥された。そして、乾燥後の粗粒子と微粒子との含水率を測定した。測定結果を表1に示した。また、乾燥後の粗粒子の塩素濃度を、蛍光X線分析装置を用いて分析し、結果を表1に示した。さらに、比較対象に対する乾燥後の微粒子の増加率も表1に示す。
【0053】
比較例2においては、攪拌を行わなかったこと以外は、比較例1と同様であった。結果は表1に示す。
【0054】
表1から分かるように、遠心分級20を用いて分級された実施例1~7に係る粗粒子Dは、散水しつつ篩を用いて分級された粗粒子と比較して、含水率が低下していることが分かる。特に実施例2~7に係る粗粒子Dの含水率は、分級前のごみ焼却灰Aの含水率と同等以下となっており、セメント原料として使用するに好ましい含水率まで低下していることが分かる。これは、遠心分級機20の遠心力により水分がスクリーン21の貫通孔を排出され、粗粉子Dに付着する水分が低下したからであると推定される。
【0055】
遠心分級機20を用いて分級した実施例1~7は、攪拌した後に散水しつつ篩を用いて分級した比較例1と比較して、微粉子の増加率は小さいので、粗粒子Dの割合が大きく、その一方、粗粉子Dの塩素濃度は同程度である。これより、実施例1~7においては、pH調整、脱水、乾燥などの処理が必要な微粒子の割合が減少するとともに、セメント原料として使用される粗粒子Dに含有される塩素濃度は高くない。
【0056】
攪拌せずに散水しつつ篩を用いて分級した比較例2は、遠心分級機20を用いて分級した実施例1~7と比較して、微粉子の増加率は小さいが、粗粉子の塩素濃度は大きくなっている。これより、比較例2においては、セメント原料として使用される粗粒子に含有される塩素濃度が高くなり、好ましくない。
【0057】
【表1】
【符号の説明】
【0058】
10…ごみ焼却灰タンク、 20…遠心分級機、 21…スクリーン、 22…回転駆動手段、 23…材料供給部、 30…副分級機、 40…反応槽、 50…酸性ガス導入装置、 60…固液分離装置、 70…脱水機、 80…セメント製造工程、 90…排出処理槽、 100…ごみ焼却灰のセメント原料化装置、 A…ごみ焼却灰、 B…水、 C…微粒子を含有するスラリー、 D…粗粒子、 E…固体部(ケーキ)、微粒子、 F…水。
図1
図2