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特許7529596鋼管コンクリート柱と鉄骨梁の接合構造及びその構築方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】鋼管コンクリート柱と鉄骨梁の接合構造及びその構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20240730BHJP
   E04B 1/30 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
E04B1/58 505Q
E04B1/58 503M
E04B1/30 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021039248
(22)【出願日】2021-03-11
(65)【公開番号】P2022139039
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-07-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591205536
【氏名又は名称】JFEシビル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】入江 千鶴
(72)【発明者】
【氏名】川田 侑子
(72)【発明者】
【氏名】宮川 和明
(72)【発明者】
【氏名】田村 淳一
(72)【発明者】
【氏名】村上 行夫
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第209874076(CN,U)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0061840(KR,A)
【文献】特開2015-117486(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1518622(KR,B1)
【文献】特開平08-027894(JP,A)
【文献】中国実用新案第209179323(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第102661002(CN,A)
【文献】中国実用新案第205088797(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第107338872(CN,A)
【文献】中国実用新案第201447778(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第104120797(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0074130(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第111733986(CN,A)
【文献】特開2017-061820(JP,A)
【文献】特開2002-227302(JP,A)
【文献】特開2012-136838(JP,A)
【文献】特開平04-277236(JP,A)
【文献】特開平10-331263(JP,A)
【文献】特開2001-279865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/30
E04B 1/58
E04C 3/293
E04C 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管コンクリート柱と鉄骨梁を柱梁接合部で接合する構造であって、
前記鋼管コンクリート柱は、
上下方向に延在して配置した内側鋼管と、
前記内側鋼管の外側に同軸に配置した外側鋼管と、
前記内側鋼管の外側と前記外側鋼管の内側とで囲まれた環状空間に充填した第1コンクリートと、を備え、
前記柱梁接合部は、
前記内側鋼管の上部であり、外周にダイヤフラムを設けた接合用鋼管と、
前記ダイヤフラムを介して前記鉄骨梁を接合する複数の仕口と、
前記複数の仕口に接続されて前記接合用鋼管の外周を囲む複数の外套部材と、
前記接合用鋼管の外側と前記複数の外套部材の内側とで囲まれ、前記環状空間に連通している外周空間と、を備え、
前記外周空間に、前記環状空間と同一の前記第1コンクリートが充填されていることを特徴とする鋼管コンクリート柱と鉄骨梁の接合構造。
【請求項2】
鋼管コンクリート柱と鉄骨梁を柱梁接合部で接合する構造であって、
前記鋼管コンクリート柱は、
上下方向に延在して配置した内側鋼管と、
前記内側鋼管の外側に同軸に配置した外側鋼管と、
前記内側鋼管の外側と前記外側鋼管の内側とで囲まれた環状空間に充填した第1コンクリートと、を備え、
前記柱梁接合部は、
前記内側鋼管の上部であり、外周にダイヤフラムを設けた接合用鋼管と、
前記ダイヤフラムを介して前記鉄骨梁を接合する複数の仕口と、
前記複数の仕口に接続されて前記接合用鋼管の外周を囲む複数の外套部材と、
前記接合用鋼管の外側と前記複数の外套部材の内側とで囲まれた外周空間に充填した前記第1コンクリートと、を備えており、
前記鋼管コンクリート柱は、前記内側鋼管の内部空間に充填した第2コンクリートを備えており、
前記柱梁接合部は、前記接合用鋼管の内部空間に充填した前記第2コンクリートを備えていることを特徴とする鋼管コンクリート柱と鉄骨梁の接合構造。
【請求項3】
前記外側鋼管は、周方向に2つ以上に分割された複数の分割体で構成され、前記複数の分割体を互いに接合することで構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の鋼管コンクリート柱と鉄骨梁の接合構造。
【請求項4】
前記鉄骨梁の上部に床板コンクリートが敷設されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の鋼管コンクリート柱と鉄骨梁の接合構造。
【請求項5】
前記鋼管コンクリート柱の前記第1コンクリートの内部に、柱補強筋が上下方向に延在して埋設されており、
前記柱梁接合部の前記第1コンクリートの内部に、柱梁接合補強筋が上下方向に延在して埋設されており、
前記柱補強筋及び前記柱梁接合補強筋は、上下方向に延在する同一の鉄筋であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の鋼管コンクリート柱と鉄骨梁の接合構造。
【請求項6】
鋼管コンクリート柱と鉄骨梁を柱梁接合部で接合する構造の構築方法であって、
前記鋼管コンクリート柱は、内側鋼管と、前記内側鋼管より内径が大きく、周方向に2つ以上に分割された複数の分割体で構成されている外側鋼管と、を備え、
前記柱梁接合部は、前記内側鋼管の上部であり、外周にダイヤフラムを設けた接合用鋼管と、前記ダイヤフラムを介して前記鉄骨梁を接合する複数の仕口と、前記複数の仕口に接続されて前記接合用鋼管の外周を囲むことが可能な複数の外套部材と、を備えており、
基礎コンクリート上に前記内側鋼管を立設する工程と、
前記内側鋼管の外側に前記複数の分割体を配置して互いを接合することで外側鋼管を配置する工程と、
前記接合用鋼管の外側と前記複数の外套部材の内側とで囲まれた外周空間が、前記内側鋼管の外側と前記外側鋼管の内側とで囲まれた環状空間に連通するように、前記複数の外套部材を前記複数の仕口に接続する工程と、
互いに連通した前記環状空間及び前記外周空間に第1コンクリートを充填する工程と、を備えていることを特徴とする鋼管コンクリート柱と鉄骨梁の接合構造の構築方法。
【請求項7】
鋼管コンクリート柱と鉄骨梁を柱梁接合部で接合する構造の構築方法であって、
前記鋼管コンクリート柱は、内側鋼管と、前記内側鋼管より内径が大きく、周方向に2つ以上に分割された複数の分割体で構成されている外側鋼管と、を備え、
前記柱梁接合部は、前記内側鋼管の上部であり、外周にダイヤフラムを設けた接合用鋼管と、前記ダイヤフラムを介して前記鉄骨梁を接合する複数の仕口と、を備えており、
基礎コンクリート上に前記内側鋼管を立設する工程と、
前記内側鋼管の外側に前記複数の分割体を配置して互いを接合することで外側鋼管を配置する工程と、
前記内側鋼管の外側と前記外側鋼管の内側とで囲まれた環状空間に連通する前記接合用鋼管の外周空間にループ状に延在する接合補強筋を配置する工程と、
互いに連通した前記環状空間及び前記外周空間に第1コンクリートを充填する工程と、を備えていることを特徴とする鋼管コンクリート柱と鉄骨梁の接合構造の構築方法。
【請求項8】
前記環状空間及び前記外周空間に上下方向に延在する柱補強筋を配置する工程を備えていることを特徴とする請求項6又は7に記載の鋼管コンクリート柱と鉄骨梁の接合構造の構築方法。
【請求項9】
前記外周空間に上下方向に延在する柱梁接合補強筋を配置する工程を備えていることを特徴とする請求項6又は7に記載の鋼管コンクリート柱と鉄骨梁の接合構造の構築方法。
【請求項10】
前記内側鋼管及び前記接合用鋼管の内部空間に第2コンクリートを充填する工程を備えていることを特徴とする請求項6から9の何れか1項に記載の鋼管コンクリート柱と鉄骨梁の接合構造の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管コンクリート柱と鉄骨梁の接合構造及びその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築構造物の躯体に鋼材とコンクリートを使用する建築工法が広く行われており、鉄骨鉄筋コンクリート柱及び鉄骨梁の接合構造は、建築構造物の強度を大きく左右する大きな要因であり、その接合構造には様々な工夫がなされている(例えば、特許文献1)。
特許文献1の柱梁接合構造は、SRC柱と鉄骨梁の接合構造である。SRC柱は、H型鋼の周囲に鉄筋を配筋し、H型鋼及び鉄筋の周囲にコンクリートを打設した構造であり、RC柱(鉄筋コンクリート柱)と鉄骨梁の接合構造と比較して、軸耐力性及び耐震性が向上するとともに、SRC柱と鉄骨梁との間の応力の伝達を円滑に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許6447777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載のSRC柱と鉄骨梁の接合構造は、配筋作業、型枠作業に多くの人力を必要とし、作業時間も長くなるので、工期短縮、施工性の向上の面で問題がある。
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、工期短縮、施工性を向上することができる鋼管コンクリート柱と鉄骨梁の接合構造の構築方法を提供することにある。また、外側鋼管の拘束効果によりコンクリートの圧縮強度が上昇することで軸耐力及び耐震性が向上する鋼管コンクリート柱を提供し、鋼管コンクリート柱と鉄骨梁との間の応力の伝達を円滑に行うことができる接合構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る鋼管コンクリート柱と鉄骨梁の接合構造は、鋼管コンクリート柱と鉄骨梁を柱梁接合部で接合する構造であって、鋼管コンクリート柱は、上下方向に延在して配置した内側鋼管と、内側鋼管の外側に同軸に配置した外側鋼管と、内側鋼管の外側と外側鋼管の内側とで囲まれた環状空間に充填した第1コンクリートと、を備えている。柱梁接合部は、内側鋼管の上部であり、外周にダイヤフラムを設けた接合用鋼管と、ダイヤフラムを介して鉄骨梁を接合する複数の仕口と、複数の仕口に接続されて接合用鋼管の外周を囲む複数の外套部材と、接合用鋼管の外側と複数の外套部材の内側とで囲まれた外套側空間に充填した接合用第1コンクリートと、を備えている。
【0006】
さらに、本発明に係る鋼管コンクリート柱と鉄骨梁の接合構造の構築方法は、鋼管コンクリート柱と鉄骨梁を柱梁接合部で接合する構造の構築方法であって、鋼管コンクリート柱は、内側鋼管と、内側鋼管より内径が大きく、周方向に2つ以上に分割された複数の分割体で構成されている外側鋼管と、を備えている。柱梁接合部は、内側鋼管の上部であり、外周にダイヤフラムを設けた接合用鋼管と、ダイヤフラムを介して鉄骨梁を接合する複数の仕口と、複数の仕口に接続されて接合用鋼管の外周を囲むことが可能な複数の外套部材と、を備えている。そして、基礎コンクリート上に内側鋼管を立設する工程と、内側鋼管の外側に複数の分割体を配置して互いを接合することで外側鋼管を配置する工程と、接合用鋼管の外側と複数の外套部材の内側とで囲まれた外周空間が、内側鋼管の外側と外側鋼管の内側とで囲まれた環状空間に連通するように、複数の外套部材を複数の仕口に接続する工程と、互いに連通した環状空間及び外周空間に第1コンクリートを充填する工程と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る鋼管コンクリート柱と鉄骨梁の接合構造によると、軸耐力性及び耐震性を向上させることができる。
また、鋼管コンクリート柱と鉄骨梁の接合構造の構築方法によると、軸耐力性及び耐震性を向上させながら、工期短縮、施工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る第1実施形態の鋼管コンクリート柱と梁の接合構造を示す図である。
図2】第1実施形態において鋼管コンクリート柱を構成する外側鋼管を示す図である。
図3】第1実施形態の柱梁接合部を構成する接合用鋼管及び仕口を示す図である。
図4】第1実施形態の柱梁接合部を示す図である。
図5】第1実施形態の鋼管コンクリート柱と梁の接合構造の構築方法を示す図である。
図6】本発明に係る第2実施形態の鋼管コンクリート柱と梁の接合構造を示す図である。
図7】本発明に係る第3実施形態の鋼管コンクリート柱と梁の接合構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0010】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
[第1実施形態の柱と梁の接合構造]
図1は、本発明に係る第1実施形態の柱と梁の接合構造を示すものであり、1階の基礎コンクリート1から鋼管コンクリート柱2(以下、SC柱2と称する)が立ち上がり、SC柱2の最上部に設けた柱梁接合部3を介して鉄骨梁4が水平方向に延在して接合されている。
【0012】
SC柱2は、基礎コンクリート1から垂直に立ち上がる四角鋼管で構成した内側鋼管5と、内側鋼管5の外側に同軸に配置された円形鋼管で構成した外側鋼管6と、内側鋼管5の外側及び外側鋼管6の内側で囲まれた空間に充填された第1コンクリート7と、内側鋼管5の内部空間に充填された第2コンクリート8と、を備えている。
内側鋼管5の下端開口はアンカープレートAPで閉塞されており、基礎コンクリート1の内部から立ち上がるアンカーボルト9が、アンカープレートAPに貫通して固定されている。また、基礎コンクリート1上には、床面を形成する床板コンクリート10が敷設されている。なお、この例はアンカーボルトがアンカープレートに貫通して固定されている形式を前提としているが、これに限定されるものではなく、埋込柱脚などの他の柱脚構造でも適用できるものである。
【0013】
外側鋼管6は、図2に示すように、円形鋼管の周方向を半割した2つの分割体6a,6bで構成されており、各分割体6a,6bの周方向両縁部には長手方向に延在するフランジ6a1,6a2,6b1,6b2が形成されている。そして、互いに当接したフランジ6a1,6b1及び6a2,6b2が溶接、或いはボルト接合されることで外側鋼管6が形成される。
【0014】
柱梁接合部3は、図3に示すように、SC柱2の内側鋼管5の上部であり、外周に上下方向に離間して2枚の四角枠状のダイヤフラム12a,12bが溶接されている接合用鋼管11と、フランジ13a,13bがダイヤフラム12a,12bに溶接され、ウェブ13cが接合用鋼管11に溶接されて水平方向の互いに直交する四方に延在するH型鋼からなる4箇所の仕口13と、を備えている。また、図4に示すように、ダイヤフラム12a,12bの間の接合用鋼管11の外周を囲むように水平方向に隣接する仕口13,13の間に、円弧状金属板からなる外套部材14が溶接されている。4枚の外套部材14は、4箇所の仕口13の間に外側鋼管6と略同一の直径で配置されている。図1に示すように、接合用鋼管11の内部空間は、内側鋼管5の内部空間に連通して第2コンクリート8が充填されており、接合用鋼管11の外側と4枚の外套部材14の内側で囲まれた空間は、内側鋼管5の外側及び外側鋼管6の内側で囲まれた空間に連通して第1コンクリート7が充填されている。
【0015】
そして、図1に示すように、柱梁接合部3の仕口13に、H型鋼からなる鉄骨梁4がボルト接合で連結される。
また、鉄骨梁4上に2階の床として床板コンクリート10が敷設され、柱梁接合部3の接合用鋼管11の上端に内側鋼管5の下端が溶接されている。そして、この内側鋼管5を2階のSC柱2の構成部材として、1階のSC柱2と同一構造の柱が形成されている。
ここで、図1の符号Aで示す1階のSC柱2を構成する外側鋼管6の下端と、1階の床板コンクリート10との間には所定の隙間が設けられている。また、図1の符号Bで示す外側鋼管6の上端と、柱梁接合部3の仕口13に溶接した外套部材14との間にも所定の隙間が設けられている。さらに、図1の符号Cで示す2階のSC柱2を構成する外側鋼管6の下端と、2階の床板コンクリート10との間にも所定の隙間が設けられている。このように外側鋼管6の下端と1階及び2階の床板コンクリート10との間に隙間を設け、外側鋼管6の上端と柱梁接合部3の外套部材14との間に隙間を設けることで、外側鋼管6には曲げモーメント及び軸力が作用しないため、外側鋼管の板厚を過剰にする必要は無く、経済的になる。
【0016】
次に、第1実施形態の効果について説明する。
第1実施形態のSC柱2は、内側鋼管5と外側鋼管6の間に第1コンクリート7を充填したことで軸方向の圧縮強度が高くなり、従来の鉄骨鉄筋コンクリート柱(SRC柱)と比較して軸耐力が向上した柱構造とすることができる。
また、SC柱2は、内側鋼管5の内部に第2コンクリート8を充填したことで軸方向の圧縮強度がさらに高まり、第2コンクリート8の充填により内側鋼管5の面外変形が拘束され、座屈耐力が向上した柱構造とすることができる。
さらに、SC柱2は、内側鋼管5の内部に第2コンクリート8を充填し、内側鋼管5と外側鋼管6の間に第1コンクリート7を充填したことで、地震時に繰り返し荷重が加わっても、地震時の応力を負担しながら、靭性的な挙動を示すので、耐震性に優れた柱構造とすることができる。
【0017】
一方、第1実施形態のSC柱2と鉄骨梁4を接合する柱梁接合部3は、接合用鋼管11と接合用鋼管11の外周を囲っている4枚の外套部材14との間に第1コンクリート7が充填されていることで、軸耐力が向上した柱梁接合構造となる。また、柱梁接合部3は、接合用鋼管11の内部に第2コンクリート8を充填したことで接合用鋼管11の面外変形が拘束され、座屈耐力が向上した柱梁接合構造となる。
したがって、第1実施形態の柱梁接合部3は、SC柱2と鉄骨梁4との間の応力の伝達を円滑に行うことができる。
ここで、本発明に記載している外套側空間が、接合用鋼管11の外側と4枚の外套部材14の内側で囲まれた空間に対応している。また、本発明に記載している接合用第2コンクリートが、第2コンクリート8に対応している。
【0018】
[第1実施形態の柱と梁の接合構造の構築方法]
次に、第1実施形態のSC柱2、柱梁接合部3及び鉄骨梁4を備えた構造物の構築方法について、図5(a)~(e)を参照して説明する。
先ず、図5(a)に示すように、1階の内側鋼管5Aの下端のアンカープレートAPを、基礎コンクリート1から立ち上がるアンカーボルト9に貫通した状態で固定し、基礎コンクリート1上に内側鋼管5を立設する。なお、内側鋼管5の上部は、柱梁接合部3の接合用鋼管11とされており、接合用鋼管11には、予め工場においてダイヤフラム12a,12bを介して仕口13が接合されている。そして、柱梁接合部3の仕口13に鉄骨梁4をボルト接合で連結した後に、接合用鋼管11の上端と2階の内側鋼管5の下端を溶接する。また、なお、基礎コンクリート1上には床板コンクリート10を敷設しておく。
【0019】
次いで、図5(b)に示すように、1階の内側鋼管5の側面に設けたコンクリート注入孔(不図示)からコンクリートを注入していく。1階の内側鋼管5の内部空間の全域にコンクリートが充填されると、1階の内側鋼管5に内部空間が連通している接合用鋼管11の内部空間にコンクリートが充填されていく。また、接合用鋼管11の内部空間の全域にコンクリートが充填されると、接合用鋼管11に内部空間が連通している2階の内側鋼管5の内部空間にコンクリートが充填されていく。これにより、1階の内側鋼管5、接合用鋼管11及び2階の内側鋼管5の全ての内部空間に第2コンクリート8が充填される。
【0020】
次いで、図5(c)に示すように、1階の内側鋼管5の外側に外側鋼管6を同軸に配置する。外側鋼管6を配置する際は、2つの分割体6a,6bを内側鋼管5の外側に配置し、互いに当接したフランジ6a1,6b1及び6a2,6b2を溶接、或いはボルト接合する。また、柱梁接合部3の水平方向に隣接する仕口13,13の間に、4枚の外套部材14を溶接する。柱梁接合部3の仕口13に溶接した4枚の外套部材14は、1階の外側鋼管6と略同一の直径で配置され、1階の外側鋼管6と内側鋼管5の間の空間と、柱梁接合部3の接合用鋼管11と4枚の外套部材14の間の空間が連通する。ここで、外側鋼管6の下端と1階の床板コンクリート10との間に隙間形成用環状部材(不図示)を配置し、外側鋼管6の上端と柱梁接合部3に溶接した4枚の外套部材14の下端との間に隙間形成用環状部材(不図示)を配置する。
【0021】
次いで、図5(d)に示すように、1階の外側鋼管6の側面に設けたコンクリート注入孔(不図示)からコンクリートを注入していく。1階の外側鋼管6と内側鋼管5の間の内部空間の全域にコンクリートが充填されると、柱梁接合部3の接合用鋼管11と4枚の外套部材14の間の空間にコンクリートが充填されていく。これにより、1階の外側鋼管6と内側鋼管5の間の空間と、柱梁接合部3の接合用鋼管11と4枚の外套部材14の間の空間に第1コンクリート7が充填される。また、鉄骨梁4上に2階の床として床板コンクリート10を敷設する。そして、第1コンクリート7が固化した時点で、外側鋼管6の下端と1階の床板コンクリート10との間に配置していた環状の隙間形成用環状部材と、外側鋼管6の上端と柱梁接合部3の外套部材14の下端との間に配置していた隙間形成用環状部材とを取り外す。このように隙間形成用循環部材を外したことで、外側鋼管6の下端と1階及び2階の床板コンクリート10との間に隙間が設けられ、外側鋼管6の上端と柱梁接合部3の外套部材14との間に隙間が設けられることで、外側鋼管6に曲げモーメント及び軸力が作用しないようにするため、板厚を過剰にする必要は無く、経済的になる。なお、コンクリートを注入する例を示したが、これに限定されるものではなく、落とし込みなどでコンクリートを充填する方法もある。
【0022】
次いで、図5(e)に示すように、2階の内側鋼管5の外側に外側鋼管6を同軸に配置し、2階の外側鋼管6と内側鋼管5の間の空間に第1コンクリート7を充填していく作業行うことで、2階のSC柱2を構築されていく。なお、1階ごとに施工する方法を示したが、それに限定されず、複数層まとめて落とし込みする方法もあるものとする。
このように、2階以上の上層階も、図5(a)~図5(e)の工程を繰り返し行うことで、SC柱2、柱梁接合部3及び鉄骨梁4を備えた構造物が構築されていく。
【0023】
次に、図5(a)~図5(e)で示した第1実施形態の構築方法の効果について説明する。
本実施形態の構築方法は、外側鋼管6が配筋と型枠の役割をするので、大幅な工期短縮を図ることができ、施工性を向上させることができる。
また、SC柱2の内側鋼管5と柱梁接合部3の接合用鋼管11とは内部空間同士が連通しており、一度のコンクリート注入作業で内側鋼管5及び接合用鋼管11に第1コンクリート7が同時に充填される。また、SC柱2の内側鋼管5と外側鋼管6の間の空間と、柱梁接合部3の接合用鋼管11の外周を仕口13及び外套部材14で囲んだ空間も互いに連通しており、一度のコンクリート注入作業で、内側鋼管5及び外側鋼管6の間と、接合用鋼管11、仕口13及び外套部材14の間に第1コンクリート7が同時に充填される。このように、本実施形態の構築方法は、コンクリートの充填作業を短時間で効率良く行うことができるので、さらに施工性を向上させることができる。
【0024】
[第2実施形態の柱と梁の接合構造]
次に、図6は、本発明に係る第2実施形態の柱と梁の接合構造を示すものである。図1から図5で示した第1実施形態と同一構成部分には、同一符号を付して説明は省略する。
本実施形態は、図6に示すように、1階のSC柱2の内側鋼管5と外側鋼管6の間の空間と、柱梁接合部3の接合用鋼管11と4枚の外套部材14との間の空間と、2階のSC柱2の内側鋼管5と外側鋼管6の間の空間とに連続して上下方向に延在し、第1コンクリート7に埋設された直線状の柱補強筋15が配置されている。
【0025】
この柱補強筋15は、第1コンクリート7の内部の周方向に所定間隔をあけた状態で複数本配置されており、基礎コンクリート1から立ち上がる分割柱筋15aと、この分割柱筋15aに溶接されて上方に延在する分割柱筋15bと、この分割柱筋15bに溶接されて柱梁接合部3まで延在する分割柱筋15cと、この分割柱筋15cに溶接されて2階のSC柱2の内側鋼管5と外側鋼管6の間に延在する分割柱筋15dとを備えている。なお、溶接接合の例を示したが、これに限定するものではなく、機械式継ぎ手、重ね継ぎ手も想定するものとする。
【0026】
第2実施形態のSC柱2は、内側鋼管5と外側鋼管6の間に充填された第1コンクリート7に柱補強筋15が埋設されていることで、曲げモーメントが作用した際に柱補強筋15の引張り抵抗力が作用するので、曲げ耐力を向上させることができる。
また、柱梁接合部3も、接合用鋼管11と接合用鋼管11の外周を囲っている4枚の外套部材14との間に充填された第1コンクリート7に柱補強筋15が埋設されていることで曲げ耐力が向上する。
【0027】
したがって、第2実施形態の柱梁接合部3も、SC柱2と鉄骨梁4との間の応力の伝達を円滑に行うことができる。
なお、第2実施形態の柱と梁の接合構造の変形例として、図6で示した分割柱筋15bを削除して、柱梁接合部3の曲げモーメントを分割鉄筋15cで負担する構造としてもよい。
ここで、本発明に記載している柱梁接合補強筋が、柱梁接合部3を上下に延在する分割柱筋15cに対応している。
【0028】
[第3実施形態の柱と梁の接合構造]
さらに、図7は、本発明に係る第3実施形態の柱と梁の接合構造を示すものである。
本実施形態は、第2実施形態の柱と梁の接合構造と同様に、1階のSC柱2の内側鋼管5と外側鋼管6の間の空間と、2階のSC柱2の内側鋼管5と外側鋼管6の間の空間とに連続して上下方向に延在する複数本の柱補強筋15が配置されている。
本実施形態が第2実施形態と異なる点は、第2実施形態で柱梁接合部3を構成していた4枚の外套部材14を削除し、柱梁接合部3の仕口13のウェブ13cを貫通して接合用鋼管11の周囲にループ形状に延在する複数本の接合補強筋16が配置されているとともに、複数本の接合補強筋16を埋設する第3コンクリート17が充填されていることである。
【0029】
第3実施形態の柱梁接合部3は、接合用鋼管11の周囲に複数本の接合補強筋16が配置され、これら複数本の接合補強筋16が第3コンクリート17に埋設されていることで、柱梁接合部3のせん断耐力が高められる。
したがって、第3実施形態の柱梁接合部3も、SC柱2と鉄骨梁4との間の応力の伝達を円滑に行うことができる。
なお、上記実施形態では、四角鋼管の内側鋼管5としたが、円形鋼管、或いは多角形鋼管でもよく、円形鋼管の外側鋼管6としたが四角鋼管、或いは多角形鋼管でもよい。
【0030】
また、第1及び第2実施形態では、内側鋼管5の内部空間に第2コンクリート8を充填し、且つ、内側鋼管5の外側及び外側鋼管6の内側で囲まれた空間及び接合用鋼管11の外側及び外套部材14の内側で囲まれた空間に第1コンクリート7を充填した構成を示したが、内側鋼管5の断面積を大きくして軸方向の圧縮強度を高くすれば、内側鋼管5の内部空間に第2コンクリート8を充填しなくてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 基礎コンクリート
2 鋼管コンクリート柱(SC柱)
3 柱梁接合部
4 鉄骨梁
5 内側鋼管
6 外側鋼管
7 第1コンクリート
8 第2コンクリート
AP アンカープレート
9 アンカーボルト
10 床板コンクリート
11 接合用鋼管
6a,6b 分割体
6a1,6a2,6b1,6b2 フランジ
12a,12b ダイヤフラム
13 仕口
13a,13b フランジ
13c ウェブ
14 外套部材
15 柱補強筋
15a,15b,15d 分割柱筋
15c 分割柱筋(柱梁接合補強筋)
16 接合補強筋
17 第3コンクリート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7